ナイトシティ——それは、欲望と暴力が支配する光と影の都市。
巨悪が跋扈し、成功者と敗者の格差が埋めようのないほど広がるこの街で、一人の少年が生き抜こうともがいていた。彼の名はデイビッド・マルティネス。
貧しい境遇から這い上がろうとする彼の目の前には、強さと狂気が紙一重の世界が広がっていた。母の願いを背負い、仲間と共に駆け抜けた先に待っていたものは、救いか、それとも破滅か——。
今回ご紹介する作品は、Netflixアニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』です。
ポーランドのゲーム開発会社CD Projekt REDによる2020年発売のゲーム『サイバーパンク2077』のスピンオフ作品であるアニメーション作品。
Netflixオリジナル作品として、2022年9月に全世界で独占配信されました。
本記事ではNetflixアニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』の世界を徹底解説。

この作品を観るためだけでもNetflixに契約する価値があると言える、傑作アニメです!
『サイバーパンク エッジランナーズ』作品情報

『サイバーパンク エッジランナーズ』は、ポーランドのゲーム開発会社CD Projekt REDによる2020年発売のゲーム『サイバーパンク2077』のスピンオフ作品であるアニメーション作品。
アニメーション制作は『天元突破グレンラガン』(「ガイナックス」所属の大塚雅彦と今石洋之、舛本和也ら)、『キルラキル』『プロメア』などを手掛けたTRIGGER(トリガー)。
200を超える国と地域のアニメファンによる約1800万の投票で決まる「クランチロール・アニメアワード2023」で最高賞である「アニメ・オブ・ザ・イヤー」に輝きました。
ゲームの世界観を忠実に再現し、アニメを見た人がゲームをプレイすることで聖地巡礼することもできます。ストーリーはアニメオリジナルとなっており、ゲームをプレイしたことのない方でも全く問題なく楽しむことができます。
話 | タイトル | 長さ |
---|---|---|
1 | 「Let You Down/期待を背に」 | 24分 |
2 | 「Like A Boy/少年は何を思う」 | 24分 |
3 | 「Smooth Criminal/裏稼業」 | 24分 |
4 | 「Lucky You/ツキが回って」 | 24分 |
5 | 「All Eyez On Me/刺さる目線」 | 23分 |
6 | 「Girl on Fire/炎に包まれて」 | 25分 |
7 | 「Stronger/もっと強く」 | 24分 |
8 | 「Stay/いかないで」 | 24分 |
9 | 「Humanity/人間らしさ」 | 25分 |
10 | 「My Moon My Man/私の月、私の恋」 | 26分 |
1話あたり約25分の10話で完結という、短い物語の中に凝縮された面白さがありました。

2022年の覇権アニメは『サイバーパンク エッジランナーズ』か『リコリス・リコイル』だと思ってます!
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ネタバレ解説『リコリス・リコイル』1期の全話あらすじと相関図
相関図・キャラ解説
デイビッド・マルティネス

主人公。アラサカ・アカデミーに通っている。成績は優秀だが貧しい家庭を理由に差別される。母が遺したサイバーウェア「サンデヴィスタン」を装着することになる。
ルーシー

