相関図・登場人物・キャラクター解説
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第一章 スージー 応答せよ
ロシアの実験
1984年、とある研究施設で、2人の科学者が巨大な装置の電源を入れる。政府関係者らしき男たちが見守る中、装置は壁に向けて電撃ビームを放ち、ゲートを開こうとする試みが始まる。しかし暴走した装置は激しく爆発し、近くの科学者たちは溶けるように命を落とす。
視察していた将軍は失敗に激怒し、体格の良い部下に主導者の科学者を殺させる。そして残された科学者へ「一年以内に装置を完成させろ」と命じ、ヘリで立ち去っていく。はためく国旗はソビエト連邦のもの。この場所がロシアであることが明らかになる。
ホーキンスに夏がやってきた
1985年6月28日。ホーキンスでは、イレブンとマイクが彼女の部屋でキスをしている。ホッパーは2人の関係が気がかりで仕方ない。マイクは「また明日」と伝えて家を出ると、新しくできたスターコート・モールに向かい、ルーカス、マックス、ウィルと合流する。
彼らはスティーブが働くアイスクリーム屋に立ち寄り、スティーブに案内されて裏口から映画館へ忍び込む。彼らが映画を観始めたところで、モール全域と周囲一帯が突然停電する。同じ頃、町外れの廃工場では、埃が渦を巻き、黒い煙のような塊が現れてネズミを追い回していた。
そして電気が復旧した瞬間、ウィルの首筋にかつての感覚が走る。彼はそれをマインド・フレイヤーの気配だと悟るが、心配するマイクには「なんでもない」とごまかす。
翌朝、ナンシーとジョナサンは一緒のベッドで目を覚まし、停電によって時計がリセットされていたために寝坊してしまい、急いで新聞社「ホーキンス・ポスト」へ向かう。
ジョイスは冷蔵庫に貼っていた磁石が落ちていることに気づき、ウィルが描いたボブの絵を見つめてから磁石を拾い直す。
ダスティンは1ヶ月間のサイエンスキャンプから帰宅するが、トランシーバーで誰も応答しないことに落胆する。しかし実は仲間たちは家の中でサプライズを仕掛けていた。イレブンが能力でおもちゃを動かして誘導し、サプライズは大成功!のはずが、驚いたダスティンは反射的にヘアスプレーを噴射し、ルーカスの目に直撃させてしまう。ヘアスプレーはスティーブ直伝のものだ。
一方、市民プールでは、監督員として働くビリーに熱い視線を送る母親たちが集まっていた。その中のひとりには、マイクの母カレンもいる。ビリーはまんざらでもない様子で、カレンの水着を褒める。
ホッパーはジョイスの店を訪れ、イレブンとマイクの距離が近すぎることへの不満をぶつけ、「引き離したい」と訴える。しかしジョイスは、大人として冷静に話し合うべきだと諭し、台本まで作成した。流れでホッパーはジョイスを食事へ誘うが、彼女は穏やかに断る。
“セレブロ”
新聞社では、ナンシーがランチを配りながら「モールの影響で地元店が潰れかけている」という記事案を提案するが、男性ばかりの編集部は彼女をまともに取り合わない。
その頃、ダスティンはキャンプで作り上げた“セレブロ”と名付けた強力な無線タワーを披露。目的は遠距離恋愛中の彼女・スージーと話すことだと言い、一同を驚かせる。一行はダスティンに導かれて丘へ向かい、セレブロを設置すること。
スターコートでは、スティーブは大学不合格を受け、父の言うままアイスクリーム屋で働いていた。店に来る女子へのナンパは連戦連敗で、それらはすべて同僚のロビンに記録されている。
子どもたちは丘の上でセレブロを設置し、電波の届くベストポジションを探す。しかしマイクとイレブンは「帰る時間」と言って先に帰ってしまう。仲間たちは2人の仲睦まじい様子にやれやれという様子だ。
一方、ウィルの首筋が再び反応し、足元では大量のネズミが走り抜ける。無数のネズミたちは廃工場へ集まり、地下へ降りていくと激しく痙攣し、次々と破裂し、ドロドロの肉塊となっていく。
プールでは、ビリーが泳ぐカレンをじっと見つめ、彼女が上がると声をかけてモーテルでの“個人レッスン”に誘う。カレンは動揺しつつも誘いを受けてしまう。
その夜、ジョイスは一人で夕食をとりながら『チアーズ』を視聴し、ボブと過ごした記憶を思い返す。するとまた冷蔵庫の磁石が次々と落下する。その頃、編集部で残業しているナンシーのもとには、「病気・ネズミ」について連絡する、ドリス・ドリスコルという人物からの電話が入る。
忍び寄る影
ホッパーは再びマイクとイレブンの部屋を訪れる。今回はドア越しに声をかけ、2人に時間を与えてから入室。ジェイスに手伝ってもらった原稿を読み上げようとするが、マイクの皮肉混じりの反応に苛立ち、ついに我慢の限界を迎える。ホッパーはマイクを車に乗せると、イレブンの父親として「話し合いの結果次第ではイレブンと付き合い続けてもいい」と、感情的にマイクに伝える。いかにも娘を心配する父親といった感じだ。
一方そのころ、丘に残ったダスティンはスージーに何度も呼びかけるが返事はなく、ルーカスとマックスはスージーの存在を疑い始める。夜が近づいてきたことで、皆が丘を降りていき、ダスティンだけが残る。その時、セレブロからロシア語の音声が流れ始める。暗号めいた声が響く中、ロシアの基地では、科学者が建設中の巨大装置の前を歩き、同僚たちはその“美しさ”を口にする。
一方、カレンはビリーに会うため身支度を整え、指輪を外して家を出ようとする。しかしソファで眠る夫テッドと、寄り添う娘ホリーを見つめて思い直し、外出をやめる。同じ頃、ビリーは車を走らせながらカレンに言うセリフの練習をしていた。すると突然何かがフロントガラスにぶつかり、彼の車は制御不能となって廃工場の脇へ突っ込む。車外に出たビリーは、フロントガラスについた奇妙な液体に気づく。その瞬間、足に触手が巻きつき、彼は地下へと引きずり込まれていく。
第二章 モールラッツ
もう一人のビリー
ブリンボーン製鉄所の地下で何かに襲われたあと、ビリーは必死でそこから逃げ出し、近くの電話ボックスへ逃げ込む。警察に電話しようと受話器を取るが、その瞬間、周囲の明かりがチカチカと点滅し始め、ビリーの意識は突然裏側の世界(アップサイドダウン)へ飛ばされる。
闇の中から人影の集団がこちらへと近づいてくると、その中の一人が前に出てきて姿を現す。ビリーはそれがもう一人の自分であることに気づく。
マイクとイレブンのぎこちない恋愛
イレブンは、マイクが約束の時間に来ないことに不満のようだ。彼に電話すると、マイクは「今日は会えない」と伝える。マイクはホッパーからの圧力に屈して、イレブンとの距離感を調整しようとしていた。マイクは「友だちは嘘をつかない(Friends don’t lie)」とお決まりセリフを口にするが、しかしイレブンは適当な嘘で誤魔化されていることを察している。
そのやり取りをこっそり聞いていたホッパーは、自分の“圧”が効いたと悟り、満足げにニヤニヤしている。彼はジョイスの働く雑貨店に現れると、「うまく話ができた」と得意げに報告。あらためて彼女を一緒に夕食に誘う。
そのタイミングで、巡査のパウエルから無線が入り、町長からの依頼でスターコート・モールに反対する市民による抗議活動が市庁舎前で起きているので対応してほしいと連絡が入る。ホッパーが店を出て行くと、ジョイスは店のマグネットが家と同じように次々と落ちてしまうことに気づき、怪訝そうな表情を浮かべる。
一方ホーキンス・ポストでは、ナンシーが、意地悪な先輩記者ブルースにからかわれながらも、上司トムへコーヒーを運んでいる。ナンシーはうまく嘘をついて昼休みに抜け出す口実を作り、ジョナサンと共に、電話を受けたドリス・ドリスコル夫人宅へ取材しに行こうとする。
ロシア語の暗号と“病気ネズミ”
