今回ご紹介するドラマは『理想のふたり』です。
本記事では、ネタバレありで『理想のふたり』を観た感想・考察・あらすじまで、相関図を含めてわかりやすく解説します。
メロドラマとミステリーの要素が見事にかけ合わさった面白いドラマでした!
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『理想のふたり』作品情報・配信・予告・評価
『理想のふたり』監督・原作
監督:スサンネ・ビア
名前 | スサンネ・ビア |
生年月日 | 1960年4月15日 |
出身 | デンマーク・コペンハーゲン |
『理想のふたり』の監督はデンマーク出身の映画監督スサンネ・ビア。2004年の家族や戦争の影響に焦点を当てた『ある愛の風景』で深い人間ドラマや心理描写が評価され、2010年の『未来へ生きる君たちへ』は、アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、彼女の名前をさらに世界に広めました。
原作はアメリカの小説家エリン・ヒルダーブランドの同名小説。彼女は「本が売れない」と言われる昨今でも、出版するたびにベストセラーを生み出し続けています。2000年から2022年までに32作の小説を出版し、近年の作品のすべてが全米No.1となるベストセラーを記録。多作でありヒットメーカーという類まれな才能を持っています。
そんなヒルダーブランドが住む場所、アメリカ・マサチューセッツ州のナンタケット島が本作の舞台となります。州都ボストンから南へ50kmの大西洋上に位置しており、富裕層に人気の高級リゾート地として知られています。
相関図・キャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
グリア・ギャリソン・ウィンバリー(ニコール・キッドマン) 有名な小説家。タグの妻。 | |
タグ・ウィンバリー(リーヴ・シュレイバー) グリアの夫。 | |
アビー・ウィンバリー(ダコタ・ファニング) トーマスの妻で妊婦。 | |
アメリア・サックス(イヴ・ヒューソン) ベンジーの妻で結婚式の花嫁。 | |
ベンジー・ウィンバリー(ビリー・ハウル) ウィンブリー家の次男。結婚式の花婿。 | |
メリット・モナコ(メーガン・フェイヒー) アメリアの親友。 | |
シューター・ディヴァル(イシャーン・カター) ベンジーの親友。 | |
トーマス・ウィンバリー(ジャック・レイナー) ウィンブリー家の長男。アビーの夫。 | |
ウィル・ウィンバリー(サム・ニヴォラ) ウィンブリー家の三男。 | |
ダン・カーター(マイケル・ビーチ) ナンタケット警察の署長。クロエの父。 | |
クロエ・カーター(ミア・アイザック) ダンの娘。 | |
ニッキー・ヘンリー(ドナ・リン・チャンプリン) 事件の捜査のためにやってきた刑事。 | |
イザベル・ナレット(イザベル・アジャーニ) ウィンブリー家の友人。 | |
ゴーシャ(イリーナ・デュボヴァ) ウィンブリー家の家政婦。 | |
ロジャー・ペルトン(ティム・バグリー) アメリアとベンジーのウェディングプランナー。 |
ネタバレあり
以下では、Netflixドラマ『理想のふたり』の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ感想】濃厚なメロドラマとスパイス程度のミステリー
(C)Netflix
Netflixドラマ『理想のふたり』は、裕福で世間から羨まれるウィンバリー一家の結婚式前夜に起きた殺人事件をきっかけに、家族の表面的な輝きが徐々に剥がれていく様子を描いた作品です。
有名なミステリー作家グリア(ニコール・キッドマン)とその夫タグ(リーヴ・シュレイバー)は、世間から「理想の夫婦」と思われています。2人には3人の息子、トーマス(ジャック・レイナー)、ベンジー(ビリー・ハウル)、ウィル(サム・ニヴォラ)がおり、次男のベンジーは動物園の飼育員アメリア(イヴ・ヒューソン)と結婚する予定です。
