今回ご紹介する映画は、『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』です。
ジェームズ・キャメロン監督による映画で、2009年公開の『アバター』から10年が経過した世界を描く作品。
本記事では、『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』をネタバレありの感想と解説・考察をしていきます。
時代の最先端をいく圧倒的な映像クオリティに打ちのめされました!
前作、『アバター』の物語が非常に重要になってくるので、詳しく振り返りたい方は、以下の記事で解説していますので参考にどうぞ。
【ネタバレあらすじ】『アバター1』を相関図ありで徹底解説
映画『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』の作品情報とあらすじ
『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』
ストーリー | |
感動 | |
面白さ | |
テーマ性 | |
総合評価 |
あらすじ
地球から遠く離れた美しい星パンドラ。元海兵隊員のジェイクはパンドラの一員となり、先住民ナヴィの女性ネイティリと結ばれた。2人は家族を築き、子どもたちと平和に暮らしていたが、再び人類がパンドラに現れたことで、その生活は一変する。神聖な森を追われたジェイクとその一家は、未知なる海の部族のもとへ身を寄せることになるが、その楽園にも侵略の手が迫っていた…。
作品情報
タイトル | アバター ウェイ・オブ・ウォーター |
原題 | Avatar: The Way of Water |
監督 | ジェームズ・キャメロン |
脚本 | ジェームズ・キャメロン リック・ジャッファ アマンダ・シルバー |
出演 | サム・ワーシントン ゾーイ・サルダナ シガニー・ウィーバー スティーブン・ラング ケイト・ウィンスレット クリフ・カーティス ジェイミー・フラッターズ |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2022年 |
上映時間 | 192分 |
予告編
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『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』のスタッフ
監督 | ジェームズ・キャメロン |
脚本 | ジェームズ・キャメロン リック・ジャッファ アマンダ・シルヴァー |
製作 | ジェームズ・キャメロン ジョン・ランドー |
音楽 | サイモン・フラングレン |
撮影 | ラッセル・カーペンター |
編集 | デヴィッド・ブレナー ジェームズ・キャメロン ジョン・ルフーア スティーヴン・E・リフキン |
前作に引き続き、ジェームズ・キャメロン監督が信頼を置くスタッフが参加。
『タイタニック』や『アバター』でも音楽を担当していたジェームズ・ホーナーは、続編も契約していた中の2015年に亡くなってしまったため、本作ではサイモン・フラングレン(『タイタニック』の主題歌セリーヌ・ディオンの「My Heart Will Go On」プロデューサー)に変わっています。
『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』のキャスト
ジェイク・サリー (サム・ワーシントン) | |
ネイティリ (ゾーイ・サルダナ) | |
ネテヤム (ジェイミー・フラッターズ) | |
ロアク (ブリテン・ダルトン) | |
キリ (シガニー・ウィーバー) | |
トゥク (トリニティ・ジョリー・ブリス) | |
トノワリ (クリフ・カーティス) | |
ロナル (ケイト・ウィンスレット) | |
ツィレヤ (ベイリー・バス) | |
クオリッチ (スティーブン・ラング) | |
スパイダー (ジャック・チャンピオン) |
前作『アバター』から引き続き、サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー、スティーブン・ラングらが続投。
サリー一家の4人の子どもに加えて、海で生活する置くメトケイナ族の族長とその妻役としてクリフ・カーティスとケイト・ウィンスレットが参加。
ケイト・ウィンスレットは、ジェームズ・キャメロン監督と『タイタニック』以来のタッグとなります。ちなみに、彼女は本作の撮影で、7分14秒間も息を止め、『ミッション・インポッシブル』シリーズでのトム・クルーズの記録を打ち破ったとのこと。
シガニー・ウィーバーは、前作で演じたグレイス博士が亡くなったものの、その娘キリの役としてキャスティングされています。これが物語のキーポイントになりそうな予感がありますね。
