Amazonオリジナルドラマとして“最高の評価と視聴率”を記録した海外ドラマシリーズ『ザ・ボーイズ』。
このシリーズは、従来のスーパーヒーロー作品に一石を投じる革新的なシリーズで、アメコミの典型的なヒーロー像を覆し、彼らの裏の顔や人間性を大胆に描くことで、現実社会の問題を浮き彫りにしています。
物語は、超人的な力を持つ"ザ・セブン"を率いる巨大企業ヴォート社と、彼らの腐敗に立ち向かう一般人集団"ザ・ボーイズ"との対立を中心に展開されます。
本記事では、『ザ・ボーイズ』シーズン3を全話ネタバレありで詳しく解説。
前シーズンなどは以下の記事で詳しく解説しています。
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『ザ・ボーイズ』シーズン3では誰が死んだ?
物語上、重要な人物で、『ザ・ボーイズ』シーズン3で死亡したキャラクターは以下の通り。
死亡したキャラ(話) | 役柄・死亡した原因 |
---|---|
トニー(第1話) | ヴィクトリア・ニューマン(ナディア)の親友で、かつて彼女と一緒にレッドリバー研究所にいた。レッド・リバーでの出来事を公にしようとニューマンに訴えるが、彼女に断られ、能力で爆殺される。 |
ストームフロント(第2話) | ヴォート社創設者フレデリック・ヴォートの娘で、元セブンのメンバー。シーズン2以降、ヴォートタワー内で生命維持装置をつけたまま生きていたが、ホームランダーの誕生日に自ら舌を噛みちぎって自殺する。 |
ガンパウダー(第2話) | ペイバックのメンバーで、銃使いの達人。ソルジャー・ボーイについて聞き出そうとするブッチャーと対峙し、時効性Vを使ったブッチャーの目から照射されたレーザービームで頭を切り落とされて死亡。 |
スワットー(第3話) | ペイバックのメンバーで、昆虫のような翼を持っている。1984年のニカラグアで、敵に見つかる原因を作り、逃げ出そうとするがロシア兵のミサイルを直撃して死亡。 |
スーパーソニック(第4話) | スターライトの幼なじみで元恋人。セブンに加入し、スターライトの打倒ホームランダー計画に協力しようとするが、Aトレインがその計画をホームランダーに伝えたことで、ホームランダーの手で惨殺される。 |
クリムゾン・カウンテス(第5話) | ペイバックのメンバーで、ソルジャー・ボーイの元恋人。両手から火の玉を作ることができる。ザ・ボーイズに拘束された後、復活したソルジャー・ボーイと再会するが、自分を含めたペイバックが全員ソルジャー・ボーイを嫌いだったことを打ち明けた後、彼のエネルギー放出によって死亡する。 |
TNTツインズ(第6話) | ペイバックの双子メンバー。2人が手を握ることで電気エネルギーを生み出すことができる。ヒーローガズムを主催していたが、やってきたソルジャー・ボーイのエネルギー放出によって、パーティー会場の多くのスーパーヒーローらと共に死亡する。 |
ブルーホーク(第6話) | 白人至上主義者のスーパーヒーロー。無防備な黒人男性を殺したことで非難を浴びる。Aトレインの提案で黒人コミュニティに対して形式的な謝罪を行うが、そこで再び暴れてしまい、Aトレインの兄ネイサンを半身不随にしてしまう。 ヒーローガズムの一件後、兄の復讐をするためにやってきたAトレインによって、足を掴まれたまま高速で道路を引きずり回されて死亡。 |
ターマイト(第6話) | 体を縮小することができるスーパーヒーロー。ブッチャーにコカイン漬けにされて捕まるが、その後釈放され、ヒーローガズムに参加していた。しかし、やってきたホームランダーに踏み潰されて死亡する。 |
レニー・ブッチャー(第7話) | ビリー・ブッチャーの弟。父親の暴力から兄弟で耐えていたが、ブッチャーが入隊のために家を出ると、兄に捨てられたと思い、拳銃で自殺する。 |
マインドストーム(第7話) | ペイバックのメンバー。双極性障害を持ち、周囲の人の心を読むことや目を合わせた人間を夢の中に閉じ込める能力を持つ。ブッチャーを夢の中に閉じ込めるが、ヒューイの説得で解除する。しかし裏切り者を探すソルジャー・ボーイに盾で頭を潰されて殺される。 |
ブラック・ノワール(第8話) | セブンのメンバー。ホームランダーがソルジャー・ボーイの息子であることを知りながら隠していたことで、ホームランダーに内蔵を引きずり出される。(恐らく死亡した?) |
ラマー・ビショップ(第8話) | 上院議員で副大統領候補。ホームランダーとニューマンが同盟を結んだことで、ホームランダーの命令でディープが自宅のプールに沈めて溺死させる。 |
第1話「ペイバック(Payback)」
©Amazon Studios
前シーズンのラストから1年後
ヴォート社製作の映画『セブンの夜明け』のシーンで、ホームランダーはストームフロントを「ナチのクソ女」と呼び、セブンとともに彼女に立ち向かう。監督のアダム・バークとセブンのメンバーたちは、ワールドプレミアの会場で映画の公開を見届けていた。
ヴォート社CEOのスタン・エドガーは下院議員で能力者管理局(FBSA)の局長であるヴィクトリア・ニューマンと一緒にメディアの取材を受け、管理局からの監視を受け入れることを表明する。そんな中、観客の一人の男性がニューマンに向かって「ナディア」と呼びかけており、ヒューイはそれを不思議に感じていた。
ホームランダーは、各メディアからナチスであるストームフロントと付き合っていたことについて質問攻めされ、「恋する相手を間違っただけだ」と答える。
アダム・バークとアシュリーがトイレでセックスした後、トイレにやって来たヒューイの前にブッチャーが現れる。ブッチャーはある能力者が参加するパーティーへの潜入許可を求め、ヒューイは問題を起こさない条件でそれを許可する。
その後、フレンチーとキミコがパーティー会場に潜入し、隠しカメラを通じてブッチャーが監視していた。彼らのターゲットは、身体を収縮することができる能力者ターマイト(ターマイトは「シロアリ」の意味)。
ターマイトはコカインを吸いながら、セックス相手の男性のペニスの中に飛び込み、彼を刺激する。しかし、彼は思わずくしゃみをしてしまい、元のサイズに戻る反動で男性を爆殺してしまう。
部屋に駆け込んできたフレンチーはその光景を目撃し、ターマイトから攻撃を受ける。駆けつけたキミコも応戦するが、苦戦しているところにブッチャーが現れ、ターマイトをコカインの入った小袋に捕獲する。ブッチャーは彼を殺そうとするが思いとどまり、管理局に報告するように指示する。
時効性コンパウンドV
この一年、ヒューイとスターライトは一緒の部屋で幸せに暮らしていた。ヒューイは能力者管理局に勤務し、ニューマンとともにスーパーヒーローたちの活動を監視・規制する仕事を務めている。
ブッチャーは、グレイス・マロリーの保護下にあるライアンを訪ねる。2人はテーブルゲームの「コネクト・フォー」で遊びながら会話し、ライアンは父ホームランダーに殺される夢を見たことを明かす。
ホームランダーはヴォート社のニュース番組に出演するためにスタジオにやってくると、自分よりも先にディープがインタビューを受けていたことを知り、不満を伝える。ディープは自身の自伝『Deeper』の新刊出版のためだと言うが、ホームランダーに問い詰められると、それが不適切だったことを認める。ホームランダーは番組内で再びストームフロントとの関係について問われ、「体はスーパーヒーローだが、心はみんなと同じ人間だ」と答える。
マザーズ・ミルク(M.M.)は娘ジャニーヌの10歳の誕生日パーティーに出席し、元妻のモニークと再会する。彼女は現在、トッドという男性と付き合っている。
エドガーは国防長官のロバート・シンガーに、投与すれば24時間特殊能力を得ることができる時効性コンパウンドV「V24」の説明をする。彼はV24を軍隊で使ってほしいと提案するが、シンガーは難色を示す。
セブンの共同リーダー
ニューマンはヒューイに、ターマイトが釈放されてリハビリ施設に行くことになり、代わりにB級ヒーロー能力者数人を起訴することになったと明かす。ヒューイはそれをブッチャーに伝えると、ブッチャーはターマイトを野放しにしたことに激怒する。
その後、エドガーはホームランダーとスターライトを会議室に呼び出し、スターライトがヴォート社のイメージ改善に尽力したことを評価し、彼女をセブンのホームランダーとの共同リーダーにしたいと伝える。ホームランダーは動揺して異を唱えるが、エドガーはストームフロントの一件後、ホームランダーの支持率が落ちていることを指摘し、共同リーダーがホームランダーにとっても助けになると主張する。
ヴォート社の番組「アメリカン・ヒーロー」では、新たなセブンメンバーが最終選考の3人から選出されようとしていた。その1人であるスーパーソニックは、スターライトの元恋人であり、かつて「ドラマー・ボーイ」という人気アイドルバンドのメンバーだったことが伝えられる。ヒューイは撮影現場を訪れ、2人が仲良さそうにしている様子に神経質になる。
スターライトは、共同キャプテンの提案についてヒューイに意見を求める。彼女は、自分に憧れる女の子たちの見本になりたいと言うが、ヒューイは、ホームランダーに殺されるかもしれないという不安を伝える。しかしスターライトは結局、共同リーダーのポジションを引き受けることに決める。
