今回ご紹介する作品は『MONSTERS 一百三情飛龍侍極(いっぴゃくさんじょうひりゅうじごく)』です。
「ONE PIECE」の原作者である尾田栄一郎氏が、同作連載開始前の1994年に発表した読み切り短編漫画「MONSTERS」を初のアニメ化。
本記事では、ネタバレありで『MONSTERS 一百三情飛龍侍極』を観た感想・考察、あらすじを解説。
『ONE PIECE』ファンが喜ぶ粋な演出もあって楽しい作品でした!
『MONSTERS 一百三情飛龍侍極』作品情報・配信・予告・評価
『MONSTERS 一百三情飛龍侍極』
あらすじ
平和な時代に唯一つ、緩やかな時の流れを搔き乱す〝恐怖〟が天空を舞っていた。その土地の絶対の壊滅をも意味するという〝恐怖〟。それは竜の出現だった――。
作品情報
タイトル | MONSTERS 一百三情飛龍侍極 |
原作 | 尾田栄一郎 |
監督 | 朴性厚 |
構成 | 朴性厚 |
キャラクターデザイン | 小島崇史 |
美術監督 | 赤井文尚 |
色彩設計 | 長澤諒司 |
撮影監督 | 李周美 |
編集 | 柳圭介 |
音楽 | 堤博明 |
音楽プロデューサー | 小林健樹 |
製作国 | 日本 |
制作会社 | E&H production |
製作年 | 2024年 |
上映時間 | 25分 |
配信サイトで視聴する
配信サイト | 配信状況 |
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おすすめポイント
19歳の尾田栄一郎による伝説の短編読切がアニメ化!
『ONE PIECE』連載前の当時19歳の尾田栄一郎が描きおろした伝説の短編が初のアニメ化。
『ONE PIECE』スリラーバーク編でゾロが対峙する剣豪リューマが主人公。
読切短編を25分のアニメで描き、無駄のない面白さと、最後にはファンが喜ぶ演出まで描いた楽しい作品です。
監督・スタッフ
アニメ化にあたって監督・構成を務めたのは韓国人アニメーターの朴性厚(パク・ソンフ)。『ONE PIECE FILM Z』にもアニメーターとして参加し、『呪術廻戦』第1期、『劇場版 呪術廻戦 0』、『THE GOD OF HIGH SCHOOL ゴッド・オブ・ハイスクール』、『牙狼〈GARO〉-VANISHING LINE-』などを手掛けてきた人です。
2021年に監督が設立した制作会社「E&H production」が本作のアニメーション制作も担当しています。
キャラクターデザインは小島崇史。『フリップフラッパーズ』『ドラえもん のび太の新恐竜』『平家物語』キャラクターデザイン・総作画監督などを手掛けています。
原作
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原作は『ONE PIECE』の尾田栄一郎。「週刊少年ジャンプ」の増刊である「週刊少年ジャンプ特別編集増刊1994年Autumn Special」号にて短編読切として掲載され、1998年11月4日発売のジャンプコミックス『WANTED! 尾田栄一郎短編集』に収録されています。
『MONSTERS』は、2021年に『ONE PIECE』の100巻到達を記念して、ジャンプ公式YouTubeチャンネル「ジャンプチャンネル」にて著者・尾田栄一郎氏の伝説的読切作品『MONSTERS』のボイスコミック動画を公開されました。
『MONSTERS 一百三情飛龍侍極』キャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
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リューマ(細谷佳正) 主人公。“兵(つわもの)の魂”を求め流浪する若き侍。 | |
フレア(花澤香菜) 7年前に竜の奇襲を受けた町の唯一の生存者。 | |
シラノ(東地宏樹) 奪われた竜の角笛を取り戻す旅をする一流剣士。 | |
ディーアール(真殿光昭) 三流剣士。 | |
マスター(野村勝人) フレアが働くレストランのマスター。 | |
竜/ドラゴン(中井和哉) 天空を舞う“恐怖”の象徴。 |
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】『MONSTERS 一百三情飛龍侍極』どんな話?あらすじとラスト
(C)尾田栄一郎/集英社
物語は、10年前、何者かによって不思議な力を持つとされる“竜の角笛”が盗まれたというナレーションから始まる。平和な時代だったが、天空を舞う“恐怖の象徴”であるドラゴンの出現によって、人々の緩やかな時の流れは掻き乱される。
タダ飯にありつこうとした流浪の侍リューマは店を追い出される。一方、レストランでウエートレスをするフレアは、かつて命を救われた剣豪のシラノと7年ぶりに再会する。
リューマはフレアから食事を提供されて感謝するが、シラノが店を出ようとすると、2人の剣の鞘がぶつかる「鞘当て」が起きる。シラノは偶然、鞘が当たってしまったと謝罪するが、リューマは「刀剣は剣士の命」と言い、刀を抜いてシラノに斬りかかる。
