今回ご紹介するのはNetflixドラマ『マスクガール』です。
メミ、ヒセによる同名ウェブトゥーンの原作を、映画『藁にもすがる獣たち』のキム・ヨンフン監督がNetflixドラマ化。
昼は普通の会社員、夜はマスクで顔を覆ったライブ配信者として活動する主人公キム・モミが、予期せぬ事件に巻き込まれて人生が一変していく様子を描く。
本記事ではNetflix韓国ドラマ『マスクガール』を全話ネタバレありで感想・考察・解説。
めちゃくちゃ面白いだけではなく、韓国社会が抱える問題を痛烈に風刺する描写や演技も素晴らしい作品でした!
『マスクガール』は性的暴力などのシーンが含まれています。
『マスクガール』作品情報
マスクガール
あらすじ
幼い頃から拍手喝采を浴びることが大好きだったキム・モミは、マスクガールというもう一つの顔を手に入れたことで長年の夢を実現。だが、いつまで秘密を隠し通すことができるのか。
作品情報
タイトル | マスクガール |
原題 | Mask Girl |
監督 | キム・ヨンフン |
脚本 | キム・ヨンフン |
出演 | コ・ヒョンジョン、アン・ジェホン、ヨム・ヘラン、ナナ、イ・ハンビョル |
音楽 | チャン・ヨンギュ |
製作国 | 韓国 |
製作年 | 2023年 |
話数 | 全7話 |
『マスクガール』相関図・キャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
キム・モミ(コ・ヒョンジョン/ナナ/イ・ハンビョル) 会社員の傍ら、マスク姿でライブ配信している。 | |
チュ・オナム(アン・ジェホン) モミの同僚。マスクガール=モミに気づき、片思い。 | |
キム・キョンジャ(ヨム・ヘラン) オナムの母親。 | |
キム・チュネ(ハン・ジェイ) クラブでモミに出会う。 | |
キム・ミモ(シン・イェソ) モミの娘。 |
ネタバレあり
以下では、ドラマの結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
第1話「キム・モミ」
© 2023 Netflix
第1話は、キム・モミの幼少期のフラッシュバックから始まる。目立つことが大好きな少女キム・モミは、子供の頃から芸能人になることが夢だった。
しかし、ダンスや歌の実力があっても自分の容姿の悪さから夢を否定され、気づけば27歳になっていた。
今でも目立つことが好きな彼女は、ライブ配信サイトで顔を覆った仮面をつけた配信者“マスクガール”となる。
モミが務める会社の新入社員のアルムは、容姿が良く、男性社員から人気を博していた。
しかし、高身長イケメンで既婚者のパクチーム長だけは外見で人を判断しないため、モミはチーム長に片思いしていた。
ある日の飲み会で、同僚の一人がライブ配信サイトの話を持ち出し、「マスクガール」が最近の人気だと言うと、モミは動揺する。
モミは飲み会終わりにチーム長と一緒にタクシーに乗り込むと、チーム長は妻への電話で自分が一緒にタクシーに乗っていることを隠していた。それに対してモミはチーム長が自分を意識しているのではないかと思い込む。
翌日、チーム長は同僚の前でアルムのミスを叱責するが、その夜、IDカードを忘れて取りに戻ったモミは、アルムとチーム長がオフィスで不倫している様子を発見する。
ショックを受けたモミは、全裸になってライブ配信してしまい、アカウントを追放されてしまう。
後日、モミは口の軽い同期たちにチーム長とアルムの不倫を明かすと、たちまち社内で噂になり、チーム長は仕事を休みがちになる。
ある夜、モミは街で酔い潰れたチーム長を発見し、介抱してホテルに連れて行く。翌朝、目覚めたチーム長は先にホテルを抜け出していくが、モミがその後出勤すると、チーム長が仕事を辞め、アルムは異動となったことを知る。
