今回ご紹介する映画は『ウィッシュ』です。
ウォルト・ディズニー生誕100周年を記念する映画で、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ作品62作目の映画。
本記事では、ネタバレありで『ウィッシュ』を観た感想・考察、あらすじを解説。

ディズニー100周年をお祝いする作品ですが、ストーリーはあまりにもシンプルでした!
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映画『ウィッシュ』の作品情報と予告
『ウィッシュ』

5段階評価
ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :
あらすじ
願いが叶う魔法の王国に暮らす少女アーシャは、願いが王様に支配されている真実を知ってしまい、みんなの願いを取り戻すべく立ち上がる。
作品情報
タイトル | ウィッシュ |
原題 | Wish |
監督 | クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン |
脚本 | ジェニファー・リー |
出演 | アリアナ・デボーズ クリス・パイン アラン・テュディック アンジェリーク・カブラル ヴィクター・ガーバー ナターシャ・ロスウェル エヴァン・ピーターズ ハーヴィー・ギレン ラミー・ユセフ ジョン・ルドニツスキー |
音楽 | デヴィッド・メッツガー |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2023年 |
上映時間 | 92分 |
予告編
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全国の映画館にて12月15日公開。
映画『ウィッシュ』の監督・スタッフ
監督:クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン
© 2022 Corey Nickolsファウン・ヴィーラスンソーン監督(左)とクリス・バック監督(右)
名前 | クリス・バック |
生年月日 | 1958年2月24日 |
出身 | アメリカ・カンザス州 |
名前 | ファウン・ヴィーラスンソーン |
生年月日 | 1983年 |
出身 | タイ・チョンブリー |
『ウィッシュ』の監督を務めたのは、クリス・バックとファウン・ヴィーラスンソーン。
クリス・バックは『アナと雪の女王』『アナと雪の女王2』の監督であり、ファウン・ヴィーラスンソーンは同じく『アナと雪の女王』と、『ズートピア』『ラーヤと龍の王国』でストーリーボードアーティストを担当しています。
彼女は今作が初監督となり、ディズニー・アニメーション映画を監督した初めてのタイ人アーティストとなりました。
映画『ウィッシュ』のキャラクター・声優・吹き替え
アーシャ(アリアナ・デボーズ/生田絵梨花)

主人公。ローザス王国で暮らす楽観的で機知に富んだ17歳の少女。王国の闇を見抜き、立ち向かう。
主演のアーシャの声を演じたのはアリアナ・デボーズ。
米オーディション番組「アメリカン・ダンスアイドル」でデビューし、『チアーズ!』『ハミルトン』などブロードウェイミュージカルで活動。
スティーブン・スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド物語』(1961)のリメイク『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)に主要キャストで出演。アカデミー賞で助演女優賞を受賞しました。
一方、日本語吹き替えキャストでは、元乃木坂46のメンバー、生田絵梨花が担当。『ロミオ&ジュリエット』『レ・ミゼラブル』など、ミュージカル舞台で活躍して評価されています。映画の吹き替えとしては『ハンガー・ゲーム』(2012)以来となります。
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マグニフィコ王(クリス・パイン/福山雅治)

本作のヴィラン。願いを叶える力を持つ魔術師の王で、ローザス王国の創設者であり統治者。
本作のメインヴィランであるマグニフィコ王の声を担当したのは、クリス・パイン。『スター・トレック』(2009)の主人公カーク役や、『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(2023)で主演を務める。
アニメーションの吹き替えとしては、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)のピーター・パーカー以来となる。
日本語吹き替えキャストは、シンガー・ソングライターの福山雅治。数々のテレビドラマや映画で主演を演じるも、ミュージカル作品はキャリア初であり、米オーディションに合格して配役されました。
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バレンティノ(アラン・テュディック/山寺宏一)

アーシャのペットのヤギで、人と話したいという願いが叶い、会話能力を手にする。
アーシャの相棒バレンティノ役を担当したのは、アラン・テュディック。
ディズニー作品では『シュガー・ラッシュ』(2012)のヴィラン、キャンディ大王役でアニー賞最優秀声優賞を受賞したことをきっかけに、『アナと雪の女王』(2013)『ベイマックス』(2014)『ズートピア』(2016)など、数々のディズニー作品で声を務めています。
一方、日本語吹き替えキャストは山寺宏一。言わずと知れた日本を代表する人気声優の1人で、ディズニー映画でも数々の吹き替えを担当しています。(ドナルドダック、ジーニー、スティッチ、セバスチャン、ラルフほか多数)
アマヤ女王(アンジェリーク・カブラル)

