今回ご紹介する作品は『サイバーパンク エッジランナーズ』です。
『サイバーパンク エッジランナーズ』は、ポーランドのゲーム開発会社CD Projekt REDによる2020年発売のゲーム『サイバーパンク2077』のスピンオフ作品であるアニメーション作品。
Netflixのオリジナル作品として2022年9月に全世界で独占配信されました。
本記事ではNetflixアニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』のあらすじ、キャラクター、感想まで徹底解説してご紹介します。
この作品を観るためだけにもNetflixに契約してもいいと思えるくらいに面白くてあっという間に見終わってしまう作品でした!
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『サイバーパンク エッジランナーズ』とは
『サイバーパンク エッジランナーズ』は、ポーランドのゲーム開発会社CD Projekt REDによる2020年発売のゲーム『サイバーパンク2077』のスピンオフ作品であるアニメーション作品。
アニメーション制作は『天元突破グレンラガン』(「ガイナックス」所属の大塚雅彦と今石洋之、舛本和也ら)、『キルラキル』『プロメア』などを手掛けたTRIGGER(トリガー)。
200を超える国と地域のアニメファンによる約1800万の投票で決まる「クランチロール・アニメアワード2023」で最高賞である「アニメ・オブ・ザ・イヤー」に輝きました。
ゲームの世界観を忠実に再現し、アニメを見た人がゲームをプレイすることで聖地巡礼することもできます。ストーリーはアニメオリジナルとなっており、ゲームをプレイしたことのない方でも全く問題なく楽しむことができます。
話 | タイトル | 長さ |
---|---|---|
1 | 「Let You Down/期待を背に」 | 24分 |
2 | 「Like A Boy/少年は何を思う」 | 24分 |
3 | 「Smooth Criminal/裏稼業」 | 24分 |
4 | 「Lucky You/ツキが回って」 | 24分 |
5 | 「All Eyez On Me/刺さる目線」 | 23分 |
6 | 「Girl on Fire/炎に包まれて」 | 25分 |
7 | 「Stronger/もっと強く」 | 24分 |
8 | 「Stay/いかないで」 | 24分 |
9 | 「Humanity/人間らしさ」 | 25分 |
10 | 「My Moon My Man/私の月、私の恋」 | 26分 |
1話あたり約25分の10話で完結という、短い物語の中に凝縮された面白さがありました。
2022年の覇権アニメは『サイバーパンク エッジランナーズ』か『リコリス・リコイル』の2択と言っても過言ではないでしょう!
ネタバレ解説『リコリス・リコイル』1期の全話あらすじと相関図
『サイバーパンク エッジランナーズ』相関図・キャラ解説
デイビッド・マルティネス
主人公。アラサカ・アカデミーに通っている。成績は優秀だが貧しい家庭を理由に差別される。母が遺したサイバーウェア「サンデヴィスタン」を装着することになる。
ルーシー
ネットランナー。チーム内ではキーウィのバックアップを担当。アラサカを嫌い、月に行くことを憧れている。
メイン
チームリーダー。全身をサイバーウェアでまとった巨大な体が特徴。チームをまとめる力と面倒見が良い。
ドリオ
メインの右腕的存在でチームをサポートする。メインの恋人でもある。
キーウィ
チームのネットランナー。常に赤いマスクで口を覆っている。ルーシーをチームに引き入れた姉的存在。
レベッカ
ピラルの妹。銃の扱いに慣れている。当初からデイビッドを気にかける。
ピラル
レベッカの兄。テッキー。改造された長い腕を巧みに操ることができる。下ネタ好きで下品。
リパードク
外科医でありテッキーであり、アーティストである何でも屋的存在。デイビッドに「サンデヴィスタン」のインプラントを入れる。
ファラデー
ナイトシティのフィクサー。メインに仕事を与える。縦にに3つならんだ右目が特徴。
グロリア・マルティネス
デイビッドの母親。貧しいながらシングルマザーとして緊急救命士の仕事で稼いだお金でデイビッドをアラサカに通わせる。
JK
ジミー・クロサキ。カルトBDディレクター。事件から24時間以内にリリースするネタの新鮮さと過激なエディットが売り。VIPようには痛覚のリミッターを外すオーダーメイドのチューニングもしている。
『サイバーパンク エッジランナーズ』用語解説
BD(ブレインダンス)
ブレインダンス、通称BD。本人の体験した出来事や感情、状況をまるで本人のように追体験できる技術。死の感覚すらも体験できるらしく、そのショックで死亡する者もいるほどの臨場感がある。ポルノ利用もされることが多く、BDを扱える人間はBDエディターと呼ばれる。
アラサカ、アラサカアカデミー
世界で最も歴史の長い巨大企業。兵器製造の最大手として知られており、世界中の軍事衝突に関与している。
アラサカが運営するナイトシティでトップクラスの学校が「アラサカ・アカデミー」。授業は仮想現実で行われ、AIが各生徒のグループに適した授業プランを提供する。中には、アラサカに子どもを通わせるために生涯ローンを組む親もいる。
