今回ご紹介する映画は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』です。
任天堂が誇る世界的ゲーム『スーパーマリオ』シリーズを『ミニオンズ』などで知られるイルミネーション・スタジオが共同で映画化。
ニューヨークで配管工を営むマリオとルイージの兄弟の冒険を描いたアクションアニメーション。
本記事では、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』をネタバレありであらすじ、感想、考察、小ネタやトリビアまで解説します。
子どもから大人まで楽しめる痛快なエンタメ作になっていました!
映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の作品情報
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
ストーリー | |
感動 | |
面白さ | |
テーマ性 | |
総合評価 |
あらすじ
ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージ。謎の土管で迷いこんだのは、魔法に満ちた新世界。はなればなれになってしまった兄弟が、絆の力で世界の危機に立ち向かう。
作品情報
タイトル | ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー |
原題 | The Super Mario Bros. Movie |
監督 | アーロン・ホーバス マイケル・ジェレニック |
脚本 | マシュー・フォーゲル |
出演 | クリス・プラット チャーリー・デイ アニャ・テイラー=ジョイ ジャック・ブラック キーガン=マイケル・キー セス・ローゲン フレッド・アーミセン ケビン・マイケル・リチャードソン セバスティアン・マニスカルコ チャールズ・マーティネー |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2023年 |
上映時間 | 92分 |
予告編
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『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のスタッフ・キャスト
監督:アーロン・ホーバス/マイケル・ジェレニック
監督はアーロン・ホーバスとマイケル・ジェレニック。この2人は、アメリカのコメディアニメ『ティーン・タイタンズGO!』を手掛けた2人。
マリオ(クリス・プラット/宮野真守)
マリオ役は字幕版ではクリス・プラット、日本語吹き替え版では宮野真守さんが担当しています。
キャスト | 主な出演作 |
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クリス・プラット | 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ 『ジュラシック・ワールド』シリーズ |
宮野真守 | 『文豪ストレイドッグス』太宰治 『DEATH NOTE』夜神月 『鬼滅の刃』童磨 |
ルイージ(チャーリー・デイ/畠中祐)
ルイージ役は字幕版ではチャーリー・デイ、日本語吹き替え版では畠中祐さんが担当しています。
キャスト | 主な出演作 |
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チャーリー・デイ | 『モンスター上司』 『パシフィック・リム』 『LEGO(R) ムービー』 |
畠中祐 | 『遊☆戯☆王ZEXAL』九十九遊馬 『うしおととら』蒼月潮 『僕のヒーローアカデミア』上鳴電気 |
ピーチ姫(アニャ・テイラー=ジョイ/志田有彩)
ピーチ姫役は字幕版ではアニャ・テイラー=ジョイ、日本語吹き替え版では志田有彩さんが担当しています。
キャスト | 主な出演作 |
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アニャ・テイラー=ジョイ | 『ウィッチ』 『クイーンズ・ギャンビット』 『ザ・メニュー』 |
志田有彩 | 『リトルウィッチアカデミア』アマンダ・オニール 『ポケットモンスター(2023)』コニア |
