T・Pぼん

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【グロい?】『T・Pぼん』ネタバレ感想・考察|Netflixアニメで蘇る藤子・F・不二雄の名作

今回ご紹介する作品は『T・P(たいむ・ぱとろーる)ぼん』です。

平凡な中学生の凡が、歴史の谷間で不幸な死に方をした人々を救助するタイムパトロールとしての活躍を描いた、藤子・F・不二雄が1978年から発表したSFアドベンチャー作品。

本記事では、ネタバレありで『T・Pぼん』を観た感想・考察、あらすじを解説。

まめもやし

藤子・F・不二雄先生の名作が見事な作画で蘇っています!やっぱり面白い!

『T・Pぼん』作品情報・配信・予告・評価

T・Pぼん

5段階評価

あらすじ

ごく平凡な生活を送っていた凡は、ひとりのタイムトラベラーとの出会いをきっかけに、平凡とは程遠い冒険に飛び込むことになる。

作品情報

タイトルT・Pぼん
原作藤子・F・不二雄
監督安藤真裕
シリーズ構成柿原優子
脚本佐藤大(メインライター)
キャラクターデザイン佐藤雅弘
メカニックデザイン玉盛順一朗
音楽大島ミチル
アニメーション制作ボンズ
製作Netflix
製作年2024年
話数全12話(シーズン1)

ポイント

ポイント

  • 藤子・F・不二雄作品の約30年ぶりの新作アニメ
  • 歴史とSFの冒険活劇
  • グロさや死もある大人な物語

配信サイト

配信サイト配信状況
Netflix

Netflix


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『T・Pぼん』のキャスト・キャラクター解説

メインキャラクター

キャラクター役名/キャスト/役柄
並平 凡並平 凡(若山晃久)
何をやっても平均な普通の中学生。あることがきっかけで、見習いT・Pとして引き入れられる。
リーム・ストリームリーム・ストリーム(種﨑敦美)
2056年の世界に住むミドルスクールの3年生。T・Pの先輩として凡を指導する。
ブヨヨンブヨヨン(宮野真守)
ゼリー状の超空間生物。リームが時間移動するたびに着いてきて、人間の言葉を話すことができる。

サブキャラクター

キャラクター役名/キャスト/役柄
安川ユミ子安川ユミ子(黒沢ともよ)
凡の同級生で陽子の友達。テニス部所属。
白石鉄男白石鉄男(日笠陽子)
凡のクラスメイト。誤って凡にベランダから突き落とされて転落死するが…。
白木陽子白木陽子(白砂沙帆)
凡のクラスメイトでいつも凡や鉄男、柳沢と行動をともにしている。
柳沢柳沢(伊藤節生)
凡の博識なクラスメイト。
ゲイラゲイラ(加瀬康之)
T・P本部所属の監察官。凡の処遇をリームに伝えるために現れる。

藤子・F・不二雄の約30年ぶりの新作シリーズアニメ

藤子・F・不二雄の未完の名作『T・Pぼん』が、生誕90周年を記念してアニメ化されました。藤子・F・不二雄作品としては、約30年ぶりの新作シリーズアニメとなります。

『T・Pぼん』は、SFと歴史を融合させた冒険活劇であり、子供よりも大人こそが楽しめる内容と言えます。40年以上前に発表された漫画でありながら、2024年の現在でもまったく色あせない面白さです。

タイムパトロールが救助するのは、歴史上重要な人物ではなく、「不幸な死に方をした人=死ななくても良かった人」です。歴史上の重要な時代背景と絡ませることで、その時代に生きた人々の暮らしを想像することもできます。

主人公は、頭の良さや体の丈夫さではなく、誰もがタイム・パトロールになる可能性があることを示しています。それは、凡たちが救ってきた、名もなき市井の人々が歴史とともに存在していることにも繋がります。

最初のエピソード「消されてたまるか」は、まさにそれを象徴するようなタイトルで、そんな「普通の人」の人生も尊いものである、まさにヒューマニズムの物語であることを痛感させます。

Netflixアニメ化も素晴らしく、基本的には原作に忠実な内容です。歴史学者の細川重男氏がエピソードの歴史考証をしていて、時代とともに変化した史実を織り交ぜて構成されているのも面白いポイントでした。

