今回ご紹介する映画は『ソウルフル・ワールド』です。
『インサイド・ヘッド』のピート・ドクターが監督を務めたディズニー/ピクサー映画。
ピクサー映画の中ではダントツに大人向けであり、「人生の生きる意味」を問うような非常に哲学的な物語になっています。
人によっては人生に大きな影響を与えるくらいすごい映画でしたよ!
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映画『ソウルフル・ワールド』の作品情報とあらすじ
『ソウルフル・ワールド』
5段階評価
ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :
あらすじ
プロのミュージシャンを夢見る音楽教師のジョーは、ある日、不思議な世界に迷い込む。そこは、生まれる前にどんな自分になるのかを決める“ソウル(魂)”の世界だった…。
作品情報
タイトル | ソウルフル・ワールド |
原題 | Soul |
監督 | ピート・ドクター |
脚本 | ピート・ドクター マイク・ジョーンズ ケンプ・パワーズ |
出演 | ジェイミー・フォックス ティナ・フェイ グレアム・ノートン |
撮影 | マット・アスプリー イアン・メギッベン |
音楽 | トレント・レズナー アッティカス・ロス ジョン・バティステ |
編集 | ケビン・ノルティング |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2020年 |
上映時間 | 101分 |
予告編
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おすすめポイント
ディズニーが描く“大人過ぎる”人生哲学。
中年男性の主人公ジョーは、人生に希望の光が見えたところで死んでしまいます。
そんな彼がたどり着いたのは、生まれる前にどんな自分になるのかを決める場所、“魂(ソウル)”の世界。
人生に意味なんてなくていい。
『ソウルフル・ワールド』のスタッフ・原作
監督:ピート・ドクター
名前 | ピート・ドクター |
生年月日 | 1968年8月10日 |
出身 | アメリカ・ミネソタ州 |
本作を手掛けたのはピクサーのCCOでもある、ピート・ドクター監督。
ディズニー映画の中では、作家性が現れやすいピクサー作品ですが、ピート・ドクター監督も自身の経験をふんだんに映画に取り込んでいます。
本作『ソウルフル・ワールド』も同様で、ピクサー筆頭のクリエイターである監督が、前作『インサイドヘッド』のヒットを受けた後に、虚無感や人生の意味について考えた経験があったそう。
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『ソウルフル・ワールド』の音楽
『ソウルフル・ワールド』では人間とソウルの2つの世界が描かれ、主人公はジャズミュージシャンを目指す音楽教師ということもあり、音楽が非常に印象的。
本作で音楽を手掛けたのは、米フォーブス誌の「世界を変える30歳未満の30人」に選ばれ、グラミー賞ノミネート経験のあるジョン・バティステ。
また、2020年にロックの殿堂入りを果たした、アメリカのインダストリアル・ロックバンド「ナイン・インチ・ネイルズ」のメンバーであるトレント・レズナーとアッティカス・ロスのコンビが作曲。
この2人はデヴィッド・フィンチャー監督作品の音楽を手掛けていることでも知られていますね!
人間世界ではジャズの音楽が、ソウル世界では電子的な音楽が流れていて、世界観と音楽性が明確に分けられていて、これまでのピクサーにはないような音楽的表現がありました。
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ感想】大人向け過ぎる設定と世界観
ディズニーアニメーションの中でもピクサー映画は大人向けの作品がこれまでにもありましたが、本作『ソウルフル・ワールド』は別格に大人向けでした。
本作で挙げられる代表的な大人向け要素が以下の3つ。
- ジャズ音楽
- ソウル世界の概念
- 人生に意味はあるのかの問い
インタビューでピート・ドクター監督も言っていましたが、ターゲットが子どもではなく、ある程度の人生経験を積んできた中年向けです。
ジャズ音楽
まずは、ジャズミュージック。
劇中では、ジョーが教える中学校において、子どもたちはジャズに興味がない様子が描かれていましたね。
その時にジョーが弾いている楽曲はデューク・エリントンの「Things Ain't What They Used to Be」。
直訳すると「物事は昔と同じではない」、つまり、時代の変遷とともに変化したことを、昔を懐かしむ表現で言い表しています。
デューク・エリントンは楽屋の壁に飾ってある写真にも登場しています。
そして、このジャズと言う音楽性が、物語とリンクする素晴らしい働きをしているのでした。
それを踏まえても子どもには難しいですよ!笑
ソウル世界の概念
次に、ソウル世界の概念。これが中々に難しい。
主人公のジョーは、有名な演奏家ドロシア・ウィリアムズのバンドで演奏できる機会を手にし、大喜びして浮かれていた結果、マンホールから落ちて死んでしまうのです。
冒頭でいきなり主人公が死ぬのはビックリしますよね!
