今回ご紹介する映画は『終わらない週末』です。
サム・エスメイル監督による、2020年の同名小説の原作を映画化したスリラー映画。ジュリア・ロバーツ、マハーシャラ・アリ、イーサン・ホークらが出演。
本記事では、ネタバレありで『終わらない週末』を観た感想・考察、あらすじを解説。
現代の「不安」の詰め合わせセットのような、笑えるようで笑えない作品でした!
『終わらない週末』作品情報・予告・配信
『終わらない週末』
5段階評価
ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :
あらすじ
のんびり週末を過ごそうと、豪華な別荘を借りた一家。だが到着早々、サイバー攻撃により携帯やパソコンが使えないという不測の事態が起こる。そして、玄関口に見知らぬ男女2人が姿を現す。
作品情報
タイトル | 終わらない週末 |
原題 | Leave the World Behind |
原作 | ルマーン・アラム「終わらない週末」 |
監督 | サム・エスメイル |
脚本 | サム・エスメイル |
出演 | ジュリア・ロバーツ マハーシャラ・アリ イーサン・ホーク マイハラ ケビン・ベーコン ファラ・マッケンジー チャーリー・エヴァンス |
撮影 | トッド・キャンベル |
音楽 | マック・クエイル |
編集 | リサ・ラセック |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2023年 |
上映時間 | 141分 |
予告編
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配信サイト | 配信状況 |
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おすすめポイント
ずっと不穏…。
全米図書賞にノミネートされたルマーン・アラムによる原作をジュリア・ロバーツ主演、TVドラマ『MR. ROBOT ミスター・ロボット』のサム・エスメイル監督が映画化。
週末の休暇を過ごすために別荘を借りた家族の前に現れる別荘のオーナーとその娘。インターネットが遮断され、外界から隔離された2人の家族に奇妙な現象が巻き起こる様子を描くスリラー。
笑えるようで笑えない、絶えず不穏な空気感がまとわりつく中で、思いもよらない想像の斜め上をいく結末が待っています。
『終わらない週末』監督・スタッフ・原作
監督:サム・エスメイル
名前 | サム・エスメイル |
生年月日 | 1977年9月17日 |
出身 | アメリカ・ニュージャージー州 |
『終わらない週末』の監督を務めたのはサム・エスメイル。
エジプトの移民二世である監督は、ニューヨーク大学で映画とコンピューターサイエンスを学び、20歳の時に、インターネット関連のスタートアップが急速に増えて投資が急増したドットコムブームに乗っかり、ISP(インターネットサービスプロバイダー)企業を起業します。
しかしブームが去った後は仕事を退任し、映画学校を卒業して仕事を見つけるのに苦労しながらも編集アシスタントとして働きながら脚本を執筆し、長編デビュー作である『COMET コメット』を発表しました。
その後、ラミ・マレック主演による孤高の天才ハッカーが巨大利権悪徳企業に立ち向かう様子を描いた人気TVシリーズ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』を監督し、同作品はゴールデングローブ賞の最優秀TVシリーズを受賞するなど、賞レースでも評価されています。
製作総指揮:オバマ夫妻
『終わらない週末』の製作総指揮には、アメリカ元大統領のバラク・オバマと妻ミシェル・オバマ夫妻がクレジットされています。
オバマ夫妻は、2022年に制作プロダクション「Higher Ground(ハイヤー・グラウンド)」を設立し、オバマ元大統領は原作本を「2021年の夏のお気に入り本」として紹介しています。
本作の内容を考えると、オバマ夫妻が製作総指揮というだけでもゾクゾクしますね!