ネタバレあり

以下では、アニメの結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

第1話「消されてたまるか」

何をやっても平々凡々な中学生・並平凡は、ある日、謎の少女と不思議な生物と出会い、それ以降、不思議な感覚にとらわれていた。

そんな中、友人の白石鉄男の家で遊んでいると、凡は誤って鉄男をベランダから突き落としてしまう。鉄男を殺してしまったことに愕然とするが、いつの間にか数分前の状態に戻っていることに気づく。実はその瞬間、謎の少女と黄色い生物が時間を止め、巻き戻したことで鉄男は死ぬ前の状態に戻っていた。

凡はその後、切り株の近くで奇妙な乗り物を発見して乗り込むと、いつの間にか自分の見知らぬ場所にいることに気づく。凡は刀を持った盗賊に襲われるが、時間が止まり、少女と黄色い生物に救出される。

その少女リーム・ストリームと、黄色い生物ブヨヨンは、不幸な死に方をした人を助けることが仕事のタイムパトロールだという。リームは、鉄男を救う任務中に凡に遭遇し、記憶を消すことができる装置フォゲッターを起動し忘れていたことで、凡は鉄男の死を覚えていたのだった。

リームに本部からの指令が届くと、タイムパトロールの秘密を知った凡の存在を消す必要があると伝えられる。凡はリームから、凡の両親の結婚を阻止することで、自分が生まれないようにすると言われたことに腹を立て、リームのタイムボートに飛び移る。それによって2人はフタバスズキリュウのいる時代に舞い込んでしまう。

凡はフタバスズキリュウに食べられそうになるが、気がつくと現代に戻っており、急いで家に帰ると母親も無事だった。しかし、また時間が止まり、リームとブヨヨンが現れる。2人は、凡の未来を追跡調査した結果、凡が歴史上重要な出来事にかかわる人物であることが判明し、それによって凡の存在を消すことができないことを伝えられる。

その代わりに、凡はタイムパトロールとして引き入れられる。

ネタバレ感想

第1話は、主人公・凡と、リームとの出会い、タイムパトロールに引き入れられるまでを描いた始まりのエピソード。『ドラえもん』『キテレツ大百科』などで見慣れている藤子・F・不二雄のタッチですが、鉄男がベランダから転落死する描写は、やはりアニメで見てもインパクトがありますね。

首長竜としても有名なフタバスズキリュウは、1968年に福島の高校生によって化石が発見されました。それに着想を得た藤子・F・不二雄は『のび太の恐竜』(1975)を生み出しています。

第2話「見ならいT・P」

T・Pとなった凡は、いつもと同じように学校に登校すると、自分と同じ容姿の人間がいることに気づく。もう一人の自分のおかげで遅刻しないで済んだものの、不思議に感じていると、リームとブヨヨンが現れる。

凡はリームからT・Pの見習いとして訓練が必要だと言われ、フォゲッターを与えられる。タイムボートに乗って目覚める前の自分の部屋に訪れると、凡は寝過ごした自分の代わりに登校する。

その後、凡はT・Pに必要な知識を圧縮学習で身につけ、すぐに最初の指令が届く。内容は、1947年の東京で、洪水に巻き込まれる山田ハナ(声:谷育子)を助けることだった。

戦後の荒廃した東京に大雨が降る中、ハナは、3年前に招集された息子を待ち続けていた。洪水が迫る中、凡は力づくでもハナを救おうとするが、リームは航時法に則り、できるだけ自然に救わなければいけないと伝える。

リームは、息子の山田太郎(声:新垣樽助)が浦賀に到着するも、帰省できずにトラックの荷台の中で一夜を明かすことを知り、彼が寝ている間にトラックごと運ぶことにする。ハナは洪水に巻き込まれ、枝が邪魔で重力解除ができなかったが、凡が必死に枝を取り除いて彼女を救出する。

その後、目を覚ました太郎はハナと再会し、2人は洪水から彼女を救い出した。凡は、疲れ果てて現代に戻ってくるが、T・Pとしての指令をやり遂げた実感を感じる。

ネタバレ感想

第2話の指令の舞台は、1947年の東京。ハナが洪水で流されるのは、荒川の両岸の海抜ゼロメートル地帯と呼ばれるところ。1947年(昭和22年)9月に日本に接近し、甚大な浸水被害をもたらした台風「カスリーン台風」が描かれています。

横須賀市の浦賀港は、戦後の外地からの引揚者を受け入れた指定港で、引揚者たちは敗戦の失意と疲労による極限にあり、栄養失調や疫病で倒れる者が続出したと言います。そんな中、太郎は本来なら洪水によって母の死を知り、追い打ちをかけることになるので、2人がハナを救うことには大きな意義があるものでした。