【ネタバレなし感想】圧倒的な没入感による映像体験
いやぁ…すごかった!語彙力を失うレベルの映像体験でした。
まず率直な感想を3つに絞って挙げてみました。
- 映像が本当にすごい
- HFR×3Dのヌルヌル感は映画よりもゲーム
- 物語も情報量も上映時間もたっぷり
映像が本当にすごい
『アバター:ウェイオブウォーター』を観た人の99%が同じ感想を言うと思いますが、まず第一に「映像がすごい」に尽きます。
2009年に公開された前作から13年、数多くのすごい映画が公開されてきましたが、間違いなく本作はトップクラスの映像体験。ことSF映画においては、ある種の到達点とも言えるでしょう。
「ウェイ・オブ・ウォーター」のタイトル通り、水がポイントとなる本作ですが、水中シーンの美しさは随一で、水中生物が駆け巡る様子には、映画館が水族館の水槽の前に変わります。
そんな映像を作り出してるのが、「HFR×3D」という映像効果です。
HFR×3Dのヌルヌル感は映画よりもゲーム
『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』では、アクションシーンなどの一部場面においてHFR(ハイ・フレーム・レート)、具体的な数字で48fps(1秒間に48コマ)による撮影が行われています。
私たち一般の観客からすると、「なにが違うの?」という感じですが、映画の一般的なフォーマットは24fps(1秒あたり24コマ)というのが通説。つまり倍になっているのです。
これは映画をご覧になったら感じると思うのですが、映像のヌルヌル感がすごいんですよね。映画というよりもゲームに近い感覚。
これまでにもHFRによる映画は『ホビット』や『ジェミニマン』などで公開されていますが、映画のフォーマットとして定着した24fpsに比べると、アクションシーン以外では撮影現場をそのまま映したような生っぽさが出てしまう懸念もされていました。
私個人の感覚で言うと、『アバター』という映画シリーズにおいては、HFRとの相性は良いと感じます。とはいえ、アクションシーンの滑らかすぎる感覚は独特で、自然かと言われるとそうでもなく、ゲーム感が強いのは否めません。
一方で、水中シーンなどの没入感は申し分なく、ダイナミックな映像美が眼前に飛び込んでくる感覚は映画館でしか体験できないでしょう。
3D映像に関しては、全く違和感がなく、それどころか火の粉や煙、水泡など、手を伸ばせば本当に掴めそうな感覚にさせる立体感に驚かされました。
パンドラの自然を映すドラマパートは「ナショナル・ジオグラフィック」のドキュメンタリーを圧倒的な高画質で見ている感覚で、本当にパンドラが存在しそうな説得力があるんですよね。
映像の美しさは間違いなく時代の最先端、トップを走っています!
物語も情報量も上映時間もたっぷり
192分、つまり3時間12分にも及ぶ上映時間の本作。決してあっという間でもなく、一方で、長過ぎる訳でもなかったのが本音。
その理由としては、前作のシンプルな物語がベースにありつつ、本作では「家族」に焦点をあてて多重構造にしたことで、描く部分が多く、かなり情報量が多くなっているんですよね。
それこそストーリーを分割してもいいほどなのですが、これを1作に詰め込んだのは、このシリーズに賭けているキャメロン監督の覚悟と意志の現れなんでしょうね!
アクションとドラマシーンの棲み分けは効果的で、パンドラの自然や「水」がテーマの今回、ポイントとなる海の部族メトケイナ族での場面や、4人の子どもたちの様子などをたっぷり描いていたのが良かったですね。
パンドラという星の魅力を前作以上に魅力的に伝えていて、SF映画の醍醐味といえるほど浸っていたくなる世界観でした。以下では具体的なストーリー展開を交えながらの感想と解説をしていきます。
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】原住民と侵略する人間の構図は変わらず
『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』は、3時間に及ぶストーリーながら、前作の説明をほとんど行わずに観ている前提で進んでいきます。
『アバター』の1作目は絶対に観ておいた方がいいですね!正直、一度観た人も詳しく覚えていないと思うので、見返しておいたほうが絶対に楽しめます。
前作の内容は以下の記事で分かりやすく解説していますので、参考にどうぞ。
【ネタバレあらすじ】『アバター1』を相関図ありで徹底解説
ジェイク・サリー一家と人間たち
まず、冒頭から驚く展開が多かった本作。前作から10年が経過した設定ですが、物語のベース部分をとてもスピーディに伝えていくのです。
具体的に挙げていきます。
サリー一家は幸せな家庭を築き、ナヴィのオマティカヤ族を率いる存在として暮らしていました。