そんな中、モミは差出人不明のメールを受け取る。そのメールは、モミが“マスクガール”であると知る人物からのメールであり、モミは自分の正体がバレたことに不安を覚える。
帰り道の電車内、モミは男に痴漢されたと訴え、男と共に警察署で言い合いになる。モミは痴漢の男がメール送信者であると主張するが、警察には相手にされず、男も否定する。
モミはライブ配信のプライベートチャット機能を使い、気にかけていた「前世はウォンビン」というファンにメッセージを送る。その男の正体は、モミの同僚の男性だった。
第2話「チュ・オナム」
© 2023 Netflix
第2話は、チュ・オナムの視点から始まる。オナムは、中学生の頃から肥満体質で、その容姿のせいでずっといじめられてきたと語る。次第に社会と距離を置くようになり、ラブドールと生活するようになる。
人と目を合わせることが苦手なオナムは、その代わりに人の手を見ることが得意だった。彼は会社で接したモミの手の特徴的なホクロを覚えており、モミがマスクガールであることに気づく。
そこからオナムは仕事が終わると、マスクガールのライブ配信に時間とお金を費やし、夢中になっていく。オナムは、モミがパクチーム長に片思いしている様子を見て心配になっていたが、チーム長がアルムと会社で不倫している場面を目撃して大喜びする。
しかし、その夜、ショックを受けたモミがライブ配信で全裸になり、アカウント停止となってしまうとオナムもショックを受ける。オナムは意を決してモミに告白しようとするも、声をかけられないでいた。そんな中、モミがチーム長とタクシーに乗り込みホテルに向かう様子を目撃する。
オナムはさらにショックを受け、モミに彼女がマスクガールであることを知っていると記した裸の写真をメールで送りつける。すると、その夜、プライベートチャットでモミからオナムのアカウント“前世はウォンビン”にメッセージが届き、直接会ってほしいと頼まれるが、オナムが迷っていると別のファンに会いに行くと言われてしまう。
モミは“ハンサム和尚”という人物と会い、親密になっていくが、それは“ハンサム和尚”による策略だった。彼はモミをホテルに連れ込み、彼女と関係を持ってその写真を仲間たちと共有しようとしていた。
オナムはそれに気づき、モミの身を案じて連絡を取ろうとするが、モミは電話に出ない。一方、モミはホテルで“ハンサム和尚”に襲われる。“ハンサム和尚”は、もみ合いになった末に頭をぶつけて血を流して倒れ、モミは混乱しながらもオナムからの着信履歴に気づいて連絡する。
オナムはホテルに到着すると、自分が死体の処理を請け負うと言ってモミを家に帰す。死体処理を始めようとすると、“ハンサム和尚”は気絶していただけで、まだ生きていた。それに驚いたオナムはとっさにナイフで突き刺して彼を殺害する。
オナムは切断した死体を自分のマンションに運び込む。一方、モミは事件のショックから会社を辞めていた。その後、モミはマスクガールとしての最後の配信だと明かしてライブ配信を始めると、オナムは彼女のアパートに駆けつける。
モミは脅迫メールの送り主がオナムであることに気づいていた。オナムは姿を消そうとしていたモミを止めようとし、彼女をレイプしようと襲いかかる。オナムがモミのマスクを外すと、彼女の顔は包帯で覆われ、顔面を整形したことを知りショックを受ける。
そしてモミは、オナムとのセックス中に彼をナイフで突き刺して殺害する。
第3話「キム・キョンジャ」
© 2023 Netflix
第3話は、チュ・オナムの母キム・キョンジャの視点から始まる。貧しい家庭育ちのキョンジャは、夫と結婚するも不倫されて独り身になるも、生まれた息子オナムのために人生を捧げ、さまざまな仕事を経験してお金を稼ぎ、自分の小さな飲食店を開いた。
オナムは学校でいじめられていたが、成績は良く、キョンジャはそれが祈祷してもらったことによるものだと思っていた。大学に進学して就職すると、オナムは家を出て一人暮らししたいと言い出す。