第3話「ピラミッドの秘密」

凡は陽子から、エジプトから帰省したおじさんの話を聞きに家に遊びに行こうと誘われるが、リームから新しい指令が入ったことを知らされ、指令に向かう。

次の指令は、紀元前2592年のエジプトで、ピラミッドに生き埋めされたトト(声:小林親弘)という男を救出することだった。トトは父スネフェル(声:浦山迅)の跡を継ぎ、19年がかりでピラミッド建設を指揮していたが、ピラミッドの秘密を知ったことで殺害される運命にあった。

リームはホログラムを使って古代エジプトの女神ハトホルを出現させ、トトにピラミッド建設に関わらないように警告するが、スネフェルは言うことを聞かない。その後もリームは繰り返し説得を試みるが、トトはダグラ(声:小原好美)という女性と結婚し、家庭を築き、スネフェルの死後にピラミッド建設を引き継いでいく。

凡とリームは19年後に移動し、ピラミッド完成後のトトを説得しようとするが、盗賊に捕まってしまう。トトはジェセル王の埋葬後に、宰相イムホテップ(声:中博史)に裏切られてピラミッド内に生き埋めされてしまう。

一方、監禁されていたリームたちの前に、盗賊の一人が現れ、フォゲッターを手渡される。ブヨヨンの助けで逃げることに成功すると、2人はピラミッド内部に侵入する。しかし、トトは酸欠で瀕死状態にあり、凡もT・Pの制服を付与されていないことで酸欠で倒れてしまう。

リームはピラミッド全体を、盗賊によって掘り出された400年後に飛ばすことで2人を救出する。その後、ピラミッドをもとの時代に戻し、トトは生還して妻と子どもたちのもとに帰ることができた。

その後、凡とリームはタイムパトロール犯罪捜査課のウィル(声:左座翔丸)に出会い、リームに接触した盗賊の一人が時空盗賊だったことを知らされる。

無事に指令をやり遂げた凡は現代に戻り、陽子の家へと急いで向かう。

ネタバレ感想

第3話は、古代エジプトのピラミッド建設が舞台。エジプト第3王朝第2代ファラオのジェセル王が宰相イムホテップに造らせ、「史上初の階段ピラミッド」と言われています。当初は長方形の大墓であるマスタバとして設計されましたが、建設中の相次ぐ計画変更で最終的に階段状のピラミッドとなり、その過程も描かれています。

「白い壁」という意味を持つ王都のイネブ・ヘジュのシーンやピラミッド建設は、アニメーションながらに当時の暮らしや工程を捉えた見ごたえのある場面でした。原作と1989年のアニメを再構成したような脚本になっていて、リームが凡に酸素を口移しするシーンは、ネトフリ版では思いとどまっているのも現代的な変更ですね。

リームのピラミッドごとタイムフィールドで時間移動させるという手段は、果たして「自然な方法」と言えるのかは疑問です笑。

第4話「古代人太平洋を行く」

学校の帰り道、凡が小石を蹴飛ばすと、杖山(声:真木駿一)という男に当たってしまい、怒った杖山に追いかけ回される。凡は公園の茂みに隠れて難を逃れる。凡はそこで、アケビが実っているのを見つける。

帰宅すると、リームからT・Pの装備一式が贈られ、凡は嬉しさのあまり、フォゲッターがあることを良いことに、友達に見せびらかせて自慢しようとするが、相手にされない。リームからT・Pとしての自覚を持つように説教されると、その後、新たな指令が届く。それは、紀元前800年のミンダナオ沖で、大嵐で溺死したトッケー(声:土田大)という男の命を救うことだった。

凡は汚名返上しようと、一人でトッケーを嵐から回避させることに成功する。2人はその後のトッケーの様子を見守ることにするが、トッケーが日本列島に上陸するまでにはいくつもの困難があった。

凡は工夫してトッケーを日本に上陸させることに成功する。陸の上でもトッケーには命の危機が幾度もあったが、凡は見守り続け、近くに集落と人々が生活していることを発見し、そこにトッケーを導くことにする。

イノシシが村人の子供に襲いかかろうとしているところに、空腹のトッケーを導き、トッケーは子供を守ってイノシシを倒すことに成功する。それによって、トッケーは集落の人に受け入れられ、凡はリームの援助なしに任務をやり遂げる。

その後、凡がアケビを見つけて食べると、リームから「小さなことでも未来を変えてしまう可能性がある」と叱られる。リームは実感が湧かない様子の凡に、「実例を見せる」と、凡が小石を蹴飛ばした場面に連れて行く。