一方、ホームランダーはスターライトが共同リーダーになったことに明らかに機嫌を悪くし、偶然すれ違ったAトレインに当たり散らす。その様子を陰から見ていたクイーン・メイヴは、ブッチャーに「会う必要がある」とメッセージを送る。
ヴォート社の病室では、両足と片腕を失い、ひどく火傷を負ったストームフロントの姿があった。ホームランダーは彼女に共同リーダーへの不満を吐露し、彼女から性的なマッサージを受けて慰められるが、ストームフロントがアーリア人至上主義軍隊を作る理想を伝えると、ホームランダーは「支配種族はどうでもいい、私が支配者だ」と一蹴する。
ホームランダーを殺す方法
メイヴはザ・ボーイズのオフィスに現れ、ブッチャーにソルジャー・ボーイのファイルを渡す。彼女はソルジャー・ボーイが秘密兵器「BCLレッド」によって殺されたことを明かし、それを見つけることができれば、ホームランダーを殺すこともできるかもしれないと伝える。彼女は、ソルジャー・ボーイがかつて所属していた能力者集団「ペイバック」のメンバーに会い、彼に何が起きたのかを調べるように伝え、V24を3つ分手渡す。
その後、ブッチャーの部屋にホームランダーがやってくると、彼はライアンの居場所を尋ね、言わなければ殺すと脅す。しかし、ホームランダーはヴォートへの不満を漏らし、最終的な局面でブッチャーと一対一の死闘になることを予想し、ブッチャーもそれを受け入れる。
ザ・ボーイズを離れていたM.M.は、娘をベッドに寝かせた後、密かにソルジャー・ボーイに関する情報を調べていることが明かされる。
管理局での仕事を終えたヒューイは帰り道、ニューマンと彼女を「ナディア」と呼びかけるトニーという人物が接触している様子を目撃する。2人は人気のない路地裏に行くと、トニーは「レッド・リバーの存在を公表すべきだ」と伝えるが、次第に2人が揉めると、ニューマンはトニーの頭を爆発させ、清掃チームを手配して去っていく。
第1話まとめ・ネタバレ感想・解説・小ネタ
アントマンパロディのターマイトが登場し、男性器の内部から爆発する描写をみれば、「あぁ、ザ・ボーイズが帰ってきた」と感じます。ちなみにターマイトはシーズン1第1話の能力者乱交パーティーの場面で、すでに登場していました。
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いきなり驚かせたのは、冒頭の映画シーンでストームフロント役をシャーリーズ・セロンが演じていたこと。
近年だと『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサ役などで知られる彼女ですが、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』におけるカメオ出演でも話題になりました。これでMCUと『ザ・ボーイズ』、ある意味、対極に位置するヒーロー映画にカメオ出演を果たしました。
第1話のタイトル「ペイバック」とは、かつての超能力集団のチーム名で、セブンのブラック・ノワールも所属していました。ヒューイは毎シーズン、誰かの血を浴びることになっていますね…。
第2話「天上には我一人(The Only Man in the Sky)」
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第2話は、ブッチャーが時効性Vを打つことにより能力を手にしてしまう悪夢から目覚めるシーンから始まる。
彼はライアンとビデオ通話をするも、時効性Vが気になっている様子をみせる。
レッド・リバー
レッド・リバーとは、ヴォートの子会社が経営するグループホームの名前であり、ヴィクトリア・ニューマン議員(ナディア)が育った施設であることを知るヒューイとスターライト。
スターライトに待つように指示されるも、居ても立っても居られないヒューイは一人でレッド・リバーに行ってしまう。
レッド・リバーには、特殊能力をもった子どもたちが預けられていた。疑われるヒューイだったが、精子が枯渇してスターライトとの養子を探していることにして、なんとか施設のデータを抜き取ることに成功する。
抜き取ったデータを確認すると、ナディアはエドガーに引き取られていたことが判明するのだった。
事実をスターライトと共有するも、能力者管理局においてニューマンとすでにいい関係を築いていたヒューイは「1年を無駄にした」とショックを受けていた。
MMとソルジャー・ボーイ
ブッチャーは、MMに会いに行くと、ソルジャー・ボーイを殺した武器を探すため、かつてのペイバックのメンバーたちを探っていると協力を仰ぐ。
家族を守るため、MMは協力を拒むも、ソルジャー・ボーイに関する書類をブッチャーに手渡す。
その後、MMはソルジャー・ボーイに関する資料に夢中になるあまり、火災報知器を鳴らしてしまい、焦って暴力的に止めようとした姿を娘のジャニーヌに見られてしまう。
正直にその事実を元妻モニークに伝えると、彼女は「ブッチャーのところに戻った方がいい、やるべきことに立ち向かうべきよ」と告げる。
クリムゾン・カウンテス
フレンチーとキミコは、遊園地「ヴォートランド」でペイバックの元メンバー、クリムゾン・カウンテスと接触する。
彼女は両手を合わせることで火の玉を繰り出すことができる能力の持ち主だった。
力ずくで彼女からソルジャー・ボーイの死因について聞き出そうとするも、逃走されてしまう。
逃走の過程で、火の玉によって遊園地の従業員が血まみれになって殺された瞬間を、その場に居合わせた子どもたちが目にしてしまっていた。
キミコは、過去の自分のように子どもたちに酷い目に遭わせしまったことを嘆くも、フレンチーは「君のせいじゃない」とフォローする。
ホームランダー生誕祭
ホームランダー生誕祭のリハーサルで、ホームランダーはスターライトに屈辱的な演目をやらせようとしていた。
しかし、エドガーがホームランダーよりもスターライトを視聴者が求めているデータを示し却下させると、ホームランダーは苛立ちを浮かべていた。
Aトレインのドキュメンタリー
Aトレインは、走れる体ではなくなってしまったため、ルーツであるアフリカを舞台にしたドキュメンタリー番組の企画をアシュリーに持ちかけていた。
ストームフロントの死
ホームランダーは毎年恒例の“誕生日に人を救う宣伝行為”をしていたところ、速報でストームフロントが自殺したニュースを目にする。
ネジが外れたホームランダーは、飛び降りようとして思いとどまった女性に対し、「神などいない、唯一、天にいるのは私だ」と言い放ち、自殺に追い込むのだった。
その後、ホームランダーは、ストームフロントのいないベッドで寂しそうに横になる姿が描かれる。
ブッチャーVSガンパウダー
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ブッチャーはガンパウダーに接触し、ソルジャー・ボーイから性的虐待を受けていたことがペイバックの脱退の原因だとして詰め寄り、ソルジャー・ボーイの死因を探ろうとしていた。
しかし、ガンパウダーからの襲撃に遭い、怪我を負ったブッチャーはソルジャー・ボーイの一件から手を引こうとヒューイに連絡する。
一方、ヒューイはニューマンの正体を話し、ブッチャーの力が必要だと伝える。
ブッチャーは、再びガンパウダーに接触する。ガンパウダーの攻撃がブッチャーには通用しない様子。ブッチャーは時効性Vを使っていたのだった。
ガンパウダーを返り討ちにすると、ソルジャー・ボーイの死因は事故ではなく、自分は知らないものの、当時のCIAの任務担当だったグレース・マロリーに聞くように言うのだった。
ブッチャーはその後、ホームランダーと同様の目からのビームによりガンパウダーを殺害する。
ホームランダーの暴走
ホームランダーの生誕祭が生放送で行われていた。
スピーチで、スターライトはホームランダーからの寄付を発表し、同じ人間であること、挽回のチャンスがあることを語るも、「お前のナチは死んだ」という野次が飛び、火がついたホームランダーはスピーチを横取りする。
ホームランダーは、富や権力を持つ連中に操られて生きてきたことを認めるも、今後は一切それを拒否し、謝罪もしないとし、「君らはヒーローではない、私が真のヒーローである」と宣言するのだった。
第2話のネタバレ感想と解説・トリビア
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ディープは相変わらず、本筋にほぼ絡まないものの、彼の自伝はドラマ化して人気のようでした。
ちなみにドラマの中で共同教会の先生役を演じているのは、『タイタニック』でケイト・ウィンスレット演じるローズの婚約者役を演じたビリー・ゼインという俳優。
レッド・リバーで登場した瞬間移動ができる子どもの名前は「テディ・スティルウェル」。つまりシーズン1の最終話でホームランダーに殺された、元ヴォート副社長のマデリン・スティルウェルの息子です。
シーズン2の第1話のニュースでマデリンの家から離れた場所で発見されたといっていたので、瞬間移動能力によって爆発を免れたのでしょう。
レインボーカラーで彩られたヴォートのテーマパークも中々に強烈。
「BLM BLTs(ブラック・ライブズ・マターBLTサンドイッチ)」「Woke Wok(社会問題に認識があるという意味のスラングと中華を組み合わせてた造語)」「LGBTurkeyLegs(LGBTターキーレッグ)」など、ネームセンスも抜群。
奇しくもプライド月間である6月に配信がスタートしていますね!
