『天国大魔境』徹底考察

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マンガ

【ネタバレ考察】『天国大魔境』を最新刊・最新話まで徹底解説

今回ご紹介するのは、『天国大魔境』です。

石黒正数(いしぐろまさかず)さんによる講談社「アフタヌーン」連載の漫画。

『このマンガがすごい!』2019のオトコ編第1位に選ばれた近未来SFアドベンチャー作品

本記事では、『天国大魔境』のあらすじや気になる謎について、ネタバレありで徹底解説・考察していきます。

2023年現在、『天国大魔境』本編1巻〜9巻、『天国大魔境公式コミックガイド』を参考に、私独自の考察も合わせて解説していきます。

石黒正数先生のすごいところは、本編をしっかり追っていくと、ほとんどの情報がコマの中に描写されている見事な伏線の数々。この記事では、それらをまとめて詳しく解説していきます。

物語も崩壊した地球を舞台に、人間の尊厳やセクシュアリティ、アイデンティティなどをテーマにした重厚な物語が胸に刺さる傑作。

2023年4月1日より、TOKYO MX/MBSほかにてTVアニメ放送もスタートしました。ディズニープラスのみで見放題独占配信されています。公式ガイドのインタビューによると、アニメの第1シーズンは6巻までとのこと。

まめもやし

マンガはめちゃくちゃ面白いし、アニメは綺麗な作画で誰もが楽しめるのでぜひ!

アニメ『天国大魔境』はディズニープラスで見放題!

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『天国大魔境』について

『天国大魔境』は、石黒正数さんによる講談社『月刊アフタヌーン』で連載中の漫画。

文明が崩壊した世界で生きる少年少女たちの様子を描いたSF漫画。

『天国大魔境』の物語は、「天国編」と「魔境編」の大きく分けて2つの軸で進行していきます。以下では、それぞれのキャラクターに関するポイントやあらすじ、起きた出来事の時系列など詳しく解説していきます。

ネタバレあり

以下では、天国大魔境の展開に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

出来事を時系列に整理して解説

以下では、『天国大魔境』のコミックス内に登場する時間を明記する描写をまとめて整理して並べました。


  • 1945年4月20日

    後の高原学園園長、上仲誌乃(かみなかしの)が埼玉県草加市に誕生。(8巻47話「上仲誌乃」より)


  • 1995年

    高原学園の創立。(8巻第47話「上仲誌乃」より)


  • 2000年

    地球に衝突する小惑星の存在をミーナが予言する。(8巻46話「猿渡照彦」より)

  • 2005年ごろ(天栄元年)

    小惑星衝突に備え、園長はシェルターとなる学園の設立。それを学園での年号、天栄元年としていると推測。

  • 2011年

    稲崎露敏(いなざきろびん)が誕生。(6巻34話「稲崎露敏③」より)

  • 2018年(天栄12年)5月6〜7日

    アスラが学校の庭で首を吊って自殺する。(4巻第23話「アスラ」、3巻15話「タラオ③」より)

  • 2019年4月1日

    便利屋のトールが弓月(ゆづき)のオヤジから支援団体を作るようにアドバイスされる。(第58話「稲崎真凛」より)

  • 2023年(天栄17年)7月

    7月1日、ククとトキオが保育器室に侵入して赤ちゃんを目撃する。(211話「クク②」より)

    7月4日、保育器室に侵入したトキオの足跡を猿渡が発見する。(3巻17話「トトリ」より)

  • 2023年(天栄17年)10月

    10月16日22時34分、タラオが病死し、火葬後に謎の物体が出現。(3巻15話「タラオ③」より)

    10月17日、トキオの体調が悪くなる(妊娠の兆候)。(3巻15話「タラオ③」より)

    10月28日、トキオがコナの部屋へ訪れ、キスして夜を共にする(3巻17話「トトリ」より)

  • 2024年(天栄18年)1月

    男性たちが戦士に持たせるレーザー銃の射撃テストにやってくる。(4巻24話「A-mk3」より)


  • 2024年(天栄18年)7月

    7月前後、トキオ出産。園長に利用されることを危惧した猿渡がトキオの子どものクローンを作る。(公式ガイドブックより)

    7月17日、戦士8名による、小惑星の軌道を修正する作戦を潰すテロ行為お迎えの日」。1名は現場から逃亡。(7巻41話「お迎えの日」より)

    7月20日、プールに全生徒が集められ、外の外に到達する“ヒルコ”の役割をミーナから告げられる。(6巻35話「高原学園①」より)

    7月26日、学校が爆撃される。トキオが赤ちゃんを抱えて石化、園長はナタに脳を移植。自衛隊により一部の生徒たちが保護される。(7巻41話「お迎えの日」より)

    7月28日、マコは戦士の落としたレーザー銃を拾う。トキオの石化が解ける。(7巻41話「お迎えの日」より)ナタは三倉まなかとして病室で目覚める。(7巻42話「ミクラ①」より)

  • 2024年7月〜11月

    7月26日の学園崩壊後、身を隠して自衛隊に保護されなかった生徒や猿渡らは、11月10日まで崩壊後の学園で過ごす。(8巻46話「猿渡照彦」より)

  • 2024年(天栄18年、令和6年)8月23日

    ミミヒメとシロがコンビニに行く。タカと似た俳優「北多民君太」を雑誌で見る。(7巻43話「ミクラ②」より)

  • 2024年11月11日

    11月11日午前2時14分、小惑星「あめのぬぼこ=ニビル」が欧州付近(イタリア北部あたり)に衝突。「大災害」となる。(8巻46話「猿渡照彦」より)

    11月、大阪の病院にいる三倉まなかは、園長・誌乃としての記憶を取り戻し、動き始める。(7巻43話「ミクラ②」より)


  • 2034年9月

    9月12日、稲崎露敏、竹早桐子、竹早春希など船山孤児院チームは、浅草で電動カートレース興行していた。(2巻8話「竹早桐子」より)

    9月20日、春希は“人食い”に襲われ、脳を姉の桐子の体に移植される。(2巻9話「竹早春希」より)

    9月頃、ロビンが行方不明になる。(2巻9話「竹早春希」より)


  • 2035年1月15日

    キルコは体の傷が癒えて動けるようになり、便利屋稼業を始めていく。(2巻9話「竹早春希」、10話「クク①」より)

  • 2039年

    キルコとマルが冒険する現在軸。便利屋のキルコの元にミクラがマルを連れてやってくる。

最初は、この世界の元号は「天栄」だと思っていましたが、7巻の43話で外の世界のコンビニでは現実世界と同じ「令和」を使っていました。つまり、天栄元年は「高原学園の学校施設ができた年号」要するに「園長による天国の始まりの年」と推測しています。

『天国大魔境』のキャラクター解説(天国編)

トキオ

『天国大魔境』トキオ
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前トキオ
入園時期2期生
推定年齢14歳
身長158cm
能力体を硬化して仮死状態にできる
特徴・他の生徒たちの恋愛の様子に戸惑う
・コナへ好意を寄せる
・コナとの子どもを妊娠、出産

コナとの子どもを設けるも、学園爆撃の余波で、実子かクローンか不明なまま、猿渡に手渡された赤ちゃん(足に丸印の付けなかった方)を育てる。

ミミヒメ

『天国大魔境』ミミヒメ
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前ミミヒメ
入園時期2期生
推定年齢14歳
身長153cm
能力予知能力
特徴・長く伸びた耳による高い聴力
・先端や刃物への恐怖心がある
・外の世界では「星尾あかり」として生活

シロに好意を寄せられるミミヒメですが、それほど恋愛への関心がない様子。気遣いがよくできて面倒見もいい。

予知能力で潜在的にタカとアンズが結ばれることを知っていたから、タカと手を繋ぐ様子をアンズに見られていはいけないと察するなど、勘がいい。

シロ

『天国大魔境』シロ
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前シロ
入園時期2期生
推定年齢14歳
身長168cm
能力工作能力
特徴・ミミヒメが大好き
・社交性はなく他人への関心は低い
・外の世界では「宇佐美俊」として生活

シロは、初めは寡黙で謎めいた様子だったが、ミミヒメへの一途な思いを人生と通して貫いた人間。

タカ

『天国大魔境』タカ
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前タカ
入園時期2期生
推定年齢14歳
身長170cm
能力高い運動能力、強靭な肉体
特徴・好奇心旺盛で元気
・外の世界では「南方弥刀」として生活
・後にアンズ(乃亜)と結婚して子どもを儲ける