ネットランナー。チーム内ではキーウィのバックアップを担当。アラサカを嫌い、月に行くことを憧れている。
メイン

チームリーダー。全身をサイバーウェアでまとった巨大な体が特徴。チームをまとめる力と面倒見が良い。
ドリオ

メインの右腕的存在でチームをサポートする。メインの恋人でもある。
キーウィ

チームのネットランナー。常に赤いマスクで口を覆っている。ルーシーをチームに引き入れた姉的存在。
レベッカ

ピラルの妹。銃の扱いに慣れている。当初からデイビッドを気にかける。
ピラル

レベッカの兄。テッキー。改造された長い腕を巧みに操ることができる。下ネタ好きで下品。
リパードク

外科医でありテッキーであり、アーティストである何でも屋的存在。デイビッドに「サンデヴィスタン」のインプラントを入れる。
ファラデー

ナイトシティのフィクサー。メインに仕事を与える。縦にに3つならんだ右目が特徴。
グロリア・マルティネス

デイビッドの母親。貧しいながらシングルマザーとして緊急救命士の仕事で稼いだお金でデイビッドをアラサカに通わせる。
JK
ジミー・クロサキ。カルトBDディレクター。事件から24時間以内にリリースするネタの新鮮さと過激なエディットが売り。VIPようには痛覚のリミッターを外すオーダーメイドのチューニングもしている。
用語解説
BD(ブレインダンス)
ブレインダンス、通称BD。本人の体験した出来事や感情、状況を、まるで自分が体験しているかのように追体験できる技術。
痛みや恐怖、死の感覚すらもリアルに再現されるため、そのショックで死亡する者もいるほどの臨場感がある。娯楽としても普及しており、特にポルノ利用が多い。
BDの編集や加工を行う技術者はBDエディターと呼ばれる。
アラサカ、アラサカ・アカデミー
世界で最も歴史の長い巨大企業。兵器製造の最大手として知られ、世界中の軍事衝突に関与している。
アラサカが運営するナイトシティでトップクラスの学校がアラサカ・アカデミー。
授業は**仮想現実(VR)**で行われ、AIが各生徒に最適な授業プランを提供するシステムが導入されている。エリート養成機関であり、子どもを通わせるために生涯ローンを組む親もいる。
サイバーサイコシス
人体を過度にサイバー化することで、現実と人工の境界を認識できなくなる精神異常。
発症すると自身を孤立させ、他者への共感を失い、加虐的な傾向を見せるようになる。症状が進行すると、暴力的な行動を取り、無差別に人を襲うケースも多く、発症者はサイバーサイコと呼ばれる。
NCPD(ナイトシティ警察)
ナイトシティの治安維持を担当する法執行機関。
しかし、実態は企業の影響下にあり、企業が関与する事件には見て見ぬふりをすることも多い。
MaxTac(マックス・タック)
NCPDの特殊部隊。
通常の警官では対応できないサイバーサイコの鎮圧を主な任務とし、重武装のエリート部隊として編成されている。
ICE(アイス)
「Intrusion Countermeasure Electronics(侵入対抗電子機器)」の略称。
ハッキングに対する防御システムであり、多くの企業はネットランナー部隊を組織し、自社のデータを守っている。
トラウマ・チーム
医療用部隊派遣サービス。
主な利用者はナイトシティの富裕層で、顧客が負傷すると、3分以内に駆けつけて治療・搬送を行う。しかし、契約者以外には一切手を貸さない。
データによると、ナイトシティの交通事故の生存率は17%に対し、トラウマ・チーム契約者の生存率は91%とされている。
サイバーウェア(インプラント/クローム)
人体に組み込むことができるサイバーパーツ。
用途に応じて多様な種類があり、インストールすることで身体能力や特殊スキルを強化できる。
サンデヴィスタン
デイビッドが装着したサイバーウェア。
起動すると一定時間、周囲の時間がスローモーション化し、結果として使用者は超高速で動くことができる。
コーポ(コーポレート)
企業に所属する者の総称。
ナイトシティの上流階級を指し、企業の従業員だけでなく、企業に忠誠を誓う者も「コーポ」と呼ばれる。
スカベンジャー
高級インプラントの収集・売買を専門とするギャング集団。
違法な闇取引だけでなく、所有者から強引にインプラントを奪い取ることも多く、目的のためなら手段を選ばない。
フィクサー
ナイトシティ裏社会の仕事仲介役。
違法な仕事を請け負い、クライアントと野良のゴロツキをつなぐ存在。影響力の大きいフィクサーは地域の裏社会の支配者として君臨する。
ネットランナー
ハッキングや情報戦を得意とするエリート技術者。
コンピューターシステムの侵入、ウイルスの開発・改造、データの改ざんに長け、完全武装の企業兵士並みに危険な存在とされる。
テッキー
機械やテクノロジーに関する知識が豊富な技術者。
サイバーウェアや武器の修理・改造を得意とし、一部のテッキーは独自の発明を生み出すこともある。
デラマン
ナイトシティのVIP向け輸送会社およびその管理AI。
防弾仕様の装甲車とAI制御による精密な自動運転を備え、乗客を目的地まで安全にエスコートする。
ミリテク
兵器製造および軍事サービスを提供する巨大企業。
新合衆国における軍事力の中核を担い、アラサカと並ぶ世界最大級の軍事企業。
オールドネット
2022年以前のネット世界。
ハッカーのレーシィー・バートモスが引き起こした「DataKrash」により、全ネットが崩壊。現在のネットワークは、危険区域を隔離して構築されている。
AV(エアリアル・ビークル)
空を飛ぶ車両全般の総称。
企業やVIP専用の輸送手段として利用されることが多い。
サイバースケルトン
アラサカが開発した最先端の軍用サイバーウェア。
AVに搭載されているジェットエンジンを小型化し、反重力テクノロジーと磁力発生装置を備えた強力な兵装。

情報量が多い世界観ですが、これらの用語を理解しておくと、物語がもっと楽しめると思います!
ネタバレあり
以下では、『サイバーパンク エッジランナーズ』の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
第1話「Let You Down/期待を背に」

ナイトシティへようこそ
警官二人が会話を交わす中、突如として筋骨隆々のアーマーを装着した男が襲撃を開始する。彼は「サイバーサイコシス」と呼ばれる精神異常を発症しており、圧倒的なスピードと戦闘能力で数十人の警官を蹂躙する。まるで悪夢のような銃撃戦の末、特殊部隊「MaxTac」が出動。彼らは専用の武器を用い、男を無慈悲に排除するのだった。
物語の主人公、デイビッド・マルティネスは、その男の記憶をBD(ブレインダンス)を通じて体験し、興奮を抑えきれずにいた。
貧困と現実
ナイトシティのサントドミンゴ地区に暮らすデイビッドと母グロリア。生活は貧しく、洗濯機ですら満足に使えないほど困窮している。グロリアは救急救命士として働いており、昨夜のサイバーサイコシスの事件現場にも居合わせていた。疲労困憊の彼女は、ソファで眠りこけている。
一方のデイビッドは、学校へ向かうためナイトシティの雑踏を歩く。その途中、白髪の女性が一瞬視界に入り、気になって確かめようとするが、すでに彼女の姿は消えていた。

