今回ご紹介する作品は『地獄が呼んでいる』です。
本記事では、映画ドラマ『地獄が呼んでいる』を観た感想・考察、あらすじをネタバレありで詳しく解説します。
暴力的な描写も多いですが、恐ろしい超常現象を通して人間心理や宗教・社会を鋭く描いた良作です!
シーズン2のネタバレ解説記事はこちら!
作品情報・配信・予告・評価
相関図・キャスト・キャラクター解説
第1話〜第3話の相関図(2022年)
第4話〜第6話の相関図(2027年)
メインキャスト
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
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チョン・ジンス(ユ・アイン) 新真理会の初代議長。 | |
ミン・ヘジン(キム・ヒョンジュ) 新真理会と矢じりの関係に迫る弁護士。 | |
ペ・ヨンジェ(パク・ジョンミン) テレビ局NTBCのプロデューサー。 | |
ソン・ソヒョン(ウォン・ジナ) 赤ちゃんを出産したばかりのヨンジェの妻。 | |
チン・ギョンフン(ヤン・イクチュン) 妻を殺された過去を持つ刑事。 |
サポーティングキャスト
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
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イ・ドンウク(キム・ドユン) 新真理会の過激派集団「矢じり」のライブ配信者。派手なメイクと被り物で視聴者を刺激する。 | |
パク・ジョンジャ(キム・シンロク) 2人の子供を持つシングルマザー。地獄行きを宣告後、初の公開実演に臨むことになる。 | |
チン・ヒジョン(イ・レ) ギョンフンの娘。新真理会に興味を示し、ジンスに接触する。 | |
キム・ジョンチル(イ・ドンヒ) 新真理会の二代目議長。かつて「未来宗教」という新興宗教の牧師だったときにジンスに出会う。 | |
ユジ(リュ・ギョンス) 新真理会の執事。ジョンチルの命令を冷静沈着に遂行する。 | |
サチョン(チャ・シウォン) 新真理会の執事。ユジとともに新真理会の任務を遂行する。矢じりともつながりがある。 | |
コン・ヒョンジュン(イム・ヒョンシク) 大学の社会学教授で「ソド」のリーダー。 | |
ホン・ウンピョ(パク・チョンピョ) ギョンフンとコンビを組む刑事。矢じりの思想に感化されている。 |
天使と地獄の死者の設定解説
Netflix韓国ドラマ『地獄が呼んでいる』は、人間たちが突如として出現した謎の存在に死を宣告される様子を描いた作品です。
予告なく現れて地獄行き(死ぬ日)を宣告する「天使」と、その当日に現れる地獄への使者が登場しますが、シーズン1では超常現象的な存在についての具体的な説明はありません。一方で、ある程度の法則と性質を考察することができるので、以下で紹介します。
「地獄行き」を宣告する天使
(C)Netflix
「地獄行き」を執行する使者
(C)Netflix
ネタバレあり
以下では、ドラマ『地獄が呼んでいる』シーズン1の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
『地獄が呼んでいる』はどんな話?
Netflixの韓国ドラマ『地獄が呼んでいる』は、突如現れる怪物が人々を襲い、死に至らしめる超常現象を通じて、人間たちがその現象とどのように向き合うかを描く作品です。
物語は2022年11月10日、チュ・ミョンフンという男性が、人々が行き交う白昼の街中で正体不明の怪物3体に襲撃され、激しい暴行の末に殺害されるという衝撃的な事件から始まります。多くの市民がその惨劇を目撃していました。
この出来事を受け、カルト団体「新真理会」の議長チョン・ジンスは、ミョンフンと同様に殺された者たちが皆犯罪者だったと主張し、怪物たちの行為を「神の罰」と断言します。説明がつかない超常現象と犯罪歴が示される中、多くの人々が新真理会の教えを信じるようになります。
新真理会の中には「矢じり」と呼ばれる過激派が存在し、彼らは団体の理念を盲目的に信奉し、暴力的な行動もいとわない集団です。