そこで凡は、自分が小石を蹴飛ばしたことで、ぶつけられた杖山が公園で井戸に落ちた子供に気づいて救助し、助けられた子供が将来、医者となって難病を根治させる方法を発見し、それによって救われた政治家が第3次世界大戦の危機を回避し、人類絶滅の危機から救うことになることを知る。そして凡はタイムパトロールの重要性と責任を理解する。

ネタバレ感想

第4話は、日本人のルーツを救出する任務でした。日本列島には、「北海道・対馬・沖縄」の3つのルートで祖先が海を渡って来たと言われており、このエピソードで描かれているのは、その中でも最も難易度が高く、謎も多いという「沖縄ルート」です。

このエピソードは、全12話のエピソードで一番自然な方法で救助している印象があります。一方で、凡とリームがトッケーを見守る様子は、人間を俯瞰して観察しているような「ビバリウム」的な要素があって不気味でもありました。

凡が小石を蹴ったことで歴史に関わる人物となった話は、カオス理論のバタフライ効果としても、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など、タイムトラベルSFでは今ではお馴染みとも言える内容ですが、40年も前に藤子・F・不二雄が描いているは、改めてすごい話。

第5話「魔女狩り」

凡はお湯を沸かそうとして火傷を負ってしまうが、リームの「巻き戻し」によって時を戻し、火傷を負わずに済む。リームは新たな指令を伝える。それは、350年前のフランスで魔女狩りによって火刑にされようとしている少女セリーヌの命を救うことだった。

2人は1644年の南フランスに到着するが、密猟をしていたフェルナン(声:ふくまつ進紗)の弓矢に当たり、怪我をして気を失ってしまう。森の中で暮らしているセリーヌ(声:早見沙織)は、リヨンへ向かう恋人のジャン(声:日野聡)と別れた後、倒れていた凡とリームを発見し、助ける。

2人は探していたセリーヌに偶然救われたことに驚きながらも、彼女が魔女狩りに遭うことを伝えて警告する。しかし、セリーヌは2人の話を信じようとはしない。彼女は森の中で一人で動物たちと仲良く暮らしており、村の人々に薬草を提供するなど、村の人々の力にもなっていた。

セリーヌに好意を寄せるフェルナンは、ジャンがリヨンへ旅立つことを知り、無理やり自分のものにしようとセリーヌに言い寄るが、セリーヌに拒絶される。腹を立てたフェルナンは、セリーヌへの仕返しとして、彼女が魔女だと噂を流してしまう。

セリーヌが魔女であるという噂はたちまち村中で広まり、彼女は魔女裁判にかけられることになってしまう。凡とリームは、彼女を救うために、リヨンのジャンのもとに向かい、セリーヌを助けに行かせようとする。

リームは、セリーヌが魔女裁判にかけられ、拷問された後に火刑にされる様子をジャンの夢に投影する。危機を感じたジャンは、セリーヌのもとへ駆けつける。彼女が疑いをかけられる前にジャンがたどり着き、2人は一緒に逃げることでセリーヌは火刑を逃れて救われる。

ネタバレ感想

第5話は、魔女狩りの話。実際に16世紀後半から17世紀のヨーローパで行われていました。

拷問と火刑のシーンは中々にエグいです。ロープで縛って吊るし上げる「振り子」の拷問や、ウォーターボーディング、いわゆる「水責め」拷問が描かれています。セリーヌの声はSPY×FAMILYのヨル・フォージャーでも知られる早見沙織さん。拷問の末にセリーヌが「魔女です」と言わされるシーンは子供が見たらトラウマ級の衝撃でしょう。その時のセリーヌの表情が、拷問によって感覚が壊れて笑ったように見えるのも怖い。

ジャンがセリーヌに、不吉な魔女狩りの夢を見たことを一切言わずに「離れていると不安だから一緒に暮らしたい」と言うのはカッコいいですね。

第6話「白竜のほえる山」

凡と友人たちは町内会の出し物について話し合っていた。そんな中、リームから新たな指令が舞い込む。場所は1400年前、628年の天山山脈。任務は、雪崩によって命を落とす運命にある羊飼いの息子チャムクを救うことだった。

チャムク(声:徳留慎乃佑)は、旅人である唐の玄奘(げんじょう)法師(声:三宅健太)と出会い、広い世界への憧憬を抱いていた。しかし、かつて世界を旅した際に多くの危険に直面した経験から、チャムクの父(声:小山力也)は彼の旅立ちを頑なに拒否する。