モールでは、スティーブとダスティンが再会。2人は大の仲良しになっているようだ。ダスティンはキャンプでできた彼女スージーの話を語り、さらに自分が傍受したロシア語のメッセージについて説明。「暗号を解読できれば、自分たちはヒーローになれる」ダスティンはスティーブに翻訳の手伝いを頼む。
その頃イレブンは、マックスのもとを訪ね、「マイクに嘘をつかれた」と恋愛相談。マックスは「待ってるだけじゃダメ」と、アドバイスする。一方マイクも、ルーカスとウィルに恋愛相談していた。ルーカスはスターコート・モールへ行き、プレゼントを選んでイレブンの機嫌を直してもらう作戦を提案。マックスもイレブンを誘い、「遊びに行こう」とモールへ連れ出すことにする。
市民プールでは、汗だくのビリーの異変に気づいたカレンがバックヤードで近づく。モーテルで会う約束をすっぽかしたことを謝ろうとするが、ビリーは冷たく「俺に近づくな」と言って突き放す。このとき彼は一瞬、カレンを襲うような激しいビジョンを見ていた。ビリーはライフガードの椅子へ向かう途中、強烈な日差しと暑さにクラクラする。
同じ頃、ルーカスの妹エリカがアイスの試食を繰り返してロビンをうんざりさせていると、バックヤードではスティーブとダスティンがロシア語の翻訳に苦戦していた。スティーブは録音の最後に流れる音楽に聞き覚えがある気がするものの、どこで聞いたのかまでは思い出せない。
そこへロビンが「仕事しろ」と文句を言いに来る。彼女は2人の話し声が大きいため内容をすべて聞いていた。「私は4か国語話せる」と豪語するロビンはスティーブに変わってロシア語の翻訳を買って出る。
一方、ナンシーとジョナサンは、独り暮らしの老婦人ドリス・ドリスコルの家を訪れる。ドリスコルは地下室へ案内し、大量に積まれた肥料の袋が破られ、中身が食い荒らされている様子を見せ、「狂犬病にかかったネズミの仕業だ」と訴える。彼女はそのうちの一匹を捕まえておいたと、2人に見せる。
その頃、ホッパーは市長ラリー・クラインのオフィスに呼び出されると、スターコートに反対するデモ隊は正式な許可を取っていないから「追い払え」と命じる。ホッパーは「正当な権利による抗議を権力で潰せば再選に響く」と警告するが、クラインは「来たる7月4日の独立記念日フェスを派手にやれば、票なんてすぐ戻る」と、まったく意に介していない。
モールでショッピング
イレブンとマックスはスターコートに到着。イレブンは「大勢の人がいる場所はホッパーのルール違反になる」と不安を口にするが、マックスは「たまにはルールなんて忘れなよ」と背中を押し、ショッピングを楽しませようとする。イレブンも純粋な買い物を大いに満喫する。一方マイクとルーカス、あまり乗り気でないウィルは、イレブンへの“謝罪プレゼント”を探しにモール内を散策。ウィルは今までのように『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をやろうと提案するが、あえなく却下される。
そのころドリスコルの家では、ジョナサンがケージの中で暴れ回るネズミを撮影し、ナンシーは電話で近隣の農家に「病気のネズミ」について聞き込みをするが、有力な情報は得られない。やがてネズミは動きを止めて不自然に痙攣し始めると、ジョナサンは不思議に感じるが、ナンシーに「戻る時間」と促されてその場をあとにする。2人が出て行った直後、部屋の電気が点滅し、ネズミの体は破裂してドロドロの肉塊へと変わる。そして肉塊は動き出してケージの隙間からヌルリと外へ染み出し、どこかへ這っていく。
プールでは、ビリーが暑さに耐えられなくなり、更衣室のシャワー室で水を浴びる。彼の左腕の血管が黒く浮き上がり、触れると激痛が走る。その瞬間、マインド・フレイヤーのビジョンが押し寄せ、苦しみはさらに増していく。ライフガード仲間のヘザーが様子を見に来るが、ビリーには彼女が「彼のところへ連れてって」と言っているように聞こえる。ビリーは、その“声”に従うようにヘザーへ襲いかかる。
やがてモールの外で、マイクたちとイレブンたちが鉢合わせする。イレブンはマイクの前に立ち、「嘘をついた」と問い詰め、みんなの目の前で「別れる」と宣言。男子チームは全員言葉を失う中、マックスとイレブンは勝ち誇った様子だ。
近づくロシアの影
夜、ホッパーはジョイスとの“デート”のために派手な新しいシャツを購入し、レストランで待っていた。しかし約束の時間を過ぎても、ジョイスは現れない。その頃、ジョイスは科学教師スコット・クラークの家を訪ね、町中で起きている「マグネットがくっつかなくなる現象」について相談していた。クラークは可能性として、「どこかに強力な電磁場が存在している」と伝えるが、それを維持するには計り知れないエネルギーが必要だと説明する。
同じ頃、モールのアイス店ではロビンとダスティンがロシア語の暗号を少しずつ訳し、「週は長い(The week is long)」という最初の一文を読み解く。その後もロビンの活躍で翻訳が進められていく。閉店後、スティーブはモール内にある子ども用の木馬から流れる音楽が、録音テープの最後に入っていたメロディと同じであることに気づく。スティーブは、暗号がロシアからではなく、このモールから発信されていると推測する。
一方レストランでは、ジョイスにすっぽかされたホッパーがワインを飲み過ぎて酔っ払っていた。店をふらつきながら出ると、ヘルメットを持つ大柄な男とぶつかってしまう。彼はホッパーの前に町長クラインの部屋から出てきた人物であり、かつてロシアの研究施設で科学者を始末していた男だ。
夜、ビリーは車を走らせ、再び製鉄所へ向かう。トランクを開けると、中には縛られて気絶しているヘザーが入っている。ビリーは彼女を地下へ連れて行き、「すぐに終わる」と言い聞かせる。すると暗闇の奥から、“何か”が唸り声を上げながら近づいてきて、ヘザーは恐怖に悲鳴を上げる。その様子を、ビリーはただじっと見つめていた。
第三章 消えたライフガード事件
のぞき見
イレブンとマックスは、イレブンの部屋で女子会をしている。マイクと別れたことを少し後悔している素振りを見せるイレブンに対して、マックスは「そのうちマイクのほうから謝ってくる」と言い聞かせる。
そこで2人は、イレブンの能力を使ってマイクの様子を“のぞき見”することに。イレブンが“感覚遮断空間”に入り、意識をマイクへ向けると、マイクとルーカス、ウィルの3人の姿を捉える。マイクはルーカスに「俺はなにも悪くないのに」と主張し、ルーカスは「女ってのは感情で動いてるんだ」と説得する。その横でウィルは、「D&Dをやろうよ」と何度も提案するが、2人はまたしても聞き流している。
その後、ホッパーが酔っ払って帰宅すると、マイクが家にいないことを知って上機嫌になる。イレブンとマックスは次なる“のぞき見”の相手をルーレットで決め、ビリーに決まる。イレブンが意識を向けると、ビリーがヘザーを製鉄所の地下へ連れて行く光景が見える。その瞬間、ビリーは誰かに監視されていることを察したかのように立ち止まる。視線が合いそうになると、イレブンは現実に引き戻され、震えながら息を整える。
思春期の衝突
翌朝、ウィルが“賢者ウィル(Will the Wise)”の姿でマイクとルーカスを起こし、「女子抜きで『D&D』をやるぞ!」と意気込む。しかし、マイクとルーカスは気乗りしない様子だ。プレイ中も電話が鳴るたびに2人はそわそわし、ゲームに集中しない。ついには自分たちのキャラクターをわざと死なせてしまい、ウィルを本気で怒らせてしまう。
怒ったウィルは「イレブンに夢中で仲間の輪が壊れている」と主張するが、マイクは「ずっと地下室で遊ぶような子どものままでいられない」と口にしてしまう。その一言に深く傷ついたウィルは、雨の中へ自転車で飛び出していく。
