今回ご紹介する映画は『三体』です。
中国が誇る世界的SF作品を、『ゲーム・オブ・スローンズ』の制作陣によってNetflixで実写ドラマ化。
本記事では、ネタバレありで『三体』を観た感想・考察、あらすじを解説。
中国を代表するSF文学がネトフリで待望の映像化した注目作です!
『三体』作品情報・配信・予告・評価
三体
あらすじ
才能豊かな5人の友が、天地を揺るがす恐るべき事実を発見。時空をまたぐ壮大なスケールで、科学の法則が解明され、人類存亡の危機が明らかになっていく。
作品情報
タイトル | 三体 |
原題 | 3 Body Problem |
原作 | 劉 慈欣『三体』 |
制作 | デヴィッド・ベニオフ D・B・ワイス アレクサンダー・ウー |
出演 | ジェス・ホン リーアム・カニンガム エイザ・ゴンザレス ジョヴァン・アデポ ジョナサン・プライス ベネディクト・ウォン アレックス・シャープ ロザリンド・チャオ ジョン・ブラッドリー サーメル・ウスマニ マーロ・ケリー シー・シムーカ ジーン・ツェン |
音楽 | ラミン・ジャヴァディ |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2024年 |
上映時間 | 全8話(シーズン1) |
ポイント
配信サイト
配信サイト | 配信状況 |
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『三体』監督・スタッフ
制作
Netflixドラマ版『三体』の制作は、世界的大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』を手掛けたデヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスによって開発されました。さらに『トゥルーブラッド』の脚本にも参加していたアレクサンダー・ウーが加わっています。
原作:劉慈欣(リウ・ツーシン)『三体』
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Netflixドラマ『三体』の原作は、「SF界のノーベル賞」とも言われるヒューゴー賞をアジア圏作品として初めて受賞した劉慈欣(リウ・ツーシン)による世界的ベストセラー。
『三体』キャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
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イエ・ウェンジエ(幼少期:ジーン・ツェン/成人:ロザリンド・チャオ) 優秀な天体物理学者。文化大革命中に父を殺される。 | |
クラレンス・シー(ベネディクト・ウォン) 科学者たちの不審死を調査する元MI5エージェント。原作でのキャラクターはシー・チアン/ダーシー。 | |
ソール・デュラン(ジョヴァン・アデポ) オックスフォードの粒子加速器の研究者。オックスフォード5の1人。原作でのキャラクターはルオ・ジー。 | |
ジン・チェン(ジェス・ホン) 理論物理学の上級研究員。オックスフォード5の1人。原作でのキャラクターはチェン・ジン。 | |
オギー・サラザール(エイザ・ゴンザレス) ナノマテリアル開発者。オックスフォード5の1人。原作でのキャラクターはワン・ミャオ。 | |
ウィル・ダウニング(アレックス・シャープ) 大学講師。学生時代からジンに片思いしている。オックスフォード5の1人。原作でのキャラクターはユン・ティエンミン。 | |
ジャック・ルーニー(ジョン・ブラッドリー) スナック菓子で財を築く。オックスフォード5の1人。 | |
マイク・エヴァンズ(ジョナサン・プライス) 世界最大の民間石油会社の社長で元環境保護活動家。 | |
トーマス・ウェイド(リアム・カニンガム) 科学者の不審死を調査する国際諜報機関の長官。 | |
タチアナ・ハース(マーロ・ケリー) 謎の女性。三体を「主」と信じてエヴァンスの組織で任務をこなす。 | |
ソフォン(下岡海) 三体、VRゲームのホスト、使者。 |
ネタバレあり
以下では、ドラマの結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
第1話「カウントダウン」
© 2024 Netflix
非科学的な事態
第1話は、1966年、文化大革命の最中の北京の清華大学で起きた抗議運動の場面から始まる。物理学の教授、イエ・ジョータイは、革命を叫ぶ群衆の前に膝をつかされ、彼の教えた「ビッグバン理論」が反革命的であると吊るし上げられ、若い学生たちからの暴行を受けて死亡する。
一方、ジョータイの幼い娘、イエ・ウェンジエ(ジーン・ツェン)は、父親が殺される様子を恐怖に満ちた眼差しで見届ける。ウェンジエは父の死を悲しむ間もなく逮捕される。
時は流れ、2024年のロンドン。クラレンス・シー(ベネディクト・ウォン)が物理学者の遺体が発見された現場に到着する。壁には「私にはまだ見える」の文字とカウントダウンの数字が書かれており、「他の事件」と同じ手口であることに気づく。
オックスフォードの粒子加速施設では、研究博士のヴェラ・イエが加速器の研究者ソール・デュラン(ジョヴァン・アデポ)のデスクを訪問する。彼女は粒子加速器に起きた異変の解決策を尋ねるが、非科学的な状況でソールも手を上げていた。さらにヴェラはソールに「神を信じるか」と尋ねると、ソールが否定する。その後、ソールの部屋を出たヴェラは超純水タンク(水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置)の中に身を投げて自殺する。
オックスフォードの5人