クッパ(ジャック・ブラック/三宅健太)
クッパ役は字幕版ではジャック・ブラック、日本語吹き替え版では三宅健太さんが担当しています。
キャスト | 主な出演作 |
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ジャック・ブラック | 『スクール・オブ・ロック』 『カンフー・パンダ』シリーズ 『ジュマンジ』シリーズ |
三宅健太 | 『僕のヒーローアカデミア』オールマイト 『ポケットモンスター (2023)』マードック 『THE FIRST SLAM DUNK』赤木剛憲 |
キノピオ(キーガン=マイケル・キー/関智一)
キノピオ役は字幕版ではキーガン=マイケル・キー、日本語吹き替え版では関智一さんが担当しています。
キャスト | 主な出演作 |
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キーガン=マイケル・キー | 『ピノキオ』 『トイ・ストーリー4』 |
関智一 | 『ドラえもん』スネ夫 『PSYCHO-PASS サイコパス』狡噛慎也 『鬼滅の刃』不死川実弥 |
ドンキーコング(セス・ローゲン/武田幸史)
ドンキーコング役は字幕版ではセス・ローゲン、日本語吹き替え版では武田幸史さんが担当しています。
キャスト | 主な出演作 |
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セス・ローゲン | 『スーパーバッド 童貞ウォーズ』 『宇宙人ポール』 『フェイブルマンズ』 |
武田幸史 | 『100%パスカル先生』岩田 『黒子のバスケ』岡村健一 『ベイマックス』ワサビ |
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のあらすじ
クッパの侵略
ペンギンたちの雪の国にクッパの巨大な浮遊城がやってくる。ノコノコの軍を率いてカメックが現れ、王であるクッパの登場を導く。
ペンギンたちは微力ながら反撃を試みるも、カメックが魔法で動きを封じると、クッパの火炎放射によって氷の城は溶かされてしまう。そこから現れた巨大なはてなボックスをクッパが壊すと、中からスーパースターが出現。クッパは「誰にも止められないぜ」と雄叫びをあげる。
マリオとルイージ
ニューヨーク・ブルックリンで暮らすマリオとルイージは、新しく始めた自ら出演する配管工事のCMを見ていた。元上司であるスパイクは2人をバカにしてルイージを怖がらせるが、マリオは弟を守るためなら何でもすると心意気を見せる。
そんな中、ルイージの携帯に仕事の依頼の電話が入る。2人はブルックリンの工事中の街中を通り抜けて依頼者の自宅へ向かう。
ルイージの着信音はゲームキューブの起動音。
依頼したのは裕福な家庭だった。ルイージはペットの犬フランシスの骨のおもちゃを壊してしまい、フランシスに目をつけられる。マリオは水漏れしているバスルームの元栓を締め直すが、おもちゃを壊されて怒っていたフランシスが突撃したことでバスルームが大破してしまう。
暴れるフランシスは窓から落ちそうになり、2人は必死に止めるが、バスルームはめちゃくちゃになってしまい初仕事は苦い経験に終わる。
別の世界へ
2人が帰宅すると、家族みんなでキノコのパスタ(マリオは苦手)の夕食を食べる。マリオの父親は仕事を辞めて新しく配管工事を始めたことを「くだらない」と言い捨てたことで、マリオは落ち込んでしまう。
ルイージはショックを受けたマリオを慰める。そんな中、ブルックリンの街中で大規模な漏水事故が発生し、マリオは思いついたようにルイージと共に現場に向かう。
2人は水浸しになる道路を見て、マンホールの中から地下に潜り、下水道の奥を調べていく。元栓を閉めようとしたものの、壊れてしまい地下深くまで落ちてしまう。すると、地下に緑色の土管があることを発見する。
2人が地下に入っていく時は近藤浩治さんによるマリオの地下のテーマが聞こえてきます。
気付くとルイージが土管の中に吸い込まれてしまい、マリオも土管の中に引き込まれてしまう。土管の先は異世界へのポータルとなっていて、マリオとルイージは別々の場所へ飛ばされてしまう。
キノコ王国
ルイージは不穏な空気が漂うダークランドに飛ばされていた。カロン(全身が骨になったノコノコ)の集団に見つかり追いかけられ、なんとか城に逃げ込むが、3体のヘイホー(フードに仮面をかぶった敵キャラ)に捕まってしまう。