しかしながら、幸せな生活は長くは続きません。地球の人間たち(スカイ・ピープル)が再び侵略しにやってくるのです。
前作では、RDA社によるパンドラの鉱石資源を手にするための侵攻でしたが、本作では打って変わり、移住に向けた本格的に軍事的な植民地支配に変わっています。
ここでポイントになるのは、前作のように、生きている人間がアバターを操作するのではなく、戦死した人間たちの記憶を埋め込んだ器としてのアバター戦士になっていること。
つまり、クオリッチ大佐らは、実質的にアバターという強靭な体を手にして復活したことになります。
これに関しては「10年であまりにも変わりすぎだろ」とも思いますがね!笑
そして、人間たちによるパンドラ侵攻により、サリー一家らオマティカヤ族は、森を焼き払われ、住む場所を追われてしまうのです。
その過程で、ジェイクの子どもたちは襲撃に見舞われ、クオリッチの息子スパイダーが拉致されてしまうのでした。
森から海へ
ジェイクは一家の父親として、家族を危険にさらすことを恐れていました。その懸念から、属するオマティカヤ族を離れる決断をするのです。
サリー一家は、故郷を遠く離れ、ナヴィの海で生活するメトケイナ族の元を訪れます。
海での生活は森とは全く異なり、海中生物や水中での泳ぎ方など、イチから学ぶことになるサリー一家。
メトケイナ族では、オマティカヤ族で言うところの翼竜イクランのような、心を交わすクジラに似た海中生物トゥルクンがいました。
トゥルクンはナヴィと言葉を交わせる高い知能を持ち、平和に暮らしていたものの、人間による捕鯨によって傷つけられていました。その中で、パヤカンという片方のヒレを失ったトゥルクンは、人間の捕鯨から仲間を守ろうとしたことで結果的に孤立するのでした。
そんなパヤカンに助けられた次男のロアクは、次第にパヤカンとの絆を深めていくのです。
スカイ・ピープルの侵攻
RDA社の海洋生物学者イアン・ガーウィンは、トゥルクンの頭脳に「アムリタ」と呼ばれる人間の老化を止めることができる物質を発見していました。その貴重な物質は、RDA社によるパンドラ植民地活動の資金源でもあったのです。
同じころ、クオリッチ大佐はジェイク一家を探し求め、海の部族らの拠点を燃やすなどして沿岸部まで捜索を進めていました。
トゥルクンとメトケイナ族の交流を知ったクオリッチは、捕鯨船とタッグを組み、トゥルクン狩りを行うことでジェイクをおびき寄せようとするのです。
そんな中、メトケイナ族のツァヒク(エイワと交信できる巫女)ロナルと心を交わしたトゥルクンが、クオリッチらによって見せしめに殺されてしまうのでした。
この出来事は、メトケイナ族が人間たちとの戦争を行う確固たる引き金になるのですが、それでもジェイクは必死に説得し、戦争を避けようとするのです。
族長トノワリをなんとか説得し、トゥルクンらに人間の襲撃が迫る危機を伝えるナヴィたち。ロアクは孤立したパヤカンにも危機を知らせるために兄妹たちと向かうのですが、そこでクオリッチらに遭遇してしまうのです。
子どもたちはクオリッチに捕らえられて、人質にされてしまいます。クオリッチに一人で投降するように求められたジェイクでしたが、危機的な状況を察知したパヤカンがクオリッチらが乗る捕鯨船を襲撃するのでした。
それにより場は混乱と化し、絶好の機会となったジェイクとメトケイナ族。そして人間たちとの戦いの火蓋が切って落とされるのです。
最終戦争
クオリッチらが乗る捕鯨船を舞台にして激しい攻防が始まります。
捕らえられた弟妹らを助けるべく、長男のネテヤムは捕鯨船に乗り込み救出するものの、その後、ロアクと共にスパイダーを救出しようとした際に銃で撃たれてしまい、ネテヤムは死んでしまいます。
悲しみに暮れるサリー一家でしたが、未だ人質にされているキリとトゥクを救出すべく、ジェイクはスパイダーの案内によってクオリッチを目指して戦いに身を投じます。
ネイティリも参戦し、クオリッチ以外の人間たちを一掃するものの、キリを人質にして降伏するよう迫るクオリッチに対し、ネイティリは同様にスパイダーを人質にして脅しをかけるのでした。
実際の息子ではないと気にしない様子を見せるクオリッチでしたが、ネイティリが本気の殺意を見せると、恐れたクオリッチはキリを解放します。
そんな中、すでに船は沈没しかけており、ジェイクとクオリッチ、ネイティリとトゥクはそれぞれ沈没する船の中に閉じ込められてしまうのです。
ジェイクは、なんとか水中での戦いでクオリッチに勝利し、その後助けに来たロアクの導きにより、決死で沈没船を脱出します。一方、ネイティリとトゥクの元にも、キリが海中生物と心を交わして救出することに成功します。
そんな中、スパイダーは海中で意識を失ったクオリッチを迷いながらも救い上げるのでした。意識を取り戻したクオリッチはスパイダーに共に来るように誘いますが、スパイダーは断り、サリー一家の元へ向かうのでした。
