今回ご紹介する映画は『プリンセスと魔法のキス』です。
『プリンセスと魔法のキス』は、ジュブナイル小説とグリム童話からインスピレーションを受けた2009年のディズニー・ファンタジー映画。
本記事では、ネタバレありで『プリンセスと魔法のキス』を観た感想・考察、あらすじを解説。
CGアニメの潮流があったディズニーで、手描きアニメーションの良さを改めて感じる作品です!
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『プリンセスと魔法のキス』の作品情報・予告・配信
『プリンセスと魔法のキス』
あらすじ
レストラン開業を夢見るティアナは、ある夜、人間の言葉を話すカエルに出会う。彼は自分が王子のナヴィーンだと名乗り、人間に戻るために彼女にキスしてくれるように頼む。ティアナはしぶしぶキスするが、ナヴィーンの姿は戻らず、ティアナの姿までカエルに変えられてしまう。
5段階評価
予告編
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作品情報
タイトル | プリンセスと魔法のキス |
原題 | The Princess and the Frog |
監督 | ジョン・マスカー ロン・クレメンツ |
脚本 | ジョン・マスカー ロン・クレメンツ ロブ・エドワーズ |
出演 | アニカ・ノニ・ローズ ブルーノ・カンバス キース・デイヴィッド |
音楽 | ランディ・ニューマン |
編集 | ジェフ・ドラヘイム |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2009年 |
上映時間 | 97分 |
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おすすめポイント
王子様を待つだけのプリンセスじゃない。
ディズニー・アニメーションの49作目の長編映画であり、ディズニー映画で初めて黒人のプリンセスが主人公となった作品。
主人公のティアナは、これまでのステレオタイプなディズニープリンセスとは異なり、独立心を持ち、努力と現実の重要性を理解している強い女性です。
物語の大半がカエルであるという独特さと、ニューオーリンズを舞台にしたジャズやラテンアメリカの文化も愉快で、ティアナの冒険と成長を通じて「本当に大切なものを見失わないこと」を教えてくれる良作です。
『プリンセスと魔法のキス』の監督・スタッフ
ジョン・マスカー&ロン・クレメンツ
名前 | ジョン・マスカー |
生年月日 | 1953年11月8日 |
出身 | アメリカ・シカゴ |
名前 | ロン・クレメンツ |
生年月日 | 1953年4月25日 |
出身 | アメリカ・スーシティ |
『プリンセスと魔法のキス』の監督は、ジョン・マスカーとロン・クレメンツのコンビ。この2人は、『リトル・マーメイド』や『アラジン』など、ディズニーのルネサンス期を牽引した著名な監督・脚本家コンビとして知られています。
『プリンセスと魔法のキス』の原作・製作背景・ポイント
『プリンセスと魔法のキス』は、ディズニー・アニメーションの49作目の長編映画であり、ディズニー映画で初めて黒人のプリンセスが主人公の作品です。
ディズニーアニメ的「伝統回帰」
本作は、E・D・ベイカーによる2002年のジュブナイル小説『カエルになったお姫様(The Frog Princess)』が原作で、グリム童話の『かえるの王さま(The Frog King)』にインスパイアされています。
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監督は、『リトル・マーメイド』(1989)『アラジン』(1992)『トレジャー・プラネット』(2002)などのディズニー名作映画を手がけてきたジョン・マスカーとロン・クレメンツ。
音楽は、『トイ・ストーリー』シリーズなどのピクサー作品で知られるランディ・ニューマンが作曲を担当。
『プリンセスと魔法のキス』は、1995年のピクサー映画『トイ・ストーリー』で、世界初のCGアニメーションが発表されてからCGアニメーションに注力してきたディズニーが、伝統的な手描きアニメーションに回帰した作品です。
2006年、ディズニーディズニーのCEOボブ・アイガーは、ピクサーを買収します。それによってジョン・ラセターがディズニーアニメとピクサーアニメのCEOとなりました。