最悪の一日
デイビッドが通うのはエリートが集う「アラサカ・アカデミー」。
しかし、彼の立場は決して恵まれたものではない。規定の制服を着用していないことで注意され、さらにクラスの金持ちの嫌味な少年カツオから執拗ないじめを受ける。授業中、デイビッドのハードがエラーを起こし、システム全体がクラッシュするという事件も発生。結果、校長室に呼び出され、経済的な問題を理由に転校を勧められる。
グロリアは学校を辞めることを拒否し、デイビッドの将来のために戦おうとする。しかし、その帰り道、二人を乗せた車が突如としてギャング「アニマルズ」の襲撃に巻き込まれる。彼らは隣のリムジンを銃撃し、衝突事故を引き起こした。
目を覚ましたデイビッドは、逆さまになった車内で身動きが取れず、外ではグロリアが道路に倒れ込んでいる。しかし、救急サービス「トラウマ・チーム」は、二人が保険に加入していないことを理由に救助を拒否。そのまま去っていくのだった。
悲しみと怒り
病院で、デイビッドは母が昏睡状態にあることを知らされ、莫大な医療費と入院費の請求書を手渡される。家に戻ろうとするも、家賃滞納によって鍵を閉め出されてしまい、仕方なく裏窓を割って侵入する。
部屋を物色する中で、グロリアが別の口座に金を隠し持っていたこと、そして彼女が「サンデヴィスタン」と呼ばれる軍用サイバーウェアを所持していたことを知る。デイビッドはこれを売り、金を工面しようとするが、リパードク(違法な医療技師)に足元を見られ、安値で買い叩かれる。
翌日、学校に向かうと、カツオたちに待ち伏せされ、退学するように迫られる。挑発されたデイビッドだったが、カツオは高性能な格闘チップを搭載しており、歯が立たず、一方的に殴られる。
その後、病院からの呼び出しを受け、グロリアの死を知らされる。葬儀費用の請求書を渡され、彼は孤独のどん底に突き落とされる。
帰宅途中、葬儀費、家賃、学費など、次々と請求関係の音声案内が届く中、カツオからは母の死を嘲笑うメッセージが送られてくる。怒りと絶望に満ちたデイビッドは、リパードクの元へ向かい、「サンデヴィスタン」を売るのではなく、自らの体にインストールすることを決意する。
第2話「Like A Boy/少年は何を思う」

サンデヴィスタンのインストール
デイビッドはリパードクのもとを訪れ、サンデヴィスタンを自分の体にインストールするよう依頼する。リパードクは、「外したくなったとき、もしくはお前が死んだときはタダでもらう」という条件で手術を引き受けた。
激痛に耐えながらも、デイビッドは手術を終え、ついに超人的なスピードを手に入れることとなる。
ルーシーとの出会い
アラサカ・アカデミーの授業中、デイビッドは突如カツオに喧嘩を仕掛ける。サンデヴィスタンの圧倒的なスピードでカツオを打ちのめし、一方的に制圧する。
その様子を、アラサカの重役であるカツオの父親・タナカが監視カメラ越しに見ていた。デイビッドがサンデヴィスタンに耐えうる体を持っている可能性に気づいたタナカは、彼をある実験のテスト対象として検討し始める。
学校を退学になったデイビッドは落ち込んだまま電車に乗るが、そこで以前気になった白髪の女性の気配を感じる。彼女はハッキングを駆使し、乗客の首のチップを盗んでいた。彼女はデイビッドのチップも狙うが、サンデヴィスタンを発動し、彼女の手首を掴む。
彼女はルーシーと名乗り、アラサカに勤める人間を狙ってチップを盗んでいたことを明かす。デイビッドに協力を持ちかけ、2人はタッグを組んで次々と乗客のチップを盗み始める。
しかし、突然デイビッドの鼻から大量の鼻血が溢れ出し、そのまま意識を失ってしまう。
命がけの脱出
救急車で運ばれるデイビッドだったが、救命士たちは彼のインプラントが高価なものであることに目をつけ、強奪しようとする。しかし、ルーシーは彼の担架に飛び乗り、救急車から脱出。そのまま担架ごと高速道路を逆走しながら車を避けるという命知らずの行動を見せる。
釘付けになるデイビッド。
なんとかリパードクのもとへ辿り着き、抑制剤を投与される。デイビッドはすでに8回もサンデヴィスタンを起動していた。リパードクは「使いすぎれば脳に異常をきたし、サイバーサイコになる」と警告する。

月へ
その後、デイビッドはルーシーの家へ招かれる。彼女は彼のジャケットに「エッジランナーズ(Edgerunners)」と書き込む。これは、サイバーサイコと紙一重のアウトローたちを指す名前だった。
ルーシーは「クソみたいな街を抜け出し、月に行くのが夢」だと語る。そして彼女はデイビッドを誘い、月のBD(ブレインダンス)を体験させる。
月の浮遊感、静寂、そして地球を見つめる幻想的なひととき。デイビッドはルーシーと共に、束の間の夢を味わう。
しかし、突如として巨大な影がデイビッドの視界を遮る。大男が現れ、「サンデヴィスタンは俺のものになるはずだった」と告げる。
ルーシーはタバコを吹かしながらその様子を見守る。デイビッドは、自分が騙されていたことに気づくが、次の瞬間、大男の拳が彼を襲うのだった…。
第3話「Smooth Criminal/裏稼業」

メインとの対峙
デイビッドは大男に吊るされた状態で目を覚ます。
大男は、緊急隊の仕事をしていたグロリア・マルティネスとの間に、死体からサンデヴィスタンを手に入れる取引をしていたことを明かす。デイビッドは、グロリアが自分の母親であり、昨日死んだと伝える。
するとデイビッドはサンデヴィスタンのスピードを披露し、母が交わしていた取引分の金を稼ぐため、一緒に働きたいと申し出る。大男はテストをすると告げ、その場を後にする。
この大男こそがメインであり、ルーシーは彼が率いるサイバーパンク集団の一員だった。

