『ニモーナ』

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映画

Netflix映画『ニモーナ』ネタバレ感想・考察|ステレオタイプからの脱却とアイデンティティの受容

今回ご紹介する映画は『ニモーナ』です。

N・D・スティーブンソンのグラフィックノベルを原作をアニメーション映画化。

本記事では、ネタバレありで『ニモーナ』を観た感想・考察、あらすじを解説。

まめもやし

最高に楽しく、メッセージ性も響く素晴らしい映画でした!

Netflix映画『ニモーナ』の作品情報と評価

『ニモーナ』

ニモーナ

5段階評価

ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :

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あらすじ

騎士は犯していない犯罪の濡れ衣を着せられるが、彼の無実を証明できる唯一の人物は、姿を変えるこことができる少女ニモナだった。

作品情報

タイトルニモーナ
原題Nimona
監督ニック・ブルーノ
トロイ・クアン
原作N・D・スティーブンソン「Nimona」
出演クロエ・グレース・モレッツ
リズ・アーメッド
ユージン・リー・ヤン
音楽クリストフ・ベック
編集エリン・クラックル
ランディ・トレーガー
製作国アメリカ・イギリス
製作年2023年
上映時間102分

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おすすめポイント

ステレオタイプからの脱却とアイデンティティの受容。

グラフィックノベルが原作、クロエ・グレース・モレッツ&リズ・アーメッド吹き替えのNetflixアニメーション映画。

中世の騎士と近未来が融合した世界観の面白さと、型破りな少女と濡れ衣を着せられた騎士が陰謀に立ち向かう姿は胸を熱くさせます。

アニメーション表現も遊び心満載で、テンポの良さと一筋縄ではいかない展開が全く飽きさせない面白さがあり、根底にあるメッセージもしっかり響きます。

まめもやし
最高に楽しくてメッセージも素晴らしい映画!

Netflix映画『ニモーナ』のキャラクター・キャスト

キャラクター役名/キャスト/役柄
Netflix『ニモーナ』のニモーナニモーナ(クロエ・グレース・モレッツ)
動物に変身することができる少女。バリスターに協力する。
Netflix『ニモーナ』のバリスター・ブラックハートバリスター・ボールドハート(リズ・アーメッド)
孤児出身の騎士。女王殺しの濡れ衣を着せられて指名手配犯となる。
Netflix『ニモーナ』のアンブロシウス・ゴールデンロインアンブローシャス・ゴールデンロイン(ユージン・リー・ヤン)
王国の騎士団長。バリスターの恋人。

【ネタバレ】Netflix映画『ニモーナ』あらすじ解説

『ニモーナ』女王とバリスター
© Netflix,Inc.

女王殺しの濡れ衣

映画は、ある王国の昔話から始まる。その王国は、かつてモンスターの襲撃を受け、グロレスという名の騎士が立ち上がり、民を守ったという。

グロレスは騎士が王国を守る役目を代々受け継ぐことを命じ、モンスターの脅威に備えることが必要だという。それから1000年後が舞台となる。

王国のグロロドームと呼ばれる施設では、王女が騎士を任命する式典が行われようとしていた。バリスター(リズ・アーメッド)という騎士の誕生が注目されており、孤児の少年だった彼は王女に見出され、騎士学校を首席で卒業した。

バリスターが騎士となれば、1000年の歴史で初めてのことであり、庶民が王国を守ることに対して意見は別れていた。バリスターの同期で恋人のアンブローシャス(ユージン・リー・ヤン)は、不安な気持ちになる彼を勇気づける。

アンブローシャスに続き、女王陛下に騎士の任命を受けるバリスターだったが、授けられた剣から突然ビームが放出され、女王に命中する。アンブローシャスはとっさにバリスターの右腕を斬り落とし、開場はパニックと化してしまう。

バリスターは騎士の任命から一転、女王殺しの指名手配犯となる。ある少女はそのニュースを見ながら「最高じゃん」と笑みを浮かべる。

ニモーナ

『ニモーナ』のニモーナ
© Netflix,Inc.