第2話のまとめ
第2話のポイントをまとめると、上記の通り。
第2話のタイトルの通り、ホームランダーは失脚するどころか、まるで唯一神かのような宣言とともに開き直りましたね。逆に開き直ったホームランダーを支持する人も一定数はいるでしょう。
ホームランダーはもう誰にも止められなくなってしまうのか…!?
第3話「荒波(Barbary Coast)」
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第3話は、17年前、スターライト(アニー)が「リトル・ミス・ヒーロー」のショーに出ているところから始まる。
「強くなれば痛みは消える」と母親に言われて育てられてきた場面をフラッシュバックしていた。
現在に戻り、全裸待機するホームランダーの前に、アシュリーがやってくる。スピーチによって、支持率が21ポイントアップし、スターライトと合わせた支持率は過去最高のの98%に昇ると報告。ホームランダーは歓喜する。
ザ・ボーイズの復帰
MM、そしてヒューイがザ・ボーイズが本部を置くフラットアイアンビルにやってくる。
早速ブッチャーは、マロリーにソルジャー・ボーイに何があったのかを聞き出すミッションを説明する。
ヒューイは、ニューマンに能力者管理局に出勤しない口実として怪しまれないように、キミコに腕を折ってもらうことにする。一方、フレンチーは先約があると任務に参加できないと言うのだった。
マロリーに会いに行ったザ・ボーイズ。MMは戻った理由を「ソルジャー・ボーイに家族を殺された」と話す。
ブッチャーがマロリーに、ニカラグアでの一件を迫ると、レーガン大統領が親ソ政権と戦うコントラを支援した「チャーリ作戦の一環」だと語る。
資金不足から、イランに武器を売ったり、足りない分をコカインの取引で補っていた。マロリーは当時、アメリカへの輸送を指揮していたという。
そして、1984年に大規模攻撃を準備していて、白人以外を不安定にさせるため、コカインを有色人種に売るというもう一つの目的もあったと話す。
1984年
ペイバックのメンバーは、クリムゾン・カウンテス、マインドストーム、スワットー、TNTツインズ、ブラック・ノワール、ガンパウダー、ソルジャー・ボーイ。
若き日のスタン・エドガーがマロリーに接触する。ヴォート社は、共産主義に対抗する政府を支援していた。ペイバックが参加したのは、軍におけるスーパーヒーローの復活のための試運転だとマロリーに説明する。
スワットーの身勝手な行動によって、キャンプの位置がバレてしまい敵軍に襲撃される。ペイバックたちは敵味方も区別がつかずに応戦していた。
激しい戦闘後、クリムゾン・カウンテスから、ソルジャー・ボーイが敵の兵器で殺され、死体を奪われたと説明されるマロリー。
116人の部下を失ったものの、ヴォートは免責となり、それがきっかけでマロリーは報いを受けさせようと決心したのだった。
ブッチャーは、マロリーがホームランダーを倒すきっかけがあることを知りながら隠していたことに憤慨する。
苛立ちを隠せないブッチャーは、ライアンに対しても「お前がベッカにしたことを忘れられると思うか」と言ってしまい、ライアンから「嫌いだ」と言い放たれる。
フレンチーの単独行動
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フレンチーは元恋人のシェリーに会っていた。彼女はリトル・ニーナとのコカイン運びの仕事でしくじってしまったという。
一緒に来てほしいと言われるものの、断るフレンチー。しかし、その後、ニーナの子分たちに拉致されてしまう。
ニーナいわく、シェリーはしくじったのではなく、コカインを横取りしたという。そのため元恋人であるフレンチーにシェリーの居場所を教えるか殺して欲しいと提案したのだった。
リトル・ニーナと会っていたことをブッチャーに話すと、ブッチャーはロシアへ行くため彼女に連絡を取るように支持するのだった。
Aトレインと兄ネイサン
Aトレインは、兄でトレーナーのネイサンに誘われて、地元で彼の家族との時間を過ごす。
走れない体になったAトレインは生き残るために「黒人の権利」を主張し始めていた。そんな彼にネイサンは、近所でブルー・ホークという名のヒーローに、歩いていただけの黒人男性が殺された事件のことを話す。
家族に弔慰金を送ると返答するAトレインに対し、ネイサンはセブンの一員として発言して欲しいと言う。
しかし、「おれはマイケル・ジョーダンだ、マルコムXではない」と誰にでも好かれたいと言い訳してしまうのだった。
セブンの方向性
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スターライトは、ホームランダーに殺される可能性があるため、元彼のスーパーソニックにセブン加入を辞退するように伝えていた。
一方、ホームランダーはセブンにディープを復活させたいと提案する。スターライトは断固拒否し、飛行機事故のビデオを持ち出すが、ホームランダーは意に介さず、その場合、アメリカを完全に破壊して恐怖で支配すると返答するのだった。
ヒューイに連絡し、ホームランダーの暴走に恐怖を感じてセブンを抜けたいと話すが、ヒューイは、ブッチャーと合流したことでホームランダーを倒す手がかりがあるから残ってほしいと伝える。
ホームランダーは、ディープを食事会に招待し、ディープの友人であるタコのティモシーを踊り食いさせる試練を与え、苦しみながら乗り越えたディープは、セブンへの復帰を遂げる。
スーパーソニックは、危険を顧みず、セブン加入への決意をスターライトへ表明する。
彼はドラッグ依存で母親を殺しかけてみんなから見放された過去を話す。そんな中でも、唯一見放さなかったスターライトに対し、今度は自分が支えると言うのだった。
そして「アメリカン・ヒーロー」の番組収録で、スーパーソニックとディープのセブン加入が発表される。
そんな中、ホームランダーは、番組のリハーサル中、思いつきでスターライトと愛し合っていると発言する。
唖然とするスターライトだったが、アシュリーらプロデューサーたちは絶賛していた。
覚悟を決めたスターライトは、受け入れて自らホームランダーにキスをするのだった。しかし、その裏で固く拳を握りしめていた……。
第3話のネタバレ感想と解説・トリビア
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第3話では、マロリーの過去の任務とペイバック、そしてヴォートとの関係が明らかになりました。
ペイバックのメンバーが明らかになり、過去の映像で、ブラック・ノワールの素顔も見えました。
アメリカが黒人のヒーローを受け入れる準備ができていないことからマスクで顔を隠している事実が明かされましたが、その後の戦闘で顔半分が焼けただれてしまう被害を受けています。
結果的に顔を隠さざるを得ない状況になったノワール、なんとも皮肉です…。
第3話のまとめ
第3話のポイントをまとめると、上記の通り。
開き直ったホームランダーの支持率が上がるという展開に。
前回のエピソードで時効性Vを使用したブッチャーは、激しい副作用に苦しんでいる様子ですね。
これまでも一人で頑張ってヴォートと戦っているスターライトですが、ホームランダーの画策により、依然として苦しみを抱えながら耐えない状況になっています。
第4話「入念な計画(Glorious Five Year Plan)」
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1980年代にアメリカで開始した歌番組「ソリッド・ゴールド」に出演するソルジャー・ボーイから第4話は始まる。
その番組を見ながら、車に関する歌詞を歌うソルジャー・ボーイの姿に家族との思い出をフラッシュバックするMM。
ヒューイは、時効性Vを使ってガンパウダーを殺したとブッチャーに驚くも、ほかの人間にバラさないよう口止めされる。
ホームランダーの策略
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ホームランダーは出演した番組で、ヴォート内にも上の人間の権力による圧力を主張し、間接的にエドガーを攻撃する。
過激なスピーチも、政府はホームランダーを追求しない意向を見せる。対してエドガーは、ホームランダーに厳重注意と罰金命令を下すようニューマンに伝える。
スターライトはメイヴに会いに行くと、彼女がブッチャーと協力してホームランダーを倒すために密かに準備していたことを知る。しかし、彼女はブッチャーとともに1人で戦う姿勢だった。
スターライトは1人でもホームランダーを倒す驚異になればと、スーパーソニックに協力を打診すると、彼は「正しいと思うから助ける」と答える。
Aトレインは、“権利主張活動”のためブルー・ホークに会いたいとアシュリー、そしてホームランダーに打診するも、妻カサンドラによって指示されたディープの発言により却下されてしまう。
ディープの介入が気に食わないAトレインは彼と衝突。見かねたスーパーソニックは、ホームランダーに対して「もし、なにかできるとしたら」と声をかける。
能力者管理局の会見で、ニューマンはホームランダーを厳重注意するのではなく、エドガーの脅迫行為・偽証・司法妨害を主張する。娘のゾーイの身を案じての選択だった。
その代わりとして、ニューマンはホームランダーからコンパウンドVを受け取ると、将来自分の身を守るためといって娘ゾーイに注射するのだった。
ロシアでの任務
ブッチャーはフレンチーとともにリトル・ニーナに会いに行き、謝礼を渡して交渉すると、ニーナはシェリーの身柄を差し出すよう主張する。
ニーナによって、ロシア行きの飛行機とパスポートを手にしたザ・ボーイズ。ロシアでは、ニーナの汚れ仕事を片付けるため、能力者であるキミコに任せるブッチャー。
キミコは、成金の娼館に入り込み、対象を瞬殺して任務を終えるも、ブッチャーからの仕事に嫌気が差していた。
任務を終えたら、マルセイユへ行こうと約束するフレンチーとキミコ。
同時に、MMは能力者であるライアンやキミコに強く当たるブッチャーをやり過ぎだと指摘するも、ブッチャーに「MMのフォローがあってこそ」だと言われて丸め込まれてしまう。
ソルジャー・ボーイ登場
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ブッチャーは再度、時効性Vを摂取していた。その姿を見たヒューイは自分もやりたいと言うが、断られてしまう。
その後、ニーナから得た情報で「BCLレッド」を保管する軍事施設に侵入するザ・ボーイズ。
警報が作動し、兵士と戦闘になるも、能力者になったブッチャーが圧倒的な力を見せる。一方で、MMの危機にヒューイも瞬間移動する能力を発揮する。彼も時効性Vを摂取していたのだ。
そして、ブッチャーが施設にあるカプセルを開けると、そこから出てきたのはソルジャー・ボーイだった。
ソルジャー・ボーイは胸からエネルギーブラストを放ち、被弾したキミコは重症を負い、治癒能力が作用しないことに気づく。
重症のキミコを運びならも、ブッチャーとヒューイはキミコへの関心をまるで寄せていない様子。その姿にMMは「もう面倒を見きれない」と言うのだった。
スーパーソニックの死
ホームランダーから「見せたい景色がある」と連れて行かれたスターライト。
そこにあったのは、惨殺されたスーパーソニックの死体。ホームランダーは、Aトレインから計画を教えてもらったと話す。
これ以上何かを企んだらヒューイを惨殺するとし、「私だけを崇拝しろ」と釘を刺すのだった……。
第4話のネタバレ感想と解説・トリビア
第4話は、ホームランダーの策略と、ザ・ボーイズの分断が垣間見えるエピソードでした。
吹っ切れたホームランダーにとって、もう怖いものはないと言わんばかりに、エドガー、そしてスーパーソニックという障壁を取り除きました。
今シーズンから登場したスーパーソニックでしたが、4話目にして惨殺されてしまいました。
スターライトへの恋心からとはいえ、ザ・ボーイズの味方になると思っていたので残念!