ジェイクの決意
戦いが収束し、息子ネテヤムの葬儀を行ったサリー一家とメトケイナ族たち。
ジェイクは族長のトノワリにメトケイナ族を去る決意を伝えますが、彼はサリー一家をメケカイナ族として迎い入れると伝えます。
ジェイクはその言葉を受け止め、海のメトケイナ族での生活を新しい家(ホーム)として家族を守る決意を固めるのでした。
【ネタバレ感想・考察】舞台を森から海に変えた「家族」の物語
上映時間3時間超えの『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の物語ですが、すべては語り尽くせないほどに、上記でまとめた以外にも様々な要素がありました。
まず印象的だったのは、思った以上に「家族」に焦点を当てたしっかりした物語が紡がれていること。
3時間超えは納得のてんこ盛り物語
2009年に公開された『アバター』の物語は、ご覧になれば分かりますが、物語自体に目新しさはありません。当時よくあった批判のひとつが、「白人酋長(はくじんしゅうちょう)モノ」という意見。
白人酋長モノとは、一般的に白人の文明人が、2つの世界を知り、原住民族側について助ける中で族を治める立場になっていく物語。
まさに『アバター』もそのひとつであるのは間違いありませんが、例を上げればディズニーの『ポカホンタス』やアカデミー賞作品賞にもなった『アラビアのロレンス』、日本でも広く知られる『ラスト・サムライ』なんかも同じジャンル。
そんなひとつの「ジャンル映画」として革新的な映像で描かれた前作に対して、本作は、圧倒的な映像のアップデートだけではなく、ちゃんと物語も地に足のついたものになっているのです。MCUの『ブラックパンサー』シリーズにも似た雰囲気を感じました。
ジェームズ・キャメロン監督は、アバターを5部作の数世代に渡る家族のサーガとして構想していると語っており、その例えとして『ゴッドファーザー』を例に挙げています。
その通り、全編に渡ってジェイクが父親として家族を守る立場の責任感と葛藤が描かれていました。その中で、4人の子どもたちそれぞれの描き方も印象的で、ちゃんと魅力的に映っています。
優秀だけど父親の影を追う長男ネテヤム、衝動的で兄に対する劣等感も持つ次男ロアク、知的で自然を愛する一方で皆との違いに悩む養子の娘キリ、なんでも興味津々の末っ子のトゥク。
悪名高きクオリッチ大佐の息子であるスパイダーが、サリー一家の一員として育った背景も加わり、さらに場所を移した新しい海のナヴィ・メトケイナ族、そして海中生物たちの交流も描くのです。
「そりゃ3時間超えるわ!」というような、とにかくてんこ盛りのストーリーなんですよね!
終わらない人間(スカイ・ピープル)との戦い、クオリッチとの因縁
父親となったジェイクが、家族を守ることを最優先に行動しているのが印象的だった本作。しかし、結果的に森のホームを去り、長男を失うというあまりにも大きな代償を払うことになるのです。
「利益のためパンドラに侵攻する人間たちと原住民ナヴィとの戦い」という構図は、前作と変わりはありません。
スパイダーは、クオリッチの行動を軽蔑していたものの、父親ゆえの情けなのか最終的には助けてしまいました。これにより、今後の『アバター3』以降の物語でもクオリッチとジェイクとの戦いは必然と言えるでしょう。
それにしてもクオリッチ大佐、しつこいって!
パンドラの侵攻よりもクオリッチ大佐の個人的なジェイクに対する執念が強すぎる印象ですね。笑
本作では、サリー一家の家族物語に重きを置いたことで、それ以外の要素が物足りなく感じるのは否めませんでした。
例えば、海の部族メトケイナ族の心情なんか、想像するにかなり複雑ですよ。
前作で元々人間だったジェイクが、ナヴィの部族を率いる「トゥルーク・マクト」になったことで、トノワリたちも受け入れざるを得ないですし、彼を受け入れたことで自分たちの部族を危険にさらすのは理解しているはずです。
しかしながら、全体を観るとメトケイナ族たちの活躍はほとんど見られず、結局サリー一家が持っていく展開。4人も子どもがいれば、そりゃ描き足りなくなる訳です。
同様に、人間側も単に懲りない侵略者と化していて、序盤に登場したクオリッチに指示する上官のフランシス将軍も、ほぼ空気のような存在。
正直、私は一瞬だけ、クオリッチ大佐がスパイダーを連れてナヴィに溶け込もうとする間に、パンドラの美しさに感化されるかもと淡い期待を持ちましたが、安定の鬼畜っぷりでしたね。
パンドラの自然の中での戦いを美しいヌルヌルした映像で観てしまうと、地球と人間たちを俯瞰してるような感覚になり、美しい地球で今なお起きている争いを考えずにはいられなくなるのです。
私みたいな凡人には、最後クオリッチを救ったことで、今後の展開がこれまでとは違ったものになるのかが想像できませんよ!