一方、マリオがたどり着いたのは、巨大なキノコがたくさん生えているキノコ王国だった。キノコ王国の住人であるキノピオと出会ったマリオは、ルイージがダークランドにいってしまったことを知り、キノピオの案内でピーチ姫に助けを求めることにする。
キノコ王国の街を通り、2人はピーチ姫の城に到着する。一方、、ピーチはクッパの脅威に対抗するためにコングファミリーの力を借りようとしていた。
キノピオの助けを借りてマリオは城に忍び込むと、ピーチと出くわす。ピーチは自分以外の人間と出会ったことでテンションが上がり、マリオはルイージを見つけるために彼女に助けを求める。すると、ピーチはマリオの力をテストするという。
ピーチはさまざまな障害物がある特設のステージを出し、クリアして見せる。ピーチがはてなボックスからキノコを取り出してマリオに与えると、マリオは体が大きくなり、パワーアップする。その後、何度もステージに挑戦して失敗を繰り返すマリオだったが、最終的にゴール直前まで行くことができ、ピーチに認められる。
そしてキノピオも合流し、ピーチとマリオはコングアイランドへ向けて出発する。
クッパの目論見
砂漠や空に浮かぶ崖などを超えて、一面ファイアフラワーが咲く丘にたどり着く。そこでピーチはファイアフラワーによる火の能力を使ってみせる。マリオに出自を尋ねられるピーチだったが、幼い頃にキノコ王国にやってきて育てられたこと以外はよくわからないと答える。
クッパはスーパースターを手に入れたことでピーチと結婚しようと企んでいた。ピーチへの想いを込めたバラードをピアノで演奏するが、カメックからの報告でマリオと一緒にいることを知り、嫉妬心に火を付けていた。
クッパが演奏するピアノにはクッパ7人衆の最年長「ルドウィッグ(Ludwig von Koopa)」の名前がありました。ちなみに名前はベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)に由来しています。
捕まっていたルイージはクッパの元に連れていかれると、口ひげを引っ張られる拷問を受け、マリオが兄であることを明かしてしまう。
コングアイランド
マリオらは、コングアイランドへ到着すると、車に乗せられて王であるクランキーコングの前に案内される。
ピーチがクッパに対抗するために協力を求めるが、クランキーコングは拒否する。マリオがルイージを救うためにも懇願すると、クランキーは息子であるドンキーコングとコロシアム(闘技場)で戦い、勝利すれば協力すると持ちかける。ピーチは危険だと止めるが、マリオはそれに承諾する。
闘技場ではコングら観客が大勢いる中で、マリオとドンキーコングのバトルが始まる。
ドンキーコングが入場する時は『ドンキーコング64』の「DKラップ」が印象的。
ドンキーコングのパワーに圧倒され、ボコボコにされるマリオだったが、はてなボックスからキノコを手にしてパワーアップしようとするが、それはマメキノコであり、デコピンされてダメージを受ける。
追い詰められるマリオだったが、はてなボックスからアイテム(スーパーベル)を取り、ネコマリオになって現れる。素早い動きでドンキーを翻弄し、戦闘不能にする。クランキーは敗北を認め、コング軍の力を差し出すことに同意する。
レインボーロード
ルイージはペンギンやルマリー(青白い光を放つ星の子)らと同じ空間に投獄されていた。ルマリーのネガティブな発言によりルイージやペンギンは恐怖心を煽られていた。一方、クッパはカメックの報告でピーチとコングらの同盟を知る。
マリオらはコング軍の支援を受けてそれぞれカートを組み立てる。クッパの元へ向けて出発し、レインボーロードへ入るが、待ち伏せしていたクッパ軍が現れ、レインボーロードでカートに乗ったままの戦いが始まる。
重装甲の車に乗った青甲羅のトゲゾーはマリオを執拗に追いかけるが、ドンキーの援護もあってトゲゾーの車を爆破する。しかし、怒ったトゲゾーはトゲゾー甲羅になってドンキーとマリオが乗るカートを破壊し、2人は海へ落ちていく。
レインボーロードは途中で破壊されてしまい、ピーチはキノコ王国に危険を知らせるために引き返していく。
気絶して溺れかけていたドンキーをマリオが助けると、2人は巨大ウツボに飲み込まれてしまう。ウツボの腹の中で口論するマリオとドンキーだったが、2人とも親に認められていないという共通点があった。
その後、2人は腹の中でドンキーのカートを見つけ、ロケットを使ってウツボから脱出する。