キョンジャはオナムの家に料理を持っていくが、部屋の中にはいれさせてもらえない。そんなオナムの態度に腹が立ったキョンジャは縁を切ると言い出すが、それ以降オナムから電話がかかってくることはなかった。
内心は心配していたキョンジャは、オナムの失踪したことで警察に通報し、彼のアパートを開けてもらうと、冷蔵庫の中から切断された遺体が発見される。その死体はオナムではなかったが、オナムは男を殺害して逃走したのではないかと疑われる。
オナムの部屋からは無数のポルノ動画データやラブドールなどが発見され、マスコミに取り上げられていた。会社の同僚の証言により、警察は同じ時期に姿を消していたモミとオナムが事件に関与していると推測する。
モミのアパートの大家は、彼女が海外に行くと言って引っ越し、整形したことを明かす。キョンジャは事件を自分の手で解決しようと決心し、コンピュータの使い方や若者言葉などを学び始める。
キョンジャは、同じくマスクガールを探していた“クマさん”こと、ライブ配信サイトの運営者とコミュニケーションを取るようになる。“クマさん”からの情報で、マスクガールらしき女性が仁川(インチョン)か江川(カンチョン)のスーパーマーケット前で踊っている動画をみる。
その後、警察がオナムの死体を発見すると、キョンジャは精神的に深い傷を負うが、立ち直り、マスクガールを探し出す決意を固める。
キョンジャはモミの実家を訪れ、モミの母親と話をしようとするが、拒否されて迷惑行為で警察に突き出されてしまう。その後、キョンジャは手がかりをなくしていたが、友人との会話でよく当たる占い師の話を聞き、会いに行くことにする。
占い師に「マスクガールは江川(カンチョン)にいる」と言われて確信したキョンジャは探しに向かい、聞き込みする中で動画の女性と偶然出くわし、彼女が「ミエ」という名前であることを突き止める。
ミエを尾行し、彼女が通うヘアアサロンでに入って近づくと、キョンジャはミエがマスクガールと同じ月形のネックレスをしていることを発見する。ミエがマスクガールであることを確信したキョンジャは拳銃を購入し、タクシー運転手となり、彼女の務めるクラブ前で待機する。
キョンジャはミエをタクシーに乗せると、スタンガンで気絶させ、人気のない廃墟に連れて行く。キョンジャがミエを殺そうとすると、ミエは自分がマスクガールでもオナムを殺した犯人でもないことを訴える。彼女は自分の本名がキム・チュネであり、キョンジャが探すマスクガールを知っているかもしれないと明かす。
第4話「キム・チュネ」
© 2023 Netflix
第4話は、キム・チュネの人生とマスクガール、キム・モミとの出会いから始まる。チュネは引っ込み思案な性格で、転校して学校に友達もいない中、同じクラスのアイドル志望のプヨンという男子に片思いしていた。
卒業後、コンビニで働いていたチュネは偶然プヨンと再会するが、彼は同級生を理由にして酒やタバコをチュネに便宜を図って違法に買うようになり、次第に金を借りるようになる。
その後、プヨンはアイドルとしてデビューするが、チュネには金を返さずに離れていく。ある日、プヨンを見かけたチュネは声をかけるが無視され、プヨンが自分をATMだと思っていると話しているのを聞いてしまう。さらに、そんな女性が自分のほかにもたくさんいることを知る。
その事実を知ったチュネは怒り、プヨンの未成年飲酒や恐喝などの違法行為をマスコミに暴露する。それによりプヨンはアイドルを辞めることになり、チュネは整形して人生を変えようと決意する。
ある日、チュネは変わり果てたプヨンの姿を目撃し、声をかける。2人は付き合い始め、チュネは罪悪感から自分のアパートでプヨンを住まわせる。
チュネは稼ぐためにクラブで働き始め、クラブで一番人気のスターとなるが、プヨンは家に引きこもり、仕事を探そうとはせずに堕落した生活を送るようになる。
