外交も夫婦関係も、綱渡り。
Netflixオリジナルシリーズ『The Diplomat/ザ・ディプロマット』は、国際政治の最前線で繰り広げられる人間ドラマを、リアルに描いた作品だ。
主人公ケイト・ワイラーは、アメリカ駐英国大使としてロンドンに赴任するも、英国空母の爆撃攻撃により、同盟国の裏で渦巻く策略と虚飾の中に放り込まれる。主演は『ミッション:インポッシブル3』『ジ・アメリカンズ』のケリー・ラッセル。
本記事では、シーズン1の全エピソードを結末までネタバレありで解説。国際情勢の緊張感と、その狭間で揺れる人間ドラマをじっくりと読み解いていく。
ネタバレあり
以下では、Netflixドラマ『ザ・ディプロマット』シーズン1の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
第1話:シンデレラストーリー
物語は、英国の空母が爆発し、41名の海軍士官が死亡する衝撃的な事件から始まる。
アメリカ政府はこの事件を重大な国際問題と受け止め、誰が背後にいるのかをめぐって緊張が高まっていた。ケイト・ワイラー(カリー・ラッセル)は中東外交のエキスパート。次の赴任地としてアフガニスタンのカブール大使館を予定していたが、突如として大統領から駐英の米国大使への任命を受ける。
本来なら名誉あるポストだが、彼女にとってはまったく想定外だった。しかもその任命には政治的な思惑が絡んでいた。ホワイトハウスの首席補佐官ビリーは、ケイトを副大統領候補として試す目的もあったのだ。
夫のハル(ルーファス・シーウェル)は元外交官で、かつてはホワイトハウスの要職にいた人物。二人はロンドンの大使公邸〈ウィンフィールドハウス〉に到着するが、ハルは自分の立場を失った現実に苛立ちを隠せない。
ロンドン到着後、ケイトは英国流の“外交儀礼”の嵐に巻き込まれる。ティータイムの作法、ドレスコード、馬車での移動練習…。戦地外交を得意とする彼女には、こうした形式主義が退屈で仕方がない。とはいえ、英国内での印象作りも「任務の一部」として受け入れるしかなかった。
そんな中、CIAロンドン支局長のエイドラ(アリ・アン)は、爆破事件の捜査を進めていた。状況証拠から、イランの関与が示唆されるが、確証はない。それでもアメリカ大統領はすでにイランの首都・テヘランへの空爆を検討しており、世界は再び危険な瀬戸際に立たされる。
ケイトは英国外務大臣デニソン(デヴィッド・ギャシー)と会談し、英国首相ニコール・トロウブリッジ(ロリー・キニア)へのブリーフィングに同席することになる。首相は保守的で独善的なタイプ。「アメリカは口を出さず、我々に任せてほしい」と言い放つが、ケイトは黙って従うことを良しとしない。
その裏で、アメリカ国務長官ギャノンはケイトを疎ましく思い、CIAに“承認手続きを遅らせる”よう指示していた。彼女がロンドンで力を持つことを、政治的に警戒していたのだ。
事件の対応に追われながらも、ケイトとハルの関係には深い溝がある。ハルは自分が政治の表舞台から外れたことに不満を抱き、彼女の任務に介入しようとする。一方で、ワシントンではケイトを「副大統領候補にふさわしいか」見極める動きが進んでいた。本人はその計画を知らないまま、外交の最前線で試されていく。
ケイトとハルが英国の儀式用馬車での撮影を終えた後、金髪の女がハルに近づき、彼を車に乗せて薬を注射。そのままハルは連れ去られてしまうのだった。
第2話:誘拐と呼ぶなかれ
ハルは見知らぬ場所で目を覚まし、手錠をかけられていた。やがて電話口から現れたのは、イラン外務副大臣のラソール・シャヒン。彼はハルとケイトの旧知の人物で、かつてジュネーブで共に外交交渉に携わっていた。シャヒンが伝えてきたのは、「イランは空母の爆破事件に関与していない」というメッセージだった。