アンズ

『天国大魔境』アンズ
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前アンズ
入園時期2期生
推定年齢14歳
身長157cm
能力ダンス、表現力
特徴・頭は良いが、たまにおっちょこちょい
・タカをなにかと意識している
・外の世界では「梅津乃亜」として生活
・後にタカ(弥刀)と結婚し子どもを儲ける

コナ

『天国大魔境』コナ
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前コナ
入園時期1期生
推定年齢17歳
身長172cm
能力想像(予知)したものを描写する力
特徴・閉所恐怖症
・アスラへ恋愛ではない好意を持っていた
・トキオの好意に応じ子どもを儲ける

アスラ

名前アスラ
入園時期1期生
推定年齢享年12歳
身長不明
能力予知能力、飛行能力、治癒能力ほか
特徴・人間というよりも宇宙人に近い見た目
・あらゆる能力を持っている様子
・未来予知したことで学園で自死する

コナと同期の1期生であるアスラは、一人だけ他の生徒とは明らかに違う見た目。能力も豊富で、どこか神聖な面持ちすら感じる。高原学園での初めての死者となった。

タラオ

名前タラオ
入園時期3期生
推定年齢享年10歳
身長不明
能力怪力、頭が良い
特徴・トキオへ好意を寄せる
・黒いアザの病気を発症して病死
・火葬後に硬化した物体が出現
・死の直前、トキオに学園から逃げるように伝える

運動能力の高いタカでも持ち上げられない大きな石を放り投げたという話から、怪力があったと推測できます。病気の発症後はヒルコになると言うが、火葬したらならないのかは不明。残った物体がヒルコになる可能性も?

クク

『天国大魔境』クク
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前クク
入園時期3期生
推定年齢10歳
身長135cm
能力高い跳躍力とクライミング力、水泳も得意
特徴・病気を発症して死亡
・両性具有
・崩壊後はミチカとオーマと行動を共にする

ミチカ

名前ミチカ
入園時期3期生
推定年齢10歳
身長不明
能力高い運動能力
特徴・両性具有

イワ

名前イワ
入園時期3期生
推定年齢10歳
身長142cm
能力不明

ナナキ

名前ナナキ
入園時期3期生
推定年齢10歳
身長137cm
能力不明

オーマ

名前オーマ
入園時期5期生
推定年齢5歳
身長不明
能力幻覚を見せる能力
特徴・両性具有

マコ

名前マコ
入園時期4期生
推定年齢不明
身長不明
能力念力
特徴・ナタを気にかける
・外の世界では「堀さちお」として生活

ナタ

名前ナタ
入園時期4期生
推定年齢不明
身長不明
能力不明
特徴・外の世界では「三倉まなか」として生活

サクヤ

名前サクヤ
入園時期4期生
推定年齢不明
身長不明
能力不明

上仲誌乃(園長)

名前上仲誌乃(かみなかしの)
生年月日1945年4月20日
役職高原学園の園長
特徴・現代社会を「地獄」と表現
・ミーナの予言を知り学園を設立
・「大災害」後の「天国」づくりに奔走
・普段は車椅子だが、実は立つことも走ることもできる

青島裕子

名前青島裕子(あおしまゆうこ)
年齢33歳(2024年当時)
役職高原学園の副園長
特徴・トキオの妊娠に気づき園長に報告
・副園長に抜擢される
・学園爆撃時に生徒を外へ逃がす

猿渡照彦

名前猿渡照彦(さるわたりてるひこ)
年齢40歳(2024年当時)
役職高原学園の保険医
特徴・トキオ出産時にクローンを作るが、どちらがトキオの子どもかが分からなくなる
・学園崩壊後は学園に残り一部の生徒らと過ごす

上仲永吉

名前上仲永吉(かみなかえいきち)
年齢72歳(2024年当時)
役職高原学園の幹部、誌乃の夫
特徴・学園崩壊後に猿渡に園長の計画を伝える

今永美咲

名前今永美咲(いまながみさき)
年齢不明
役職高原学園の出資者

『天国大魔境』のキャラクター解説(魔境編)

マル

『天国大魔境』マル
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前マル
推定年齢15歳
特徴・高い身体能力
・近接戦闘術
・漢字に弱い
・ヒルコの核に触れられる
・キルコが好き

キルコ

『天国大魔境』キルコ
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前キルコ
年齢20歳(肉体)/18歳(脳)
特徴・肉体は竹早桐子
・脳は竹早春希
・高い射撃能力
・ネーミングセンスの欠如
・アイデンティティに揺れている

稲崎露敏

『天国大魔境』ロビン
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前稲崎露敏(いなざきろびん)
年齢25歳(2011年11月11日)
特徴・船山孤児院のリーダー格
・不滅教団の宇佐美の元で働く
・高原学園茨城施設の大濾過装置を管理
・秘密裏にヒルコと人間の実験をする
・逃亡し、現在は復興省から指名手配中

竹早春希

名前竹早春希(たけはやはるき)
年齢13歳(2034年当時)
特徴・桐子の弟
・桐子への重度なシスコン
・射撃能力
・ヒルコに下半身を食われ桐子へ脳移植される

竹早桐子

名前竹早桐子(たけはやきりこ)
年齢15歳(2034年当時)
特徴・春希の姉
・人気の電動カーレース選手
・弟思い
・肉体が春希の脳移植の器となる

三倉まなか

名前三倉まなか(みくらまなか)
年齢23歳(肉体)/94歳(脳)
特徴・高原学園の4期生のナタ
・園長の脳が移植される
・マルをキルコの元に届ける
・アザの病気の発症して死亡

宇佐美俊

『天国大魔境』宇佐美
©石黒正数・講談社/天国大魔境製作委員会
名前宇佐美俊(うさみしゅん)
推定年齢享年29歳
特徴・高原学園の2期生のシロ
・「不滅教団」の医師
・工作が得意
・星尾あかりの亡骸を抱えて自死

宇佐美医師の正体はシロ。学校を出た後の外の世界では、宇佐美俊(うさみしゅん)に名を変えました。シロは工作が得意でした。

シロは、かねてからミミヒメへ好意を寄せており、そんな彼女があんな姿になっていくのはさぞ辛かったでしょうね。最後の彼女からの言葉で少なからず救われたことでしょう。彼女を守ったときにもらった制服のボタンとミミヒメの亡骸を抱きしめて自死しました。

まめもやし

ミミヒメとシロのエピソードは後のエピソードを知ると、振り返って泣けてきます…。

星尾あかり

名前星尾あかり(ほしおあかり)
推定年齢享年29歳
特徴・高原学園の2期生のミミヒメ
・宇佐美による延命措置を受ける
・アザの病気の進行を遅らせるため体中の部位を切断
・マルのマルタッチによって死亡

4巻の「不滅教団」で宇佐美医師に案内された機械で生かされ、四肢を失った姿の人間。

その人物の正体はミミヒメ。学校を出た後の外の世界では、星尾あかり(ほしおあかり)に名を変え生活しています。最期に空が見たいと言ったのは、初めて外の世界の空を見たときの高さに驚いていた様子とリンクします。

迫田

名前迫田(さこた)
年齢55歳
特徴・浅草で桐子らレース興行の怪我に手当をする
・人食い研究や人体実験のウワサあり
・春希の脳を桐子の肉体に移植した
・現在は消息不明
・高原学園の保険医・猿渡の本名と同一

水橋

名前水橋(みずはし)
年齢不明
特徴・「リビューマン」代表
・不滅教団による治療で片足が義足に
・デモで怪我を追い、周りから死んだと思われる
・キルコの生理に気づきケアする

ジューイチ

名前ジューイチ
推定年齢23歳
特徴・都市伝説系の情報屋
・女性至上主義の壁の町で「種豚11号」として飼われていた
・町を4人で抜け出し唯一脱走できた
・精子提供による息子、十五の父親
・脱走時に叫び声で知らせた人間を殺害する
・決め台詞は「シーユー・バイバイ」

十五

名前十五(じゅうご)
推定年齢1歳
特徴・ジューイチの息子
・ヒルコ人間
・冷却能力を持つ

ヘルム

名前ヘルム/怜夢(れいむ)
推定年齢16〜17歳
特徴・地獄夢と書いてヘルム
・本名は怜夢
・過去にこめかみにホクロのメガネ男にレイプされる
・ビームを跳ね返すヒルコ相手と闘う
・浜松空港でレイプ犯に復讐する(陰部を爆破)
・レイプ犯の連れていた少女を引き取る