初仕事
翌日、デイビッドはメインに呼び出され、サイバーパンクのメンバーキーウィ、ドリオ、ピラールを紹介される。
メインは、デイビッドに最初の仕事を説明する。ターゲットはアラサカのドライバー、マクシム。彼の運転データをナビから盗み出すという任務だった。
マクシムがバーでやけ酒している間にキーを盗み、ルーシーと共に車へ侵入しハッキングを試みる。しかし、マクシムが戻ってきたことでセキュリティが作動し、二人は車内に閉じ込められる。
仕方なく車を走らせるデイビッドだったが、マクシムが雇ったタイガークロウズが追手として現れる。高速道路に入るも渋滞に阻まれるが、反対車線へ突入し、敵を振り切ることに成功。タイガークロウズの一人はトラックと衝突し死亡する。
指示された場所に到着するも、もう一人のタイガークロウズが襲いかかる。デイビッドとルーシーが応戦するが、デイビッドが窮地に陥った瞬間、メインが駆けつけ敵を始末する。
クルーの一員
仕事を終え、サイバーパンクのメンバーたちは打ち上げを開く。メインはデイビッドにテスト合格を伝え、この世界で最後に頼れるのは自分だけだと忠告し、抑制剤と報酬を手渡す。
その後、メインの前にファラデーというフィクサーが現れる。彼は今回の仕事の依頼主であり、タナカの居場所を探るためのナビデータ回収を依頼したが、デイビッドたちが派手に仕事をしたため、役に立たなくなったと釘を刺す。
デイビッドはルーシーのことが気になりつつ、レベッカに挨拶される。
アラサカ・アカデミーの校長からカツオに謝罪すれば復帰できると提案されるが、デイビッドはケンカならいつでも受けて立つと言い放ち、電話を切るのだった。
第4話「Lucky You/ツキが回って」

トレーニング
デイビッドはメインに「もっと仕事を覚えたい」と連絡する。デイビッドはピラルにロボットアームを届ける仕事を終え、ピラルとレベッカが兄妹であることを知る。
その夜、ルーシーに呼び出されるデイビッド。メインの指示で、ルーシーがデイビッドのトレーニングを担当することとなる。クルーたちはいくつかの仕事をこなし、それに伴いデイビッドも少しずつ成長していく。デイビッドはレベッカから射撃訓練を受けるが、母グロリアの顔が思い浮かび、引き金を引くことができなかった。
デイビッドはルーシーが気になる様子を見せる。メインの話では、彼女はキーウィがクルーに連れてきたことがわかる。そんな中、デイビッドは肺をサイバー化し、心肺能力を向上させる。

ピラルの死
バーから出てきたクルーたちは、ドラム缶に放尿し続ける奇妙な男と遭遇する。ピラルは気味悪がりながらも興味を示し、男に近づく。しかし、次の瞬間、男に頭を撃ち抜かれ、即死してしまう。
男はサイバーサイコシスを発症しており、クルーたちに襲いかかる。いきなりの出来事にデイビッドは動きを止めてしまうが、メインが彼を突き飛ばし、正気を取り戻させる。
兄を殺されたレベッカが怒り狂って突撃するが、メインが静止し、キーウィがハッキングで彼女を眠らせる。ルーシーが男の脳をハッキングし攻撃するも、逆に狙われてしまう。しかし、デイビッドがサンデヴィスタンのスピードで回り込み、頭を撃ち抜くことで反撃し、メインの追撃によって男を始末する。
月へ連れて行く
ルーシーが負傷し、デイビッドはリパードクの治療を受けるため彼女を連れて行く。その後、ルーシーを部屋まで送ると、デイビッドは「少し話したい」と言う。
デイビッドは、以前ルーシーに騙されていたことに怒りを感じていたが、彼女を嫌いにはなれないと伝える。どこか自分を認めていないように見えるルーシーに対し、デイビッドは「俺が君を月へ連れて行くよ」と宣言する。
するとルーシーはデイビッドにキスをし、「死んでほしくないの」と告げる。デイビッドは「死ぬもんか」と返し、再びキスを交わす。
2人の背後では、月へ向かうロケットが静かに発射されていた。
第5話「All Eyez On Me/刺さる目線」

クロームの選択
メインは、死んだピラルが使っていた手のクロームをデイビッドに勧める。しかし、デイビッドはそれを断り、代わりにメインが装着している腕の銃のクロームを、メインの死後に引き受けると宣言する。
JKとサンデヴィスタン
キーウィがアラサカをハッキングして調査するが、大した情報は得られない。しかし、タナカがJK作の裏BDを好んでいることが判明する。デイビッドは、VIP専用の裏BDを作成するときにタナカが一人で外出する可能性があると推測する。
クルーはJKを拉致して情報を聞き出そうとするが、JKはEMP攻撃を仕掛け、メインとデイビッドは気を失ってしまう。さらに、デイビッドは逆に連れ去られてしまい、ドリオとルーシーが彼の後を追う。
デイビッドが目を覚ますと、そこは死体の山の中だった。彼は、サイバーサイコシスを発症し、警察に追われ、最終的にMaxTacに処刑されるBDを見せられていた。
JKは、サンデヴィスタンの前の所有者・ジェームス・ノリスと同じように、デイビッドがサイバーサイコシスとなって暴れ回ることを期待していた。JKはデイビッドをサイバーサイコ化させるため、過激なBDを見せ続けようとするが、そこにルーシーとドリオが駆けつける。
JKは軍用のドローンを使って応戦するが、ドリオがJKを人質にとり、デイビッドが時間を稼ぐ間にルーシーがハッキングすることで、最終的に制圧することに成功する。