マグニフィコ王の妻であり、ローザス王国のの女王。
サビーノ(ヴィクター・ガーバー)

アーシャの100歳の祖父。
サキナ(ナターシャ・ロスウェル)

アーシャの母親。
アーシャの7人の友だち
『ウィッシュ』では、『白雪姫』における7人の小人を想像させるアーシャの7人の友だちが登場します。
イメージ | 名前/性格 |
---|---|
![]() | ダリア(ジェニファー久御山) パン職人であり7人のリーダー的存在。 |
![]() | サイモン(エヴァン・ピーターズ) 騎士の夢を持つ大柄な青年。常に眠たげ。 |
![]() | ガーボ(ハーヴィー・ギレン) 皮肉屋な性格。 |
![]() | サフィ(ラミー・ユセフ) ニワトリ好きだが、アレルギー持ちでいつもくしゃみしている。 |
![]() | ハル(ニコ・ヴァーガス) 明るくて前向きな性格。 |
![]() | バジーマ(デラ・サバ) 物静かな性格。どこからともなく現れる。 |
![]() | ダリオ(ジョン・ルドニツスキー) 時おり周囲をびっくりさせる行動をとる。 |
それぞれのキャラクターが、7人の小人たちの頭文字と同じであり、性格にも共通点があります。

『ウィッシュ』のポイント

映画『ウィッシュ』は、これまでのディズニー作品の中でも特に重要な位置づけの作品になっています!
ディズニーの根源的なテーマ「願い」が主題
ウォルト・ディズニーをはじめとしたディズニー・アニメーションの作り手たちは、これまで多くの作品、多くの形で「願いが現実になる」様子を描いてきました。
100周年の節目となる重要作で描かれるのは「願い」。長年のディズニーに共通するテーマに直球勝負で挑んだ作品になっています。
ディズニーにおける「願い」といえば、リー・ハーラインによる名曲『星に願いを(When You Wish Upon A Star)』が代表的。
これは1940年の映画『ピノキオ』の主題歌であり、ゼペットじいさんが星に願いを捧げるシーンにはじまり、ディズニー・アニメーションのキャラクターたちが、星に願いを祈るシーンは代々描かれてきています。