結婚式バトル
ピーチはキノコ王国に戻り、避難を呼びかけているとクッパの浮遊城が現れる。クッパはピーチに求婚するが、ピーチは当然のように断る。しかし、クッパの命令でカメックが魔法でキノピオを苦しませると、ピーチはそれを止めさせるためにクッパと結婚することを承諾する。ピーチは結婚式を挙げるためにクッパの浮遊城に乗せられていく。
クッパは挙式に向けて監禁していたルイージらを生贄にしようとしていた。結婚式が始まると、ピーチはブーケの下に隠していたアイスフラワーを使い、クッパと監禁装置のレバーを氷漬けにして封じる。
そんな中、スーパーキノコを手にしたマリオとファイアフラワーを手にしたドンキーも到着して加勢する。溶岩に落ちそうになっていた捕虜たちをドンキーが引き止め、落下しそうになったルイージの元に、タヌキスーツを手にして空を飛ぶタヌキマリオが助けに現れる。
怒ったクッパは氷を溶かし、キノコ王国を破壊するためにキラー(弾丸の姿の兵器)を発射。キノコ王国に危機が迫ると、タヌキマリオが空を飛びキラーを誘導させ、ポータルとなっている土管へと導く。土管に吸収されたキラーは爆発を起こし、強大な吸引力でマリオらは吸収されてクッパの城ごとブルックリンにやってきてしまう。
スーパーマリオブラザーズ
怒り狂ったクッパはマリオを殴り倒し、恐怖を感じたマリオはピザ屋に隠れてしまう。ピーチとドンキーがクッパに挑む中、マリオはルイージとのCMを見て奮起し、再びクッパに立ち向かう。
マリオはスーパースターに向かって走り出し、クッパは火炎放射するも、飛び込んできたルイージがマンホールで防ぎ、2人はスーパースターを手にする。
無敵状態になったマリオとルイージは、クッパ軍団を蹴散らし、クッパを制圧。ピーチは弱ったクッパをミニキノコを与えて小さくして捕獲する。
マリオとルイージの両親やスパイクを含めたブルックリンの人々は、脅威を退けたマリオとルイージを「スーパーマリオブラザーズ」と言って称える。
その後、マリオとルイージは、ポータルの土管で世界を行き来し、キノコ王国で配管工の仕事を続けている。
ミッドクレジットシーン
ミッドクレジットシーンでは、檻の中で歌を歌うクッパに対してキノピオが叱りつける様子が描かれる。
ポストクレジットシーン
ポストクレジットシーンでは、ブルックリンの下水道で、緑の斑点のある卵が孵化し始め、「ヨッシー!」と産声を上げる…。
ローランド・エメリッヒ監督による1998年の映画『GODZILLA』のラストシーンのオマージュ。続編とも受け取れる?
マリオ映画としては3作目となる
実は、日本が誇る世界的ゲーム『スーパーマリオ』の映画は今作で3作目となります。
『スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!』(1986年)
マリオ映画の最初となるのは、1986年の『スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!』です。こちらはファミリーコンピュータゲームの『スーパーマリオブラザース2』リリースに伴って公開されました。
声優はマリオを古谷徹さん、ルイージを水島裕さん、ピーチ姫を山瀬まみさん、クッパを和田アキ子さんというキャスティング。
マリオがクッパをやっつける時に、尻尾を掴んで振り回す様子は、この映画で描かれた後、1996年発売の『スーパーマリオ64』で同様の場面がプレイできます。
『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993年)
マリオ映画2作目となるのは、1993年の『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』。
ハリウッドは制作費50億円を投じてマリオを実写映画化。しかしながら日米ともにヒットせず、“ゲーム原作映画ワースト”にも選出されるほどの不名誉な結果となりました。
ストーリーも斬新で、隕石が衝突して地上世界と地下世界の2つのパラレルワールドに分岐し、地下世界では絶滅したと思われていた恐竜が生活していたというもの。
しかし、今回の新作映画の公開を受けて、アメリカのAmazonでは売れ筋ランキング1位になり、本作のBlu-ray予約を抑える形になっています。現在ではカルト映画的人気となっています。
【ネタバレ感想・考察】ゲームの世界観を落とし込んだ痛快作
