今回ご紹介するアニメは『AIの遺電車子』です。
山田胡瓜による『週刊少年チャンピオン』で連載されたSF漫画。
原作漫画は2015年から2017年まで連載され、単行本は全8巻で完結しています。2023年7月より毎日放送・TBS『アニメイズム』B1枠にてテレビアニメ化されました。
本記事では、ネタバレありでアニメ『AIの遺電子』を観た感想・考察、あらすじを解説。
“近未来版ブラック・ジャック”とも呼ばれていて、ヒューマノイドが人間社会に一般化した近未来を舞台にしたSF作品。

基本的に1話完結型のオムニバスアニメなので、見やすくて面白いおすすめの作品!
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【AIロボット映画】人工知能を描く傑作SF映画
AIの遺電子の原作・アニメ
漫画『AIの遺電子』
『AIの遺電子』は、山田胡瓜による漫画です。
山田胡瓜先生はもともと、IT総合情報サイト「ITmedia」の記者であり、その経験を活かしてITmedia上でも公開されている『バイナリ畑でつかまえて』を連載。
その後、初の長編作品となる『AIの遺電子』を発表し、2018年には、文化庁主催の漫画賞である文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞しました。
『AIの遺電子』は全8巻、その続編となる『AIの遺電子 RED QUEEN』は全5巻、そして『AIの遺電子』の前日譚となる『AIの遺電子 Blue Age』は現在『別冊少年チャンピオン』にて連載中です。
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アニメ『AIの遺電子』
2023年7月7日よりMBS・TBS・BS-TBS「アニメイズム」枠ほかにて放送が始まりました。
原作 | 山田胡瓜 |
監督 | 佐藤雄三 |
シリーズ構成 | 金月龍之介 |
脚本 | 金月龍之介 |
キャラクターデザイン | 土屋圭 |
音楽 | 大間々昂、田渕夏海 |
アニメーション制作 | マッドハウス |
製作 | AIの遺電子製作委員会 |
放送局 | 毎日放送・TBSほか |
放送期間 | 2023年7月8日〜 |
主題歌 | ■オープニング曲 Aile The Shota「No Frontier」 ■エンディング曲 GReeeeN「勿忘草」 |
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ネタバレあり
以下では、結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
『AIの遺電子』の世界観・用語
以下では、『AIの遺電子』に登場する、作品を理解する上で参考になる世界観・用語を解説。
ヒューマノイド
知性や感情、能力など、人間と同等レベルに設定された人間の姿を模したロボット(ヒト指向形人工知能)。『AIの遺電子』の世界では、ヒューマノイドは世界の総人口の1割に達している。
バイオ系のボディを持つヒューマノイドは、人間と同じように歳をとる。人格をコピーする「バックアップ」は違法とされ、違反者には30年以下の懲役、ヒューマノイドは場合によって身体を剥奪される。
ロボット
人間やヒューマノイドに奉仕をするために設計されたAIを持つ“道具”として作られた存在。
産業AI
人間の生活をサポートするため作られた人工知能。心が生まれないように能力を制限されている。
インプラント
「ナノマシン」の注射により、後天的に人間の脳内にインターネットと接続できる機能を付加する技術。現実の世界でAR(拡張現実)を展開することも可能で、ヒューマノイドは先天的にこの機能を備えている。
第1話『バックアップ』
©山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
第1話ネタバレあらすじ
舞台は人口の1割がヒューマノイドとして浸透した近未来。ヒューマノイドを専門に診る医師・須堂光は、助手の樋口リサと共に須藤新医院を経営している。
須藤は、医院としての仕事のほかに「モッガディート」という名前で闇医者としての活動もしている。