トトリ

名前トトリ
推定年齢13歳
特徴・岩田組
・ホテル王になると宣言
・ヒルコ人間

【ネタバレ考察】『天国大魔境』ヒルコや元の人間について

ヒルコに関する情報

  • 大災害以降に出没するようになる
  • 人食い”・“ヒルコ”・“怪物”など呼び方はさまざま
  • 内部には心臓のような“核”を保有している
  • 不死身、さまざまな特徴や能力を持っている
  • 怪物になる病気を発症して死んだ、元人間
  • 瀕死に陥ると硬化して仮死状態となる
  • ミーナは学園の子どもたちを“ヒルコ”と呼び、外の外へ行くことがテストだと発言
  • 不治の病「黒いアザの病気」を発症して死亡すると“ヒルコ”になる
  • 400年以上前から核を持ち存在する「鬼のミイラ」もいる(江戸時代の文献にも明記あり)

これらの情報を整理して考えると、ヒルコはアザの病気を発症して死んだ元人間であるが、「鬼のミイラ」の存在が示すように、必ずしも高原学園出身の人物であるわけではないと推測できます。

それを元に、以下では物語で登場したヒルコたちを順に紹介していきます。

ヒルコなどの特徴元の人間
6本のムチを持つ鳥型のヒルコ(1巻)タカ
10本足のオオグソクムシ型ヒルコ(2巻)???
手の生えた魚型のヒルコ(2巻)クク
幻覚を見せる単眼型のヒルコ(3巻)オーム
冷却能力を持つクモ型のヒルコ(5巻)ナナキ
大濾過装置で人間と繋がれたヒルコ(6巻)???
キル光線を跳ね返すヒルコ(7巻)???
山村の祠にいた鬼のミイラ(8巻)???
巨大な光の手足を持つヒルコ=アンジュラス(8巻)アンズ

6本のムチを持つ鳥型のヒルコ(1巻)

1巻で登場した、キルコとマルが泊まった宿「八巣旅館」に現れたヒルコ。

元の人間はタカ。8巻後の50話にて、タカの能力が“視えない斬撃”であることが明かされ、2呼吸ごとの攻撃という点でも同じでした。

10本足のオオグソクムシ型のヒルコ(2巻)

2巻の浅草で、桐子が参加したレース中に登場したヒルコ。竹早春希が闘い、下半身を食べられてしまう。10本足で背中に甲皮を持つオオグソクムシのような見た目。姿を消す能力を持っていて、動きは遅い。

手の生えた魚型のヒルコ(2巻)

2巻で草壁農園から東京に向かう船で襲われたヒルコ。魚の形で胴体から無数に手が生えています。

元の人間はクク。水泳が得意で、壁に貼り付いてよじ登る様子も見られ、コナから似た絵をもらい嬉しそうにしていました。扉絵に注目すると、2巻「クク①」でククが、「クク②」では魚型のヒルコが描かれているのも伏線。

幻覚を見せる単眼型のヒルコ(3巻)

3巻の「不滅教団」の地下駐車場で幽閉されて仮死状態となっていた単眼のヒルコ。キルコは目を見たことでヒルコに襲われる幻覚を見させられる。

元の人間はオーム。学校の5期生としてやってきたオームは、目を見た相手が幻覚を見てしまうため、常にサングラスをしていました。周りと馴染めずに一人でいたところも地下で動かなくなっている様子とリンクします。

冷却能力を持つクモ型のヒルコ(5巻)

5巻で情報屋ジューイチの車に乗ってやってきたバリケードの町でキルコとマルが襲われるクモ型のヒルコ。急速冷却能力を持つ。キルコの放ったキル光線により、下半身を切断されるも、核を残した上半身で逃げていく。

元の人間はナナキ。5巻29話「壁の町⑤」の扉絵で描かれているヒルコの足元にある壊れた窓枠が「ナナキ」と読むことができる伏線。

ジューイチの「壁の町」の話の中に登場したジューイチと共に逃げようとして殺されたカップルは、イワとナナキと推測できます。ナナキの子どもだから十五は冷却能力を持っていたのです。

大濾過装置の人間と繋がれたバケモノ(6巻)

6巻でロビンが去った後に鍵のかかった部屋で見つかった人間とバケモノ

人体実験をしている様子だが、ヒルコであるかも不明。

キル光線を跳ね返すヒルコ(7巻)

7巻でヘルムが戦っていたヒルコ。特殊なバリアなのか、キルコが放ったキル光線を跳ね返す能力を持っていた。

山村の祠にいた鬼のミイラ(8巻)

山村の熊野郎の祖母が敷地内の祠で祀っていたヒルコ。

ヒルコと同様の核があり、江戸時代の文献にも記されるほど大昔からいたという。

巨大な光の手足を持つヒルコ=アンジュラス(8巻)

高原学園奈良施設へ向かう途中でキルコとマルがくぐり抜けた巨大なヒルコ。

元の人間はアンズ。そ50話のタカの発言、54話での迫田医師の発言によりほぼ確定。56話にて、マルによって核を握り潰されて消滅。

日本神話のルーツから見る『天国大魔境』

『天国大魔境』では、公式ガイドブックでも明かされているように、日本神話からのインスピレーションを受けています。

まめもやし

日本神話といえば、新海誠監督『すずめの戸締まり』でも日本神話のインスピレーションがありましたね!

すずめの戸締まり
【ネタバレ解説・考察】『すずめの戸締まり』が伝えたいこと|新海誠の集大成

「あめのぬぼこ」

園長の誌乃が、ミーナの予言する小惑星衝突を「あめのぬぼこ」と表現していました。古事記は、イザナギとイザナミの2人の神が「天の沼矛(あまのぬぼこ)」で国土を固めたことから物語が始まります。

ミーナのシステム認証

8巻でミクラになった園長が、ミーナのシステム認証時の合言葉「まひらのくつのくれつれ〜」という言葉は、「日本書紀」で記載されている、斉明天皇(さいめいてんのう)時代に流行した童謡(わざうた)

意味は解明されていないようですが、不吉な意味があったとされていて、物語の展開を想像させるものになっています。

登場人物の名前と神々

キャラクター日本神話における神々
トキオトキオカシノカミ
ミミヒメアメノオシホミミ
タカタケミナカタ
アンズアメノウズメ
ククタニグク
たらおアメノタヂカラオ
ミチカタケミカヅチ
サクヤコノハナノサクヤヒメ
稲崎露敏イザナギ
竹早桐子/春希タケハヤスサノオノミコト

上記のように、日本神話における神々の名前と学園の生徒名がリンクします。さらに外の世界で命名された名前も神々からの名前に由来していることがわかります。

【ネタバレ】『天国大魔境』第1巻あらすじ

『天国大魔境』第1巻
© 石黒正数/講談社

壁に囲まれた施設

周りを壁で囲まれた施設の中に暮らす子どもたち。ある日の授業、突然行われたテストの中で生徒たちは「外の外に行きたいですか?」という質問をされていた。

トキオ園長に外があるのか尋ねると、園長は「外はあさましい怪物がうごめく汚れた世界で地獄」と語る。

ミミヒメは不明瞭ながら少し先の未来を見る力を持っていた。彼女は夢の中で「外に出たい」と思うと、外から2人の人物が助けに来てくれて、その一人がトキオに瓜二つだという。

シロは、ミミヒメのメールアドレス宛から彼女が裸でシャワーを浴びている写真が送られて来たことに驚いていた。運動神経抜群のタカは、高所から落下するも目立った怪我はしなかった。

車椅子に乗るタラオは、体から発疹が出ていて痛そうにしていた。

美少年のコナは、手の生えた魚や赤ちゃんなど、変わった絵を描くのが得意。絵を見たククは、「顔のない赤ちゃんを知っている」と言い、トキオに見に行くか質問する。

キルコとマル

キルコとマルの2人は、「天国」を探して荒廃した日本を探索している。

3人組に足止めされるが、キルコの持つレーザー銃(キル光線)で返り討ちにし、彼らから「トマト天国」という場所の情報を手に入れる。

道中、女将一人が経営する八巣旅館に立ち寄る。真夜中、そこに“人食い=ヒルコ”が現れる。退治しようとする2人だったが、旅館の女将は「自分の息子が中に入っている」と守るが、彼女はヒルコに殺されてしまう

キルコのレーザーで追い詰め、マルがヒルコに触れて内部の核(心臓)のようなものを握り潰したことでヒルコを殺すことができた。

その後、2人はトマト天国である、「草壁農園」にたどり着く。そこでキルコが持つ光線銃に施されたものと同じマークのあるダンボールを見つける。その物資は東京から船で届けられたものであり、その船に乗り込み、2人は東京へと向かう。

