『ザ・ボーイズ』シーズン4

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海外ドラマ

【ネタバレ考察】『ザ・ボーイズ』シーズン4を全話ラストまで徹底解説

Amazonオリジナルドラマとして“最高の評価と視聴率”を記録した海外ドラマシリーズ『ザ・ボーイズ』

このシリーズは、従来のスーパーヒーロー作品に一石を投じる革新的なシリーズで、アメコミの典型的なヒーロー像を覆し、彼らの裏の顔や人間性を大胆に描くことで、現実社会の問題を浮き彫りにしています。

物語は、超人的な力を持つ"ザ・セブン"を率いる巨大企業ヴォート社と、彼らの腐敗に立ち向かう一般人集団"ザ・ボーイズ"との対立を中心に展開されます。

シーズン3では、ソルジャー・ボーイの登場と暴走、時効性Vの登場により、ザ・ボーイズはそれらを駆使してホームランダーを追い詰めたものの、ホームランダーとヴィクトリア・ニューマンが同盟を組み、さらなる脅威として立ち塞がりました。

一方、スピンオフ『Gen V』では、ヴィクトリア・ニューマンと同じく、血液を操る能力者マリー・モローの登場や、能力者の大学ゴドルキン大学で「能力者を殺すウイルス」が開発されていることが明かされました。

シーズン4では一体何が起きるのか。

本記事では、『ザ・ボーイズ』シーズン4をラストまで、物語の内容と現実世界を風刺する背景まで詳しく解説していきます。

まめもやし
まめもやし

これまでのシーズンも詳しく解説しているので、合わせてチェックしてみてください!

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ネタバレあり

以下では、ドラマの結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

『ザ・ボーイズ』シーズン4では誰が死んだ?

物語上、重要な人物で、『ザ・ボーイズ』シーズン4で死亡したキャラクターは以下の通り。

死亡したキャラ(話)役柄・死亡した原因
『ザ・ボーイズ』のトッド
トッド(第1話)
M.M.の元妻モニークが付き合っていたホームランダー信者の男性。ホームランダーとセージの策略で、スターライターによる被害者と見せかけるために、ホームランダーに命じられたブラック・ノワールによってバットで撲殺される。
『ザ・ボーイズ』のコイ
コイ(第2話)
ヴォート社のスタントマン。ライアン救出作戦で犯人役を演じるが、ホームランダーに迫られたライアンが勢い余って投げ飛ばし、ビルの壁に激突して死亡。
『ザ・ボーイズ』のスプリンター
スプリンター(第2話)
自分の複製を生成することができる能力者。陰謀論者のイベント「トゥルースコン」でファイアクラッカーとともにザ・ボーイズと戦い、ブッチャーとM.M.によって殺される。
『ザ・ボーイズ』のアニカ
アニカ(第3話)
ヴォート社の犯罪分析部門のアナリスト。犯罪分析部門の情報が漏洩し、スターライトと電話で話していたことを打ち明けると、その犯人を追っていたホームランダーによってレーザーで頭を撃ち抜かれて殺される。
エゼキエル
エゼキエル(第4話)
キリスト教の慈善団体サマリタンズ・エンブレイスの代表で腕が伸びる能力を持つ。ファイアクラッカーの楽屋トラックに侵入したフレンチーに襲いかかるが、駆けつけたブッチャーとの戦いで、ブッチャーによる何らかの力によって殺される。
キャメロン・コールマン
キャメロン・コールマン(第5話)
ヴォート・ニュースのアンカー。アシュリーがCEOを解任され、彼女とのBDSM関係が終わった後、アシュリーによって濡れ衣を着せられ、ヴォート内の裏切り者を探すホームランダーたちによって殴り殺される。(死亡推定)
ヒュー・キャンベル
ヒュー・キャンベル(第5話)
ヒューイの父親。脳卒中で昏睡状態となるが、ヒューイの母親ダフネがヒューイからコンパウンドVをくすねて投与し、能力者となる。しかし、病院内で暴走したことでヒューイが安楽死させる。
テックナイト
テックナイト(第6話)
探偵ヒーローで犯罪ドキュメンタリー番組の司会者。自身の屋敷の地下に「テックケイブ」というセックスルームを保有し、ウェブウィーバーを常習的に性的虐待していた。ヒューイらが潜入してセージらの計画を突き止めた後、テックナイトの使用人だったイライジャによって首を絞められて殺される。(死亡推定)

第1話:卑劣の極み(Department of Dirty Tricks)

『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話のニューマンとロバート・シンガー
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楽しませるおもちゃにすぎない

セックス・ピストルズの「God Save The Queen」が流れる中、ヴィクトリア・ニューマンが壇上に登場し、アメリカ大統領候補のロバート・シンガーがコロラド州とネバダ州で勝利したことを伝える。「より強いアメリカ」というスローガンが掲げられ、選挙会場は大いに盛り上がっていた。

その中にはザ・ボーイズのメンバーの姿もあった。ヒューイアニー(スターライト)は監視カメラをハッキングし、M.M.(マザーズ・ミルク)がその映像を監視している。フレンチーキミコは会場スタッフに変装し、嘔吐しながら誰かと話していたブッチャーと合流して会場に入っていく。

一方、ホームランダーはトイレで自分の陰毛の一本が白髪になっていることに気づく。その後、多くの人がいることで不安になっているライアンに「彼らはただの人間で、俺たちを楽しませるためのおもちゃだ」と伝え、会場に入っていく。

M.M.はホームランダーが会場にいることに気づき、ブッチャーに彼と関わらないよう警告する。ホームランダーは会場に入るとすぐにニューマンのもとに向かい、ニューマンは2人で話すために、彼女の娘ゾーイとライアンを一緒にさせる。

ニューマンはホームランダーに対し、彼が公衆の面前で市民を殺したことで(シーズン3第8話)、殺人罪で起訴されて裁判中であり、それが株主に不評だったことを伝え、取引は過去の話だと告げる。しかし、ホームランダーは狂気じみた笑みを浮かべ、「新しい歴史を作ろう」と言い、群衆の前で注目を集め、「ホワイトハウスで女の子たちがやり遂げる(Girls get it done in the White House)」と言って拍手を促す。

「女の子たちがやり遂げる(Girls get it done)」は、シーズン2第2話でヴォート社が「女性の力」と掲げてスターライトとメイヴ、スターライトのセブンの女性3人を集めてプロモーションに掲げた言葉です。

ホームランダーとブッチャー

一方、ブッチャーは厨房にやってきたライアンとゾーイの前に現れ、ライアンと2人で話をさせてもらえるように頼む。ブッチャーはホームランダーから離れて一緒に来るように促し、それが母ベッカの望みでもあると伝えるが、その場にホームランダーが現れる。

ホームランダーは「ここはネバーランド・ランチじゃない」と要求を退け、ブッチャーの頭を透視し、脳内に黒い塊があることを知り、ブッチャーが余命短いことに気づく。そしてホームランダーはライアンを連れて会場へ戻っていく。

「ネバーランド・ランチ」はマイケル・ジャクソンの自宅兼遊園地で、多くの子供たちと過ごした場所ですが、彼が性的虐待疑惑を受けると、犯罪現場とみなされるようになりました。ネバーランド・ランチに関しては、Netflixで配信しているドキュメンタリー映画『ネバーランドにさよならを』でも見ることができます。

計画の失敗

一方、フレンチーとキミコはニューマンの部屋に入り、彼女の目薬をフレンチーが作った混合物に入れ替えるが、ゾーイが部屋に戻って来てしまう。2人に協力していたCIAエージェントがゾーイを立ち去らせようとするが、ゾーイはフレンチーとキミコに気づき、口から四本の触手を繰り出し、CIAの2人を殺してしまう。

フレンチーとキミコはゾーイから逃げ出し、アニーの指示でホテルの8階から飛び降りて助けられる。キミコはゾーイに片腕を切り裂かれたことで、顔面から地面に落ちてしまうが、すぐに再生する。

一方、バンに残っていたヒューイのもとにニューマンが現れる。ヒューイは驚きながらも、ニューマンが娘にコンパウンドVを与えたことを問い詰めると、ニューマンは娘を守るためだと答える。ニューマンはヒューイを気にかけていることを伝えると、ヒューイはその瞬間を利用して、フレンチーが調合した酸をニューマンに浴びせる。しかし、彼女には全く効果がない。するとヒューイは、議会での頭部爆破事件の犯人であることをマスコミに流すと脅す。

ニューマンは映画『ウォー・ゲーム』のように、お互いが抑止力として停戦することを提案するが、ブッチャーが現れて彼女の頭部を銃で撃つ。しかしこれも全く効かず、ニューマンは会場に戻っていく。

CIAとの関係

翌日、M.M.とブッチャーはCIAに呼び出される。グレイス・マロリーはブッチャーに腹を立て、M.M.だけが会議室へ案内される。そこにはロバート・シンガーの姿があり、彼がザ・ボーイズを援助するCIAと協力していたことが判明する。シンガーはザ・ボーイズに協力したCIAのエージェント2人がゾーイに殺されたこと、ニューマンを殺せなかったことを問い詰める。

シンガーは選挙で自分が大統領となり、ニューマンが副大統領となることで自分の首を狙いに来ることを恐れており、「ニューマンの排除が最優先条件」と念を押す。

ブッチャーが会議室の外で待っていると、CIA時代の知人であるジョー・ケスラーに声をかけられる。ケスラーは、ブッチャーがザ・ボーイズのリーダーから降ろされたことに触れ、マロリーのような政治的なやり方ではなく、一緒に能力者を倒そうと持ちかける。

その後、M.M.の部屋を元妻モニークが訪問する。モニークはトッドを追い出していたが、娘のジャニーヌはトッドが好きで、彼がますますホームランダー信者になっていることを心配していた。そこでモニークはM.M.にトッドを追跡してほしいと頼む。

印象操作

ホームランダーが悪夢から目覚めると、Aトレイン、ディープ、新しいブラック・ノワール(中身は別人)らとセブンの会議を行う。アシュリーは、新しいセブンメンバーが必要だと言い、世界一の頭脳をもつシスター・セージら複数の候補を挙げる。

ホームランダーがラングラーという男に興味を示すと、すぐに全員が同意する。ホームランダーは自分のイエスマンしかいないことにうんざりし、ディープにAトレインの陰部をしゃぶるように命じると、2人はそれを実行しようとする。ホームランダーは自分に歯向かう勇気があるものはいないと呆れて去っていく。

セブンの候補として紹介されたラングラーの画面では、彼の特殊スキルが人気ゲーム『コール オブ デューティ』のキャラコン(FPSゲームでの動作のコツのようなもの)同じになっています。CoDシリーズはザ・ボーイズとのコラボもやっているので、その関連での演出でしょう。

