今回ご紹介する映画は『ズートピア』です。
動物たちが人間のように暮らす文明社会「ズートピア」を舞台に、ウサギの女の子ジュディが夢をかなえるために奮闘する姿を描いたディズニー映画。
本記事では、ネタバレありで『ズートピア』を観た感想・考察、あらすじを解説。
『ズートピア』は、アカデミー賞長編アニメ映画賞、アニー賞長編作品賞を受賞。
現代社会のさまざまな問題を鋭く風刺する、面白くて社会派な傑作映画!
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『ズートピア』の作品情報・予告・配信
『ズートピア』
あらすじ
さまざまな種類の動物が暮らす大都市「ズートピア」。大きくてタフな動物たちが勤める警察組織に入ったジュディは、初のウサギ警官として奮闘していた。やがてジュディは詐欺師のキツネ・ニックとともに、ズートピアに隠された驚くべき事件の解明に挑んでいく。
5段階評価
予告編
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作品情報
タイトル | ズートピア |
原題 | Zootopia |
監督 | リッチ・ムーア バイロン・ハワード ジャレド・ブッシュ |
脚本 | ジャレド・ブッシュ フィル・ジョンストン |
出演 | ジニファー・グッドウィン ジェイソン・ベイトマン イドリス・エルバ |
音楽 | マイケル・ジアッチーノ 主題歌:シャキーラ「Try Everything」 |
編集 | ファビアンヌ・ローリー ジェレミー・ミルトン |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2016年 |
上映時間 | 108分 |
動画配信サービス
おすすめポイント
相互理解と夢を実現させるひたむきさ。
動物たちが文明社会を築いた大都会ズートピアを舞台にしたディズニー・アニメーション映画。
いろんな動物たちが共存するズートピアは現代社会そのもの。愛らしいキャラクターたちとズートピアの陰謀を巡るミステリーのギャップが絶妙です。
真っ直ぐな心をもつ主人公のウサギのジュディが、逆境に身を置きながらも常に前を向き、相互理解に努めようとする姿は勇気をもらえます。
ジュディとは対象的な性格のキツネの詐欺師ニックとの友情、偏見や差別などのテーマ性も見応えたっぷり。それでいて堅苦しさは全く感じさせない優れた脚本と演出に舌を巻きました。
『ズートピア』の登場人物・キャラクター・キャスト・役柄
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
ジュディ・ホップス(ジニファー・グッドウィン/上戸彩) 主人公のウサギ。努力して憧れていたズートピア初のウサギの警察官となる。 | |
ニック・ワイルド(ジェイソン・ベイトマン/森川智之) 詐欺師のキツネ。あるきっかけでジュディの捜査を手伝うことになる。 | |
ボゴ署長(イドリス・エルバ/三宅健太) ズートピア警察の警察署長であるバッファロー。 | |
クロウハウザー(ネイト・トレンス/高橋茂雄[サバンナ]) ズートピア警察署の受付・無線係のチーター。 | |
ライオンハート(J・K・シモンズ/玄田哲章) ズートピアの市長を務めるライオン。 | |
ベルウェザー(ジェニー・スレイト/竹内順子) ズートピアの副市長(役割は秘書)であるヒツジ。 | |
スチュー・ホップス(ドン・レイク/ドン・レイク) ボニー・ホップス(ボニー・ハント/佐々木優子) ジュディの両親。バニーバロウで農業を営む。 | |
ヤックス(トミー・チョン/丸山壮史) 「自然主義者」たちのクラブのオーナーを務めるヤク。 | |
オッタートン夫人(オクタヴィア・スペンサー/根本圭子) 行方不明となった夫を探すカワウソの夫人。2人の息子の母親。 | |
ミスター・ビッグ(モーリス・ラマーシュ/山路和弘) ツンドラタウンで最も恐れられる犯罪組織のボスのトガリネズミ。 | |
デューク・ウィーゼルトン(アラン・テュディック/多田野曜平) 口が達者なイタチ。金のために様々な悪さを働く。 | |
ガゼル(シャキーラ/Dream Ami) 有名なポップスターであり、哺乳類の権利活動家。 |
『ズートピア』の世界・舞台設定