マリオ映画として3作目となる『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』でしたが、めちゃくちゃ楽しい映画でした。
イルミネーションの共同製作ということもあり、『ミニオンズ』シリーズのハチャメチャさと、フィル・ロードとクリス・ミラーの『レゴムービー』を掛け合わせたようなアイデア溢れる描き方。
ニューヨークで配管工として頑張ろうとするマリオとルイージの兄弟が、ひょんなきっかけで異世界へ行き、悪の大魔王クッパをやっつけるという物語。
映画は純粋な楽しさに突き抜けています。でも、それで良いのです。それが良いのです。
日本より先に公開していたアメリカでは、評論家が辛辣な感想を挙げる一方で、観客満足度は高い結果になっています。(日本公開4月28日時点で、支持率は批評家59%に対して観客96%)
物語は暴力で解決する勧善懲悪ではありますが、この映画をそういった“社会的な正しさ”という意味で評価を下げるのは違う気がします。単に「Not for me」というだけ。
それは『アンパンマン』が暴力的だと訴えることに違和感を覚えるのと同じようなもの。これだけ多様な作品がある現代において、一つの作品にすべてを求めすぎているとも感じます。もっと言えば、映画が社会規範を説教臭く教えるのではなく、それを通して親が子どもに教育すること、そして自ら考えることにこそ意味があるのです。
GW時期に公開される映画としてこれ以上ないエンタメ作として昇華していました。任天堂ゲームファンにとっては「It's me!」な映画でした。
さらに、ゲームをプレイしたことがある方なら、どの世代(どのハード)でも、ゲーム要素が上手く物語に溶け込んでいて、かつてプレイしたゲームとその時の思い出が蘇るノスタルジックで青春の宝箱的な魅力がありました。
映画を観る私たちは、マリオがなぜ土管に入るのか、なぜキノコを食べると大きくなるのかを気にしないように、みんなが知っているマリオの物語を映画化した、純度の高い映画のように思いました。
それができるのも、任天堂という世界的ゲーム会社だからこその説得力なんですよね。
映画上映前の少しクドい宣伝を吹き飛ばすように、映画を観たらゲームやりたくなるんですよね!
ゲームの要素を絶妙に落とし込む
本作は、なんと言っても任天堂が誇る名作ゲームの要素を惜しみなく映画の世界に組み込み、違和感なく成立させていることが見事でした。
『スーパーマリオ』シリーズは1985年から現在に至るまで、いくつもの作品でヒット作を出してきていて、そんな登場したゲームの一例は記事の最後でまとめてご紹介します。
冒頭でブルックリンの工事現場を左から右に移動する様子は、代表的な横スクロールアクションを彷彿とさせたり、ピーチに鍛えられる特訓ステージでは、マリオの訓練という過程を通して、落下したりパックンフラワーに捕まったり、ゲームのプレイ感覚を思い出させます。
“マッドマックス怒りのレインボーロード”と表現できそうな、レインボーロードでのクッパ軍との激しい攻防は、まさにマリオカートの世界を忠実に再現していました。レインボーロードがショートカットできるところも再現されていて笑えました。
トゲゾーがブチ切れて炎の中から立ち上がる様子とかめっちゃ良かった!
シンプルな兄弟物語&ピーチのリーダー性
本作は確かにシンプルな物語ではありますが、突き詰めると、まさに『スーパーマリオブラザーズ』、マリオとルイージの兄弟の物語であることがよく伝わります。
本作は「クッパにさらわれたピーチ姫をマリオが奪還する」物語ではなく、変化を加えているのが絶妙なポイントでした。
マリオはたまたま異世界にやってきて、その行動原理は、はぐれてしまったルイージと再会することにありました。
マリオはいかなる時もルイージの身を案じ、ルイージもそんなマリオを信頼しています。映画の結末としても、マリオ単体でクッパを倒すのではなく、マリオとルイージが一緒なってやっつけるのでした。
結果的に異世界、そしてブルックリンを守ることに繋がりますが、それはマリオがルイージを守ろうとし、ルイージが恐怖心を乗り越えた先の結果でしかありません。
世界を救う大義ではなく、目の前の家族のために奮闘したマリオとルイージの成長譚だったのです。(父親から認められるのはあっさり過ぎるようにも思えましたが)
兄弟愛と2人の成長を描いた気持ちのいい作品でした!
