今回ご紹介する作品は『地獄が呼んでいる』シーズン2です。
本記事では、Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』を観た感想・考察、あらすじを相関図・ネタバレありで詳しく解説します。
待望のシーズン2!ディストピア世界を舞台に、人間の信仰や宗教に迫る面白いドラマです。
シーズン1のネタバレ解説記事はこちら!
作品情報・配信・予告・評価
相関図・キャスト・キャラクター解説
ネタバレあり
以下では、Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』シーズン2の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
新真理会と矢じり、ソド、政府の4つ巴の権力闘争
Netflixドラマ『地獄が呼んでいる』シーズン2の舞台は、シーズン1の最後から4年後(シーズン1の前半からは8年後)を描いています。
シーズン1の後半では、二代目議長キム・ジョンチルをトップにした「新真理会」と、ミン・ヘジンをトップにした「ソド」が敵対勢力となり、さらに過激派組織「矢じり」が存在していました。
シーズン2が始まると、その力関係に変化が起きていることが明かされます。シーズン1のラストで、ソン・ソヒョンとペ・ヨンジェによって「実演」から生き延びた赤ちゃんの存在が知られたことで、大衆は以前ほど新真理会への関心を薄めていました。
一方で、矢じりは生き延びた赤ちゃんと同じ状況を作り出し、地獄の使者から3分間逃げ切った上で、告知を受けた人物に覆いかぶさることで、命を捧げて罪から救い出し、自らの罪も断罪されようとします。この過激な行動も相まって、矢じりは狂信的な信者を獲得し、勢力を増していました。
パク・ジョンジャの復活と政府の狙い
シーズン1のラストシーンでは、パク・ジョンジャが復活する様子が映し出されていました。シーズン1の4年後となるシーズン2ですが、新真理会の二代目議長キム・ジョンチルは、ジョンジャが復活したことを世間には公表していません。
復活後のジョンジャは様子がおかしく、正常なコミュニケーションが取れないような状態であり、ジョンチルも彼女の扱いについて手を焼いていました。
そんな中で新たな登場人物として現れるのが韓国政府の政務首席イ・スギョンです。彼女はシーズン2におけるフィクサーの役割をになっています。
政府は矢じりの勢力が拡大したことで、国家の治安が不安定になっていることを危惧していました。そこで政府は新真理会とソドの二大勢力による権力闘争を行わせることで、コントロール可能な状態に収めることがが目的でした。スギョンは政府の支援を惜しみなく提供することを条件に、ジョンチルを配下にします。
ソドのトップであるミン・ヘジンは、パク・ジョンジャが復活したことで、彼女を2人の子供ウンユルとハユルに再会させることを正義にしていました。
一方、スギョンはソドの幹部であるキム・ソンジプにも同様に働きかけ、指示を出していました。スギョンの計画がうまくいけば、新真理会はジョンジャを「復活者」として象徴にすることで勢力を取り戻すことになり、ソドはジョンジャと子どもたちを再会させることができます。そしてその2つの勢力を政府が実質的にコントロールすることになるのです。
しかし、スギョンの計画は新真理会初代議長チョン・ジンスの復活によって思わぬ事態へと進んでいきます。
チョン・ジンスの復活と地獄の執着
シーズン1の前半パート、つまりシーズン2から8年前、新真理会の初代議長であるチョン・ジンスは、20年前に受けた告知によって地獄送りとなりました。
刑事のチン・ギョンフンは娘のヒジョンをジンスに利用されれ犯罪に加担させられたことで、娘を守るためにジンスが告知を受けて地獄行きとなったことを世間に公表しない選択をしました。
それから8年が経ったシーズン2。ジンスは地獄に送られた後、様々な世界で地獄の苦しみを経験します。その苦しみの果てに、ジンスは現世での復活を果たしますが、鏡を見る度に地獄の使者からの追跡の恐怖を感じることになります。
これはジンスの精神を蝕み、彼は地獄に取り憑かれることになります。現世に戻ったジンスは、ジョンジャが自分と同じように地獄から復活したことを知り、彼女に会って話すことに執着します。
セギョンの計画が進められていく一方で、ジンスはジンスの存在によって妻を失ったチョン・セヒョンや、狂信的な信者である矢じりを利用することで、強引にジョンジャとの再会を果たします。
ジンスはジョンジャに自分と同じように地獄の使者からの追跡に苦しめられているかどうかを尋ねますが、ジョンジャは見ていませんでした。2人は同じく地獄を経験した者同士ですが、ジンスは現世かどうかも確信が持てなくなっているのに対して、ジョンジャは自分がウンユルとハユルの母親であることを確信していました。
ジョンジャはジンスに、彼が怪物を見るのは、怪物が彼自身の中に存在していて、臆病者であるからだと伝えます。その後、ジンスの中の怪物は成長し、ジンスの体を蝕み、地獄の使者と同じような姿に変貌し、地獄へと消えていくことになるのでした。
この一連の様子は矢じりによってライブ配信されていました。大衆はジンスの復活に歓喜し、そして再び消えたことですがるものを失い、放心することになります。
ソンジプの裏切りと子どもたちとの再会
チョン・ジンスの怪物化と消失のショックに気を取られている中、ヘジンとソンジプはジョンジャを救出し、ヘジンは彼女を子どもたちに再会させようとします。しかし、直前でソンジプが裏切り、ヘジンに襲いかかります。
ソンジプは「復活者」である象徴的存在のソンジプを手に入れたことで、ソドが新真理会や矢じりを凌ぐ影響力を持つ組織になると言い、「混沌の世の中では、人々は確信を持てない真実よりも、確固たるウソが必要」と主張するのです。
2人は激しい格闘を繰り広げ、ヘジンはついにソンジプを打ち負かします。ヘジンはジョンジャをある男性に引き渡し、子どもたちを匿っている場所へと向かわせます。
ヘジンに感謝したジョンジャは、別れ際に「もうすぐ世界が終わる。だからできるうちにやりたいことをやるべき」と伝えます。ジョンジャは車の中で、引き渡されて運転している男性が、自分の成長した息子ウンユルであることに気づき、2人は涙を流して再会し、娘のハユルが待つ場所へと向かいます。
世界は本当に終わってしまうのか?