タナカの捕獲
デイビッドは自分がサンデヴィスタンが体に馴染む特別な存在であると主張するが、JKは「所有者は最終的に死ぬかサイバーサイコになるかのどちらかしかない」と告げる。
JKを利用して、クルーは一人でやってきたタナカと接触する。タナカは針のミサイルで攻撃してくるが、デイビッドがサンデヴィスタンのスピードで殴りつけ、メインが彼を気絶させる。
しかし、JKはタナカの針の攻撃を喉に受けて致命傷を負ってしまう。さらに、タナカはトラウマチームの加入者であるため、クルーたちはすぐにその場を離れ、タナカを連れて急いで退却するのだった。
第6話「Girl on Fire/炎に包まれて」

砂漠を走るメイン
砂漠を走る若き日のメインの姿が映し出される。現実ではなく、彼が空想に浸っているシーンだった。ドリオに声をかけられるまで、メインはその幻想の中にいた。
ドリオは、メインの震える手に気づき、心配するが、メインは気にしていない様子を見せる。
ディープダイブ
クルーは捕らえたタナカからアラサカの情報を引き出そうとするが、キーウィはハッキングに苦戦していた。そんな中、メインが突然暴走し、ハッキング中のキーウィを殴り倒してしまう。
気を失ったキーウィは病院送りとなり、メイン自身も自分の行動を認識していなかった。
ルーシーとデイビッドは呼び出され、ドリオからメインがサイバーサイコシスの兆候を見せ始めていることを告げられる。ドリオは、キーウィの代わりにルーシーへタナカのハッキングを依頼するが、ルーシーは嫌がる。しかし、デイビッドと一緒にやるならと条件を出し、最終的に引き受けることとなる。
デイビッドがサポートしながら、ルーシーはディープダイブを開始する。
作業中、デイビッドはこの件が終わった後、タナカを殺すのかが気がかりだった。しかし、その時タナカが意識を取り戻し、デイビッドに対しアラサカへ来るように訴えかける。デイビッドは一瞬、気持ちが揺らいでしまう。
そこへドリオとメインが駆けつけるが、タナカの脳が焼かれてしまい、さらにトラウマチームへの信号が漏れてしまう。クルーは急いで撤退することになる。デイビッドは、意識を失ったルーシーを抱え、先に車へと運ぶ。

メインの最期
ドリオとメインは、タナカを連れて撤退しようとする。しかし、目を覚ましたルーシーが、タナカをハッキングしても何の情報も得られなかったことを告げる。
しかし、時すでに遅く、ドリオとメインはNCPDに包囲されてしまっていた。
銃撃戦が始まるが、メインはすでにサイバーサイコ状態になっており、歯止めが効かなくなっていた。そんなメインを守るため、ドリオが盾となり、彼女は命を落とす。
ドリオの死によって、メインは完全に暴走。タナカやNCPDの隊員たちを皆殺しにしてしまう。ルーシーはデイビッドを引き止めようとするが、デイビッドはメインを助けに行ってしまう。
メインは、亡くなったドリオの体を燃料電池の上にそっと置き、弔う。
「俺はここで終わりだ」
メインはデイビッドに「逃げろ」と伝え、MaxTacの部隊が到着する中、燃料電池を爆発させる。
デイビッドの帰還
車で待つルーシーは、震えながらデイビッドの帰りを待っていた。そこへデイビッドがサンデヴィスタンのスピードで戻ってくる。
彼の手にはメインの腕のクロームが握られていた。デイビッドは、それを抱きしめながら涙を流す。
第7話「Stronger/もっと強く」

新たなクルーと成長したデイビッド
メインの死から時が経ち、デイビッドの体は見違えるほど大きくなっていた。
装甲車の中では、ドライバーのファルコ、レベッカ、そしてデイビッドに憧れる新入りのフリオが、次の仕事に向けて準備をしている。
デイビッドの変化
ターゲットはメイルストロームというギャングのアジト。デイビッド、レベッカ、フリオの3人は、キーウィのハッキングサポートを受けながら、激しい銃撃戦を繰り広げる。
ボスであるメイルストロームを始末し、作戦は順調に進んでいた。しかし、不用心なフリオがトラップにかかり、命を落としてしまう。
デイビッドは捉えられていたイザベラという女性を救出し、任務を完遂する。
その後、仕事の仲介人ワカコから高評価を得る。ファルコは「メインを超えられる男だ」と言い、キーウィもデイビッドを信頼している様子を見せる。
しかし、ルーシーはタナカの一件以来、仕事を外れていた。
全身をクローム化しつつあるデイビッドは、リパードクのもとで調整を受ける。自分が特別な存在であり、どれだけサイバー化しても適応できると思っているデイビッド。それに対し、リパードクは問いかける。
「お前はアダム・スマッシャーにでもなりたいのか?」