バリスターが隠れ家で身を潜めていると、ニモーナ(クロエ・グレース・モレッツ)と名乗る少女が現れ、復讐を手伝うと提案するが、バリスターは無実を証明したいだけだと主張する。

バリスターは簡単に捕まり、牢屋に入れられてしまうが、どこからともなくニモーナが現れ、牢屋から解放する。王宮から逃げる中、アンブローシャスと遭遇したバリスターは、彼の目が自分を疑っている様子でショックを受ける。

追ってきた騎士たちに追い詰められると、ニモーナはサイに変身して突破し、その後もゴリラやクジラなどの動物に変身して王宮を破壊しながら逃げ出すことに成功するが、バリスターは気を失っていた。

嫌われ者同士

バリスターが隠れ家で目を覚ますと、いろんな動物に変身できるニモーナを人間ではないと警戒する。助けた理由を尋ねると、ニモーナは「嫌われ者同士だから助けた」という。バリスターは渋々ニモーナと協力することに同意する。

バリスターは、騎士任命式で剣を手渡した騎士見習いが事情を知っているはずと考える。

その頃、内部を破壊された王宮では、騎士学校の校長(フランセス・コンロイ)が王国の危機と考え、アンブローシャスを隊長に命じて騎士総出でバリスター探しを始める。

真犯人

『ニモーナ』のディエゴ
© Netflix,Inc.

2人は見習いを探しに市場へ行くため、地下鉄へ乗り込む。騎士が検問していたが、ニモーナがバリスターに変身して陽動し、その隙に車両に乗り込む。

アンブローシャスはその様子を監視カメラシステムで見つけ、駅で待ち伏せすることにする。

バリスターは電車の車両内でニモーナの正体について質問攻めするも、彼女は適当な物語ではぐらかす。市場の駅に着くと、アンブローシャスら騎士たちが待ち構えていたが、ニモーナたちは車両の上部を突き破って逃げていく。

市場で見習い騎士のディエゴ(フリオ・トーレス)を見つけると、ニモーナは小さな男の子に変身して近づき、バリスターの運転する車で強引に連れ去っていく。

バリスターは、逃げる途中で脚に矢を受けたニモーナに気づき手当をすると、彼女は変身しないと「生きてる感じがしない」と打ち明ける。

その後、ディエゴを問い詰めると、彼が撮影していた映像には校長がバリスターの剣をすり替えていた姿が映っていた。

ネットに拡散させようと提案するニモーナに対し、バリスターは学校の信頼を失墜させないために、証拠をアンブローシャスに渡そうとする。

“モンスター”

バリスターとニモーナは、証拠を持ってアンブローシャスと校長の前に現れる。しかし、証拠のスマホは撃ち落とされ、女王殺しが校長の仕業であると伝えるも、アンブローシャスはバリスターが人間ではないニモーナと一緒にいることで信じなかった。

バリスターは仕方なくニモーナに暴れていいと伝え、ニモーナはさまざまな動物に変身して騎士たちを蹴散らす。ニモーナは近くにいた少女を危機から守り、自身も少女に変身して歩み寄るが、その少女はニモーナに「モンスター」と言って剣を向ける。

なんとか隠れ家に逃げ戻ってくるが、ニモーナはショックを受けていた。バリスターは理解を示し、一緒に逃げることを提案するが、ニモーナはバリスターが変われたことで前向きに考え、2人で校長に立ち向かうことを決める。

校長の自白

『ニモーナ』バリスターとニモーナ
© Netflix,Inc.

アンブローシャスは校長の元を訪れ、校長への疑いについて説明するように問い詰める。すると、彼女はバリスターに渡した剣を取り出し、アンブローシャスの腹に突き刺す。

倒れるアンブローシャスに、校長は自分がバリスターをハメて女王殺しの濡れ衣を着せたことを打ち明けるが、彼は本人ではなくニモーナによる変身の姿だった。バリスターは校長の自白を映像に収めることに成功し、ニモーナを「相棒」と呼んで一緒に去っていく。

2人は隠れ家に戻り、校長の自白動画をネットにアップする。たちまち動画は国中で再生され、校長への不信が広まり、2人はダンスを踊って喜んでいた。

一方、校長は地下室からある巻物を見つけ、「すべて分かった」と言ってアンブローシャスに見せる。

1000年前の巻物

校長はニモーナが何でも変身できることを理由に、自分の動画がフェイクであることを主張していた。

アンブローシャスはバリスターを呼び出すと、1000年前から学校にある巻物を見せる。そこにはグロレスが王国を守って倒したモンスターとしてニモーナの姿が描かれていた。

アンブローシャスは、ニモーナがバリスターを利用して復讐しようとしていると伝える。「放っておいてくれ」と言うバリスターに対し、アンブローシャスは「愛している」と伝えるも、バリスターはその場を去っていく。

ニモーナの過去

『ニモーナ』のグロリア
© Netflix,Inc.