『地獄が呼んでいる』シーズン2の終盤は、ジョンジャがヘジンに伝えたように、間もなく世界が終わりを迎えることを予期させるものになっています。世界中の無数の人々の目の前に天使が現れ、死を宣告するのです。
全人類が地獄へ行くことを告げるようなバッドエンドとも言えますが、必ずしもそうとは言い切れません。
地獄から復活したジョンジャは、地獄の使者の幻影に追われるジンスとは異なり、目の前の人の最期のイメージを見る能力を持っていました。彼女のビジョンはジョンチルの死を予言しましたが、一方で、ヘジンは予言を覆してソンジプ殺されずに済んでいます。
これにより、ジョンジャのビジョンは必ずしも確実であるとは言い切れず、それはつまり彼女が見た「世界の終わり」も回避することができるかもしれないことを示唆しています。
赤ちゃんは一度死んでから復活していた。その意味は?
『地獄が呼んでいる』シーズン2のラストシーンは、シーズン1のラストの別角度からの場面を描いています。ソン・ソヒョンとペ・ヨンジェの両親によって実演から守られていた赤ちゃん=ペ・ジェヒョンが、実は実演によって死亡していたことが判明します。
シーズン1では、ジェヒョンは両親の愛によって守られたかのように見えましたが、実演を免れたのではなく、実演によって死亡した後にすぐさま復活していたことが明らかになります。
このラストシーンが意味するのは、実演、つまり天使による宣告と地獄の使者による地獄行きは誰もが避けられないことを示唆しています。一方で、ジョンジャやジンスが地獄から復活したように、地獄行きになったとしても復活する可能性があることも描いています。
ペ・ジェヒョンは、ジョンジャやジンスよりも先に復活していた人物でした。地獄から復活した彼女は、ジョンジャのビジョンのように、何かしらの特別な能力を持って復活した可能性も大いに想像できます。
ジョンジャの予言通り、世界は終わるのかもしれません。しかし、天使の宣告以前に、人間という生き物である以上、誰もが死ぬことは免れません。
セヒョンは死ぬ間際、神の意志を理解してこう言いました。「神は意味のないものに意味を与え、殺し合う人間たちしかいない世界を作ろうとしている」。つまり、それが「地獄」であると。
『地獄が呼んでいる』の物語で描かれているのは、突如として現れた超常現象に直面した人類の姿です。人智を超えた現象を勝手に「神の意志である」と意味を作り出し、権力闘争や支配関係によって世界は混沌と化しますが、それらは人間がもたらしたのです。
そんな中で、パク・ジョンジャ、チン・ギョンフン、そしてジェヒョンの両親だけが、愛する家族のために行動していました。
宗教にしてもカルトにしても、混沌の世の中で、人々はすがるものを必要としていました。そんな人類は、ジンスの復活と消失により、放心することになります。
ドラマは、意味のないものに意味を与えること、ひいては宗教という「物語」が与える力の大きさを描いていたように感じます。それは、新真理会にしても、矢じりにしても、ソドにしても同様です。
そんな中で、権力闘争の渦中にいたミン・ヘジンは、世界の終わりを前にして、ジェヒョンに彼女を愛した「両親の物語」を教えるのです。同じくギョンフンは娘のヒジョンに「残酷な真実」ではなく、最期まで「彼女が信じる世界の物語」を守りました。
世界が終わる絶望的な状況とは裏腹に、ラストシーンではヘジンとジェヒョンを乗せた車は、橋を渡って太陽の煌めく光の方へと向かっていきます。
「人間の世界は人間が何とかすべきだ」
シーズン1のラストシーンのセリフが示すように、人間の世界を滅ぼすのも救うことができるのも、人間だけなのです。「希望はまだある」と、信じたくなるような終わり方でした。