『ストレンジャー・シングス』シーズン4の舞台は、1986年の春。
ホーキンスで苦楽をともにした仲間たちは、今シーズンでは、ホーキンスとカリフォルニア、さらに遠く離れたソ連の収容所と、それぞれ別々の場所で生活することになります。前シーズンまでの出来事で受けた心の傷を引きずりながら、それでもなんとか新しい日常になじもうとしている。
そんな中、ホーキンスの高校生たちが、原因不明で凄惨な死を遂げる事件が立て続けに発生。シリーズは一気にホラー感を増していきます。その黒幕として姿を現すのが、新たな敵・ヴェクナ。彼は、心に深い傷や罪悪感を抱えた子どもたちの精神に入り込み、悪夢や幻覚でじわじわと追い詰めていく、これまでの敵とは違ったタイプのやっかいな怪物。
シーズン4の核心にあるのは、「心の傷とどう向き合うのか」です。
ホーキンス組、カリフォルニア組、ロシア組、それぞれの場所で仲間たちを想って闘う群像劇としての面白さが魅力。やがて「ヴェクナとは何者なのか」「裏側の世界とはなんなのか」というシリーズ全体の謎に収束していきます。
この記事では、そんなシーズン4を相関図を交えて全話詳しく解説。各エピソードの流れをゆっくり振り返っていきます。
相関図・登場人物・キャラクター解説
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ネタバレあり
以下では、『ストレンジャー・シングス』シーズン4の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
第一章 ヘルファイア・クラブ
研究所での惨劇
1979年9月8日。ホーキンス研究所で、マーティン・ブレンナー博士は普段通り朝の支度を済ませ、研究室へ向かう。虹の絵が描かれた部屋に入ると、テレパシー能力を持つ「010(テン)」に声をかけて実験を始める。彼は別室にいるエリス博士と「006(シックス)」の様子がおかしいと告げる。その直後、研究所の警報が鳴り響き、テンは「博士とシックスが死んだ」と伝える。ドアの外では叫び声と衝撃音が続き、次の瞬間、扉が吹き飛んでブレンナーは気を失う。
目を覚ましたブレンナーは、テンが死亡しているのを発見。恐る恐る部屋の外へ出ると、職員や実験対象の子どもたちの死体が散乱していた。そしてその先に、血を流しながら荒い息をつくエル(イレブン)の姿があった。
バイヤーズ家とエルのカリフォルニア生活
1986年3月21日。ホーキンスを離れて5か月、バイヤーズ家とエルはカリフォルニアのレノーラ・ヒルズで新生活を送っている。エルは学校で“英雄”をテーマにした課題に取り組み、亡きホッパーを題材に選んでいる。ジョイスは自宅で仕事ができる百科事典のテレマーケティングをしている。
ウィルは絵を書くことに夢中になっているが、それを誰にも見せようとはしない。ジョナサンは大学からの返事を待つストレスで、友人のアーガイルと大麻を嗜んでいるようだ。エルは“学校でうまくやっている”とマイクへの手紙に書くが、実際にはクラスメイトのアンジェラとその取り巻きからいじめに遭っていた。
課題発表会では、エルの発表がアンジェラに嘲笑され、エルは泣きながら教室を去る。放課後、エルはアンジェラに転ばされ、大切に作ったジオラマを踏み潰される。周囲の生徒たちが笑う中、エルは衝動的に力を使おうと叫ぶが、能力は発動しない。心配したウィルが助けようとしても、彼女は壊れたホッパーの人形を手にしたまま、ただ涙を流すだけだった。
その頃、ジョイスのもとにロシアから謎の小包が届く。中には亀裂の入った人形が入っており、ジョイスはマレー・バウマンに相談。恐る恐る人形を破壊すると、中から「ホッパーは生きている」という手紙が現れ、ジョイスは思わず動揺する。
少年たちの高校生活
ホーキンスでは、マイク、ダスティン、ルーカス、マックスが高校生となり、マイクとダスティンは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイする「ヘルファイア・クラブ」に入部。クラブは校内で“変人”と言われているエディ・マンソンがリーダーだ。