ヴォート社のテレビでは、ホームランダーの訴訟資金集めのCMやヴォート・オン・アイスのCMが流れ、ニュース番組ではアンカーのキャメロン・コールマンが、ホームランダーが殺した男がライアンを襲ったと主張する。一方、別番組では裁判所の外で、スターライター(スターライト支持者)とホームチーマー(ホームランダー支持者)が一触即発の状態にあることが報じられる。

また「The Truthbomb with Firecracker」という右翼の陰謀論ポッドキャスターであるファイアクラッカーは、ホームランダーが殺した人物が小児性愛者だったと主張していた。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話で密会するニューマンとブッチャー
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ブッチャーとニューマンの取引

ザ・ボーイズの本部では、アニーが飛行技術習得のために練習する一方、フレンチーは調合した酸が効かなかったことに苛立っていた。ブッチャーが本部を出ていくと、アニーはヒューイにブッチャーが自分たちを殺しかけたことを伝え、ザ・ボーイズからブッチャーを追い出そうと説得する。

一方、ブッチャーは廃墟となったヴォート・ビデオ(ビデオ・DVDレンタルチェーン店)でニューマンと秘密裏に会合する。ブッチャーはニューマンに、ホームランダーからライアンを引き離すことに協力してほしいと要求し、その代わりにヒューイが持っているニューマンが能力者である証拠となるレッド・リバーのファイルを手渡すことで取引をする。

レッド・リバーは、ヴォート社が孤児の能力者たちを監視する施設で、ニューマンは「ナディア」という名前でこの施設にいて、スタン・エドガーに養女として引き取られました。スピンオフ『ジェン・ブイ』の主人公マリー・モローもレッド・リバーの出身者です。

スターライトハウスでは、役員であるキアラがアニーに、スターライトとして呼びかけてほしいと伝えるが、アニーはヒーロースーツを着てスターライトとなることはやめたと伝える。一方、フレンチーがアニーに紹介して働いているコリンのことを評価するが、フレンチーとコリンの間には性的緊張があり、その様子をキミコは察していた。

スターライトハウスは、シーズン3の第2話において、ホームランダーの誕生日イベントでスターライトが発表した、危険な境遇にある若者を支援するNPO法人。

ヒューイはボイスメールが届いていることに気づき、父親のヒューが脳卒中を起こして昏睡状態になっていることを知る。ヒューイは父からの電話に出なかったことを後悔し、アニーとともに病院へ向かうが、ブッチャーはヒューイを慰めてハグしたときに、密かにニューマンのデータが入ったヒューイのUSBメモリを盗んでいた。

シスター・セージ

ホームランダーは白髪になった陰毛が増えていることに気づき、それらを抜き取って瓶に保管する。保管場所には、マデリンの母乳瓶とストームフロントの写真があった。その後、シスター・セージのもとを訪ねると、彼女に「最も賢い女性」であることを証明しろと迫る。セージはホームランダーの状態を見抜き、誰もが彼の年齢で経験し得る「中年の危機」にあると指摘する。

ホームランダーは、自分がヴォート社の頂点になったにも関わらず物足りなさを感じていることを吐露し、セージに助言を求める。するとセージは古代ローマやギリシャを例えに出し、人々が勝手に対立するように仕向け、そこに舞い降りて救う案を提案する。その計画を聞いたホームランダーは、セージにセブンに加わるように頼むが、彼女は断る。

ホームランダーとセージの陰謀と策略

翌日、M.M.とフレンチー、キミコの3人はトッドを探しており、彼が数人の男たちとともにセージと会い、建物内に入っていく様子を発見する。建物内では、トッドを含めたホームランダーの熱狂的ファンの3人が、セブンとの交流イベントが行われていた。

そこにやってきたホームランダーは、ディープとAトレイン、ブラック・ノワールに木製バットを渡し、3人を殴り殺すように命じる。Aトレインは躊躇する中、ディープとブラック・ノワールはトッドら3人を撲殺する。

建物の外にいたM.M.たちは、建物からホームランダーが出てきて裁判所へ飛び去っていく様子を目撃する。裁判所の外では、スターライターとホームチーマーが判決を待っていた。ホームランダーの無罪が確定すると、スターライターに紛れ込んでいたセージが、歓喜するホームチーマーに向かってコーヒーを投げつけて扇動する。

それによって敵対する勢力は大乱闘に発展し、裁判所に駆けつけたM.M.とフレンチー、キミコらが止めに入る。その様子をヒューイと病室で見ていたアニーも駆けつける。フレンチーはコリンを助けると、2人はキスをする。

そんな中、建物の中で待機していたAトレインは、渋々ながら命令に従い、トッドら3人の死体を乱闘の中に運び込み、彼らが乱闘で殺されたように見せかける。その後、ヴォート社のニュース番組でコールマンは、「スターライターが3人の罪なき愛国者を死なせた」と報じる。

ホームランダーはニュースを見ながらミルクで祝杯をあげるが、ライアンは不安そうな表情で、「ブッチャーに死んでほしくない」と打ち明ける。一方、ディープは血に染まったスーツを洗いながら、クローゼットの奥に隠していたタコのアンブロシウスと会話する。

アンブロシウスは、シーズン3第6話の「ヒーローガズム」でディープが出会って性的関係を持ったタコで、処分を命じられていましたが、部屋に隠していることが判明します。アンブロウシスの声優は映画『フィクサー』でも有名なティルダ・スウィントンです。

フレンチーはコリンの部屋のベッドで目を覚まし、彼の部屋に飾ってある家族写真を見つけると、それを伏せる。一方、病室で父親を見守るヒューイのもとに、ずっと会っていなかった母親がやってくる。

本部にいるブッチャーは、相変わらず姿の見えない人間と会話しているが、それがベッカの幻想であることが判明する。彼女はブッチャーにライアンをホームランダーの二の舞いにしてほしくないこと、ヒューイを危険にさらすべきではないと伝える。

その後、ブッチャーはニューマンに「レッド・リバー」のファイル名のデータを送るが、彼女がファイルを開くとそれが「肛門(asshole)」の写真であることが判明する。

第1話のネタバレ感想・解説・考察・小ネタ

ポイント

  • ザ・ボーイズのリーダーはブッチャーからM.M.に変わっている
  • ロバート・シンガーはCIAのマロリーと協力していて、ニューマン排除が最優先だとM.M.に指示する
  • ブッチャーはCIAの知人ケスラーと協力し、ザ・ボーイズとは別に能力者を倒すために動こうとしている
  • ホームランダーと最も賢い人間のシスター・セージが協力し、乱闘を扇動する
  • ブラック・ノワールの中身は別人になっている

M.M.役を演じているラズ・アロンソが、これまでのシーズンに比べてかなり痩せていて、その姿に心配になった人もいると思いますが、彼はDNA検査をして健康のため食事を変えたそうで、むしろ健康になっているとのこと(ラズ・アロンソのInstagramより)。シーズン4の初登場シーンでは、キミコが「働き過ぎだから食べろ」とパーティー会場の軽食を持ってきてイジり、その変化について触れられています。

最も賢い人間であるスーパーヒーロー、シスター・セージの登場と、彼女がホームランダー側についたことは、ザ・ボーイズにとって非常に厄介です。シスター・セージに会いに行く場面では、ホームランダーが初めて私服を着ている姿も描かれました。

シーズン4では、現実のアメリカと並走するように大統領選挙の様子が描かれています。ホームランダーは自分の邪魔者を排除し、ヴォート社の実験を握ることになりましたが、それは結果としてイエスマンしか残っていないことの現れです。そんな彼が世界一賢い人間であるシスター・セージをセブンに引き入れようとする様子は、なんとも滑稽です。

一方、ザ・ボーイズもそれぞれが抱える問題と向き合うことで、チームとしての関係はうまくいっていない様子が伺えます。シーズン4の第1話としては情報量が多く、エピソードが散らばっている印象もありますが、ホームランダー、ザ・ボーイズ、ニューマンの複雑な関係がどうなっていくのかが気になるところです。

第2話:堕ちた者たちの生き様(Life Among the Septics)

『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話のAトレイン
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Aトレインの新作映画

ノトーリアス・B.I.G.の「Hypnotize」が流れる中、アダム・バークが監督するAトレインの新作映画『トレーニング・Aトレイン』の撮影が行われていた。映画はウィル・フェレル(本人)がAトレインのコーチ役を演じ、Aトレインの誕生秘話を描く物語だ。しかし、Aトレインは映画で兄がドラッグの売人にされ、人種差別的なステレオタイプ表現であることを訴えるが、バークは聞き入れない。

一方、フェレルも物語が『しあわせの隠れ場所』に似ていると指摘するが、バークはフェレルに「オスカーの匂いがする」と伝えて安心させようとする。

フェレルが言及した2009年の映画『しあわせの隠れ場所』は、白人家族に引き取られて育てられた黒人少年が、アメフトのスター選手となる、実話を基にした物語。しかし、映画のモデルとなったマイケル・オアーさんは、実際の後見人であるトゥーイー家に裁判を起こし、法的に対立しています。

一方で、映画でトゥーイー役を演じたサンドラ・ブロックは主演女優賞を受賞しています。その事実により、映画がハリウッドがこれまでも繰り返し描いてきた「白人の救世主」として描いていることが議論を呼ぶ作品となっています。(BBC Newsより

また、ウィル・フェレルはアメリカを代表するコメディ俳優の一人ですが、2007年のアカデミー賞で「コメディ映画はオスカーが取れない」と、ジャック・ブラックとジョン・C・ライリーとともに歌っています。そしてその15年後、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がコメディ映画で作品賞を受賞しました。

その後、Aトレインはブラック・ノワールに声をかけられる。ノワールは前任のノワールの真似をしていること、ホームランダーの命令に絶対服従しなければならないことに困惑していると伝えるが、Aトレインは「ノワールなら黙って指示に従え」と伝える。

本当のブラック・ノワールは、シーズン3第8話で、ホームランダーの父親がソルジャー・ボーイであることを知りながら黙っていたことで、ホームランダーに腸を引きずり出されました。生死は曖昧でしたが、彼が死んで後任に代わったと判断できます。

ヒューイの前に現れた母親は、ヴォート社の美容コンサルタントであることを明かす。昏睡状態の父親の前で美容ケア品「ヴォータリティ」を並び立てる母親の姿を見て、ヒューイは困惑しながら、ヴォート社が恋人を殺した会社であること、自分を置いて出ていったことを怒鳴りつける。

すると母親は、ヒューイの父親ヒューが医療上の決定を含む委任状を渡したことを明かし、ヒューイは父が自分ではなく母親を選んだことに納得できずにいる。

ライアン救出作戦の予行練習

フレンチーはコリンの部屋を複雑な気持ちで後にする。一方、キミコはセラピーを受けているが、過去のトラウマを聞かれると打ち明けようとせずに出ていく。

ザ・ボーイズ本部で、ブッチャーは自分が余命まもないことを明かす。するとザ・ボーイズたちはブッチャーが黙っていたことを指摘し、M.M.はブッチャーにザ・ボーイズを去るように伝える。