© Disney
ズートピアは、動物園(zoo)と理想郷(utopia)に由来しています。
動物たちが暮らす大都市ズートピアは、高度に発達した文明の中で動物たちが人間のように暮らしています。数千年前は単純な水飲み場でしたが、動物たちによってより住み良い環境へと改良されていきました。
多様な種類の動物が生活するズートピアは、それぞれの動物の生息地に適した環境づくりがされており、エリアが巨大な壁で分けられ、人工的な気候帯が作られています。劇中では12地区と明かされていますが、すべては登場しません。
肉食動物と草食動物が共存しており、人口の約9割が草食動物である一方で、肉食動物(捕食者)は、草食動物(被食者)を見くびっていて、草食動物は肉食動物を潜在的に凶暴だと捉えています。
市長はライオンのレオドア・ライオンハートで、副市長はヒツジのドーン・ベルウェザー。
ライオンハート市長は、ズートピアを「誰もが何にでもなれる場所」として、すべての哺乳類に包括的な機会と権利を提供することを目標としています。
© Disney
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ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】『ズートピア』のあらすじ
「私はあきらめが悪い」
© Disney
映画は、幼いウサギのジュディ・ホップスが子供劇で肉食動物と草食動物が共存するズートピアを説明するとこから始まる。ジュディ警察官になる夢を持っているが、両親のスチューとボニーを含むほとんどの人が、それは現実的ではないと思っていた。
劇の後、ジュディはいじめられている子供を見つけ、キツネのいじめっ子ギデオン・グレイに立ち向かうが、暴力を受けてしまう。しかし彼女は、「私はあきらめが悪い」と宣言して平然と立ち上がり、いじめっ子に奪われたチケットを取り返す。
大人になったジュディは努力の結果、警察学校で優秀な成績を収め、やがてズートピア初のウサギの警察官になる。彼女は故郷のバニーバロウを後にし、大都会ズートピアにやってくる。
詐欺師のニック
© Disney
ズートピア警察署(ZPD)に到着した彼女は、ボゴ署長から駐車違反の取締係を任される。ジュディが他の大型肉食動物と比べて小さなウサギであるため、彼女は能力を認めてもらえていない。
しかし、ジュディは署長の課した倍の数である200枚の違反切符を切ることを目標に掲げ、見事にそれをやってのける。そんな中、ジュディはゾウのアイスクリーム屋に入っていくキツネのニック・ワイルドと、自分の息子だと言うフィニック小ギツネを見かける。
ジュディはゾウのスタッフがニックたちにアイスを売ることを拒否したことに腹を立て、介入し、財布を忘れたというニックとフィニックにアイスキャンディーを買い与え、2人に感謝される。
しかし、その後ジュディはニックとフィニックが買ったアイスを溶かして小さなアイスにして転売していることを知る。ジュディはニックに騙したことを問い詰めるが、ニックは上手く回避して逃げていく。
ジュディ、解雇の危機
© Disney
ジュディは翌日も駐車違反の切符を切り、他の動物たちから敬遠されていた。その後、花屋でデューク・ウィーゼルトンというイタチの男が強盗を働き、ジュディは彼が逃げ込んだリトル・ロデンティアまで追いかける。デュークが暴れたことでフルー・フルーというトガリネズミの女性に危機が迫るが、ジュディ間一髪で彼女を助け、デュークを逮捕して連行する。
しかし、ボゴ署長はジュディが駐車違反の取締を放棄して危険を冒したと非難する。2人が話していると、カナダカワウソのオッタートン夫人が入ってきて、行方不明になった夫のエミットの捜索をボゴに懇願する。
ボゴが彼女をあしらおうとする中、ジュディは自分が捜査すると名乗り出る。しかし、ボゴはジュディの反抗的な態度に怒り、解雇すると言い放つ。しかし、ベルウェザー副市長が現れ、ジュディの捜査を後押ししたことで、ボゴはジュディに48時間以内にエミットを見つけられなければクビだと言い渡す。
捜査開始
© Disney
ジュディはエミットが最後に目撃された写真に目を通し、ニックの姿を発見する。ジュディはニックに捜査の協力を求めるが、彼が拒否すると、彼の脱税の証拠を突きつけて協力を漕ぎ着ける。