ホーキンス研究所跡にて
二日酔いのホッパーのもとに、ジョイスが訪問。ホッパーは約束をすっぽかされたことを指摘するが、彼女は町中のマグネットがくっつかなくなったことに夢中だ。さらにクラークに会うために“デート”に来なかったことを知り、ホッパーはさらに不機嫌になる。
しかし、ジョイスが真剣な表情で「ホーキンス研究所の仕業かもしれない」と主張すると、ホッパーはそれが間違いであることを証明するために調査に行くことを承諾する。2人はかつてゲートがあった研究所跡に向かう。2人が内部に入ると、電源が落ちているはずの監視カメラが起動していた。
ジョイスはボブが殺された場所で当時を思い出す。不安を拭いきれない彼女に、ホッパーは「分かってくれる人間がちゃんといる」と伝える。いい雰囲気になったところで、どこからか物音が聞こえ、ホッパーはその正体を確かめに向かう。
音の先で、ホッパーはクライン市長のオフィスにいたあの大柄な男に襲われ、あっという間に叩きのめされる。ジョイスが駆けつけたときには、ホッパーは床に伏しており、男がバイクで走り去るのをただ見送るしかなかった。
ナンシーとジョナサンの調査
ホーキンス・ポストでは、ナンシーがジョナサンの撮った“狂ったネズミ”の写真を記者たちに見せ、「町中で“化学薬品を食べるネズミ”の報告が上がっている」と説明。しかし男だらけの記者陣は、今回も彼女の話を笑いものにして取り合わない。
ナンシーは記者からの嫌がらせに苛立ち、ジョナサンに「証拠を持っていって納得させる」と提案。ジョナサンはクビになるのを心配しつつも、結局ナンシーに同行する。その後、2人がドリスコルの家に向かうと、彼女は地下室で肥料をむさぼるように食べていた。
ロシアの暗号解読
ロビンがロシア語の翻訳作業を進める中、スティーブとダスティンは「怪しい人物」を探すためモールで張り込みをしていた。恋愛話になり、ダスティンは「ロビンことが好きなんでしょ」と尋ねると、スティーブは「タイプじゃない」と否定する。
その後、2人は「いかにも怪しい男」を尾行するが、正体はただのエアロビクスのインストラクターだと判明。一方ロビンはロシア語の暗号を最後まで翻訳するが、その意味が理解できずにいた。
そんな中、アイスの納品時に運送業者が身につけていた「銀色のヤマネコ」のロゴを見たロビンはひらめく。翻訳したロシア語の言葉が、モール内のさまざまな部分に照らし合わせることができたのだ。ロビンは興奮しながら、「暗号の解読ができた」とスティーブとダスティンに報告する。
その後、3人はスターコートの屋上から運送業者の荷下ろし場を、解読した時刻に合わせて監視する。ロシア語を話す銃を持った警備員が確認できたが、音を出して気づかれそうになり、3人は慌ててその場から逃げ出す。
ビリーの様子が変だ
マックスとイレブンはビリーの様子を確認しに家に向かうと、彼は不在だった。部屋を調べると、浴槽は溶けた氷水でいっぱいになっており、ゴミ箱には血のついたライフガード用ポーチとホイッスルが捨てられているのを見つける。
2人は市民プールを訪れ、見つけたポーチとホイッスルがヘザーのものだと知る。しかしその日は彼女は「休み」だと告げられる。イレブンは従業員ボードからヘザーの写真をこっそり拝借。2人はシャワールームを活用し、イレブンは“感覚遮断空間”からヘザーの居場所を探す。イレブンが見たビジョンは、赤いドアのある家で、氷水の張られたバスタブの中からヘザーが助けを呼ぶ姿だった。
その後、2人はヘザーの家を訪れる。玄関のドアはイレブンがビジョンで見たのと同じ赤い扉だ。中へ入ると、そこにはヘザーと両親、そしてビリーが食卓を囲んでいた。ビリーは何事もなかったかのようにマックスを「俺の妹だ」と紹介し、ヘザーもにこやかに挨拶する。
2人は不審に思いながらも決定的な証拠はつかめず、そのまま帰ることに。ビリーは2人が帰るのを見送りながら、静かにイレブンの後ろ姿を見つめていた。彼のビジョンでは、どうやら彼はイレブンが“ゲートを閉じた少女”として認識しているようだ。
その頃、マイクとルーカスは、ウィルを探してバイヤーズ家を訪ねるが、彼は家におらず、隠れ家のキャッスル・バイヤーズへ向かったことを知る。キャッスル・バイヤーズでは、ウィルはかつて皆で『D&D』をしていたころの写真や、ハロウィンの仮想を楽しんだ写真を見つめ直して思い出にふける。しかし我に返り、「こんなのバカみたいだ」とつぶやき、自分の秘密基地を壊し始めてしまう。雨が降る中、マイクとルーカスはウィルを見つけるが、ウィルは首の後ろに鳥肌が立ち、震えた声で「あいつが戻ってきた」とつぶやく。
イレブンとマックスが帰ったあと、ヘザーの母は突然意識を失って倒れ込む。心配した父が近づくと、背後からヘザーが食器で頭を殴り、ビリーがクロロホルムで彼を眠らせる。
第四章 サウナテスト
コード・レッド
イレブンはマックスのヘザーの様子が「明らかにおかしかった」と不安を口にするが、マックスは「気にしすぎ」と、『ワンダーウーマン』のコミックを見せて気を紛らわせようとする。
そのころ、老婦ドリスコルは錯乱状態で救急隊員に取り押さえられていた。ナンシーとジョナサンは、その様子を不安そうに見守る。ドリスコルは「戻らなきゃ」と繰り返し叫び、救急車が製鉄所の前を通りかかると、その方向へ必死に手を伸ばす。
製鉄所の地下では、ヘザーの両親が縛られた状態で目を覚ます。ヘザーとビリーが現れると、ヘザーは父親に向かって「もう止められないの」と静かに告げる。2人がその場を離れると、マインド・フレイヤーが姿を現し、触手を伸ばして夫妻の顔に取りつく。
マックスは、ルーカスからの必死なトランシーバーによる連絡を無視し続けていたが、家の固定電話にまでかけてくるしつこさにうんざりして応じる。すると電話先はマイクからで、「緊急事態だからうちに来い」と告げる。ルーカスは今度はダスティンに連絡を取ろうとするが、ダスティンはスターコートで運送業者の「怪しい荷物」を監視中で、応対している暇がない。
マックスとイレブンがマイクの家に集まると、ウィルがここ数日感じていた“予感”について打ち明ける。それはマインド・フレイヤーの復活だ。イレブンは「ゲートは閉じた」と主張するが、ウィルは「自分から出ていった一部が戻れずに残っている」と推測。もしそうなら、マインド・フレイヤーは新しい“宿主”を探すはずだ。一同は「すでに誰かに乗り移っている可能性が高い」と調査を始める。
配送ルーム侵入作戦
ダスティンはスティーブ、ロビンと共に、「どうやって配送ルームへ潜入するか」、作戦を練っていた。スティーブが「俺が警備員をぶっ飛ばす」と言い出すと、ダスティンは即座に「ケンカに買ったことあった?」とツッコミを入れる。そこでロビンが何かひらめき、チップ入れから紙幣を掴んで店を飛び出していく。
その後ロビンは、スターコートの設計図を手に戻ってくる。図面には、アイス店から輸送会社の荷物保管室へ続く換気ダクトが描かれていた。換気ダクトからの侵入計画を立てるが、ダクトのサイズは3人が通れるようなものではなかった。
そこでロビンは、試食目当てでやってきたエリカに目をつける。エリカは事情を聞いて「余裕」と断言するが、彼女は見返りとして「一生アイス食べ放題」という破格の条件を提示する。
エリカは実際にダクトの中を這って進み、難なく荷物保管室の扉のロックを内側から解除する。屋上で待機していたスティーブ、ダスティン、ロビンも室内へ合流。謎の貨物の箱をあけると、中から放射能マークのついた緑色の液体入りカプセルが現れた。用途は不明だが、それを持って出ていこうとすると、部屋全体が揺れはじめ、出口を開けようと操作盤を触ると、部屋が下に移動し始める。保管室は巨大なエレベーターになっていた。4人は箱ごと地下深くへと下降していく。