アメリアは、ウィンバリー家とは対照的な質素な家庭に生まれ育ったため、この裕福な家族の一員になること、特に姑となるグリアとの関係に不安を抱いていました。グリアは自身の名声と家族の社会的地位を重んじ、家族には常に完璧な振る舞いを求めていたのです。
グリアとアメリアの間には確執がありましたが、結婚式前夜のディナーでは多くの招待客が集まり、皆が笑顔で乾杯し楽しい時間を過ごします。しかし、その夜に起きた殺人事件を機に、ウィンバリー一家の隠された真実が次第に明らかになっていきます。
物語は『ビッグ・リトル・ライズ』と『ホワイト・ロータス』、さらに『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』の要素を掛け合わせたような雰囲気を持っていますが、その成分はメロドラマがたっぷりで、ミステリー要素はスパイス程度に盛り込まれています。
ウィンバリー家の誰にも共感できないものの、説教じみたメッセージ性を押し付けることなく、ドロドロしたメロドラマと適度なユーモアが楽しめる作品となっています。特に、登場する男性たちがグリアの財産に依存するヒモ男ばかりである点が印象的でした。
一方で、本作の魅力は女性キャラクターにあります。主演のニコール・キッドマンは、Amazonオリジナルドラマ『エクスパッツ』で香港の駐在員として生活する女性たちの複雑な人間関係を描いた役柄でも秀逸な演技を見せましたが、本作でもその力を存分に発揮しています。ウィンバリー家の家長グリアとして、パブリックイメージを守るために内なる感情を抑えている彼女の姿は非常に印象的です。
グリアとは対照的な存在がアメリアです。彼女を演じるイヴ・ヒューソンは、U2のボーカル、ボノの娘として知られています。Netflixドラマ『瞳の奥で』での演技も評価が高く、その影響で、彼女の役柄に何か裏があるのではないかと疑ってしまいますが、アメリアは一貫して純粋なキャラクターとして描かれています。
アメリアの親友メリットを演じるのは、エミー賞受賞作『ホワイト・ロータス』シーズン2に出演していたメーガン・フェイヒー。本作とも似た雰囲気を持っており、彼女のキャラクターは『ホワイト・ロータス』からそのまま持ってきたように感じられるほど、親しみを感じさせます。
また、捜査官コンビであるニッキーとダンも物語にユニークさを加えています。特にドナ・リン・チャンプリンが演じるニッキーは、特権階級に関心がなく、飾らない性格が物語にユーモアを添えつつ、緊張感を和らげながらもじわじわと真相に迫っていく姿が見事でした。
アビー役のダコタ・ファニングは出番こそ少ないものの、ウィンバリー家に嫁ぎ、金のためにルールを受け入れる図太さをサラッと演じており、その冷静さが逆に印象に残ります。
そして、フランスの大女優イザベル・アジャーニがそのまま「イザベル」という役名で登場するのも、皮肉たっぷりで笑えるポイントです。メーガン・トレイナーの「Criminals」に合わせてキャスト全員がダンスをするオープニングシーンは、物語とは別の世界線のような幸福感があり、毎回見るたびに中毒性がありました。
昨今では「イート・ザ・リッチ(金持ちを食う)」のテーマが多くの作品で見受けられますが、本作は変に説教じみた社会批判をせず、メロドラマとミステリーのエンターテインメントに徹している点が、このドラマの魅力と言えるでしょう。
実際に、Netflixのインタビューによると、オープニングシーンでダンスを取り入れるアイデアはNetflixのヒットドラマ『ウェンズデー』でジェナ・オルテガがザ・クランプスの「Goo Goo Muck」似合わせて踊ったことにインスパイアされているようで、「このドラマが誇張された現実であり、観客は楽しんでいい」という役割を果たしていると明かしています。
ラストシーンのダンスはオープニングとは異なるバージョンになっていて、監督のスサンネ・ビアも参加しています。狙ったものかはわかりませんが、ダンス後に監督と女性キャストが肩を組んで円になる様子も良い余韻を残してくれました。
以下では、物語のあらすじを深堀りしていきます!