凡は玄奘法師に協力を依頼し、チャムクを旅に同行させないよう説得する。玄奘法師は快諾し、チャムクの旅は諦めさせることに成功する。任務達成と胸を撫で下ろす凡とリームだったが、本部の追跡調査によって、チャムクが玄奘法師の旅に同行していることが発覚。なんと、凡はフォゲッターを切り忘れていたため、玄奘法師は凡の頼みをすっかり忘れてしまっていたのだ。

慌てて後を追う凡とリームは、玄奘法師一行に同行する。しかし、天山山脈を進む一行を、巨大な雪崩が襲おうとしていた。リームは時間を止め、「巻き戻し」によって雪崩の発生を阻止し、一行を危機から救う。

寒さ対策として、凡は猿と豚の着ぐるみを持参していた。雪崩の混乱に乗じて、凡とリームはタイムボードに乗って逃走するが、その姿は玄奘法師らに目撃されてしまう。着ぐるみを着用していたことでフォゲッターの使用を忘れていたことに気づいた凡は、自分たちの姿が後の『西遊記』のキャラクター像に影響を与えたのではないかと空想する。

ネタバレ感想

第6話は、『西遊記』の三蔵法師のモデルとなった玄奘三蔵にまつわるエピソードでした。

玄奘三蔵は、中国の唐代に実在した僧侶で、仏典の研究のため、原典を求めて西へ旅立ち、シルクロードを通ってインドへ向かいました。シルクロードは、古代から中世にかけて、中国と地中海地域を結ぶ重要な交易路でした。舞台となる天山山脈は、「西天山」として、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスの3か国共有の世界自然遺産として登録されています。

玄奘法師の十数年の壮大な旅と並行して、若者のチャムクが「広い世界を見てみたい」という気持ち、そしてリームが「若者の冒険心をおし止めることなんてできない」という言葉も、改めてこの作品らしい良いセリフです。

凡はさっさと任務を終わらせて帰ろうとしますが、その後、結果的に睡眠を削って任務に当たることになる展開は笑えました。それにしても凡もリームも時間を飛ばすだけなのだから追跡調査くらいしっかりやってほしいとは思えて、2人の横着ぶりを感じるエピソードでもあります。

第7話「暗黒の大迷宮」

凡のタイムボートの調子が悪くなり、凡は点検整備を怠っていたことをリームに指摘される。そんな中、新たな指令が舞い込む。それは紀元前1500年のエーゲ海のクレタ島で、アテナイ人の男女をミノタウロス生贄から救助することだった。

生贄となるメネステス(声:山下誠一郎)とクレウーサ(声:石見舞菜香)は、船に乗ってクレタ島へ向かっていた。凡とリームは、ホログラムでミノス王に生贄を止めるように説得しようとするが通じない。その後、2人は迷宮を目指して移動するが、凡のタイムボートが故障してどこかへ行ってしまい、2人は20世紀のクレタ島へ飛ばされてしまう。

偶然通りかかった旅行者の電池を借りて任務の時間軸に戻ると、2人は儀式を経て迷路へと運ばれるメネステスとクレウーサにタイムロックで時間を止めて接触し、2人を逃がして成り代わる。

迷宮に入った凡とリームは、先に進み、迷宮の大広間でミノタウロスと遭遇する。苔を燃やして応戦し、凡はタイムコントローラーを使おうとするが、一瞬にしてミノタウロスの角に突き刺されて殺されてしまう。その後、リームも追い詰められると、ミノタウロスに角で突き刺されてしまう。

しかしその瞬間、時間が巻き戻り、ミノタウロスと遭遇した場面に戻る。近くをさまよっていた凡のタイムボートが凡の叫び声に反応し、逆流時間をまき散らしたのだった。メネステスとクレウーサに別れを告げ、任務をやり遂げるが、凡のタイムボートは再び故障して自分の部屋に不時着し、凡は点検の大切さを学ぶ。

ネタバレ感想

第7話は、ギリシャ神話で有名なミノタウロスの迷宮のエピソード。ミノタウロスを倒すために立ち上がるテセウスや手助けするアリアドネの話は登場せず、あくまでも生贄に捧げられた2人の男女に焦点を置いています。

特にクレウーサが、生きる希望を見出す様子と生贄としての運命を受け入れる様子で揺れ動くところが深堀りされているのが良いポイント。

ミノタウロスとの戦いで、凡とリームが一瞬にして殺されてしまう様子は、さながら「死にゲー」のよう。任務を解決できたのは、凡が点検整備を怠っていたからという、なんとも運が良かっただけというのも面白いですね。