サイバーサイコシス
人体をサイバー化することにより、何が本物で何が人工物なのか区別する能力を失い、自身を孤立させ始め、他人に対する共感を失い、加虐的な傾向を見せる症状のこと。サイバーサイコシスを発症した人間はサイバーサイコと呼ばれる。
NCPD
ナイトシティの安全を守るナイトシティ警察(NIGHT CITY POLICE DEPARTMENT)。企業のバックアップを受けた法執行機関だ。治安の維持が主な任務だが、その治安を企業が脅かしているとなれば、たちまち見て見ぬふりをする。
MaxTac(マックス・タック)
NCPDの特殊部隊。一般の警官では対処できないサイバーサイコなどの現場に出動し、対象を無力化する役割を担う。
ICE(アイス)
侵入対抗電子機器(Intrusion Countermeasure Electronics)の略称。ハッキングに対する防御手段のこと。大抵の企業はネットランナー班を組織し、自社のデータ防衛に充てている。
トラウマ・チーム
医療用部隊派遣サービス。主な利用者はナイトシティの富裕層で、顧客が負傷してから3分以内に駆けつける。しかし対象は契約しているもののみ。
データによればナイトシティの交通事故の生存率はわずか17%に対し、トラウマ・チーム契約者の場合は91%にのぼるという。
サイバーウェア(インプラント/クローム)
人体に組み込むことができるサイバーパーツ。用途に合わせてさまざまなタイプが存在し、それに合わせた能力を獲得できる。
サンデヴィスタン
デイビットが装着したサイバーウェア。起動すると一定時間、一定の割合で時の流れが遅くなり、結果として、使用者は普通の人間が目で追えないほどの高速で動くことができる。
コーポ(コーポレート)
企業に勤める者を指す。ナイトシティの上流階級。従業員でなくとも、企業に忠誠を誓う者もまたコーポと呼ばれる。
スカベンジャー
高級インプラントの収集・売買を専門とするギャング集団。闇取引はもちろん、所有者から強引に抜き取ることも多く、目的のためなら手段を選ばない。
フィクサー
ナイトシティ裏社会の仕事仲介役。野良のゴロツキたちに公には依頼できないクライアントの仕事を仲介する。地域裏社会の顔役とも呼べる存在で、界隈での影響力は大きい。大物フィクサーの信頼を裏切ることは、ナイトシティでの死を意味する。
ネットランナー
ネットワーク上に侵入を試みたり、ハッキングする者たちの総称。コンピューターシステムやプログラム言語、キラーウイルスの作成や改造についても熟知しており、サイバーデッキを携えた彼らは完全武装の企業兵士並みに危険な存在だ。
テッキー
機械の分解や組み立て、テクノロジーに関する豊富な知識を蓄えている人物。
デラマン
ナイトシティのVIP向け乗客輸送会社およびその管理AI。防弾ガラスのついた装甲車と、AIによる自動運転で狂いなく乗客を目的地にエスコートする。
ミリテク
20世紀末ごろに設立された、兵器製造および軍事サービスを基幹事業とする新合衆国のアラサカに並ぶ巨大企業。
オールドネット
2022年以前までのネット世界のことを指す。2022年に天才ハッカーのレーシィー・バートモスが引き起こした全ネット破壊事件「DataKrash」により、ネットの修復はできず、現在は隔離した空間で構成されている。
AV
空を飛ぶ車両全般(Aerial Vehicle)の呼称。
サイバースケルトン
AVに搭載されているジェットエンジンを小型化した物を2基搭載し、アラサカが生み出した反重力テクノロジーと磁力発生装置の着いたサイバーウェア。
ネタバレあり
以下では、アニメの結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
第1話「Let You Down/期待を背に」
警官2人が会話していると、筋骨隆々のアーマーを身に着けた男が襲撃する。「サイバーサイコシス」と言われる男は、数十人の警官相手に派手な銃撃戦を展開し、圧倒的なスピードを見せる。
その後、特殊部隊MaxTacが出動し、専用の武器で男を始末する。デイビッドは、その男の記憶をリパードクからもらったBDで体験し、興奮を隠せないでいた。
ナイトシティへようこそ
サントドミンゴのスラム街に暮らすデイビッド・マルティネスと母親のグロリア。生活は貧しく、洗濯機でデイビッドの制服を洗い終える終えることもできない。
グロリアは救急救命士の仕事で昨夜のサイバーサイコシスが暴れた現場にもいたことが分かり、彼女は疲れてソファで寝ている。
デイビッドは学校へ向かうため、ナイトシティの街をあるく。
ホームレスが寝ている様子、ゴミが溜まって積まれた様子、VRでポルノを見て自慰する人々の様子など、映像だけで街の様子が分かります。
途中、デイビッドは白髪の女性の姿が気になり、確かめようとするが、すでにいなくなっていた。
最悪の一日
デイビッドは通っている学校「アラサカ・アカデミー」へ登校する。規定の制服を来ていないことを注意され、クラスの嫌味な金持ちカツオにいじられる。その後、授業中、デイビッドのハードが悪さをしてシステムエラーが起きてクラッシュさせてしまう。
校長に呼び出され、経済的な負担から転校を勧められるもグロリアは断るのだった。帰り道、車の中で口論になるデイビッドとグロリア。学校を辞めて働くと言い出すデイビッドに対して、グロリアはデイビッドに成功してほしい思いを伝える。