草壁農園で、キルコは竹早桐子(たけはやきりこ)という5年前に姿を消した、浅草の電力車(でんりきしゃ)レースの選手と見間違われる。

船中、マルはキルコに告白するが、キルコは「体は女だけど頭(脳みそ)が男」というのだった。

【ネタバレ】『天国大魔境』第2巻あらすじ

『天国大魔境』第2巻
© 石黒正数/講談社

5年前の浅草

5年前、稲崎露敏(いなざきろびん)ら船山孤児院のチームは、選手の竹早桐子、弟の春希(はるき)らと浅草で電動カートレース興行を生業にしていた。

桐子は額に傷のある医者に手当などをしてもらっていたが、その医者は隠れて“人食い”の研究や人体実験をしているという噂があった。

ある時のレース、春希は“人食い”がコースに出現したことに気づき、退治しようとする。レース中、桐子も“人食い”に気づき、闘う春希を助けに向かうが、春希は体を半分食べられてしまう

春希が病院のベッドで意識を取り戻すと、自分の体が姉の桐子になっていることに気づく。看護師の話では、桐子と春希は意識不明の状態で運ばれ、例の医者が手術をしたのだという。

ロビンらは行方不明になっており、そこからキルコ(桐子の体に春希の頭)として、便利屋になったのだった。

船上の闘いと東京上陸

5年前の話を通して自分が男であることをマルに伝えるキルコ。そんな中、船が手の生えた魚の“人食い”に襲撃される

キルコの機転により、船内におびき寄せ、ダンボールで水を吸わせて動きを止めてマルの“マルタッチ”によって倒すのだった。

その後、2人は東京に上陸し、町でひと稼ぎしようとするが、よそ者として絡まれてマルがケンカしてしまい、寝床とする場所を探しに出かける。

施設

ククとトキオは壁の内部に侵入し、顔のない複数の赤ちゃんがケージの中で育てられている様子を目撃する。そのうちの一人はトキオの名前を呼びかけていた。

施設の内部は、モニターを通して子どもたちが大人に監視されていたが、ククとトキオの侵入する様子はモニターから消されていた。園長はミーナという多数の管でつながられたAIの母体と会話していた。

シロは、ミミヒメから送られてきたメールの画像が消えていることに気づく。シロはミミヒメへに自身の恋愛感情を打ち明けていた。トキオもコナに自分の好意を伝えると、コナもトキオの想いに応える。

そんな中、タラオの容態が悪化し、彼の指名によりトキオだけが部屋に呼び出されると、タラオは「ここ(施設)は危ない、逃げて」と伝えるのだった。

【ネタバレ】『天国大魔境』第3巻あらすじ

『天国大魔境』第3巻
© 石黒正数/講談社

自警団とホテル王

マルは大災害と同じ年に生まれ、その後、転々としていたところをミクラが引き取り、彼女から“ヒルコ”を殺す方法を教わったという。

キルコは道すがら復興省(災害前の文明を取り戻すための集団)の話を耳にする。キルコは災害前の旧文明が「天国」ではないのかと、ひとつの予測を立てる。

キルコとマルのもとに、船で一緒だった男性が訪れる。男は「不滅教団」という、人を永遠に生かし続ける医者がいる場所までのボディガードを2人に依頼する。

男は、不滅教団による“人食い(ヒルコ)”の一部を切り取り、人間に移植すると、強さと不死を手に入れられるという話を信じていた。しかし、男が持っていた“人食い”の一部はすでに腐っていて使い物にならず、キルコは代わりに「不滅教団」の場所の情報を買い取る。

キルコとマルは町で手に入れた地図を元に、水を汲みに行く。すると、そこには町でマルがケンカした自警団たちが負傷して倒れていた。

彼らを襲った野生の熊が2人に襲いかかる。キルコとマルは協力して熊を倒し、生き残っていた岩田という自警団のリーダーを助ける。彼らは町ぐるみで旅行者を狙う盗賊行為をしていたことが分かる。

岩田組の自警団に育てられ、宿を経営する孤児の少女トトリは、“ヒルコ”と同じ核を持っていた。助けた岩田は、翌朝死んでしまい、悲しむトトリだったが、ホテル王になる(宿業で成功させる)決意を決める。

施設

タラオは意識が混濁する状態となっていたが、その後、息を引き取り、アスラの自殺に続いて施設で2人目の死者となる。

園長は「お迎えの日は変更できない」と、病気の正体と治療法の解明を職員たちに指示する。その後、タラオが火葬されると、遺骨から謎の物体が出てくるのだった。

トキオも体調を悪くするが、検査では異常は見られなかった。その後、病室で寝ていると、アスラに「トキオは何が得意ですか?」と尋ねられ、理解できずにいると、足が硬化してしまうという夢を見る。

その夜、トキオはコナの部屋へ訪れ、2人はキスをして体を重ねる。トキオがコナの部屋へ向かう様子は監視モニターには映っていなかった。

不滅教団

不滅教団の近くまでやってきたキルコとマルは、不滅教団の反対勢力「リビューマン」たちに声をかけられる。代表の水橋という女性は、1年前に治療目的で不滅教団に近づくも、足を切断されて義足にされたと語る。

不滅教団では宇佐美医師という人物が、怪我人の治療を掲げて体の一部を機械に置き換える人体実験を行っているという。水橋はそこで、機械に生かされ続ける人間の姿を目撃し、教団員たちがそれを崇拝しているという。

さらに、不滅教団の地下では“人食い”が飼育されているというのだった。2人は依頼を承諾し、リビューマンのデモを陽動にして不滅教団の地下に潜入する。

地下には仮死状態の“ヒルコ”が複数体いて、2人は動き出したヒルコに襲われ、キルコは片腕を食いちぎられてしまうのだった。

【ネタバレ】『天国大魔境』第4巻あらすじ

『天国大魔境』第4巻
© 石黒正数/講談社

宇佐美医師と星尾

キルコは“人食い(ヒルコ)”に殺されかける幻覚を見せられていたが、マルがキスして正気に戻す。マルは地下にいる“ヒルコ”を始末すると、宇佐美医師が現れ、「もうひとり助けて欲しい人がいる」と言うのだった。

宇佐美医師に案内された先には、機械で生かされた惨い姿の星尾(ほしお)という女性の姿があった。宇佐美医師によると、“人食い”は怪物になる病気を発症して死んだ元人間だという。

病の進行を遅らせるために体の部位を切り取り延命していたが、彼女は限界に来ているという。マルは彼女の中に核があることを確認し、殺せると伝える。

星尾の「最後に空が見たい」という要望に応えた後、マルは核を握り彼女を死なせる。彼女は死ぬ間際、宇佐美に「人のまま死なせてくれてありがとう」「大好きだよ」という言葉を遺し、それを見た宇佐美は涙を流す。

リビューマンの抗議デモで水橋は怪我を負ってしまい、過激化したリビューマンたちは不滅教団に武力行使を始め、教団員たちは居場所を追われることになる。

キルコは、教団員の一人から2年前にロビンが宇佐美医師の手伝いをしていたことを知り、キルコはロビンに会いたい気持ちを強くしていた。

宇佐美は星尾を埋葬すると言って一人になるが、彼女を抱えたまま自殺してしまう。彼はキル光線に施されたものと同じマークのボタンを手にしていた。キルコとマルはそのマークを追う方針に決める。

コナとアスラ

コナはアスラが予知能力があって、それが原因で死んだという。ある時、アスラは「自分が生まれた理由がわかった」と言い、コナに別れを告げて施設の庭で首を吊って自殺してしまう。

アスラはコナに、好きな人を見つけるという特別な感情に気づくように言い残す。

コナは「アスラを殺したやつがトキオを奪いに来る」と言う。施設の子どもたちが着る制服には宇佐美が握っていたボタンが施されていた。

情報屋ジューイチ

キリコとマルは、情報屋のジューイチと接触する。彼はキル光線のマークについて知っているという。

嘘か真か、大災害の原因「惑星衝突説」「宇宙人襲来説」「戦争説」の3つを聞かされる。その後、ジューイチ自身の実体験として、女性至上主義を掲げ、学校を根城にバリケードで囲った町で「種豚11号」として飼われていた話をする。