手描きアニメーションのファンだったラセターは、1980年代後半から1990年代前半のディズニー・ルネッサンス期に人気を博したミュージカル形式を復活させたいという思いを持っており、それが本作の製作に繋がりました。
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1955年の映画『わんわん物語』以降のほとんどのディズニー作品で採用されていたアスペクト比2.35:1(シネマスコープ、一般的な映画サイズ)ではなく、1985年の『コルドロン』以来初めてとなる、1.85:1(アメリカ式ビスタ)のアスペクト比で制作されています。
黒人の描き方への批判
「ディズニー初の黒人プリセス」を描いた本作は、ミュージカル音楽やアニメーションが高く評価される一方で、製作段階ではアフリカ系アメリカ人のステレオタイプを助長するとの批判が寄せられました。
当初、原作の『The Frog Princess』のタイトルで製作が進められていましたが、主人公の名前がマディで客室係の仕事していること、黒人ヒロインの恋の相手を非黒人の王子としたこと、悪役であるブードゥー教の魔術師ファシリエが黒人であることなどの批判を受け、現在の『プリンセスと魔法のキス』というタイトル、主人公の名前を「ティアナ」、仕事を客室係からレストランスタッフに、ファシリエはスタイリッシュな印象に変えられています。
結果的に映画は成功し、予算1億500万ドルに対し、全世界で2億7100万ドルの興行収入を収め、アカデミー賞では長編アニメーション賞、オリジナル楽曲賞2つ『夢まで あとすこしAlmost There』、『それがニューオーリンズ(Down in New Orleans』の3部門にノミネートされました。
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『プリンセスと魔法のキス』のキャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
ティアナ(アニカ・ノニ・ローズ/鈴木ほのか) 亡き父の夢だったレストラン経営を夢見る努力家。 | |
ナヴィーン(ブルーノ・カンバス/丹宗立峰) マルドニア王国の王子。恵まれた環境で育ったた自惚れ屋。 | |
シャーロット(ジェニファー・コーディー/三瓶由布子) ティアナの親友。裕福な家庭で父に溺愛されて育つ。 | |
ドクター・ファシリエ(キース・デイヴィッド/安崎求) ブードゥー教の魔術師。「別世界の友」の力を借りてナヴィーンをカエルに変える。 | |
レイ(ジム・カミングス/駒田一) ニューオーリンズの川辺に住むホタル。一番星の「エヴァンジェリーン」に恋している。 | |
ルイス(マイケル・レオン・ウーリー/小林アトム) 巨大なワニ。トランペット奏者で、いつかジャズミュージシャンになることを夢見ている。 | |
ローレンス(ピーター・バートレット/石住昭彦) ナヴィーンの従者。ナヴィーンからの無礼な扱いに耐えるも、裏切ってファシリエと手を組む。 | |
ママ・オーディ(ジェニファー・ルイス/荒井洸子) 197歳の盲目のブードゥー教の巫女。沼地の奥深くで暮らしている。 |
【ネタバレ解説】『プリンセスと魔法のキス』あらすじ
プリンセスと魔法のキス
映画は、ルイジアナ州ニューオーリンズで仕立て屋をしているユードラは、娘のティアナと親友のシャーロットに絵本を読み聞かせるところから始まる。
絵本は、カエルの姿にされた王子様がプリンセスとキスしたことで人間の姿に戻り、2人が結婚するという物語。シャーロットはその物語に魅了されるが、ティアナは「カエルとは絶対にキスしない」と嫌悪感を示す。
シャーロットの父、"ビッグ・ダディ"ラ・ブーフが帰宅すると、ティアナとガンボスープを作り、ティアナは父から「素晴らしい料理人になる」と言われる。2人は将来、レストランを開くことを夢見ていた。
ティアナは一番星に願いが、父は「夢に向かって努力することも大切だ」と伝える。
ティアナの努力と夢
時が経ち、成長したティアナは、亡き父との夢であるレストラン開業のためにレストランを掛け持ちして忙しく働いていた。親友のシャーロットは、マルドニア王国からナヴィーン王子が祭りのためにやってくることを伝え、胸を躍らせていた。
シャーロットは王子の気を引くため、ティアナに「男心をつかむベニエ」を作るように頼み、お金を渡す。それによってティアナは、レストラン開業のための土地の頭金を手に入れる。
