人類が追い求める究極の理想「不老不死」。
不死はそこまでじゃないけど、確かに不老は羨ましい。でも永遠に生き続けるのも、地獄かも。
今回紹介する作品は、何世紀も生き続ける不死身の傭兵チームの活躍を描いたアクション映画『オールド・ガード』です。
主演はシャーリーズ・セロン。近年では『マッドマックス 怒りのデスロード』のフュリオサ役のインパクトが強いけど、本作もバチバチにイケてます。原作は『スーパーマン』『ワンダーウーマン』『ウルヴァリン 』などを手掛けたアメコミライター、グレッグ・ルッカのグラフィックノベル。
堅実なアクションが良くて、Netflixアクション映画の中でも特に面白い作品です！
本記事では、『オールド・ガード』をネタバレありで解説。2025年7月2日には、続編となる『オールド・ガード2』が配信予定です。
『オールド・ガード』相関図・登場人物・キャスト
アンディ（アンドロマケ・オブ・スキタイ）｜シャーリーズ・セロン
役柄
不死身チームのリーダー。
出演作
『モンスター』『スタンドアップ』『ヤング≒アダルト』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
ナイル｜キキ・レイン
役柄
元米海兵隊員。不死の力が発現し、アンディに連れられてチームに入る。
出演作
『ビール・ストリートの恋人たち』『星の王子 ニューヨークへ行く2』
ブッカー｜マティアス・スーナールツ
役柄
不死身チームのメンバー。不死ゆえの孤独とアルコール依存を抱えている。
出演作
『ロフト.』『闇を生きる男』『君と歩く世界』
ジョー｜マーワン・ケンザリ
役柄
不死身チームのメンバー。ニッキーに深い信頼を寄せている。
出演作
『アラジン』『ブラックアダム』
ニッキー｜ルカ・マリネッリ
役柄
不死身チームのメンバー。ジョーと深い信頼関係がある。
出演作
『来る日も来る日も』『マーティン・エデン』
コプリー｜キウェテル・イジョフォー
役柄
元CIA工作員。不死身チームに任務の依頼を持ちかける。
出演作
『それでも夜は明ける』『キンキーブーツ』
メリック｜ハリー・メリング
役柄
大手製薬会社「メリック」のCEO。不死者の存在を知り、利用して金儲けしようと企む。
出演作
『ハリー・ポッター』『マクベス』『ほの蒼き瞳』
クイン｜ベロニカ・グゥ
役柄
アンディが初めて出会った不死者。魔女裁判にかけられて海底に生きたまま沈められる。
出演作
『The Rebel』『Furie』『ザ・クリエイター/創造者』
ネタバレあり
以下では、映画『オールド・ガード』の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
※ネタバレ『オールド・ガード』あらすじと結末・ラスト
不死身の傭兵たち
アンドロマケ（通称アンディ）、ブッカー、ジョー、ニッキーは、何千年も生き続けてきた戦士たち。彼らは原因不明の再生能力を持ち、その豊富な経験を活かして人助けを目的に傭兵活動を行っている。ある日、元CIA工作員ジェームズ・コプリーから南スーダンで誘拐された少女たちを救出する任務を依頼される。彼らは「同じ依頼主からは二度と仕事を受けない」というルールを破り、これを引き受ける。
しかし、この任務は罠だった。彼らは待ち伏せされ殺されるが、すぐに回復し、襲撃者たちを返り討ちにする。その様子は、コプリーによって遠隔で撮影されていたことに気づく。
新たな不死者
アフガニスタンでは、米海兵隊員のナイル・フリーマンが家屋捜索中に喉を切られ死亡する。しかし彼女は傷一つなく生還。その瞬間、ナイルとアンディらは同じ夢を見る。これは、新たな不死者が現れると既存の不死者が夢で感知するという特性によるものだった。アンディはナイルを見つけ出し、軍の検査が行われる前に彼女をアフガニスタンから連れ出す。
その頃、コプリーは不死者の証拠映像を大手製薬会社のCEOスティーヴン・メリックに見せ、彼はチームを捕らえるよう部下を派遣する。アンディはナイルをフランスの隠れ家に連れて行き、チームメンバーと合流する。
チームはナイルに自分たちの過去を明かす。実は、彼らは完全に不死ではなく、回復能力が突然失われることがある。かつての仲間ライコンがその例だった。その夜、ナイルは「鉄の処女」の中で何度も溺れる夢を見る。「鉄の処女」とは、中世ヨーロッパで刑罰や拷問に用いられたとされる、女性形の拷問具だ。