そんな中、突然、“アニマルズ”というギャングたちがグロリアの運転する車を挟んで隣りにいるリムジンに銃撃するのだった。2人の乗る車は大破したリムジンに激突してしまう。
目を覚ましたデイビッドは、逆さまになった車の中で身動きが取れず、グロリアは道路に倒れ込んでいる。医療サービス「トラウマ・チーム」が駆けつけるも、2人が保険に契約していないことで置いていってしまうのだった。
デイビッドはグロリアが昏睡状態だと医師から伝えられ、医療費と入院費を請求される。アパートに戻ると家賃滞納によって鍵がかかっていたため、裏窓を割って家に入る。
グロリアが別の口座にお金を持っていること知るデイビッド。さらに、彼女が隠していた「サンデヴィスタン」という軍用サイバーウェアを見つけてリパードクに売ろうとするも安く見積もられて足元を見られるのだった。
悲しみと怒り
翌日、デイビッドは学校でカツオらに待ち伏せされ、自主退学するように言われる。挑発されたデイビッドだったが、高性能な格闘チップをインストールしているカツオにボコボコに殴られてしまう。
その後、医師から呼び出されると、グロリアが亡くなったことを告げられ、葬儀の請求書を渡される。グロリアを遺灰を受け取り、帰宅しようとするデイビッドに、あらゆる請求関係の音声案内が届く。
カツオから母親の死をイジるメッセージが届いており、デイビッドは悲しみと怒りに満ちていた。その後、リパードクの元へ「サンデヴィスタン」を持ち込んだデイビッドは、売るのではなく自分にインストールするように頼むだった。
第2話「Like A Boy/少年は何を思う」
サンデヴィスタンをインストールするよう頼むデイビッドに対し、リパードクは外したくなったとき、デイビッドが死んだときはタダでもらうという取引のもとで引き受ける。
そしてデイビッドは激痛に耐えながらもサンデヴィスタンを体にインストールする。
ルーシーとの出会い
アラサカの授業中に乗り込んだデイビッドはカツオに喧嘩を仕掛け、圧倒する。
アラサカの重役であるカツオの父親タナカはデイビッドの映像を見ていた。サンデヴィスタンに耐えうる体を持っている可能性があり、ある実験のテストに相応しいかもしれないと退学にしたデイビッドを呼び戻そうとしていた。
落ち込んだ気持ちで電車に乗っていると、以前見かけた白髪の女性の気配を感じる。彼女はハッキングして首のチップを盗んでいた。彼女はデイビッドのチップも盗もうとするが、サンデヴィスタンのスピードを活かして彼女の手首を掴む。
彼女はルーシーと名乗り、アラサカに勤める人間を対象にチップを盗んでいて、デイビッドに仕事の協力を持ちかける。同意したデイビッドはルーシーとタッグを組んで乗客のチップを次々と盗んでいく。
しかしデイビッドは急に鼻血を出して倒れてしまう。担架に乗せられ救急車で運ばれる中、救命士がデイビッドのインプラントが高価であることから狙おうとするが、ルーシーは担架に乗り、救急車から脱出する。担架で車を避けながら高速を逆走するルーシーに釘付けになるデイビッド。
リパードクのもとへ連れて行ってもらうと、抑制剤をもらう。すでに8回もサンデヴィスタンを起動していたデイビッドだったが、リパードクは使いすぎると脳に異常をもたらしてサイバーサイコになる可能性もあると伝える。
月へ
その後、ルーシーの家に連れて行ったもらったデイビッド。彼女はデイビッドのジャケットにサイバーサイコの別名である「エッジランナーズ(Edgerunners)」の文字を書き込む。
ルーシーはクソのような街を抜け出して月に行くという夢を語る。ルーシーに導かれ、一緒に月のBDを体験するデイビッド。月の重力の少なくなった浮遊感や一緒に地球を眺めたりなどしていた。
しかし突然、デイビッドは目の前に現れた大男によって遮断される。サンデヴィスタンは自分のものになるはずだったと言う男。ルーシーはタバコを吹かしていた。デイビッドは自分が騙されたことに気づくも大男に殴られるのだった。
2話は担架のシーンや月のシーンなど、作品でも屈指の名シーンがあるエピソードでした。
第3話「Smooth Criminal/裏稼業」
デイビッドは大男に吊るされた状態で目を覚ます。
大男は緊急隊の仕事するグロリア・マルティネスから死体のサンデヴィスタンをもらう取引をしていていたと言うと、デイビッドはグロリアが自分の母親であること、彼女が昨日死んだことを伝える。
デイビッドは彼らの前でサンデヴィスタンを扱う姿を見せ、グロリアが取引していた分の金を稼ぐためにも一緒に働きたいと申し出る。大男たちはテストするといって出ていくのだった。
大男はメインという名前で、ルーシーは彼らサイバーパンクの一員だった。
初仕事
翌日、デイビッドはメインに呼び出される。メインをリーダーとするサイバーパンクのメンバー、キーウィ、ドリオ、ピラールを紹介される。
デイビッドはメインから早速仕事の説明を受ける。ターゲットはアラサカのドライバー、マクシムの運転からナビデータを盗み出すというもの。
マクシムがバーでやけ酒している間にキーを盗み、ルーシーと共に車の中に入り、ハッキングする。しかしマクシムが戻ってきてしまい、セキュリティが作動して車に閉じ込められてしまう。