ある男から「裏」の診察依頼が届き、須藤が向かうと、人格を違法にバックアップした男の妻が、体の不調に悩まされていた。家庭はヒューマノイドの夫婦と人間の養子の娘の3人家族。
娘によると、階段でつまづいて頭を打ったことをきっかけにバックアップしたのだという。
妻はウイルスに感染していたものの、バックアップに異常はみられず、バックアップを実行した場合は1週間分の記憶がなくなることが伝えられる。
妻は、フォーマットされてバックアップすることで、今自分が認識している自分と別の存在になることに不安を覚え、バックアップを拒否する。
その14日後、ウイルスによって機能停止し、バックアップからの復元を実行。半月眠っていたが、無事に目覚める。娘は母が無事に戻ったことを喜ぶが、バックアップ前の母と違うことを母の手料理で実感し、涙を流す。
第1話の感想
『AIの遺電子』がTVアニメーション化されました。めちゃくちゃいい感じですね。
原作の漫画は、エピソードがとてもサッパリしているのですが、アニメ版は背景を適度に膨らませて感情移入する余地を作り上げています。
原作でもそうですが、人間とヒューマノイドを見分ける際に役立つ「瞳の形状」も、よりわかりやすくなっています。
原作を読んでいない方でもまったく問題なく楽しめて、1話完結型のエピソードなのでとても見やすくて良いアニメになっていると感じました。
第2話『成長限界』
©山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
第2話ネタバレあらすじ
リサは、須藤がカオルというヒューマノイドの胸を触診している姿を目にして驚く。カオルはリサに「同じ釜の飯を食べた仲」と説明する。リサは親しげな須藤とカオルの関係性が気になっている様子だ。
陸上部で短距離競技をするヒューマノイドのジュンは、記録が伸びず、須藤に悩みを吐露する。ジュンは、ボディの仕様が決まっていて成長に限界があると自覚していた。
ジュンは同じ陸上部の友人、マサと切磋琢磨していたが、マサが自分を追い抜いていくことに苛立ちを隠せず、衝突してしまう。
ある時、体育のバレーのプレー中にジュンとマサが接触し、マサは足に怪我を負い、大会の予選に出られなくなってしまう。
ジュンがマサの病院へ見舞いに行くと、マサは人知れずジュンの予選大会の映像を観て応援していた。
後日、マサは松葉杖の状態で大会の会場でジュンを応援しに来ていた。ジュンはマサが見守る中、好記録を樹立する。
須藤はリサに昔の写真を見せると、須藤がカオルと言う人物は男の姿だった。リサがカオルの性別について質問すると、須藤はカオルにとって「男でも女でもないのが理想だろう」と伝える。
カオルは、とある研究室へ向かい、「審議会のメンバーについて相談したい」と、MICHI(ミチ)という人物に接触していた。
第2話の感想
第2話は、原作漫画の「ベスト」と「ミチ」いうエピソードが組み合わさったエピソードになっていました。
ヒューマノイドのリサ表現がやや過剰(お腹を空かせて顔を真っ赤にさせるなど)の印象もありましたが、それがあるからこそ、ヒューマノイドの専門医である須藤が、自分に好意を寄せまくっている“ザ・看護師”のリサを近くに置いていることの気味悪さが浮き彫りになっています。
それを、以前は男だったカオリに指摘されるところも対比になっていて好きな場面です。タイトルを「成長限界」に変更しているところも良かったですね。
第3話『心の在処』
©山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
第3話ネタバレあらすじ
ある女性のヒューマノイドが死体を埋めながら、「私は悪くない」と言葉にする。
シズカというヒューマノイドは、女性を喜ばせるために作られたジョーという恋人ロボットと7年一緒に暮らしていたが、「好きな人ができた」と涙ながらに伝える。
壊れたクマのぬいぐるみ型ロボット・ポッポを修理した須堂。持ち主の少年・ケンジは大喜びするが、母親はポッポに強く感情移入する息子を心配していた。
すると後日、ケンジがポッポを抱えて一人で再び須藤新医院へやってくる。ポッポには「ユキちゃん」という前の持主のデータがメモリ内に残っており、修理の際にそのデータが復活してしまっていた。
しかし、ケンジはユキのデータを消去せず、ポッポと2人で公園に家出していた。ケンジは、シズカがジョーの恋人ロボットサービスの利用を終える様子を目の当たりにする。