ルーカスはバスケ部に入り、忙しくしている。ダスティンはスージーと遠距離交際を続けている。
ロビンとスティーブはレンタルビデオ店で働きながら、互いに恋愛の悩みを語り合っている。どうやらロビンは同じ吹奏楽部のヴィッキーに思いを寄せつつも打ち明けられずにいるようだ。
バスケ部キャプテンのジェイソンは、スターコート・モールの火災で犠牲になった人々への追悼を語り、チームを鼓舞する。今夜は地区大会の決勝戦だった。マイクとダスティンはそれを知らず、同じく今夜開催予定の『D&D』にルーカスが参加できないことを知り、エディに日程変更を頼もうとするが、エディは譲らず、2人は代役探しをすることになる。
夜になり、バスケの決勝戦が始まると、ルーカスは途中出場ながら劇的な逆転シュートを決めてチームを勝利へ導く。一方、ヘルファイア・クラブでは、エリカが代役として参加し、ダスティンと共に強敵ヴェクナと対峙する。最終局面でエリカのダイスが見事にヒットし、パーティーは見事勝利する。
ルーカスは勝利の余韻に包まれていたが、親友たちが自分の代わりに妹のエリカとともに仲間内で喜ぶ姿を遠くから見て、複雑な表情を浮かべる。
マックスの苦悩と最初の犠牲者
マックスはカウンセラーの相談を受けているが、心を閉ざしている。父親が去り、母は生活のために働き詰めで酒に溺れ、マックス自身もビリーの死の悪夢に悩まされていた。ルーカスとの間にも距離ができていた。
トイレに入ったマックスは、高校のマドンナ、クリッシー・カニンガムが嘔吐している様子をみて声を掛けるが、拒絶される。その後、クリッシーは突然恐ろしい幻覚に襲われ、母の叫び声や異形の姿を目撃する。
その後、クリッシーはエディに話しかける。2人は中学時代の同級生だった。エディはクリッシーからドラッグを売るように頼まれて驚くが、彼女が「もっと強いもの」を求めたことで、エディは自宅トレーラーへ案内する。マックスは外で犬に餌をやる途中、エディのトレーラーへ入っていくクリッシーの姿を目撃していた。
エディがより強力なドラッグを探す間、クリッシーは再び幻覚に囚われる。彼女は自宅で両親がひどい目に遭う光景を目撃していた。クリッシーの異変に気付いたエディが話しかけるが、彼女は完全に意識を失い、トランス状態で立ち尽くしていた。
次第に室内の明かりが激しく点滅し始める。クリッシーが見る幻覚世界では、彼女は異形の怪物に追い詰められていく。そして現実世界で突然、クリッシーの体は宙へ浮かび上がり、全身の骨が折れ、目が内側へ潰れていく。エディは床に崩れ落ち、その恐ろしい光景をただ見つめるしかなかった。
第二章 ヴェクナの呪い
ホッパーの生存と、クリッシー殺害事件の発覚
1985年7月4日、スターコート・モールの地下にあるロシアの研究施設で起きたキーの爆発の直前、ジム・ホッパーは足場の下へ飛び降りて生き延びていた。しかしロシア兵に拘束され、カムチャツカ半島の収容所へ送られる。
一方その頃、トレーラーパークでは、ウェイン・マンソンの通報を受けて警察が到着し、クリッシーの死体を発見。マックスは目を覚ますと、警察が捜査に踏み込む姿と、クリッシーの遺体を目にしてしまう。政府の職員たちは、報告を受ける保安官パウエルの通信を静かに傍受している。
エルの住むカリフォルニアにマイクが到着し、2人は再会喜び合う。マイクが花をプレゼントし、感謝を伝えるエルだったが、手紙の言葉を見て寂しい様子の表情を浮かべる。エルは友だちのアンジェラの話を持ち出すが、ウィルは彼女の“嘘”に違和感を覚える。空港にはジョイスに会うためにやってきたマレー・バウマンの姿もあった。
ジョイスは“エンゾ”という差出人から届いた謎の手紙をマレーに見せる。差出人は政府に知らせないことを要求し、ある番号に電話するよう指示していた。ジョイスは、“エンゾ”はホッパーがかつてデートに誘った店の名であり、「ホッパーは生きている」と信じている。マレーは偽物の可能性を疑うが、ジョイスに押し切られ、暗号化通信で電話をかけることに同意する。
電話の相手“エンゾ”は、ホッパーを4万ドルで引き渡すと言い、「2日後にアラスカの店にに来い」と要求。ジョイスはホッパーの信託口座から資金を準備する決意を固める。