理論物理学の上級研究員であるジン・チェン(ジェス・ホン)とナノファイバーの開発者であるオギー・サラザール(エイザ・ゴンサレス)は、1ヶ月前から世界で発生している粒子加速器の謎の故障について話し合う。
そんな中、オギーは自分の眼前に光の点滅が見え始め、それが何らかのカウントダウンを表していることに気づく。その後、ソールからの連絡が入り、彼からヴェラが自殺したことを伝えられる。
ヴェラの葬儀には、ジンやオギー、ソールの大学時代の研究仲間であるウィル・ダウニング(アレックス・シャープ)とジャック・ルーニー(ジョン・ブラッドリー)も参列する。ウィルはジンに片思いしているが、ジンにはラジ・ヴァルマ(サーマー・ウスマニ)というボーイフレンドがいることを知る。
葬儀場には億万長者のマイク・エヴァンズ(ジョナサン・プライス)の姿もあった。クラレンスは葬儀の参列者たちの写真を撮り、エヴァンズを見つけて後を追い、彼がヘリコプターで去っていく様子を写真に収める。
葬儀の後、5人がパブに集まって話をしていると、カウントダウンの数字を見続けているオギーは一服しようと店の外に出る。すると、謎めいた女性(マーロ・ケリー)が彼女に話しかける。オギーは最初、相手にしない様子だったが、彼女から「あとどれくらい時間がある?」とカウントダウンについて尋ねられ、驚きを隠せない。
謎の女性は、オギーが研究を中止すればカウントダウンは止まると言い、翌日の真夜中に空がメッセージがあると言い残して去っていく。
沈黙の春
1966年の内モンゴル、ウェンジエは森の中の労働キャンプに収監され、過酷な労働を強いられていた。ある時、ウェンジエはバイ・ムーリンという男に話しかけられる。彼はウェンジエに、環境破壊をテーマにしたレイチェル・カーソンの『沈黙の春』の本を手渡す。
ウェンジェは他の人間に見つからないように本を読みふけり、次第にムーリンとの仲を深めていく。ある時、本の存在を気づかれて2人の兵士に問い詰められるが、彼女はムーリンのことは言わずに本部へと連行される。彼女は高官の女性から書類へのサインを求められるが、拒否したことでバケツに入った水を浴びせられる。
その後、ウェンジエはアンテナが建つ丘の上に連れて行かれると、彼女を出迎えた兵士たちは、彼女が科学論文を書いたかどうか尋ねる。ウェンジエが論文内容を復唱してみせて証明すると、軍の人間は彼女の才能が必要だと告げる。ウェンジエは、施設内に入れば出られないと言われるが、それを受け入れる。
星のウインク
現代のロンドンに戻り、トーマス・ウェイド(リアム・カニンガム)から電話を受けたクラレンスは、事件の最新情報を共有する。
ヴェラの家では、ヴェラの母ウェンジエ(ロザリンド・チャオ)とジンが祭壇に手を合わせ、ヴェラの自殺を信じられないでいる。ヴェラの母は、ヴェラが生前、奇妙な金属製のヘルメット型のゲームに熱中していたことを明かし、ジンに手渡す。
ジンがヴェラの使っていたヘルメットをかぶると、驚くほどリアルなバーチャルリアリティゲームの中にいることに気づく。目の前には朝日が昇る寺院があり、一瞬にして太陽が昇ると、大地は炎に変わり、黒焦げになった死体を見てヘルメットをはぎ取り、現実に戻る。
オギーはソールを連れてオックスフォード構内で来る真夜中に備えていた。オギーは謎の女性から告げられた星がウインクすることについて、偏見なしで見てもらうためにソールに同行を頼んでいた。
1966年、アンテナの動きを観測していたウェンジエは、才能を見出され、上官から計画の内容を知らされる。彼はウェンジエに、遥か彼方と電波で交信していると明かす。
真夜中になり、オギーとソールはすべての星が輝き、点滅する様子を目撃して驚愕する。ソールは点滅が暗号であり、それが数字であることに気づくと、その数字はオギーが目にしている光にカウントダウンと一致する。
第2話「紅岸」
© 2024 Netflix
カウントダウンの停止
第2話は、ソールがウェンジエの家に弔問に訪れる場面から始まる。ウェンジエに星の点滅についての見解を尋ねられると、ソールは衛生から観測されていないことから、ディープフェイクだと考えを伝える。
オギーはオフィスに出社し、彼女の研究しているナノファイバーのテストに臨もうとしていたが、彼女の関心は進み続けるカウントダウンにあった。ナノファイバーが水晶を細かく切断することに成功し、同僚たちは実験の成功を喜び合うが、オギーは止まらないカウントダウンに不安になり、研究の中止を宣言してオフィスを飛び出す。
すると、見えていたカウントダウンが消えたことに気づく。彼女を監視していたクラレンスは、オギーに「星の点滅を知らせた理由を知りたくないか」と声を掛ける。
太陽の効果
1968年、ウェンジエは宇宙に発信しているメッセージの信号が弱いことを指摘し、ある論文を書いたアメリカの科学者に連絡を取るように上官のヤンに働きかけ、すぐに返答を受け取る。
ウェンジエは、アメリカが木星から受け取った電磁波が、中国では太陽から受けとっていることを発見し、太陽が電磁波を反射し、増幅していることに気づく。彼女は太陽を利用してより強い信号を発信できることをレイ委員に伝えようと提案する。しかし、ヤンは2人でレイ委員に提案しようと言ったにも関わらず1人で提案していた。
するとレイ委員は、太陽が指導者(毛沢東)の象徴であることを指摘し、提案を一蹴する。その後、ウェンジエは管制室でメッセージの送信業務を行うが、気づかれないうちに衛星の方向を変えていた。
レベル1のゲーム
クラレンスはオギーにマイク・エヴァンスについて知っていることを尋ねるが、彼女は彼がヴェラの葬儀にいたことを知っているだけだった。その後、オギーは、彼女に近づいた謎の女の姿が映像から消されていること、彼女と同じようにカウントダウンを見た科学者たちが数十人もおり、仕事を辞めるか自殺するかに追い込まれたことを知る。