原作:『終わらない週末』ルマーン・アラム
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原作は、バングラデシュの移民二世であるアメリカ人作家、ルマーン・アラムによる2020年の『終わらない週末』です。
束の間の休暇を楽しむ家族を襲う奇妙な現象の数々を描いた物語で、全世界27カ国で刊行されて話題となりました。
原作と映画の大きな違いとしては、別荘のオーナーとしてやってくるのがG・Hと妻である小説に対し、映画では妻ではなく娘となっているところ。
原作のタイトルは『Leave the World Behind』であり、日本語での意味は「世界を置き去りにする」という意味です。これは作品の展開と結びついたているので、後の考察パートで解説します。
『終わらない週末』のキャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
アマンダ・サンドフォード(ジュリア・ロバーツ) 広告会社勤務の多忙な幹部社員。人間嫌いで、急遽、余暇のために別荘を借りる。 | |
G・H・スコット(マハーシャラ・アリ) 財務コンサルタント。アマンダが借りたロングアイランドの別荘のオーナー。 | |
クレイ・サンドフォード(イーサン・ホーク) アマンダの夫でメディア学の教授。 | |
ルース・スコット(マイハラ・ヘロルド) G・Hの25歳の娘。物怖じしない性格で、自分の直感を信じている。 | |
ローズ・サンドフォード(ファラ・マッケンジー) アマンダとクレイの娘。TVドラマ『フレンズ』が大好き。 | |
アーチー・サンドフォード(チャーリー・エヴァンス) アマンダとクレイの息子。ゲームが好き。 | |
ダニー(ケヴィン・ベーコン) G・Hの別荘を建てた大工。サバイバリスト。 |
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】『終わらない週末』のあらすじ
家(THE HOUSE)
© 2023 NETFLIX, INC.
人間嫌いのアマンダ・サンフォードは、ある朝突然、家族を連れてロングアイランドの別荘で休暇を取ることに決める。夫のクレイは教授で、娘のローズはドラマ『フレンズ』に、息子のアーチーはゲームに夢中。
アマンダが別荘に到着してから食料を買うためにスーパーに立ち寄ると、大量の水と缶詰を買うひげ面の男を見かける。その後、別荘に戻ってきたアマンダは、スマホがWi-Fiに繋がらず『フレンズ』を見ていたローズは、最終回を見ることができずにいた。
その後、近くのビーチに向かったアマンダたち。ビーチでのんびり過ごしていると、沖から巨大な石油タンカーが近づき、目の前のビーチに座礁する。一家が驚きながら別荘に戻ると、テレビもWi-Fiも使えないことに気づく。
その夜、子供たちが寝た後、G・Hことジョージ・H・スコットと娘のルースが家に現れる。2人は別荘のオーナーだと言い、市街地が停電したために戻ってきたと説明する。
G・Hの妻はモロッコに出張中で、翌日の飛行機で戻る予定だというが、アマンダはすぐに不信感を抱いていた。一方でクレイはG・Hが別荘の宿泊代の半額である現金1,000ドルを返金したことで、一晩過ごすことを許可する。
曲線(THE CURVE)
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翌朝、アマンダが目覚めると、スマホに複数のニュース通知があることに気づく。ひとつはハッカーがサイバー攻撃をしたというニュースで、他のニュースには読めない言語のものもあった。
一方ローズは、庭先に鹿の群れがやってきているのを目撃していた。クレイは情報を得るために街まで車を走らせるが、GPSが作動しないため道に迷ってしまう。すると道中、スペイン語で何かを訴える女性に接触するが、言葉を理解できないクレイは彼女を置いて走り去っていく。
その後、ドローンが大量の赤いアラビア語がチラシを拡散させている様子を目撃し、急いで別荘に戻っていく。
一方、G・Hは近所の知人の家に向かうが、無尽で荒らされた様子だった。さらに近くの浜辺に向かうと、飛行機が墜落した形跡があり、遺体や破損した機体が散乱していた。
ローズはアーチーに、鹿が何かを伝えようとしていると主張するが、アーチーはルースを盗撮して気にしない。その後、2人が森に探検しにいくと、無人小屋を発見する。アーチーは、その小屋に誰かが潜んでいてローズを監視していると怖がらせようとする。2人が別荘に戻る途中、アーチーは足を虫に刺されていた。