その後、クラブに新しくモミがやってくると、モミは源氏名を「アルム」と名乗り、チュネの客を奪って人気を得ていく。チュネとモミは衝突し、チュネはクラブを辞めたのだとキョンジャに伝える。
チュネは自分の胸はシリコンだが、モミの胸は自前だと伝え、キョンジャに自分も恨みのあるモミ探しを手伝うと交渉する。
しかし、チュネがキョンジャに話した内容は作り話で、チュネとモミは親友だった。
クラブで出会った2人は、仲間はずれにされた経験や似たような境遇で通じ合い、共に支え合う関係になっていた。
ある日、モミが病気を患うと、チュネは病院に連れて行こうとするが、彼女はそれを頑なに拒み、その理由として、かつてオナムを殺したことを打ち明ける。
一方、マスクガールを探していた“クマさん”は、モミのアパートから出てくるチュネの写真を撮影していた。
チュネは働く気がないプヨンを追い出すことにするが、プヨンは自分を落ちぶらせた写真を流出させたのがチュネであることを突き止め、暴力をふるう。
モミは“クマさん”に声をかけられ、マスクガールであることを問い詰められたことで居場所を移そうとする。チュネもモミと一緒に逃げることを決め、プヨンが寝ている間に荷物を持ち出して逃げようとする。
しかし、プヨンが目覚めて逃げようとするチュネに襲いかかる。チュネが殺されそうになると、背後からモミが殴りかかり、もみ合いの末にプヨンを殺害する。
2人はプヨンの死体をスーツケース入れ、車に乗って逃げ出していく。さらにモミは妊娠していること明かし、産む意思を伝える。
同じ頃、“クマさん”は、チュネとモミの関係をキョンジャに共有する。チュネに騙されたことで怒り心頭のキョンジャは、2人を追いかけて、銃を手にして追い詰める。
上手く銃を撃てないキョンジャに2人が襲いかかるが、寸前で銃声が響き、チュネが撃たれてしまう。キョンジャとモミは揉み合いになり、モミが殺されそうになると、瀕死のチュネがキョンジャを気絶させてモミを助けると、息途絶えていく。
モミはキョンジャを車に乗せて湖に沈めると、マスクガールとして警察に自首する。
第5話「キム・ミモ」
© 2023 Netflix
第5話は、自首したキム・モミがオナムと“ハンサム和尚”殺しの容疑を認める様子から始まる。
マスクガールはメディアで大々的に報じられ、モミは終身刑を言い渡される。モミは海外に逃亡しようとして、母親に娘のキム・ミモを一方的に預けていた。
ミモは祖母から母親似だと言われるも、母親についての情報は教えてもらえなかった。ミモは小学校前の屋台のおばさんが作るトッポギを好んで食べていた。
ある日、ミモがマスクガールの娘であることが噂になると、友人たちはミモと口をきかなくなってしまう。ミモは自分でマスクガールについて調べ、母親の真似をして仮面を被っているところを祖母に見つかり、家から締め出されるが、熱を出して家に引き戻される。
その後、ミモは噂を流したクラスメイトを殴ったことで転校することになる。数年がたち、中学生となったミモは新しい学校でクラスの仲間はずれのイェチュンの隣の席になる。
イェチュンはクラスの人気者グループに入ろうとするが、彼女らはイェチュンを相手にしない。ある日、ミモはいじめられているイェチュンを助けると、イェチュンはミモと仲良くなろうと必死になる。
ミモは友達を作りたがらず、自分の私生活も明かそうとしない。イェチュンは近づこうとして、父親が虐待して家族が壊れかかっていると嘘をつく。するとミモは共感し、母親が刑務所にいること、父親は誰かもわからないことを明かす。
2人は次第に仲を深めていくと、ミモは母親が殺人罪であることを打ち明ける。2人はお金を貯めて一緒に暮らしていこうと計画する。
イェチュンはネットでミモがマスクガールの娘であることを知る。イェチュンはお金を稼ごうとして、アイドルの生写真を小学生に売りつけようとするが、その様子をいじめっ子に見られてしまう。
一方、ミモはカフェでノートパソコンを盗もうとするが見つかり、怒った祖母はミモを叱責して家から追い出す。