しかし、キルコはジューイチがホラ話をしていることを見抜き追い払うと、その後ろにキル光線のマークの「高原学園」と書かれた場所を見つける。

A-mk3

子どもたちを視察に来た男性らは、「A-mk3」という武器の試作品を園長に見せる。その銃は石や鉄でも撃ち抜くという強力なビームを放つことができた。

ミミヒメは、子どものタラオやアスラらしき影など、他の人が見えないものが見えていた。

園長は副園長に側近の猿渡ではなく、青島を指名する。その後、園長は全体会議にてトキオの妊娠を発表し、「高原学園の根幹をゆるがす緊急事態」という。

【ネタバレ】『天国大魔境』第5巻あらすじ

『天国大魔境』第5巻
© 石黒正数/講談社

高原学園

キルコとマルは、高原学園と書かれた一室に入る。誰かが寝泊まりした様子と学園のマークに似せたトリのマークの落書きがあった。

そこは大災害の前にあった塾のような施設で、資料によると全国に2つの施設と18の分室がある。2人が来たのは「東京上野分室」だった。学園の資料で世の中を「地獄」と表現していることから、学園がその反対の「天国」である線を追い、茨城と奈良にある施設を新たな目的地にする。

分室を出ると、ジューイチが謝罪しにやってくる。彼の種豚の話は本当であり、バリケードの町がキルコたちの目的地である茨城と近いことがわかる。

バリケードの町

キルコとマルは、ジューイチの車に乗ってバリケードの町にやってくる。ジューイチを車に待たせ、マルはカツラを被り女装してキルコと内部に入る。クモの見た目の急速冷却能力をもつ“人食い”に襲われる。

キル光線で体を半分にするが、核のある片方に逃げられてしまう。町はすでに“人食い”に襲われて全滅している様子だった。そこへ、種豚6号と9号がやってくる。彼らは“人食い”に襲われ、ジューイチの息子、十五が夜泣きをしたことで被害に遭わず、居住場所を変えていた。

その夜、居住場所が再び急速冷却に襲われるが、マルの感覚により、発生源が十五であることを突き止め、十五が落ち着くと冷却は収まった。

ジューイチは居住場所に残るといい、キルコとマルは彼が使っていた車を譲り受けて後にする。しかし、ジューイチは十五の母親を殺したと思われる男を殺害し、車を奪って十五を連れて出ていくのだった。

5期生

青島はトキオの妊娠を園長に知らせたことで副園長に抜擢されていた。彼女は付与されたLEVEL4の権限を使って施設内を探索すると、ミーナの近くのひとつのポッドが、LEVEL4権限でも合言葉を要求されロック解除できないものがあった。

学園に5期生として新しい仲間15人が加わる。そしてトキオは自分の子どもを出産する。園長は、トキオの子どもに脳移植としての入れ物にすることを懸けていた。園長はひとまず副園長に抜擢した青島に移り、トキオの子どもが成長してから乗り移ろうとする計画を猿渡に話していた。

ミミヒメは、孤立していたオーマというサングラスをした5期生の子に話しかけ、彼女の涙を拭こうとサングラスを外すと、急にドリルなどが襲いかかり、気絶してしまう。

高原学園茨城施設

高原学園茨城施設の近くにやってくると、栄えた市場になっていた。そこにある復興省の施設で、ロビンがいることを知ったキルコは、大濾過装置という名の高原学園の茨城施設で会う約束を取り付ける。

キルコはマルを残し、一人でロビンに会いに行く。大濾過装置の施設前で、ロビンと再会するキルコ。ロビンはキルコの顔を見て驚く表情を見せていた。

【ネタバレ】『天国大魔境』第6巻あらすじ

『天国大魔境』第6巻
© 石黒正数/講談社

ロビンの本性

桐子の体に春希の体であることに驚くロビンだったが、医者の迫田(さこた)なら可能だという。

ロビンの話では、施設は食用に特化した遺伝子組み換え植物を作っていたらしく、発見されて復興省の力もあり急速に町になったという。装置で水をろ過して沸かせば飲み水になり、同時に発電も行っていた。

ロビンに促されて風呂から上がると、キルコは服を奪われてベッドの上に手錠で繋がれてしまう。ロビンは実験をすると言い、キルコを無理やり犯すのだった。春希は鏡を通して桐子がロビンにレイプされる様子を見させられる。

2日経っても帰ってこないこと心配したマルは大濾過装置へ向かう。そこでキルコが裸で手錠をされている様子を目撃したマルは、怒りでロビンを殴り倒す。殺そうとするが、キルコが「殺さないで」というと、ショックを受けながらもトドメは刺さなかった。

自分のアイデンティティを喪失しかけて傷つくキルコに対し、マルは春希や桐子を認めつつも、自分が好きなのはキルコだと伝える。キルコはロビンの写真を破り捨てるのだった。

ミミヒメとオーマ

ミミヒメはオーマの目を直接見たことで苦手なものの幻覚を見せられて気絶していた。保健室で隣に寝ていたコナに予知の話をすると、コナの姿も“ヒルコ”の姿に見えていた。

その後、謝るオーマに対し、ミミヒメはもう一度彼女のサングラスを外して幻覚を見るが、見事に打ち勝ってみせて彼女を慰める。

指名手配

復興省の人間が大濾過装置に訪れると、ロビンが行方不明となっており、鍵のかかった部屋で人間と化け物が繋がれている状況を発見する。復興省はロビンらとそれに関わったキルコとマルを指名手配する。

復興省の主任は、部下の坂江(さかえ)平馬(へいま)に関西復興省への伝達を命じ、用心棒として竹塚(たけづか)を連れていくように指示する。

テスト開始

子どもたちはプールに呼び集められると、「これから長いテストが始まる」と告げられ、答えに迷った時は自分が正しいと思った方へ進むようにアドバイスする。続けてAIは「外の外に到達することが“ヒルコ”である皆さんの役割です」と言うのだった。

数日が経ったある日、ミーナのシステムがシャットダウンし、高原学園の施設は巨大な振動と共に一部が崩壊する。その衝撃により、2人の赤ちゃんがゴチャ混ぜになり、トキオの赤ちゃんがどちらかが分からなくなってしまう。猿渡はひとまず足に印を付ける。

ミミヒメシロタカアンズの4人は壁に穴が空いていることを発見し、学園の外に出ると、そこにはさらに外の世界があることを知る。

森の中に入っていく4人だったが、ミミヒメとシロがみんなに知らせに戻ろうとするが、道に迷ってしまう。シロはミミヒメを守り、好きな思いを改めて伝えると、ミミヒメは制服のボタンをちぎって渡すのだった。

青島は子どもたちを保護する計画を動き始め、猿渡は印を付けなかった方の赤ちゃんをトキオにコナとの子どもとして渡す。するとそこへ負傷した園長がやってくる。

園長はミーナに指示し、トキオから赤ちゃんを取り上げようとするのだった。

【ネタバレ】『天国大魔境』第7巻あらすじ

『天国大魔境』第7巻
© 石黒正数/講談社

爆撃

トキオから赤ちゃんを無理やり取り上げようとする園長だったが、トキオは拒否すると園長の腕もろとも硬化してしまう。その様子は火葬したタラオから現れた物体と同じだった。

ミミヒメらは青島に保護されるが、彼女は外へ出たのが5人だと言っていた。さらに、高原学園がピンポイントで爆撃されたことを知る。

ヘルム

キルコとマルは車で移動する中、“人食い”と戦闘しているヘルムという少女を助ける。ヘルムは恨みを果たしたい人間を探していて、その人物を、人が集まり生活している空港で見つけたという。キルコとマルはヘルムに協力する。

ヘルムは怜夢(れいむ)という名前で、かつてその男にレイプされたのだった。その復讐として男の下半身を爆弾で爆破し、死ぬまで苦痛を味わわせる地獄夢(ヘルム)を与える。

その後、ヘルムと別れたキルコとマルは、森の中で何者かに接触する。

外の世界

2024年7月17日、園長の指示で、顔のない戦士たちが解き放たれる。そのうち一人は命令に背いて帰ろうするが、仲間から攻撃され、辛うじて生き延びて「帰る…母…トキオ」と言いながら飛び去っていく。

天栄18年7月26日、4期生のマコは、意識不明となっている同期のナタを探していると、ボロボロになった顔のない戦士が施設にやってくるのを目撃する。マコは戦士が落としたレーザー銃を手に取るのだった。

石化したトキオにコナが必死に呼びかける。そこへ傷ついた顔のない戦士がやってくると、戦士は溶けて消え、代わりにトキオと赤ちゃんは石化を解かれる

その頃、高原学園の施設に軍の人間たちがやってきていた。マコは手術台で横たわるナタを発見するも、軍の人間たちに保護される。

その後、ナタは目を覚ますと、三倉まなかという名前になっていた。同じくマコは堀さちおサクヤは八坂なのはと別の名前を付けられていた。しかし、ナタだけが記憶を失っていた。同じく別の場所で、タカやシロ、ミミヒメも名前を変えて外での生活を送っていた