この楽曲は、『コルドロン』(1985)以降のディズニー映画のオープング映像の音楽としても使われており、「願い」がディズニーを象徴する大きな軸であることを象徴しています。
3Dと2Dによるアニメーションの融合
『ウッシュ』は映像面でも新たなチャレンジを行っています。アートデザインは、ディズニー最初の作品でありアニメーション映画としても最初の作品である『白雪姫』などの水彩画のアニメーションと、3DCGを組み合わせたルックになっています。
これはすなわち、伝統的なアニメーションと現代的なアニメーションのハイブリッド。ディズニーがずっと表現したかった技法のひとつでもあります。
実はこの試みは『シュガー・ラッシュ』(2012)の同時上映作品である短編『紙ひこうき』(2012)で描かれています。
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また、画面のアスペクト比も初期のシネマスコープ(2.55:1)サイズとなっており、これは『わんわん物語』(1955)、『眠れる森の美女』(1959)年に続く3本目となっています。
加えて、これまでの集大成的な立ち位置である100周年記念作品でもあることで、過去のディズニー映画をオマージュした場面が100個を超えるほど含まれていると明かされています。
伝統的な「ヴィラン(悪役)」
そして重要な要素が『ウィッシュ』におけるヴィラン。近年のディズニー作品は、悪役キャラクターを描く際に、悲劇的な背景が語られることで、単なる悪役には思えないキャラクター性になっていることが印象的です。(それが悪いとは思いませんが)
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一方で、『ウィッシュ』における悪役、クリス・パインが声を演じるマグニフィコ王は、これまでの伝統的なディズニーヴィランを彷彿とさせる純粋な悪役と明かされています。
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】映画『ウィッシュ』のあらすじ
ロサス王国と人々の「願い」
© 2023 Disney
あらゆる魔法を学んだマグニフィコ王は、妻のアマヤ王妃とともに何年も前に地中海に浮かぶ島にロサス王国を建国し、多くの人々が移り住む。
ロサス王国では18歳になると、人々は自分の願いをマグニフィコに捧げ、マグニフィコは月に一度、一人を選んでその願いを魔法で叶える儀式を行っていた。
ロサス王国で暮らす17歳のアーシャは、ヤギのヴァレンティノとともにマグニフィコに弟子入りする面接を受けようとしていた。アーシャは100歳の誕生日を迎える祖父サビーノの願いを叶えてほしいとマグニフィコに頼むが、彼に拒否され、弟子入りも拒まれてしまう。
その過程でアーシャはマグニフィコが人々の願いを叶えると謳いながら、その記憶を消し去っていることを知る。彼女はマグニフィコの欺瞞を訴えようとするが、母サキナと祖父サビーノに止められてしまう。
スター
© 2023 Disney
辛抱できないアーシャは、星に願いをかけると、彼女の願いに呼応するように空から光が降り注ぎ、擬人化された「スター」という魔法の存在が現れる。
スターの魔法は森や動物たちに話す力を与え、ヴァレンティノも話ができるようになる。アーシャは家族の願いを取り戻すためにスターに助けを求める。
一方、マグニフィコは自分以外に魔法が使えるスターの存在を脅威に感じていた。彼はアマヤの忠告を無視して禁断の魔法書に手を染める。
アーシャはダリアの協力を得て、スターとともにマグニフィコの願いの間に侵入し、サビーノの願い玉を取り戻す。しかし、アーシャがスターに関与しているという密告によって追い詰められると、マグニフィコはサキナの願い玉を壊して力を取り込んでしまう。
アーシャはサビーノとサキナを近くの島に逃し、スターとヴァレンティノととも王国に住む人々の願いを取り戻すために戻っていく。
人々の願い
© 2023 Disney
そんな中、アーシャを密告したのが彼女の7人の友人の一人であるサイモンであることが明らかになる。マグニフィコはサイモンの「強い騎士になる」という願いを叶え、アーシャを捕らえるために向かわせる。
アーシャは残りの6人の友人【ダリア、ガーボ、サフィ、ハル、バジーマ、ダリオ】の協力を得て、マグニフィコに失望したアマヤも仲間に加わる。
アーシャは自分がマグニフィコを引き付けている間に願いの間から願い玉を解放させようとする。しかし、彼女を追ってきたのはマグニフィコに変身していたサイモンだった。
マグニフィコは城の塔の上に登り、願い玉をすべて自分の体内に吸収して力を得ると、スターも閉じ込めてしまう。アーシャはなんとかしてマグニフィコを止めようとするが、強大な力を前に簡単に制圧されてしまう。
アーシャは倒れながらも諦めず、人々にロサス王国を守るために願うことを訴える。すると人々の願いは集積され、マグニフィコの闇の魔法を打ち負かす。
封印されていた願いは人々に戻っていき、スターも解放される。マグニフィコに代わってロサス王国はアマヤがリーダーとなり、マグニフィコは鏡の中に閉じ込められる。サイモンは自分の行動を謝罪し、アーシャと友人たちはそれを許す。
スターはアーシャに魔法の杖を贈り、人々が正当に願い続けられるように誓い、他の星々の元へと帰っていく。
【ネタバレ感想】驚くほどシンプルすぎる100周年作品
© 2023 Disney
ディズニー創立100周年の記念作品であり、ディズニー長編アニメーション映画62作品目となる『ウィッシュ』。その内容は、驚くほどシンプルなものでした。
あまりにも表面的な物語
『ウィッシュ』は、驚くほどシンプルに長年描き続けてきたディズニーの「願いの力」を描いた物語でした。
ロッテントマトを確認すると、批評家からの評価が悪い一方で、観客の評価は上々。これは同じく2023年公開の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と同じ構図です。
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マリオの映画と同じように、本作は明白にファンムービーと言えるでしょう。批評家の評価が低い理由も理解できて、というのも、物語的な深みやキャラクターの魅力はほとんど感じらないんですよね。
本作におけるヴィランはマグニフィコひとりに集約されていて、どんな願いを持ってもいいはずですが、ロサス王国の人々の願いは清廉潔白なものしかありません。一方で、マグニフィコは自分がつくった独裁的な国家での権力にしがみつきます。