ミモはイェチュンに電話して泊めてもらうように頼むが、イェチュンは家庭環境が悪いという嘘の理由で断り、ミモは学校に忍び込んで一夜を明かす。
翌日になると、学校で自分がマスクガールの娘であることが広まっており、ミモは学校を休み、イェチュンは心配していた。
ミモの祖母やイェチュンはミモを探すが見当たらなかった。そんな中、イェチュンを遠巻きに見ていたミモは、彼女が家族と関係が悪いと自分に嘘をついていたことにショックを受ける。
ミモはイェチュンを呼び出し、自分の母親がマスクガールであることを広めたとしてイェチュンを殴りつける。そんな中、1人の老婆がその様子を見て不敵な笑みを浮かべて去っていく。
第6話「キム・モミ」
© 2023 Netflix
第6話は、キム・モミが刑務所に収監させられる様子から始まる。
マスクガールとして知られるモミは刑務所でも注目の的になっていたが、モミは一人で行動していた。刑務所では金持ちで多数のコネを持つアン・ウンスクという人物が実権を握っていた。
モミはウンスクに呼び出されると、モミが夫の愛人に似ているという理由で平手打ちされる。
その後、モミがウンスクの決めた規則を破ると、ウンスクの3人の手下たちはモミに攻撃するが、彼女は応戦する。
しかし、ケンカの罰で独房に入れられたのはモミだけだった。独房期間を終えると、モミはウンスクの手下たちに殴りかかり、さらに独房入りを言い渡される。
それを繰り返す内に、ウンスクの手下たちはモミに恐怖心を抱き始める。すると、ウンスクが現れ、もう手出しをしないと言い、それ以降、彼女が攻撃されることはなくなった。
時が経ち、刑務所に新しい所長が就任する。そんな中、モミの元に「マスクガール ラブ」という差出人からの手紙が届く。
封筒の中身は、モミの娘ミモの学校での暴力行為に関する記事で、暴力性が遺伝することを調査した内容だった。さらに差出人からのメモには、「我が子の破滅をお前も味わえ」と書かれていた。
モミはその手紙を機に脱獄を決意すると、布で作ったロープで脱獄を図るが、看守に見つかり、1ヶ月の独房に入れられる。独房生活で所長から聖書を渡されると、独房を出る1ヶ月後にはモミは人が変わったようになっていた。
信心深くなったモミは、ウンスクの娘が臓器移植提供者を必要としていることを知り、自分の臓器を提供することを名乗り出る。
ある日、地元の教会が情操教育のためにボランティアにやってくると、モミはそこでチュ・オナムの母キョンジュに出くわす。
キョンジュは手紙の差出人が自分であり、湖から命からがら脱出し、復讐のために整形して名前を変え、新たな生活を手に入れたと伝える。
キョンジュはモミが自首して刑務所に収監されたことにショックを受けるが、彼女の娘ミモを見つけ出し、彼女の人生を台無しにすることを新たな目標に掲げたのだった。
キョンジャは屋台のおばさんとしてミモと親しくなると、ミモに友達にやり返すようにアドバイスしたり、保護者にミモがマスクガールの娘である噂を流したりした。
ミモはイェチュンとケンカ別れをした後、キョンジャの家を訪ね、一緒に生活し始めていた。
キョンジャはモミに子供を失うことの痛みを味わわせようとしていることを明かすと、モミは取り乱し、キョンジャに襲いかかろうとして刑務官に取り押さえられる。
第7話「モミとミモ」
© 2023 Netflix
第7話(最終話)は、キョンジャとミモが一緒に生活している様子と、刑務所で娘を助けるために奔走するモミの様子が交互に描かれていく。
モミは、ウンスクに助けを求めて情報を探っていた。その頃、ミモの祖母シン・ヨンヒは、ミモの捜索願を出していた。するとミモから電話が入り、探さないでほしいと言われてしまう。
一方、モミはヨンヒに電話をかけ、キョンジャのことを聞こうとするが、ヨンヒは相手にせず、二度と電話をかけてくるなと言い放つ。