ヴォート本社では、ホームランダーとセージ、アシュリーらの前で、脚本家コンビがライアンの救出作戦のストーリーをプレゼンテーションする。そこでは、ライアンが「ホームランダーの偉大な息子、ホームボーイ」となる内容だったが、セージが口を挟み、提案を却下し、ライアンは「史上初のナチュラル・ボーン・ヒーロー(生まれながらのヒーロー)」であることを売りにすべきだと主張する。

セージが提案する「犯罪日程表」をライアンに渡すと、ホームランダーは自分の名前が載っていないことを気にするが、ライアンのためだと説得する。その後、アシュリーはセージが乗るエレベーターに乗り込み、ホームランダーへの口の聞き方を注意するが、皮肉で返される。

その後、ディープも一緒になると、彼はライアンの救出作戦に加わりたいと申し出る。するとアシュリーは「子供向けの映画に獣姦監視リストにのっている人物を参加させるほどバカじゃない」と言い放ち、エレベーターを降りていく。アシュリーが去ると、セージはディープに、アシュリーの口の聞き方を許す理由を尋ね、ディープの方が「遺伝的に優れている」と伝え、そのように振る舞うべきだと告げる。

ヴォート社のスタジオでは、ライアン救出作戦の予行練習が行われていた。スタントマンのコイがアクションの指導をするが、ライアンは自信がなさそうにしている。ディープも撮影に参加し、現場でアシュリーを見つけると、セージのアドバイスを実践して高圧的に近づき、「自分に生意気な口を聞いたらトイレでクソをした後に溺れさせる」と言い放ち、アシュリーを怯えさせる。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話のトゥルースコンにやってきたブッチャーとフレンチー、M.M.
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陰謀論イベント「トゥルースコン」

ザ・ボーイズの本部では、M.M.がトッドたちが殺される前に撮った写真を見せ、裁判前にホームランダーがビルから出ていくのを目撃したことを明かす。すると、アニーは「Aトレインの仕業に違いない」と言い、写真に映っているセージも関与していると考える。

M.M.はセージのスマホを盗聴し、ヴォートの宿泊施設を予約している情報を手にする。アニーとヒューイはAトレインを調べることになり、フレンチーとキミコが一緒に行くことになる。

M.M.とフレンチー、キミコの3人はヴォートのイベント会場にやってくると、会場にはM.M.のパスワードを解除して場所を知っていたブッチャーがいた。渋々ながらにブッチャーも参加し、4人は会場内に入っていく。トーキング・ヘッズの「Burning Down the House」が流れる中、「トゥルースコン」という陰謀論者のイベントが行われていた。

この会場では、「デッドインターネット理論(Dead Internet Theory)」など、実在する陰謀論のメッセージも確認できます。中には「ソルジャー・ボーイがCIAによって囚われている」というザ・ボーイズにおける「事実」も存在しているのも面白いポイント。

一方、キミコは児童売買組織に関するポスターを目撃し、その写真と自身の過去のトラウマを結びつけそうになり、気を紛らわせるためにビールを飲んで酔っ払う。

ザ・ボーイズは、「スターライトとハリウッドの小児性愛者陰謀団」という題名の会場に入ると、複数の同じ見た目をしたスプリンターという男たちと陰謀論ポッドキャスターのファイアクラッカーが観客の前でプログラムの準備をしていた。

ファイアクラッカーは「これから2時間かけてスターライトとオプラ・ウィンフリーとトム・ハンクスが徒党を組んで悪魔のデリバリーサービスを運営していることを証明する」と信者たちに呼びかける。

シーズン4から登場するファイアクラッカー役を演じているのは、ヴァロリー・カリー。彼女は大傑作ゲーム『デトロイト ビカム ヒューマン』の主人公の一人、カーラ役としても知られています。

【映画好きほどハマる】映画のようなゲームおすすめ7選

スプリンターが会場を離れると、M.M.はフレンチーとキミコに追跡させる。酔っているキミコは、フレンチーがコリンからのメッセージが届いたことに気づくと、フレンチーの代わりに誘惑するようなメッセージを送り、自分がいることでコリンとの関係に遠慮していると伝えるが、フレンチーはそれは関係ないと主張する。

その後、2人がスプリンターを追いかけると、サウナ施設内でスプリンターたちは、自らの分身と尻の穴を舐め合う自慰行為をしている場面を目撃し、気まずそうにその場を去っていく。

一度見たら忘れないボディホラー映画としても有名な『ムカデ人間』にインスピレーションを受けたトラウマシーン。スプリンター役を演じているロブ・ベネディクトは、『ザ・ボーイズ』のプロデューサーでもあるエリック・クリプキ製作の人気シリーズ『スーパーナチュラル』にも出演しています。

Aトレインの葛藤

一方、Aトレインを追跡していたヒューイとアニーは、公園で彼が甥っ子たちに自身の逸話を明かして感心させている様子を見守る。しかし、そこに兄のネイサンが現れると、Aトレインに真実を話すよう要求する。

ネイサンはAトレインが実際に人を救ったことがないことを明かし、息子たちに近づかないように伝えて去っていく。アニーはAトレインに接触しようとするが、ヒューイはしばらく1人にさせ、その間にAトレインは走り去っていく。

その後、ヒューイとアニーが本部に戻ると、Aトレインの姿があり、彼は2人が自分を監視していたことに気づいていたことを明かす。さらにAトレインは、殺害容疑をかけられていたスターライターの無実を証明する監視カメラ映像が入ったUSBを2人に渡す。その理由を尋ねられると、Aトレインは家族の前で自分の顔に泥を塗らなかったことへのお礼だと答える。

vsスプリンター&ファイアクラッカー

セージはファイアクラッカーに話しかけ、彼女の能力を見せてほしいと頼む。するとファイアクラッカーの能力は指を鳴らして火花を散らすだけだった。さらにセージがファイアクラッカーの「売り」を尋ねると、彼女は「社会に居場所がない人たちに目的を与えること」だと明かす。セージはその答えに満足したようで、午後9時に会議室に来るように伝え、ブッチャーとM.M.はそれを盗聴していた。

ブッチャーはセージから強引に情報を聞き出そうと提案するが、M.M.は一蹴する。それでもブッチャーがM.M.を煽ると、M.M.はブッチャーを殴り倒し、家に帰れと告げる。M.M.とフレンチー、キミコの3人は、セージが話していた部屋の隣部屋に入り、監視と盗聴しようとするが、間もなくセージとファイアクラッカー、ライフルを持ったスプリンターたちが彼らの前に現れる。

セージはザ・ボーイズを殺せばホームランダーが喜ぶと告げて出ていくと、一触即発になるが、フレンチーがスプリンターの1人の目が分身アナルセックスによって充血していることを指摘して時間を稼ぐ。M.M.が銃を奪って攻撃を仕掛ける。キミコはファイアクラッカーと戦い、M.M.とフレンチーがスプリンターたちと戦うが、彼は分身を作り出し、数を増やして攻撃を仕掛ける。

フレンチーとM.M.が別の部屋に逃げ込むと、そこでは『マーベラス・ミセス・メイゼル』をテーマにしたバット・ミツバが行われていた。しかし、全裸で銃を構えたスプリンターたちが入ってきて大混乱になる。

スプリンターは数を増やし続けてM.M.とフレンチーを追い詰め、キミコが頭を撃たれると、ファイアクラッカーは隙を見てライブ配信を始め、フォロワーに「シオニストの陰謀に潜入したことでCIAからの攻撃を受けている」と伝え、その証拠としてエイブ・ワイズマン(トニー・シャルーブ)の段ボールの切り絵を見せる。

『マーベラス・ミセス・メイゼル』はAmazonプライムオリジナルの歴史コメディドラマシリーズ。バット・ミツバとは、ユダヤ教における女性の12歳の成人式。シオニズムとは、ユダヤ人の国を作ろうという運動で、トニー・シャルーブ演じる『マーベラス・ミセス・メイゼル』のキャラクター、エイブ・ワイズマンを見た目でシオニストと断言して配信する陰謀論者らしいファイアクラッカーの姿が伺えます。

しかし、ブッチャーが現れ、配信中にファイアクラッカーを殴り倒す。さらに、M.M.とフレンチーに加勢し、スプリンターの本体を殺すことに成功し、分身たちも倒れる。ファイアクラッカーは負けを確信して現場を逃げ出していく。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話のライアンとスタントマンのコイ
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ライアンのトラウマ

ライアンの救出劇が実際に行われ、スタントマンのコイが犯人役として少女エリカの頭に銃を突きつけてビルから出てくる。ディープとブラック・ノワールは無力なふりをすると、ライアンが止めに参上し、その様子は行き交う人々のスマホでライブ配信されていた。すべてが台本通りに進んでいたが、突然ホームランダーが現れて「一緒にアメリカを救おう」と言い、ライアンを驚かせる。

固まってしまったライアンにホームランダーは「やれ」と迫り、ライアンはその言葉に押されてコイを強く押しすぎてしまう。するとコイはものすごい勢いで吹き飛び、ビルの壁にぶつかり肉片と化す。ホームランダー以外のその場にいた人々は唖然とした表情を浮かべる。

ホームランダーは、部屋でライアンが泣き崩れている様子を見て、自分が現れたことで視聴数が上がったと励ますが、ライアンは自分がコイを殺してしまったことに動揺していると説明する。ライアンは二度と救出はしないと主張すると、ホームランダーは苛立ち、「彼らは人間だ、おもちゃだ」と言う。

遅すぎるブッチャーの後悔

法廷の外では、ホームランダー支持者3人の殺害の罪を着せられた男たちが釈放され、スターライターたちが歓呼する。ザ・ボーイズの本部では、フレンチーがコリンからの電話を受けず、シェリーに電話をかけてコリンとの関係を相談する。すると彼女は、フレンチーが仕事でコリンの家族を殺したことが彼にバレたらどうなるのかを危惧する。

ヒューイは病室に入り、6歳の時に母親が自分と父親を置いて出ていったことのショックについて話し、もし彼女がこれ以上自分抜きで物事を決めるなら、裁判を起こして委任状を要求するという。

キミコは光解放軍のテロリストがニューヨークにいるという記事を読み、単独で本部を出ていく。その後すぐに本部にブッチャーが現れると、M.M.はスプリンターとファイアクラッカーから救ってくれたことに感謝する。

ブッチャーは、自分が引き起こした混乱と、避けられない死を前に何も解決できなかったことへの後悔を打ち明ける。そしてM.M.に懇願するが、M.M.は「遅すぎる」と、ザ・ボーイズに復帰するのを拒否する。