第8話「戦場の美少女」

凡は、昔の暮らしぶりをインタビューする社会科実習のために、陽子と一緒に90代の敷島明子(声:榊原良子)の家を訪れる。かつて英語教師だった明子は、いいなずけが亡くなり、生涯独身だった。

そんな中、リームが新たな指令を伝えに現れる。内容は、1945年の沖縄で、神風特別攻撃隊で特攻作戦に参加した桜木海軍少尉(声:畠中祐)を救出する任務だった。

特攻作戦はすでに始まっており、2人は軍艦と特攻隊の激しい戦いの中に入っていく。凡とリームは、全員を救うことはできないことを悲しみながらも理解し、桜木少尉を見つけ、墜落寸前の彼を助け出す。

桜木は、捕虜になるよりも名誉ある死を望み、自ら命を絶とうとするが、凡とリームが制止する。しかしその後も、桜木は米軍基地に玉砕覚悟で特攻しようと考える。

リームは心を読むことができる装置を使い、桜木が明子という恋人を想っていることを知る。すると凡は、明子が自分が社会科実習でインタビューしている敷島明子であることに気づく。そこで2人は現代に戻り、明子に装置を使って2人の脳波をつなぎ、時代や場所を超えた交流を試みる。

桜木は目を覚まし、米軍基地に向かおうとするが、その瞬間に明子の脳波と繋がり、戦闘を中止し、降伏する。任務を遂行し、現代に戻った凡は、明子に特攻隊から生還した夫がいることを知る。その夫は、戦場で見た美しい少女の夢によって命を救われたのだった。

ネタバレ感想

第8話は、神風特別攻撃隊のエピソード。今シーズンの全12話の中でも最も印象的なエピソードでした。様々な歴史に立ち会う凡とリームですが、「人間爆弾」として自分と同年代の人間が目の前で死んでいく姿と、それを救うことができない無力感は、セリフと表情にも現れています。

神風特攻隊といえば、『永遠の0』『ゴジラ-1.0』に加えて、日本でも大ヒットしている『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』などでも描かれていますが、これらの作品が本エピソードの影響を受けている気がしてなりません。

明子と桜木の脳波がリンクして会話するシーンは、原作よりも感動的になっている一方で、明子の「戦争は終わっても日本は滅びない、まえより豊かな国に発展する」という言葉はカットされています。現在進行系で歴史的円安に立ち会っている中、本当の意味での豊かさを問われるような、今見て考えることの多いエピソードでした。

第9話「バカンスは恐竜に乗って」

友人たちが夏休みの思い出を語り合う中、どこにも行かなかった凡は、話すことがなかった。家に帰るとリームからバカンスに誘われる。T・Pは年に一度、タイムボートを使ってバカンスが許されていた。

リームは凡を約1億5000万年前、後期ジュラ紀の北アメリカへと連れて行く。ビーチで空中テントを設置し、皮膚呼吸できるアイテムを塗り、2人は海の中でアンモナイトやプリオサウルスなどを観察する。その後、2人はテント内でディナーを楽しみ、リームは明日、アパトサウルスの群生地へ連れて行くことを約束する。

その夜、凡は火のようなものを発見し、2人は現場へと向かうと、時空痕であることが判明する。リームはスキャンして本部に知らせて対処する。

翌日、出発しようとすると、凡の前にアロサウルスが現れるが、リームが追い払う。その後、2人は、アイテムを使ってケラトサウルスと神経をリンクさせ、冒険しながらアパトサウルスの群生地までたどり着く。しかし、アパトサウルスの1頭が時空犯罪者(声:堂坂晃三)によって射殺されてしまう。

それによってケラトサウルスは逃げてしまい、2人は歩いて帰ることになると、その道中、ジュラマイアを発見する。リームがチェックカードでジュラマイアをチェックすると、最大限の反応を示し、リームは哺乳類の先祖がジュラマイアから進化したことに気づく。

時空犯罪者がジュラマイアを攻撃したため、ジュラマイアが死ぬと人類の歴史が消えてしまう危機が訪れる。しかし、アロサウルスに追われたブヨヨンがやってきたことで、なんとか時空犯罪者を捕らえることに成功し、身柄をウィルに引き渡すことに成功する。

休暇から帰った凡は、アパトサウルスとの写真を撮りたかったと、バカンスの思い出を振り返る。

ネタバレ感想

第9話は、任務ではなくバカンス回。個人的には今シーズンで一番好きなエピソードです。タイトルも素晴らしい。

何気ない描写ですが、凡の両親は共働きであること、凡がいつも「ただいま、おかえり」など自分で挨拶を返していることからも彼の心境を察することができます。そんな中、部屋で待っていたリームからバカンスに誘われるのは、凡の気持ちになったように舞い上がる気持ちになります。