一方、ジンは再びヘルメットをかぶりVRゲームをプレイしていた。文王と名乗る男と従者と呼ばれる子供が現れ、彼女に世界の謎を解明することを要求する。ジンはプレイヤー名をコペルニクスと名乗る。
文王は、今は「乱紀」であり、この世界を統治する紂王(ちゅうおう)が判断を謝れば文明が滅ぶと伝える。その言葉の通り、急に太陽が昇り、文王に促されてジンは岩陰に隠れるが、2人分のスペースしかないため、従者は追い出される。彼女は地面に横たわり、太陽の陽を受けると体が紙のように乾くが、文王は彼女を丸めて「恒紀」に水分を与えれば復活の可能性があると伝える。
招いていない
ジンはジャックにヘルメットの存在を打ち明ける。ジャックは半信半疑でヘルメットを被り、VRゲームの精神的に働きかけるリアリティに驚愕するが、ゲームのホストが現れ、「お前は招いていない」と言われて首を斬られてしまう。ジャックは現代では未到達の未来の技術であることに高揚し、ヴェラが死ぬ前にプレイしていたことを知らされるが、ゲーム内の謎を解こうとジンに伝える。そんな2人の会話を、クラレンスが盗聴している様子が映される。
クラレンスが亡き妻の誕生日に墓参りをしに行くと、彼の前に謎の女性が現れる。彼女は父親が頭を撃たれて亡くしたと言うが、彼女が立ち去った場所の墓は、4歳で亡くなった子供のものであることが明かされる。
帰宅したジャックは、自宅に宅配物があり、中にヘルメットと招待状が入っていることに気づく。ジャックは早速ゲームをプレイし始める。
ウィルは大学の授業でマルチバース(多元宇宙)論を生徒たちに説明した後、主治医からの連絡を受ける。その後、ジャックに再会すると、ジャックはゲームの話を興奮気味に話すが、ウィルは膵臓がんのステージ4で余命数ヶ月であることを打ち明ける。落ち込むウィルだったが、ジャックは内気な彼を諦めるなと無理やり励ます。
科学と神秘主義
再びVRゲームをプレイするジンは、紂王の宮殿に入る。文王は「乱紀」が8日で終わり、その後「恒紀」が63年続くと予言するが、ジンはそれを占いだと主張する。しかし彼に時間を早めるために地面に手をつくように促されると、その言葉通りに時が早送りされて「恒紀」が訪れる。
紂王は再水化を宣言し、乾燥して丸められた人間たちが水の中に投げ入れられると、続々と息を吹き返し、子供の従者も復活する。しかし、すぐにジンが太陽が遠ざかっていることに気づくと、世界は凍りつき、助けを求める従者を前にして人類は滅亡する。
間もなくゲームのホストが現れ、人々を救えなかった一方で、科学が神秘主義に勝ることを証明したと言う。ジンは次のレベルでは科学によって世界を救わなければならないと言い渡される。そんな中、ジンのゲームのプレイ内容がモニターで監視されていることが明かされる。
私たちは自分たちの問題も解決できない
クラレンスはウェイドに会い、エヴァンズについての最新情報を報告する。彼によると、1977年にオハイオ州立大学が発信源不明の電磁波を観測し、同時に世界で他に観測した場所が中国北東部の研究施設だけであること、そしてそこにエヴァンズがいたことを明かす。
時は1977年に戻り、ウェンジエが若き日のエヴァンスに出会う様子が描かれる。彼女とヤンは電波天文基地新設のための土地を探していた一方で、エヴァンズは鳥を救おうとしていた。ウェンジエは、彼が『沈黙の春』を持っていることに気づき、本の言葉を引用して止めることを伝える。
しかし後日、ウェンジエの意見は受け入れられず、ヤンとレイ委員の決定で建設場所が決められる。一方で、ヤンは新入りの労働者タン・ホンジンの存在を明かす。彼女はウェンジエの父を殴り殺した1人だった。ウェンジエが彼女に面会すると、彼女は片腕を失っていることに気づく。謝罪を求めるウェンジエだったが、彼女はそれを拒否する。
その夜、ウェンジエは何者からかのメッセージを受け取る。そのメッセージは、「応答すれば自分たちの世界が征服されるから応答するな」というものだった。しかしウェンジエは、「私たちは自分たちの問題も解決できない、この世界を征服するのを手伝う」とメッセージを打ち返す。
第3話「世界の破壊者」
© 2024 Netflix
レベル2のゲーム
第3話は、クラレンスが新たに死んだ科学者の現場に訪れる場面から始まる。クラレンスは現場の金庫からゲームのヘルメットを発見して手にする。
オギーとジン、ソール、ジャック、ウィルの5人は、亡くなった科学者について議論する。ウィルはオギーにカウントダウンのことを尋ねると、彼女は仕事を手放したことで数字も消えたことを明かす。ウィルはジンに教師を辞めることを明かすが、ガンのことは話さなかった。
オギーはジャックの寝室でヘルメットを発見し、VRゲームを体験するが、「招いていない」とすぐに殺される。彼女はジャックにヘルメットのことを問いただし、ジンとジャックがVRゲームをプレイしていることを知る。
オギーは2人が自殺したヴェラがのめり込んでいたゲームをプレイしていることを信じられず、ジャックは自分の家に侵入してヘルメットを置いた人物の形跡も監視カメラから消えていることを明かす。ソールは、脳神経に協力に働きかけるヘルメットは人間をコントロールできてしまうと危惧し、オギーは2人にもうゲームをプレイしないことを約束させる。
しかし、2人はすぐにプレイし始めていた。ジンはプレイヤー名フランシス・ベーコンを名乗るジャックと協力してゲームをプレイする。2人はまた従者と出会い、ジンは彼女を救えなかったことを謝ると、従者はすべて体験して覚えていると言う。
教会の中では、教皇がアリストテレスとガリレオの提案について決断を下そうとしていた。ジンは、この惑星が3連星系の天体の一部であることが唯一の答えだと言い、「乱紀」となるのは3つの太陽の重力場を彷徨っているときであると主張する。