事件の被害者は誰だったのか
(C)Netflix
第1話の最後で、殺人事件の被害者がアメリアの親友であるメリット(メーガン・ファヒー)であることが明かされます。アメリアにとって、ウィンバリー家の中で窮屈さを感じる中、メリットは本音を打ち明けられる唯一の相手であり、彼女の存在は大きな支えでした。
メリットは明るく社交的で、男性からも注目を集めていましたが、決して「ビッチ」ではなく、恋愛に対しては慎重な性格でした。アメリアが結婚に対して不安を抱くと、メリットは親友として的確なアドバイスをし、彼女の選択を尊重して勇気づけていました。
そんなメリットが遺体で発見され、最初にその現場に駆けつけたのはアメリアでした。事件当夜、二人は口論をしており、その後メリットが亡くなったことで、アメリアは強いショックと後悔を抱えることになります。さらに、メリットの体内から睡眠薬の成分が検出され、自殺が疑われますが、アメリアは彼女が自殺するはずがないと信じていました。
捜査が始まると、刑事のニッキー・ヘンリー(ドナ・リン・チャンプリン)とナンタケット警察署長のダン・カーター(マイケル・ビーチ)が担当し、アメリアはウィンバリー家が事件に関して沈黙を守ろうとする姿勢に反発します。グリアが家族全員にNDA(秘密保持契約)への署名を強制しようとした際、アメリアはグリアとタグがメリットの殺人に関与しているのではないかと疑い、署名を拒否し、警察に協力することを決意します。
実は、アメリアとメリットの口論の原因は、メリットがタグと不倫関係にあり、彼の子供を妊娠していることをアメリアが知ったためでした。メリットはアメリアの結婚式準備中にタグと出会い、彼が親友の義父であるにもかかわらず、その魅力に惹かれてしまったのです。妊娠は二人にとって予期せぬ出来事でしたが、タグは当初それを喜んでいるように見せていました。しかし、次第に彼の優しさが見せかけに過ぎないことが明らかになっていきます。
タグとメリットの不倫とグリアの選択
(C)Netflix
物語が進む中で、グリアはタグが宝石店で購入したブレスレットの領収書を見つけ、それをメリットが身につけていることに気づき、二人の不倫を疑い始めます。しかし、これがグリアにとってタグの浮気を知る初めての出来事ではありませんでした。彼女はこれまでにも、タグの放蕩ぶりにうんざりしながらも、家族や社会における「パーフェクト・カップル」というイメージを守るため、彼の浮気を黙認してきたのです。タグが最終的には自分のもとに戻ってくると信じていたため、その問題を封じ込めていました。
今回は違いました。グリアはタグではなく、メリットに対して彼の浮気性を打ち明け、彼との恋愛が成就することはないと忠告します。さらに、彼女はついにタグの尻拭いに嫌気が差し、警察にメリットとの不倫を証明する領収書を提出します。
捜査を進めるニッキーとダンは、メリットがタグとの不倫で妊娠していたことを知り、それがウィンバリー家の評判に深刻な打撃を与える可能性があると考え、タグを殺人の容疑者と見なして事情聴取を開始します。
警察署に連行されたタグは、殺人の疑いを否定し、睡眠データを記録していたスマートウォッチを提出します。彼はそのデータを用いて、メリットの死亡時刻には寝ていたと主張しました。また、事件の夜、メリットと子供を産むかどうかで口論になったものの、衝動的に入水自殺を図ろうとしたメリットを止めたと明かします。
一方、警察はタグの睡眠データに矛盾がないことを確認しながらも、さらに詳しく解析を進めた結果、普段タグと一緒に寝ているはずのグリアが、その夜に寝ていなかったことを突き止めます。これにより、事件の真相に新たな疑念が生じ、捜査は予想外の方向へ進展していくことになります。
ブロデリック・グレアムとは誰か?グリアとの関係は?
事件の夜にグリアがタグと一緒に寝ていなかったことに気づいたニッキーは、彼女のオフィスの通話記録を調べ、グリアがメリットの殺害推定時刻の直前にブロデリック・グレアム(トミー・フラナガン)という人物と電話していたことを突き止めます。グレアムは過去に複数の前科があり、インドのムンバイからヘロインを運んでいるトルコ系マフィアとの関係が明らかになります。
さらに、シューター(イシャーン・カター)という人物が30万ドルをグレアムに送金していたことを突き止めたニッキーは、グリアがタグを通じてグレアムにメリットを殺させたのではないかと推理します。彼女が家族やウィンバリー家の名誉を守るためにメリットを排除しようとしたと考えたのです。
その後、警察署で尋問を受けたグリアは、シューターが実は息子のような存在であることを告白します。さらに、ブロデリック・グレアムが実の兄であり、彼がギャンブル中毒で莫大な借金を抱えていたため、グリアが何年もその肩代わりをしていたことも明かされます。シューターはただ事情を知らずに送金をしていただけで、犯罪には関与していないことが判明しました。