ジョイスとマレーは録音を聞き直し、電話口の女性の罵声がロシアの俗語で警官を罵る言葉であることに気づく。つまり“エンゾ”は収容所の看守だった。真相に近づきつつも、ホッパーの生死は依然不明だ。
その一方で、1985年当時のホッパーはロシア兵に捕らわれ、拷問を受けても決して屈しなかった姿が描かれる。その後ホッパーはロシアの収容所に送られ、脱走すれば即死だと警告される。
ホーキンスに広がる動揺と、エディ失踪の波紋
ホーキンスではニュースでクリッシーの死亡のニュースが報じられる。ルーカスは前夜のパーティーの二日酔いで気分が悪いようだ。名前は報じられていないため、それがクリッシーのこととはまだ誰も知らない。学校の新聞部ではナンシーが報道を確認し、フレッド・ベンソンとともに調査に出ることにする。
同じ頃、ダスティンは自宅でニュースを見ていたところにマックスが訪ねてくる。するとマックスは、遺体がクリッシーであること、そして彼女がエディと一緒にいたと証言する。ダスティンはエディの無実を強く主張するが、マックスは半信半疑だ。さらに事件の夜、トレーラーで照明が異常に点滅し、その後にエディが怯えて逃げていく姿を見たことを打ち明ける。2人はまずエディを見つけ、事情を聞く必要があると判断する。
同じ頃、ルーカスたちバスケ部のもとに警察がやってくる。ジェイソンは、報道の犠牲者がクリッシーだと悟り、ひとり森に入り込み落ち込む。
マックスとダスティンはファミリー・ビデオへ向かい、ロビンとスティーブの制止を振り切り、エディの交友記録を探す。マックスは自分が目撃した出来事を2人に語り、エディの居場所を示す情報がないか店のデータを探り始める。
一方、ナンシーとフレッドはエディのトレーラーパークへ。規制線が敷かれており、警官に呼び止められると、フレッドは突然、顔の傷跡が裂ける幻影を目撃し、ナンシーを心配させる。
ローラースケート場での衝突
マイク、エル、ウィルは地元のローラースケート場へ向かう。ウィルは、エルがマイクに「充実した生活」を送っていると偽る理由を尋ねるが、はぐらかされる。マイクとイレブンが楽しそうに滑る一方、ウィルは疎外感を隠しきれない。ウィルはマイクに「昔のような親友の関係」ではなくなっている寂しさを伝える。そんな中、スケート場にアンジェラたちが現れ、イレブンへの報復を思いつく。
アンジェラはエルを強引にリンクに誘い、仲間たちが取り囲んで嘲笑すると、飲み物を投げつける。エルは泣きながら崩れ落ちる。しかし、ホッパーまでも嘲笑うようなアンジェラたちの言動に怒ったエルは、衝動的にスケート靴でアンジェラの顔面を殴りつけてしまう。アンジェラは流血し、周囲は騒然。マイクも衝撃を隠せない。エルの脳裏には、ブレンナー博士と実験室の死体の記憶がフラッシュバックする。
エディの潜伏先と、“ヴェクナの呪い”の実態
ナンシーとフレッドはエディの周辺で聞き込みをするが成果はなく、直接ウェインのもとへ向かう。ウェインはエディの無実を信じつつ、幼い頃に起きたヴィクター・クリール事件を思い出す。家族を惨殺し、遺体の損壊の仕方もクリッシーと酷似していたという。
その頃フレッドは、幻覚に導かれ森の奥へ進んでいた。そこで事故現場の燃える残骸と、助けを求める被害者の幻影を見ると、墓穴に転落。その中には、黒いクモに覆われた死体が横たわっていた。そこへ背後から異形の怪物が迫ると、「俺のところへ来い」と語りかける。現実世界ではフレッドの体が宙へ浮かび上がり、クリッシーと同じ悲惨な方法で殺される。
その頃、ロビン、スティーブ、ダスティン、マックスはドラッグの仕入れ先“リーファー・リック”を突き止め、湖のそばのキャビンへ向かう。スティーブが小屋に潜んでいたエディに襲われるが、ダスティンが説得し、事情を語ってもらうことに成功する。エディは「信じるはずがない」と前置きし、クリッシーが空中に浮き、骨が砕け、眼球が潰れる異様な死を遂げたと語る。一方でダスティンは“裏側の世界”と怪物の存在を明かすことにする。