ジュディとニックは、エミットが最後に行ったとみられる「自然主義者」たちの施設で聞き込みする。そこでジュディはエミットが最後に大きな白い車に乗っていたこと、その車のナンバープレートの情報を入手する。
2人はナンバーを照会するため哺乳類自動車局(DMV)に向かうと、スタッフたちは全員ナマケモノたちだった。そこでニックは知り合いのフラッシュを紹介するが、ジュディが早く情報を手に入れたい一方で、彼らの作業スピードの遅さとニックの余計な冗談に付き合わされ、外に出たときにはすでに夜になっていた。
ミスター・ビッグ
© Disney
2人はツンドラ・タウンに向かい、エメットが乗っていた白いリムジンを発見する。しかしその車は、街で最も恐れられている犯罪組織のボス、ミスター・ビッグのものだった。
ジュディとニックはシロクマのボディーガードに捕まり、屋敷に連れて行かれる。ミスター・ビッグは以前、ニックがスカンクの尻毛で作ったラグをプレゼントされたことでニックに恨みを持ち、娘の結婚式である日に邪魔されたことで怒りを買ってしまう。
ビッグは2人を氷漬けにしようとするが、やってきたビッグの娘は、昨日リトル・ロデンティアでジュディが助けたフルフルだった。彼女はジュディに助けられた恩を伝え、ビッグを説得し2人は氷漬けを回避する。
ビッグは、エミットから相談を受けて車を手配したものの、彼が突然凶暴化して消えてしまったことを明かす。2人は車の運転手だったマンチャスに事情を聞きに行くことにする。
「夜の遠吠え」
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ジュディとニックはレインフォレスト地区のマンチャスの家を訪ねる。マンチャスはエミットが「夜の遠吠え」について話していることを明かすが、事情を聞こうとするとマンチャスも凶暴化してしまう。
2人は命からがら逃げ出し、ジュディはマンチャスに手錠をかけて応援を要請する。しばらくしてボゴ署長ら警察が到着するが、捕らえたはずのマンチャスの姿は消えていた。
ボゴ署長はジュディに警察バッジを返却するように命じるが、ニックが介入し、猶予の時間まであと10時間あると言ってジュディをかばう。ジュディはニックに自分をかばってくれたことに感謝する。
ニックは子供の頃、ジュニア・スカウトになりたかったが、自分だけ肉食動物だったことでいじめられた過去を明かす。それ以来、ニックは弱音を吐かないこと、他人がキツネに対して思う印象(狡猾で卑劣であること)になることを決めたと打ち明ける。
事件の陰謀
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2人は副市長のベルウェザーのもとを訪れ、監視カメラの映像を見せてもらう。ライオンハート市長は副市長をこき使い、彼女のことを「スメルウェザー」と呼んでいるのがわかる。監視カメラの映像を見ると、2人はレインフォレスト地区で、「夜の遠吠え」と思われるシンリンオオカミを発見する。
ジュディとニックはその施設に向かい、内部に侵入する。そこにはマンチェスとエミットを含む14人の行方不明者たちが収容されていた。
さらに、施設にライオンハート市長がやってくると、野生化したのが肉食動物だったことを医者から報告を受ける。ジュディは彼らの会話を携帯電話で撮影すると施設を逃げ出して通報し、事件に関与していると思われるライオンハート市長は逮捕される。
分断されるズートピア
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行方不明事件解決の立役者としてジュディの記者会見が開かれる。緊張するジュディはニックからアドバイスをもらい、彼に警察学校への入願書を渡す。
ジュディは肉食動物が凶暴化したしたことについて、生物学的な本能が戻った可能性があることを伝えてしまい、それを聞いたニックはジュディが本当は自分を恐怖対象としてしか見ていないのだと思い、ショックを受ける。彼は入願書を彼女に返して去っていく。
それ以降、肉食動物に対する偏見がズートピア中に広がっていた。クロウハウザーも受付から異動させられてしまう。ポップスターのガゼルは平和集会を開き、肉食動物と暴力を結びつけるのは良くないと主張する。