解雇と決意
ホーキンス・ポストでは、編集長のトムがナンシーとジョナサンを叱りつけていた。2人が命令に背いてドリスコルの話を追いかけたこと、彼女が「妄想性の統合失調症」と診断されていること、さらに家族から訴訟をちらつかされていることを理由に、トムは2人のクビを宣言する。
解雇された帰り道の車の中で、ナンシーは「クビなんておかしい」と怒りをぶつけるが、ジョナサンは冷静だった。彼にとって裕福な家庭に育ったナンシーとは“解雇の重み”が違うと伝える。しかしナンシーも、「女だからといって能力がないとバカにされる屈辱はわからない」と言い返し、2人は「お互いが理解できていない」と、車内は別れ話のような空気になる。
その後、早々に帰宅したナンシーを心配した母カレンは、ナンシーから事情を聞き、優しく受け止める。ナンシーは母との会話で、意志の強さや正義感は母親譲りだと気づき、カレンも「最後まで諦めず記事にするべきだ」と背中を押す。
町長とモールの裏取引
その頃、ホッパーは小屋で目を覚ます。そばにはジョイスがいて、ロシア人の男に殴られたホッパーの怪我の手当てをしている。ジョイスは男が乗っていたバイクのナンバープレートを半分だけメモしており、彼が乗っていたのがバイクだったことを伝える。するとホッパーは、クライン町長のオフィスから出てきたライダースーツ姿の男を思い出す。
ホッパーはクライン町長のオフィスを訪ね、ロシア人の男について問いただす。強気な態度のクラインに怒ったホッパーは、暴力的に脅して追い詰める。ついにクラインは口を割り、ロシア人がスターコート・モールのオーナーと繋がっていること、彼らのために地元企業の税金を上げてスターコートを優遇していたことを白状する。
クラインは、その取引の記録が自宅の帳簿に残っていると明かしつつ、「やつらは危険だ」と忠告する。しかしホッパーは意に介さず、引きずるように連れ出し、ジョイスもそれに続く。
クライン邸でジョイスとホッパーは帳簿を確認し、買収された物件の位置がどれも発電所の近くであることに気づく。すぐ後、ホッパーはこっそり逃げ出そうとするクラインを見つけ、窓際で取り押さえ、ベッドに手錠で縛りつける。夜になって妻が帰宅すると、クラインは「今すぐ電話を持ってこい!」と怒鳴りつける。
サウナ作戦
市民プールでは、子どもたちがビリーの様子を観察している。ビリーは露出している肌をできる限り布で隠していた。ウィルは被害者が増える前に正体を確かめるべきだと主張し、彼らは営業時間後のサウナにビリーを閉じ込め、宿主かどうか確かめるという作戦を立てる。
その最中、ルーカスはウィルスに謝ろうとするが、ウィルはまともに取り合わない。一方マイクもイレブンとの関係を修復しようとするが、彼女は冷静だ。マイクは自分の様子が“のぞき見”されていたことに困惑する。
プールの営業終了後、子どもたちはビリーをサウナに誘い込む。うまく部屋に入ったところで、イレブンが念動力で彼を壁にたたきつける。全員でドアにパイプとチェーンを通して施錠し、サウナの温度を上げ始める。ビリーは怒り狂い、部屋から出すように怒鳴ると、マックスは揺れる気持ちを押さえ込み、サウナの温度を上げさせる。
ビリーは床の割れたタイルの破片をさりげなく手に取り、ガラス窓を破壊して近づいたマックスを刺そうする。ルーカスがパチンコ(スリングショット)でビリーの頭を撃ち、動きを一瞬鈍らせるが、周囲の灯りがチカチカと点滅し始め、ウィルはマインド・フレイヤーの悪寒を覚える。
同じ頃、ナンシーは病院にいるドリスコルの病室へ忍び込み、カルテを確認していた。しかしその直後、ドリスコルの心拍数が急上昇し、呼吸が荒くなり始める。それはビリーと何かがリンクしているかのようだ。
ビリーは体当たりでドアをこじ開けると、イレブンの念動力によるバーベル攻撃も振りほどき、イレブンの首を両手で締め上げる。すかさずマイクがパイプでビリーに殴りかかり、その一瞬の隙にイレブンはビリーをサウナの壁ごと吹き飛ばす。しかしビリーは負傷しながらも夜の闇の中へ走り去っていく。
その後、製鉄所の地下では、負傷したビリーがヘザーに「“あの少女”に殺されかけた」と報告。しかしヘザーは落ち着いた様子で、「あの子でも、私たち全員を相手では叶わない」と返答し、その背後には、すでにマインド・フレイヤーの支配下にある十数人の人々が、巨大な怪物の前にずらりと並んでいた。
第五章 ザ・フレイド
地下のロシア施設
スティーブ、ロビン、ダスティン、エリカの4人は、エレベーターの中でスターコート・モールの地下深くへと落ちていく。エレベーターは停止したものの、キーカードがなければ扉は開けられず、完全に閉じ込められてしまう。天井のハッチから籠の上に這い上がるも、果てしない高さの縦穴を登るのは不可能だ。
スティーブは我慢できずに小便をしたり、エリカが緑色のカプセルを飲もうとしたりする中、やがて一夜を明かして兵士たちがやってくる。彼らが荷下ろしを終えるのを天井のハッチから息を潜めて見守ったあと、4人は緑のカプセルをドアストッパー代わりに挟んでエレベーター室から脱出する。
圧力に耐えきれなかったカプセルはひび割れ、中身の液体が床にこぼれ落ちると、不気味に泡立つ。四人は急いでそこから離れ、異様に長い地下通路の奥へ進んでいく。
フレイド
イレブンは“感覚遮断”空間からホッパーの様子を確認し、彼らがイリノイ州に向かっていることを仲間たちに伝える。マックスたちは「ビリー本人をどうにかするより、マインド・フレイヤーを止めることに集中するべきだ」と意見を一致させる。その後、ナンシーとジョナサンがマイクの家の地下室にやってくる。
その日の早朝、ジョナサンはナンシーからの電話で起こされていた。彼女はドリスコルの急な変化を知らせ、「ウィルと話したい」と伝えていたのだった。
マックスたちとナンシーたちがこれまでの出来事を報告し合う中で、ビリーとドリスコルの異変が同じタイミングだったことが分かる。彼らはマインド・フレイヤーに乗っ取られた状態「フレイド(Flayed)」されたと推測する。一行はナンシーの車に乗り込み、フレイドたちの“巣”となっている場所を探るために動き出す。
謎のロシア人科学者と大男
一方その頃、ホッパーとジョイスは、市長の帳簿を手がかりに不審な動きが集中しているヘス農場に到着する。廃墟化してしるにもかかわらず明かりがついており、不穏な雰囲気を放っている。2人は中を調べ、ベッドの下に隠された地下へと続く階段を発見する。地下へ降りると、そこではロシア人の男が2人、何かの機械を操作していた。
ホッパーは彼らに銃を向けて動きを止めさせた瞬間、ジョイスは上の階から聞こえてくる足音に気づく。ホッパーを襲撃したロシア人の大男グリゴーリだ。ほどなくして、彼がアサルトライフルを構えて現れると、ホッパーは背後から銃を突きつける。しかし、グリゴーリはホッパーの脅しに屈せず、一気に殴り合いへと発展。激しいもみ合いの末、ホッパーは一撃を食らわせると、その隙にロシア人科学者一人を連れてジョイスとともに農場から逃走する。
逃走中に車が故障し、ホッパーとジョイス、ロシア人科学者の3人は森の中を徒歩で進むことになる。科学者の名前はアレクセイ。ジョイスは英語が理解できないながらに、アレクセイとコミュニケーションを取ろうとするが、ホッパーは苛立っている。アレクセイをマレー・バウマンのところへ連れて行こうとするホッパーの案をめぐって、ジョイスとホッパーは絶えず口論を続ける。
その頃、グリゴーリは故障したホッパーの車を発見し、そこから続く足跡を追跡し始めていた。ホッパーとジョイスが言い争いを続けている中、その隙にアレクセイがそっと逃走を図る。ホッパーが慌てて追うと、彼はただ近くのコンビニ「セブンイレブン」を見つけただけだった。