しかし、教皇はアリストテレスとガリレオの意見を聞き入れてジンに火刑を宣告する。それとともに世界は再び燃え始め、馬に乗った従者が「空には3つの太陽がある」と言いながらやってくる。ジャックはジンを安全な場所に誘導し、世界が燃える様子を見守る。
間もなくゲームホストが現れ、「この世界は3つの太陽によって滅んだ」と言い、それを理解した2人に次のレベルに進むことができると伝える。一方、クラレンスは2人のプレイ内容を監視しており、手に入れたヘルメットを手渡してウェイドに報告する。ヘルメットには高度な網膜スキャナーがついており、ゲーム参加者のデータを調べていると推理する。
レベル3のゲーム
ジンがゲームから退出すると、ボーイフレンドのラジが心配しながら見守っていた。その後、ジンはラジの両親との食事に参加する。後日、ジャックとソールは入院しているウィルを見舞う。ウィルはガンと対話したと言い、幻想を見ている様子に2人は戸惑っていた。
オギーは同僚から、突然プロジェクトを中止したことについて問い詰められる。その後、オギーは1人でプロジェクトを再スタートさせようとするが、するとすぐにカウントダウンが再び現れてしまう。カウントダウンの数字は間もなくゼロに近づいており、焦ったオギーは急いでプロジェクトをシャットダウンする。不安を感じたオギーはソールに連絡するが、ソールが別の女性と一緒にいることを知り、電話を切る。
一方、ジンはジャックの家を訪れ、一緒にレベル3をプレイする。2人はクビライ・カン(フビライ・ハン)の時代のモンゴルの上都(ザナドゥ)にいた。ジンはジャックに、3つの天体が重力を及ぼし合う「三体問題」は解けないことを共有する。しかし、2人がカンに謁見すると、その場にいたニュートンとチューリングが数千万人の兵士によって人間コンピューターを作り出し、太陽の動きを計算する理論を披露する。それによって「恒紀」を近似的に予測した彼らだったが、ジンは計算が間違っていると主張する。
ジンとジャックは高熱の鍋に放り込まれるが、ジンが地面に手をついて時間を進めると、太陽が一直線に重なり、人々が3つの太陽がもたらす引力により空中に浮き始める。ジンは再び従者を助けることができなかった。
その後、ジンはこのゲームが「三体問題」の解決ではなく、人々を救うことであることに気づく。ゲームのホストが現れ、2人にゲームの真の目的を見つけるためにレベル4に上がったと告げる。
ゲームの真の目的
2人のプレイ内容を監視していたフェリックスという男は、データをエヴァンズに共有する。エヴァンズは2人をロンドン・サミットに招待するように指示する。エヴァンズは「主」と呼ぶ相手に『ヘンゼルとグレーテル』の朗読をして、人間性と恐怖について会話する。「主」は、恐怖の欠如は絶滅に繋がるとし、人類が再び恐怖を学ぶ必要があると言う。
ジンとジャックは招待状を受け取り、案内された場所で謎の女性と面会する。女性に促されて2人がゲームに入ると、ゲームホストと従者が現れる。ホストは3体問題の解決策はないと言い、いずれにしても文明の盛衰を経て滅亡することを説明する。従者は、宇宙船を建造して故郷から離れることが解決策であり、すでに地球へ向かっていることを伝える。
2人はヘルメットを脱ぐと、謎の女性は「三体人」が徐々に地球に近づいてきていること、その情報共有のためにゲームを作ったことを明かす。ジャックはそれを信じられず、詐欺だと言ってその場を離れるが、ジンは詳しく話を聞くために残ることにする。謎の女性はジンをレベル4をクリアした者たちを集めたサミットに招待する。
クラレンスがジャックの家を見張る中、家に帰宅すると、ジャックは電波が使えなくなっていることに気づく。すると、寝室に謎の女性が現れ、「続ければよかったのに」とジャックの首をナイフで刺して去っていく。
第4話「我が主よ」
© 2024 Netflix
審判の日
第4話は、1982年のロンドンから始まる。施設を抜け出して教授となっていたウェンジエはエヴァンズと連絡を取り、2人はレストランで再会する。彼女は「施設で自分がしたことについて話したい」と打ち明ける。
現在に戻り、ウェイドとクラレンスのもとで、オギーとジンはジャックの部屋の監視カメラ映像を確認し、彼が姿の見えない何者かに殺される場面を目撃してショックを受ける。
ウェイドは、ヴェラの教え子であったオックスフォードの5人(オギー・ジン・ソール・ジャック・ウィル)について言及する。オギーには仕事をやめさせるように働きかける一方で、ジンにはゲームと招待状を送っていることを不思議がる。
彼はジンに、来週開かれる組織の歓迎会に参加するように伝える。その後、ジンは「三体人」が実在すると考え、オギーも同意する。オギーは宇宙人に仕えているのは人間であり、人間とならこれまでも戦ってきたと励ます。
クラレンスはエヴァンズの居場所を特定し、彼が地中海沖にいることをウェイドに報告する。エヴァンズは「審判の日」という船の中で、サミットに向けて準備を進めていた。彼は「主」に新しい候補者が参加することを伝えると、「主」は敵に居場所とサミットが知られていることを伝える。エヴァンズは戸惑うが、「主」は彼らを守ると約束する。
人間は恐ろしい
クラレンスは息子と生活しているが、息子は就職活動よりもビデオゲームに熱中していた。ソールとウィルはジャックの家を訪問し、彼の遺品から子供時代の思い出の品や大学時代のショットグラスを見つけて感傷に浸る。
一方、ジンはウェイドに、自分は科学者であり、スパイはできないと伝えるが、クラレンスは安全を保証し、彼女に情報を集めるように伝える。ジンは車でサミットの場所に向かい、ウェイドらはそれを遠隔で監視する。
エヴァンズは、「主」に『赤ずきん』を朗読するが、「主」は意図を隠すことを理解できないと言う。エヴァンズは比喩として自分たちの敵を「害虫」と表現するが、それも「主」は理解できない。さらにエヴァンズから人間は嘘をつくことを知らされ、読み聞かせられた『赤ずきん』も創作物の物語であることを知ると、「主」は「嘘つきとは共存できない、人間は恐ろしい」と言い残して沈黙する。