彼女がその夢を共有すると、仲間たちはクインの話をする。クインはアンディが見つけた最初の不死者であり、約500年前、魔女として裁かれ、鉄の処女に閉じ込められて海に沈められた。それ以来、彼女はずっと死ねずに溺れ続けている。アンディはそのことに深い罪悪感を抱いている。
ブッカーの裏切り
その後、チームはメリックの部隊に襲撃され、ジョーとニッキーは拉致されてしまう。アンディは残った敵を全滅させるが、軽傷を負い、治癒が起きていないことに気づく。彼女はそれをブッカーとナイルに隠していた。
ジョーとニッキーはロンドンのメリック製薬本社へ輸送される。メリックは彼らの再生能力を目の当たりにすると、大儲けできると確信し、すぐに二人の組織片を採取させ、人体実験を始める。
ブッカーがコプリーの居場所を突き止めると、アンディはすぐに向かおうとするが、ナイルは残してきた家族に会うことを懇願し、チームを離れることになる。その後アンディとブッカーはコプリーに接触するが、ブッカーはアンディを裏切り、銃撃する。
彼は「不死に疲れた。不死を終わらせてくれるかもしれない」と裏切りの理由を語るが、アンディの治癒能力が失われていることに気づいて驚く。直後にメリックが警備部隊を連れて現れると、二人は拘束される。ブッカーもまた利用されたのだ。
製薬会社での決戦
コプリーの自宅に、チームに戻ることを決めて戻ってきたナイルが現れる。彼女はそこでブッカーの裏切りを知るが、すでに遅かった。アンディとブッカーは捕らえられ、実験室へと連行されていた。ナイルはコプリーから、アンディがこれまでに人類を陰ながら救ってきた功績を知ることになる。
コプリーは、メリックの本当の目的が医療の進歩ではなく、金儲けとサディズムにあることを知って心変わりする。ナイルはコプリーを問い詰め、居場所を聞き出すと、チームを救出しに向かう。
ナイルはメリットの本社へ突入し、仲間たちを解放する。チームは連携して激しい戦闘を繰り広げる。メリックはアンディとナイルを追い詰めるが、二人は息を合わせてメリックの注意を逸らし、アンディがメリックを負傷させ、ナイルは彼を掴んで自分もろとも高層ビルの窓から飛び降りてとどめを刺す。
ナイルは不死性を発揮して復活し、チームはブッカーを含めて全員無事のまま現場から去っていく。
事件のその後
アンディはブッカーに裏切りの罰として100年の追放を言い渡し、別れを告げる。その後、アンディ、ニッキー、ジョー、ナイルはコプリーと再会。彼の調査により、過去に彼らが救った人々の子孫が、世界を変えるような貢献をしていたことを知らされる。
その後チームはコプリーを許し、CIAでの経験を活かして今後の身元隠しと、より良い影響を与えるための任務の調整役を任せる。
ミッドクレジットシーンでは、半年後のパリで、酔って帰宅したブッカーの前に、クインが待ち受けている様子が描かれる。
『オールド・ガード』ネタバレ感想・考察
アクションよし、ストーリーよし、キャラクターよしの三拍子が揃った良作！
Netflix映画『オールド・ガード』は、不死身の傭兵たちが人知れず世界を救うという物語。設定だけ聞くと、いかにもアメコミっぽい印象もあるけれど、実際はとても人間らしい映画だ。
まずアクションが良い！過剰演出やスローモーションに頼らず（誰かをディスってるわけではない）、堅実でリアルな戦闘シーンになっていて、それを実現しているシャーリーズ・セロンの演技も見事。飛行機内のバトルは特に良かった。
本作の魅力は、不死身としての強さの奥にある痛み。
何百年も生き続ける彼らにとって、死は怖くない。でも、置いていくこと、置いていかれることの繰り返しが、心をすり減らしていく。『葬送のフリーレン』のフリーレン的な感情だ。
不死身チームのメンバーが纏っている「疲れた」オーラが、それを物語っていて、映像も彼らの内面を想像させるようにクローズアップショットが多く見られた。その背景があるからこそ、ブッカーの裏切る理由も納得できる。そこに加わる新入り・ナイルのフレッシュさが、メンバーに再び生きる理由を問い直させるような展開も胸に刺さる。
そして何より心に残るのが、ジョーとニッキーの関係性。彼らは単なるチームメイトを超えて、何百年という時をともに過ごした恋人同士であり、その絆の深さは、捕らえられた車中でのやり取りのシーンを見ればわかる。あれはもう、愛の詩だ。
人間は時とともに成熟する生き物だ。それを象徴するように、裏切ったブッカー、チームを騙したコプリーを断罪するのではなく、許しているのも印象的。生き続けることの重さ、誰かを想うことの切実さを、不死というフィクションを通じてリアルに描いている誠実な映画だった。