そんな中で、サビーノの願いが「危険」と言われる理由も曖昧で物語として活かさいのはもったいない。
何より残念に感じたのは、アーシャの7人の友達があまりにも表層的な部分しか描かれないところ。これは『白雪姫』における七人の小人オマージュであるとは言え、それ以上のものがないので、彼らは塔の屋上を解放する数的役割にしか感じられず、キャラクターの魅力がほとんど感じられません。悲しい…。
アーシャ役のアリアナ・デボーズやマグニフィコ役のクリス・パインの楽曲は魅力的ですが、ディズニーアニメの伝統に則った歌でつなぐミュージカル映画としては、物語の力が弱い分、キャラクターが気持ちを歌い上げる一方で観客はおいてけぼりになります。
例えば、マグニフィコのパートである楽曲『This Is the Thanks I Get(無礼者たちへ)』は、彼の私利私欲とナルシズムを象徴する好きな歌なのですが、ヴィランのテーマ曲としてはポップ過ぎる印象。
近年のディズニーミュージカル映画『アナと雪の女王』『モアナと伝説の海』『ミラベルと魔法だらけ家』と比較すると、感情的な高揚感はありません。さらに言えば、金曜ロードショーで公開に合わせて放映された4作品と比べるとあまりにも物語的希薄さが目立つのも皮肉なところ。
本作は、本編の前に100周年を記念する短編『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』(ディズニープラスで事前に配信済み)が同時上映されていましたが、本編自体も、短編で描かれているディズニー映画の歴史を散りばめた以上のものがないのがなんとも残念なところ。
総じて、紛れもなく「100周年記念作品」である一方で、それを祝うための位置づけでしかなく、単体の作品としての魅力に欠けていて、記憶に残るような映画ではありませんでした。
アニメーション表現は魅力的
© 2023 Disney
本作は、ディズニーのどの作品の世界よりも前から存在するファンタジー世界が舞台。
映画のオープニングとラストが『ウィッシュ』という絵本・おとぎ話で表現されているように、本作はディズニーの伝統的な2Dアニメーションと3Dを融合し、まさに絵本の世界が動いているような滑らかな水彩画タッチで描かれるアニメーションは見事です。
これは先に紹介した2012年の短編『紙ひこうき』で表現していたアニメーションですが、近年では2Dと3Dを融合したアニメーションは増えていて、Netflix映画の『クロース』や今年話題となった『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』などでも表現されています。
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そして上記2作品は、2Dと3Dを組み合わせながら「物語としても素晴らしいクオリティ」であることも強調しておきたいところ。
本作は、特に背景に象徴されるような水彩画タッチのアニメーションは本当に見事で、ディズニー初であり、世界初のカラー長編アニメーション映画である『白雪姫』へのリスペクトを感じます。
だからこそ、過去のIP(知的財産)を活かした上で、魅力的な物語が観たかったのが本音です。とはいえ、本作に関わったアニメーターたちは称賛に値するので、彼らの働きが活きるような脚本と出会ってほしいです。
苦戦を強いられるディズニー
ディズニー創立100周年を記念し、2億ドルという巨額な製作費が投じられた本作ですが、アメリカでは興行的に苦しんでいます。
2020年2月、ディズニーCEOのボブ・アイガーは後任となるボブ・チェイペックにバトンを渡しますが、2022年11月にディズニーCEOに復帰したことで世間を驚かせました。
さて、11月29日に行われたニューヨーク・タイムズのイベント「DealBook Summit 2023」に登壇したアイガーの発言を手短にまとめました。
CEOに復帰したボブ・アイガーはイベントでディズニーが抱える問題を語っています。
印象的なのは、近年の作品の興行不振を受けて、創造性という点では量より質が最も重要だと言っていること。さらに、「楽しませることが第一で、メッセージよりもポジティブな影響を与えることができればいい」と発言しています。
このアイガーの発言は、ねとらぼ記事でも取り上げられて話題となっていましたが、世間の印象だと「メッセージ性=ポリコレ」の文脈で語られている印象もあり、それは違うだろとも感じるんですよね。現に本作は純粋に脚本が薄すぎるだけなので。
事実、メッセージ性とエンターテイメント性が共存できることは近年の『ズートピア』や『モアナと伝説の海』などでも証明しているじゃないですか。それに多くの人はディズニーならそれができると信じてると思うんですよね。
アイガー自身がどういう意味で「メッセージよりもストーリーテリング」と発言しているかはイベントの登壇内容ではわかりませんでしたが、2024年には『インサイド・ヘッド2』『ムファサ:ザ・ライオンキング』『デッドプール3』など、注目される続編作品の公開が控えるディズニー。大丈夫かな。うーん、頑張ってくれ!
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【ネタバレ解説】『ウィッシュ』の小ネタ・オマージュ
『ウィッシュ』は、物語としては残念な印象でしたが、ディズニー100周年を記念するオマージュを楽しむことができたのも事実です。以下では、特に印象的だったディズニー映画の代表的なオマージュを紹介します。
絵本で始まるオープニング
© 2023 Disney
オープニングとエンディングは、映画が『ウィッシュ』という絵本の物語であることを象徴する絵本を映した構成になっていますが、これは『白雪姫』『ピノキオ』『シンデレラ』『眠れる森の美女』といった初期の作品のオープニングへのオマージュとなっています。
サビーノおじいちゃん
© 2023 Disney
アーシャの祖父であるサビーノは100歳の誕生日を迎える設定ですが、これはまさにディズニー創立100年を反映していて、物語ではアーシャは彼の願いを特に強調していました。
サビーノの願いは「何かを創りたい、音楽でインスピレーションを与えたい」というものであり、それがポストクレジットシーンにおける『When You Wish Upon A Star(星に願いを)』への作曲へと繋がります。そしてロサス王国にディズニーの象徴的なスタジオロゴを彷彿とさせるアーチが描かれます。
この楽曲は『ピノキオ』の曲で知られていると同時に、スタジオロゴのBGMやディズニーテーマパークの閉園音楽など、ディズニーを象徴するテーマソングです。