さらに彼は、アメリカの退役将軍ブラッドフォード・サイメス暗殺計画が存在していたことを告白。しかし、それを実行すれば爆破事件との関連が疑われるため、計画は中止になったという。「もし米英がイランを攻撃すれば、それは一方的な侵略行為と見なされる」とシャヒンは警告した。
その後、ハルは無事解放され、ロンドンの大使公邸へ帰還する。ケイトやCIA支局長エイドラ、米国公使スチュアートらが対応にあたるが、ケイトは慎重に「この情報はCIAで精査されるべき」と釘を刺す。
夜、ケイトはハルの部屋を訪れ、事件の経緯を再確認する。シャヒンの電話がテヘラン発である以上、相当な権力者の関与があると分析する一方で、ケイトの胸には「ハル自身が仕組んだ可能性」という疑念も生まれていた。しかしハルはこれを強く否定する。
翌日、ケイトはCIAの報告を受け、さらに情報を求めてベイルート大使館の知人・ダニーに連絡。シャヒンとイラン国家安全保障会議との関係を探ろうとする。
その頃、英空軍基地〈ブライズ・ノートン〉では、戦死した兵士たちの葬儀が行われていた。首相トロウブリッジは追悼演説で「犯人を必ず裁く」と誓うが、遺族の一人から「臆病者」と罵られる。
「なぜイランの名前を出さないのか」と糾弾された首相は、感情的に「もしイランが関与していたなら、厳しく報復する」と口走ってしまう。その発言はすぐさまSNSで拡散し、国内は一気に緊張。イスラム系市民へのヘイトクライムまで発生してしまう。
この状況を受けて、エイドラは「ハルのもたらした情報を早くワシントンに報告すべき」と進言するが、ケイトは「裏取りが先だ」と譲らない。スチュアートは「ケイトは夫に嫉妬しているのでは」と疑うが、彼女は過去のアフガニスタン任務で“ハルの情報が誤っていた”事例を語り、慎重さの理由を明かす。彼女にとってハルは、信頼と不信の狭間にある存在だった。
そんな中、アメリカ大統領がベルリン訪問の途中でロンドンに立ち寄る予定が浮上する。首相と大統領が並んで会見すれば、「イラン敵視」のメッセージになると懸念したケイトは、ワシントンの知人キャロルに連絡を取り、裏を取る。そこで判明したのは「ハル自身がローマを経由してイラン副大臣に連絡を取っていた」という事実だった。
激怒したケイトは、国務長官ギャノンのもとへ直行し、「大統領の訪英は中止すべき」と訴える。だがギャノンは「中止はしない」と一蹴。ケイトはついに「ハルが誘拐を装って情報を流した可能性がある」と打ち明ける。それでもギャノンは冷淡に、英国首相への圧力は“ケイトの仕事だ”と突き放す。
その夜、アメリカ大使公邸にアメリカ大統領が到着。緊張が漂う中、ケイトはハルを激しく責め、「もう一緒にいるべきではない」と突き放す。しかしハルは離婚はできないと伝え、衝撃の一言を残す。「副大統領が辞任し、君が次の副大統領候補になるんだ」と。
第3話:暗闇の子羊
ケイトは動揺を隠せぬまま、アメリカ大統領ウィリアム・レイバーンを迎える。ハル、スチュアート、ビリーが集まり、ケイトが副大統領候補に挙がった件で短い密談が交わされる。ケイトは必死に職務に集中しようとするが、頭の片隅には現実が重くのしかかっていた。
大統領は、英国首相トロウブリッジと共同記者会見を開き、“連帯”をアピールしたいと提案する。だがケイトはそれを強く止める。「証拠がない今、米英が並んで発表すれば“イランへの攻撃宣言”と受け取られかねない」と。
ケイトの慎重な説明は軽くあしらわれるが、ハルが割って入り、大統領を説得。再びハルが「場を救う」形となり、ケイトは複雑な思いを抱く。
外務大臣デニソンに会ったケイトは、緊張を和らげるため「両首脳の夕食会だけにとどめましょう」と提案。しかしデニソンは「首相が弱腰に見えるのは避けたい」と抵抗する。結局、形式的な会談だけにすることで妥協するが、ビリーは不安を隠せない。