エドガーを裏切る形となったニューマンでしたが、「自分の娘を守るため」といって能力者にさせるのは、親としてどうかと思いますね。
一方で、あれだけ能力者を嫌悪していたブッチャーとヒューイでしたが、いざ自分が能力を手にすると、人が変わったようになってしまうのは皮肉なところ。MM、フレンチー、キミコとの分断が心配なところ…。
まさに「大いなる力には、大いなる責任が伴う」場面でした!
それにしても、ホームランダーの恐怖支配は本当に恐ろしい。ディープやAトレイン、アシュリーなど、自分で考える余地を残さず力で支配する描写は見ていて気分が悪いですね…!
第4話のまとめ
第4話のポイントをまとめると、上記の通り。
ソルジャー・ボーイの登場は、果たして吉と出るか凶と出るか…!
第5話「嘘まみれの世界にさようなら(The Last Time to Look on This World of Lies)」
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第5話は、ロシアの首都モスクワにいるザ・ボーイズから始まる。
MMはソルジャー・ボーイの人体実験の映像を見ていた。彼の体はいかなる攻撃もものともせず、体からは強い放射線を放っていることが記録されていた。
キミコは依然として受けたダメージを回復できていないでいた。MMは力を得て変わりつつあるブッチャーに「一番大事なのは能力をなくすことだろ」と迫るが、「地に足をつけて考えろ」と言われてしまう。
揺れるヴォート社
エドガーが失脚したことにより、アシュリーがヴォートのCEOに就任する。アシュリーはホームランダーの言いなりで、ホームランダーには経営手腕がないことは明白だった。
その影響で、犯罪分析室の責任者にディープが配属される。彼はホームランダーへの忠誠心がない人間を次々と解雇してしまうのだった。
ロシアの軍事施設から脱出したソルジャー・ボーイは、1人でニューヨークまで到達していた。彼は、ラジオから流れる曲を聴いて発作を起こすと、街の中でエネルギーブラストを放ってしまう。
ホームランダーは事件を意に介さず、収束させようとしていた。ニュースでは、エドガーによる陰謀論をチラつかせたり、なんの脅威もないから外出しても問題ないと高らかに宣言する。
その後、メイヴに接触したホームランダーは、メイヴからブッチャーの匂いを嗅ぎ取り、彼女の謀反を問いただすも、彼女が反抗的な態度を示したので、ブラック・ノワールを使ってメイヴを背後から急襲する。
メイヴが突然いなくなり、薬物依存の治療中だとされたことに怒りを見せるスターライトは、アシュリーに恐怖を理解した上で「力はいらない、ただ人の心を持っていて」と諭す。
一瞬だけ心が揺らいだアシュリーだったが、彼女に居場所を教えることはしなかった。
分散するザ・ボーイズ
スーパーソニックは、薬物の過剰摂取によって死亡したとニュースで報道される。
ヒューイはスターライトにロシアでの状況を説明する。時効性Vによって自信が得られた高揚感を語るも、「愚かで危険な行為」と言われ、「もうやらない」と話すのだった。
ブッチャーの前にメイヴが現れ、彼女から再び時効性Vを受け取る。スーパーパワーを手に入れられたことを聞かれると、「人は偉大な力を得ると本物のクズに変わる」と答えるブッチャー。
禁欲生活を送っていた2人だったが、飲酒、そしてセックスをする。
キミコが入院する病室に入るフレンチーの前に現れたリトル・ニーナは、軍事施設の一件で被害を受けたとして汚れ仕事を押し付ける。
キミコは、ソルジャー・ボーイの攻撃によって能力が失われたことを実感し、フレンチーともいい関係性を築いていた。
しかし、病室を離れたフレンチーは再びリトル・ニーナの一行に捕らわれてしまう。
MMは、ジャニーヌのもとを訪れていた。トッドはテレビで“キャンセルカルチャーに抗うホームランダー”の姿を、彼女のためになると言って見せていた。
娘ジャニーヌを博物館に連れて行く約束だったが、ソルジャー・ボーイの攻撃によって19人が死亡したニュースを見て家族の死がフラッシュバックしたMMは、家を飛び出していく。
Aトレインとブルー・ホーク
密告が評価され、ブルー・ホークとの面会を果たすAトレイン。黒人地域だけでの過剰なパトロールを指摘し、黒人たちの前での謝罪を取り付けることに。
Aトレインの兄ネイサンらがいる黒人地域の公民館で、ブルー・ホークによるテレビでの公開謝罪の機会を作るも、聴衆からの不満の声が上がる。
黒人らの「ブラック・ライブズ・マター」に対してブルー・ホークは「オール・ライブズ・マター」と返したかと思うと、彼らに手を上げてしまう。
その結果、ネイサンは負傷し、歩けない体になってしまった。
レジェンド
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事件現場を訪れたブッチャーとヒューイ。そこにMMもやってくる。MMは1人でソルジャー・ボーイを追うつもりだったが、ブッチャーからの協力を拒めず、一緒に目星をつけた「レジェンド」のもとへ向かうことに。
レジェンドは、マデリン・スティルウェルの前任だった。ソルジャー・ボーイが来たことを隠す彼だったが、MMがソルジャー・ボーイに家族を殺されたことも隠蔽したことで、借りがあると問い詰める。
レジェンドによると、ソルジャー・ボーイは歳をっておらず、保管していたスーツを取りに来たという。その後、恋人であるクリムゾン・カウンテスの元へ行ったというのだった。
ヒューイの選択
ソルジャー・ボーイ捕獲のため、ブッチャーは時効性Vを対抗手段として示すが、それに対してMMは「どこかで線引しないといけない」と危惧するも、ブッチャーとヒューイは特に気にしていない様子だ。
クリムゾン・カウンテスが1対1のプライベートライブ配信を行っている中、ソルジャー・ボーイより先に到着したザ・ボーイズ。
彼女を捕らえ、ソルジャー・ボーイが来ることを知らせると、彼女は彼が生きていたことを知っている様子で「殺されるから逃がして」と言うのだった。
MMは、ハロタン(吸入麻酔薬)を使用してソルジャー・ボーイを捕らえる作戦を立てていた。しかし、ブッチャーはMMを眠らせてしまう。
そこにMMに呼ばれたスターライトがやってくる。事情を説明し、「自分で戦って一度は君を守りたい」と話すヒューイだったが、「あなたに守ってもらう必要はない、必要なのはあなた」と返す。
ソルジャー・ボーイはクリムゾン・カウンテスを「愛していた」と話すも、カウンテスは「愛してなんかいない、嫌いだた」と言い放つ。その後、ソルジャー・ボーイはエネルギーブラストで彼女を焼き殺すのだった。
その後、ヒューイはソルジャー・ボーイがホームランダーを倒す手段となり、スターライトを守るために必要だと説明する。
呆然とし、「行かないで」と言うスターライトだったが、ヒューイはブッチャーの元へ走り去っていく……。
第5話のネタバレ感想と解説・トリビア
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第5話は、ヴォート社の内部危機とザ・ボーイズの内部危機が並走するエピソードでした。
エドガーが失脚したヴォート社は、ホームランダーによって形骸化し切っている様子。もう彼を制御することができる人間はいないのか。
そして、結果的にその負担をすべて背負うのがスターライトとなってしまっています。
そんなスターライトからの「必要なのはあなた」という意義ある言葉も虚しく、ヒューイは自分がスターライトを守りたい思いが全面に出てしまい、時効性Vによって、普通の人間が大いなる力を手にすることの怖さを物語ります。
「ブラック・ライブズ・マター」に対して「オール・ライブズ・マター」と返すやり取りや、陰謀論や“キャンセルカルチャーに抗うホームランダー”など、『ザ・ボーイズ』らしいゴリゴリに風刺が効いたエピソードでもありました。
さらに、ホームランダーやソルジャー・ボーイといった極端に力を持つ人間が、一方的な愛情を寄せていることがわかる描写も皮肉でした。
一方で、キミコとフレンチーの関係はとてもいい感じで見ていてホッとさせてくれます。キミコが能力が失われた喜びを表現したミュージカルパートはとても華やかで、『ザ・ボーイズ』シリーズであることを忘れさせるシーンでした。
第5話のまとめ
第5話のポイントをまとめると、上記の通り。
分断してしまったザ・ボーイズ。果たしてブッチャー、そしてヒューイはソルジャー・ボーイをコントロールすることができるのか…!?