2024年11月11日、大きな地震が発生する。ナタは病室でマコのかばんを見つけ、その中にあったレーザー銃と高原学園のマークを見ると、急に笑い出し、不気味な表情と共に「あきらめません、勝つまでは…」と言うのだった。

【ネタバレ】『天国大魔境』第8巻あらすじ

『天国大魔境』第8巻
© 石黒正数/講談社

天国の時代

地震によって世間はパニックに陥っていた。さちおなのはが、ミクラの病院へ駆けつける。

ミクラは「“あめのぬぼこ”をお迎えしたのは地球の反対側」「人類の時代は終わりました。あなた達の時代…天国の時代を始めましょう」と言う。

地の孤独

キルコとマルは、森の中で遭遇した熊野郎の家族で、山村の神社で生活する一家に招かれる。マルは“ヒルコ”の気配を感じていた。

夜中になり、“ヒルコ”の場所を特定した2人は、敷地内にある洞穴の中を進む。そこには鎖で繋がれた死にかけの“ヒルコ”がいた。熊野郎の祖母は、「鬼のミイラ」と呼び、江戸時代の文献にも記されているほど大昔から祀られていたという。

マルが殺すかどうか質問すると、彼女は断り、「鬼をまつり続けることが生きる希望、ちのこどくが生きる希望」と言う。翌日、一家に新たな生命が誕生していた。

2人は奈良施設を目指して神社を後にするが、マルは何かの気配を感じ取っていた。

両性具有

関西復興省へ向かう坂江と平馬は、竹塚と3人で道中、温泉に入る。そこで、竹塚両性具有であること明かし、「ククとオーマもおんなじだったな」と言う。

あめのぬぼこ

学園崩壊後、自衛隊から身を隠していた猿渡は、学園に残っている生徒たちと暮らしていた。

その後、園長の夫である上仲永吉(かみなかえいきち)が森の中から戻ってくる。猿渡は園長との約束で、ナタに脳移植したことを秘密にし、園長を亡くなったことにする。

その後、数ヶ月が経ち、子どもたちの父親になる決心を胸に、猿渡は日焼けしてたくましい体つきになっていた。

上仲は、1年ほど前に発見された地球に衝突する恐れのある小惑星の存在を、ミーナは24年前に予言していたという。園長の誌乃はそれを信じ、小惑星を「あめのぬぼこ」と名付け、衝突に備えて学園を作ったという。

さらに、惑星の軌道を修正する作戦のひとつを、学園が作った“戦士”たちが襲って潰したと語る。そして、そのテロ行為の拠点制圧として攻撃されたと語る。

そしてその「あめのぬぼこ」は、2024年11月11日午前2時14分に訪れるという。カレンダー上では翌日に迫っていた。

LEVEL5

ミクラは、ミーナにアクセスするために近くの高原学園の分室へ向かう。ミクラは合言葉と問題への回答をクリアし園長としての最高権限(LEVEL5)を取り戻す。

しかし、地震が起きたことで回線が遮断されてしまう。その後、さちおとなのはと共に保存食や物品を確保して今後に備えていた。

高原学園奈良施設

キルコとマルは、足の長い巨大な“ヒルコ”の間を命からがら通り抜ける。

2人は復興省のダンビラ佐藤の案内で、関西復興省である高原学園奈良施設の跡地へ訪れる。巨大な“人食い”は「アンジュラス」と呼ばれていて、キルコとマルは“ヒルコ”対策に協力することで復興省から食料と寝場所を提供される。

キルコは、“人食い”が町にやってくる前に、町の中でマルと同じ顔の人物を探そうと計画する。その後、キルコとマルが町で食事をしているところに、竹塚らがやってくるのだった。

タカとミチカ

オーマミチカが食料を調達して部屋に戻ると、そこにはアザの病気を発症したククが横になっていた。ミチカは近くにいる黒い“ヒルコ”と戦いたいが、一人では無理だと感じていた。

高原学園の上野分所跡では、南方弥刀(みなかたみと)=タカと、梅津乃亜(うめずのあ)=アンズ星尾あかり(ほしおあかり)=ミミヒメ宇佐美俊(うさみしゅん)=シロの4人は一緒に生活していたが、弥刀と乃亜が結婚し出ていくことを決める。

時が経過し、ククは亡くなり、オーマとミチカは海葬する。その後、2人は子どもを連れたタカと出会うのだった。

ミチカは“ヒルコ”を倒そうと持ちかけるが、タカは乗り気ではない様子。しかし、ミチカが一人でも倒しに行こうとしていたため、タカは翌日の朝に約束を取り付けるのだった。

ネタバレあり

以下では、現行の単行本8巻以降の展開に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

【ネタバレ】『天国大魔境』第9巻あらすじ

『天国大魔境』第9巻
© 石黒正数/講談社

50話「ミチカ(2)」

“ヒルコ”狩りを約束した朝になり、タカはミチカと集合する。タカは“ヒルコ”に手を出さないように伝えるが、ミチカには通じない。危険と判断したタカはミチカを刀による“視えない斬撃”で殺そうとするが避けられる。

2人は激しい戦闘を行い、タカはミチカの片腕と首の一部を斬るが、気を抜いたところでミチカからの反撃をくらい、2人は血だらけで地面に倒れ込む。

その様子を見ていたオーマが号泣していると、近くと通った竹塚という名の女性グループに保護される。タカは死亡し、ミチカは虫の息だった。


キルコとマルが食事しているところに竹塚(ミチカ)が無理やり入ってくる。マルのことを“ヒルコ”だと言い、戦闘を申し込む。断るマルだったが、キルコに危害を及ぼそうと挑発したことで、戦いに応じることに決める。

竹塚の胸ぐらを掴んで殴りかかるマルだったが、一瞬にして仰向けになり、5発も殴られた感覚があるが全く攻撃が見えなかった。マルはキルコに竹塚が“ヒルコ人間”であることを知らせ、能力に気づいたように「こいつ…時間を止めるぞ」と言う。

50話のポイント

タカが「乃亜に手は出させねぇ」と言っていたことから、アンジュラスになった“ヒルコ”はアンズであることが想像できます。また、ミチカの分析によると、タカの能力が“視えない斬撃”2呼吸おきの攻撃という点からも、『天国大魔境』で一番最初に登場した鳥型の“ヒルコ”はタカであることはほぼ間違いないでしょうね。タカの死因がミチカとの戦闘だったのは意外でした。生徒同士で殺し合うのは悲しいです。

タカが“ヒルコ”になったことを考えると、病死ではない経緯でのヒルコ化がある可能性も考えられますね。

51話「ミチカ(3)」

マルはミチカに圧倒的なスピードで殴られて敗北しただけで、時間を止めた訳ではないことに気づく。

復興省のダンビラ佐藤は、町で隠れて賭博などで稼ぐ人間を黙認する代わりに、みかじめ料を徴収している様子。その後、キルコとマルは佐藤に話しかけられ、復興省の人間らに襲撃された話を伝える。

佐藤は、マルが戦ったのは竹塚ミチカで、関東復興省が雇っている暗殺者だという。2人は話を聞くためにも佐藤を連れてミチカに接触する。ミクラについての情報を聞き出すはずだが、マルは戦って勝ったらという条件を自分から提示する。

佐藤に言われて町から離れた倉庫に場所を移し、マルとミチカは再び戦い始める。2人の様子を見守るキルコは2人が似ていると感じていた。

51話のポイント

ミチカは時を止める能力(ザ・ワールドか!)ではなく、素早く動けて強いだけでした。ちなみにダンビラ佐藤の「ダンビラ」とは幅広の刀のこと。昔やんちゃしてたんでしょうね。扉絵では、瀕死のミチカとオーマを引き取ったのが竹塚一家(竹塚あけみ、拝羽祥子、荒川しず江)の3人だと分かりました。その背景でミチカは現在軸では竹塚姓で呼ばれているのでした。

52話「ミチカ(4)」

タカとミチカの戦闘の後、竹塚一家に引き取られたミチカとオーマ。

その頃、海中で海葬されたククの体が魚型の“ヒルコ”に変貌する。意識不明だったミチカはククの気配を感じて目を覚ましていた。


マルとミチカは激しい近接戦闘を繰り広げる。2人とも互角で、全力を出して戦うことを楽しく感じていた。

関西復興省の今永主任らは、封印部隊を出動させてアンジュラスに祈るが効果は見られず、ジワジワと町に進んでいる様子だった。

マルとミチカは2人ともボロボロになっていた。それでも戦おうとするマルの姿勢にミチカは負けを認めてその場を去っていく。ミチカは“ヒルコ”だからマルと戦いたかっただけで、ミクラに関する情報は何も知らなかった。