一方、ハルを通じたイラン副外相ラソール・シャヒンの“裏ルート”情報も進展する。そのやり取りの中で、現副大統領グレース・ペンが財務不祥事で失脚寸前であることが判明。新たな副大統領候補として、複数の女性政治家の名前が挙がるが、彼女たちはいずれも将来の大統領選を狙う野心家だ。
そこで、“安全牌”としてケイトの名前が浮上したのだ。彼女は派閥を持たず、誰にとっても脅威ではない。まさに“都合のいい候補”だった。
CIA支局長エイドラは、ケイトが前回GCHQ(英政府通信本部)経由で情報を入手していたことを知り、スチュアートに報告。「CIAの領域に踏み込んだ」として彼女を批判する。ケイトは非を認め、英米諜報機関の関係を悪化させないために謝罪する。
だが、問題はハルだった。イランが防衛のために部隊を沿岸に移動しているという報告を受けたケイトは、「ハルが勝手にシャヒンへ連絡を取ったせいで、情報の信頼性が失われた」と怒りを爆発させる。彼の“外交的な軽率さ”が、米英関係をさらに悪化させていた。
英国首相トロウブリッジは「海軍力を誇示せよ」と命じ、イラン近海に艦隊を派遣。しかしデニソンは裏でケイトに「これは首相の政治的パフォーマンスだ」と打ち明ける。イラン側から見れば“宣戦布告”にもなりかねない危険な挑発だった。ケイトはすぐにビリーへ報告し、「アメリカ艦隊の出航を止めてほしい」と訴える。
一方で、CIAの分析官たちはシャヒンの命が危険であることを察知。彼は“イラン外交のリベラル派”として、米英との対話を維持できる数少ない存在だった。もし彼が消されれば、戦争は避けられない。
そんな中、ビリーとスチュアートはケイトに直接「副大統領に立候補してほしい」と告げる。「国のために。権力のためじゃない」というビリーの言葉に、ケイトは心を揺らす。派手なキャンペーンも不要、実績で選ばれる。彼女なら女性政治家たちの反感も買わない、と。
その後、ケイトはハルを庭に呼び出し、自分が候補に挙がった理由を問い詰める。ハルは「君が第一候補じゃなかった」と口を滑らせ、ケイトとの離婚を回避するためだったと告白。ケイトは怒りに任せて彼を殴り、地面に押し倒す。
その後、ケイトは大統領レイバーンに直談判。「今、軍を動かせば、アメリカ人の命が危険にさらされます」と訴える。そして、辞任覚悟で伝えたのは、元コッズ部隊(イラン革命防衛隊)司令官サマン・カリミ。イラン最強の報復者の存在だった。「彼が動けば、戦争になる。」
ケイトは最後に、大統領自身の言葉を引用して諭す。その言葉に打たれたレイバーンはビリーを呼び、「艦隊の出航を止めろ」と命令。ケイトは危機を回避し、辞任も撤回されたのだった。
第4話:帽子を買う
CIAロンドン支局長エイドラがケイトに報告を持ってくる。「英国政府がイラン在住の自国民に退避勧告を出し、不要不急の職員らを大使館から撤収させる可能性がある」とのニュースだった。表向きは安全確保のためだが、実際には首相トロウブリッジが「イラン脅威論」を煽り続ける狙いがある。米英関係は再び不穏な空気に包まれる。
スチュアートは「今夜の英国ガラでこの件を持ち出すべきだ」と助言。だが、ケイトは「エイドラの情報は早計」として慎重な姿勢を崩さない。一方、アメリカ政府は“貿易に関する声明”を発表し、イラン側に通信ルートを開かせる作戦に出る。
外交の駆け引きが続く中、ケイトの心の中では別の葛藤が渦巻いていた。副大統領になるという話を受けることは、ハルと“政治的にも”縁を切れなくなるということ。彼女にとって、それは避けたい未来だった。
夜、ケイトとハルは不本意ながらも揃ってガラパーティーに出席する。トロウブリッジ首相は演説で「アメリカの方針転換」を挙げ、実質的にケイトを皮肉る。米英関係は険悪ムードだ。