第6話「ヒーローガズム(Herogasm)」
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第6話は、ニューヨークでのソルジャー・ボーイによる攻撃の後、ディープを筆頭に「イマジン」を歌いつなぐ様子から始まる。
クリムゾン・カウンテスの家での爆発現場映像をチェックするアシュリーとディープ、そしてホームランダーの3人。映像に映っていたのがソルジャー・ボーイだとわかると、アシュリーは早速情報をコントロールしようとする。
しかし、ホームランダーは、かつてヴォートの象徴だった彼による犯行だと発表すれば会社も自分も終わると判断し、ソルジャー・ボーイを殺すことで対処すると言い、アシュリーらに証拠の隠蔽を指示する。
ホームランダーは「頼れるのは君だけだ」とブラック・ノワールを信頼している様子だったが、彼は手首から発信機を取り出していた。
モーテル
ブッチャーとヒューイは、ソルジャー・ボーイとともにモーテルにいた。2人は、ソルジャー・ボーイにペイバックのメンバーへの復讐を手伝う代わりに、ホームランダーを殺すよう説得する。
ヒューイとの会話の中で、ソルジャー・ボーイはニューヨークでの事件のとき意識を失っていて爆発に気づいていなかったことがわかる。
その後、ブッチャーがTNTツインズの居場所を突き止め、2人は時効性Vを摂取してソルジャー・ボーイとともに向かうのだった。
怒るスターライトとMM
ブッチャーとヒューイに裏切られたMMとスターライトは、ソルジャー・ボーイが次に狙うのが、場所的に一番近いTNTツインズであると予測。
ブッチャーらに怒りを顕にするMMをスターライトがなだめるが、「白人が怒るのは良くて俺には大人しくしていろと?」と言い返されてしまう。
スターライトは、キミコは入院し、フレンチーやメイヴも行方不明であるいま、2人でどうにかするしかないと説得する。
スターライトは、番組で共演したニューマンに声をかけられ、話をすることに。ニューマンは、スターライトのSNSの影響力を利用することでホームランダーから身を守りつつリーダーになる方法を提示。その見返りとして自分を支持することで改革を行えると提案する。
しかし、スターライトは「もう、うんざりした、これ以上は利用されない」と拒否する。ニューマンは「このことは内緒ね」と立ち去るも、スターライトは鼻血を出していた。
スターライトとMMがTNTツインズのもとへ向かう車内で、MMはソルジャー・ボーイに家族を殺された話を打ち明ける。
当時、MMは夜中に祖父を起こしたことでソルジャー・ボーイが投げた車に潰されて死んだのだった。それ以降、ソルジャー・ボーイが殺しに来るのではないかと頭の中に常に囚われてしまったのだと語る。
自業自得
アシュリーがAトレインのドキュメンタリー番組のCMを見て冷笑しているところに、彼が入ってくる。
Aトレインはブルー・ホークへの対応に不満を言い、告訴すると主張。一方でアシュリーは、これまでにも3件の殺人を揉み消したことを挙げ、自分の身に起きた途端に正義を求める彼を「自業自得」と非難する。
“愛されたい”
ディープからの報告でブラック・ノワールが行方不明になったと知り、動揺を隠せないホームランダー。さらにソルジャー・ボーイの目的がペイバックの抹殺で、一番近いのがバーモント州にいるTNTツインズとの報告を受け、ディープに向かわせることに。
ホームランダーは鏡の前で自分自身と会話していた。「愛されたい」と本音を漏らすも、鏡に映るもうひとりの自分から叱責され、「人間らしさや承認欲を捨てれば本来のあるべき姿に生まれ変わる」と言われるのだった。
ヒーローガズム
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ディープは真っ先にTNTツインズいる家へ訪れると、そこでの光景を「ヒーローガズムだ」という。
その後、MMとスターライトもTNTツインズの元へ到着する。出迎えたのは巨根の能力者ラブ・ソーセージだった。
そこでは、能力者たちが思い思いに乱交していた。MMは、ジャケットにローションで汚されたかと思えば、多量の性液を浴びる災難を被る。
その頃、ブッチャーらも会場の外に来ていた。ヒューイが瞬間移動を使って内部に侵入すると、Aトレインと接触する。
ヒューイは、(シーズン1第1話で恋人だった)ロビンを殺したことへの謝罪を求める。Aトレインは愛するものが傷つくことの痛みを学び、受け入れて謝罪するものの、ヒューイは殴りかかってしまう。
スターライトが制止させ、ホームランダーが来ることを伝えて人々を避難させるように伝えるが、ヒューイは無理やりスターライトとともに建物外へ瞬間移動してしまう。
ヒューイは、スターライトの方が強いことを「気にしない」と言っていたものの、ずっと気にしていたことを打ち明ける。すると、スターライトは「Vの影響かと思ったけど…これが本当のあなた」と伝える。
キミコとシェリー
キミコは病室で襲われ、連れて行かれた先には、フレンチーとシェリーが拘束されていた。
リトル・ニーナはシェリーかキミコかの2択を迫るが、キミコがアイスの棒を使って拘束を解くと返り討ちにする。しかし、リトル・ニーナには逃げられてしまう。
なんとか帰還したキミコとフレンチー。キミコは「Vが私を怪物にしたと思ってた。だけどそうじゃない。これが本当の私」というも、フレンチーは「君は怪物じゃない」と伝える。
反対に、リトル・ニーナが語っていたフレンチーが痛みを喜んでいることについても「あなたはそんな人じゃない」と伝えるのだった。
ソルジャー・ボーイの暴走
シャワーを浴びたMMの前にソルジャー・ボーイが現れ、即座にハロタンで眠らせようとするも、全く効果がない様子だ。
そこへ「相手にするな」とブッチャーが介入し、MMは怒りをぶつけるが、時効性Vを摂取したブッチャーには攻撃が通用しない。
ソルジャー・ボーイはTNTツインズに接触する。ツインズは「ノワールが企んだ」と話すも、「ノワールはヴォートの命令以外は何もしない」とソルジャー・ボーイは言い返す。
そんな中、ソルジャー・ボーイのトラウマ曲が流れてしまい、またもやエネルギーブラストを意図せず放ってしまい、家は半壊状態の地獄と化してしまう。
そんな中、Aトレインは家から逃げ出すブルー・ホークを捕まえると、兄を半身不随にした報復として全速力を出して道路に引きずり回し惨殺する。その後、Aトレイン自身も発作を起こして倒れてしまうのだった。
ソルジャー・ボーイVSホームランダー
怪我したターマイトを踏み潰して現場に降り立ったホームランダー。
ブッチャーと合流したソルジャー・ボーイ。彼はニューヨークの事件と同様に、やはり意識を失っていたようで、自分では半壊させたことを認識していない様子。
そんな2人の前にホームランダーが現れる。彼はブッチャーと以前に、最後は1対1で戦うと約束したことを持ち出し、それを破ったとしてビーム攻撃を浴びせる。
かつてソルジャー・ボーイに憧れていたというホームランダー。
「強そうに見えない」とふっかけるソルジャー・ボーイに「改良版だ」と言い返すホームランダー。新旧のトップヒーロー同士の戦いが始まる。
爆発から意識を取り戻したMMは、見計らってソルジャー・ボーイを攻撃しようとするが、駆けつけたスターライトによって「みんなを助けるのが私たちの役目」だと説得される。
ホームランダーが有利に戦いを進めていると、ブッチャーが応戦し、さらにヒューイも参戦する。3人がかりで押さえつけてソルジャー・ボーイのエネルギーブラストを浴びせようとするが、間一髪のところでホームランダーは逃げ去っていく。
スターライト=アニーの告発
12人の死体が並べられたヒーローガズムの現場で、スターライトはインスタライブを始める。
事件がソルジャー・ボーイの犯行であること、多くのヒーローが自分のイメージを気にしていて、その最悪の例がホームランダーであると告発。
そして最後に、ヒーロー名のスターライトではなく、本名アニー・ジャニュアリーとして「ヒーローなんかやめてやる」と宣言するのだった。
第6話のネタバレ感想と解説・トリビア
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第6話は、あらゆることが起こりまくる、まさに激動の1話でした。
エグいけど、面白すぎる!