カエルになった王子
その頃、ナヴィーンと従者のローレンスがニューオーリンズに降り立つ。遊び人のナヴィーンは、実は両親から経済的に見放されており、彼に残された選択肢は、金持ちの女性と結婚するか、働くかの2つだった。
そんな中、魔術師のファシリエが2人に近づき、声をかける。ファシリエはナヴィーンのお金への欲望とローレンスの不満を利用し、魔術でナヴィーンをカエルに、ローレンスをナヴィーンの姿に変えてしまう。
ファシリエの計画は、ナヴィーンに扮したローレンスがシャーロットと結婚して彼女の財産を手に入れることで、ニューオーリンズを手に入れようとするものだった。
ティアナに舞い込む不幸
その夜、シャーロットの屋敷で開かれた仮装パーティにナヴィーン(ローレンス)が現れると、たちまちシャーロットを魅了し、彼女は王子と結婚したい願望に駆られていた。
一方、ティアナは不動産屋から空き物件を競り落とした人物がいることを知らされる。気を落としたティアナはバルコニーに出ると、たまらず一番星にもう一度願いをかける。
すると、ティアナの前にしゃべるカエルが現れる。驚いて警戒するティアナだったが、そのカエルはナヴィーン王子であると説明する。ナヴィーンはティアナの仮装姿で彼女をプリンセスだと勘違いしていたため、キスすれば人間に戻れること、そのお返しに何でもできると説得する。
ティアナは夢を叶えるために、しぶしぶカエルのナヴィーンとキスするが、ナヴィーンは人間に戻らない上に、ティアナまでカエルの姿に変わってしまう。ティアナはパニックと怒りでナヴィーンに飛びかかり、2人はパーティ会場を混乱させると、風船につかまってその場を後にする。
ワニのルイス
ティアナとナヴィーンは町から離れた森の中に不時着する。ティアナの真面目な性格とナヴィーンの能天気な性格は噛み合わず、2人は衝突しながら過ごす。
その途中、ルイスという巨大なワニに出くわすと、彼がジャズバンドでトランペットを演奏することを夢見ていることを知る。ルイスに状況を説明すると、彼はブードゥー教の巫女ママ・オーディを訪ねるべきだと言う。
ナヴィーンはルイスを巧みに説得し、2人はルイスの案内でママ・オーディのもとに向かうことになる。
ホタルのレイ
道中、3人はホタルのレイ(レイモンド)に出会う。レイは「エヴァンジェリーン」に恋をしていることを明かすが、それはホタルではなく、夜空に輝く一番星だった。しかし、3人はエヴァンジェリーンのために美しい愛の歌を歌うレイに本当のことは言わずに見守る。
その頃、偽物のナヴィーンはシャーロットにプロポーズし、シャーロットは大喜びする。彼女は夜に開かれる、マルディグラのパレードで結婚式をすると言う。しかし、ナヴィーンに扮したローレンスの魔法の効力が切れかかっていた。ファシリエは魔術のお守りに効力となるナヴィーンの血を補給するため、「別世界の友(影の魔物)」にナヴィーンを捕らえるように指示する。
その後、ティアナたちは森の中にいた3人の猟師に襲われるが、なんとか撃退する。すると今度はファシリエが差し向けた「別世界の友(影の魔物)」に襲われてしまう。しかし一行は、盲目の老女ママ・オーディが現れて彼女に助けられる。
ママ・オーディの教え
ティアナとナヴィーンは状況を説明し、人間に戻りたいと伝えるが、ママ・オーディは「何が必要かが重要」だと伝える。ナヴィーンはそれがティアナと一緒にいることだと気づく一方で、ティアナは夢を実現したいという願望に夢中になっていた。
ママ・オーディは2人が人間に戻る方法は、ナヴィーンがシャーロットにキスすることだと明かす。パレードでシャーロットの父が王様を務めることで、シャーロットはパレードが終わるまでの間はプリンセスになるからだ。
4人はニューオーリンズを目指して船に乗り込む。ナヴィーンはティアナにプロポーズする計画をレイに打ち明け、彼女の夢を手伝うために働くことを宣言する。
ナヴィーンはティアナのためにディナーの場を用意し、気持ちを伝えようとするが、彼女が自分の夢を叶えようとする強い思いを察してプロポーズを諦め、代わりにティアナの夢を叶える手助けをすることを心に決める。
しかしナヴィーンは、ニューオーリンズに到着する前にファシリエの影の魔物に捕まってしまう。
すれ違う恋心
ティアナたちはニューオーリンズに戻ってくる。ティアナがナヴィーンの行方を心配すると、レイは彼がティアナにプロポーズするつもりだったことを明かす。ティアナはナヴィーンを探してパレード会場に入っていくが、偽物のナヴィーンがシャーロットと結婚式をしようとしている様子を目撃する。