人里離れたサミットの場所に案内されたジンは、施設の中で謎の女性・タチアナ(マーロ・ケリー)と再会する。彼女は創始者が登壇すると伝えると、ジンは創始者がイエ・ウェンジエであることに衝撃を受ける。同時に、ウェイドとクラレンスは、自分たちが見聞きするものは彼らによってコントロールされていることに気づく。
彼らはやってくる
ウェンジエは、若い頃に経験した恐怖について語り、「三体人」の到着が400年後であること、彼らの到着のために世界は準備する必要があると説く。しかし、彼女の演説の途中で軍の特殊部隊が突入する。
兵士たちはその場にいた人々に手錠をかけるが、タチアナがジンを連れて行こうとする兵士たちに発砲したことで大混乱となる。タチアナはジンを捕まえようとするが、駆けつけたクラレンスが彼女を撃ち、ジンはその場を逃げ出していく。一方、タチアナも現場から逃げ出していた。
帰宅したウィルはジャックの思い出の品を手にして友人を思い出し、ジンに電話する。ウィルはジャックの葬儀後にコテージで集まろうと伝える。ジンはそれに同意し、ウィルに自分たちに起きていることを説明する。
1982年の北大西洋、エヴァンズはウェンジエをヘリコプターに乗せ、海の真ん中に浮かぶ電波船に連れていく。エヴァンズは船が国や政府の干渉もない自分の基地だと明かし、ウェンジエのために用意したこと伝える。
さらに8年越しにウェンジエ宛の「彼ら」からのメッセージが届いていることを明かし、「彼らが来る」と伝え、ウェンジエとエヴァンズはキスをする。
現在に戻り、ウェイドはウェンジエを捕らえて船と「彼ら」について問いただすが、ウェンジエは「彼らはやってくる。そして彼らが来たら、あなたは感謝することになる」と言う。
第5話「審判の日」
© 2024 Netflix
船を止める方法
第5話は、ウェイドがラジに話しかける場面から始まる。ウェイドは「国を守るよりもはるかに重要なことがある」と言い、優秀な海軍将校であるラジを引き抜く。ウェイドはエヴァンズの船をどんな手段を使ってでも止めようとしていた。
クラレンスはウェンジエを尋問し、彼女は「三体人」へメッセージを送ったこと、ヴェラの父親がエヴァンズであることを明かす。クラレンスはエヴァンズが返答のメッセージが来るまでに8年かかることを指摘し、いずれにしてもエヴァンズが船の中で何を交信しているか調べるため、船に対処する必要があった。
ウェイドはいかなる方法でも船を止めようとしており、クラレンスは船がパナマ運河を通ることに着目し、オギーのナノファイバーを使うことを提案する。クラレンスに説得されたオギーはラボでナノファイバーを起動する。しかし、今度はカウントダウンが現れず、彼女は安堵するが、クラレンスは「三体人が信者を守ることをやめたから」だと考える。
ソフォン
一方、ウィルのもとにソールが現れ、ジャックがウィルの治療費のために遺産の大部分をウィルに相続していたことを告げる。しかし、ウィルは治療を拒み、ただ残りの時間を噛み締めて空を眺めていたいと言う。
ウェイドはラジの主導のもと、海軍兵たちにパナマ運河にナノファイバーの装置を建設させる極秘任務を指示する。オギーは、このプロジェクトによって見ず知らずの大勢の人々を殺すことになると考えて抵抗感を示すが、ラジは戦争だといって正当化する。
エヴァンズの船「審判の日」がパナマ運河を通過しようとしていた。オギーらがナノファイバー装置を起動して観察する中、ナノファイバーの網を通過した船は船内にいる乗客らもろとも木っ端微塵に切断する。死を覚悟したエヴァンズは船内のコアから赤いハードウェアを取り出し、胸に抱えたまま死亡する。
血の海と残骸と化した船を捜索し、ウェイドはエヴァンズの持っていた赤いハードを発見する。早速、内容の解析に取り掛かるが、あまりにも高度な技術であり、途方もない時間を要することが予想された。
クラレンスが中身を要求すると、突然、彼らが見せたがっているように中身が明らかになる。そこには28GBのテキストファイルとメディアファイル、そして100PB(1億GB)の「ソフォン」という奇妙なファイルがあった。
科学の崩壊
一方、ウェイドはウェンジエに面会し、船内で見つけたエヴァンズと「主」の会話を記録したレコーダーを見せる。すべて人類を救うために人知を超えた「主」の計画だと主張していたウェンジエだったが、エヴァンズが「主」から見放された会話内容を聞いてショックを受ける。
その後、ウェイドはジンのもと訪れ、彼女が高次元への知見を持っていることで施設へ引き入れる。ウェイドは「三体人」が見せたがっていると主張し、2人はヘルメットを装着して「ソフォン」のファイルを体験する。
2人は荒野に立ち、目の前ににゲームホストが現れる。彼女は、「三体人」が400年後のの到着時に、人類が想像を超えた進歩をしていることを懸念していると明かす。そこで彼らは高次元を活用できるため、地球の科学を根本から破壊しようと考えた。
4つのソフォンを作り出し、それぞれのペアは量子レベルで絡み合い、つながっている。地球に2体、「三体」に2体配置し、質量のない陽子は光速を超えて移動が可能であり、数ヶ月前にオックスフォードの量子加速器を破壊したと明かす。彼らは人類の科学を混乱させ、見せたいものを見せることが可能であり、地球を手球にとってあらゆる場面を監視し、人類に恐怖を植え付けようとしていた。
ジンとウェイドは驚愕してヘルメットを取り外すと、地球上のあらゆる電子機器が点滅し始め、人類に「お前らは虫けらだ」というメッセージを送りつける。そして上空を奇妙なベールが覆い、大きな目が人々を見下ろし、地球のあらゆる場所を映し出す。人々が驚愕して空を見上げる中、逃げ出していたタチアナは崇拝するようなに表情で空を見上げる。