仕方なく車を走らせるデイビッドだったが、マクシムがやとった追手タイガークロウズがやってくる。高速に入るも、渋滞で逃げ場をなくすと、反対車線に乗り込んで振り払うことに成功する。タイガークロウズの一人はトラックと衝突して死亡する。
2人は指示された場所へ到着するも、そこに追いかけてきたもうひとりのタイガークロウズが襲いかかる。デイビッドとルーシーで応戦するも、デイビッドがやられてしまいそうになる瞬間、メインがやってきてタイガークロウズを始末する。
クルーの一員
仕事を終えて打ち上げをするサイバーパンクのメンバーたち。メインはデイビッドにテストの合格を伝え、「この世界で最後に頼れるのは自分だけだ」と言い、抑制剤と報酬を渡す。
その後、メインの前にファラデーという男が現れる。彼は今回の仕事の依頼主でありフィクサーで、タナカの居場所を知るためにナビデータの盗みを依頼したが、デイビッドたちが派手に仕事したことで役に立たなくなったと釘を刺す。
ルーシが気になる様子のデイビッドは、一緒に仕事をしたレベッカに挨拶される。
アラサカ・アカデミーの校長から電話が入り、カツオへ謝罪した場合、アカデミーに復帰の機会をもらえる話をもちかけられるも、デイビッドはいつでもケンカなら受けて立つと言い放って電話を切るのだった。
貧困と孤独に陥っていたデイビッドが、初めて仕事をして、悪の道とはいえ居場所を見つける第3話でした。
第4話「Lucky You/ツキが回って」
トレーニング
デイビッドはメインに「もっと仕事を覚えたい」と連絡する。デイビッドはピラルにロボットアームを届ける仕事を終える。ピラルとレベッカは兄妹であることがわかる。
その夜、ルーシーに呼び出されるデイビッド。メインの指示でルーシーはデイビッドのトレーニングをすることになる。クルーたちはいくつかの仕事を行い、それに伴いデイビッドも少しずつ成長していた。デイビッドはレベッカに射撃訓練を教わるが、母親グロリアの顔が思い浮かび、引き金を引くはできなかった。
デイビッドはルーシーが気になる様子。メインの話ではキーウィがクルーに連れてきたことがわかる。そんな中、デイビッドは肺をサイバー化して心肺能力が向上する。
ピラルの死
バーから出てきたクルーたちはドラム缶に放尿し続ける奇妙な男と出くわす。ピラルは気味悪がりつつも気になって近づくと、その男に頭を撃ち抜かれてしまい殺されてしまうのだった。
男はサイバーサイコシス状態になっており、襲撃してくる。いきなりの出来事にデイビッドは動きを止めてしまうが、メインに突き飛ばされてなんとか気を取り戻す。
兄を殺されて怒り狂ったレベッカが突っ込むも、メインが静止し、キーウィに脳をハッキングして彼女を眠らせる。ルーシーが男の脳をハッキングして攻撃するも、狙われてしまう。デイビッドがサンデヴィスタンのスピードで回り込み頭を撃ち抜き、メインが追撃したことで男を始末する。
月へ連れて行く
ルーシーが怪我をしたことでリパードクの治療を受けに一緒に行くデイビッド。その後、ルーシーを部屋に送ると、デイビッドは「少し話したい」と言う。
デイビッドはルーシーをが騙していたことに怒っていたものの、嫌いになっていないと伝える。自分をどこか認めていない様子のルーシーに対してデイビッドは「俺が君を月へ連れて行くよ」と宣言する。するとルーシーはデイビッドにキスをして「死んでほしくないの」と言い、デイビッドは「死ぬもんか」と言ってキスをする。
2人の後ろでは月へ向かうロケットが発射していた。
第5話「All Eyez On Me/刺さる目線」
メインは死んだピラルが使っていた手のクロームを勧めるが、デイビッドは断り、メインが付けている腕の銃のクロームをメインの死後に引き受けると言う。
JKとサンデヴィスタン
キーウィがアラサカをハッキングで調べるも大した情報は得られない。タナカがJK作の裏BDを好んでいることを知り、デイビッドはVIP用の裏BD作成時に一人で外出するかもしれないと話す。
クルーはJKを拉致して話を聞こうとするが、JKがEMP攻撃をしたことで、メインとデイビッドは気を失ってしまい、逆にデイビッドだけ連れ去れられてしまう。ドリオとルーシーは後を追いかける。
デイビッドは死体の山の中で目を覚まし、サイバーサイコシスとして警察に追われ、MaxTacに処刑されるBDを見させられていた。
JKはサンデヴィスタンの前の所有者であるジェームス・ノリスのように、デイビッドにもサイバーサイコシスとなって派手に暴れることを期待していた。デイビッドをサイバーサイコ化させるために過激なBDを見せ続けようとしたところ、ルーシーとドリオがやってくる。
JKは軍用のドローンで応戦するが、ドリオがJKを人質にとり、デイビッドが時間を稼ぎながらルーシーがハッキングすることで制圧する。
タナカの捕獲
デイビッドは自分をサンデヴィスタンが体に馴染む特別な存在だと言うが、JKは所有者は死ぬかサイバーサイコになるかの2択しかないと伝える。
JKに協力させ、一人でやってきたタナカと接触するクルーたち。タナカは針のミサイルで攻撃してくるが、デイビッドがサンデヴィスタンのスピードで殴り、メインが気絶させる。
JKはタナカの針の攻撃を喉に受けて致命傷となり、トラウマ加入者であったため、クルーたちはタナカを引き連れて急いでその場を後にする。