そのエグさを証明するように、物語が始まる前に英語の注意書きが映されます。
エピソードのタイトルにもなっている「ヒーローガズム(Herogasm)」はガース・エニスによる原作コミックの中でも悪名高いエピソードの一つで、その名の通り「ヒーロー(Hero)」と「オーガズム(Orgasm)=性的絶頂」を組み合わせた造語。
要するに、ヒーローたちの乱交パーティです!
実は原作コミックでは、ヴォートの後援により、南の島でのヒーローたちの休暇として行われる「ヒーローガズム」。それを世間の人たちは知る由もないのですが、ドラマ版は大きく異なります。
ドラマでは、ヴォート社はヒーローガズムに関与しておらず、TNTツインズ主催のプライベートなパーティとして描かれます。
そのほか、原作ではさらにエグい表現があるので、コミック版が気になる方は以下からチェックしてみてください。
そんな注意書きから始まる第6話は、冒頭からジョン・レノンの「イマジン」を歌いつなぐシーンで強烈に皮肉をかまします。
これは2020年のコロナ禍、ロックダウン中のアメリカで批判を集めた『ワンダーウーマン』のガル・ガドットを中心に俳優仲間などで「イマジン」を歌いつないだ一件へのパロディ。
ディープとAトレイン、ブラック・ノワール以外にこんな参加者がカメオ出演しています。
- パットン・オズワルト(『レミーのおいしいレストラン』レミー役)
- ジョシュ・ギャッド(『アナと雪の女王』オラフ役)
- アシュトン・カッチャー&ミラ・クニス夫婦
- エリザベス・バンクス(『スパイダーマン』シリーズ、ベティ役)
- クメイル・ナンジアニ(『エターナルズ』キンゴ役)
- アイシャ・タイラー(ドラマ『クリミナル・マインド』)
- ローズ・バーン(『X-MEN』シリーズ、モイラ役)
しかも、ディープが語るビデオの中に、自伝を購入するリンクが貼られていたり、芸が細かいんですよね!笑
Aトレインがアシュリーに論破されるシーンは、当事者にならないと社会問題や正義について考えられないという話。決して他人事ではないので、少しドキッとさせます。
そんなAトレインでしたが、ヒューイに初めて謝罪する姿を見せました。
ヒューイは、Vによる能力の後ろ盾があるからか、強気な行動ができていると感じる一方で、スターライトには「それが本来のあなた」と言われてしまうところに、優しいヒューイの中に潜む否定できない男性性が浮かび上がり、なんとも言えない気持ちにさせます。
一方で、対象的にフレンチーとキミコは『ザ・ボーイズ』の良心と言うべき存在になりつつあり、互いを理解し合う姿は愛おしく、2人の幸せを願わずにはいられません。
「愛されたい」という本音を漏らすホームランダーには、どこか虚しさを感じさせるものの、彼が内なる自分に従い、人間性をも捨てることになれば待ち受けるのは、地獄。
しかし、そんなホームランダーが初めて敗北する姿を見せました。
ブッチャーやヒューイが、「V」によって力をつけたことで、あのホームランダーにとっても脅威になる。これは逆にいえば、「V」が市場に流通するようになれば、いよいよ世の中はカオスになると示唆できます。
普通の市民が誰でも他人を脅かす力を持つという意味で言えば、銃社会のアメリカを連想してしまいますね…。
そして、スターライト(もうアニーと呼ぶべきですね)。
アニーは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のホームランダーを除かなければならぬと決意した。
こんな一節を言いたくなるほど、彼女の抱えていたものが爆発した第6話。最高でした!
これまでいろんな人を信じ、その度に裏切られてきたアニー。
小さい頃からストレスを抱えるほど母親にヒーロー教育を叩き込まれ、セブンに加入したらディープから性暴力を受け、ヒーローたちの腐敗を目の当たりにしつつ、内部から組織を変えるために孤軍奮闘、様々な働きかけをしてきました。
加えて、元恋人のスーパーソニックは惨殺され、名ばかりの共同リーダーを任されたかと思えば、ホームランダーに偽りの恋人を演じさせられ、現恋人のヒューイはパワーバランスを気にして本当の意味で信じてくれてはいない。
そんな彼女がラストに「ヒーローなんてやめてやる(I fucking quit.)」と言い放つ姿は、彼女自身のヒーローからの解放、まさにカタルシスを感じる屈指の名場面でした。
最高にカッコよかった!
さらに、面白いのは、そんな彼女のターニングポイントとなった出来事が、ブッチャーのやり方に賛同するヒューイとの相違がなければ起こらなかったこと。
図らずも、ヒューイたちによるパワープレイ、そしてアニーのSNSを使った攻撃、このダブルパンチが、いままさにホームランダーを追い詰めようとしているのです。
いやー面白すぎる展開!
第6話のまとめ
第6話のポイントをまとめると、上記の通り。
ホームランダーに敗北&告発という重いカウンターが決まりました!さてどうなるのか…!
第7話「過去との対峙(Here Comes a Candle to Light You to Bed)」
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第7話は、スターライトのインスタライブでの告発動画について、テレビに出演したヴォートCEOのアシュリーが釈明をする様子から始まる。
彼女は、スターライトの発言は混乱を招くウソだとし、同時にキミコを持ち出し、彼女が光解放軍のテロリストで人身売買に関係していると展開。
マインド・ストームの手がかり
ヒューイたちは、ソルジャー・ボーイとともにレジェンドの家に滞在していた。
レジェンドいわく、ソルジャー・ボーイの実績がデモ隊への放水や反戦運動の学生の射殺に過ぎず、ノルマンディー上陸作戦では何もしていないと言う。
さらには、「アメリカ人はみんな自分がヒーローだと信じたいんだ。だから俺たちは不都合な真実を隠し、ソルジャー・ボーイのような神話を作る」と語る。
ブッチャーは、ペイバックの次のターゲットをマインド・ストームとして、手がかりを追うが、中々しっぽが掴めないでいた。
ソルジャー・ボーイは、マインド・ストームがパラノイド(偏執性:強いこだわりをもっていること)で、廃屋を買って移り住んでいると言う。一方、レジェンドは、マインド・ストームは躁うつ病で薬を飲んでいたと言う。
ヒューイは、精神安定剤であるリチウムを売る薬局は珍しいとして、薬局を当たることを提案する。
メイヴ
メイヴは生きていた。監禁されていたのだった。
メイヴの元を訪れたホームランダーは、ブッチャーらの居場所を聞き出そうとするも、顔にアザができたことをコンシーラーで隠しているのを指摘されてしまう。
ホームランダーは、ソルジャー・ボーイが能力を奪う力を持っていることを危惧するも、メイヴは「能力を失う日が待ち遠しい」と言い返す。
反対に彼女の「なぜ殺さないの」という質問に対しては、「殺さないのではなく、生かしている」と言い、メイヴとの子どもを望んだことを明かし、「卵子を採取する」と言うのだった。
合流
フレンチーとキミコは、アニーとMMと合流する。
フレンチーはソルジャー・ボーイの人体実験の映像を見て、彼を眠らせたのがハロタンではない何かであると言う。
そして、それが蒸気によるもの「ノビチョク」というロシアが開発した神経剤だと突き止める。手に入れるには再びロシアへの渡航が必要になる。
一方、キミコはアニーに「能力を取り戻したい」とコンパウンドVの摂取を頼み込む。断るアニーに対し、スマホに書いた文章を読ませるキミコ。
キミコは、能力を失ったことでフレンチーの腕の感触をダンスを通して実感していた。しかし、再びVを摂取すると話すと、フレンチーは驚いてダメだという。
キミコは、アニーに見せたスマホの文章を、フレンチーにも見せる。
そこには、「善悪はVに関係なく、能力を使う人による、愛する人のために能力をいいことに使いたい」とキミコの決意が記されていた。
ヴォートのラボに侵入したアニーは、時効性Vが3〜5投与で死亡するという研究データを見てしまう。
その後、ホームランダーに見つかってしまうものの、彼がスーパーソニックを殺したことや、脅迫する様子を隠し撮りして、1億9,000万人のフォロワーに配信するのだった。
陰謀論
ホームランダーは、大統領候補のロバート・シンガーの応援演説に登壇。「スターライトは羊の皮を被った狼だ」と言い放ち、相変わらず陰謀論を展開するも、観客の中にソルジャー・ボーイの幻影を見ていた。
近くの牛舎で、搾乳してミルクを飲んでいるところにニューマンが現れる。「事態に対処できていない」と指摘されると、カッとして彼女の首を締めるが、ニューマンが提示した交渉材料を見ると驚いていた様子をみせる。