その後、ウンスクからミモが通う学校の電話番号を聞きつけて電話をかけるが、その相手はウンソクが手配したサクラで、結局ウンソクはモミを助けるフリをしていただけだった。
ウンソクは刑務所の外の部下に依頼し、ミモの偽の写真をモミに手渡し、信用を得る中、モミの移植手術が近づいていた。
ミモはキョンジャを実の祖母のように信頼していたが、キョンジャは自分の計画を進める。彼女はミモに薬を飲ませて気を失わせると、椅子に縛り付ける。そして彼女が死ぬ様子をカメラに収めようとしていた。
一方、モミは移植手術のため刑務所から病院に連れ出されると、隙を見て脱出しようとする。窓から飛び降り負傷しながらも車を奪って逃げ出し、ヨンヒに連絡する。
その頃、ヨンヒは教会の友人からキョンジャの住所と電話番号を聞き出していた。すると、イェチュンが現れ、キョンジャがミモの噂を流した張本人だと告げる。ヨンヒはイェチュンをタクシーから追い出して家に帰るように伝え、警察にキョンジャの住所を通報する。イェチュンはミモを助けるためにタクシーでキョンジャの家へ向かう。
ミモが目を覚ますと、キョンジャは息子殺しの犯人がミモの母親のモミで、その復讐のために殺すと伝えるが、無実なミモへの情も募らせていた。
モミは車がガス欠になり、通行人の助けを借りて家に向かっていたが、病院から逃げたマスクガール特徴とモミが似ていることで疑われ始めたために降車する。
そんな中、キョンジャの家に警察がやって来る。警察は部屋の中を調べるが、地下室にいるミモの助けを呼ぶ声は聞こえず、マスクガールが近くにいる知らせを聞いたことで応援のために去っていく。
キョンジャはミモを殺そうと戻ってくるが、ヨンヒが到着し、孫娘を助けるためにキョンジャともみ合いになる。その間にイェチュンも到着すると、彼女はミモの拘束を解こうとする。
ヨンヒはキョンジャに刃物で刺されて倒れるが、間一髪のところで到着したモミがキョンジャを殴り倒す。ヨンヒは自分よりもミモを助けに向かうように指示し、モミが地下室に向かう。
モミ、ミモ、イェチャンは地下室から脱出しようとすると、復活したキョンジャが立ちふさがる。モミはキョンジャと対峙し、その間にミモとイェチュンを逃がす。
ミモは倒れたヨンヒを発見して駆け寄るが、ヨンヒは刺された傷が致命傷となり、ミモの腕の中で死んでいく。
モミとキョンジャは激しい戦いを繰り広げ、モミは地下室から脱出する。家の外はすでに警察に取り囲まれており、警察は降伏を呼びかける。
モミが自首しようとすると、キョンジャが銃を持って現れ、ミモを撃とうとする。モミはミモの盾となって銃弾を受け、警察は代わりにキョンジャを射殺する。モミは涙を流すミモの腕の中で死んでいく。
時が経ち、ミモはイェチャンの両親に引き取られ、学校生活に戻っていた。ミモは家の中でモミのビデオテープを発見すると、そこに映る幼い頃のステージ上で楽しげに踊る母親を見つめる姿でドラマが終わる。
【ネタバレ感想・考察】ルッキズムと社会的抑圧
© 2023 Netflix
『マスクガール』めちゃくちゃ面白かったです。つい、イッキ見してしまいました。
今や韓国ドラマ熱は世界中に波及していて、面白い作品が日々生み出されています。近年でも特に目立っているのが、ウェブトゥーンを原作としたドラマ作品。
ウェブトゥーンとは、スマホで読むことに特化した縦スクロール型のマンガで、Netflixでも『梨泰院クラス』や『Sweet Home ー俺と世界の絶望ー』など、ウェブトゥーン原作のドラマが数多く打ち出されていて、日本での人気も顕著です。
【Netflix人気ランキング】世界や日本で最も視聴された番組
正直に言うと、私は韓国ドラマが苦手です。
1シーズン20話、しかも1話あたり1時間超えの作品もザラで、3〜4話あたりから面白くなっていく作品も多く、気軽に見ようと思うにはハードルが高いのです。
そんな中、本作『マスクガール』は1話1時間の7話完結のミニシリーズ。ちょうどいい!