ティアナはナヴィーンがすでにキスして人間に戻って結婚しようとしているのだと誤解してしまい、その場を逃げ出していく。レイは彼女の後を追って慰めようとするが、傷ついたティアナは「エヴァンジェリーンがただの星である」と、レイに真実を告げて当たってしまう。
レイは涙を流すが、納得できず急いでパレードに戻り、捕らえられたカエルのナヴィーンを解放する。ナヴィーンは偽物(ローレンス)を突き落として結婚式を阻止し、お守りを奪われたローレンスは本来の姿に戻る。
レイはお守りを持って飛び去りティアナに渡すと、パレードのナヴィーンが偽物だったことを告げる。レイはお守りをファシリエに渡さないように伝えて追ってきた影の魔物と戦うが、瀕死の重傷を負ってしまう。
本当に大切なもの
追いかけてきたファシリエがティアナを追い詰めると、ティアナに魔法をかける。ティアナは人間の姿に戻され、彼女の夢であるレストラン経営をしている様子を見せられる。
ファシリエはお守りを渡す代わり彼女の夢を実現させると取引を持ちかけ、ティアナは心が揺れ動いていた。
しかしティアナは、父親が望んだものを手にすることはできなかった一方で、本当に大切な愛は見失わなかったことを思い出す。彼女がファシリエの提案を断ると、ファシリエはティアナをカエルに戻し、お守りを奪い取る。
しかし、ティアナはお守りを取り返すと、それを叩きつけて粉砕する。ファシリエが動揺する中、ブードゥー教の悪霊が現れ、借金を返せなかったファシリエは「別世界」に引きずり込まれて墓石が残される。
おとぎ話の「真実の愛」
ティアナはパレードに戻ると、ナヴィーンとシャーロットが話している様子を目撃する。ナヴィーンはシャーロットに状況を説明し、自分とキスすれば人間に戻ること、彼女と結婚することを提案する。その代わりにシャーロットにティアナの開業資金を援助してほしいと頼んでいた。
その様子に心を動かされたティアナは姿を現し、ナヴィーンへの愛を告白し、彼なしでレストランを持つくらいなら、カエルのままでもいいから一緒にいたいと告げる。
その様子を見たシャーロットは、親友がおとぎ話に出てくる真実の愛を体現していることに感動し、ティアナのためにナヴィーンとキスすることを決める。しかし、約束の時間を過ぎていたことで、キスしても2人がもとに戻ることはなかった。
レイの夢
すると、そこへ瀕死のレイを抱えたルイスが駆けつける。レイは2人が人間に戻れていないことを気にかけるが、ティアナとナヴィーンは一緒なら大丈夫と答える。
レイは夜空に輝くエヴァンジェリーンを瞳に映し、ティアナたちに見守られながら静かに息を引き取る。その後、3人は彼を故郷の沼地に連れて帰り、ホタルの仲間たちと葬儀を行う。
すると、上空からまばゆい光が降り注ぎ、空を見上げると、エヴァンジェリーンの隣に同じように明るく輝く星が現れる。レイはようやくエヴァンジェリーンと一緒になる夢を叶えたのだった。
夢は叶う
その後、ティアナとナヴィーンは結婚式を執り行おうとしていた。森の中では2人の結婚を祝福して動物たちが集まっていた。ママ・オーディが式を取り持ち、2人が愛を誓ってキスをすると、2人は人間の姿に戻る。
ママ・オーディは、ティアナがナヴィーンの妻になることでティアナがプリンセスになり、キスしたことで呪文が解けたことを伝える。
人間に戻った2人はニューオーリンズに戻り、2度目の結婚式を挙げた後、不動産業者から物件を買い取り、2人で協力して修繕し、ティアナの念願のレストラン「ティアナのお城(Tiana's Palace)」を開業する。
店内ではルイスがジャズバンドを率いてトランペットの演奏で客をもてなし、ティアナとナヴィーンは楽しそうに働き、店は客で賑わっている。
ティアナとナヴィーンは屋上に出てダンスし、ティアナが「夢はニューオーリンズで叶う」と歌う中、キスをする。そんな2人を見守るように、2つの一番星が夜空に輝いている。
【ネタバレ感想・考察】脱「ディズニープリンセス」とアメリカ的「能力主義」
『プリンセスと魔法のキス』は、1920年代のアメリカ南部ニューオーリンズを舞台に、自分のレストランを開くことを夢見る主人公のティアナを描いた映画です。
先の紹介で「伝統回帰」と言いましたが、そのキャラクター造形はこれまでとは一味違います。本作が面白いのは、いわゆる「ディズニー的なストーリーライン」を、現代的な感性で描いているところにあります。