第2話のネタバレ感想・解説・考察・小ネタ

ポイント

  • ホームランダーがライアンの救出作戦で彼の心にトラウマを刻む
  • 陰謀論イベント「トゥルースコン」での激しいバトル
  • ブッチャーがザ・ボーイズから追い出される

第2話では、ライアンがスーパーヒーローとしてデビューするも、ホームランダーの肥大化した自己顕示欲によって、台本通りの救出作戦が、意図しない殺人に手を染めることになるというトラウマを焼き付けてしまいます。

他のキャラクターの過去を深堀りしているこのシーズンは、「トラウマ」がテーマの1つであることが伝わりますが、現在進行系でライアンがそれを感じることになるのは悲しいところ。

第3話:我らは赤旗を掲げ続ける(We'll Keep the Red Flag Flying Here)

『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話のホームランダー
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新たなセブンの加入

サマリタンズ・エンブレイスの合唱団が合唱を披露し、ホームランダーは群衆の前で信者たちに「スターライトがスーパーヒーローを排除しようとしている」と宣言し、ザ・セブンがそれを阻止すると伝え、ステージにセブンのメンバーを招く。ディープ、Aトレイン、ブラック・ノワールに加えて、2人の新メンバーであるファイアクラッカーとシスター・セージを紹介し、そして最後の一枠には、息子のライアンが入るかもしれないことをほのめかす。

一方、テレビで集会の中継を見ていたブッチャーは、ジョー・ケスラーからライアンを沈静化させるための薬を手にする。ブッチャーはライアンに薬を飲ませ、家に戻るよう説得する計画を練っていた。ケスラーの提案に対し、ブッチャーはホームランダーを倒すために彼を鍛えるつもりはないと明言する。

ヴォート本社で記者会見が行われ、ファイアクラッカーが「スターライト・ハウスで接種しているワクチンは自閉症を引き起こす」と、いつもの陰謀論を展開し、それを見ていたホームランダーは、なぜセージが彼女をチームに引き入れたのか質問する。するとセージは、「ファイアクラッカーによって信者たちをさらに騒がせることで、スターライトに対抗する」と主張する。

スターライト・ハウスでは、ヒューイが母親のダフネから昏睡状態の父親の代理権を求めて弁護士に相談するが、法的にできることはなく、母親と話し合うしかないと告げられる。

フレンチーはコリンと話をしようとするが、銃を持った男が「地下室に子供たちがいるんだろ」と建物内に押し入ったことで中断される。男はスターライト・ハウスが児童売買組織の拠点だという陰謀説を信じていた。フレンチーが彼に迎え撃って殴り倒して撃退する。

これは2016年の大統領選挙期間中に広まった陰謀論「ピザゲート事件」へのリファレンス。民主党のヒラリー・クリントン候補陣営の関係者が、人身売買や児童性的虐待に関与しているという陰謀論が広まり、コメット・ピンポンというピザ・レストランが襲撃の被害に遭いました。

フレンチーは怪我をしたため、コリンが傷の手当てをすると、彼はその流れでキスをしようとする。フレンチーは、自分がコリンの家族を殺した罪悪感と、それを打ち明けられないことに後ろめたさを感じて彼を断ろうとする。しかし、自分の気持ちを否定できずに、2人はキスを交わす。

セージによる新体制

ロバート・シンガーのオフィスでは、シンガーがヴィクトリア・ニューマンに、スーパーヒーローを軍隊、民間警察、政府の役職から退けることを提案する。ニューマンが異論を唱えようとすると、シンガーは「スーパーヒーローはザ・マスクド・シンガーに戻るべき」と主張する。

『ザ・マスクド・シンガー』はAmazonプライムオリジナルの音楽バラエティ番組。有名人がマスクを被って登場し、パフォーマンスと歌声を披露し、覆面パフォーマーの正体を推理する内容。シンガーの言葉が意味するのは、「スーパーヒーローはスーツを着たエンターテイナーでいろ」ということでしょう。

ザ・ボーイズ本部では、キミコが光解放軍のアジトを見つけたとフレンチーに話し、セラピストの言う通りに過去に向き合い、彼らを皆殺しにすると言い、手伝ってほしいと頼み、フレンチーは渋々同意する。

M.M.はファイアクラッカーとセージがセブンに選ばれた背景を探る必要があると考え、Aトレインをスパイにしようと提案するが、アニーとヒューイは否定する。

ヴォート社では、ライアンが「トーナメント・オブ・ヒーローズ」というヴォート社の格闘ゲームをプレイしていた。すると、ブッチャーがライアンにオンライン対戦を申し込み、2人はゲームをしながら会話し、ブッチャーはライアンに自分の家に来て話し合おうと頼む。

このゲームは、格闘ゲーム『モータルコンバット』の「フェイタリティ」という、敗者を惨殺するショッキングな演出にインスピレーションを受けていると想像できます。『ザ・ボーイズ』との相性がとても良く、ぜひとも製品化してほしいと思ってしまいます。そして実は新作の『モータル・コンバット1』では、ホームランダーが参戦しています。

一方、セブンの会議室では、ブラック・ノワールがアシュリーに方向性を尋ねるが、彼女が返事をする前にホームランダーが会議を始める。ホームランダーはアシュリーを降格させてセージをCEOに任命する。セージは、アシュリーをクビにはせず「ドナルド・マクドナルドのようなマスコットが必要」とからかう。

このときブラック・ノワールは、「ゴドルキン大学で舞台芸術クラスを学んだ」と明かしています。スピンオフの『ジェン・ブイ』では、主人公マリーの友人エマが舞台芸術クラスで、講師がアダム・バークであることが描かれていました。もしかすると新しいノワールの中身は、エマとも関連がある人物の可能性もある?

セージはヴォート社の犯罪分析部門から、スターライターのアリバイを証明する監視カメラ映像が盗まれたことを明かし、部門の責任者であるディープを問い詰める。セージは映像にアクセスできる人物のリストを提出するように命じて、ディープを担当から外す。

さらにライアンが複数のスーパーヒーローチームからオファーを受けているが、スターライターが「#RescueRyan(ライアンを救え)」というハッシュタグを使い、抗議していることを明かす。その後、アシュリーはホームランダーへの不満をBDSM関係にあるキャメロン・コールマンにぶちまける。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話のファイアクラッカー
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人は変わらないのか?

ブッチャーはケスラーから手に入れた鎮静剤を混ぜてベッカのレシピを真似たクッキーを焼き、ライアンに食べさせようとする。しかし、ライアンは食べようとせず、ブッチャーは代わりにテーブルサッカーゲームに誘う。

ブッチャーとライアンはゲームをする中で次第に打ち解けていく。するとライアンの救出作戦の話が持ち上がり、ライアンは誤ってコイを殺してしまったことを打ち明け、以前にブッチャーから言われた「こんな息子はいらない」という言葉が今なら理解できると吐露する。しかしブッチャーはその言葉は本心ではないと伝え、「ライアンと仲違いしたまま死ぬことが怖い」と言い、クッキーをゴミ箱に捨てる。

M.M.は良心の呵責に苛まれているAトレインに接触し、ザ・ボーイズに協力するように説得するが、Aトレインは拒否する。

キミコとフレンチーは光解放軍のアジトに忍び込むが、フレンチーはドラッグでハイになっていて傍観するだけで、キミコが一人で武装した男たちを殺害する様子を幻覚を通して見ていた。その後、コリンの幻聴に誘われて別の部屋に入ると、コリンが家族の死体と一緒にいる姿と、リトル・ニーナの指示で自分が殺した人々の幻影を見る。一方、キミコも敵の中に見覚えのある女性を見かけ、彼女を殺さずに見逃していた。

ホームランダーとセージは、スターライトの知り合いだった犯罪分析室のアニカを尋問する。セージは正直に話せば危害は加えないと言うが、彼女がスターライトから電話があったことを明かすと、ホームランダーは彼女の頭をレーザーで貫いて殺害する。それを見ていたアシュリーは恐怖におののき、退職届をシュレッダーにかける。

ファイアクラッカーがヴォート社の自室に戻ると、アニーの姿があった。アニーは彼女が自分を憎む理由を問い詰めると、ファイアクラッカーは、かつて同じヒーローコンテストに参加していたことを明かし、コンテストで勝つためにアニーから容姿を侮辱され、卑劣な噂を流されたことを明かす。アニーは過去の自分の行動を思い出して謝罪するが、ファイアクラッカーは「人は変わらない」と言い、自分が発信すれば世界中がそれを知ることになると伝える。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話のヴォート・オン・アイスのホームランダーを演じるスケーター
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ヴォート・オン・アイスでの危機

ヴォート・オン・アイスのリハーサル会場では、セブンの格好をしたアイススケーターたちが、「キリストをクリスマスに呼び戻そう」と歌い、その様子をM.M.とヒューイは呆然と見ている。

こちらは「ディズニー・オン・アイス」のパロディのようなシーンで、楽曲「Let's Put The Christ Back In Christmas」はヴォート社のYouTubeチャンネルで公開中。キャストを確認すると、歌っているのがブロードウェイで活躍するトニー賞歌手だったり、スケーターたちがメダリストであったりと、製作の本気度が伺えます。クリスマスがキリストの誕生日ではないことも皮肉な歌詞となっています。

M.M.はAトレインからニューマンがゾーイと一緒にやってくることを聞き、ヒューイに通気口に入ってホームランダーとセージとニューマンの会話を盗聴するように指示する。

セージはシンガーが当選したら彼を殺してニューマンが大統領になれるようにすると約束し、その見返りに、能力者管理局を解体すること、能力者への援助反対運動の禁止、反スーパーヒーローを説く本や教師の排除、警察より上の法的権限を持つスーパーヒーローをすべての町に配置することを要求する。さらにホームランダーは、ニューマンに自分が能力者であることを表明することを要求する。

ニューマンは納得せず、シンガーと軍の結びつきを危惧すると、ホームランダーは能力者としての誇りを娘に示せと迫る。そんな中、盗聴していたヒューイの汗が滴り落ち、ホームランダーの肩に当たると、ホームランダーは匂いでヒューイの存在に気づき、レーザーで通気口を破壊する。

ヒューイは慌てて逃げ出し、ヴォート・オン・アイスのリハーサル中にもかかわらず、ホームランダーはレーザーを照射し始める。M.M.は事態に気づき、ステージの照明を切り替えて援護すると、目がくらんで対象を誤ったホームランダーのレーザーはスケーターを真っ二つに切り裂く。

スケーターたちが大混乱になる中、逃げるヒューイをホームランダーが追い詰めていく。しかし、Aトレインに手助けされたことで間一髪逃げ出すことに成功する。

『ザ・ボーイズ』シーズン4第3話の鏡の自分と対話するホームランダー
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ホームランダーはどこへ向かうのか