バリスターは隠れ家に戻り、ニモーナに復讐のために利用したのかと問い詰めるが、口論になり、後をつけられて騎士が隠れ家にやってくると、ニモーナは逃げ出していく。

ニモーナはかつて、グロリアと出会い、友情を育んでいた。ニモーナは、あらゆる姿に変身できることで、どの動物からも避けられていたが、グロリアだけは、ニモーナを受け入れてくれた。

しかし、グロリアの親に見つかり、ニモーナがモンスターであると吹き込まれたことで、その友情は引き剥がされ、グロリアはニモーナに剣を向けてしまうのだった。

英雄

『ニモーナ』バリスターとニモーナ
© Netflix,Inc.

ニモーナは過去のショックが現在と繋がり、巨大なモンスターに変貌して王国を襲い始める。王国内はパニックと化し、校長はニモーナを倒すために一般人を巻き込むことをいとわず、大砲を使用することを命じる。

ニモーナはグロリアの銅像の剣で自らの心臓を突き刺して死のうとするが、そこへバリスターが現れ、彼女の心臓に手を当て、彼女に謝罪し、「君は僕の友達のニモーナだ」と伝える。すると、ニモーナは少女の姿に戻る。

アンブローシャスは昔の言い伝えが間違っていたのかもしれないと校長に伝えるが、彼女は聞き耳を持たず、大砲をニモーナに撃とうとする。

ニモーナは「歴史を変える」と言って鳥の姿になり、自ら大砲に突っ込むことで王国に被害が及ばないようにして消えてしまう。

時が経ち、バリスターとニモーナは疑いが晴れて英雄とされていた。バリスターはアンブローシャスと関係を修復していた。

バリスターは隠れ家に向かい、ニモーナと過ごした時間に思いを馳せていると、後ろから「ボス」と呼びかける声が聞こえて、バリスターは嬉しそうな表情を浮かべて返答する。

中世と近未来が融合した世界観の妙

『ニモーナ』校長とアンブローシャス
© Netflix,Inc.

『ニモーナ』は、N・D・スティーブンソンによるグラフィックノベルが原作で、ニューヨーク・タイムズ誌のベストセラーにもなった1冊。

中世と近未来がハイブリッドした世界観

本作の面白さのひとつが、舞台となる王国の世界観。

騎士が活躍する中世の時代設定のようで、劇中にはスマホやデジタルデバイス、ネット環境も整備された近未来の要素が描かれています。

甲冑に身を包んだ騎士たちは、馬ではなく空飛ぶバイクを乗りこなし、剣以外にもレーザー銃を使用します。本作は、異なる要素が組み合わさった独特の世界観が魅力的に映ります。

変幻自在な楽しさ

舞台となる王国は、かつてモンスターから王国を守った騎士による血筋によって厳格に保護されています。

騎士の血筋ではないバリスターは、自身の努力と王女の助けによって騎士となるチャンスを手にしますが、陰謀に巻き込まれ、一転して王女殺しの烙印を押されてしまいます。

そんな中で出会うニモーナは「シェイプシフター」、つまり、変幻自在であらゆる姿に変えられる力を持った少女で、人々は彼女を“モンスター”と呼び、恐れています。

バリスターは自身の潔白を証明するため、ニモーナはそれに乗じて王国に抵抗し、世間から排除された嫌われ者同士が結託して権力に立ち向かう様子は自然と胸を熱くさせるものがありました。

アニメーション表現も独特で、『スパイダーバース』シリーズを彷彿とさせる、いい意味でカオスな映像表現も楽しく、ニモーナが変幻自在に変身する様子も飽きさせません。

バリスターの無実を証明する物語が主軸で進みますが、ニモーナの型破りな性格が絶妙なスパイスとして効いていて、暗くなりすぎず、ユーモアとコントロールできない不安定さも魅力。

シリアルのCMで登場する怪獣に変身したり、ダンスを踊ったり、セリフのない過去のシーンが挟まれたりと、『ニモーナ』の物語そのものも、シェイプシフターのように変幻自在なのです。

地下鉄で作り話をするニモーナのシーンでは、移動する地下鉄の駅のタイル上に物語を描いたり、遊び心とアニメーション表現の幅の広さも感じられます。

そして、楽しい物語の根底にあるメッセージも上手く機能して魅力的に働きます。

【ネタバレ考察】古き慣習の脱却とアイデンティティ

『ニモーナ』ダンスするニモーナとバリスター
© Netflix,Inc.