マルはミチカが立てたのに自分は立つこともできないことで、実質的な敗北を感じて悔し涙を流していた。

その後、復興省に戻ってくると、佐藤が医者の迫田先生からもらったという薬を持ってくる。キルコは迫田という名前を聞いて驚く表情を見せ、額に傷のある男かどうか質問する。

町の一角に迫田がロボットと共にいることが判明する。

52話のポイント

ククが魚型の“ヒルコ”であることが確定する描写が描かれていました。物語の中では人間が“ヒルコ”に変貌する描写は初となります。また、関西復興省の主任の名前が「今永」でした。彼女は高原学園の出資者であり園長の盟友・今永美咲の娘で副園長の青島裕子(今永美月)であることが推測できます。そしてキルコは探していた写真の医者、迫田医師にようやくたどり着きました。

ちなみにマルがミチカとの戦いで着ていたTシャツには「Retaliate when done.(やられたらやり返す)」と書かれていました。あえて着ていったのだとしたら可愛いですね。

53話「迫田照彦」

アンジュラスが町から数キロ圏内に近づき、町では早めの避難を呼びかける放送が行われる。

キルコは町にある「迫田医院」を訪れると、ロボットの受付を済ませるが、迫田の姿を見ると姉・桐子にしたことを思い出して感情的になって蹴りかかる。

その後なだめられ、キルコが浅草でのことを話すと迫田は思い出し、元気そうなキルコの姿を喜ぶのだった。

迫田は、桐子と春希2人共死にゆくよりも、せめて1人を救う方法として「体移植」したという。迫田の話では、桐子は運ばれた時点で脳に重症を追っており、銃による弾痕があったという。

それを聞いたキルコはマルに髪を乾かしてもらっているときに頭の一部がハゲていると言われたことを思い出す。

さらに、“人食い”についてのウワサの件は、“人食い”を安全に閉じ込める方法や、周りの被害を抑える方法を現在でも考えているのだった。キルコは迫田が良い人であると理解し、写真を手渡してその場を後にする。

キルコは自分の旅の目的(ロビン、医者)を果たし、どちらも自分が見たものがウソだったことにショックを受けていた。残る目的はマルだけとなっていた。

その後、佐藤から一服の誘いを受けたキルコは、話の中でアンジュラスが予定を早めて4日ほどで町に来る可能性があることを知る。

復興省の立場上、避難命令を出して何も起きなかったら責任問題になるため、強く言えない事情があった。

キルコは隣で行っている生放送中のラジオに飛び込み、無理やり避難命令を放送する。町民たちは慌てて逃げ出し始め、キルコは自分のしたことが正しいと感じて行動する。

53話のポイント

キルコの追っていた医者(迫田)と高原学園の猿渡照彦は同一人物でした。彼は学園崩壊後、ミチカら一部の生徒たちと学園に残って生活していましたが、その後が描かれておらず、闇落ちしたかと想像していましたが良い人でした。一方、桐子は浅草で何者かに銃撃されたと判明。ロビンは以前にキルコの姿を見て驚く表情を見せていて、その時のキルコが思い出す描写の効果音が銃声のような「パーン」だったので、ロビンが怪しいですね。

54話「アンジュラス(1)」

キルコはマルの夢を見ていた。夢の中のキルコはマルに近づくと、キル光線を撃つ素振りを見せていたが、後ろから何者かに名前を呼ばれて目を覚ます。

怪我したマル眠ったままで、見張りがいなくなった復興省の中を探索すると、大天災前の植物の種や、“人食い”のような生物を保管している研究施設があった。

その後、外に出ると、ダンビラ佐藤ら復興省の警備部の人間たちが町に近づくアンジュラスを止めるために出動しようとしていた。

マルが3日ぶりに目覚めると、2人もアンジュラス退治に出向くことにする。その道中、迫田医師(猿渡)に遭遇。すると、迫田はマルを「ヤマトではないか」と尋ねる。

マルの名前を聞いた迫田は、自分がトキオの片方の赤ちゃんの足に丸を書いたことを思い出していた。迫田はヤマトとマルがトキオの2人の子どもであり、マルが世界崩壊で行方知らずになっていたことをトキオは知らず、迫田も10年近く会っていないという。

3人が共通の目的であるアンジュラスのもとへ向かうと、復興省の人間たちが苦戦しながら戦っていた。迫田は主任の青島と合流し、マルをトキオの子どもだと知らせる。

すると青島のそばにいた巫女は「ヤマトだけどヤマトじゃない、どの道僕らの敵だ」と言う。そんな中、キルコとマルはアンジュラスの元へ歩いていく。

54話のポイント

冒頭、夢の中のキルコがマルに銃を向けているのは今後の展開を想像させます。迫田(猿渡)とマルが対面し、マルがトキオの2人の子どもの1人だと告げられました。もうひとりの子どもの名前はヤマトで、どちらが実子なのかは不明。猿渡はアンジュラスを「アンズ…ラス」と言っていましたのでアンジュラス=アンズであることはまず間違いないですね。今後、マルと戦うことになる予感がするエピソード。

55話「アンジュラス(2)」

キルコとマルはアンジュラスを分析しながら対策を考えていた。アンジュラスの放電する8本足に触れると体内に取り込まれてしまう。

迫田は鏡なら電撃を跳ね返せると言い、アンジュラスに捨て身で突っ込んでいく。しかし、鏡は役に立たず、迫田は触手に取り込まれていく。

迫田は世界を滅ぼしてしまうかもしれない自分の責任を感じ、服の中に隠していた手榴弾を爆発させる。

アンジュラスは爆発で倒れ込み、その隙にキルコはキル光線を4発撃ち込み、マルがマルタッチでアンジュラスの核を捉えるも、引き戻されてマルはアンジュラスの触手に捕まってしまう。

55話のポイント

キルコとマルvsアンジュラスが始まりました。迫田は自らの責任を感じて道連れで倒そうとして爆死しました。復興相にいた巫女の名前がモモイカであることが明かされました。迫田が船山孤児院の園長が大阪にいるかもしれない話す伏線があったので、今後登場しそうです。

迫田がキルコとの写真をデスクに飾っていたり、今永(青島)が「猿渡先生」と叫んでいたのも印象的。

【ネタバレ】『天国大魔境』第10巻あらすじ

『天国大魔境』第10巻
© 石黒正数/講談社

第56話「青島裕子」

マルはアンジュラスの触手に捕まり、本体に飲み込まれそうになっていた。マルは飲み込まれて体が分解されるよりも先にアンジュラスの核を潰そうと考える。

すると、マルの取り込まれていた触手が竹塚ミツカによって斬り落とされる。ミチカは頭から角が生えて目が黒くなり、腕から刃物を生やした状態になっていた。ミチカの“取っておき”によってマルは助け出され、その勢いでアンジュラスの核を握り潰すして倒す。

アンジュラスは消滅し、復興省の封印部隊によって討伐されたと住民たちに伝えられる。

その後、キルコとマルは青島裕子と会話をする。

青島の話では、マルがトキオとコナの双子の子供の1人であり、もうひとりの子供・ヤマトは行方がわからない状況で、一時期はトキオとコナと一緒に九州北部に住んでいたという。

青島はマルの持つ薬やミクラについては知らなかった。一方で、ヒルコ化する病気について、高原学園「いずくのえ島施設」で生まれた子供だけがかかる奇病であると明かす。

「いずくのえ島施設」は学園関係者から「天国」と呼ばれており、集団生活になじめない子供たちをサポートする目的だったが、中枢の施設ではあらゆる差別を排した理想郷を作る思想が生まれ、その過程で大災害が起きたという。

その夜、キルコが生理痛に苦しむ中、マルは思いを巡らせていた。

56話のポイント

竹塚ミチカの助けもあり、ついにアンジュラスを倒しました。ミチカが“取っておき”と呼ぶ必殺技は、部分的にヒルコ化できる能力という感じですかね。

そして、「天国」の正体が明かされました。トキオたちがいた施設は「いずくのえ島施設」という名前でした。キルコとマルの旅の目的と、これまでの内容が答え合わせのように繋がっていき、いよいよ終盤に近づいている印象です。

第57話「“人食い”」

キルコとマルは、青島裕子から高原学園の高度AIミーナの話を聞いていた。ミーナは生きた人間と接続し、データを学習することで、人間離れした超人を生み出せるようになっていた。