第6話「Girl on Fire/炎に包まれて」
砂漠を走る若いメインの姿が映し出される。ドリオに声をかけられるまでメインは空想していた。手が震えているメインをドリオは気づかうが、彼は気にしていない。
ディープダイブ
捉えたタナカからアラサカへのハッキングに苦戦するキーウィ。そんな中、メインがハッキング中のキーウィを殴って病院送りにしてしまい、メイン自身は自分がやったことを認識していなかった。
ルーシーとデイビッドは呼び出され、ドリオからメインがサイバーサイコシスの兆候があることを伝えられる。ドリオはルーシーにキーウィの代わりにタナカのハッキングを依頼するが、ルーシーは嫌がっていた。しかし、デイビッドと2人でやる条件で引き受けることにする。
デイビッドがサポートしながらルーシーはディープダイブする。この件が終わったらタナカを殺すのかが気になっていたデイビッド。すると、タナカが意識を取り戻し、デイビッドにアラサカに来るように訴えかけ、デイビッドは気持ちが揺らいでしまう。
ドリオとメインがやってくると、タナカの脳が焼かれ、トラウマチームに信号が漏れてしまい、急いでその場を離れることに。先にルーシーを抱えて車に移動するデイビッド。
メインの最期
ドリオとメインはタナカを連れてこようとするが、目を覚ましたルーシーはタナカをハッキングしても情報がなかったことを伝える。しかしすでにドリオとメインはNCPDに取り囲まれてしまっていた。
銃撃戦になる中で、メインはサイバーサイコ状態になっていて歯止めが効かない。そんなメインを銃撃から守るためドリオが盾となり、死んでしまう。それによって完全にサイバーサイコとなったメインはタナカやNCPDを皆殺しにする。
ルーシーは引き止めるが、デイビッドは助けに行ってしまう。メインはドリオの死体を積み重ねた燃料電池で弔う。メインはここで死ぬと言い、デイビッドに逃げるように伝える。MaxTacがやってくるとメインは燃料電池を爆発させる。
ルーシーは車でデイビッドの帰りを震えながら待っていた。そこへ、デイビッドがサンデヴィスタンで戻ってくる。デイビッドはメインの腕のクロームを抱えながら泣くのだった。
第7話「Stronger/もっと強く」
メインの死から時がたち、ファルコが運転する装甲車の中で、デイビッドに憧れるフリオという新しいクルーとレベッカ、デイビッドたちが仕事に向けて準備する。デイビッドの体は見違えるように大きくなっていた。
デイビッドの変化
メイルストロームというギャングのアジトへ向かった3人は、外部でキーウィのハッキングのサポートを受けながら銃撃戦を展開し、ボスであるメイルストロームも始末する。しかし、フリオは不用心に行動してトラップにかかり死んでしまう。デイビッドは捉えられていたイザベラという女性を救出して任務を終える。
仕事の仲介人であるワカコから評価されるデイビッド。ドライバーのファルコはメインを超えられると言い、キーウィも信頼している様子だ。一方、ルーシーはタナカの一件から仕事を外れていた。
全身をクローム化しつつあるデイビッドはリパードクのもとで調整してもらう。全身をサイバー化しても体に馴染むため、自分を特別だと思っているデイビッドに対し、リパードクは伝説の男アダム・スマッシャーにでもなりたいのかと言う。
ルーシーの過去
キーウィに呼び出されて、ファラデーに接触するデイビッド。ファラデーはメインの代わりにテストを兼ねた仕事を依頼する。アラサカのライバル会社ミリテクの仕事だった。
家に帰り、ルーシーに一緒に仕事をしてほしいと頼むも「もう少し待ってほしい」と断られてしまう。その後、ルーシーに連れられてナイトシティを出て星の見える場所で会話する2人。そこでルーシーは自分の過去を打ち明ける。
孤児だったルーシーは、小さい頃から別の国で選ばれたアラサカのネットランナーの13人の1人として、施設でオールドネットへディープダイブさせられ続けていた。
オールドネットでは妨害するAIにやられて死んでしまうものも多く、このまま利用され続けることを拒んだルーシーたちは、アラサカを逃げ出したのだった。そこからは転々とし、ナイトシティを隠れ蓑としているという。
アラサカのネットランナーがタナカが死亡する前のデータの復旧をして報告している。そこで彼は意図的に消されたデータがあり、凄腕のネットランナーによる犯行を示唆していた。
そんな中、その男の前にルーシーが現れ、彼の脳をハッキングして殺害するのだった。
第8話「Stay/いかないで」
アラサカの研究施設。研究員のユミコは所長のエバンスに息子のアカデミー入学祝いをするため休暇を求めていた。その後、エバンスサンプルを持ってくるよう頼まれたユミコが所長の元へ戻ると、殺された所長とデイビッドの姿会った。恐怖で震えるにユミコに対してデイビッドが銃を向ける。
デイビッドの兆候
アラサカの防諜部は、ミリテクの対策の研究施設が狙われた事件を調査していた。痕跡を残さないネットランナーの驚異を危惧しつつも、フィクサーに焦点を切り替えて事件を調べていた。
その後、ファラデーが乗る車が襲撃されるが、彼はなんとか逃げ延びる。ミリテクの人間に支援を依頼するも、結果を出さなければ仕事はやらないと言われてしまう。ミリテクはアラサカのサイバースケルトンに関する情報をファラデーを通して手にしようとしていた。