第6話「星群計画」
© 2024 Netflix
私は反撃する
第6話は、「天の巨眼」の出現によって世界が大混乱に陥った場面から始まる。緊急事態宣言が発令され、暴動を起こす人や、「三体」を崇拝する人、自ら命を断つ人など、彼らが来るのが400年後にも関わらず世界は混沌と化していた。「星群計画」という星を買う代わりに軍資金への寄付となる団体も現れる。
ジンはウェンジエに面会し、彼女がメッセージを送ったことが引き金になったと詰問する。ウェンジエは人類が救われることを望んでいたが、彼らが人類の闇に気づいたのだという。ジンはウェンジエを歴史に残る愚かな物理学者だと言い、「私は反撃する」と言い去っていく。
ウィッチウッド・マナーでは、ウェイドが専門家を集めて「三体」に対抗するための計画を練っていた。「三体」の計画を掴むため、探査機を敵艦隊に送ることを目的とするが、到達までに398年かかることを考えると、あまりにも長いミッションが想定される。そこでウェイドはジンに打開案を求める。
光速の1%を出す方法
ジンは2台のソフォンを忙しくさせるために月に加速器を送ることを提案する。さらにウェイドは、探査機を送り込むために光速の1%以上を出力する方法を考えさせる。その後、ジンはアイデアをプレゼンする。彼女は核兵器を使った核パルス推進法を提示する。これは、軌道上に大量に配置した核を順番に爆発させて段階的に光速に近づけるというものだった。
専門家たちはコストとリスクの高さを懸念し、離れ業のような手法ではなくても、まだ400年の時間があると主張する。しかしウェイドは、自分の生きている間に成果を上げることを宣言する。
ウェイドのオフィスにラジが現れ、自分に能力があることを主張し、宇宙艦隊チームの一員になることを志願する。結果的にウェイドは彼を引き入れ、月に基地を建設するチームの一員にする。
星を買う
オギーは海辺の別荘でウィルとソールに合流し、後日、ジンもやってくる。オギーはジンがウェイドのもとで働いていることを知り、ジンがラジからパナマ運河で何があったかを知らされていないことを指摘し、辞めるように伝えるが、ジンは「三体」が来る以上、対処する必要があると主張する。
ジンは探査機開発に強靭で軽量な帆が必要であることを伝え、オギーのナノファイバー技術の協力を要請するが、彼女は「原爆と広島の再来になる」と警告する。
ウィルは自分の思いを伝えられないままジンを見送るが、ソールとオギーに生きている間に思いを伝えるべきだと言われてジンを追いかける。しかし、ジンがラジとの関係を修復しようとしている様子を目撃し、考えを改める。その後、ウィルは、ジンが必要としているのはオギーの協力であると伝える。
一方、クラレンスはウェンジエに娘のヴェラが自殺した本当の理由を尋ねる。ウェンジエは、ヴェラが自分とエヴァンズのやり取りを傍受していたことを明かすが、彼女はそれに関して一切の情報を残さずに自殺したという。クラレンスはウェンジエを解放するが、彼女の行動を部下に逐一監視させる。
後日、オギーはウィッチウッドの屋敷を訪問し、ジンに協力することを決める。そんな中。ウィルは海にジンの作った折り紙のボートの幻想を見た後、「星群計画」に寄付して星を買うことを決める。
第7話「前進あるのみ」
© 2024 Netflix
前進あるのみ
第7話は、ソールとウィルがウィルの買った星について話す場面から始まる。ウィルは「DX3906」という401.5光年先の星をジンのために購入していた。2人が談笑した後、ウィルは倒れて再び入院することになる。
ジンは誰かが彼女に星をプレゼントしたことを知り、所有権を表す盾を受け取るが、それがウィルからの贈り物だとは気づかない。その後、ジンはウェイドの案内で生物学の権威であるデミコフ博士を紹介される。彼のラボではチンパンジーを使ったコールドスリープ実験を行っており、その実験が成功していることを証明する。
ウェイドは組織を指揮し続けるため、自らコールドスリープを繰り返して400年後まで生き延びる計画だと明かす。ジンは彼がなぜそこまで自分が指揮することにこだわるのかを問うと、ウェイドは「前進あるのみ」と、未来はそう遠くないと答える。
オギーはジンに協力してナノファイバーの帆の開発に取り組んでいたが、彼女はナノファイバーを開発した理由が家族を助けるためだったことを明かし、間違った側に立っているとジンに言う。
一方、入院中のウィルの前に疎遠だった家族が訪問する。ウィルの妹の目的は、母がウィルに残した財産を受け取ることであり、ウィルはその意図を理解して同意する。
適任者
ウェイドは、光の1%以上の速度を出すために探査機に乗せられるコールドスリープの重さが2キロ以下であることを知らされ、人間本体ではなく脳を乗せる方針に切り替える。ウェイドは「三体人」は人間の思考は理解できておらず、それを解明するためにも彼らが欲することを予期していた。
ウェイドは、死期が迫り科学への知見がある人材が必要だと言い、ウィルが適任者である可能性を知り、彼に近づこうとする。ジンとオギーは止めようとするが、ウェイドは気にもとめない。オギーはウェイドに協力したことを後悔し、「自分の失敗を修復する」とジンに別れを告げて立ち去っていく。
その後、ウェイドはある男性に電話をかけ、プロジェクトへの参加を呼びかけて「面壁者」という言葉を知っているかと尋ねる。
クラレンスは、息子のレジから立ち上げようとしている事業計画を見せられる。それは人類が宇宙への移住に向けて毎月貯金するための口座を設立するというものだった。レジはデニス・ポーロックという投資家が興味を示していると言うが、クラレンスは協力できないと伝える。
その後、ポーロックがオギーの上司であることが明かされる。オギーはナノファイバー技術は人々のより良い生活のためだと言い、プロジェクトデータを誰もが閲覧できるパブリックサイトにアップロードする。技術を独占しようとしていたポーロックは彼女を訴えようとするが、オギーはすでに海外へ飛び立とうとしていた。