ミーナの人口子宮によって性の概念を持たない新人類が生み出され、彼らが暮らす理想郷として「天国=いずくのえ島施設」が作られた。理想郷は大災害をきっかけに拡大していく予定だったという。

高原学園の奈良と茨城の施設は、大災害後の天国の拠点とするはずだった。しかし、怪物になる病気が発症し、混沌と化してしまった。青島は、高原学園が招いた事態の責任を取るため、猿渡とともに2つの拠点を復興省として立ち上げた。

謝罪する青島に対し、キルコは「勝手に僕らの時代を哀れむな…!」と伝える。一方、マルは自分の生い立ちが明らかになっていくものの、実感がわかず、キルコとの旅が終わりに近づいていることだけを感じていた。

後日、関西復興相を出ていく2人に、佐藤や青島の計らいで、猿渡と一緒にいたロボットを車(きるこ丸11号)に設置してもらう。ロボットは「ヤマトの住んでいた場所」「いずくのえ島」の場所がわかるため、道案内に最適だった。

ロボットは、自分の名前を「ナタ」だと明かす。

一方その頃、竹塚ミチカと坂江と平馬(復興省の職員)は、キルコとマルの2人を捕まえられなかったとして、茨城復興省へ戻ろうとしていた。

57話のポイント

第57話では、ミーナと高原学園の関係が明らかになってきました。学園の子どもたちは、ミーナの人口子宮によって生まれた超人でした。キルコの無反応に驚いていた青島でしたが、ゲノム編集による超人問題は、「トランヒューマニズム」「優生思想」など、現実社会でも議論されています。映画『ガタカ』に通じるものがありました。

関西復興省編が終わりましたが、青島と猿渡、佐藤やミチカなど、振り返ってみると、思った以上に根は良い人ばかりだったのもいい話でした。青島も猿渡も、いろんな葛藤がありながらも、起きてしまった事態に真摯に対処していたのだと、余白を想像できます。一方で、そんな崩壊前世代の大人に対してキルコが「勝手に哀れむな」と言うところは、とても胸に響く名場面でした。

そして、猿渡の迫田医院にいたロボットが「ナタ」であることが判明。ナタといえば、園長に「三倉まなか」として体を乗っ取られた人です。彼女の脳をバックアップしてロボットにインストールした感じですかね。キルコとマルに同行することになり、今後のキーマンになること間違いなし。いよいよ次号からは新章突入!

第58話「稲崎真凛」

2019年4月1日。国会議員の宇刈(うかり)議員が未成年をレイプし、その後始末として“便利屋”のトールらが遺体を処理した。

トールは便利屋業の親分である“弓月(ゆづき)のオヤジ”から、社会的弱者を利用して金儲けするための支援団体を作るようにアドバイスされる。


キルコとマルは、住居跡で雨宿りしていた。キルコはヤマトの家を探す途中で、大阪に寄りたいとマルに伝える。


2024年6月12日。中学生の藁山華(わらやま はな)は、下校中に好意を寄せる同級生の稲崎を公園で見つけて声をかける。

稲崎は、忙しい両親に代わって幼稚園児で妹の真凛(まりん)の面倒を見ていた。華は真凛に誘われて稲崎の家に一緒に帰っていく。

稲崎家の大きさに驚く華は、家の前で家政婦の市原に出会う。華は、稲崎が自分に興味がないことにショックを受けながらも、稲崎に関われたことを前向きに捉えていた。

58話のポイント

いよいよ新章突入!いきなり議員が未成年をキメセクして遺体を処理するという過激な描写から始まりました。

ロビンの子供時代が描かれていましたね。ロビンには真凛という妹、そして市原という家政婦がいることが明らかになりました。時系列も重要なポイントです。

ロビンは鍵のかけた部屋で茨城の復興省でヒルコと人間の女性と繋いでいましたが、あれはもしかすると真凛なのか…?トールはダンビラ佐藤っぽいですがどうなのかな…。

新キャラ(?)の華の一人劇場が面白すぎて笑いました。キルコの絶望的なネーミングセンスは相変わらず。反対に、家政婦を市原と名付ける石黒先生のネーミングセンスに笑います。今後はトールが成り上がっていくようです。

第59話「あめのぬぼこ」

キルコとマルは、ナタの案内で船山孤児院の手がかりを掴むために高原学園大阪分室を目指していた。そんな中、盗賊フクロウ団という者からの手紙に引き寄せられた4人の盗賊と接触する。

キルコは上手く話を合わせて荒れた市街地の迷路に案内すると、ある一軒家からキルコたちを「新天国の不良」と呼ぶ女性が現れる。


2024年11月1日。トールは社会的弱者の支援団体を装い、生活保護を不正受給させて手数料を得る闇稼業をしている。ある時、親分の弓月に呼び出されると、不正受給者に接触して生活を立て直させようとする虹本という弁護士の存在が邪魔であり、虹本一家を殺すように命じられる。

2024年11月10日。トールは虹本の家に向かい、妻と息子を殺害するが、気が動転していた。その頃、ロビンとマリン、家政婦の市原はロビンの誕生日を祝っていた。

2024年11月11日午後2時14分。トールは帰宅した虹本を殺害する。

59話のポイント

キルコとマルが出会う女性、「新天国」とは何を意味するのか。市原がテレビ通話で話してた女性は誰なのか。なぜタイトルが「あめのぬぼこ」なのか。トールとロビンたちがどう絡んでいくのか、様子を見るしかないもどかしさがありました。

ロビンたち幸せな瞬間の裏で起きているトールの殺害描写が妙にリアルで怖かった。早く続き読みたい…!

第60話「まんが道(1)」

深夜の関西に大きな地震が襲い、慌てて虹本一家を後にしたトールは、虹本家に返り血の付いた服を忘れてきたことに気づき、深夜に人々が外に出てきて、「全部終わりだ」と焦燥感に駆られる。


キルコとマルは、4人の盗賊たちの案内で「新天国の不良」と呼ぶ女性の家を訪ねる。盗賊たちは、彼女の持つPCゲームのデータを手にすると喜んで帰っていく。

彼女は「片桐ポルカ」というペンネームで活動する漫画家で、「新天国」が、大阪の豊中にある不良外国人に占拠された「旧天国」を追われた人間たちが作った町だと明かす。

新天国は町の守りが堅く、商業区に出入りするには審査を経て「ゲスト」となるしかないという。ポルカは新天国で発行されている冊子に漫画を卸しており、毛沼五作(けぬまごさく)という漫画家に影響を受けて漫画を書き始めていた。

キルコとマルは、盗賊たちと待ち合わせしていた「フクロウ団」の人間に接触し、キルコは、漫画と不良たちに書いた手紙のの筆跡が一致することから、フクロウ団が毛沼五作であることを突き止める。

毛沼五作は、自分の不調とは裏腹に弟子のポルカの漫画が順調であることで、嫌がらせをしようと考えていた。キルコは新天地に船山孤児院の院長がいることを知り、会わせるように頼むが、毛沼は代わりに、「ベータボーイ」という漫画を持ってくることを交換条件にする。毛沼五作が覆面を外すと、眼鏡をかけた美人な女性だった。

60話のポイント

60話は、タイトル通りに漫画家のエピソードとなっていました。本編にそこまで関係なさそうなエピソードにも思えますが、ポストアポカリプスにおける文化の重要性という意味で、石黒先生の漫画家としての矜持を感じさせるエピソードでした。とはいえ、トールの物語が一体どのように接続していくのかが全く予想できません…!

第61話「まんが道(2)」

キルコとマルは、漫画を探すために廃墟デパートの本屋に向かうが、本屋は浸水しており、網状に広がって電撃を繰り出すヒルコがいることを知り、危険を感じて撤退する。

2人は戻る途中で偶然、古本屋を発見し、運良く「ベータボーイ」の漫画を手にする。一方、キルコは地図を手にし、ナタが言っていた位置にあるのが鹿児島沖の「烏之衣島(いずくのえしま)」という島であることを知る。

キルコとマルは、毛沼五作に漫画を渡し、彼女の権限で面会する機会を手にして、新天地の敷地の前にやってくる。そして、面会に呼ばれた船山通(ふなやまとおる)の姿が現れる。

61話のポイント

前話に続いて、漫画家エピソード。文明崩壊前後で、漫画という文化が次なる作家へ数珠繫ぎのように受け継がれる様子が描かれる…と思いきや、毛沼五作が盗作の漫画家だったことをサラリと描いています。笑

キルコとマルは、デパートで電撃を出すヒルコに遭遇しました。さらに、学園の場所「烏之衣島(いずくのえしま)」が鹿児島であることが判明し、キルコは徐々に近づいてきていることがわかります。

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