デイビッドが眠れないでいると気にかけたルーシーが声をかける。ルーシーはデイビッドの腕が震えている様子に気づいていた。
ファラデーはアラサカの諜報員と接触する。諜報員はミリテクに支援を拒否されたファラデーを支援するという。その条件として、サイバースケルトンに関する情報を知っているものをすべて始末すること、タナカのデータ復旧を阻止しているネットランナーを見つけることとして契約を交わす。
ルーシーはキーウィに連絡し、デイビッドの仕事ぶりを気にかけていた。その後、キーウィの元をファラデーが訪れていた。
デイビッドは仕事中、怯えるギャングに銃を向けたときに研究所で殺したユミコの姿を思い出して動きを止めてしまう。代わりにレベッカが撃ち難を逃れるも、心配したレベッカは仕事後にデイビッドに声をかける。
関係ないと言うデイビッドだったが、レベッカは「あんたに命を預けてる」と言い、「あんたにはサイバーサイコになってほしくない」と伝えるのだった。
ルーシーの思い
デイビッドはアラサカ研究所での仕事を思い出していた。所長を殺した後、幻覚を見ていたことがわかる。その後、倒れてしまい、ルーシーにリパードクのもとへ運ばれる。
リパードクはクロームの使用を控えるように言われるが、より強い抑制剤を提供しろと激昂してリパードクに手を上げてしまう。ルーシーに呼びかけられて正気に戻ると、リパードクにこれが最後だと9倍の薬を手渡される。
その後、心配したルーシーはデイビッドにクロームを外すように伝えるが、デイビッドはそれを断る。デイビッドはすでに人を殺しても何も感じなくなったと語り、母親とメインの託した何かを求めて突き進もうとしていた。
仕事復帰までもう少し時間がほしいと、その理由については言わないルーシーに対し、デイビッドは別々の道を歩むべきかもしれないと伝える。
そんな中、ルーシーは緊急の用事といってその場を去っていく。彼女はディープダイブで見つけたネットランナーの居場所を掴んだのだ。その人物を始末しようとするが、それはファラデーの変装であり、返り討ちに遭い、ルーシーは気絶して倒れてしまう。そこへキーウィが現れ、ファラデーと手を組んでハメたことが明らかになる。
第9話「Humanity/人間らしさ」
ナイトシティ郊外の砂漠でアラサカの運ぶ荷物を奪う仕事を引き受けるデイビッドたち。過去最大の仕事だった。
ファラデーの策略
ファラデーと手を組んでいたキーウィはルーシーをハッキングして調べる。
デイビッドのサンデヴィスタンへ耐性を知ったタナカは、デイビッドをアカデミーに呼び戻し、サイバースケルトンの実装テストをするつもりだった。
ルーシーはそれを防ぐためにタナカの脳を焼き、隠蔽工作をしていたことがわかる。それを知ったファラデーはそのネタでアラサカと交渉してコーポで上に行こうとしていた。
アラサカと手を組んだファラデーの計画は、デイビッドに仕事を依頼して、その過程でサイバースケルトンをインストールさせ、ミリテクの部隊とと戦わせることでサイバースケルトンの実装テストさせ、その過程で捕らえる予定だった。
サイバースケルトン
仕事前、震えが止まらない様子のデイビッドを心配するレベッカだったが、仲間には言わないでほしいと伝えられる。
ターゲットの装甲車を襲撃するクルーたちだったが、強固な装甲でハッキングして解錠しなければ中には侵入できない。さらに無人運転であることがわかり、崖に突っ込もうとしていた。デイビッドはサンデヴィスタンでハープーン・ガン(先端に銛がついたコード付きの銃)を引っ掛けて無理やり車をひっくり返して停車させる。
キーウィが解錠して中に入ると、中にはサイバースケルトンがあった。そんな中、大量のミリテクの部隊が追いかけてくる。ファラデーがルーシーになりすましてデイビッドに電話をかけ、サイバースケルトンをインストールするように指示し、レベッカの反対を押し切ってデイビッドはインストールしてしまう。
キーウィがクルーを裏切ってその場を立ち去ると、ミリテクの部隊が攻撃を仕掛けてくる。
インストール中にサイバーサイコシス化しそうなデイビッドだったが、レベッカが抑制剤を注射し、なんとかインストールを終える。サイバースケルトンは超強力な重力・反重力を備えているクロームだった。
サイバースケルトンとサンデヴィスタンを組み合わせたデイビッドは、ミリテクの部隊を一人で圧倒する。しかし、様子を見守るレベッカとファルコはデイビッドの負担を心配していた。
ミリテクの部隊を一掃したデイビッドは、ファラデーをぶっ倒してルーシーを助けるといい、レベッカたちも地獄まで付き合うというのだった。
第10話「My Moon My Man/私の月、私の恋」
デイビッドたちはアラサカ本部を目指していた。デイビッドは休息が必要となり、休んでいる間にレベッカとファルコが追手と応戦する。
アラサカタワーの頂上へ
デイビッドは狂ったような笑い声を上げたりサイバーサイコシス発症寸前になりながらも抑制剤を使用しながら応戦し、アラサカの追手を退けるが、抑制剤は残り1回分となっていた。
アラサカの諜報員はファラデーによって計画を台無しにされたことに苛立っていた。デイビッドをサイバーサイコとしてMaxTacを派遣して始末しようとし、さらに念の為アダム・スマッシャーも手配していたのだった。