階梯計画
ジンはウィルの病室を訪問し、階梯(かいてい)計画について話す。ウィルは死期が迫っていることもあり、「ジンを見通せる」と言う。彼はジンに「愛してる」と伝えて計画への参加の意志を表明し、ジンは涙を流す。
自宅に戻ったウェンジエは娘の遺品を見て感傷に浸った後、ソールに連絡してヴェラの墓の前で再会する。ソールは、ヴェラはウェンジエが「三体人」を地球に呼んだことを知っていたと指摘し、彼女はそれを認める。ウェンジエに独立せずにヴェラのもとで働いていたことを聞かれると、ソールは物理学が得意だったが情熱を持てなかったと答える。
その後、ウェンジエはアインシュタインのヴァイオリンに関するジョークを話した後、人間はジョークなしでは生きていけないと伝えて去っていく。
ウィルは病室にやってきたウェイドから階梯計画に適任かどうかをテストされ、最終的にウェイドはウィルが計画に最適だと伝える。ウィルは人類側への忠誠を誓う誓約書へのサインを拒んだが、ウェイドはそれが三体側からも都合の良いことであることで適任だと結論づけていた。
ウィルの最期
一方、森の中のトレーラーにいたタチアナは、ソフォンからの交信を受ける。タチアナは自分の役目が終わったと思っていたが、ソフォンはより大きな計画の一部であり、彼女が必要だと伝える。空港では、ウェンジエが北京行きの飛行機に乗り込もうとしており、尾行していたクラレンスの部下と接触する。
ウィルとソールは病室で思い出話をする。ソールはウィルを思いとどまらせようと様々な可能性を危惧して伝えるが、ウィルの決意は固まっていた。その頃、ウェイドから星の贈り主がウィルであることを知らされたジンは、急いでウィルのもとに向かう。
ウィルは少ない友人関係の中で、オックスフォードの4人と出会えたことに感謝を伝え、涙を流すソールの前で死の最終確認に同意する。ジンはウィルの最期に間に合うことはできず、彼の脳が摘出されるところで駆けつけ、ウィルの死に泣き崩れる。
ウェンジエは現在は荒廃しているかつての丘の基地にやってきていた。彼女は1人になり、昔を思い出しながら崖から飛び降りようとするが、やってきたタチアナによって中断される。タチアナはウェンジエを殺す理由を知らされていないが、彼女の言葉でウェンジエは「主」に忘れられていなかったことを嬉しく感じると伝える。ウェンジエは死ぬ前に夕日を眺めたいと伝え、2人は一緒になって夕日を眺める。
第8話「面壁者」
© 2024 Netflix
狙われるソール
第8話(最終話)は、ソールが一夜をともにした女性との場面から始まる。女性は自分の名前を覚えていないソールに愛想を尽かして出ていくが、ソールが追いかけると、スケートボードに乗った少年がソールにぶつかり、それをきっかけにして、車が衝突して女性は車に轢かれて死んでしまう。ソールは女性の名前が「ノラ」であることを覚えていた。
事件後、クラレンスはソールに、ノラを轢いた車は自動運転車であり、子供がぶつかったことでノラが犠牲になったが、本来の標的はソールだったと告げられる。ソールは自分が狙われる心当たりはなく混乱するが、クラレンスに言われるがままに防弾服に着替えて、護衛を受けながらある場所へと案内される。
ウィッチウッド邸では、ジンがウェイドに「階梯計画」の積荷に農作物の種を入れるように頼んでいた。彼女はウィルが再び体を手にした時に好物を食べられるようにと考えたが、ウェイドは少しでも軽量化するために断る。
ソールとクラレンスはニューヨークに到着し、セバスチャン・ケント(ジョシュ・ブレナー)の案内で国連本部へと向かう。ソールは一切の事情説明がないまま、国連総会のホールへと連れて行かれる。
3人の「面壁者」
国連事務総長は、400年後に到来する「三体人」へ対抗するため、「面壁者」プロジェクトを発表する。「三体人」は人間の思考を読むことはできないため、3人の選ばれし人間が彼らに対抗する計画を頭の中で展開し、計画の実行の瞬間まで誰にも共有しない代わりに、面壁者はあらゆる資源と権利を与えられるというものだった。
続けて事務総長は3人の「面壁者」を紹介する。紛争の勝利と平和的な解決の専門家であるフー・ボウリン上将、対イスラム国との戦いで名を馳せたレイラ・アリチ教授の2名が登壇し、そして3人目としてソールが呼ばれる。
ソールは、実績もない自分が選ばれたことに戸惑い、何かの間違いだと伝えるが、事務総長は「三体人」がソールを狙うのには選ばれる理由があるという。ソールは「面壁者」を辞退すると告げ、クラレンスやケントの警備も不要と言い、国連を立ち去ろうするが、建物を出てすぐに銃撃されてしまう。
ソールは防弾服を着用していたため無事だったが、病院に入院する。ソールは「面壁者」の権限を使い、自分を撃った犯人と話したいと要求し、犯人が連れて来られる。ソールはなぜ会ったこともない「三体人」の指示で会ったこともない人間を殺そうとしたのか尋ねるが、犯人の男は「主の軍隊に入隊した」と笑みを浮かべて答える。
何を信じるか
一方、ジンはウィルの探査機を発射するケープ・カナベラルへ向かうウェイドの自家用ジェットに乗り込んでいた。ラジはジンに振られており、その理由を尋ねるが、ジンはウィルを乗せたプロジェクトを成功させるために神経質になっており、ラジの相手をしない。ラジはジンがウィルを愛していたのかと尋ねると、ジンは「ウィルは今も生きており、今も愛している」と答える。
ソールは事務総長に会うことを要望し、「面壁者」を辞退し、それが社会にも発表されたにも関わらず、なぜ自分は警護されるのかを尋ねる。すると事務総長は、「面壁者」は心の中で孤独に仕事を遂行することだと伝え、ソールが「面壁者」を辞退したかどうかは重要ではなく、人々が何を信じるかが重要だと伝える。