だからこそ、サビーノの扱いはもっと物語に絡めてほしかったんですけどね!
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マグニフィコとディズニーヴィランズ


本作の唯一の悪役であるマグニフィコは、伝統的なディズニーヴィランズを意識したキャラクターになっています。
彼のプライドと虚栄心、ナルシズムなどは、『白雪姫』における女王(魔女)、『リトル・マーメイド』におけるアースラ、『眠れる森の美女』におけるマレフィセント、『ラマになった王様』におけるイズマなどとリンクします。
実際に、マグニフィコの研究室にはイズマの薬のビンが置かれていて、彼が禁術書を使ってからは毒リンゴが登場したり緑色のトゲの魔法、アースラの緑の触手を彷彿とさせるシーンもありました。
そんなマグニフィコという魔法使いの弟子になろうとするアーシャは、『ファンタジア』のミッキーと同じです。
マグニフィコが敗北して杖の中に閉じ込められる様子は、『アラジン』のジャファーがランプに閉じ込められる様子にも繋がります。
アーシャとフェアリーゴッドマザー


主人公であるアーシャには、さまざまなディズニーのオマージュが見受けられます。特に印象的なのは、『シンデレラ』におけるフェアリーゴッドマザーのオマージュ。
彼女がマグニフィコを森におびき寄せるシーンでは、フェアリーゴッドマザーに似たローブを着用しており、スターから彼女が使っていたものと同じような魔法の杖を贈られています。
映画の最後では、アーシャの友人たちが彼女を「ロサス王国のフェアリーゴッドマザー」と表現していて、本作がディズニーすべての物語の起源的な位置づけであることも、彼女が人々の願いを実現させるという使命を持ったことで、ディズニー100周年の歴史に関連していきます。
アーシャと森の中の『I'm a Star』
そのほかにも、アーシャにはさまざまなディズニーキャラクターとの関連があります。特に森の中のシークエンスはイースターエッグだらけ。
This Wish(この願い)と「I Want」の歌
本作を代表する名曲『This Wish』では、髪がなびく様子はポカホンタスの『Color of the Wind』を彷彿とさせています。
この楽曲は、ディズニー映画で度々表現される「I Want」の楽曲。これらの楽曲では、主人公のキャラクターが「I Want」や「I Wish」と歌い上げ、それぞれの願いを楽曲で表現しています。
願い
『ウィッシュ』の最後のシーンで、相棒のヤギのヴァレンティノの願いが「動物たちが平等に暮らす世界、服を着ていること」と明かしていましたが、これはまさに『ズートピア』で実現されています。
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ミッキーマウスとスター
© Disney
アーシャの願いを受けて登場するスターは、ミッキーマウスから着想を得たキャラクター。そんなミッキーの「隠れミッキー」要素も複数登場しています。
エンドロール
映画のエンドロールでは、ディズニー長編アニメーションの歴史を振り返るように、スターによって歴代のキャラクターたちが描かれています。
『ベイマックス』でロバート・キャラハン教授が選出されているのはさすがに笑いました。

どの作品でどのキャラクターが描かれているかも観ていて面白いところでしたね!
そのほかにも、ありとあらゆるイースターエッグが作品全体を通して散りばめられていますので、ディズニーファンは必見。ぜひ探してみてください!
まとめ:駄作ではないけど期待しすぎには注意
今回は、ディズニー100周年記念映画『ウィッシュ』をご紹介しました。
ディズニーの名作と知られる古典的作品の多くは驚くほどシンプルだったり、わかりやすい物語で、子どもたちが楽しめる作品なのは事実です。
「ディズニー100周年のオリジナル映画」という触れ込みに期待していた自分にとって、本作は期待を超えるものではありませんでした。とはいえ、決して駄作ではありません。ぜひ、ご自身の目で判断してください。
ただ、ディズニーは「100周年を祝う」ことを優先したことで、ストーリーテリングよりもイースターエッグやノスタルジーを選んだんだね、と私は受け取りました。100周年おめでとう!