MMはトッドがインスタでホームランダーの演説に参加していたことを知り、彼を咎める。しかし、完全に陰謀論を信じている様子のトッドに、結果的に娘ジャニーヌがいる前で殴ってしまうのだった。
罠
マインド・ストームの拠点を見つけたブッチャーたちは、森の中からアプローチする。「マインド・ストームとは目を合わせるな」とアドバイスするソルジャー・ボーイ。
マリファナを摂取するソルジャー・ボーイの姿を見て、ヒューイがブッチャーに質問する。すると彼は、「ソルジャー・ボーイがPTSD(心的外傷後ストレス障害)だから穏やかな気分にさせておくためマリファナを与えている」と説明。同時に2人も時効性Vを摂取するのだった。
その後、マインド・ストームの罠に引っかかり、ブッチャーは彼と目を合わせてしまう。
ソルジャー・ボーイは「マインド・ストームが起こさない限り、死ぬまで悪夢に閉じ込める」と言う。
その後、道中でマインド・ストームに洗脳された刺客である神父とシスターに襲われるも、ソルジャー・ボーイは容赦なく射殺する。
ヒューイは、彼らが一般人だと思っていたので、ソルジャー・ボーイがPTSDだと主張していたが、彼はそれを否定する。
マインド・ストームの拠点についたヒューイとソルジャー・ボーイ。ヒューイは、スキをみてマインド・ストームと瞬間移動し、ソルジャー・ボーイから逃がすことを引き合いに、ブッチャーを目覚めさせるように説得する。
ブッチャーの過去
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ブッチャーは過去と対峙していた。それは、ブッチャーが父親から日常的に虐待を受けていて、弟のレニーを守ろうとしている様子だった。
その後、ブッチャーはマリファナを売ったことで教師に父親と同じだと言われ、暴力をふるってしまう。しかし、それを父親は認め、酒を振る舞うのだった。嫌悪していた暴力的な父親とブッチャーは自分を重ねていた。
ブッチャーは軍隊へ入隊することで家を離れようとしていた。弟レニーは留まるように懇願するも、「いつまでも金魚のフンでいるな」と突き放してしまう。それにより、父親からの継続的な暴力を受けることになったレニーは、最終的に銃身自殺してしまうのだった。
過去のレニーに、愛した人みんな死なせて、ブレーキをかけることができる善人たちをクズに落としていると核心を突かれてしまう。
ノワールの過去
ブラック・ノワールは廃屋となった「バスター・ビーバーのピザ・レストラン」にいた。彼を本名の「アーヴィング」と呼ぶのは、アニメから現実に飛び出してきたバスター・ビーバーのキャラクターだ。
バスター・ビーバーは、アニメのキャラクターたちの演技を通してノワールを過去と向き合わせる。
そこでは、ソルジャー・ボーイがブラック・ノワールを執拗に殴る様子が映し出される。
さらにソルジャー・ボーイからの暴力は限度を超え、ニカラグアでエドガーの提案に乗ったという。
そこではエドガーから、ソルジャー・ボーイに取って代わる子どもが生まれたことを知らされる。
計画に従わないガンパウダー以外のペイバック全員で、ソルジャー・ボーイを抑え込んだのだった。その戦闘の過程でノワールは彼に顔面の半分を焼かれてしまっていたことが判明する。
過去と向きあったノワールは、「始めたことを終わらせる時がきた」とバスター・ビーバーらに背中を押される。
セブンたちのその後
ディープは妻のカサンドラと「セックスに発展が必要」と言い、タコのアンブロシウスをパートナーに加えたいと紹介するも、気味悪がられ、愛想を尽かされてしまう。
Aトレインはヴォートの病室で目を覚ます。するとアシュリーから即座に状況の説明を受けるのだった。その筋書きはこうだ。
ソルジャー・ボーイがブルー・ホークを殺し、Aトレインはブルー・ホークを助けようとしたものの、力及ばず、医療施設で彼の心臓を移植した。能力者の心臓だからAトレインは再び走れる体になったのだ。
リハビリ後にすぐに復帰させると意気込むアシュリーは、新しく映画も撮ると意気揚々に部屋を出ていく。
コンパウンドV
弟レニーの自殺シーンと同時に目覚めたブッチャーは、ヒューイに謝罪する。
ヒューイは、マインド・ストームを逃がそうとするも、ソルジャー・ボーイからの攻撃を受ける。マインド・ストームからヴォートが裏で手を引いていたことを聞き出すと、彼を盾で惨殺するのだった。
その後、ブッチャーはアニーから時効性Vを服用することで死に至る可能性があり、ヒューイにも伝えるように指示を受ける。しかし、ブッチャーは時効性Vをさらに入手し、3人で片を付けるとけしかける。
一方、アニーは「ヒューイが望んでなくても助ける」と宣言し、キミコにコンパウンドVを渡す。摂取したキミコは瞬く間に傷が回復する。
思わぬ事実
ホームランダーは、ニューマンから入手した、住所が記載されたメモを見ながらアシュリーと電話をしていた。その後、ソルジャー・ボーイから電話が入る。
ソルジャー・ボーイは、かつてフォーゲルバウム博士の遺伝子研究に協力し、精子提供したと語る。そして、その精子を元に1981年に子どもが生まれたと言うのだった。
ホームランダーの父親はソルジャー・ボーイだったことが明かされる。
第7話のネタバレ感想と解説・トリビア
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第7話は、トラウマと向き合う辛い描写と、衝撃の事実が明かされたエピソードでした。
前回の「ヒーローガズム」とは一変して、かなり重いエピソードになっていました!
タイトルの「過去との対峙」の通り、ブッチャー、そしてソルジャー・ボーイが自らのトラウマである過去と向き合う様子が大きく描かれました。
英題は「Here Comes a Candle to Light You to Bed」ですが、訳すと「寝ているベッドにロウソクの灯りがやってくる」という意味。
これだけだと何のことだかわかりませんが、この一節、実はイギリスの童謡マザー・グースの1篇「オレンジとレモン」という遊び歌にある歌詞なんです。
歌詞にはこのような続きがあります。
Here comes a candle to light you to bed, Here comes a chopper to chop off your head.
(お前をベッドに案内するローソクが来たぞ、お前の首をチョン切りに首切り人が来たぞ)
歌は「鐘が鳴るよ」と繰り返し、最後に上記の歌詞で締めくくられる構成になっています。
歌詞の背景には、斬首による死刑執行が行われていた時代で、死刑執行の合図に鐘を鳴らすこと、そして執行の案内にロウソクを持った執行人が死刑囚の元にやってくるぞという成り立ちがあります。
このように、マザー・グースには怖い歌詞の童謡がたくさんありますよね!
この一節を引用したのは、ブッチャー、そしてノワールが抱える過去のトラウマが、死刑執行を待つ死刑囚と同じように心理的な不安定さを表現しているのだと考察できます。
加えて、ソルジャー・ボーイもPTSDを患わっていることが明かされ、試験管で生まれたホームランダーも「愛されたい」欲が根本にあり、自分と格闘していますよね。もっと言えば、MMもソルジャー・ボーイに家族を殺された過去による強迫性障害に苦しみ、アニーもヒーロー活動を通してトラウマと向き合っています、キミコも両親、そして弟を殺された過去と向き合い、フレンチーも父親からの虐待の過去が影を落としています。
登場人物各々が、それぞれの過去と対峙している様子がシリーズ全体を通して描かれるのです。
ブッチャーとノワールに共通するのは、父親、そしてソルジャー・ボーイからの暴力による支配が原因だったこと。
加えてエグいのが、Aトレインのエピソード。彼は兄を半身不随にした恨みのブルー・ホークの心臓によって生きながらえたのでした。それにより、再び走れる体になるという皮肉。
気になるのは、Aトレインの今後。これによってパフォーマンス的な主張をやめ、自ら十字架を背負うことで変わることができるのか。はたまた、元の体に戻ることができてラッキーとくらいにしか思っていないのか。
そして最後には『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のような展開が。前回に引けを取らない目まぐるしい展開でした。
第7話のまとめ
第7話のポイントをまとめると、上記の通り。
ピンチのホームランダーに舞い込んだ真実。この血縁関係は、果たしてどう転ぶのか。いよいよ次がシーズン3最終話!