別荘に戻ったG・Hは、服が濡れている理由をプールに落ちたとルースに嘘をつく。G・Hはアマンダに衛星電話も使えなくなっていたことを明かし、何か悪いことが起こっていることを推測する。
するとその後、耳をつんざくような騒音が全員を襲う。
騒音
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騒音が収まった後、アマンダはスーパーで見かけたひげ面の男が大量の物資を購入していたことを思い出し、彼が何が起ころうとしているのかを知っていたのだと推理する。しかしG・Hはその男が、ダニーというサバイバリストでこの別荘を建てた大工の男だと明かす。
クレイが戻り、謎のチラシを一同に見せると、ゲームで意味を知っていたアーチーは、文字の一部が「アメリカに死を」という意味であることを伝える。
その後、アマンダたちは別荘を出てニュージャージーの姉の家に向かうことにするが、道中の高速道路で自動運転搭載のテスラの新車が衝突し合い、道を塞いでいた。一家は仕方なく別荘に戻っていく。
洪水(THE FLOOD)
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その夜、G・Hはアマンダに、起きているのが政府の陰謀による事態かもしれないと打ち明ける。彼は停電の前日、国防総省の有力なクライアントが資金を移動させていたことを明かす。酒を飲みながら音楽を楽しむG・Hとアマンダの距離は近づくが、2人は一線を超えることはしない。
一方、ルースはクレイにタバコを誘うと、クレイはスペイン語の女性を見捨てたこと、タンカーが座礁したことを明かす。その後、2人はフラミンゴの群れがプールに降り立つ様子を目撃する。
その直後、またしても異常音が襲いかかると、別荘が停電してしまう。その夜、ルースはG・Hに、アマンダたちへの不信感を吐露し、戻ってきた彼女たちをなぜ受け入れたのかと問い詰める。
グランドフィナーレ(THE LAST ONE)
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翌朝になると、アマンダはローズが姿を消していること、そしてアーチーの歯が抜け落ちていることに気づく。
G・Hはクレイとアーチーを連れて、サバイバリストのダニーのもとに薬をもらいに行く。ダニーはアーチーの歯が抜け落ちたのはマイクロ波兵器によるものだと推測する。さらにロシアがワシントンD.C.から幕僚を呼び戻したことを明かし、ロシアが何かを察知したことを示唆する。
ダニーが助ける理由がないと薬の提供を拒むと、G・Hとダニーは銃を手にして対峙する。クレイが間に入って金と引き換えに薬をもらうと、地下に防空壕を作った近所のソーンズの家に行くことを薦める。
その頃、ローズを探していたアマンダは、鹿の群れに取り囲まれたルースを助ける。その後、アマンダとルースは遠くに見えるニューヨークから核爆弾が爆発している様子を目撃して立ちすくむ。
ダニーの家を後にしたG・Hは、車内で起きている事態を確信したとクレイに伝える。
彼は政府を転覆させるためのクーデターが起きており、サイバー攻撃で情報を制限して混乱させ、誤った情報を流すことで内戦を扇動していると明かす。
その頃、一人でソーンズの家にたどり着いていたローズは、地下にある防空壕の部屋に入る。彼女はそこで『フレンズ』のDVDを見つけると、嬉しそうな表情で最終話を再生する。
【ネタバレ考察】タイトルの意味とアメリカの終末
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『終わらない週末』は、ニューヨーク近郊の別荘で休暇を過ごす4人家族が、別荘の家主を名乗る2人組の訪問をきっかけに、不可解な出来事が発生し、2つの家族が異常事態に直面しながら世界の崩壊が迫っていくという物語。
五部構成の物語
『終わらない週末』の物語は五部構成となっており、それぞれのセクションでタイトルバックで表現されています。
これは終盤でG・Hが明かす「国家を内部から崩壊させる三段階」とリンクしています。
五部構成における騒音・洪水・グランドフィナーレがこれに相当し、映画におけるアメリカは、その通りに内部から崩壊して終末を迎えています。
タイトルの意味