ホッパーはガソリンを入れに来た一台の車の持ち主に近づき、「自分たちは刑事で、こいつ(アレクセイ)は凶悪犯だ」とでたらめな話を吹き込み、“公務”と偽って車を奪い去る。しばらくして、グリゴーリもセブンイレブンに到着。車を奪われた男が警官に事情を話す中、彼は店員に詰め寄り、ホッパーたちが乗っていった車のナンバーと特徴を聞き出す。
その後、ホッパーとジョイス、アレクセイの3人はマレー・バウマンの家に到着する。バウマンは異常なまでにアレクセイを警戒するが、ジョイスの熱量に押し負けて協力を承諾する。
ゲートと巨大な装置
スターコートの地下施設にいる4人は、科学者たちや武装した兵士が行き交う施設の中心部にたどり着く。通信室と思しき部屋を見つけて忍び込むと、ちょうどロシア語の暗号を発信していた男と鉢合わせる。スティーブは咄嗟に飛びかかり、男を殴り倒して気絶させる。彼のケンカ初勝利だ。
その隣室から青白い光が漏れていることに気づいた4人が中を覗くと、そこではロシア人たちが巨大な装置を操作し、ゲートをこじ開けたまま維持していた。4人は唖然と立ち尽くす。
病院での死闘
マイクとナンシーたち一行はヘザーの家を訪ねるが、中はもぬけの殻だった。ダイニングテーブルの上には、空になった化学薬品の缶が山のように積み上がっている。マイクたちは、「フレイドたちは化学薬品を飲み、体内で“何か”に変換しているのではないか」と推測する。
ナンシーは、室内に残る血痕や引きずられた跡などから「トムが家の中で襲われ、ガレージまで引きずられて車でどこかへ運ばれた」と考える。マインド・フレイヤーがどこか特定の場所を拠点にしているはず。ドリスコルが救急車の中で指を指していた場所こそ、その“巣”なのだと気づく。
一行はドリスコルのいる病院へ行き、代表としてナンシーとジョナサンが病室へ向かう。道すがら、2人は互いの立場や気持ちを理解し直し、和解する。一方ロビーで待機するマイクは、ルーカスに促されてイレブンへとの仲直りを図る。会話を通して2人の間に漂っていたぎこちない空気は少しずつ溶けていく。
ナンシーとジョナサンが病室に入ると、ベッドは空で、ドリスコルの姿はどこにもない。そのとき照明が不穏に点滅し始め、次の瞬間、トムが彼らに襲いかかる。ジョナサンはとっさに花瓶で反撃するが、トムは吹き飛ばされても平然と立ち上がる。
同じころ、別フロアでは同僚のブルースも待ち構えていた。トムとブルースは衝撃を“共有”しているようだ。2人の動きは連動しながら、病院内でナンシーとジョナサンを追い詰めていく。廊下にはすでに襲われたと見られる職員たちの死体が転がっている。
ナンシーとジョナサンはそれぞれブルースとトムに追われていた。ナンシーが消化器でブルースの頭を殴りつけると、その衝撃はトムにも伝わる。そのジョナサンはその隙を逃さず、トムの喉をナイフで突き刺した。2人はそれぞれ決定的なダメージを与えたが、やがてトムとブルースの身体は崩れ落ち、ドロドロとした肉塊へと変わり、床の上で互いににじり寄ってひとつに溶け合っていく。
ナンシーとジョナサンが呆然とその光景を見つめる中、その肉塊はうねりながら巨大な怪物へと姿を変え、ナンシーに向かって向かって咆哮を上げる。
第六章 多数からひとつへ
オタクと尋問
スターコート・モールの地下深くで、スティーブ、ダスティン、ロビン、エリカの4人は、ロシア人たちが巨大な装置でゲートをこじ開けている様子を目撃。その場から離れようとするが、基地内に警報が鳴り響き、侵入者として気づかれてしまう。4人は慌てて施設内を走り回り、追跡をかわしながら一室に立てこもる。そこでダスティンとエリカはダクトの中へと逃げ込むが、スティーブとロビンは逃げ切れずにロシア兵に捕らえられてしまう。
ダクト内を進むダスティンは、エリカにこの2年間にホーキンスで起こった出来事を伝える。エリカは驚きつつも意外なほどあっさりと話を受け入れるが、ホーキンスの危機を救った中に、兄ルーカスもいたことだけは頑として認めようとしない。
一方でエリカが「ここからエレベーターまで歩いて戻るには、どれくらい時間がかかるか」を冷静に計算し始めると、ダスティンはニヤニヤしながら「やっぱりお前、筋金入りのオタク(nerd)じゃん」と指摘する。ダスティンたちを「オタク」とバカにするエリカだったが、彼女も同類のようだ。
そのころスティーブは、ロシア軍の大佐から激しい尋問を受けていた。「偶然迷い込んだだけ」というスティーブの主張は無視され、大佐は一方的に暴行を加える。その後、スティーブとロビンは椅子に縛り付けられる。
時が来た
同じころ、病院では、トムとブルースの肉体が溶け合って生まれた巨大な肉の怪物がナンシーを追い詰めていた。ナンシーは必死で部屋に逃げ込むが、ドロドロ体は床を這ってドアの下から侵入する。ナンシーは絶体絶命となるが、イレブンが駆けつけ、念動力で怪物を吹き飛ばして窓の外へ叩き落とす。
一行が外に飛び出して様子を見ると、怪物の残骸は下水の排水溝に流れ込み、地下で別の肉塊と合流してマインド・フレイヤー本体の元へ戻っていく。その様子を遠くから見ていたビリーは、ヘザーに向かって「時が来た」と静かに告げる。
一方、ラリー・クライン町長は、建設中の7月4日の独立記念日フェス会場で、ロシアの大男グリゴーリと密会。クラインは「ホッパーを明日までに見つけられなければ、お前は終わりだ」と暴力的に脅される。
アレクセイとキー(鍵)
マレー・バウマンの家では、ホッパーとジョイスは、アレクセイから情報を引き出すことに苦戦している。そこでホッパーは賭けに出る。手錠の鍵と車のキーをアレクセイに渡し、そのまま家の外へ追い出してしまうのだ。ジョイスとマレーが呆然と見守る中、ホッパーは「あいつがロシアに無傷で戻れば“裏切り者”として殺される。恐れているのはロシアだから、戻って来る。」と自信げに伝える。
アレクセイは車に乗り込んで逃げていこうとするが、思い直したように戻って来る。ホッパーの読みは見事に的中した。
アレクセイはロシアの施設を「キー(鍵)」と呼び、ロシアが買い占めた土地が、変電所や送電設備の近くに集中している理由を明かす。彼らは、ゲートから漏れ出る膨大なエネルギーを利用するためにホーキンスに来ており、実際にゲートはすでにゆっくりと開き始めているという。
さらに彼は「装置を止めるには最低2人が必要だが、基地は要塞のように厳重」とも付け加える。ジョイスは慌てて電話に走り、子どもたちに警告しようとする。ホッパーもホーキンス研究所の職員に連絡をとり、ロシアの存在を警告し、オーウェンズ博士への連絡と援軍を要求。
しかしホッパーの要領の悪さに苛立ったジョイスは、自ら再び電話をかけ直し、強気な口調で事態を“最優先案件”にするよう迫る。そしてホッパーたちも急いでホーキンスへ戻ることに。
マイクの本音
ホッパーの小屋では、イレブンが“感覚遮断空間”に入り、フレイドたちの居場所を探っている。あまりにも長く意識を飛ばし続けているため、マックスはイレブンの負担を心配し、マイクと口論になる。
ナンシーは、以前「ネズミと薬品の被害」を訴えてきた家々に電話をかけ直し、追加の被害が出ていないかを確認するが、新しい情報は手に入らない。その間も、マイクとマックスのケンカはヒートアップ。
「俺は彼女を愛してる。また失うなんて耐えられない。」ついにマイクはイレブンが先頭になって危険へ飛び込むことに対する胸の内をさらけ出す。全員がマイクの本音を聞くが、肝心のイレブンには聞こえていなかった。“感覚遮断空間”から戻った彼女は平然と「ビリーを見つけた」と報告する。
片思い