ザ・ボーイズの本部では、フレンチーとアニーが酒を飲み、それぞれの悩みをドラッグで紛らわせようとしていた。キミコはフレンチーの力になりたいと伝えるが、フレンチーは「お互いの問題を解決することはできない」と告げる。

ヒューイは父の病院に向かい、散々な一日だったことで母ダフネと喧嘩する気にもなれず、その代わりに自分を置き去りにした理由を尋ねる。するとダフネは、重度の産後うつだったこと、回復しても家に戻るのが怖くて、自分がいないほうがいいと考えて出ていったことを明かして謝罪し、2人は少しだけ和解する。

ブッチャーはケスラーから、ライアンに薬を飲ませなかったことを責められる。彼は世界に危機が迫っていることを主張し、「世界のためにライアンを訓練するか、殺すかのどちらかしかない」と告げる。

一方、ディープがセージの部屋を訪ねると、彼女はジャンクフードを食べながらリアリティ番組を見ていた。ディープは自分が犯罪分析部門から追い出されたことに腹を立てるが、雑談している間に打ち解け、2人は激しくキスを始める。そんな中、彼女のテーブルの上には血が付着した金属棒が置かれていた。

ライアンが部屋に帰ると、ホームランダーが待ち構えていた。ライアンからブッチャーの匂いを嗅ぎつけたホームランダーはライアンを問い詰め、鏡に像を投げつけ、ライアンは部屋に逃げ込んでいく。

ホームランダーは頭を抱えていると、割れた鏡から自分を呼ぶ自分の声を聞く。ホームランダーは鏡に映った4人の自分からそれぞれのアドバイスを受けるが、最終的に「人間性を超越しない限り、自分らしく生きることはできない」と伝えられ、彼がどうすればいいのかと尋ねると、「家に帰るんだ」と告げられる。

第3話のネタバレ感想・解説・考察・小ネタ

ポイント

  • シスター・セージとファイアクラッカーがセブンに加入する
  • ブッチャーとライアンは少しだけ和解する
  • セージとホームランダーは、能力者による全体主義的な社会を目論んでいる?

ラストで、シスター・セージの机に置かれていた金属棒は、ロボトミー手術用の金属棒だと考えられます。世界一の頭脳を持つ彼女が、ジャンクフードを食べながらリアリティ番組を見ている様子から、自分で脳を弄り、意図的に知能指数を下げることで、それが彼女なりのストレス発散法なのだと想像できます。ディープはそれを知らずに彼女と関係を持つことで、さらに彼の滑稽な様子が描かれる予感がします。

シーズン4が3話まで一気に配信されましたが、個々のキャラクターが抱える問題を深堀りしていく様子が印象的で、大統領選挙という変革の時期にある中で、それぞれが過去のトラウマと向き合い、変わることができるのかというテーマを根底に感じます。

毎シーズン恒例のヒューイが血まみれになる様子はまだ描かれていないので、今後のエピソードで描かれるのかも注目したいところ。

第4話:時の知恵(Wisdom of the Ages)

『ザ・ボーイズ』シーズン4第4話のマーティとホームランダー
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シスター・セージの策略

ホームランダーは鏡の中の多重人格である自分からのアドバイスに従い、自分が生まれ育ったヴォートの研究所を訪れる。彼は「愛しの我が家」と書かれたクジラのアイスケーキを持参し、お祝いをしようと言い、所長のバーバラを呼ぶように伝えるが、研究員たちは凍りつく。

冒頭では「ホームランダー1987」というコスチュームデザインが映されますが、ホームランダーは1981年生まれなので、ヴォート社は彼が6歳の時点で現在の姿に近いヒーロー像を設計していたことがわかります。

病院では、医師がヒューイに、父親ヒューが植物状態で余命が数日だと告げる。ヒューイの母親ダフネは延命措置を外すことを提案するが、ヒューイは受け入れられず、点滴を見てコンパウンドVを注入して回復させようと考える。

ヴォート社のテレビでは、V52エキスポとAトレインの新作映画、テック・ナイトの番組のCMが流れ、ヴォートニュースのキャメロン・コールマンは、ロバート・シンガーが反ヒーロー法案を発表したことについて、「狂気のファシスト」と報道する。

V52エキスポ(ディズニーのD23エキスポのオマージュ)の告知CMでは、参加者の写真にスピンオフ『ジェン・ブイ』のサムとケイトが「ゴドルキンの守護者」として紹介されているのを確認できます。

一方で、探偵ヒーロー、テック・ナイトのドキュメンタリー番組では、『ジェン・ブイ』のラストで気絶させられて隔離されたマリーとエマ、ジョーダンとアンドレの4人が忽然と姿を消したことを伝えています。

アニーはシンガーのオフィスを訪問し、反ヒーロー法案を支持する意向を伝える。彼女はシンガーの広報戦略では実現不可能と考え、スターライトとして法案の成立を求めるデモを行い、協力することを伝える。

コリンの部屋にいたフレンチーは、コリンが家族を殺されたこと、彼がその場にいて犯人の足首にある傷を目撃したことを伝えられる。一方でフレンチーは、自分がコリンの家族を殺した犯人であることを打ち明けられずにいる。

アニーはスターライト・ハウスに戻り、キアラとコリンに次の計画を説明しようとするが、本部の目の前でヴォート社が生中継するファイアクラッカーのイベント「ファイアクラッカー 真実の爆弾」のイベント設営を行っていることを知り、苛立ちを顕にする。

その背景には、シスター・セージの策略があり、セージはSNSとアルゴリズム解析を駆使して反スターライト運動を活発にさせようとしていた。彼女はファイアクラッカーに、スターライトを蹴落とすための追加情報を渡し、彼女の演説を後押しする。

ファイアクラッカー 真実の爆弾

ファイアクラッカーの生放送番組が始まり、ゲストには有名人やエゼキエルの姿もあった。アニーは事務所の子供たちを避難させ、ザ・ボーイズがやってくると、M.M.がブッチャーをチームに復帰させたことに異を唱える。

一方ブッチャーは、ファイアクラッカーが不利になる情報を手に入れることができると主張し、M.M.とともに出かけていく。

ゲストの名前で挙がっているジョン・ヴォイトは、アンジェリーナ・ジョリーの父親で、SNSでアメリカ国旗を背景に熱弁するほどのトランプ支持者として知られています。また、ラッパーのカニエ・ウェストは、人種差別言動を繰り返すなど問題が絶えないことでも知られています。

エゼキエルは、シーズン1で登場した宗教団体サマリタンズ・エンブレイスの代表で、この団体はヴォート社の後援によってアメリカ中の病院にコンパウンドVを拡散させました。

その後、ブッチャーとM.M.は、CIAから手にした5万ドルをウェブウィーバーへの「ヘロイン浣腸」に使用し、ファイアクラッカーの情報を聞き出すことに成功する。一方、体調が良くないブッチャーはM.M.に、もし自分が仕事をやり遂げられなかったら、ライアンをホームランダーから引き離して育ててほしいと頼む。

ウェブウィーバーはスパイダーマンのパロディキャラ。第3話でライアンがプレイしていたゲームのキャラクター選択画面でも確認できます。

その後、ブッチャーとM.M.は、ファイアクラッカーが休憩に入ったタイミングで接触し、彼女がかつてフロリダにいたときに15歳の少年と性的関係を持ったことを問い詰める。ブッチャーは、その証拠画像をSNSへ投稿すると脅しかけ、セージの陰謀を明かすように迫るが、ファイアクラッカーは意を決して自ら投稿ボタンを押して去っていく。

このときブッチャーは「あんたの十字架に跪くか燃やすか迷った」と言っていますが、これは「Stand For Flag Kneel For The Cross(国旗の前では立ち、十字架の前では跪く)」というアメリカで広く知られているスローガンの一つに関連していて、信仰と愛国心を示すことを意図しています。

2016年には、NFL選手のコリン・キャパニックが警察の暴力や人種差別への抗議として国歌斉唱時に跪きましたが、2017年にトランプは「国旗に不敬な態度を取るやつはつまみ出せ」と発言しました。

米スポーツ選手たち なぜ次々に膝をついているのか

一方で、十字架を燃やす行為は、白人至上主義団体のKKKが黒人や他の少数民族への暴力と恐怖を広めるためのシンボルとしても知られています。つまりブッチャーは皮肉を込めて、上記のどちらの方法で愛国心を示そうかと言ったのですが、それに対してファイアクラッカーは「アメリカ英語で話せ」と言い返しています。

エゼキエルがステージで、オルタナ右翼が使うような手法でスターライトのデタラメな陰謀論を展開していると、ファイアクラッカーが「罪を告白させてほしい」と登場する。彼女は自分が15歳の少年と関係を持ったことを告白し、生まれ変わったと主張する一方で、スターライトを引き合いに出し、彼女が若い頃、ヒーロー活動中に市民を失明させてしまったことを明かす。

スターライトがショックを受ける中、スターライト・ハウスに戻ってきたブッチャーとM.M.は、フレンチーにファイアクラッカーの楽屋トレーラーの鍵を手渡し、中を調べるように伝える。

ホームランダーのお礼参り

ホームランダーは研究員の1人であるフランクに声をかけ、ゴミ箱バスケットボール(ゴミ箱に紙くずをシュートする遊び)をしようと持ちかける。ホームランダーは幼い頃、自分がオーブン室に入れられ、激痛に耐えながら燃焼テストをされているときに、フランクが部屋の外でゴミ箱バスケットボールをしていたことをハッキリと覚えていると伝える。

それに対しフランクは「仕事をしただけで覚えていない」と主張するが、ホームランダーはフランクをオーブン室に入れて、丸焼きにして殺害する。

その後、ホームランダーは副所長のマーティに狙いを定める。ホームランダーは、かつて自分が監禁部屋で自慰行為をしていたとき、それを見ていたマーティが「Squirt(潮吹き、体液を飛ばす意味)」というあだ名で呼び、笑っていたことを指摘する。

マーティは謝罪するが、ホームランダーは彼が自分にしたように、同僚の目の前でオナニーをするように告げる。マーティはやむを得ず自慰行為をし始めるが、うまくいかず、ホームランダーは彼の陰部をレーザーで撃ち抜く。他の研究員たちが青ざめる中、所長のバーバラが到着する。

バーバラはホームランダーにマーティを楽にするように伝え、彼がマーティの頭を潰して殺すと、2人はかつてホームランダーが監禁されていた赤い扉の部屋で話をすることになる。

ヒューイとキミコ

ヒューイはキミコにボディガードを依頼し、M.M.とブッチャーからの誘いであることを装ってAトレインを呼び出し、コンパウンドVを持ってきてほしいと頼む。Aトレインは拒否するが、ヒューイは父親が危篤であることを伝え、持ってきてくれればAトレインとの確執をすべて清算すると約束する。Aトレインは渋々同意する。