先に紹介した原作におけるタイトル『Leave the World Behind』は、日本語で「世界を置き去りにする」というニュアンスの意味です。このタイトルは、作品の主軸にある「未知との対峙」を象徴しています。
物語は、何の変哲もないバカンスが世界の崩壊へと向かう異常事態へ一変する様子を描いています。映画の大部分が、この「未知の状況」と対峙する様子を描いており、文字通り「これまでの世界」を置き去りにした状況へと向かっていきます。
一方、日本語訳のタイトルは、「週末」のバカンスで始まる本作が、アメリカの「終末」を迎える内容であり、こちらは洒落の効いた日本語訳となっています。
現代の「不安」詰め合わせセット
先の監督・原作紹介でも書いたように、本作は移民二世の原作者の物語を、移民二世の監督が映画化していることも印象的。
クレイがスペイン語を話す女性を「置き去り」にするところや、ダニーが北朝鮮・中国の仕業だとステレオタイプで決めつけるところ、同じく白人のアマンダが黒人のG・Hとルースをやたらと警戒するところは、多民族国家であるアメリカならではとも言えます。
監督がインターネット事業で起業した経験もあることで、『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』と同様にテクノロジーの要素も欠かせません。
サイバー攻撃によってもたらされる隔離と混沌は、テスラの自動運転システム「オートパイロット」の事故を彷彿とさせるテスラミサイル的なところから、飛行機墜落、石油タンカー座礁、そして陰謀論やプロパガンダ、まさに「洪水」のようにカオスが押し寄せます。
観ていると、アメリカが週末を迎えるとするならば、確かにこのステップなのかもしれないと思えてくるのです。
原作と対照的な『フレンズ』エンド
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『終わらない週末』のラストは、世界が終末に向かっている中で、人知れず防空壕の中にやってきたローズが観たかった『フレンズ』の最終話を観るというオチでした。
大学でメディア論の研究をしている教授のクレイは、物語の前半で、本を出版した教え子が「メディアが現実逃避と反省の両方にどう役立てるかを探求している」と話しています。
一方で、広告業界で働くアマンダは仕事柄、人間観察が染み付いており、終盤のローズとの口論の際に、G・Hとローズを無意識にステレオタイプで見ていたことを吐露します。さらに、私たち人間が偽りの中を生きていて、それを自覚しながらも見ないフリをし続けていると言いました。(これは石油タンカーの接近を無視し続けたことにもリンクしています)
これらは、ラストのオチに繋がると同時に、アマンダやG・Hをはじめ2つの家族が疑心暗鬼になる中で、ローズは鹿が「何かの知らせ」であると感じ、いち早く行動に移りました。
結果的に彼女は誰よりも近所の家の防空壕へと入り、終末を迎える中で嬉しそうにフレンズの最終話を観るのですが、これは実は小説版とは真逆と言えるラストになっています。
小説版のラストでは、ローズは森の中で見つけた廃屋から大量の食料を発見し、それを家族のもとに持ち帰るのです。
まさに劇中のセリフにあるように、映画と小説、2つのメディアが現実逃避と反省を探求するのです。
私たちが休暇を取るとき、「休みくらい仕事を忘れて羽根を伸ばしたい」と思うのはよくあること。
仕事に忙殺されたアマンダは、バカンスによって「現実世界を置き去りに」しようとしました。しかし、彼女はインターネットに繋がらないと不安になり、静かすぎる静寂がノイズに思えたりしています。
映画では、より風刺的と言えるパンチの効いたラストになっていますが、ローズが地下の防空壕へ向かう時に壁にかけられていた絵画には「Hope begins in the dark(希望は暗闇から始まる)」と書かれていました。
ラストシーンの後、恐らく2つの家族は防空壕で再会することができると思います。しかし、世界は終末を迎えている、まさに暗闇と言える状況。希望はどこから始まるのか、それとも現実逃避が希望となるのか…。
世界がゆっくりと滅びつつある中で今日もNetflixでこの映画を観ている私は、胸焼けをしてしまいました。
まとめ:いかにもアメリカらしい終末映画
今回は、サム・エスメイル監督のNetflix映画『終わらない週末』をご紹介しました。
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