その後、ジュディは市長に昇進したベルウェザーに呼び出され、ボゴと一緒に向かうと、彼女はジュディをズートピア警察の顔にしようと提案する。しかし、ジュディは自分の発言がきっかけで対立を生んだことに責任を感じ、警察を辞職する。
凶暴化の原因
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ジュディは故郷のバニーバロウに戻り、気を落としながらも両親と一緒に農家の仕事をしていた。すると、かつてジュディを傷つけたキツネのギデオン・グレイが心を入れ替えて、現在は友好的であることを知る。
ギデオンはジュディにかつての態度を謝罪し、ジュディはそれを許す。そんな中、スチューが畑の近くで遊ぶ子どもたちに紫色の花「ミドニカンパム・ホリシシアス」に近づかないように伝えると、ギデオンはその花を「夜の遠吠え」と呼んでいた。
スチューはかつてその花を食べた叔父のテリーが正気を失ったことを明かす。ジュディは、その花こそ肉食動物を凶暴化させた原因なのだと気づき、両親のトラックを借りて急いでズートピアに戻っていく。
謝罪と和解
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ジュディはニックを探して彼を見つけると、自分の無意識な偏見で傷つけたことを謝罪し、状況を伝えて再び協力を求める。ニックはそれを受け入れ、2人は捜査に戻る。
ジュディとニックは、花屋で「夜の遠吠え」の球根を盗んでいたデュークのもとを訪れる。ミスター・ビッグの協力を得てデュークの口を割らせると、彼が羊のダグという人物に売り渡したことを明かす。
ジュディとニックはダグのいる廃線となった地下鉄の列車内の研究所に侵入する。そこで2人は、ダグが「夜の遠吠え」から抽出した玉を作り、凶暴化した動物たちに撃っていたことを知る。
ジュディはダグを研究室から追い出し、証拠の列車を走らせるが、たちまち雄羊たちに追われる。ジュディは機転を利かせて追い払うが、列車は脱線してしまい、証拠が破壊されてしまう。しかし、幸運にもニックが血清が入ったアタッシュケースを確保していた。
黒幕の正体
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2人は警察署に急行するが、途中の博物館でベルウェザーに声をかけられる。不審に思ったジュディは、彼女が事件の黒幕であることに気づき、逃げようとするが、彼女の手下に落とし穴に放り込まれてしまう。
草食動物である羊のベルウェザーは、肉食動物への恨みがあり、意図的に彼らが凶暴であると印象操作して追い払い、ズートピアを支配しようと企んでいた。
ベルウェザーはニックに血清を撃ち、彼を凶暴化させてしまう。ニックはジュディに襲いかかり、ジュディの首に噛みつこうとする。しかし、それは2人による演技であり、すでに血清の玉はブルーベリーに取り替えていた。
ベルウェザーは2人に濡れ衣を着せて白を切ろうとするが、2人は彼女の自白を録音していたことで、警察が到着し、ベルウェザーは逮捕される。
ジュディとニック
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ライオンハートはベルウェザーに濡れ衣を着せられていたことをが明らかになり、その後、「夜の遠吠え」に感染した人たちに解毒剤が施され、オッタートン夫人はもとに戻った夫のエミットと再会を果たす。
ズートピアは再び平和を取り戻し、肉食動物と草食動物が共存する街となる。クロウハウザーは受付に戻り、ジュディも警察官に復帰する。ニックは無事に警察学校を卒業し、ズートピア警察初のキツネの警察官となり、ジュディのバディとなる。
そんな2人の最初の任務は、暴走車の取締りだった。早速スピード違反する車を補導すると、その犯人はナマケモノのフラッシュだった。
エンドクレジットでは、ズートピアの住民たちがガゼルのコンサートを思い思い楽しんでいる様子が描かれる。
【ネタバレ感想・考察】ステレオタイプと信念
© Disney
『ズートピア』は、動物たちが文明社会を築いた大都市を舞台にしたドラマです。映画には一切の人間は登場しませんが、そこで描かれているテーマは、現代社会の写し鏡とも言えるような、痛烈に風刺した内容になっています。
メタファーとステレオタイプ