スターコート地下では、ダスティンとエリカが放射能マークのついた緑色のカプセルがぎっしり詰まった部屋にたどり着く。そこにはデモゴルゴンも閉じ込められそうな大きな檻があった。2人はロシア製の小型搬送カートを盗んで移動手段を確保し、電撃棒のようなスタン・ロッドも盗む。
尋問室ではスティーブが意識を取り戻し、ロビンと一緒に椅子ごと移動してロープを切ろうとするが、バランスを崩して転倒する。ロビンはこの滑稽な状況に思わず笑い出す。そして不意に高校時代のことを打ち明ける。実は高校時代、ロビンはスティーブに夢中になっていたのだ。しかし“高校のキング”だったスティーブはロビンの存在すらしらなかった。
そこへロシア人の大佐が医師を連れて現れると、彼らは2人に“自白剤”のような薬を注射する。するとスティーブとロビンは酩酊状態になってしまう。その後、拷問されそうになると、ロビンは自分が解読したロシア語の暗号を明かしてしまう。さらには大佐を挑発するようなことを口走り、ダスティンの名前まで漏らしてしまう。
それにより別の場所にいたダスティンとエリカは、自分たちの存在がロシア側に特定されたことを悟る。ダスティンは急いでカプセルの緑色の液体を床に垂らし、それが配線を焼き切ることで施設のシステムに大きな障害を起こさせる。そのドサクサに紛れて2人は尋問室へ突入。電撃棒で医師を感電させて倒し、スティーブとロビンを救出することに成功する。
ビリーの記憶
ホッパーの小屋では、イレブンが再び“感覚遮断空間”に入り、ビリーの姿を探していた。何もない白い部屋で一人座っているビリーを見つけるが、それが明らかな“罠”だということは、周囲にいる仲間たちもすぐに理解する。しかしイレブンは、以前に母テリーの記憶へ入り込んだ経験を思い出し、「同じやり方でビリーの記憶に入れば、マインド・フレイヤーの“巣”を突き止められるかもしれない」とひらめく。
マイクは必死に止めようとするが、イレブンは「大丈夫」とだけ告げ、さらに深く意識を沈めていく。彼女がビリーの記憶の中へ入り込むと、場面はカリフォルニアの海辺へと切り替わる。そこでは幼いビリーが母親と一緒に波打ち際で遊び、笑い合っていた。その背景には赤い稲妻と嵐が確認できる。
父親が母親に暴力を振るい、母親はビリーを残したまま家を出ていき、少年のビリーは暴力的になっていった。そして“新しい家族”としてマックスが家にやって来る光景も続く。
イレブンはビリーの記憶を通じて彼の苦しみを知りながらも、嵐の中を探り、ついにブリンボーン製鉄所へ到達する。彼女はこの場所こそがフレイドたちの“巣”であり、マインド・フレイヤーの拠点だと確信し、現実世界の仲間たちにその情報を伝える。
集合体
イレブンが“感覚遮断空間”から抜け出そうとした瞬間、彼女の前にビリーの姿をしたマインド・フレイヤーが現れる。「お前のことがはっきり見える」と告げる。現実世界では、数十人規模にまで増えたフレイドたちが、無表情のまま製鉄所へ向かって歩き始めていた。
マインド・フレイヤーはイレブンに、「お前が呼び込んだのだから、ここにいさせてもらう。そしてすべてを終わらせる。」と宣言。イレブンは必死にビリーを突き飛ばし、“感覚遮断空間”から脱出し、マイクの腕の中で震えながら泣き崩れる。
その頃、ブリンボーン製鉄所の地下では、フレイドとなった人々が次々と集まり、身体を溶かしてひとつの巨大な肉の塊へと合体していく。集まった肉塊はうねりながら一つにまとまり、巨大な姿で地上へと姿を現すと、けたたましい咆哮を上げる。
第七章 傷跡
山小屋での強襲
7月4日、アメリカ独立記念日の夜。ホーキンスではクライン町長主催のフェスが開かれていた。観覧車から花火を楽しむウィーラー親子だったが、ホリーはふと森のほうを見て、木々の間で“何か巨大なもの”がうごめいているのに気づく。
その頃、ホッパーの山小屋では、イレブンがマインド・フレイヤーから聞かされた言葉を仲間たちに説明していると、遠くから鈍い足音と低い唸りが響いてくる。ウィルの首の後ろが反応し、一行が外に飛び出すと、闇の向こうから巨大化したマインド・フレイヤーが迫ってくる様子を目撃する。
イレブンたちは小屋にバリケードを作って迫り来るマインド・フレイヤーを待ち受ける。マインド・フレイヤーの触手が小屋の壁を突き破ると、一直線にイレブンをターゲットにする。全員で協力しながら触手に攻撃を仕掛け、その隙にイレブンが念動力で触手を引き裂く。
間髪入れず、さらに二本、三本と触手が窓や壁を突き破ってなだれ込んでくる。イレブンは同時にそれらを押し返そうと、歯を食いしばって踏ん張るが、今度はマインド・フレイヤー本体が屋根をぶち抜いて姿を現す。巨大な頭部がのぞき込むように小屋を覆い、その口の奥から伸びた太い触手がイレブンの足首に巻きつく。
マイクが必死にイレブンの身体をつかんで引き戻し、他の仲間たちも総掛かりで彼女の体を引き寄せる。ナンシーが頭部めがけて銃弾を浴びせ、ルーカスが触手に斧を振り下ろして切断する。イレブンは残った力を振り絞り、頭部を引き裂くと、マインド・フレイヤーは絶叫を上げながら山小屋から離れていく。一同はその隙にナンシーの車に飛び乗って、その場から全力で逃走する。
モール
同じ頃、ダスティンとエリカは、酩酊状態のスティーブとロビンを車に放り込み、ロシアの地下基地の通路を駆け抜ける。エレベーターに乗って地上まで戻るが、ロシアの警備兵に見つかってしまう。こうして4人はスターコート・モールのフロアを必死に逃げ回ることになる。
ダスティンは、映画館に駆け込み、ほぼ満員の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』上映会場に紛れ込み、まだ薬が抜けきらないスティーブとロビンを座らせる。見張り役をエリカに任せ、モールから脱出するための車を探しに走る。
その後、ダスティンはマイクと連絡を取ることに成功するが、トランシーバーの電池が切れてしまう。エリカのもとへ戻ると、スティーブとロビンの姿が忽然と消えていることに気づく。スティーブとロビンは映画館を抜け出し、映画の雑談をしていた。2人はモールのイルミネーションライトを見て気分を悪くし、トイレに駆け込んで盛大に嘔吐する。
痴話喧嘩
ホッパーたちは車でホーキンスへ戻っていた。車内でアレクセイがマレー・バウマンにロシアの装置について説明している。「あの装置を止めるには、金庫の中にある2本の鍵を同時に回す必要がある。金庫の暗証番号は“プランク定数”という有名な数字だ。」マレーはロシア語を翻訳してホッパーとジョイスに伝える。
子どもたちの身の安全をめぐって、ホッパーとジョイスがまた口論を始めると、バウマンはうんざりしたようにため息をつき、「痴話喧嘩はやめて、お互い惹かれてるって認めろよ」と毒づく。ナンシーとジョナサンに一線を超えさせた彼の“的確なアドバイス”がホッパーとジョイスにも送られる。
その後、彼らは独立記念日フェスの会場に到着。ホッパーとジョイスが子どもたちを探す中、ホッパーの姿を見つけたクラインはロシア側に連絡していた。
スーパーマーケットにて
子どもたちはスーパーマーケットに忍び込み、イレブンの脚の傷を処置するための医療用品をかき集めていた。マックスはスケボーでの怪我の経験から、手当に必要なものを手分けして探すように指示する。
ルーカスは売り場の棚を物色しているうちに、大量の打ち上げ花火を発見。「武器に使える」と目を輝かせるが、マックスは冷めた目で彼を見つめる。マイクはイレブンのそばに座り、嫉妬心からイレブンを独占しようとしたことを素直に謝る。そのタイミングで、トランシーバーからダスティンかの声をキャッチする。