リューマはシラノに剣をかわされて刀を突きつけられるが、リューマの剣は銅像を真っ二つに切断していた。
その後、リューマはレストランのマスターから7年前のドラゴンの大奇襲の話を聞かされる。ドラゴンの襲撃で町は壊滅するが、ドラゴンに立ち向かったシラノは、灰になった町の中から唯一の生存者である幼きフレアを抱えて生還した。
リューマはシラノが世界一の剣士キングに並ぶ強さだと知り、いつかキングと戦いたいと思っていることを明かす。
(C)尾田栄一郎/集英社
その後、店を出たリューマは、三流剣士のディーアールに鞘当てされて呼び止めるが、ディーアールは町民たちの前でリューマに剣で刺された演技をし、自分が持っている竜の角笛が狙いだと勝手に決めつけると、角笛を吹いてしまう。
ディーアールが角笛を吹いたことで町民たちは混乱し、フレアはリューマに怒りをぶつける。すると、シラノが現れ、ディーアールが吹いた角笛が本物であると言う。彼は角笛を盗まれたときに部下たちを殺されたと明かし、自らがドラゴンに立ち向かうことを宣言する。
ドラゴンの恐怖を知っているフレアはシラノを心配するが、シラノは町民たちに逃げるように伝え、町に残って1人で戦うことを誓う。
夕方になり、町民たちが町から避難するが、フレアとリューマはまだ町に残っていた。フレアはシラノが町のためにドラゴンと戦って死ぬ気だと感じ、彼を止めに行こうとする。しかし、リューマの制止を振り切りると、2人はシラノとディーアールが火事場泥棒している姿を目撃する。
ドラゴンの襲撃騒動は、シラノとディーアールによって仕組まれたこと、7年前の町の襲撃も2人が仕組んだものであることが判明する。7年前、シラノは町を破壊しただけではなく、フレアの親を殺し、名誉を得るために幼きフレアを利用したのだった。
(C)尾田栄一郎/集英社
フレアはリューマの前では平気なふりをするが、1人で号泣する。その姿を知ったリューマは、シラノとディーアールの前に現れる。リューマは一太刀でシラノを倒すと、驚いたディーアールは本物の竜の角笛を持っていることを明かす。
そんな中、町にドラゴンが飛来する。絶望していたフレアは死のうと考えてドラゴンの目の前に立つが、彼女の前にリューマが現れる。リューマはドラゴンと戦い、ドラゴンの首を一刀両断して倒す。
フレアが町と自分を助けた理由を尋ねると、リューマは「飯のご恩」だと言い、再来を誓う。町民たちはシラノに騙されたことを知り、マスターは世界一の剣士キングの名前が、彼に助けられた人々が付けた名前「リューマ・ド・キング」であることを思い出す。
ラストシーンは、『ONE PIECE』スリラーバーク編、ゾロとリューマの決着後のシーンに繋がり、ゾロは名刀『秋水(しゅうすい)』を譲り受ける。
リューマとゾロ、名刀・秋水の関係
(C)尾田栄一郎/集英社
『MONSTERS 一百三情飛龍侍極』は、流浪の侍リューマの活躍を描いた作品です。1話完結の読切短編なので、アニメも1話分の25分で完全に完結しています。
主人公のリューマは、『ONE PIECE』の尾田栄一郎氏が単行本47巻のSBSにて、『MONSTERS』のリューマと『ONE PIECE』のゾロについて関係を明かしています。
質問者:昔ドラゴンを倒したと言われている"剣豪リューマ"は尾田栄一郎短編集「WANTED!」であったMONSTERSの主人公リューマのことですか?ですよね?
尾田先生:短編「MONSTERS」の主人公の侍ですね。『ONE PIECE』の世界ではすでに、病気で命を落とした伝説の剣士として名を残しているようです。別に素通りでも構わなかったんですが、結構な方々が気付いてくれて、嬉しかったです。
リューマが『ONE PIECE』に登場するのは、王下七武海ゲッコー・モリアとの戦いが描かれるスリラーバーク編(46巻~50巻)です。
モリアは、影を支配し、自在に操ることができる超人系悪魔の実「カゲカゲの実」の能力者。相手から影を奪い取り、それを死体に入れることで、本体の戦闘力を引き継いだ「ゾンビ」を生み出すことができます。
モリアは、侍リューマの遺体と名刀「秋水」をワノ国から盗み、ブルックの影を入れられたモリアのゾンビ兵として復活させられます。その後、(ブルックの影が入った)リューマはゾロとの戦いに破れ、名刀・秋水をゾロに手渡します。
秋水は大業物21工の一本である黒刀であり、伝説の剣士として名を馳せたリューマと、国宝である秋水はワノ国で讃えられていました。リューマは病死するまで、生涯無敗の大剣豪であり、秋水は、リューマの歴戦によって黒刀に“成った”と言われています。
その後のワノ国編(90巻〜105巻)では、リューマはワノ国の屈強な「霜月」の一族「霜月リューマ」であることが明らかになり、ゾロの先祖であることが明かされます。ワノ国編では秋水を巡る物語が展開され、最終的に、ゾロはワノ国から盗まれた秋水を返還し、秋水に代わる刀として閻魔(えんま)を手に入れました。