その後、ケイトは外務大臣デニソンが独断でイラン大使を呼び出したと聞かされ、腹を立てる。しかし本人に確認すると「そんなことはしていない」と否定。そこでケイトは、イラン側が「接触の口実を作るため」にあえて“デニソンが呼んだ”という噂を流していたことに気づく。つまり、イランが密かに交渉を望んでいるのだ。
ケイトはエイドラと協議のうえ、デニソンにイラン大使を正式に召喚させることを提案。慎重を期するため、ケイト自身も会談の場に同席することになる。さらにCIAはケイトの服に小型カメラを仕込み、“証拠映像”を残す計画を立てた。ケイトはデニソンのもとを訪ね、偶然を見せかけて接触し、同席することを説得する。
その後、イラン大使ハジャールが外務省に到着。ケイトの同席に不快感を示すも、デニソンが「彼女が状況を鎮めた」と説明して説得する。重い沈黙の後、大使は一枚のメモを渡した。そこには、〈ロマーン・レンコフ〉という名前が記されていた。
レンコフはロシアの傭兵であり、英国空母爆破事件の資金提供者。つまり、イランはロシアの“隠れ蓑”にされたのだ。しかしイランはロシアとの貿易関係に依存しており、何もできない。ハジャールはそう明かした直後、突然苦しみ出し、その場に倒れ込む。救急隊が駆けつけたものの、ハジャールはすでに死亡していた。
ケイトは即座に判断し、ハジャールが部屋で死んだと知られてはいけないとデニソンに伝える。明らかになれば戦争になりかねない。
ハッジャールの死後、ケイトとデニソンはオフィスで酒を酌み交わし、沈黙の中で互いの無力さを噛みしめる。やがてデニソンがワインをこぼし、それを拭こうとしたケイトと視線が交わる。一瞬、唇が触れそうになるほど接近するが、2人は慌てて距離を取る。
その夜、ケイトは帰宅し、無言のままハルを寝室に招き入れると、衝動的に体を重ねる。一方その頃、エイドラはMI6に連絡を入れた。「ロシアが関与している」と。
第5話:野犬捕獲人
アメリカ大統領レイバーンは、英国首相トロウブリッジと戦略会談を行うため、英国の公邸〈チーヴニングハウス〉へ向かう予定だった。しかしスチュアートは「そんな軽率な訪問は危険すぎる」と主張。エイドラの協力を得てホワイトハウス側に働きかけ、大統領の訪問を一時的に中止させることに成功する。
ケイトとハルは身体的には再接近したものの、心の距離は埋まらない様子だ。その後、ケイトは英国公邸へ向かう途中、警備上の理由で車列が一時停止。イラン大使死亡事件の余波がまだ収まっていないため、入念な安全確認が行われる。その間、スチュアートはケイトに今回の会談の議題コードを説明する。議題は3部構成だ。
- Hug(ハグ):米英の結束をアピールするための象徴的演出。
- Pivot(ピボット):イラン疑惑からロシア問題へ焦点を移す。ただし「謝罪」は絶対に避ける。
- Bear(ベア):ロシアへの対応策。
つまり、米英関係を守りながらも、ロシアに舵を切るための外交だ。現地に到着したケイトは、外務大臣デニソン、政策顧問たち、そしてデニソンの妹セシリアと対面する。セシリアは最初、夫人かと思われたが、実は外交の裏で兄を支える存在だった。彼女はハルを案内し、庭園を回るなど穏やかな時間を過ごす。
会議が始まると、デニソンは議題の順序を入れ替え、最初にイラン問題を取り上げると提案。「イランの潔白を早急に公表すべきだ」という意見に、ケイトも同意する。しかし「ロシアの名を出す」ことには慎重であるべきと主張した瞬間、ケイトは“ハジャール大使死亡事件”について触れてしまう。
デニソンはケイトを別室に呼び、失言を指摘すると、さらに「英国は、アメリカとの“従属関係”を終わらせたいと考えている」と伝える。ケイトは驚きながらも、英国の外交的孤立を警告するが、デニソンは固い表情だ。
会議が再開されると、そこへ突然、「首相が近くまで来ている」との連絡が入る。やがてスポーツカーで現れたトロウブリッジは、上機嫌に会議室へ入ってくるやいなや、「議題をロシア一本に絞れ」と命令。自らの“強硬派イメージ”を世論にアピールしたいことが狙いだった。