警察は超常現象に頭を悩ませる中、刑事チン・ギョンフンが殺人事件の捜査を担当します。ギョンフンは過去に妻を殺され、その犯人が出所して生活していることに深い憤りを抱えています。そんな彼には一人娘のヒジョンがおり、彼女が新真理会に興味を示していることが新たな心配の種です。
ジンスは自分を「神の代弁者」と称し、神の意志を伝えているだけだと語りますが、ギョンフンは「もしこれが神の意志ならば、神は人間の自制心を信じていない」と主張します。
物語のもう一人の重要人物、弁護士ミン・ヘジンは、新真理会や矢じりの過激な思想に異を唱え、突如死の宣告を受けた人々に寄り添います。そんな中、シングルマザーのパク・ジョンジャが死の宣告を受け、彼女の相談をきっかけに物語は大きく展開していきます。
シーズン1は2部構成となっており、第1話から第3話までは新真理会と刑事、弁護士の三者の関係が描かれ、後半の第4話から第6話は4年後の世界が舞台となっています。
チョン・ジンスが「新真理会」を創設した理由
第3話のクライマックスで、ジンスはギョンフン刑事を孤児院に呼び出し、自身が20年前に天使から死の宣告を受けたことを明かします。
ジンスは新真理会の教えとして、死の宣告は神が犯罪者に下す罰だと主張してきましたが、彼自身は当時何の犯罪も犯していませんでした。それにもかかわらず地獄行きと予言されたジンスは、その理由を理解できず、20年間その答えを探し続けることになります。結局、彼は自分がなぜ選ばれたのか分からないままでした。
その間、ジンスはいつか罪を犯してしまうのではないかという恐怖に苛まれ、その恐怖こそが彼を正しく生きさせたと語ります。ジンスは次第に、この恐怖こそが人々に犯罪を思いとどまらせる力であり、人類全体にも同じ恐怖を抱かせることで犯罪のない世界を作れると考えるようになります。この信念が「新真理会」の創設に繋がり、彼は神の罰というプロパガンダを広め始めました。
ジンスは10年以上にわたり新真理会を指導してきましたが、ミョンフンの地獄行きが公の場で実演されたことで急激に信者が増加します。さらに、新真理会の過激派「矢じり」の活動により、人々は死の宣告そのものだけでなく、それが公に知られることへの社会的な恐怖にも苦しむようになります。
しかし、ジンス自身が地獄行きであることが信者たちに知れ渡れば、新真理会の信頼は崩壊します。ギョンフンと弁護士ミン・ヘジンは、それぞれの方法でジンスの真実に迫ろうとしますが、ジンスはすでにその事態を見越していました。
ジンスは、自身の死後、新真理会を守るために牧師キム・ジョンチルにすべての証拠を消去させる取引を行い、彼を次の議長に指名します。また、ジンスはギョンフンの娘を、ギョンフンの妻を殺した犯人への報復に利用し、ギョンフンに「正義」の選択を迫ります。
ギョンフンが正義を貫くなら、ジンスの死の真実を公表し、新真理会の嘘を暴く必要がありますが、その場合、娘は報復の罪で逮捕されることになります。しかし、ギョンフンはそれを選べず、最終的にジンスの作り上げた虚構の世界で生き続けることを選びます。
ジンスは宣告通りに使者により地獄へ送られますが、その事実を知る者はおらず、世間は彼が神の代弁者として生き続けていると信じているのです。
弁護士ミン・ヘジンに何が起こったのか
弁護士ミン・ヘジンは、最初から新真理会とその過激派「矢じり」の活動に疑念を抱いていました。彼女はシングルマザーのパク・ジョンジャからの相談を受け、地獄行きを宣告された彼女を支援しますが、その結果、矢じりの標的となり、対立はさらに深まっていきます。
ジョンジャが公開の場で地獄行きを迎え、残虐な殺害が大衆に晒された後、ヘジンへの攻撃も激化。ヘジンは病気の母を連れて海外への避難を試みますが、その矢先、新真理会の議長ジンスの過去に関する重要な書類が、牧師キム・ジョンチルから送られてきます。この書類から、新真理会の核心に迫る情報を得たヘジンは、真実を暴くためジョンチルに接触を図ります。
しかし、ジョンチルは既にジンスと手を組み、次期議長の座を約束されていました。ヘジンはジョンチルが手配した矢じりのメンバーに襲撃され、母を殺されると共に、彼女自身も重傷を負います。
4年後、新真理会はジョンチルの指導の下でさらに大きなカルト団体へと成長。一方、ヘジンは大学教授コン・ヒョンジュンと共に、対抗組織「ソド」を秘密裏に結成し、新真理会の不当な暴力に立ち向かおうとします。