そこでやってきたのが魂(ソウル)の世界。
そこは真っ暗で、天界に続く階段があるのみ。つまり死ぬ前のソウルが天界に召されていく場所なんです。
天界に召される時に、電撃殺虫器のように「ブチッ、ブチッ」という音が鳴るのがめっちゃ怖いんですよね…!
ジョーはせっかく決まったライブでの演奏を前に、死ぬわけにはいかないので、抵抗するのですが、するとその世界からも落ちてしまいます。
そこでやってきたのが、打って変わって柔らかな空気に包まれた世界。
そこは、生まれる前にどんな自分になるのかを決める場所でした。
そこでは、人生のきらめきを見つけるために、人間界で経験を積んだメンター(師匠)とセットになって自分だけのきらめきを見つけることになっています。
そこで登場するのが、こじらせソウルの22番。
22番は、何百年もきらめきを見つけることができないでいるソウルです。
マザー・テレサやモハメド・アリ、リンカーンなどの偉人がメンターになっても、22番のきらめきは誰も見つけられませんでした。
そんな中、メンターとして22番を担当することになってしまったジョー。
早く元の姿に戻りたいジョーと、きらめきを見つけてしまえば、誕生しなくてすむ(生きなくて住む)と考えた22番の利害が一致し、協力することになるのです。
ここまでが、大まかな流れです。正直、めっちゃ複雑じゃないですか?
文字にすると余計に難しく感じるかもしれませんが、そこはさすがピクサーの描写力、複雑な世界観を上手く説明していました。
とはいえ、理解できずに付いていくのが必至になる人もいると思いますけど…笑
また、この世界観がすごく良かったのも印象的です。
ソウル世界には、死ぬ前と生まれる前の2つの世界があって、ジョーが最初に行った死ぬ前の世界は、宇宙空間のように無機質で何もなく、一方で、生まれる前の世界は柔らかく温かい印象になっています。
そして、ソウル世界の管理人のジェリーとテリーの造形も素晴らしい。
ソウルたちがゆるキャラのようなデフォルメした造形になっている一方で、ジェリーとテリーは、線画で描いた平面的な造形になっています。
死ぬ前の世界から生まれる前の世界に行くときには、クリストファー・ノーランの『インター・ステラー』を彷彿とさせる幾何学的な映像で描かれていて、没入感がありました。
【最高傑作】天才クリストファー・ノーラン監督のおすすめ作品ランキングベスト11
こういうシーンこそ、劇場で観たいんですよ!配信だけなのが残念。
ピクサーの描く世界観はさすがで、ジョーのいる人間社会(ニューヨーク)の雑多な映像と、ソウルの2つの世界の対比が効いていました。
そして、大人向け要素の3つ目となるのが、「人生とは何かの問い」を描いていること。
次の項目では『ソウルフル・ワールド』で描かれた人生観についてを考察していきます。
【ネタバレ考察】 すべての人生を肯定する映画
設定や世界観が完全に大人向けとなっていた『ソウルフル・ワールド』ですが、終盤にかけて、大人たちの胸をグサグサと突き刺すような展開になっていくのです。
人生に意味はあるのか?