一方、ピーチは私利私欲で侵略するクッパから国を守るために行動しています。映画を観れば分かるように、ピーチ姫はただ助けられるのを待つ存在ではなく、自ら率先して行動を起こします。
コングアイランドに協力を依頼するときもピーチ自ら出向こうとしていて、一方で、国の危機においては率先して国民を避難させようと行動していました。
国のリーダーとしてのピーチの器の大きさが感じられるストーリーになっているのがすごく良いところでした。ゲームで言えばピーチがマリオらを救う2005年の『スーパープリンセスピーチ』的です。
悪者に捕まってしまう“か弱い乙女”ではなく、“一国を導く王女”であるピーチが素晴らしかった…!
一方で、クッパも完全なる悪の存在ではなく、好きな人への異常な執着による行動が印象的でした。クッパがピーチへ想い馳せて歌う「ピーチ」は映画の中でも名場面のひとつと言えます。
マリオとピーチの関係をあえて曖昧にして、恋愛的な展開を描かないところも好きでした。
マリオとピーチは、それぞれの目的の先にある打倒クッパという目標で共闘し、そしてドンキーを入れたパーティを組み、ラスボスであるクッパに挑むというRPGゲーム的展開になっていくのも胸アツなところでした。
そういう背景もあり、パワーアップ能力で活躍するのがマリオだけではなく、ファイヤピーチや、ファイアドンキー(新しい!)など、役割を分担して共闘する様子も心地良い。ダメージを受けると前の状態に戻る演出も効果的に働いています。
続編を想定した設計なのかもしれませんが、上手く働いていたように感じました。
アニメーションのリッチなクオリティ
アニメーションにおいても素晴らしく、あらゆる場面が背景の細部に至るまで作り込まれていて、視覚的にも聴覚的にも楽しい映画になっています。
レインボーロードのジェットコースター的カメラワークや、ファイアフラワーが咲き誇る丘のシーンの美しさ、マリオとドンキーが海に落ちたときの水のリアルな表現、キノコ王国の細部に至るまで圧巻の描写。
虹の粒子の複雑なコース上を走行するレインボーロードのシーンは、視覚効果としても相当大変だったそうです…。
優れたアニメーション表現と、テンポの良いハチャメチャな展開が続くため、94分という尺が非常に丁度いい長さに感じました。(これ以上長くなるとキツいとは思う)
その分、凝縮された物語の中に、あらゆる任天堂ゲームの小ネタが散りばめられているので、ファンにとっては繰り返しみたくなる要素もありました。
この映画をオープンワールドの世界観としてゲーム化したら絶対に需要あると思いますね!探索したいもん。
【小ネタ】登場した原作の任天堂ゲームなど
映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の中には、任天堂のゲームの歴史を築いてきた様々な名作ゲームのキャラクターや要素が登場しています。以下では劇中に登場した任天堂ゲーム作品とその場面を紹介します。
パンチアウト!!