ルーシーの過去
キーウィに呼び出され、ファラデーに接触するデイビッド。ファラデーはメインの代わりとして、デイビッドにテストを兼ねた仕事を依頼する。
それはアラサカのライバル企業であるミリテクの案件だった。
その後、デイビッドは家に帰り、ルーシーに「一緒に仕事をしてほしい」と頼む。しかし、ルーシーは「もう少し待ってほしい」と断る。
その後、ルーシーに連れられ、ナイトシティを離れ、星が見える場所へ向かう2人。そこでルーシーは、自分の過去を打ち明ける。
孤児だったルーシーは、幼少期にアラサカのネットランナーとして選ばれ、別の国の施設でオールドネットへディープダイブさせられていた。
同じ施設には、彼女を含め13人のネットランナーがいた。しかし、オールドネットでは妨害するAIが襲い掛かり、多くの仲間が命を落とした。
やがて、利用され続けることを拒んだルーシーたちはアラサカから逃亡。彼女は仲間を次々と失いながら転々とし、最終的にナイトシティを隠れ蓑として生きることを選んだ。
ルーシーの決意
その頃、アラサカのネットランナーたちは、タナカが死亡する前のデータ復旧を行っていた。作業を進める中で、男は意図的に削除されたデータがあることに気づく。
それは「凄腕のネットランナーによる犯行」を示していた。その瞬間、ルーシーが彼の前に現れ、脳をハッキングし、抹殺するのだった。
第8話「Stay/いかないで」

アラサカ研究所の襲撃
アラサカの研究施設では、研究員のユミコが所長のエバンスに息子のアカデミー入学祝いのため休暇を申請していた。その後、エバンスにサンプルを持ってくるよう頼まれたユミコが所長のもとへ戻ると、そこには殺された所長とデイビッドの姿があった。
恐怖に震えるユミコに対し、デイビッドは銃を向ける。
デイビッドの兆候
アラサカの防諜部は、ミリテクの対策研究施設が襲撃された事件を調査していた。痕跡を残さないネットランナーの存在を脅威としつつも、事件の背後にいるフィクサーへと焦点を移す。
その後、ファラデーの乗る車が襲撃されるが、彼はなんとか逃げ延びる。ミリテクの人間に支援を求めるが、結果を出さなければ協力はできないと突き放されてしまう。
ミリテクは、アラサカのサイバースケルトンに関する情報をファラデーを通じて手に入れようとしていた。
デイビッドの異変
眠れないデイビッドの元にルーシーがやってくる。彼女はデイビッドの腕が震えていることに気づく。
一方、ファラデーはアラサカの諜報員と接触。諜報員は、ミリテクに支援を拒否されたファラデーに対し、アラサカが支援を提供すると申し出る。その条件として、
- サイバースケルトンの情報を知っている者を始末する
- タナカのデータ復旧を阻止しているネットランナーを見つける
という契約を交わす。
ルーシーはキーウィに連絡し、デイビッドの仕事ぶりを気にかけていた。しかしその後、ファラデーがキーウィを訪ねていた。
レベッカの忠告
仕事中、デイビッドは怯えるギャングに銃を向けた瞬間、研究所で殺したユミコの姿がフラッシュバックし、動きを止めてしまう。
代わりにレベッカがギャングを仕留め、危機を脱するが、彼女はデイビッドの異変を心配し、仕事後に声をかける。
デイビッドは「関係ない」と言うが、レベッカは「あんたに命を預けてる」と真剣に伝え、「あんたにはサイバーサイコになってほしくない」と忠告する。

ルーシーの思い
デイビッドはアラサカ研究所での仕事を思い返していた。所長を殺害した後、幻覚を見ていたことに気づく。その後、突然倒れてしまい、ルーシーに連れられてリパードクのもとへ。
リパードクは、クロームの使用を控えるよう警告するが、デイビッドはより強い抑制剤を要求し、激昂してリパードクに手を上げてしまう。
ルーシーに呼びかけられて正気を取り戻すと、リパードクは「これが最後だ」と言いながら、9倍の抑制剤を手渡す。
その後、ルーシーはデイビッドにクロームを外すよう訴える。しかし、デイビッドはそれを拒み、「俺はもう、人を殺しても何も感じなくなった」と語る。
彼は、母とメインの意志を継ぐために突き進むことを決意していた。ルーシーは、仕事復帰まで時間がほしいと言うが、その理由は明かさない。
それを聞いたデイビッドは、「俺たちは別々の道を歩むべきかもしれない」と告げる。
ルーシーの罠
突然、ルーシーは緊急の用事があると言ってその場を去る。彼女は、ディープダイブで見つけたネットランナーの居場所を突き止めていた。
その人物を始末しようとするが、それはファラデーの変装だった。結果、ルーシーは返り討ちに遭い、気絶してしまう。
そこへキーウィが現れる。彼女はファラデーと手を組み、ルーシーをハメたのだった。
第9話「Humanity/人間らしさ」