ケイトとデニソンは外交的抑制を訴えるが、首相は聞く耳を持たない。ケイトとデニソンは経済制裁やエネルギー制限など複数の外交案を提示するが、首相はすべて却下。「ロシアのウクライナ侵攻を見ろ。制裁など何の抑止にもならん」と吐き捨て、自分だけ昼食を取り、「食う暇も惜しんで戦略を練れ」と言い放つ。
その裏で、デニソンはエイドラとビデオ会議を行い、ハジャールの死亡時刻と死因を確認。毒物検査の結果、死因は心臓発作と判明する。ひとまず胸を撫で下ろすが、「ケイトが国防総省に“ロシア爆撃の標的リスト”を問い合わせていた」ことを告げられる。
デニソンは慌てて会議室に駆け戻るが、首相の勢いに負けじとケイトは提案してしまう。「標的リストからどれか一つ選んで爆撃してみますか。」
第6話:激しい竜巻
外務大臣デニソンをはじめ、閣僚たちは混乱していた。国防大臣に報告が入り、計画が検討され始める。ケイトは焦りを隠せず、「首相をなだめるための方便のつもりだった」と釈明。しかし、もはや火はついてしまった。
その夜、ケイトはハルに自分の過ちと経験の浅さを吐露する。見かねたハルは彼女をキッチンへ誘い、公邸の食事を密かにつまみ食いする。すると、首相トロウブリッジがその場に現れる。
ワインを3本抱えたトロウブリッジはケイトとハルを酒に付き合わせる。首相は次第に酒の勢いで本音を漏らし始める。「ドイツがポーランドを侵攻してから、ロンドン陥落まで1年だった。ロシアによるウクライナ侵攻の後は我々の番だ。」
第二次世界大戦を引きずるような例え話に、ケイトは「ロシアを攻撃すれば核戦争になる」と諭すが、トロウブリッジは“英雄的決断”という幻想に取り憑かれていた。
その後、ケイトとハル、スチュアート、デニソンらは徹夜で代替案を模索する。スチュアートはエイドラに協力を求め、ロシアの潜水艦が英海岸付近をうろついている情報を得る。戦争のリスクは、もはや現実になりつつあった。
翌朝、ケイトは新しい戦略案をまとめ上げ、デニソンを通じて首相を説得しようとするが、トロウブリッジは即座に拒否。そして彼は正当な爆撃として「アレッポ、ラッカ、ハマの三角地帯」を主張する。
中東外交の経験があるケイトは、首相は地名の発音を間違えたことに気づき、その案の裏に誰かの指示があることを推理する。その後、ハルの案内でデニソンの妹セシリアに会うと、彼女は公邸の近くに元側近のマーガレット・ロイリンの家があることを明かす。
さらにセシリアは、かつて首相候補だった兄デニソンが、ロイリンによってスキャンダル記事を出されて流れたことを明かす。ケイトは米国務長官ギャノンの空港出迎えがあったが、それをハルに託し、即座にロイリンの屋敷へ向かう。
ロイリンはケイトの訪問を受け入れると、英国空母爆撃計画が自分の提案であることをあっさり認める。彼女はその背景に、イギリスのEU離脱後の流れでスコットランド独立の動きが高まり、それに続く国の分裂が危ぶまれていると説明する。そこで、「外敵がいれば、国は団結する」それが彼女の論理だった。
その頃、公邸ではケイトを待つ間、デニソンとハルが議論する。ハルは爆破事件の首謀者レンコフに報復する形で、ロシア攻撃案を挙げるが、デニソンは「防衛目的でなければ合法的な攻撃理由とはならない」と慎重に伝える。
するとハルは「リビアがレンコフと交戦中で、支援要請をしている」と、“合法的な反撃”の道筋があることを示唆する。しかしエイドラはこれに反対。「まだロシアの関与は確定していない。焦れば取り返しがつかない」と訴える。
やがて首相はこの案を承認するが、ギャノンは拒否。ケイトとハルはこれに疑念を抱く。ハルはスチュアートにエイドラを通じて調査させ、ギャノンがワシントンからの道中で名誉博士号を受賞するためにサウスカロライナに立ち寄っていたことが発覚。ケイトとハルはギャノンが次期大統領になるための策略を練っていると考える。