ジョンチルの新真理会は、地獄行きを宣告された者やその家族を脅し、恐怖で支配を強めていきます。それに対してソドは、宣告を受けた者たちのプライバシーを守るために彼らを秘密裏に保護する活動を行っていました。
ヘジンは、地獄行きが神による断罪だという新真理会の主張が嘘であり、彼らの暴政を終わらせることを目的に動いています。そんな中、生まれたばかりの赤ん坊が地獄行きの宣告を受けたことが発覚します。罪のない新生児への宣告は、新真理会の嘘を暴露する絶好の機会と考えたヘジンは、この事件を通じて新真理会を崩壊させる計画を進めます。
しかし、宣告された赤ん坊の両親であるヨンジェとソヒョンにとって、最も大事なのは赤ん坊の命を守ることであり、それ以上のことには関心がありません。嘘を守ろうとする新真理会と、真実を暴こうとするソドの狭間で、夫婦は選択を迫られ、翻弄されていきます。
ドンウクはなぜ矢じりを抜けたのか
新真理会の過激派「矢じり」のメンバーであったイ・ドンウクは、信者たちを扇動するために道化のようなマスクを被り、ライブ配信を行っていました。彼は新真理会の理念を盲信し、過激な活動を続けていたのですが、自らが地獄行きの宣告を受けたことで状況が一変します。
ドンウクは、自身が罪を犯していないにもかかわらず宣告されたことに衝撃を受け、新真理会の理念が正しくないことを理解します。地獄行きは特定の罪人に限られた罰ではなく、誰にでも無差別に訪れるものであることを悟ったのです。
この気づきをきっかけに、彼は矢じりを脱退し、配信活動を休止。そして、ソドの活動に協力するため、自身の家を隠れ家として提供するようになります。
しかし、状況はさらに複雑になります。ドンウクは、ヨンジェとソヒョンの赤ん坊が自分より5分早く地獄行きを宣告されていることを知ります。この事実に触れたドンウクは、神が宣告を誤り、それを正そうとしているのだと誤解します。こうして、彼は自分を救世主だと思い込み、新真理会に対して赤ん坊の居場所の手がかりを教えてしまいます。
赤ちゃんはなぜ生き延びることができたのか
シーズン1のクライマックスにおいて、新真理会のメンバーであるユジとサチョンが矢じりを率い、全力で赤ちゃんを追跡する中、弁護士ミン・ヘジンはソヒョンに赤ちゃんを抱いて逃げるように指示します。しかし、死の宣告時間が迫り、地獄の使者たちが現れます。赤ちゃんを守るため、ヨンジェとソヒョンは合流し、夫婦で赤ちゃんを抱きしめ、使者たちから守ろうとします。
使者たちは夫婦に対して手をかざし、激しい炎で彼らを焼き尽くしますが、驚くべきことに、両親の腕に抱かれた赤ちゃんは無傷で生き残ります。この出来事はアパートの住民たちに目撃され、地獄行きの「絶対的」なルールに大きな疑問を投げかけることになります。
一方、5分後に自分の死が迫っているイ・ドンウクは、神に代わって赤ちゃんを殺そうと狂気に駆られます。しかし、ヘジンが彼を阻止し、赤ちゃんを守り抜きます。ヘジンは赤ちゃんを連れてタクシーに乗り込み、追っ手から逃げ去ります。タクシーの運転手はヘジンのことを知っており、「人間の世界は人間が何とかすべきだ」という意味深な言葉をかけながら、安全な道を進んでいきます。
このシーズン1のラストで明らかになるのは、地獄行きの法則が必ずしも絶対ではないということです。両親の愛によって守られた赤ちゃんは、使者たちの業火を逃れ、生き残りました。これは、新真理会が主張してきた「神の罰」という概念に大きな揺らぎを与える瞬間と言えます。
さらに驚くべきことに、第3話で公開実演によって地獄行きとなったパク・ジョンジャが、まるで灰の中から蘇る不死鳥ように復活したことが映されます。
地獄行きが神の意志だとされるならば、使者たちが赤ちゃんを地獄に送れなかったことは「神のミス」であり、そのミスを埋め合わせるかのように、ジョンジャが地獄から蘇ったとも考察できます。
いずれにしても、物語の終盤で描かれるのは、赤ちゃんを巡る人間の愛と献身が奇跡を生み、人間同士が互いに救い合う姿です。そこには神の意志は介在せず、ジョンジャが主張したように、「人間の自制心」がこの物語の鍵となっていると想像できます。シーズン2の展開が待ちきれません!