『パンチアウト!!』は1984年に発売されたアーケードのボクシングゲーム。
映画の冒頭、マリオとルイージがCMを見ている場所は「パンチアウト・ピッツェリア」という店。ピザ屋の壁面の内装には、主人公リトル・マックや対戦相手のファイターたちが額に入れられて飾られていました。
マリオラップ
マリオとルイージの配管工事のCMはラップ調でしたが、1989年にアメリカで放送された『スーパーマリオブラザース スーパーショー!』という番組に由来しています。
ドンキーコング
『ドンキーコング』は1981年に発売されたアクションゲーム。ドンキーコングにさらわれた恋人のレディを救い出すことが目的。
初登場となる『ドンキーコング』当時はマリオに名前は付いておらず、「ジャンプマン」と呼ばれていました。
冒頭のピザ屋では、マリオたちの後ろでドンキーコングによく似たアーケードゲーム、その名も「ジャンプマン」をプレイするジュゼッペという男性がマリオと会話しましたが、この男性は字幕版ではゲームでマリオの声を担当しているチャールズ・マーティネーです。
ドンキーコング64
『ドンキーコング64』は1999年に発売された3Dアクションゲーム。ドンキーコングシリーズ初の3D作品。
ドンキーコングが闘技場に登場するときの音楽は「DKラップ」。ディディーコングやディクシーコング、チャンキーコングも闘技場で姿が確認できます。バナナですっ転んだカートに乗っていたのはスワンキーコング。
レッキングクルー
『レッキングクルー』は1985年に発売されたファミリーコンピュータ用のアクションゲーム。ビルの解体屋となったマリオとルイージを操作してモンスターの巣窟と化したビルと解体するアクションパズルゲーム。
ピザ屋でマリオとルイージが仕事を辞めたと話していましたが、辞めた会社の雇い主だったスパイクという男性は、『レッキングクルー』で敵キャラとして登場します。(日本では当初ブラッキーという名前でした)
マリオは配管工となる前に解体屋(大工)をやっていたことが分かります。
ゲームキューブ
ゲームキューブは2001年に発売されたNINTENDO 64の後継機に当たる家庭用ゲーム機。任天堂の国内ハード生産としては本機が最後となり、以降は中国やベトナムに変わっています。
ルイージの携帯電話の着信音はゲームキューブの起動音。ゲームキューブの発売日と同時に販売されたのが『ルイージマンション』ということで、ルイージも思い入れが強い?
スーパーマリオワールド
『スーパーマリオワールド』は1990年に発売されたスーパーファミコン用アクションゲーム。恐竜ランドを舞台に、クッパに捕まったピーチ姫を救出するため、マリオとルイージが冒険をくり広げる。任天堂を代表するソフトの1つ。
テレビで映されているCMでは、ゲーム内でマントに身を包み空を飛ぶシーンの効果音が各地を移動する音に使われています。
コング軍団とともにカートで走るコースを計画していた時に見ていた地図は、ゲーム内のマップを意識したデザインになっていました。
スーパーマリオオデッセイ
『スーパーマリオ オデッセイ』は2017年に発売されたNintendo Switch用アクションゲーム。『スーパーマリオサンシャイン』以来の『スーパーマリオ』シリーズ。
ブルックリンで漏水のニュースでインタビューに応えていたのは『スーパーマリオオデッセイ』に登場した「ニュードンク・シティ」の赤いドレスが印象的なポリーン市長。彼女は1981年のアーケードゲーム『ドンキーコング』内で、ドンキーにさらわれる女性でもあります。当初は(「レディ」という一般名詞だったが後に命名される)
キノコ王国の街では、ゲーム中に手に入れたコインで衣装を購入できる「クレイジーキャップ」も登場。ゲーム内の広大なエリア「砂の国」も登場していました。
白いシルクハットをかぶるクッパがピーチに結婚を迫る流れはゲームのラストでも登場します。
キノコ王国もろもろ
キノコ王国にはいろんな作品の小ネタが散りばめられていました。
登場ゲーム | 登場アイテム |
---|---|
『スーパーマリオ オデッセイ』 | クレイジーキャップ |
『レッキングクルー』 | マリオ(ジャンプマン)のハンマー(アンティーク店にて) |
『スーパーマリオワールド』 | ドラゴンコイン、音符ブロック、Pバルーン(アンティーク店にて) |
『スーパーマリオ 3Dワールド』 | スーパーベル(アンティーク店にて) |
『スーパーマリオブラザーズ3』 | Pスイッチ(アンティーク店にて) |