一方、スチュアートとエイドラは、自分たちの関係を公表する決意をする。それを聞いたセシリアはケイトと同様に仕事と恋愛の「激しい竜巻」の中にいるようだと表現する。
そんな中、ギャノンはレイバーン大統領から電話を受け、リビアへ出動の計画を承認したことを知らされる。
第7話:敵は近くに置いておけ
ケイトとハルは久しぶりに穏やかな時間を過ごす。ケイトは冗談めかして、自分の成功の“影”に回ることをどう思うか尋ねる。外交官としてのハルは決して凡庸ではない。彼の柔らかな交渉術や人心掌握力は、ケイトの強すぎる正直さを補ってきた。しかし同時に、ハルは“沈黙する伴侶”にはなれない男でもある。ケイトも、彼が必要だと感じながら、同時に彼を手放したがっていた。
一方で、エイドラとスチュアートの関係も揺れていた。エイドラは「ロシアの件が片付くまで、関係を公表するのは控えたい」と告げるが、スチュアートは冷たく反発。エイドラの職業倫理とスチュアートの感情がぶつかる。
その日、ケイトはロシア大使オレグ・バラキンとの公式会談に臨む。米英の“裏ルート”がすべて封鎖された今、正規の外交ルートで接触するしかないのだ。目的は、ロシアの民間傭兵組織〈レンコフ・カンパニー〉に関する情報、そして「英国はリビアに向かう。アメリカの承認も得ている」と伝える予定だった。
オレグとの会談が始まると、彼はケイトの前で、激しくアメリカを非難する演説を始める。しかし、それは“演技”だった。彼は話し続けながら場所の書かれた紙片をそっと差し出す。
ケイトは会談を続けるふりをし、密かにその場所へ向かう。するとそこにいた女性は「レンコフには娘がいる。10日後にフランスの別荘で3日間滞在する予定だ」と伝える。つまり、ロシア側がレンコフの居場所を差し出したのだ。
ケイトが室内へもどると、オレグは見事な演技で演説を続けたまま会談を終わらせる。すぐさまケイトはエイドラ、スチュアートを呼び、ロシアがレンコフの情報を渡した理由につちえ緊急会議を開く。それは罠なのか、それともロシアは本当に無関係なのか。
「もしロシアが本当に関与していないなら、誰がレンコフを雇ったのか?」
エイドラは「この件は大統領に直接報告すべき」と提案し、ケイトも同意。ワシントン行きが決まる。
一方その頃、ハルはホワイトハウス首席補佐官ビリーに呼び出されていた。話題はケイトの副大統領就任の件だけではなかった。国務長官ギャノンが大統領レイバーンに解任されたと知らされる。ハルはすぐにケイトに知らせる。彼女はギャノンを好ましく思っていなかったが、キャリアを終わらせるつもりはなかったため、複雑な気持ちだ。
ホワイトハウスでは、すでに「ロシアの情報は正しい」と結論づけられていた。ケイトはレイバーン大統領に説明を試みるが、議論の余地はなく、会議は終わってしまう。
会議後、ケイトはかつての同僚ジルと会い、カブール大使館の現状を聞く。彼女が築いた秩序は崩れ、現地の人員は散り散りになっていた。一方、ハルも旧友ルイスと食事をしていた。「ギャノンの後任、次の国務長官は君かもしれない」と言われると、笑って否定しながらも、まんざらではない表情を浮かべる。
イギリス帰国後、ケイトはトロウブリッジ首相から緊急呼び出しを受ける。米英合同の“緊張緩和”方針、レンコフの逮捕に激怒し、ケイトは「英国の立場は損なわれていない」と説明するが、首相は納得しない。
大使公邸に戻ったケイトは、疲れ果てた様子でハルに愚痴をこぼす。電話でデニソンに相談しようとするが、「今夜はやめておこう。明日にしよう」とハルが静かに止める。二人はベッドの両端に座り、無言のまま俯く。
第8話:ジェームズ・ボンド条項
デニソンはケイトに「トロウブリッジがレンコフ逮捕を承認した」と知らせる。つい昨日まで“ロシア人を爆撃せよ”と喚いていた男が、急に態度を変えたのだ。ケイトとデニソンは同時に疑念を抱くが、デニソンはフランス政府と協議すると伝える。