一方、街を出ようとするキーウィだったが、直接金を渡すとファラデーに呼び出されて銃撃されてしまう。瀕死のキーウィはファラデーの位置情報をファルコに送り、その後、始末される。
アラサカタワーにたどり着いたデイビッドは最後の抑制剤を打つ。
生け捕りしたルーシーをネタにアラサカ諜報員と取引しようとするファラデーだったが、そこへデイビッドが現れ、その場を制するが、アダム・スマッシャーが現れ、戦闘によって吹き飛ばされてしまう。
デイビッドはアラサカタワーから落下する中、サイバーサイコシス状態になりかけていたが、ルーシーが呼びかけ、キスをすることで意識を取り戻す。生きてほしかったと言うルーシーだったが、デイビッドはルーシーを守り、ルーシーが夢を叶えることが自分の夢になったと伝える。
レベッカとファルコと合流したデイビッドとルーシーだったが、そこにアダム・スマッシャーが追撃をしかけ、レベッカは潰されてしまう。
デイビッドとルーシーの夢
デイビッドとアダム・スマッシャーとの一騎打ちとなるが、アダム・スマッシャーの圧倒的な強さを前に全く太刀打ちできないデイビッド。抑制剤も切れてしまう。
そんな中、デイビッドに指示されていたファルコはルーシーを乗せて現場を逃げだす。ルーシーはデイビッドを置いていけないというが、ファルコはデイビッドからのもらっていた今回の報酬と伝言をルーシーに伝える。
「月、一緒に行けなくて、ごめんな…」
デイビッドはアダム・スマッシャーに撃ち抜かれる。
その後、ルーシーは月旅行へのチケットを買い、月面ツアーに参加していた。BDではない実際の太陽の熱と浮遊感を感じながら月面でデイビッドの姿を懐かしそうに思い出していた。
【ネタバレ感想・考察】「どう生きるかより、どう死ぬか」
『サイバーパンク エッジランナーズ』一言でいうと、大傑作でした…!
たった25分10話のエピソードで、ここまで面白できるのかと唸らされました。テンポの良い展開が全く飽きさせず、終盤のエモーショナルな展開は涙なしでは見られませんでした。
世界観の良さ
まず『サイバーパンク2077』の世界を忠実に再現したナイトシティの世界観が素晴らしい。ナイトシティでは超資本主義の社会のディストピアで、決して逆転不可能な格差が生まれています。
人々はより金や権力を追い求めるようになり、お金持ちはよりお金持ちに、貧乏はより貧乏になる世界。貧しい人が抜け出す道は、自然と法律の外側の手段になるのです。
1話のデイビッドに降りかかる事態がそれを如実に映します。
デイビットは貧しいながらも、母グロリアが必死になって働き、名門アラサカ・アカデミーに通うも、貧しいことを理由にいじめられていました。
事故に遭ったときも、トラウマチームの支援を無視され、結果的に母親グロリアは亡くなってしまいます。悲しむ間もなく手術代、入院費、火葬費と立て続けに支払い請求され、家賃も滞納して締め出される始末。
うつむきながらナイトシティを歩くデイビッド。この状況は決して絵空事には思えず、もしデイビッドが頼る人も全くいなかったとしたらと考えると、ゾッとしてしまいます。
ルーシーは月に行くという目標を叶えましたが、それは月面旅行でしかなく、また日常が続いていきます。
PTSDとトラウマ
『エッジランナーズ』の物語は、ナイトシティに生きるならず者たちを描いた部分がほとんどですが、同時にサイバーサイコシスの描写は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やトラウマと向き合う物語でもあったように思います。
PSTDとは、死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態のこと。(厚生労働省HPより)
デイビットは1話の事故によって自分の身の危険と結果的に母親グロリアを亡くす経験をしました。度々グロリアの死ぬ間際の姿がフラッシュバックしていたり、グロリアと似た状況のアラサカ研究員を殺したときも脳裏に焼き付いていました。
メインの過去は詳細には明かされませんが、メインが死ぬことになる6話で何もない砂漠を走る姿がフラッシュバックとして映されます。その若きメインの姿は、サイバーウェアで身をまとった現在とはまるで違います。
あの砂漠のシーンは、ある時点でサイバーパンクとしてしか生きる道を選ぶことができなくなったメインが、すでに引き返すには遠いところまで来てしまったことを意味しているように感じます。それは体をサイバー化する意味でも同様で、走り続けるしかなかったのです。
そんなメインは死ぬ間際、デイビッドに「人より早く走れるんだろ?走り抜けろ」と言い残します。デイビッドなら、自分とは違って砂漠を走り抜けることができるかもしれない、そんな思いが感じられる最期の言葉でした。
デイビットとルーシーの関係
ルーシーはタナカにディープダイブしたときに、アラサカがサイバースケルトンの実験台にデイビッドを利用しようとしていることを知ります。彼女はそれをデイビッドには伝えず、その証拠を隠蔽して一人で解決しようとし、それによって結果的にメインとドリオが死ぬことになってしまいました。
ルーシーとデイビッドが面と向かって話をする4話の終盤、ルーシーはデイビッドに「あんたと私は違う」と言っていました。それは後に明かされるルーシーの過去を知れば分かりますが、同じチームにいても育った環境、根本的な部分を言っていたのだと思います。