この供述により、ニッキーとダンはこれまでの推理が誤りだったことを悟り、捜査は振り出しに戻ります。グリアの背後に潜む家族の複雑な事情が浮かび上がる中、真犯人の手がかりは再び霧の中へと消えてしまうのです。
グリアとタグの過去
(C)Netflix
警察署から戻ったグリアは、家族や担当編集者たちの前で兄ブロデリック・グレアムを紹介し、彼が実の兄であること、そして自分の過去について打ち明けます。グリアはかつて高級娼婦として働いており、その時、グレアムが客集めをしていました。その顧客の一人が、現在の夫であるタグでした。
タグは裕福な家庭に生まれながらも、ギャンブルで財産を失っており、グリアが作家として成功すると、彼や3人の息子たちはほとんどグリアの収入に依存するようになりました。グリアは、自分が執筆した小説のキャラクターが自分とタグを反映していると主張し、その「理想のふたり(Perfect Couple)」というイメージを守るために、全力を尽くしてきたのです。
しかし、実際の夫婦生活は理想とはかけ離れたものでした。グリアは自らの過去やタグとの関係が公になることを恐れ、外向きには完璧な夫婦を装い続けていました。それを知っていたタグは、グリアが自分からそのイメージを壊すことはないと確信し、好き勝手に振る舞っていたのです。特に、グリアの新作出版記念パーティーで酔ったタグが乱れたことや、警察に容疑者として疑われたことが契機となり、グリアはついに見せかけの理想を演じることに限界を感じます。
すべてを打ち明けたことで、グリアは家族の驚きにもかかわらず、自ら解放された気持ちになります。そして、この過去を隠さず、自分の物語をありのまま本にする決意を固めます。これまで築いてきた虚構のイメージを手放し、本当の自分を取り戻す瞬間を迎えたのです。
真犯人の正体と殺人の動機
(C)Netflix
最終話の終盤で、ついに事件の真相が明らかになります。アメリアはメリットの死後、ウィンバリー家の人々を疑いの目で見ますが、唯一彼女を気遣ってくれたのはトーマスの妻、アビーでした。
アビーは、アメリアと同じくウィンバリー家に嫁いだ立場でしたが、グリアが強いる家族の風習に喜んで従っていた一方、アメリアはそれに馴染めずにいました。しかし、アビーは心の奥底でアメリアとメリットの友情に嫉妬していました。ウィンバリー家の一員となり裕福な暮らしを手に入れたものの、彼女の周囲には気取った友人ばかりで、真の友人はいなかったからです。
さらに、出産を控えたアビーにとって、トーマスが家族の信託金を手にすることは子供の未来にとっても重要な課題でした。そんな中、メリットの妊娠が発覚し、それが家族のバランスを崩す恐れがあることを知ったアビーは、事態を自分で解決する決意を固めます。トーマスは自分の問題を放置し、不倫に夢中だったため、アビーは自ら行動に出たのです。
事件の夜、アビーは海辺で傷心のメリットに近づき、トーマスがアメリアの母から盗んだ睡眠薬をオレンジジュースに混ぜて彼女に飲ませました。そして、男性に対する不満を共有し、共感を装いながら、メリットを一緒に泳ごうと誘い、薬が効いて動けなくなった彼女を水中で押さえつけて溺死させたのです。
ニッキーとダンは、アビーが「事件の夜、トーマスはベッドにいた」と主張していたことに不自然さを感じ、彼女が嘘をついていることに気づきます。さらに、家政婦ゴーシャ(イリーナ・デュボヴァ)の証言によると、アビーは普段家事をしないはずなのに、事件当日にグラスを自分で洗っていたことが不自然だと指摘されます。
決定的な証拠は、メリットの髪から検出された獣脂でした。それは、アビーが使用していたケア用品に含まれていた成分と一致しており、これによりアビーが犯行現場にいたことが明白となりました。警察はこの証拠を基に、アビーをメリット殺害の真犯人として逮捕します。ウィンバリー家の偽りの平和は崩れ去り、すべてが露見した瞬間でした。
事件のその後とアメリアとグリアの関係
事件が解決して半年が経ち、ウィンバリー家を離れロンドンの動物園で飼育員の仕事に従事していたアメリアのもとに、グリアが現れます。グリアは、新作小説を発表することを告げ、アメリアにその原稿を手渡します。驚くアメリアに対し、グリアはその物語が「あなたの物語」であると明かしました。
グリアは、タグとの離婚を経て、さまざまなことを見つめ直す中で、アメリアに強く当たっていた理由が嫉妬心から来ていたことを素直に認めます。ウィンバリー家での理想像を守るために背負っていた重荷から解放され、自由になったグリアは、アメリアとの関係を修復したいと願いを込めて、彼女を食事に誘います。
アメリアは一瞬戸惑いながらも、かつては緊張感のあった二人ですが、今では過去を乗り越え、新たな関係を築く兆しが見え始めているようにも思えるラストでした。