ロンドン大使館では、ケイトはスチュアートからパリに同行するように指名されたことを報告される。副大統領候補としてのケイトの名が、いよいよ現実味を帯びていた。
一方、エイドラは、ホワイトハウスのビリーから連絡を受け、「ケイトが重要なポスト候補に入った今、CIAは夫であるハルを一切の作戦に関与させられない」と伝えられる。その後、彼女はスチュアートからケイトが副大統領候補であることを知る。
それによりスチュアートは彼女の補佐官を務めることが示唆されるが、エイドラは自分のときは引き止めておきながら嬉々として話すスチュアートに対し、関係の終わりを告げる。
ケイトがハルにパリ出張のことを話すと、てデニソンと二人で行くと聞き、あからさまに不機嫌になる。ハルは嫉妬と時間を持て余しているようだ。ケイトは自分の代わりにチャタムハウス(英国のシンクタンク)での演説を依頼する。
チャタムハウスでの演台に立ったハルは熱弁を振るい、好印象を勝ち取る。すると講演後、保守党議員メリット・グローヴが近づき、会談を求める。
その頃、ケイトとデニソンはフランスの内務大臣フルニエと会談。フランス側は「ロシアとの関係を悪化させるだけ」とレンコフ逮捕への協力に反対する。ケイトとデニソンは、夜のパーティーでもう一度説得を試みようと昼食へ向かう。
すると食事中、ケイトにハルから電話が入り、グローヴとの会談を知らされる。ケイトは自分が出席予定だった講演で接触してきた議員と会談しようとしているハルに対し、国務長官の座を狙っていると判断し、怒りをあらわにして叱責する。
夜、パリの外交晩餐会。ケイトはフルニエを再び説得しようとするが、彼女の口から衝撃の事実が告げられる。
「英国側はフランス警察によるレンコフの逮捕ではなく、イギリス特殊部隊による暗殺を計画している」と。
それを知ったケイトはすぐさま外に飛び出し、デニソンを問い詰める。するとデニソンは「そんな計画はない」と動揺する。彼はそれがもし現実であれば大臣である自分の許可も必要だと訴え、スマホを取り出し、連絡がないことを確認する。するとケイトは反射的にデニソンのスマホを奪い、音楽で通信を遮断しようとして放り投げる。
「レンコフが死んで得をするのは、彼を雇った側だけ。」つまり、それは英国首相ニーコル・トロウブリッジこそが、レンコフを雇った張本人であることを意味していた。
同じ頃、ロンドンでは、ハルの代わりにスチュアートとロニーが保守党議員グローヴと会う約束を引き継ごうとしていた。しかし、ハルは「5分だけ面会したい」と食い下がる。
ロニーがハルの代わりに行使スチュアートが引き継ぐことをグローヴに伝えると、グローヴは「ハル本人としか話さない」と言い張り、車へ向かう。ロニーはグローヴを追いかけ、そこにハルとスチュアートも現れる。すると、グローヴが車のドアを開けた瞬間、轟音とともに車が爆発する。
Netflixドラマ『ザ・ディプロマット』作品情報
シーズン1
シーズン2
シーズン3

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新たに英国駐在の米国大使に就任したケイト・ワイラーは、国際危機の収拾に尽力し、戦略的同盟を構築し、脚光を浴びる新たな立場に適応していく。同時に、同じくキャリア外交官である夫ハル・ワイラーとの悪化しつつある結婚生活にも対処する。
制作 | デボラ・カーン |
キャスト | ケリー・ラッセル ルーファス・シーウェル デヴィッド・ジャーシー アリ・アン ロリー・キニア アトー・エッサンドー |
話数 | シーズン1 全8話 シーズン2 全6話 シーズン3 全8話 |
製作年 | 2023年〜 |
製作国 | アメリカ |
配信 | Netflixでみる |