過去最大の仕事
ナイトシティ郊外の砂漠。デイビッドたちは、アラサカの運ぶ荷物を奪う仕事を引き受ける。それは、彼らにとって過去最大の規模の仕事だった。
ファラデーの策略
ファラデーと手を組んだキーウィは、ルーシーをハッキングし、彼女の動きを監視していた。
デイビッドのサンデヴィスタンへの耐性を知ったタナカは、彼をアカデミーに呼び戻し、サイバースケルトンの実装テストを行うつもりだった。
しかし、ルーシーはそれを阻止するため、タナカの脳を焼き、隠蔽工作を施していた。この事実を知ったファラデーは、アラサカと取引し、コーポの上層部へと昇進しようと画策する。ファラデーはアラサカと手を組み、次の計画を立てる。
- デイビッドに仕事を依頼し、サイバースケルトンをインストールさせる
- その状態でミリテクの部隊と戦わせ、サイバースケルトンの実装テストを行う
- その過程でデイビッドを捕らえる
すべては、デイビッドを実験材料とするための罠だった。

サイバースケルトンの罠
仕事の前、デイビッドの手の震えが止まらないことに気づいたレベッカは心配するが、デイビッドは「仲間には言わないでくれ」と頼む。
ターゲットの装甲車を襲撃するクルーたち。しかし、装甲は強固で、ハッキングで解錠しなければ中に侵入できない。さらに無人運転であることが判明し、車は崖へ突っ込もうとしていた。
デイビッドはサンデヴィスタンを発動し、ハープーン・ガンを使って装甲車を無理やりひっくり返し停車させる。キーウィが装甲車を解錠し、中へ入ると、そこにはサイバースケルトンがあった。
しかし、その瞬間、大量のミリテクの部隊が襲来。さらに、ファラデーがルーシーになりすましてデイビッドに電話をかけ、サイバースケルトンをインストールするよう指示する。
レベッカは必死に反対するが、デイビッドはそれを振り切り、サイバースケルトンをインストールしてしまう。
キーウィの裏切り
その直後、キーウィはクルーを裏切り、その場を立ち去る。そして、ミリテクの部隊が本格的な攻撃を開始する。
インストール中のデイビッドは、サイバーサイコシスの兆候を見せ始める。しかし、レベッカが即座に抑制剤を注射し、なんとかインストールを完了させる。
サイバースケルトンは、超強力な重力・反重力制御を備えたクロームだった。
デイビッドの暴走
サイバースケルトンとサンデヴィスタンを組み合わせたデイビッドは、ミリテクの部隊を単独で圧倒する。しかし、レベッカとファルコは、デイビッドの体への負担を心配していた。
ミリテクの部隊を殲滅したデイビッドは、「ファラデーをぶっ倒してルーシーを助ける」と宣言する。するとレベッカとファルコは、「地獄まで付き合うぜ」と答え、覚悟を決めるのだった。
第10話「My Moon My Man/私の月、私の恋」

アラサカタワーへの突入
デイビッドたちは、アラサカ本部を目指していた。
しかし、デイビッドは疲労の限界に達しており、休息を余儀なくされる。その間、レベッカとファルコがアラサカの追手と応戦する。
アラサカタワーの頂上へ
デイビッドは、狂ったような笑い声を上げ、サイバーサイコシス発症寸前になりながらも、抑制剤を使用しつつ応戦。執拗なアラサカの追手を退けるが、抑制剤は残り1回分となっていた。
一方、アラサカの諜報員たちは、ファラデーの策略によって計画が台無しにされたことに苛立ち、デイビッドをサイバーサイコとして扱い、MaxTacを派遣し、始末しようとする。さらに念のため、アダム・スマッシャーも手配していた。
その頃、街を出ようとしていたキーウィだったが、ファラデーから「直接金を渡す」と呼び出され、罠にはまり銃撃されてしまう。
瀕死のキーウィは、最後の力を振り絞り、ファラデーの位置情報をファルコに送信。その直後、ファラデーによって完全に始末される。アラサカタワーに到着したデイビッドは、最後の抑制剤を打つ。
ファラデーの裏切りとアダム・スマッシャーの登場
ファラデーは、生け捕りにしたルーシーを利用し、アラサカの諜報員と取引を試みる。しかし、そこへデイビッドが突入。
デイビッドは、ファラデーを制圧し、状況を逆転させるが、アダム・スマッシャーが現れ、強烈な一撃でデイビッドを吹き飛ばす。
デイビッドはアラサカタワーから落下。サイバーサイコシス状態になりかけるが、ルーシーの呼びかけとキスによって意識を取り戻す。
「生きてほしかった」と涙するルーシー。しかし、デイビッドは「お前が夢を叶えることが、俺の夢になった」と告げる。
レベッカの死と最終決戦
レベッカ、ファルコと合流したデイビッドとルーシー。しかし、その直後、アダム・スマッシャーが襲撃。レベッカは圧倒的な力の前に潰され、命を落とす。
デイビッドとアダム・スマッシャーの一騎打ちが始まる。しかし、アダム・スマッシャーの圧倒的な強さの前に、デイビッドはまったく太刀打ちできない。さらに、抑制剤も完全に切れてしまう。
その頃、デイビッドの指示を受けていたファルコは、ルーシーを乗せ、現場を離脱。ルーシーは「デイビッドを置いていけない」と叫ぶが、ファルコは、デイビッドから託された今回の報酬と伝言をルーシーに渡す。
「月、一緒に行けなくて、ごめんな…」
その言葉を最後に、デイビッドはアダム・スマッシャーに撃ち抜かれ、命を落とす。