原作では哺乳類の祖先がシノグナータス(キノグナトゥス)とされていますが、本作ではジュラマイアに更新されています。

このエピソードは、リームの魅力が凝縮されたエピソードでもあり、誰ひとり人間がいない世界で、古代の生物たちを鑑賞しながらバカンスをする。なんと知的でロマンチックなことか。藤子・F・不二雄の恐竜への愛が伝わる原作の作画も合わせてチェックしてほしいところです。

第10話「OK牧場の近所の決闘」

凡が鉄男とおもちゃの銃で早撃ちの決闘に勝利すると、鉄男は凡が西部開拓時代なら優秀なガンマンになっていただろうと伝える。

凡が西部開拓時代への憧れを抱えて帰宅すると、リームが現れ、次の任務が西部開拓時代の決闘で殺された少年を救出することだと明かす。しかし、対象場所が時空不連続線によって調査が不完全で、名前も正確な場所も不明瞭だった。

凡とリームは1881年のアメリカ・トゥームストーンへ向かい、2人は当時の服装に着替えて溶け込もうとする。するとリームは、アイテムによって肌と髪色を変えた凡がターゲットの少年に似ていることに気づき、凡は彼に成りすまして様子を見る作戦をとる。

凡の姿を見た男は、仲間に知らせ、凡はカーク(声:丹沢晃之)に決闘を申し込まれる。凡は早撃ちでカークに勝利するが、シェリフ=保安官(声:山口太郎)に逮捕されてしまう。凡はターゲットの少年が指名手配犯であることを知る。

一方、リームとブヨヨンはターゲットの少年ジム(声:鈴木崚汰)を発見し、彼が無実であること、モーガン(声:竹田雅則)に濡れ衣を着せられたことを知る。凡はブヨヨンに助けられて拘置所を抜け出してリームと合流すると、2人はジムを助けることで同意する。

しかし、ジムに手助けして決闘の相手となる5人を倒してしまうと、その中にはクラントン兄弟も含まれ、OK牧場の決闘の歴史が変わってしまうため、凡がジムに扮して決闘することになる。

リームがタイムロックで時間を停止し、凡を5倍速で動けるように調整したことで凡は相手を倒すことに成功する。その後、気絶させた真犯人のモーガンをジムが通りかかる場所に移動し、凡とリームは歴史を変えずに任務を完遂する。

ネタバレ感想

第10話は、西部劇としても有名なOK牧場の決闘のエピソード。ワイアット・アープら保安官と、クラントン兄弟らカウボーイズの銃撃戦の実話に関連しています。

早撃ちの才能があることを知り、「生まれる時代を間違えたか」と言う凡が、トゥームストーンでの本物の決闘を通じて、鉄男からの遊びの誘いを断る厨二病のようなサンドイッチ構造も面白いです。

ところで「OK牧場!」といえば、ガッツ石松のフレーズですが、流行語になったのは2004年。最近では西部劇が午後のロードショーで流れることもめっきり少なくなったので、映画ファンでもない限り、若い世代はOK牧場なんて知らない人も多いでしょうね。

第11話「マラトン大会戦」

凡は嫌々ながらも学校のマラソン大会のために朝早くから練習していた。リームが現れると、紀元前490年のギリシャのアテナイの北東40キロにある平野マラトンでの任務を伝える。ペルシャの大遠征軍とアテナイ軍の戦いで、できる限り大勢の命を救出する必要があった。

伝令係のフィリッピデス(声:神尾晋一郎)は、スパルタへ援軍を求めに行くが、大祭中で軍を動かせないことを知り、それを伝えるためにアテナイ軍のミルティアデス将軍(声:山本格)に伝えるために230キロの山道を走っていた。リームは歴史でアテナイ軍が勝利することを知っていたため介入しないが、凡は気になり、フィリッピデスを追跡する。そこで凡はミルティアデスの作戦が功を奏したことを知る。

翌日、ペルシャ軍とアテナイ軍の戦いが始まると、凡とリームはせ戦場に入り、スローモーションを使い、50倍のスピードで動き回り、チェックカードで歴史に関わる人物ではないかを確認しながら、大勢の兵士たちを助けていく。

任務を終えた凡が疲労困憊になり休んでいると、フィリッピデスがアテナイ市民に勝利を伝えるために走っていることを知り、心配した凡はフィリップデスを眠らせてしまう。ペルシャ軍が一度海に退いただけで、フィリッピデスが伝令を知らせたことでアテナイ軍が勢いづいたため、凡は歴史を変えてしまった。