限られた登場人物たちの様子を、それぞれの視点で切り取り映していく様子が面白く、ジャンルを横断する多面的な楽しみ方ができる作品でした。
キム・ヨンフン監督は、The Korea Timesで「ルッキズムだけでなく、根底にある人間の二面性、それらが生まれる経緯に焦点を当てた」と話しています。
『マスクガール』はまさに、フィクションとしての純粋な面白さの裏にある、韓国社会が抱える問題を鋭く切り取った描写が刺さる作品でした。
鋭い社会風刺
「人前で踊るのが楽しくて、拍手喝采を浴びると幸せを感じた」
『マスクガール』は、目立つことが好きな一人の女性が、「顔が醜い」ことで、悲運な人生を歩むことになる様子を描いています。
外見の良し悪しで人間の価値をはかろうとすることを、ルッキズム(外見至上主義)と言います。
国を挙げてエンタメ産業に力を入れてきた韓国。思い浮かべてみると、韓国アイドルの多くが、高身長の美男美女ぞろいではありませんか?
“整形大国”と言われる韓国では、外見の良さが無言の圧力のように働き、ルッキズムが若者に大きな影響を与えていると言われています。(VOGUE JAPAN参考)
TikTokやInstagramなどのSNSは、美男美女の自撮り写真などで埋め尽くされ、カメラのフィルターはますます高性能になり、小顔・美肌・削除機能…など、まるでフィルターを通した顔が理想であるかのように映ります。
「美しさの基準は多様だし、ありのままでも素敵だよ」
「多様性」が声高に叫ばれる時代、こんな意見も聞こえて来そうですが、今の時代に生きる私たちが「見た目なんて気にせず生きていこう」などと言う方が難しいのです。
美人な親から一度も「可愛い」と言われなかったキム・モミ。同じく容姿をバカにされ、名前をからかわれたキム・チュネ。誰も振り向いてくれなかったのに、整形したらウソのように注目してくれた。好きな人が相手にしてくれた。
見向きもしなかった男性たちが自分に注目している。でもそれは、本人の想いなんて気にしないような「性的な目線」なのです。
『マスクガール』を振り返ってみると、男性の存在感が圧倒的に薄いことに気づきます。物語の起点となるのが男性たちに原因があるにもかかわらず。
男性同士が争う場面は一切ないにもかかわらず、反対に女性同士は激しく争います。しかも彼女たちは男性からレイプや腹を殴られたりするのです。
「愛されたい」「子供を守りたい」それぞれが渇望するものを求めて対峙していく。その負の波は、無実な者たちにまで及んでいきます。
その欲求を深掘りしていくと、「女性は美しくあるべき」「母親は子供のためならなんでもする」というような、社会の抑圧の犠牲にほかならないのです。