Aトレインが去った後、ヒューイとキミコは2人を監視していた光解放軍からの襲撃を受け、ヒューイは足を負傷する。

Aトレインはホームランダーの部屋に侵入し、保管庫からコンパウンドVを発見してその1つを回収するが、同じく部屋に侵入し、トイレの排泄物を流さないことで小さな復讐をしようとしていたアシュリーと出くわす。2人はお互いに密告しないことで同意する。

アシュリーのウンコ放置攻撃は地味ですが、ホームランダーが匂いに敏感である(ヒューイの汗やブッチャーの匂いを感知できる)ことを知っているからこそできる地味に効く嫌がらせです。そしてホームランダーのパワハラに苦しむ者同士であるアシュリーとAトレインが始めて協力した瞬間でもあります。

ヒューイはキミコが光解放軍の兵士を殺したことで狙われていることを知り、キミコとともに立ち向かう。その中で、キミコはアジトで逃がした少女と再び出会う。

少女は、キミコに騙されて家族と引き離されたこと、無理やり戦わせられて顔に傷を負ったことを責め立てる。キミコは涙を流しながらヒューイとともにその場を去る。

激怒するスターライト

フレンチーがファイアクラッカーの楽屋を調べていると、彼女が吐き気や胃炎に効くメトクロプラミド錠を服用していることに気づく。その後、彼女のタブレット端末に入っていた情報を見て驚愕する。

同じ頃、ファイアクラッカーは生放送中に、スターライトの個人的な医療情報を開示し、彼女が半年前に中絶したことを暴露した上で、クリスチャンである彼女がそれを行ったことの罪深さを福音派に印象付け、「赤ん坊殺し」と罵る。

その様子をテレビで見ていたアニーは怒り心頭に発し、イベント会場に乗り込んでファイアクラッカーを殴りつける。M.M.が慌てて止めるが、その様子はすでに生中継されており、すべてがシスター・セージの計画の一部だったことが判明する。

2024年現在、アメリカ50州のうち14州が中絶を禁止しています。中でも最も厳しいといわれるテキサス州では、レイプや近親相姦による妊娠でも中絶が認められない異常事態。

同じく中絶を禁止するケンタッキー州では、州の司法長官であるダニエル・キャメロンが州外で中絶手術を受けた患者の医療記録にアクセスできるようにしたいと提案していて、アニーの医療記録漏洩も、決して非現実的な話ではない恐ろしさがあります。(Lexington Herald Leaderより)

中絶の権利問題は宗教的信念とも深く関係していて、選挙においても大きな争点の1つですが、そもそも「選挙における要素」である以前に、女性が自らの体を守り選択する権利であることを忘れてはいけないところ。

一方、トレーラーにいたフレンチーはエゼキエルに見つかり、襲われてしまう。ブッチャーが駆けつけて液体窒素入りの消化器で片腕を凍らせて破壊するが、エゼキエルの伸びる腕で首を絞められてしまう。ブッチャーは意識を失いかけるが、気がつくとエゼキエルの肉片が飛び散り、返り血で血まみれになっていることに気づく。

M.M.はトレーラーの異変に気づき、ブッチャーがエゼキエルに何をしたのか尋ねるが、ひとまずフレンチーを助けてその場を離れる。フレンチーはコリンから傷の手当を受けるが、罪悪感からついに自分がコリンの家族を殺した犯人であると自白する。コリンは怒りを爆発させ、二度と顔を見せるなと告げて去っていく。

それぞれの選択

バーバラは、ホームランダーの実験過程で、世界中の心理学者を集めてホームランダーの心の底に他人からの承認と愛情を渇望するように植え付けたことを明かし、それを取り除くことはできないと伝える。しかしホームランダーは「自分とライアンは人間ではない」と宣言し、彼女への復讐として、他の研究員たちを皆殺しにし、バーバラを生かしたまま監禁部屋の中に閉じ込めて去っていく。

一方、ヴォートタワーでは、ディープがセージの部屋を訪れていた。セージは自分の脳が絶えず成長していることを明かし、ロボトミー手術用の金属棒を使って脳の一部を損傷させることで、数時間は自我を捨てられると伝え、ディープに手術をしてもらうと、2人は再び体を重ね始める。

このときテーブルには「ガイ・フィエリのフレーバータウンキッチン」というファストフードの箱が置いてあります。ガイ・フィエリはアメリカのTVチャネル「フードネットワーク」の料理番組の司会として知られていますが、彼のレストランはNYタイムズで「史上最悪のレストラン評」を受けました。シスター・セージが自ら「低能」になって食べる料理としての皮肉になっています。

ザ・ボーイズの本部に戻ったヒューイは、ニューマンがスターライトの行動を批判する様子をテレビで見ていた。そこへアニーが戻ってくると、2人は中絶を決意したことについて話し合い、心の痛みを分かち合う。

その後、ヒューイはAトレインからコンパウンドVを受け取り、一時的に和解するが、その様子を監視していたブッチャーはヒューイを批判する。ヒューイは父親を助けるためだと主張するが、ブッチャーは数ヶ月前にコンパウンドVをフレンチーの隠し場所から盗んで使用したこと、その結果、病状を悪化させただけだったことを明かす。

病院に戻ったヒューイは、ブッチャーの言葉を信じて父親ヒューにコンパウンドVを投与しないことに決めるが、母ダフネはヒューイのポケットからVを抜き取り、点滴に注入してしまう。ヒューイは急に心拍数が変化したことに気づき、植物状態だったヒューが目を覚ます。

第4話のネタバレ感想・解説・考察・小ネタ

ポイント

  • ホームランダーは生まれ育った研究所を訪ねて、過去を清算するように所員たちを虐殺する
  • セージの策略によって尊厳を踏みにじられたアニーがファイアクラッカーを生中継中に殴ってしまう
  • ブッチャー、フレンチー、キミコそれぞれが過去の行いによる影響と向き合うことになる

第4話「時の知恵(Wisdom of the Ages)」は、そのタイトルのように、それぞれのキャラクターの過去の行いが現在にもたらす影響を描いたエピソードでした。

ブッチャーは延命しようとコンパウンドVを使用したことで悪化させ、フレンチーはコリンの家族を殺したことを打ち明けて関係を壊し、キミコは光解放軍での自身の行いを突きつけられ、アニーは、ヒーロー活動で市民を傷つけたことが明かされます。

そして毎シーズン恒例と言える、ヒューイの返り血を浴びるシーンが第4話にて描かれましたが、これまでとは明確に異なり、その後のAトレインを許したこと、父親にコンパウンドVを打たないと決めたこと(結局ダフネに打たれてしまいますが)は、ヒューイの内面的成長を感じられる場面になっています。

そして何よりも、ホームランダーは自身の「ホーム」に立ち返り、自ら過去を清算していきます。生まれながらにヴォートの実験台だった痛々しい過去を見れば、ホームランダーが歪んだ人間になってしまう理由も少なからず理解できるのかもしれません。エレベーターの音を効果的に用いたエピソードのサンドイッチ構造も見事。

ブッチャーの体内を虫のようなものがうごめく様子と、ヒューイの父親がコンパウンドVを投与される描写は、アニメスピンオフ作品の『ザ・ボーイズ ダイアボリカル』第7話の「ジョンとソンヒ」のエピソードと酷似しています。それから考察すると、コンパウンドVによってブッチャーの腫瘍が意思を持ったと考えるのが妥当でしょう。

全体的にカロリー高めでズッシリ重い内容ですが、とても見ごたえのある非常に優れたエピソードでした。

第5話:ジャバウォックに気をつけろ(Beware the Jabberwock, My Son)

『ザ・ボーイズ』シーズン4第5話 超能力化したヒューと対峙するヒューイとダフネ
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V52エキスポ

V52エキスポが開催され、キャメロン・コールマンとディープが司会に立ち、VCUの今後のラインナップを発表する。舞台袖で見守るホームランダーは研究所での出来事を思い返していた。シスター・セージはヴォート内のスパイを探しており、Aトレインは知らないふりをしてやり過ごす。

テレビ番組に出演したファイアクラッカーは、スターライトの中絶を繰り返し非難する。スターライト・ハウスはファイアクラッカーに感化された者たちによって荒らされていた。M.M.は、娘のジャニーヌが同級生の男子を殴った件で、元妻モニークから彼女がM.M.に影響されていると指摘される。ブッチャーはジョー・ケスラーと密会し、二人だけで打倒ホームランダー計画を進めようとしていた。

ブッチャーがザ・ボーイズのオフィスに戻ると、アニーとM.M.は、ブッチャーがエゼキエルをどうやって殺したのか質問するが、ブッチャーは無意識のうちに殺していたと答える。その後、ブッチャーは能力者を殺すウイルスがあると明かし、自分より先にニューマンに奪われたため、彼女から盗む必要があると主張する。

これはスピンオフ『ジェン・ブイ』との関連です。ニューマンはゴドルキン大学の“森”と呼ばれる地下研究施設で、能力者を殺すウイルスを手に入れたうえで、それを複製できる唯一の研究者を殺しています。(『ジェン・ブイ』第7話・第8話より

ザ・ボーイズとニューマン

ブッチャーとM.M.は、刑務所にいるスタン・エドガーに面会し、大統領恩赦を与える代わりに協力を求める。エドガーは拒否するが、ニューマンが娘ゾーイを能力者に変えたことを知ると同意する。

ヴォート社元CEOのエドガーは、シーズン3第4話でニューマンに裏切られて追放されて以来の復帰です。その後CEOはアシュリーになり、今シーズンでセージに変わりました。

ザ・ボーイズは、エドガーの案内でニューマンが隠し場所にしていた農家を訪れる。家の中にはエドガーも知らない研究施設があったが、ウイルスは見つからず、争った形跡だけが残されていた。するとそこへニューマンが部下を連れて現れる。ニューマンはザ・ボーイズが夫で研究者のサミールを誘拐したと疑うが、エドガーが否定し、一時的な協力を提案する。

ブッチャーは隙を狙ってニューマンからウイルスを奪い取るつもりだったが、農家で飼育されているニワトリがコンパウンドVを接種していたことで一行に襲いかかる。ブッチャーはこれがニューマンの計画だと考えて怒りをぶつけるが、ニューマンは否定する。一方、ニューマンはブッチャーと取引(ニューマンのファイルとライアンの安全)したことをザ・ボーイズに明かす。ザ・ボーイズのメンバーはブッチャーへの不信感を抱くが、ブッチャーは取引しなかったと主張する。アニーは能力がうまく出せなくなっており、ニューマンに指摘されてからかわれると冷静さを失い、殴りつける。