それが象徴的に伝わるのが、自分の姿に戻ったジョーの描き方。
ドロシア・ウィリアムズとライブで演奏することで、劇的に人生が変わり、今までの悩みはすべて吹っ飛ぶと話していたジョー。
実際に人間世界に戻り、ライブを成功させたジョーでしたが、そこに待っていたのは、いつもと何にも変わらない日常。
ジャズミュージシャンとして成功したのに、それはジョーにとっての人生のきらめきではなかったと分かるのです。
ディズニー作品とは思えない、残酷な展開ですよね!
沈んだ気持ちになるジョーですが、そんな中、22番とのやり取りを思い出すのでした。
「空を見ることや歩くことがきらめきかも」と話す22番に対して、ジョーは「そんなのは生活の一部だ」と言ってしまいました。
しかし、ジョーは気づくのでした。
ピザを食べて美味しいと思う時、美しい夕日を見た時、好きな音楽を教える時、海辺で波が足にかかった時の感覚、夜空に打ち上がった美しい花火を見たとき。
その何気ない日常にこそ、人生のきらめきがあったと痛感するのです。
しかもそれをセリフではなく、映像のみで表現するところが上手いんですよね。ジョーが弾くピアノの演奏をバックに、過去の回想が差し込まれていく。これは本当にニクい演出でした!
このシーン、私は『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』のひろしの回想シーンを思い出しました。
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ピート・ドクター監督の映画『カールじいさんの空飛ぶ家』の冒頭でも100%泣かせる似たような映像がありましたね。
人生は続くよ
ドロシア・ウィリアムズとのライブで劇的に人生が変わると思っていたジョーが突きつけられた“何も変わらない”という現実。
これが非常に胸に刺さる部分でもあって、M-1グランプリのように優勝した次の日から人生が変わることは基本的にないんですよね。
たとえそれが、何年も頑張ってきた夢や目標だったとしても同じ。
監督自身が成功の後の虚無感を感じたように、人生には何の意味があるのか、自分は何をしてきたのかを問うテーマ性。
そして、それに対して「人生に意味なんてなくていい」と言ってしまう大胆さ。
ソウル世界の通行証の最後のピースが、人生のきらめきではなく、生きる準備ができたときに生まれると明かされるのです。
私もそうですが、ジョーが22番に言ってしまったように、そしてジョーが母親に言われたように、人生において「夢や目的」があることが幸せだと思ってしまいがち。
一方で、それにもかかわらず「その夢で食べていけるのか」と葛藤が生まれることも。
そんな中で描かれる、理容師のデズとのシーンが印象的。獣医になりたかった彼が、家庭の事情で床屋をやっているのですが、後悔はなく、むしろ幸せだと語るのです。
偉大な発明をすることができなくても、誰かを喜ばせている。それが幸せなんだ。
たとえ、なりたい自分になれなくても、夢や目標が叶わなくても、自分が好きなことに夢中になり、それで人を喜ばせられるなら、あなたなりの幸せのカタチはあるんだと気付かせてくれる映画でした。
ラストシーン、最後のセリフである「一瞬一瞬を大切に生きる」と決めたジョーの姿には、たとえ彼がミュージシャンになろうとも教師をやろうとも、幸せに生きていけると思えるのでした。
これまで夢や成功を描いてきたディズニーにおいてのこの作品の異質さと、意義は大きいですよね!
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映画のシーンを切り取った画面を複数ページ入れ、絵本を卒業した小学校中学年から高学年向けのシリーズ。
文字が大きく、ふりがなつきなので初めての読書に最適です。
もっと小さいお子さんには、絵本もどうぞ。
まとめ:ディズニー/ピクサー史上最も大人な映画
以上、ディズニー/ピクサー映画『ソウルフル・ワールド』をご紹介しました。
多くの人にとって人生のバイブルともなりえる素晴らしい作品となっていました。
コロナ禍でDisney+ (ディズニープラス)のみの配信となりましたが、スクリーンの大小に関わらず描かれるテーマは素晴らしいものでした。
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