主人公のティアナは、これまでのディズニープリンセスにおける、受動的で王子(または力のある男性)に依存するようなディズニープリンセスのステレオタイプを覆すキャラクターです。
貧しい家庭育ちのティアナは、ディズニーでは例のごとく「星に願い」ますが、彼の父親は夢を叶えるためには努力も大切だと説きました。
成長したティアナはそれを体現するように、体を酷使してレストラン開業のためにハードワークをしていることがわかります。
ワニのルイスとカエルになったティアナとナヴィーンが歌う楽曲、『もうすぐ人間だ(When We're Human)』では、人間になれたらルイスがトランペットを演奏したい、ナヴィーンが贅沢に暮らしたいと歌う中で、ティアナは目標のために努力し続けると歌います。
実は、冒頭でティアナの父親は「目標のために努力することが大切」と言いましたが、それに加えて「本当に大切なものを見失わないこと」も伝えています。物語において、ティアナは父の教えの後半部分は忘れているのです。
後半のママ・オーディによるゴスペル楽曲『もう一度考えて(Dig a Little Deeper)』では、そんなティアナが目的のために見失っている「本当に大切なもの」を気づかせようとします。
本作を観ると、ティアナのひたむきに努力する姿は称賛に値すると感じるかもしれませんが、彼女がそうなっている背景には、アメリカ的な「能力主義」があります。
ハーバード大学教授であり、哲学者のマイケル・サンデル氏は、著書『実力も運のうち 能力主義は正義か?』において、今日における能力主義に基づいた努力の限界を指摘し、成功するための素養を与えてくれるその他の資源にアクセスできる社会の必要性と論じています。
実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル Amazonでみてみる |
著書で取り上げられている調査では、アメリカ人の73%が「成功するためには努力が必要」と挙げています。まさにこれはティアナのキャラクターと重なり、楽曲でも歌われています。
そんな中、本作はティアナのキャラクターアークとして、彼女が「本当に大切なもの」に気づいていく様子を描いています。そこでポイントになるのが、ティアナと対照的なナヴィーンです。
努力家のティアナと楽天家のナヴィーン。映画の多くの場面において対照的に描かれていて、くっつきそうにもない2人ですが、一緒になることでお互いの足りない部分を補い、人生を好転させています。まさにそれは、ティアナが料理の仕上げにタバスコでスパイスを加えて味を仕上げるようなバランス。
夢のためにワーカーホリックになっていたティアナは、自分にはなかった「レリゴー(Let It Go)」的なありのままに人生を楽しむこと、ナヴィーンは自分にはなかった自分で汗水垂らして働くことの喜びを知るのです。
そして、ティアナは父の教えの「愛」を見失わず、父が成し得なかった開業の夢も叶えたのでした。見事なキャラクターアークです。
さらに、ティアナの親友のシャーロットが「プリンセスを夢見る女性」(そしてそれが経済的格差に起因する)というティアナと対照的なキャラクータでありながら、2人を衝突させるような描写がないところも印象的。
ホタルのレイとワニのルイスも、コミカルなキャラクターの役割に留まらず、物語において重要な意味づけがされているところも見事でした。
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まとめ:ほぼカエル映画だけど良い映画です
今回は、ディズニー長編アニメーション映画『プリンセスと魔法のキス』をご紹介しました。
驚くことに、劇中の大部分で主人公のティアナはカエルのままですが、『白雪姫』『美女と野獣』のような「ディズニー的」おとぎ話をベースに、本当に大切な「愛」を描く本作は、たとえ見た目がカエルでも、ホタルではなく星であっても、誰かを大切に想う気持ちの価値を教えてくれます。
ナヴィーンの都合が良すぎるキャラクターや、「黒人初のプリンセス」とはいえ、ティアナは故郷のニューオーリンズではなく、マルドニア王国のプリンセスであることなど、気になる点はありますが、変化するディズニーの心意気を感じる観る価値のある一本になっています。
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