ケンジはポッポがロボットであることを理解しながらも葛藤していた。その後、ケンジが疲れて公園で寝てしまうと、心配したポッポが周りの人に助けを求めようとして車に轢かれてしまう。
ポッポは大きく破損してしまうが、ケンジの母はポッポがケンジのために行動したことを理解し、須藤のもとへ修理を依頼する。
ポッポが修理されて元に戻ると、ケンジと母はポッポを連れてユキの墓参りをする。ポッポは、ある時突然ユキと会えなくなったという話に涙を流していた。
シズカが「ジョーのことを忘れられない」と須藤の元にやってくるが、須藤は治療の出番ではないと伝えて帰す。とあるマンションの一室では、女性の前に派遣されるジョーの姿があった。
第3話の感想
第3話は「ポッポ」と「ジゴロのジョー」というエピソードを組み合わせた内容になっていました。
原作漫画でも、それぞれ単体のエピソードとして面白いのですが、アニメではケンジとポッポの物語を主軸にして、ジョーとシズカの様子を上手く切り取って組み合わせているのが見事。
ケンジとシズカ、それぞれがぬいぐるみロボット、恋人ロボットという「感情を持たない」対象に強い思いを抱いている様子を丁寧に描いていました。
第4話『4つのケース』
©山田胡瓜(秋田書店)/AIの遺電子製作委員会2023
第4話ネタバレあらすじ
リサは須藤の健康診断に協力し、血液を採取しながら、須藤が他人に対して好意を抱いたりするのだろうかと考えていた。
リサの友人の三好レオンは、自分の好きな人物・シナリオでAIがドラマを作り上げる「なりきりジェネレーター」を使ってリサの気になる須藤のドラマを作って見せるが、リサは困惑する。
高校生の野崎は、好きな人物の写真をAIに学習させてキャラクターとして召喚できる恋愛VRゲームに手を出していた。野崎は同じクラスで好きな女性の佐々木の画像をゲームに使用する。
自分のことを好いてくれる「ナナ」という名前のVRキャラとデートを繰り返し、ゲームにハマっていく野崎。ある時、佐々木から映画デートに誘われ、勢いで告白すると受け入れられ、2人は実際に付き合うことになる。
しかし、高揚するあまり佐々木と「ナナ」を間違えて呼んでしまい、ゲームで彼女を使用したことがバレて振られてしまう。野崎は落ち込むが、ゲームのナナは常に自分の味方であることを感じ、後ろめたさも感じなくなっていた。
ヒューマノイドの豊田ヒデと彼女のカヨは、ヒデの度重なる浮気で破局の危機に瀕していた。ヒデは自分を変えるため、須藤に依頼し、耳の裏に押すと理性を漲らせる「賢者ボタン」を設置する。
それ以降、ヒデは誘惑に負けずに浮気でカヨを泣かせることはなくなった。しかし、ある日、カヨに好きな人ができたと別れを告げられる。
ヒデとカヨをつなぎとめていたのは、恋心ではなくカヨの嫉妬心だったことが判明し、ヒデはスイッチを取ることにする。
リサは本物の須藤がいいと伝え、三好レオンの家から帰ろうとしていた。レオンはリサと自分のドラマも作ったと冗談めいて伝えると、リサは笑って帰っていく。レオンはその後ろ姿を寂しそうに見つめていた。
そんな中、須藤は自分の血液を別の用途のテストに使おうとしていた。
第4話の感想
第4話は、25分のアニメに4つのエピソードを入れ込んだオムニバス。笑えるエピソードでまとめながらも、VRと現実との隔たりを描き、人間の感情の複雑さを感じさせます。
原作でもそうでしたが、「賢者ボタン」を押した後の理性が漲ぎる場面は、大友克洋『童夢』のじいさんのオマージュと思われる一コマ。
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【ネタバレ感想・考察】『イノセンツ』北欧発の『童夢』型サイキック・ホラー
現実社会でも、スマホやネットの普及でアダルトコンテンツへ容易にアクセスできることで「インターネットポルノ中毒」が問題視されていたりするので、他人事ではない話です。
リサへの密かな思いを抱えるレオンの寂しい感情もよく伝わり、このシリーズの幅の広さを感じるエピソードになっていました。
第5話『』
8月4日放送予定。
第6話『』
8月11日放送予定。
第7話『』
8月18日放送予定。
第8話『』
8月25日放送予定。
第9話『』
9月1日放送予定。
第10話『』
9月8日放送予定。
第11話『』
9月15日放送予定。
第12話『』
9月22日放送予定。