店主と客の会話では、カセットを「息を吹きかければ動きますよ」と伝えています。(ファミコンあるある)
スーパーマリオ 3Dワールド
『スーパーマリオ3Dワールド』は2013年にWii U向けに発売したアクションゲーム。
闘技場では「スーパーベル」を集めるとなることができるネコマリオになってドンキーを倒していました。
スーパーマリオ64
『スーパーマリオ64』は1996年にNINTENDO 64本体と同時に発売されたスーパーマリオシリーズ初の3Dアクションゲーム。
キノコ王国にあるステンドグラスがシンボルのピーチ城は『スーパーマリオ64』から。
ピーチ姫のいる城の中の壁には、ゲームでマリオが飛び込んでいくステージの入り口になる絵画も飾られていました。クッパの挙式ではボムキングが参列していました。
『マリオカート』シリーズ
『マリオカート』は1992年にスーパファミコンで発売されたレーシングゲーム。任天堂を代表するゲームのひとつで、シリーズ累計売上1億5000万本を超える。
マリオたちはコングアイランドでそれぞれのカートをカスタマイズしていました。マリオカートシリーズ定番のレインボーロードでの激しいレーシングシーンが映画の大きな見どころでもあります。
マリオがドリフトした時の加速エフェクトもゲームと同じでしたね。
ルイージマンション
『ルイージマンション』は2001年発売したニンテンドーゲームキューブ用ソフト。ルイージが初めて単独で主役となった作品。
ルイージがダークランドに飛ばされてから懐中電灯でビビりながら森の中を進む様子はまさに『ルイージマンション』。終盤のクッパの挙式ではゲームのボスであるキングテレサも参列していました。
スーパーマリオギャラクシー
『スーパーマリオギャラクシー』は2007年発売のWii用ゲームで、『スーパーマリオ64』『スーパーマリオサンシャイン』に次ぐ3Dアクションシリーズ。
予告編でも話題になったルイージと同じ空間に閉じ込めれられていたルマリーは『スーパーマリオギャラクシー』で登場するキャラクターです。
『ペーパーマリオ』シリーズ
『マリオストーリー』は2000年に発売されたマリオRPGの第2作目であり、『ペーパーマリオ』シリーズの第1作目。
劇中で登場す空飛ぶクッパ城は『マリオストーリー』で登場し、その後の『ペーパーマリオ』シリーズでも登場するクッパ城の造形とよく似ています。
ピーチ姫が用意したステージでマリオが訓練する時に、ゴールとなるクッパの的はペーパーマリオ風のベニヤ板になっていました。
ヨッシーアイランド
『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』は1995年に発売されたスーパーファミコン用アクションゲーム。ヨッシーが主役を務める。
ルイージが子ども時代を回想する時のマリオとルイージの姿は、赤ちゃん姿のベビーマリオとベビールイージになっていました。
パルテナの鏡シリーズ(Kid Icarus)
『光神話 パルテナの鏡』は1986年に発売された主人公ピットを操作するアクションゲーム。
マリオが部屋でプレイしているゲームは『光神話 パルテナの鏡(Kid Icarus)』。マリオはファミコンではなく、海外版の据え置き機ネス(Nintendo Entertainment System)を使っていました。
マリオがファミコンゲームをプレイする様子は1986年の『スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!』の冒頭でも描かれています。
マリオの部屋
登場ゲーム | 登場アイテム |
---|---|
『F-ZERO』 | ブルーファルコンのポスター(キャプテン・ファルコンのレーシングマシン) |
『スターフォックス』 | アーウィン |
『アイスクライマー』 | サングラスをかけたシロクマ |
まとめ:ファミリームービーとして大成功
今回は、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』をご紹介しました。
すでにアメリカでは爆発的なヒットを飛ばしていて、続編は濃厚と言えるでしょう。
3DCGが主流の海外のアニメーション市場では、興行的にもディズニー/ピクサーが強大ですが、『ミニオンズ』シリーズを始めとしたイルミネーション作品の突き抜けた面白さが今後も映画界を賑わせてくれそうですね。
ぜひ映画館で!