イレブンが傷の手当てを受けたあと、途切れてしまったダスティンの居場所を探すために“感覚遮断空間”に入ろうとする。その横でルーカスは、当時発売されたばかりの『ニュー・コーク』をゴクゴク飲み、ご満悦な表情だ。マイクが「よくそんなもの飲めるな」と言うと、ルーカスは『遊星からの物体X』を引き合いに出し、「古いものより新しいほうが良い場合もあるだろ?」と主張。マイクは猛反対。口論を始める。
ここで描かれているのは、1985年に実際に起こった “New Coke(ニューコーク)” 騒動。コカ・コーラ社がペプシに対抗するために味を甘く変えたところ、長年のファンが「これはコーラじゃない!」と全国レベルで大反発。発売からわずか79日で元の味が復活するという歴史的な大失敗になった。
ルーカスとマイクのくだらない口論をやめさせ、イレブンはダスティンの居場所を特定。一行は車でダスティンを迎えに行くことにする。その後、ビリーがスーパーマーケットにやってくると、イレブンの足から落ちた血の塊に触れ、居場所を辿ろうとしていた。
カミングアウト
ロビンとスティーブは嘔吐して落ち着きを取り戻していた。ロビンがスティーブに「誰かを本気で好きになったことある?」と尋ねると、スティーブはかつてナンシーのことが好きだったこと、そして今はロビンが気になっていることを素直に打ち明ける。しかしロビンは好意を受け取りながらも困ったような表情だ。
そしてロビンは自らのセクシュアリティを打ち明ける。彼女が高校時代にスティーブに夢中になっていたのは、自分からすれば何が良いのか到底理解できなスティーブに夢中になる女子生徒タミー・トンプソンのことが好きだったからだった。
ロビンのカミングアウトにスティーブは一瞬凍りつくが、「お前、女の子の好み微妙じゃね?」と冗談を言い、2人は笑いだす。そのタイミングで、ダスティンとエリカが2人を迷子の子どもを見つけたような表情でやってくる。
ファンハウスでの闘い
ホッパーとジョイスは、遊園地で回転系の絶叫ライドに乗り込もうとしているウィーラー一家を見つけ、子どもたちの居場所を聞き出そうとするが、2人とも知らないようだ。退出する前に乗り物が動き始めてしまい、強烈な遠心力に振り回されながら、いつの間にか2人は思わず手を握り合っていた。
一方アレクセイとマレーは遊園地を楽しもうとしていた。アレクセイは出店のゲームを満喫し、大きな景品を当て、得意げにそれをマレーに見せようとする。しかしその瞬間、人混みの中から、グリゴーリが姿を現す。サイレンサー付きの拳銃でアレクセイの胸を撃つと、「裏切り者め」とロシア語で吐き捨てて去っていく。
マレーは急いでアレクセイのもとに駆け寄り、シャツを裂いて傷口を押さえるが、出血は止まらない。マレーがすぐにホッパーに知らせると、ホッパーは自分が囮役として、ファンハウスの中へ駆け込む。ホッパーから車の鍵を受け取ったジョイスはマレーと合流するが、そのときにはアレクセイはすでに息を引き取っていた。ジョイスはフェスの中で元凶でもあるクラインを見つけると、怒りをこめて彼の顔面に一発お見舞いしてから、その場を去る。
ホッパーはファンハウスで、ロシア兵の一人を倒して無線機を奪い取る。その後、追いかけてきたグリゴーリを鏡の迷宮で待ち構え、何発も銃撃を撃ち込む。グリゴーリは防弾チョッキを着ていたためにダメージはなかったが、怯んだ隙にジョイスが運転する車に乗り込んで遊園地から離脱する。車内でマレーは、奪い取った無線から流れてくるロシア語の通信を聞き取り、「モールで子どもたちを見つけた」と話している内容をホッパーたちに伝える。
ダスティンたちは上映終了後の人混みに紛れて出ようとするが、出口でロシア兵に見つかってしまう。モール内を逃げ回るが、ついに絶体絶命の危機に追い詰められてしまう。するとその瞬間、展示車両が空を飛び、兵士たちをなぎ倒す。そこにはイレブンとマイクたちの姿があった。こうして山小屋組と地下施設組が合流する。
この2日間、お互いに何があったのかを早口で報告し合っていると、突然イレブンが膝から崩れ落ちる。彼女の脚に残っていた傷が、内側から脈打つように激しくうごめき始め、その下で“何か”が生き物のように動いていた。
第八章 スターコート・バトル
合流とそれぞれの役割
ジョイス、マレー、ホッパーの3人はスターコート・モールへ車を走らせている。その頃、モールの中では、イレブンの脚の中に残っていたマインド・フレイヤーの欠片が動き出し、イレブンは激痛に悲鳴を上げる。ジョナサンは近くのレストランから包丁を持ってくると、傷口を切開して肉片を取り出そうとするが、あまりの痛みにイレブンは悲鳴を上げる。
イレブンは自らの能力で脚の中の欠片を引きはがすように抜き取り、投げ捨てると、ちょうどその場に到着したホッパーが、その肉塊をブーツで踏み潰し、イレブンたちと合流する。
ここまでの出来事を互いに共有し、結局は前と同じようにゲートを閉じるしか本体を倒す方法はないと結論づける。ダスティンは換気ダクトを使って基地内に侵入する案を出し、自分が案内役として同行すると名乗り出る。しかしホッパーは危険は犯せないと却下。その代わり、ダスティンは自作の高出力無線「セレブロ」を使って地上から誘導する作戦に切り替わる。
ホッパーとジェイス、マレーの3人が地下施設へ、ダスティンとエリカ、スティーブ、ロビンの4人が郊外の丘の上に設置したセレブロの元へ向かうことになる。出発前、ジョイスはウィルに、ホッパーはイレブンに、それぞれ別れを告げる。ホッパーはマイクにイレブンを託すように「気をつけろよ」告げる。
子どもたちはナンシーの車に乗ってモールを去ろうとするが、点火ケーブルが外され、エンジンがかからない。すると駐車場の暗闇の中からエンジンを吹かす音が鳴り響く。その先にはイレブンを追いかけてやってきたビリーの姿があった。一行は急いでモール内へ逃げ込んでいく。
スターコート・モールの強襲
エレベーターが地下基地のフロアに到着すると、すぐにロシア兵たちと遭遇する。マレーが注意を引きつけると、ホッパーは兵士たちを撃ち倒す。彼らはロシア兵の制服を奪い取り、さらに奥へ進んでいく。
一方、マイクはモールに逃げ込んだ状況を伝えようとするが、通話はうまく届かない。その頃、セレブロに向かうダスティンたちは丘の途中で車が止まり、歩いて登っていた。ジョナサンはモールの展示品の車から部品を取り出せばナンシーの車を直せるかもしれないと気づき、車をひっくり返して中を探そうと提案する。しかしイレブンは体力を使い果たしてうまく力が出せない。
その頃、地下施設でマレーがダクトの中に入ると、セリブロにたどり着いたダスティンとエリカの無線誘導を受け、制御室を目指すことになる。
子どもたちは力学の知識を活用して車をひっくり返し、ジョナサンとナンシーは部品を探す。一方イレブンは、コーク缶で能力を試そうとするが、やはり力は戻っていなかった。そんな中、ウィルが首の後ろの気配を感じると、間もなくマインド・フレイヤーがモールのガラス天井を突き破って現れる。
丘の上では、スティーブがモールの照明が異常点滅していることに気づき、ダスティンが慌てて仲間たちに無線を飛ばすが、トランシーバーはマインド・フレイヤーに壊されてしまっていた。
モールの切迫した状況を悟り、スティーブとロビンは子どもたちを救うために向かう。モールでは二手に分かれてマインド・フレイヤーから身を潜めていた。ルーカスがスリングショットで注意を引き付け、彼らはイレブンたちから注意をそらす作戦に切り替える。ジョナサンが部品を差し込み、車を直すが、駐車場にいるビリーが猛スピードで車をぶつけようと直進する。