恐らくその不安も、5部作構想のシリーズで、2作目にしてここまで物語を詰め込んだことを考慮すると、杞憂に終わると勝手ながらに思っています。ですよね、キャメロン監督!
血は水よりも濃し?
『スター・ウォーズ』が血縁の物語であったように、『アバター』もまた「家族」の関係性を切って離すことはできません。
本作では、母になったネイティリが不自然に思えるほど感情的に描かれていたのですが、それが集約する終盤のクオリッチを脅すシーンでは、養子のキリのために本気の殺意を見せたのが特に印象的。
グレイス博士の娘で父親の分からないキリと、父親が憎むべき相手であるスパイダー。出自が特徴的なこの2人は、キャラクター的にも魅力的で、今後の展開を担う存在になると感じさせます。
特に前作でグレイス博士を演じたシガニー・ウィーバーが、そのまま娘のキリを演じているという点も、物語のキーポイントと言えるでしょう。
グレイス博士は、スカイピープルでは貴重な善良な人間の一人であり、科学者としてパンドラの生態系に興味を示していました。そして死後、パンドラの精霊エイワの元へ旅立った彼女は、劇中でもキリと魂の木を通して接触していました。
パンドラが意識レベルで生態系全体のつながりが見られると主張していたグレイス博士。今後は間違いなく、娘のキリが重要人物となっていくでしょうね。
そして、タイトルの『ウェイ・オブ・ウォーター(The Way of Water)』ですが、劇中ではこのように使われていました。
水はすべてをつなぐ 生まれる前から 死んだ後も
The way of water connects all things, before your birth, and after your death.
まさにパンドラの生態系を表す言葉であり、エイワ、そしてエイワと一体化したグレイス博士、その精神的なつながりを感じさせる副題になっています。『アバター』シリーズの根幹の要素である気がしますね。
それにしてもシガニー・ウィーバーは73歳になりますが、すごいとしか言えませんよ!
続編は観客次第…
2009年に公開された『アバター』ですが、実は2009年の時点で続編が発表されていたものの、度重なる延期とコロナなどによって結果的に13年もの月日が流れてしまいました。
映像としてのクオリティは申し分なく最高でした。しかしながら、13年の月日は長く、私もそうだったのですが、“世界歴代興行収入No.1”であるにも関わらず、ほとんどの人が1作目『アバター』の内容を詳しく覚えていないと思うんですよね。
その上で、前作を視聴している前提での詰め込んだ情報量の多い物語は、思い切ったなぁと感じずにはいられませんでした。
前作をしっかり観ておかないと、結果的に「映像がすごい」以上の感想にはならず、そのフランチャイズを多くの人たちが追いかけるかと言うと、なかなか難しいと思うのも正直なところ。
同時期に『すずめの戸締まり』や『THE FIRST SLAM DUNK』といった話題作も劇場公開中であり、今後どうなるのかは分かりませんが、日本での興行は中々に厳しい戦いを強いられるようにも感じました。
しかし、これは「アバター」シリーズに限った話ではなく、加速するMCUフランチャイズに置いていかれたり、最近でも報じられたDCユニバース『ワンダーウーマン3』などの制作中止など、シリーズ作品特有の懸念点ともいえます。
総製作費が約560億円にものぼる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、ジェームズ・キャメロン監督自ら「映画史上、最悪のビジネスケース」と語っており、本作が世界歴代興行収入の3位から4位くらいに入って初めて、損益分岐点だと言われています。
まさに覚悟を持って世界トップの映像を追い求めるジェームズ・キャメロン監督。本作は紛れもなく素晴らしい映像体験をもたらしてくれましたが、果たしてそれがどの程度観客に届くのかは様子を見てみるしかないですね…。
まとめ:新時代の映画体験
今回は、ジェームズ・キャメロン監督の映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』をご紹介しました。
劇場の映画体験として、まさしく今までにないものであり、多くの人に観たもらいたい作品でした。そしてそれが結果的に続編の製作に繋がり、より新しい映像体験をもたらしてくれるでしょう。
船が沈む終盤の展開は『タイタニック』的でもあり、人間側の侵略するメカたちは『ターミネーター』的でもあり、水中での海中生物たちの邂逅は『アビス』的でもあります。
このように、ジェームズ・キャメロン監督の過去作の香りも漂い、それらが、「精神的なつながり」を描くアバターの物語にもリンクし、監督が『アバター』シリーズに生涯をかける覚悟を感じさせる続編になっていました。
ぜひ、映画館で観てください!