今回ご紹介する映画は『新感染半島 ファイナル・ステージ』です。
ヨン・サンホ監督による作品で、2016年公開の前作『新感染ファイナル・エクスプレス』の4年後を舞台とした韓国発のゾンビ映画。
本記事では、ネタバレありで『新感染半島 ファイナル・ステージ』を観た感想・考察、あらすじを解説。
もはやゾンビ映画なのか?と思える展開になっていました!
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『新感染半島 ファイナル・ステージ』は以下のサービスで視聴できます!
『新感染半島 ファイナル・ステージ』の作品情報とあらすじ
『新感染半島 ファイナル・ステージ』のスタッフ・原作
ヨン・サンホ監督
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監督は、前作『新幹線ファイナル・エクスプレス』で世界的ヒットをもたらしたヨン・サンホが続投。
『新感染半島 ファイナル・ステージ』のキャラクター・キャスト
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
ジョンソク (カン・ドンウォン) 元韓国海兵隊大尉で、甥と妹を救えなかった罪悪感を抱いている。 | |
ミンジョン (イ・ジョンヒョン) 4年前、韓国を脱出しようとしてジョンソクを見かけた謎の女性。 | |
チョルミン (キム・ドユン) ジョンソクの義兄。 | |
キム (クォン・ヘヒョ) ミンジュンの父で、ジュニとユジンの祖父。 | |
ジュニ (イ・レ) ミンジョンの長女。 | |
ユジン (イ・イェウォン) ミョンジョンの次女。 | |
ファン軍曹 (キム・ミンジェ) 631部隊の軍曹で、地下ファイトクラブの共同経営者。 | |
ソ大尉 (ク・ギョファン) 631部隊の大尉で、地下ファイトクラブの運営者。 |
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ感想】ゾンビは添えるだけ
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シンプルなストーリー
『新感染半島 ファイナル・ステージ』は、前作『新感染ファイナル・エクスプレス』の4年後を描いています。
そのため、パンデミックとなり大混乱となった様子を描いた前作とは違い、すでに韓国は崩壊している状態。
そんな中、主人公のジョンソクらは、ソウル内に乗り捨てられた現金を積んだトラックを回収するミッションを受けて韓国に戻ります。
ソウル内には、過激な民兵集団の631部隊と、独自に行動する家族グループなどがいて、ミッションを知った者たちがゾンビ半島と化した韓国脱出を求めるストーリー。
要するに、「感染半島の韓国に行って帰ってくる」シンプルなストーリーです!
マッドマックス × ワイスピ
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前作『新感染ファイナル・エクスプレス』では、その名の通り、未知のウイルスでパンデミックとなった韓国で、列車内という限られた空間で生き残りをかけたサバイバルをする群像劇が見どころでした。
それが今作『新感染半島』では、範囲は韓国、ソウル全体となることで、ゾンビの数もマシマシで前作のような群像劇も見られません。
一方で、フィールドが広くなったことで見どころをカーアクションに注ぎ込んでいました。
そのため、印象としては「マッドマックス × ワイスピ withゾンビ」という感じになります。
ゾンビは添えるだけ
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ドミニクもビックリの凄腕ドライブテクをみせた少女ジュニのシーンは、まさしくワイルド・スピードを彷彿とさせます。
中盤の悪趣味な“かくれんぼ”ゲームや、終盤の改造車でぶつけ合うカーチェイスの世界観はまさにマッドマックス。
そう、本作を見ていると「あれ?ゾンビ映画じゃなかったっけ?」と感じるはず。
そう、本作において、ゾンビは添えるだけなんです。
あくまでもゾンビ半島というフィールドで生き残りをかけた人間たちの脱出劇がメインの軸になっています。
そのため、バッタバタと車でひかれるゾンビたち、光と音を使って誘導されていくゾンビたち。その姿は怖さを通り越してシュールです。
というか、車頑丈すぎませんか?笑前作のような人間ドラマははっきり言って見られませんでした。
【ネタバレ考察】自己犠牲と罪悪感の解放
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自己犠牲と罪悪感の解放
本作では主人公ジョンソクの自己犠牲を描いていました。
4年前のパンデミック時に軍人だった彼は、家族を守れなかった過去があります。
そんな彼が生きるため、金のために再びソウルに戻り絶体絶命の危機から救ってくれたのがジョンソクがかつて見捨てた家族だったのです。
ラストでは、ソ大尉の襲撃にあい、負傷した母親のミンジョンは娘2人をジョンソクに託してゾンビを引きつけます。
ここでもジョンソクはまた、助けられてしまうのです。
そんな中、これまでずっと感じていた後ろめたさを思い返し、ミンジョンを助けに戻るジョンソク。
諦めて自死しようとするミンジョンを救い、娘2人のもとに戻すことに成功します。
家族を失い、自分だけ生き残った負い目を感じていた主人公が、絶望的状況で見つけた疑似家族。自分が身代わりになるのではなく、助けられる命はこぼさずに救うこと。
それこそが、ジョンソクが見出した自分が生き残った意味と罪悪感からの解放を意味したのではないでしょうか。
気になる点も…
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とは言ったものの、これはいい意味で解釈したものであり、ジョンソクは無口なため、関係性が築けているように見えないのと、彼の背景が冒頭シーンのみなので、いかんせん感情移入できません。
あとは、母親ミンジョンを救ってからの娘との再会シーンをいかにもな演出で泣かせようと引っ張るのは正直冷めてしまいます。
また、半島にいる631部隊の立ち位置もよく分かりません。
ソ大尉は、大尉の割に小物感がありすぎて、なんであの人だけ特別扱いされていたのか不明だし、人間をゾンビと戦わせて娯楽めいたことをしている世界観は分かりますが、それに抗う人たちも全然いないのも不思議です。
もともとソウルにいた人たちですよね?ミンジョン家族以外に反発する人がいても良くないですかね。
そんな631部隊は恐らく「731部隊」をベースにしているんでしょうね。
731部隊とは、第二次世界大戦の頃に存在した研究機関で、満州に拠点を置き、兵士の感染症予防の傍ら、人体実験や生物兵器の実験を行っていたと言われています。
黒沢清監督の映画『スパイの妻』にも731部隊を彷彿とさせる描写がありましたね。
いかんせん、前作に比べるとドラマ性が薄い印象です!
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コロナ禍という視点
また、コロナ禍という状況で、パンデミック世界を素直な気持ちで見られない部分もありました。
例えば、冷静になってみると、このウイルスは感染経路は噛むだけなの?さすがにマスクしようぜなんて思ったりしちゃいます。
なんせ、この映画をマスクしながら見ているんですからね。極めつけはタイトルですよ。「新感染半島」ってさすがに雑すぎませんか…。
前作は列車が舞台ということもあり、新幹線と感染を結びつける意味のダジャレでネーミングしていましたが、本作は新幹線はまったく関係ないです。
「新感染半島」というネーミングもコロナ禍の現状を考えると韓国側から「ちょっと待った」が入りそうですよね。
まとめ:マ・ドンソクがいないのは寂しい…
今回は、『新感染半島 ファイナル・ステージ』をご紹介しました。
話題となり大ヒットとなった前作の続編となる設定ですが、はっきり言って前作とは別物として見た方がいいです。
前作に増してカーチェイスやアクション面では盛り上がる内容となっていましたが、肝心の人間ドラマは踏襲されませんでした。
前作でいうところのマ・ドンソク的なキャラクターがいるとグッと惹きつけられるのですが、本作ではそれもなかったのが残念。
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