ナンシーはビリーに向けて銃を撃つが止まらず、衝突は避けられない状況に。しかしその瞬間、助けに来たスティーブとロビンが車でビリーの車に横から体当たりする。音に気づいたマインド・フレイヤーがやってくると、ナンシーたちは車に乗ってモールから引き離そうとする。しかし途中でイレブンの存在に気づき、再びモールへ引き返し、同時にビリーもモールから出ようとしていたイレブン、マイク、マックスを見つけ、3人を追い立てるようにして建物の中へ追い返す。
ビリーの選択
イレブン、マイク、マックスの3人はモール内でビリーに追い詰められる。マックスは必死に呼びかけて兄の記憶を取り戻そうとするが、その言葉は届かない。ビリーは迷いなくマイクとマックスを殴り倒すと、イレブンを抱えてマインド・フレイヤーの前に運んでいく。
マインド・フレイヤーがイレブンを取り込もう触手を伸ばすと、その瞬間、モールに戻ってきたルーカスたちが大量の花火を次々と投げ込み、マインド・フレイヤーの注意をそらす。その隙にイレブンはマインド・フレイヤーの支配からビリーを取り戻すため、以前に見た海岸での記憶を語りかける。するとビリーの中で何かが揺らぎ、彼の表情に迷いと苦しみが浮かび始める。
やがてビリーは、イレブンとマインド・フレイヤーの両方を見据え、イレブンを守る側に立つことを選択した。マインド・フレイヤーが再びイレブンに向かって触手を突き出すと、ビリーはその前に立ちはだかり、自分の身体でその攻撃を受け止める。触手は彼の体を貫き、容赦なく締め上げるが、ビリーはイレブンの前から一歩も退かない。命運は、地下で進行中の“キー停止作戦”にかかっていた。
プランク定数
地下基地では、マレーが換気ダクトの先にある制御室にたどり着き、離れた場所からシステムを一時的に止めることでロシア兵たちの注意をそらす。ジョイスとホッパーは、その隙に停止用の2本の鍵が収められている金庫の前へと到達するが、アレクセイから聞いていた暗証番号を入力しても金庫は開かない。アレクセイが伝えた「プランク定数」の数字が、古い値か誤った情報で、ロックが解除できないのだ。
丘の上ではダスティンが無線越しに2人のやり取りを聞くが、プランク定数の正しい値は記憶していなかった。そこでダスティンは“助っ人”に力を借りる。それはユタ州ソルトレイクシティに暮らすダスティンの“遠距離恋愛中の彼女”であるスージーだ。ダスティンの呼び出しに応じたスージーだったが、緊急事態にもかかわらず、ダスティンが連絡を怠ったことへの“償い”を要求する。
それにより、一刻の猶予もない中、ダスティンとスージーは『ネバーエンディング・ストーリー』のテーマソングを無線越しにデュエットする。地下の金庫の前で歌声を聞くホッパーたちは状況の深刻さと歌とのギャップに絶句するが、歌い終わるとすぐにプランク定数の正しい数値を教えてもらい、ようやく金庫を開けることに成功する。
ホッパーの覚悟と決着
金庫の鍵を手に入れたホッパーとジョイスは制御室に到着し、停止用の鍵を回そうとするが、その瞬間、ホッパーを追跡していたグリゴーリが背後から襲いかかる。2人は激しい格闘を繰り広げ、制御室を飛び出して剥き出しの巨大なキー装置のすぐそばで取っ組み合いになる。
制御室の中では、ジョイスが2本の鍵を同時に回さなければならない状況に直面し、布切れを使って自分の両手で鍵を同時に引けるように工夫する。その間にホッパーはグリゴーリを高速回転するキー装置に放り込んで倒すが、装置は暴走し、ホッパーの行く手を阻む形で高エネルギーの渦を放出してしまう。
地上でマインド・フレイヤーと闘う子どもたちにも時間は残されていなかった。ジョイスは渦の向こうにいるホッパーと目を合わせると、ホッパーは静かにうなずいてみせる。ジョイスはその意味を理解し、涙をこらえながら2本の鍵を力いっぱい引く。その瞬間、キー装置はゲートへ向けたエネルギービームが逆流するように爆発を起こす。制御室には目が眩むほどの閃光が走り、ホッパーの姿は、その光の中に消えてしまう。
地下施設でゲートが閉じると同時に、地上ではスターコート・モールのマインド・フレイヤーが突如として崩れ落ち、全身が干からびるように崩壊していく。マックスが重症を追った兄ビリーのもとに駆け寄ると、彼は謝罪の言葉を告げる。そしてそのまま妹マックスの前で静かに息を引き取る。
地下施設では、制御室に多くのロシア兵が駆けつけていた。マレーはホッパーを失ったばかりで放心するジョイスを連れて、急いで基地からの脱出を図る。その頃、丘の上のダスティンたちの上空を何機もの軍用ヘリがモールの方向へ通り過ぎる。ホッパーが要請した、オーウェンズ博士の率いるアメリカ軍の兵士たちがスターコートに突入し、ジョイスとマレーは彼らに救出される。
燃え上がるモールの前で、ジョイスはウィルと再会し、2人は抱き合う。その視線の先にイレブンの姿を捉える。彼女はホッパーの姿を探すが見当たらず、ジェイスの視線で彼が戻ってこない現実を理解する。
3ヶ月後とそれぞれの道
スターコート・モールの火災は全米ニュースでも大きく報じられる。表面上は「火災事故」での被害として処理された。ラリー・クライン町長はこれまでの権力乱用や不正行為が明らかになり、逮捕される。ホッパーは殉職した保安官として、町の英雄と讃えられた。
スティーブとロビンは、新しい職場としてレンタルビデオ店で働き始める。店長は元アーケードゲームの店員キースだ。
一方、バイヤーズ家では引っ越しの準備がほぼ終わり、家族と一緒に暮らすことになったイレブンも荷物をまとめている。彼らはホーキンスを離れ、カリフォルニアへ移り住む予定だ。仲間たちはそれぞれ手伝いに集まり、最後の時間を一緒に過ごす。
マックスとルーカスは、ダスティンをからかうように、ダスティンとスージーが無線で歌った『ネバーエンディング・ストーリー』のテーマを何度も歌ってみせる。ウィルは長年大事にしてきた『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のゲームボードを寄贈する形で手放すことに決める。
ダスティンとルーカスは、代わりにエリカへ『D&D』ボードを渡し、新たなプレイヤーとして歓迎。彼女はダスティンも認める「オタク」仲間なのだ。
ジョナサンとナンシーは、好き同士でありながら、遠距離関係にハッキリ答えは出さないが、別れに近い空気が漂っている。
イレブンの能力は未だに戻っていない。イレブンとマイクはクリスマスに再会する約束を交わす。イレブンはマイクが山小屋で打ち明けた「愛してる」の言葉を実は聞いていたことを明かし、イレブンもマイクを愛していると伝える。2人は短いキスを交わし、しばしの別れに備える。
荷造りの最中、ジョイスがホッパーの保安官制服を畳んでいると、胸ポケットから一枚の紙を見つける。そこにはホッパーがイレブンとマイクの関係について話すために書きかけていたスピーチ原稿が綴られていた。ジョイスはその手紙をイレブンに渡し、イレブンは静かに読み始める。
手紙の中でホッパーは、イレブンに出会ったことで、再び人を愛せるようになったことに感謝していること、2人の思い出を語りながら、彼女の父親であり続けたいと伝えたうえで、「ドアを少しだけ開けておく」というお決まりのルールを依頼する内容だった。
イレブンは涙を溢れさせて手紙を読み終えると、ジェイスに準備ができたことを知らせる。仲間たちはそれぞれ抱き合い、最後の別れの言葉を交わし、バイヤーズ家とイレブンを乗せた車が走り出し、ホーキンスの町を後にする。一方マイクたちも、自転車にまたがり、仲間たちと一緒に走り出していく。
忍び寄る影
エンドクレジットの後、ロシア・カムチャツカ半島の基地が映し出される。一人の兵士が牢屋の前で「アメリカ人」と呼ばれる囚人を連れ出そうとするが、もう一人が制止する。代わりに別の囚人を牢から引きずり出して地下深くにある檻へ放り込むと、そこには、成体となったデモゴルゴンが待ち構えていた。