デイビッドとルーシーの夢
その後、ルーシーは月旅行のチケットを手に入れ、ツアーに参加する。そこでは、BDでは感じられない、リアルな太陽の熱と、無重力の浮遊感があった。
彼女は月面で一人たたずみながら、デイビッドの姿を懐かしそうに思い出す。彼が果たせなかった夢。そして、ルーシーが今、たどり着いた場所。
静寂の中、デイビッドとの思い出が、彼女の心に永遠に刻まれていた。
ネタバレ感想「どう生きるかより、どう死ぬか」
『サイバーパンク エッジランナーズ』――まさに大傑作でした!!
たった25分×10話という短い尺の中で、ここまで濃密な物語を描けるのかと驚嘆しました。スピーディーな展開に一瞬たりとも飽きさせる隙がなく、終盤のエモーショナルな展開は涙なしでは見られませんでした。
圧倒的な世界観の再現
まず特筆すべきは、ゲーム『サイバーパンク2077』の世界を忠実に再現したナイトシティの描写。超資本主義社会のディストピアとして、希望すら飲み込む都市がそこにありました。
ナイトシティでは、生まれながらにして格差が固定され、富裕層はますます裕福に、貧困層はより過酷な状況に追い込まれます。貧しき者が生き残るには、合法ではない手段を選ばざるを得ない。この社会の歪みを、主人公デイビッドの境遇が痛烈に映し出します。
デイビッドは母グロリアの献身によって名門アラサカ・アカデミーに通っていましたが、その学費すらも重荷となり、クラスメイトからは容赦なくいじめを受けていました。極めつけは、事故による母の死。裕福な人間なら助かったはずの命も、貧しき者には手が差し伸べられない――ナイトシティの非情な現実を突きつけられる場面でした。
社会に見捨てられ、住む場所すら失い、失意のまま街を彷徨うデイビッド。そんな彼にとって、唯一の救いがルーシーとの出会いでした。
PTSDとトラウマの描写
本作は、ただのクライムアクションではなく、トラウマを抱えた人々の生き様を描く物語でもありました。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、死の危険に直面した後、その恐怖がフラッシュバックし、現実感を失ってしまう症状を指します。デイビッドは母の死を目の当たりにし、その記憶が繰り返し蘇る様子が作中で描かれます。
また、メインのフラッシュバックにも注目です。彼が過去に砂漠を走っていたシーンは、まだ何者でもなかった頃の象徴。サイバーパンクとして生きる道を選び、身体を強化し続けた結果、もはや引き返せないところまで来てしまったことを示唆しています。
「走り抜けろ」――死に際のメインがデイビッドに託した言葉には、彼の悔恨と願いが込められていました。
デイビッドとルーシーの関係

ルーシーは、デイビッドがアラサカに利用される計画を知りながら、彼を守るために秘密を抱えました。その結果、メインやドリオを死なせてしまうことになり、彼女の罪悪感は計り知れません。
ルーシーは「あなたと私は違う」とデイビッドに告げました。その言葉の裏には、彼女自身の過去や育った環境の違いがありました。彼女にとってデイビッドはただの仲間ではなく、守るべき存在であり、また、デイビッドにとってルーシーは、自分の居場所を与えてくれる存在でした。
しかし、デイビッドは「誰かの役に立ちたい」「特別でありたい」という欲望に突き動かされ、次第にサイバーウェアの強化に依存していきます。彼が全身をサイバー化していく過程は、心の鎧をまとい、自らを守ろうとする防衛本能の表れでした。
そして迎えた最期――デイビッドは「生ける伝説」アダム・スマッシャーに敗北。彼が目指した“特別”は、ナイトシティの巨大なシステムの中では取るに足らないものに過ぎませんでした。
だが、彼の選択は無意味ではなかった。ルーシーの「月に行きたい」という夢を叶えるため、彼は命を賭けました。その想いは、ルーシーの心に深く刻まれたことでしょう。
「ナイトシティで名を残すには、どう生きるかより、どう死ぬかよ」
レベッカの魅力

デイビッドに恋心を抱きながらも、彼の選択を尊重し、支え続けたレベッカ。彼女の存在が、物語にさらに深みを与えました。
破天荒で口が悪い彼女ですが、デイビッドを心から想い、何度も彼の心の支えとなっていました。兄のピラルを失った後も、彼のように振る舞って笑わせる場面は、レベッカの持つ優しさと強さを象徴しています。
TRIGGERのアニメーションが生み出す没入感
『エッジランナーズ』のアニメーションは、TRIGGERならではのダイナミックな演出が光りました。
『天元突破グレンラガン』『プロメア』にも通じる、激しいアクションと色彩のコントラストは、ナイトシティの混沌と狂気を見事に表現しています。特にサンデヴィスタンを使った超高速移動の描写は秀逸で、デイビッドの精神的・肉体的負担が視覚的に伝わってきました。
『サイバーパンク エッジランナーズ』シーズン2はあるのか?
CD Projekt REDは『エッジランナーズ』を単発の独立作品として位置づけており、シーズン2の制作はないと明言しています。
10話という短いエピソードで完結する物語は、ある意味で完成されており、この刹那的な儚さこそが『エッジランナーズ』の魅力でもあります。
まとめ:Netflixオリジナルの傑作アニメ
『サイバーパンク エッジランナーズ』は、Netflixオリジナルアニメの中でも屈指の傑作でした。
絶望と混沌の中で、それでも走り続けたデイビッドの生き様は、まさに「エッジランナー」の名にふさわしいものでした。
『攻殻機動隊』や『AKIRA』が好きな人には間違いなく刺さる作品。2022年を代表するアニメーションとして、間違いなく語り継がれることでしょう。