心理的な問題によってアニーが能力をうまく使えなくなる様子は、『スパイダーマン2』におけるピーター・パーカーと重なります。

その後、ブッチャーは研究所で逃がした時効性Vを接種したウサギを発見する。ウサギの腹部から触手のようなものが飛び出しているのを確認すると、ブッチャーは踏み潰して殺す。

この触手はアニメスピンオフ『ザ・ボーイズ ダイアボリカル』第7話の触手と似ていて、ブッチャーは後に『ヴェノム』のようになっていくのか…。

さらにザ・ボーイズとエドガー、ニューマンはコンパウンドVによって強化されたヒツジに襲撃され、納屋に逃げ込む。そこでサミールと出会うと、彼は研究室で起きたことを明かす。ウイルスの効果をテストしようとした際、被検体だったハムスターが逃げ出したことでコンパウンドVが地下水に漏れ出し、家畜が超能力を持ってしまったのだった。

超能力ハムスターの脱走といえば、同様の出来事がシーズン3第4話で、ソルジャー・ボーイが囚われていたロシアの研究施設にいたハムスターのジェイミーによって起きています。

さらにサミールは、ウイルスが残り1回分しかないことを明かす。ウイルスの使い道についてブッチャーとアニー、ニューマンが口論になる中、M.M.は殺された研究者の死体を食べさせることで超能力化した家畜たちを始末しようと提案する。

この計画は成功し、一行は無事に農家から脱出するが、サミールだけが行方不明となり、彼の足が発見され、ニューマンはショックを受ける。エドガーはザ・ボーイズにウイルスを渡す取引に失敗したことで刑務所に送還されるが、道中でニューマンが彼を助ける。

農場から戻ると、キミコはフレンチーにメッセージを送り、お互いのことについて話し合いたいと伝えるが、コリンの家族を殺した罪悪感やこれまでの罪に苛まれていたフレンチーは、キミコからのメッセージを見る前に警察署に出頭する。

一方、ブッチャーはケスラーと共謀し、サミールの足を切断して死んだように見せかけ、彼に能力者を殺すウイルスを作るように命じる。

ライアン、ダークサイドへ?

Aトレインが自身の新作映画「トレーニング・Aトレイン」を発表した後、ヴォート社は多様性の新たな試みとして、Aトレイン、シスター・セージ、ブラック・ノワールの3人によるユニット「ブラック・アット・イット(Black At It)」を発表する。

「ブラック・アット・イット(Black At It)」は、シーズン2第2話のスターライトとメイヴ、ストームフロントの女性3人ユニット「ガールズ・ゲット・イット・ダン(Girls get it done)」に続くセブン内のユニット。相変わらずヴォート社は何も学んでいません!

アダム・バークはライアンをヴォート社のスーパーヒーロービジネスに引き込もうとするが、ライアンは興味を示さない。するとホームランダーはライアンの意見を尊重し、好きなようにやるようにアドバイスする。ホームランダーは「私たちは二人とも奴隷から解放されて自由だ」と伝える。

その後、ライアンが「本当の人助けをしたい」と申し出ると、ホームランダーはアダム・バークと、彼から嫌がらせを受けている秘書のボニーを呼び出す。ライアンはバークにボニーへ謝罪させるが、それでは満足せず、ホームランダーのアドバイスに従い、彼女にバークを執拗に殴らせる。

アシュリーはいつものようにコールマンにBDSMプレイを求めるが、権力的に支配されることに興奮を覚えるコールマンは、アシュリーがCEOではなくなったことで興味を示さない。ファイアクラッカーは、シスター・セージの計画によって自分がスターライトから殴られたことに気づき、彼女に敵意を示すようになる。

Aトレインはアシュリーに自分がスパイであることを明かし、アシュリーの違法行為を公にすると脅して、シスター・セージからの疑いを晴らすように協力を強いる。その後、アシュリーはコールマンに監視カメラ映像リークの濡れ衣を着せる。それによってコールマンはホームランダーによって吊し上げに遭い、彼の命令でセブンやサム、ケイトらに袋叩きにされる。

ヒューイと父親

病室のヒューイは、父親ヒューの意識が回復したことに喜ぶ反面、勝手にコンパウンドVを投与した母親ダフネに対して複雑な感情を抱いていた。回復したヒューがダフネと昔話をしている中、ダフネはヒューイに婚約指輪を渡し、親として至らなかった過去を謝罪する。

ヒューイが委任状をダフネに渡したことについてヒューに尋ねると、彼はヒューイが諦めが悪いことを挙げ、自分の死を現実的に考えたうえでの判断だったと明かす。

しかし、その後、ヒューはコンパウンドVによって物質を通り抜ける能力が発現し、理由もわからず病院内で意図せず人を殺して暴れ回ってしまう。さらに、ヒューは記憶喪失に陥り、ヒューイのことを11歳のままだと誤認していた。

ヒューに発現した物質を通り抜ける超能力は、DCヒーローのフラッシュのように、小刻みに振動する描写になっています。

ヒューイは父親の異常事態に直面し、ヒューを止めるには彼を殺さなければならないと察する。ヒューイはヒューに自分が息子であることを証明して落ち着かせ、愛と感謝を伝えて薬を投与して安楽死させる。

第5話のネタバレ感想・解説・考察・小ネタ

ポイント

  • ザ・ボーイズは能力者を殺すウイルスを手に入れられなかった
  • ブッチャーはケスラーと共謀し、密かにウイルスを作らせようと企む
  • ヒューイは植物状態から能力者となった父親を安楽死させる

第5話は、ディズニーD23エキスポのパロディ、V52エキスポからはじまりました。MCUならぬVCU(ヴォート・シネマティック・ユニバース)は、フェーズ7〜19までに展開されていることが伺えます。

肥大化するスーパーヒーロー映画のフランチャイズ、そして近年の映画業界の話題のひとつでもある“スーパーヒーロー疲れ(Superhero Fatigue)”への皮肉と言えるでしょう。

さらにAトレインが壇上で、「再撮影によって歴代最高製作費になったからいい映画に決まっている」と発言していますが、これもハリウッドの再撮影問題や、膨大な予算をかけた映画が興行的に不振となる事例を風刺しています。

V52エキスポは、あらゆることをビジネスに結びつけるヴォート社の金儲け主義の姿を描き、それが名ばかりの「多様性」であること、いかに文化や人種などを消費しているかを痛烈に映し出しています。

ニューマンはエドガーを一度裏切っていますが、結果的に彼を助けていて、お互いにゾーイを守りたいということで共通しているのでしょうね。これはニューマンがザ・ボーイズに鼻血を出させる場面では(恐ろしい…!)、エドガーは鼻血を出していなかったことにも繋がります。

前話の「ホーム」から帰ってきたホームランダーは、ライアンに対する態度が明確に変化しています。ライアンをある程度自由にさせつつ誘導する様子は、ホームランダー自身が操作する側(マニピュレーター)として、より狡猾になっています。ライアンが心配だよ…。

第5話のタイトル、『ジャバウォックに気をつけろ(Beware the Jabberwock, My Son)』は、『不思議の国のアリス』で知られるルイス・キャロルによる、続編『鏡の国アリス』に登場する詩の一説からの引用。

ザ・ボーイズとして能力者と戦ってきたヒューイが、能力者となった父親を安楽死させることになるとは…。ヒュー役の名優サイモン・ペッグの演技も光ります。そんなヒューイとは対照的に、ブッチャーの最後の不気味な笑みはヴィランと言っても過言ではないですよ…。

第6話:汚れ仕事(Dirty Business)

『ザ・ボーイズ』シーズン4第6話のウェブウィーバー
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ウェブウィーバーになりすませ!

ヒューイとダフネはヒューの死を偲び、M.M.、アニー、キミコとともに『メイド・イン・マンハッタン』(2002年のロマンス映画)の観光ツアーに参加する。そこで、反スターライトの男がアニーに暴言を吐くと、ヒューイは激怒する。一方、キミコは刑務所にいるフレンチーに会おうとするが、面会を拒否されてしまう。

ファイアクラッカーがキャメロン・コールマンに代わってヴォート・ニュースのアンカーを務め、反ユダヤ主義のニュースを報道する。M.M.はAトレインから連絡を受け、ホームランダーが能力者たちを軍隊のように集めていること、そしてシスター・セージとテックナイトが何かを企んでいることを知る。彼らはテックナイトの自宅で開かれる官僚や政治家を招いたフェデラリスト・ソサエティのパーティーに出席する予定だ。

ファイアクラッカーがニュースで読んだ「ユダヤ人の宇宙レーザーによって洗脳しようとしている」という発言は、議員の立場でありながら数々の陰謀論を拡散させているジョージア州の下院議員マージョリー・テイラー・グリーンへの言及。

フェデラリスト・ソサエティは、アメリカ合衆国憲法の原理主義的な解釈を主張する保守派団体。保守派の人脈形成、資金集めの中心的役割を担っていて、2016年にトランプが大統領に当選した背景に大きく関係していて、「超保守化」が進む最高裁の黒幕とも言われています。

ラスボスはSCOTUS、黒幕はFedSoc|WIRED

ザ・ボーイズはブッチャーの協力を望んでいたが、彼の行方がわからないため、M.M.は代わりにウェブウィーバーを利用しようと考える。M.M.はウェブウィーバーを眠らせ、ヒューイはウェブウィーバーのコスチュームを着て、テックナイトから正体を疑われないようにパーティーに潜入する。

ウェブウィーバーは、「スパイダーマンは体内で糸を生成しているのか」という長年の疑問に、「クモのようにお尻の近くの“糸いぼ”から発射する」という形で答えています。やめてくれ…!