『ニモーナ』には、楽しくて魅力的な物語の背景に「古き慣習からの脱却」と「アイデンティティの受容」のテーマが描かれているように感じました。

古き慣習・ステレオタイプへの疑問

王国に生きる人々は、広告や世代を超えた教えで「モンスターを見つけたら殺せ」という意識が刷り込まれていました。

人々は、潜在意識に刷り込まれて育っているため、その慣習や規範に対して疑問を持つことはありません。

そんな中で、騎士の血筋ではないバリスターが、歴史を変える直前で古き慣習を厳守する校長によって濡れ衣を着させられてしまいます。

一度着せられた濡れ衣を晴らすことがどれだけ大変なのかは、本作を見ればわかります。同様に、それはニモーナに向けられた“モンスター”というイメージも同じこと。

本作は、古き慣習やステレオタイプからの脱却を描いた作品なのです。まさに現代に通じる物語。

ステレオタイプからの脱却

『ニモーナ』キャラクターのカラー比較
© Netflix,Inc.

本作は、視覚的な意味でもステレオタイプからの脱却を促しているように感じます。

  • バリスター:黒色 → 悪の象徴
  • ニモーナ:ピンク色 → 女性の象徴
  • アンブローシャス:白色と金色 → 権力の象徴

上記の主要な登場人物のイメージカラーを見て分かるように、本作は色を通じてステレオタイプを表現しつつも、それとは相反するキャラクター造形になっています。

『ニモーナ』の物語を見れば、バリスターは悪者ではないし、ニモーナは性別にとらわれず、アンブローシャスも権力に抵抗していることが分かります。

『ニモーナ』は、イメージカラーを通じて私たち観客が潜在的に刷り込まれたステレオタイプへの脱却も描いているのです。人間には「アンコンシャス・バイアス(無意識のバイアス)」がありますが、見た目やイメージで判断してはいけないというテーマをそれとなく伝えている上手さが見事でした。

LGBTQ+映画

『ニモーナ』ハグするアンブローシャスとバリスター
© Netflix,Inc.

主人公の一人であるバリスターと、彼の恋人であるアンブローシャスの関係から分かるように、本作はLGBTQ+が主人公の映画でもあります。

2人はバリスターに着せられた濡れ衣によって引き裂かれますが、根底では互いを信じています。

ニモーナは度々その正体について尋ねられますが、最初から自分のことを一貫して「ニモーナだ」と主張する一方で、人々は姿を変える彼女をどうにかラベリングしようとし、結果的に彼女は“モンスター”と呼ばれてしまいます。

彼女は少女の姿をしていますが、性自認・性表現といった枠組みに当てはまらないノンバイナリーな存在でもあります。

原作者のN・D・スティーブンソンもノンバイナリーであると明かしています。(N・D・スティーブンソンのTwitterより

バリスターは当初、ニモーナに少女の姿でいるように言いますが、ニモーナは姿を変えることを我慢すると「クシャミを我慢するようなもの」「生きてる感じがしない」と口にします。

ニモーナは、ありのままの自分を認めてくれる人を求めていたのです。彼女は何にでも変身できる一方で、ずっと自分を受け入れてくれる居場所を探していましたが、どのグループからも拒絶されてしまいます。

その中で唯一できた友人のグロリアから受けた拒絶によって、彼女の心には深い傷が残ってしまったのです。彼女を象徴するピンク色は漆黒の闇へと変わり、そこには彼女の不安や恐怖、怒りや憎しみが溢れていました。

ただ受容してほしい彼女の願いとは裏腹に、人々は彼女を定義づけ、それが彼女のストレスとなっていったのです。

バリスターは、漆黒の巨大な姿になったニモーナの目を見て心臓に触れて「I see you Nimona.」と彼女を認めました。

最初は“女王殺しの非騎士”と“モンスター”の悪人とされた2人でしたが、王国の人々を守ることに命を懸け、結果的に英雄として人々から認められるようになったのです。

まとめ:Netflixアニメ映画の新たな傑作の誕生

今回は、Netflix映画『ニモーナ』をご紹介しました。

ディズニーが制作を打ち辞めた本作ですが、描くテーマと型破りな語り口は、制約の多いディズニーには表現できないものだったようにも感じます。

LGBTQ+映画としても非常にメッセージ性があり、何より面白くて元気をもらえる映画であることも素晴らしいところでした。

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