そこでリームはフィリッピデスの代わりに凡を伝令役エウクレスとして走らせることにする。凡は山中をマラソンし、ようやくアテナイにたどり着き、勝利を伝えて心臓発作で死亡する。凡が再び目を覚ますと、リームから歴史が戻ったことを知らされる。

その後、凡はリームから、1896年にマラトンとアテネ間の40キロを走ったのが第1回のオリンピックアテネ大会のマラソン競技だと知らされる。疲れ果てて帰宅して休もうとする凡だったが、登校時間が迫り、学校に走っていく。

ネタバレ感想

第11話は、マラトンの戦いのエピソード。実は「マラソン」の言葉の起源には諸説あります。

伝令のフィリッピデスは、スパルタに援軍を要請するために走った一方で、勝利を報告するとともに生き途絶えたという話は事実ではないとされており、エウクレスという伝令が伝えたという説も存在しています。

藤子・F・不二雄は、諸説ある「マラソン」誕生秘話を、ひっくるめて物語として昇華しており、彼の優れた筆致に舌を巻くエピソードでした。

このエピソードの任務は、「できるだけ多くの人を救うこと」であり、それは『戦場の美少女』のエピソードで救うことができなかったことにもつながりを感じ、懸命に一人でも多くの命を救おうとする凡とリームの姿も印象的です。

マラソンの起源は「古代ギリシャの故事」は誤り、真相は | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト

第12話「超空間の漂流者」

凡は友人たちと「神隠し」の怪談について話し合っていた。怖がりながら家に帰ると、リームから新たな指令が伝えられる。今回の任務は、超空間を漂流しているタイムトリッパー、アンブローズ・ビアスを救出することだった。リームは、危険だから凡は来なくてもいいと言うが、凡は迷わず同行することを決意する。

時代も場所もわからないまま、標識を頼りに進んでいく凡とリーム。しかし、突然時空の乱渦流に巻き込まれてしまい、はるか未来の荒廃した場所にたどり着いてしまう。本部との連絡も取れず、2人は成すすべなくテントを設営して夜を明かすことにする。

リームは、凡を巻き込んでしまったことを後悔し、かつて自分の先輩が時空痕にのみ込まれてタイムトリッパーとなってしまったことを明かす。先輩は救出することができず、リームは強い責任感を感じていた。

翌朝、大きな地割れによって凡のタイムボートは破壊され、リームのボートも地中に消えてしまう。2人はタイムトリッパーの足跡を発見するが、巨大な砂嵐が発生し、岩陰にいたアンブローズ・ビアス(声:藤真秀)に助けられる。

アンブローズは2人を地底へと案内する。そこで、高度な文明社会の跡を発見するが、人類はすでに滅亡している様子だった。再び大きな地震に襲われるが、リームのタイムボートが地中から出現し、なんとか危機を回避する。

すると、未来のタイムパトロール隊員(声:鈴村健一)が3人の前に現れる。隊員の話では、地球が住む場所に適さなくなったため、人類は宇宙に散り散りになったという。

アンブローズは隊員と共に未来へ残ることを希望し、凡とリームは元の世界へ戻っていく。リームは、凡が正式なタイムパトロールの隊員に昇格したことを告げ、自分が救助課から処理課へ異動することになったことを明かし、別れを告げて去っていく。

ネタバレ感想

シーズン1の最終話となる第12話は、神隠し・タイムトリッパーのエピソード。同時にリーム編の最後のエピソードでもあります。タイムトリッパー、タイムトラベラーの多くは、フェイクであることも多いですが、いつの時代でもSFの定番として多くの人を引き付ける要素でもありますね。

アンブローズのセリフ「正常と紙一重のうら側にかならず異常はある。ほとんどの人が気づいていないだけのことだ」は、藤子・F・不二雄の代弁のようなセリフで、作品全体のSFと歴史のテーマにも関連しています。作家であるアンブローズが、元の世界よりも未来の世界を見たい望むのも、藤子・F・不二雄ならそうするだろうと感じさせます。

最後の場面では、最初の頃にあった凡とリームの身長差がわずかになっていて、2人がT・Pとして多くの任務を共にしてきた「時間」を感じさせるとともに、正隊員となった凡の成長を物語っています。

凡とリームの別れはあまりにもサッパリとしていますが、まさに「神隠し」のように、リームはそれ以降作品に登場することはないことも、名残惜しさを感じさせつつもリーム編の完結として見事な幕引きとなっています。

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