ソールは自分が選ばれた理由を問うが、事務総長は直接の理由は誰にもわからない、自分で答えを見つけるしかないと言う。間接的な理由は時が来ればわかると伝える。ソールは混乱を極めるが、その後、ケープ・カナベラルに友人を見送りに行きたいと言う。
買い物から帰ってきたタチアナは、森の中の自分のトレーラー内に宅配物が届いていることに気づく。中には、VRヘルメットと「私たちの誰かが生き残れば、私たち全員が生き残る」と書かれたカードが入っていた。タチアナはヘルメットを被り、ゲームをプレイし始める。
階梯計画の失敗
ケープ・カナベラルでは、ウィルの脳を乗せたロケットの発射準備が進められていた。ウェイドはジンに、ウィルの脳と一緒に彼女が望んだ種も入れたと伝える。ジンが不安げな表情で見つめる中、ロケットが打ち上げられ、ソールとクラレンス、ケントも管制室に到着する。
ジンとソールは、海岸に出て互いの状況やウィルとオギーについて話し合う。ソールはウィルがジンを愛していたことを伝え、自分も誰かにそれほど愛されたいと願う。ジンは、もしかしたらもう誰かに愛されているかもしれないと伝えて管制室に戻る。
オギーは、メキシコのサン・ルイス・ポトシにいることが明かされる。彼女はナノファイバー・フィルターを開発し、地元の人々により安全で綺麗な水を提供できると説明していた。彼女はソールからの電話着信に気づくが、電話に出ずに村人たちの手助けを続ける。
宇宙に到達したウィルのロケットは、いよいよ段階的な核爆発のフェーズに入ろうとしていた。オギーの開発した帆も正常に機能し、核爆発により、探査機が加速し始める。3回目までの爆発が成功するが、その後、探査機と帆を繋ぐコードの1本が切断され、探査機は軌道から外れ始める。それにより、4回目以降の核爆発を受けることなく、ウィルを乗せた探査機は宇宙の彼方に消えていき、ジンは泣き崩れる。
虫けらに
後日、自家用ジェットで移動していたウェイドは、電子機器をジャックされ、スクリーン上にソフォンが現れる。ソフォンはウェイドに会うことを楽しみにしていると伝え、彼も計画の一部だと伝える。
その後、ソフォンはウェイドの視覚を支配したと告げ、ウェイドは目の前にソフォンの姿や、目をえぐり取られた自分の死体を目撃する。彼女は「いつでも監視しており、見せたいもの見せる」と告げて姿を消す。
モーテルでは、ソールとジンがウィルの行く先について話している。クラレンスは悲嘆に暮れる2人を励まそうとするが、ジンもソールも自分たちが「三体人」にとって「虫けら」に過ぎないのだと考える。
クラレンスはそれを聞いて、2人をドライブに連れて行く。クラレンスはフロリダ州のエバーグレーズの湿地に案内すると、そこにはあらゆる種類の虫が存在していた。
クラレンスは、「人間は虫を嫌って排除しようとするが、虫たちは今でも確かに存在している」と伝えて虫たちに酒を交わし、「仕事に戻ろう」と言う。
【ネタバレ感想】マイルドな味付けによる大衆化エンタメ作
『三体』の原作は、いわゆる「ハードSF(科学的な考証などに基づいたSF)」に分類される原作で、それが大きな魅力でもあるのですが、Netflixドラマ版は良くも悪くもマイルドに調理されています。
『三体』は、原作が発表された中国では、中国の動画配信サービス「テンセントビデオ」で、すでに実写ドラマ化されており、Netflixが第1部を8話で描いた一方で、テンセント版は30話で描いています。
テンセント版は、日本ではWOWOWやU-NEXT、Huluで視聴することができますが、これだけコンテンツが大量に溢れた現代で、わざわざテンセント版を観る人は少ないでしょう。(実際にFilmarksチェックリストを見てもNetflix版の10部の1程度です)
『三体』の映像化の背景には、映像化権利を手にした起業家が計画的な犯行によって毒殺されるなど、恐ろしい事件も起きていることも知っておきたいところ。
「三体」ドラマ化を夢見た起業家の毒殺、元ビジネスパートナーに死刑判決
Netflixドラマ版は、原作の忠実な映像化を望むファンからみれば、イギリスへの舞台変更や原作で後に登場するキャラクターを先に登場させるなど、改変点に対して少なからずの意見があるかもしれません。しかし、純粋にエンターテインメント作品として見れば、この作品は非常に楽しいものです。
『ゲーム・オブ・スローンズ』のデヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスのような経験豊かな製作者たちの手による、物語の展開は目を見張るものがあります。VRゲームのシーンなどは直感的で視覚的に理解しやすく、視聴者を物語世界に深く引き込みます。
このドラマは宇宙人の到来という、人類にとっての存亡の危機を扱っていますが、彼らの到来が400年後という設定のため、即座の危機感を和らげる一方で、人類が直面する長期的な課題への問題提起となっています。
Netflix版は「オックスフォード・ファイブ」と呼ばれる主人公たちの友情を軸に物語を展開し、地球規模の問題に対して様々な地域から来た人々が一致団結できるかどうかを探ります。これは、製作陣が意図したとおり、物語に深みを加える要素となっています。
ジンがオギーを頼ったり、オギーがソールを頼ったり、ジンとジャックがVRゲームを共に進めたり、ウィルがジンのために行動したりなど、オックスフォードの友人5による友情の連鎖が、後に明かされるウソをつけない三体人の姿と対象的に映り、人間が彼らに対抗できる「思考の独立性」が際立ちます。
宇宙規模のSF物語でありながら、人間ドラマの要素が強く、8話を通してのテンポの良い展開が魅力で、最終的には、このドラマはテレビドラマとして十分に魅力的で、次のシーズンへの期待を高めるとともに、原作に興味を持つ人を増やす見事な映像化作品と言えるでした。