だからこそルーシーはデイビッドには打ち明けられなかったのだと思います。
デイビッドはサイバーパンクになったものの、根はいいヤツだというのは誰もが分かるはず。
一方で、そんなルーシーに対してデイビッドは誰かの役に立ちたかった、認めてもらいたかった。そんな自分を「特別」だと思いたかったのです。しかし、母親グロリアだけではなく、父親代わりとも言えるメインをも失ってしまいます。
メインの死後となる7話で時間が経過し、デイビッドはメインの後を追うように体がデカくなり、サイバーウェアを身にまとっていきます。
自分が強ければ守ることができたかもしれない、そんな思いがあったのでしょう。サイバーウェアのインストールにそれほど関心がなかったデイビットでしたが、心に鎧をまとうように全身をサイバー化していきます。
本来の自分以上の力を発揮できるサイバーウェアは、自分を特別だと思いたいデイビッドにとっては安心材料ともいえて、(第7話のタイトルでもある)もっと強くならないといけないと思うようになっていた。
自分を特別だと思っていたデイビッドも、生ける伝説アダム・スマッシャーを前にして完膚なきまでに敗北して死を遂げます。悲しいのは、そんな最強アダム・スマッシャーでさえも、ナイトシティの手のひらの上で踊っているに過ぎないとわかること。
アダム・スマッシャーは、体のほぼすべてを機械に置き換えていました。たとえサイバーサイコシスを発症しないとしても、それはすでに人間と言えるのでしょうか。アダム・スマッシャーもアラサカに呼び出されてすぐ来るような駒に過ぎず、ファラデー同様にナイトシティの抗えない資本主義社会の歯車に過ぎないのです。
アラサカの重役が、トカゲの尻尾切りのように下の者に責任を取らせて片付けていたように、デイビッドもナイトシティ全体で見れば、単なるサイバーサイコの一人に過ぎないのかも知れません。
しかし、他人の人生を生きていたデイビッドが、ルーシーの夢のために自ら決めた選択は決して無駄だったようには思えません。
「ナイトシティで名を残すには、どう生きるかよりも、どう死ぬかよ」
必死に命を燃やしたデイビッドの想いは、遠い場所に行きたいと願ったルーシーの胸に深く刻み込まれたことでしょう。
レベッカの成長
デイビッドとルーシーの恋愛模様は悲しくも魅力的ですが、一方でデイビッドへ密かに思いを寄せるレベッカの姿も負けじと良いんですよね…。
キーウィに「アプローチを変えないと」と言われてしまうレベッカでしたが、彼女はデイビッドが振り向いてくれなくても最後まで自分のありのままを貫いていました。
思えばクルーで最初に声をかけたり、PTSDのような状態になるデイビッドを心配して声をかけたり、好意を寄せているからでもありますが、エピソードの中盤以降では、デイビットとお互いに背中を預けて戦う良き相棒にもなっていることから、自然に信頼関係を築いているんですよね。
兄のピラルとはケンカばかりでも、ピラルが死んだ後、復帰するまでに時間がかかっていたり、その後、ピラルのサイバーウェアを使って同じように笑わせて見せたり。破天荒な態度とは裏腹に彼女の芯の部分の人間的魅力に惹かれました。
アニメーションならではの描写
TRIGGERによるアニメーションの描写も素晴らしかった。
『天元突破グレンラガン』や『プロメア』にも通じる特徴的なアクションシーンは、サイバーパンクの世界観と絶妙にマッチしていました。
いい意味でカオスな世界観のアニメなんですよね!
サンデヴィスタンによる超高速移動を、残像で見せる様子はすごく分かりやすく、作中で重要な意味でもあるデイビッドがどれくらい能力を使っているのかも分かる仕組みになっています。
ゲーム『サイバーパンク2077』はR18で、本作『エッジランナー』はR16指定になっているのもポイント。アニメーションのR指定作品は性的な描写がメインではない作品では珍しく、本作はR指定だからこそのナイトシティの世界観がより伝わってくる内容になっています。
『サイバーパンク エッジランナーズ』シーズン2はある?
本作を製作したゲーム会社CD Projekt REDは、『サイバーパンク エッジランナーズ』は独立した作品だとして、シーズン2の続編はないと宣言しています。
正直に言えば、10話完結というのはあまりにも短く、エピソードの跳躍もありますが、一方で10話だからこそ万人に勧められて、かつストーリーを補完して楽しむことができたのも本音です。
まとめ:『サイバーパンク エッジランナーズ』はNetflixオリジナルの傑作アニメ
今回は、Netflixオリジナルアニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』をご紹介しました。
Netflixオリジナルアニメの中では、『アーケイン』と肩を並べる傑作でした!
正直に言うと「絶望した主人公が、力を手にして、美少女と運命的に出会って変わっていく」という、いかにも男性好みな物語ではあります。
しかし、10話という短いエピソードの中で、しっかりと完結させて深い余韻とエモーショナルな気持ちにさせる素晴らしいアニメーションだったのは間違いありません。
『攻殻機動隊』や『AKIRA アキラ』のような作品が好きな方にとっては刺さること間違いない2022年を代表するアニメーション作品となっていました。