第8話(最終話)「焦土へのいざない(The Instant White-Hot Wild)」
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第8話(最終話)は、マロリーが匿うライアンの元へホームランダーがやってくるところから始まる。
ライアンはブッチャーから見放されたことで心に不安を抱えていた。そんな中「お前への愛は不変だ」と伝えるホームランダーを受け入れてしまう。
アニーの隠し撮りによって、メイヴ解放を求めるデモが行われる一方で、依然としてホームランダーを支持する層も主張を繰り返す。メイヴは眠らされて場所を移動されられるも、いとも簡単に脱走に成功する。
ブッチャーはノワールとホームランダーの元へ行き、決着をつけるというが、ソルジャー・ボーイは自分の息子を殺せるか迷っている様子。
強さとは
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フレンチーは、ロシアの神経剤「ノビチョク」をアニーの手配で手に入れていた。MMは、娘ジャニーヌに再びトラウマを与えてしまったことを相談すると、フレンチーは理解を示しつつ「お前は俺の知る最高の男だ」と励まし、真実を伝えるようアドバイスするのだった。
ブッチャーは、道中のガソリンスタンドでヒューイを気絶させ、ホームランダーとの戦いから逃げたことにする。
そんなヒューイを迎えに来たのはアニーだった。ブッチャーから時効性Vの副作用について聞かされていなかったことに腹を立てるも、ヒューイはブッチャーが自分のことを守ったのだと主張する。
ヒューイは自分の父親について語り始める。子どもの頃、頼りない父を弱くて惨めに思っていたが、そうではなく、どんな時も寄り添ってくれたことから強さとは何かを学んだと言い、アニーに謝罪をする。
その後、脱走したメイヴと合流したヒューイたち。ソルジャー・ボーイがホームランダーの父親であることを共有する。
一方、アニーは来る戦いを前に、ヴォートタワーにいる数千人の人間を避難させようと働きかけるも取り合ってもらえず苛立ちをみせる。
そんな中、ヒューイはブッチャーの奥底に善の部分を見出し、「救う価値がなくても救い出す」と強調するのだった。
ヴォート関係者
アシュリーとディープがメイヴの逃亡をホームランダーへ報告する中、ブラック・ノワールが戻り、「ソルジャー・ボーイは俺たちを殺しに来る」と伝える。
Aトレインは、兄ネイサンに会いに行き、「残りの人生で償いたい」と伝えるも、ブルー・ホークを殺したことを見抜かれ、「お前はいつも自分のために行動し事態を悪化させる、俺の人生に関わるな」と言われてしまう。
ブラック・ノワールが剣を研いでいるところにホームランダーがやってくる。
透視能力があるホームランダーは、ソルジャー・ボーイが父親であることを知っていたのかと尋ねると、その反応を見て、悲しい表情を浮かべながらもノワールの腹から腸を引きずり出すのだった。
その後、Aトレインとディープ、アシュリーの前で“君たちより価値があった”ノワールを排除したことを明かすホームランダー。
ディープがヒーローガズムで仕事せずにタコとセックスしていたこと、ストレスで髪をむしる癖のあるアシュリーがすでに髪がほとんどないこと、Aトレインが同じヒーローのブルー・ホークを殺したことをそれぞれ指摘し、「君らは家族ではない」と言い放って去っていく。
その後、ディープはホームランダーに耳打ちの指示をされたことで、副大統領候補のラマー・ビショップをプールで溺れ死にさせてしまう。
ソルジャー・ボーイの過去
ソルジャー・ボーイはブッチャーに自分の過去について語り出す。製鉄所のオーナーだった父親の元で育ち、粗悪な少年だったため寮を追い出されるも、暴力は受けず、「期待外れ」と言われたという。
ソルジャー・ボーイは自力で父親の友人である、ヴォート博士のコンパウンドVの治験に参加し、力を手に入れたという。しかし父親には「近道をした」と言われてしまったと語る。
「父親よりはうまくやれるはずだ」と、唯一の血筋であるホームランダーへの情をチラつかせるが、ブッチャーは「あんたの子どもではない」と説得する。
ブッチャーの元へたどり着いたヒューイたち。止めてほしかったんだろうとブッチャーを説得しようとするも、メイヴがフレンチーから「ノビチョク」を奪ってしまい、ソルジャー・ボーイがやってきたことで説得は失敗する。
ブッチャーとメイヴ、ソルジャー・ボーイを残し金庫に閉じ込められてしまう。
交錯する戦闘
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ヴォートに入ったブッチャーとメイヴ、そしてソルジャー・ボーイは、ホームランダーに接触する。
ホームランダーはソルジャー・ボーイに手を組むことを提案し、ダメ押しにライアンを連れてきていた。その姿をみたソルジャー・ボーイは、「俺が育てていればもっとマシだったろうな」と失望し、ホームランダーの首を掴む。
すると、ライアンがビームを発し、ソルジャー・ボーイを攻撃する。今度はライアンにも構わず攻撃するソルジャー・ボーイをみたブッチャーがソルジャー・ボーイを攻撃するという入り乱れた展開に。
亡き妻ベッカとの約束を守るためだと言い、ブッチャーはソルジャー・ボーイと戦う。一方で、メイヴはホームランダーに戦いを挑む。
ソルジャー・ボーイに押されるブッチャーは、ピンチを迎えるも、そこにアニーとMMが参戦する。
そんな中、ヒューイは社内放送を使って避難を呼びかけ、フレンチーとキミコはヴォートのラボでノビチョクを制作し、キミコに託す。
メイヴはホームランダーに片目を潰されるも、なんとか食らいついていた。
一方、ソルジャー・ボーイに追い込まれていたザ・ボーイズたち。ヒューイは手にしたコンパウンドVを使用するか迷うも、戦場である空間の電気出力を最大に引き上げることでアニーの力をサポートする。
それによりソルジャー・ボーイに一撃を見舞い、倒れ込んだところにMMとキミコ、アニーの3人がかりで抑え込みノビチョクを吸わせることに成功する。
しかし、ソルジャー・ボーイは最後の力を振り絞り、エネルギーブラストを放とうとしていた。
すると、メイヴが命がけでソルジャー・ボーイに突っ込み、ヴォート社から飛び降りると、ヴォート外部で爆発するのだった。
残されたのはホームランダーだったが、ライアンが「パパ、家に帰ろう」と言うと、それに従って2人は立ち去っていく。
それぞれの“その後”
報道ではメイヴは死んだこととして処理された。
ブッチャーは余命数ヶ月から長くても1年半だと告げられる。
MMは娘ジャニーヌに、「スーパーヒーローが善人とは限らない」と言い、ソルジャー・ボーイに祖父が殺されたことを正直に伝える。
アニーは、能力を失ったメイヴに再会する。彼女は元恋人のエレナとともにホームランダーに見つからない場所へ行くと話す。
一方、アシュリーはメイヴが生きている映像を見つけるも、その映像を削除する選択をとる。
マロリーが見つめる先には、眠らされてカプセルに入れられるソルジャー・ボーイの姿があった。
ディープは、別れた妻カサンドラが「本当のケヴィン(ディープ)を知ったら誰も好きにならない」と、自身の著書の続編を出版する様子をテレビで見ながら涙を流していた。
アニーはスターライトの衣装を捨て、「力を与えるのはスーツでもヴォートでもない、自分でいることが力になる」と語ると、ザ・ボーイズのメンバーも彼女を喜んで受け入れる。
一方、テレビでは、新たな副大統領候補としてヴィクトリア・ニューマンの姿が映される。それを見たブッチャーは「あの女は始末しなきゃな」と言うのだった。
ヴォート社前にあったソルジャー・ボーイの銅像は過激な愛国主義を掲げる「ストームチェイサー」たちによって倒された。そこへホームランダーがやってくると、息子のライアンを紹介する。
ところがホームランダーは、彼を「ファシスト」と呼び、ライアンにモノを投げつけたスターライト派の男を大勢の前でビームで殺害してしまう。
しかし、その場にいたトッドが真っ先に歓声を上げると、それに続いて観客も大歓声が上がり、それを見たホームランダーは満足げな笑みを浮かべ、同時に隣りにいたライアンも笑みを浮かべるのだった。
第8話(最終話)のネタバレ感想と解説・トリビア
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シーズン3の完結となる第8話。
ザ・ボーイズにとっては、結果的にホームランダーを倒せず、振り出しに戻った印象はあるものの、内省的にも状況は好転しているとみられます。
それが如実に現れたのがバトルシーン。「肉体的な強さ=強さ」と潜在的に思っていたヒューイが、自分が時効性Vを使うのではなく、電力を上げてアニーのサポートを選ぶシーン。
シーズン3を通したヒューイとアニーの複雑な関係性への決着がついた胸熱な展開でした!
そしてヴィクトリア・ニューマンがホームランダー側についたことで、明確にターゲットとなるとみられます。
彼女はしたたかで、ホームランダーにライアンの場所を提供する代わりに副大統領候補を暗殺し、着実に自分の地位を高めています。
失脚したエドガーがヴォートを通して、ホームランダーとともにヒーロー社会を掌握していたのに対し、もしニューマンが大統領に上り詰めてしまったとしたら、アメリカ全体を掌握することになるので、エドガー以上の驚異になり得ることが想像できます。
一方で、ホームランダーをコントロールする者はすでに誰もおらず、息子のライアンが彼の意志を(悪い意味で)順調に受け継いでいるようなので、ライアンの動向次第で圧倒的に恐ろしい展開にもなり得ます。
ホームランダーがラストに、スターライト派の一般人を殺した描写は、ドナルド・トランプ氏が2016年の大統領選前に、「ニューヨークの5番街で人を撃っても私の票が減ることはない」と豪語した様子を地で行くようでした。
そもそもライアンには、ブッチャーにしてもホームランダーにしても、どちらが親であっても暗い将来を歩むことが想像できるので、宿命論ではないけれど、親のエゴにより子どもの選択肢が狭められる残酷さが悲しく映ります。
あと、ブラック・ノワールは生きていて欲しいと感じてしまいます。ヴォートに忠誠を誓って信じ続けた男だったからこそ、あっさりいなくなってしまうにはもったいないと感じさせられます。
ブッチャーの余命も迫る中、いよいよクライマックスも近いと感じさせます。当然ながらブッチャーは自分の余命を明かすようなことはしないので、ある意味自己犠牲的な倒し方をするのかも知れません。
シーズン3は、これまで以上に社会風刺が強くなっていると感じました。
それこそ『ザ・ボーイズ』の魅力の代表的な部分であるので、ニューマンが本格的にカラムであろう次のシーズンは、より政治的な要素が強まると見込めます。
時代の流れを汲み、その要素を取り入れながらエンタメとするドラマだからこそ、面白いんですよね!
第8話(最終話)のまとめ
第8話(最終話)のポイントをまとめると、上記の通り。
シーズン4も楽しみです!
まとめ:『ザ・ボーイズ』シーズン3もめちゃくちゃ面白かった!
今回は、Amazonオリジナルドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3を全話ネタバレありで解説してきました。
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