先に紹介したズートピアの背景でも触れましたが、ズートピアは肉食動物と草食動物が共存する社会であり、その比率は草食動物が9割に対して、肉食動物が1割。これは、アメリカにおける黒人男女の人口割合とリンクします。
このデータからわかるように、本作は肉食動物と草食動物を西洋諸国における黒人と非黒人のメタファーとして機能していることが推測できます。
肉食動物は本能的に草食動物を襲う危険性があり、草食動物はその恐怖心を根底に抱きながら生活していることが描かれていきます。そしてそのステレオタイプは、他でもない主人公のジュディの発言によって広がっていくのです。
これもアメリカにおける黒人への偏見を象徴するようで、そのステレオタイプがいかに有害であるかを描いています。
劇中、肉食動物たちが凶暴化する原因がヒツジの副市長ベルウェザーによる陰謀であることが判明します。彼女は長年の歴史に基づくステレオタイプを利用して、9割を占めるマジョリティに偏見を助長させて植え付け、操作したのです。
能力と機会
ズートピアのライオンハート市長は「哺乳類の包括的イニシアチブ(mammal inclusion initiative)」をスローガンに掲げており、その政策「哺乳類警官育成プログラム」の第一期生としてジュディが首席で卒業しました。
これはいわゆるアファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)の政策とリンクします。
しかしながら、努力して首席となったジュディも、警察署長のボゴは評価せず、違反切符係を命じています。
「ウサギの女性」であるジュディは、市の政策の「格好な見本」であり、ズートピアの中心部に配属されますが、ボゴは彼女の存在を明らかに敬遠している様子が描かれます。大柄な肉食動物たちが中心の警察官の中で、ジュディには機会が与えられません。
真面目に学業に取り組み、どれだけ優秀な成績を修めたとしても、社会に出た途端にその功績は無視され、多くの場合において、評価軸は人種や性別、能力・人脈などに左右されてしまうのです。
「Do the Right Thing」と「you can be anything」
本作が素晴らしいのは、登場人物たちの行動と、それによる結果が描かれていること。
例えば、ジュディは強盗したイタチのデュークを追いかけてボゴに解雇を言い渡されてしまいますが、その中で、フルー・フルーというトガリネズミの女性の命を救いました。それが後の展開で、ミスタービッグの愛娘であり、自分の命を助けることになることが描かれています。
反対に、ジュディの記者会見での無意識な偏見によってズートピアは分断され、自分が警察を辞職することになっていることも描かれています。
これらからわかるように、「正しい行動」をすることの重要性と、それが思いがけないところで自分自身に返ってくることを描いています。もちろんその反対も。
ジュディの無意識な偏見(アンコンシャス・バイアス)は、両親のキツネに対する印象に由来していることも想像できます。両親から渡された対キツネ用の護衛スプレーを、「要らない」と言いつつも常に身につけている様子は印象的。
ジュディも完璧ではなく、時に間違えます。彼女は自分がされて嫌だと感じる偏見を、自分自身も無意識にしている様子が描かれます。
ジュディが警察官になり、警察で活躍していく様子は、ズートピアの掲げる「誰もが何にでもなれる場所」を体現していくようで、同時にそれは、それぞれの種族が互いにステレオタイプを持ちながらも共存し、それでもよりよい社会を築こうとする様子が描かれます。
ジュディの能力主義的な限界、ニックとの自分にない視点を補い合う関係は、『プリンセスと魔法のキス』におけるティアナとナヴィーンの関係にもリンクしています。
『ズートピア』は、多様な動物たちの姿を通して、ステレオタイプの危うさを描きながら、相互理解に努め、そのために「正しい行動」を起こすことの重要性を説いています。
幼い頃に警察官に憧れていたジュディは、「ズートピアは多様な動物たちが共存するユートピア」であると信じていました。
実際のズートピアは完璧ではなく、ジュディ自身も完璧ではありません。それでも、彼女の信念と行動、相互理解は、少しずつ社会全体を変えていき、そしてジュディ自身の成長、一人ひとりがより良い存在になっていくことを証明しました。