これは『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』でトビー・マグワイアがアンドリュー・ガーフィールドとトム・ホランドからイジられていたり、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で、アメリカ・チャベスが指摘していました。

テックナイトのパーティー

パーティーには、ホームランダーとライアン、セブン(セージ、Aトレイン、ファイアクラッカー)やアシュリー、ニューマンも参加していた。ファイアクラッカーがテックナイトの屋敷を褒めると、彼はAトレインの前で人種差別的な発言を交えつつ、民間刑務所の運営によって財を築いた経緯を語り始める。

ヒューイはウェブウィーバーのコスチュームを着て屋敷に侵入して盗聴器を仕掛ける。テックナイトがウェブウィーバー(ヒューイ)に気づくと、彼を別室に案内する。

ニューマンが保守派だらけのパーティーにうんざりしていると、ホームランダーとセージは修正第25条を発動させるため、政治家や富豪たちに国家反逆への参加を促す予定だと知らせ、彼女を驚かせる。さらに、ホームランダーはエドガーが釈放された件についてニューマンを問い詰めるが、彼女は関与していないと答える。

修正25条は、ケネディ大統領の暗殺後に制定された大統領の職務継続に関する規定を定めた憲法で、大統領が職務を遂行できない場合や、大統領の交代が必要な場合の手続きが示されています。

ヒューイはテックナイトに案内されて書斎へ向かい、本棚の裏にある隠し部屋のエレベーターに乗せられ、屋敷の地下にある「テックケイブ」に連れて行かれる。そこにはBDSMの道具が一式揃えられており、黒人の使用人イライジャが糞尿の掃除をさせられている。テックナイトの助手は鎖で捕らえられていた。

テックナイトが書斎で紹介しているのは、ストウ夫人の『アンクル・トムの小屋』。奴隷解放運動に与えて南北戦争の引き金のひとつともなった書籍。また、テックナイトの屋敷には南北戦争で南軍を率いた将軍ロバート・E・リーの肖像画も飾られていて、テックナイトがそれらをトロフィー的に飾っているのも皮肉が効いています。

一方、ヴォート本社では、ディープがブラック・ノワールがやけ酒を飲んでいるのを見つけて注意する。二代目ノワールは、ノワールを演じることにうんざりし、暴力が好きではないと打ち明ける。これに対し、ディープは前任のノワールが感じていた殺しへの快楽を理解する必要があると説く。

二代目ブラック・ノワールの顔が明らかになりました。演じているのは、面白いことに前任のブラック・ノワールと同じネイサン・ミッチェル。ディープは「暴力は権力だ」と主張し、彼の自己嫌悪が最悪の方向に歪んでいっていることが伝わります。

テックケイブの悪夢

アニーはヒューイがテックケイブへ向かった後、通信が途絶えたことに不安を感じ、慌て始める。彼女はM.M.を説得し、キミコとともにヒューイの救出に向かうことを決意する。

テックナイトはウェブウィーバー(ヒューイ)に対して変態プレイを開始する。ケーキの上に座らせて屁をさせたり、紙やすりで体を擦らせたり、拘束して足をくすぐるなど、そのフェチは多岐にわたる。すると、テックケイブにアシュリーが到着し、彼のBDSM仲間である彼女もプレイに参加する。

M.M.、アニー、キミコは屋敷に侵入する。アニーはファイアクラッカーと出くわし、過去の自分の行動の非を認めて改めて謝罪するが、ファイアクラッカーを気絶させる。

M.M.とキミコは書斎にたどり着くが、シスター・セージと出くわす。セージは家族の話題を持ち出してM.M.を精神的に追い詰め、ホームランダーに報告しようとする。M.M.はセージのこめかみを銃で撃って倒すが、その後発作を起こして倒れてしまう。キミコはAトレインを呼び出し、M.M.を病院に連れて行くように頼む。Aトレインは渋々受け入れる。

ホームランダーとセージの目的

テックナイトはヒューイの体に自分の陰部を突っ込むための穴を開けようとしていた。アニーはキミコと合流し、テックケイブの隠し扉を発見して地下室に向かい、間一髪のところでヒューイを救出する。

テックケイブへの隠し扉を開く本は、マルキ・ド・サドの『ソドムの百二十日』。この本は、4人の裕福な貴族が奴隷を使って120日間にわたり快楽と虐待を追求するという物語。『ソドムの市』というタイトルで映画化もされています。

スピンオフ『ジェン・ブイ』で明かされていますが、テックナイトは「穴という穴にペニスを突っ込みたい衝動」を持っています。

アニーとキミコはテックナイトを縛り上げ、シスター・セージとの計画を吐かせようと拷問を試みる。しかし、テックナイトはマゾヒストであり、拷問が効果を発揮しない。そんな中、鎖で繋がれていたテックナイトの助手ラディオが鎖を解き、テックナイトのラップトップを持ち出す。ヒューイたちはラップトップをテックナイトの顔認証で解除し、彼の預金口座を空にすると脅す。

すると、テックナイトはホームランダーとセージがアメリカ中の刑務所に反乱分子たちを投獄しようとしていることを明かす。その後、イライジャがテックナイトの首を締め、変態プレイ中の自殺に見せかけると言い、ヒューイたちに逃げるよう促す。イライジャはヒューイに、ウェブウィーバーのセーフワードが「ゼンデイヤ」であることを教える。

ヒューイとアニーがテックナイトの口座でお金を振り込んだのは以下の3つ。いずれも右派保守派であるテックナイトにとっては拷問というのも皮肉。

  • エリザベス・ウォーレン
    オバマ元大統領時代に大統領補佐官を務めた現・上院議員で民主党左派のリーダー的存在
  • イノセンス・プロジェクト
    DNA鑑定によって冤罪で逮捕された人々を解放する非営利団体
  • BLM(ブラック・ライヴズ・マター)

そして、もちろんゼンデイヤといえば、MCUでトム・ホランド版『スパイダーマン』シリーズに登場するMJ役として知られているあのゼンデイヤのこと。

ニューマンの葛藤とファイアクラッカーの母乳

ニューマンが保守派の議員の言葉にうんざりし、自分の頭を爆発させたいと願うほど苛立っていると、セージが自身の過去を打ち明ける。セージは幼い頃にガンで苦しむ祖母を助けようと治療法を見つけたが、それを伝えた医師たちは彼女の話を聞こうとせず、笑い飛ばしたのだった。セージはニューマンなら、「何を言っても話を聞いてもらえない少女の気持ちがわかるかもしれない」と思って話したのだと明かす。

「“本当のレイプ”なら女性の体が拒絶して妊娠はしない」という発言は、共和党のトッド・エイキン議員の悪名高い発言そのもの。

ニューマンが自分の頭を爆発させたいと空想するシーンは、シーズン2第5話でホームランダーが群衆を虐殺しようとした場面を彷彿とさせます。興味深いのは、その捌け口をホームランダーが他人に向けているのに対し、ニューマンは自分自身に向けている点です。権力と正義心の間で葛藤するニューマンの今後の展開にも目が離せませんね。

ファイアクラッカーはニューマン、ホームランダー、シスター・セージの会話に加わろうとするが、シスター・セージは彼女の知性を蔑み、彼女を参加させない。

その後、ホームランダーは政治家や富豪たちを取り込むためのロビイングを始めようとするが、セージがM.M.に頭を撃たれたことで脳が損傷し、知能が低下していることが明らかになる。彼女が役に立たないことを知ると、ホームランダーは自ら説得に乗り出す。しかし、ホームランダーは政治的な知識が乏しく、すぐに政治家たちから反論されてしまう。

頭が悪くなったセージが食べているのは、ヒューイがお尻をなすりつけてオナラをしたケーキの可能性あり…。

それを見かねたニューマンが立ち上がり、「アメリカは民主主義ではない」と宣言する。彼女は、自分たちの側につけば、富豪や権力者たちに利益をもたらす世界を実現できると主張し、彼らを取り込むことに成功する。

ザ・ボーイズのオフィスに戻り、盗聴器でこの会話を聞いていたアニーは、ニューマンが想像以上に危険な人物だと認識する。一方、ヒューイはテックケイブでのトラウマと父親の死のショックで精神的に参っていたことを明かし、アニーに慰められる。

Aトレインによって病院に運ばれたM.M.は、ストレスによるパニック発作を起こしていたと診断され、医師から休むように伝えられる。キミコは再度フレンチーに面会しようとするが、フレンチーは会おうとしない。

その後、ヴォート・タワーのホームランダーの部屋にファイアクラッカーが現れ、屋敷にスターライトがいたことと、彼女を取り逃がしたことを報告するが、その失態を問い詰められる。一方で、ファイアクラッカーはホームランダーのために母乳を出すための薬を服用していたことを明かし、ホームランダーはその母乳を摂取する。

第4話でフレンチーがファイアクラッカーのトレーラーを調べているとき、彼女がメクトロプラミド錠を服用していることが描かれていましたが、それがまさか母乳を作るためだったとは…。シーズン1のマデリン・スティルウェル以来となる、母乳直のみシーンでした。おいおい…。

ジョー・ケスラーはブッチャーの空想だった

サミールは鎖でつながれたまま廃倉庫で目を覚ます。ブッチャーは彼に1週間でホームランダーを殺せる強度のウイルスを開発するように命じる。しかしサミールは、ウイルスの毒性を強めることで不安定になり、空気感染することを主張する。それが実現すれば、世界的なパンデミックによって能力者が全滅することになる。

ジョー・ケスラーはブッチャーに「それが本望だ」と伝えるが、空想のベッカはそれによってライアンやアニー、キミコも死ぬことになると危惧する。するとケスラーは幻想のベッカに「黙れ」と怒鳴りつける。これによってブッチャーは、ベッカだけでなく、ジョー・ケスラーも自分の中の空想だったことに気づく。

空想のケスラーは、本当のケスラーがブッチャーがパンジシール渓谷の任務で見殺しにして死んだことを明かし、ブッチャーの心の底で望んでいる暴力的な側面の現れであると伝える。

第6話のネタバレ感想・解説・考察・小ネタ

ポイント

  • ザ・ボーイズはテックナイトのパーティーに潜入
  • ホームランダーたちは反乱分子をアメリカ中の刑務所に投獄しようとしている
  • 頭を撃たれたセージは低能となる
  • ジョー・ケスラーはブッチャーの暴力的な側面を映す幻想だった

第6話は、「汚れ仕事(Dirty Business)」のタイトルにふさわしい、下品極まりないダーティなエピソードでした。ホームランダーたちがテックナイトの運営する民間刑務所に反乱分子をブチ込もうとしていることが明らかになり、能力者至上主義によるファシズムがますますヒートアップしそうです。

テックナイトの屋敷に集められた政治家や超富裕層たちに、シスター・セージがロビイングしようとする場面は、アメリカの経済・政界への抗議運動「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」の「私たちは99%(We are the 99%)」というスローガンを思い起こさせます。かつてないほどの経済格差が広がり、富裕層が富を独占し政治を牛耳っている現実世界を反映しています。

シーズン4では、各キャラクターが過去と対峙している様子が描かれてきましたが、さらに発展し、それぞれが岐路に立たされていることが明確になっています。

その象徴的な例がブッチャーです。ケスラーが『ファイト・クラブ』のタイラー・ダーデンのような幻覚であることが判明し、ブッチャーは自分の中の良心(ベッカの幻想)と悪意(ケスラーの幻想)に葛藤します。

同様に、ヒューイ、アニー、キミコ、フレンチー、ニューマン、ファイアクラッカー、そしてシスター・セージも、それぞれが過去と対峙し、葛藤しているのです。シーズン4は、分断が進む世の中を象徴するような物語ですが、各キャラクターの内面的な葛藤は不安定で、どちらに転んでもおかしくありません。

その中で、徐々に変わりつつあるAトレインが始めて「本当の人助け」をする場面は、なんとも味わい深い感情にさせてくれました。

第7話:(The Insider)

※2024年7月11日配信予定。

第8話(最終話):(Assassination Run)

※2024年7月18日配信予定。

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