エディの話からダスティンはそれが“ヴェクナの呪い”だと結論づける。ヴェクナは“闇の魔術師”、恐ろしい呪術を使うアンデッドの怪物だ。その頃、ヴェクナは裏側の世界の屋敷で目を覚まし、無数の翼を持つ生物が飛び交う中、ゆっくりと地面へ降り立つ。
第三章 怪物かスーパーヒーローか
エルの逮捕
1985年の事件をみさ経て解雇され、ネバダ州で静かに暮らすサム・オーウェンズの元に、ジャック・サリバン中佐が現れる。彼はクリッシーの損壊死体の写真を見せ、ホーキンスで起きている異常な死について説明した上で、「イレブンが生きていて、遠隔で人を殺している」と主張する。しかしオーウェンズは何も知らないと断言し、協力を拒む。サリバンは彼が何か隠していると確信し、部下にオーウェンズの関係者を全て洗うよう命じる。
その頃カリフォルニアでは、エルがアンジェラにケガを負わせた後、一行が帰宅すると、マレーが夕食を準備していた。ジョイスは子どもたちに「明日、仕事でアラスカに行ってくる」と告げ、驚かせる。夕食中、スケート場での話になり、気分を害したエルは自室にこもってしまう。彼女は研究所でのトラウマに悩まされているようだ。
同じくいじめられた経験があるマイクは、エルに「話をしてほしい」と伝えるが、「一緒じゃない」と言われてしまう。エルは自分が「怪物だと思われている」と打ち明けると、マイクは「君はスーパーヒーローだ」と励ます。しかし彼女は「もう違う」と静かに返す。その直後、警察が家にやってくると、エルは傷害の容疑でを逮捕されてしまう。マイクは連れ去られる彼女に「必ず助ける」と言葉を投げかける。
前兆
スティーブ、ダスティン、ロビン、マックスは湖畔のボート小屋に隠れているエディを訪ね、警察が捜索していると伝える。「ヴェクナを倒せば無実を証明できる」と言うダスティンに対し、エディは困惑している。
すると警察車両が周辺を通過し、フレッドの遺体が発見されたことが明らかになる。ナンシーは事情聴取を受け、ウェインが語ったヴィクター・クリールの話を持ち出すが、保安官パウエルは取り合わない。そこにダスティンたちが到着し、ナンシーと合流する。
ナンシーは合流したスティーブたちと情報を整理し、フレッドとクリッシーの前兆に共通点を探す。マックスは、クリッシーがカウンセリングを受けていたことを思い出し、フレッドも同じだった可能性に気づく。ナンシーは「調べたいことがある」と別行動を取ろうとすると、スティーブが同行を申し出るが、最終的にはロビンがナンシーに同行することになる。
ホッパーの脱走計画
ジョイスはアラスカへ向かう機内で息子たちに嘘をついたことを悔やむが、マレーは「関わればもっと危険だ」と納得させる。
その頃カムチャッカの収容所では、ホッパーが看守の“エンゾ”ことドミトリ・アントノフと会話している。アントノフは、ジョイスとマレーがユーリという密輸屋のもとへ向かっていることを知らせ、「明日の飛行機に間に合うよう脱走しろ」と助言する。
その後、ホッパーは刑務作業中に激痛を覚悟で足の鎖を壊すと、壊れた鎖を偽装して負傷した足に無理やり戻して脱走の準備を進める。
ルーカスの葛藤
ルーカスが目を覚ますと、ジェイソンたちがエディに報復するために彼の行方を探している。ルーカスは迷いながらも、彼らに同行することにする。
その頃、エディのトレーラーでは、クリッシーが吹き飛ばされた天井からひびが走り始めていた。裏側の世界では、ヴェクナがホーキンス住民の心の闇へと意識を伸ばしている。やがて、父親に激しく罵倒されるパトリックの記憶に反応を示し、次の標的として選ぶと、ルーカスらと一緒の車に乗るパトリックは短い頭痛と鼻血に気づく。
ジェイソンたちはヘルファイア・クラブの仲間たちのバンド練習場へ向かうと、暴力的にエディの居場所を尋問する。ルーカスは困惑しながらもどっちつかずの態度を取っていると、バンド仲間は「ダスティンがエディの居場所を知っている」と明かす。
ジェイソンたちはダスティンの家に向かい、彼らが外を捜索している隙に、ルーカスは窓から部屋に戻り、無線でダスティンに連絡を取る。状況を知らないダスティンはエディの場所を伝え、「学校で合流しよう」と伝えるが、ルーカスはジェイソンたちに見つかってしまう。ルーカスはあえて偽のエディの居場所を伝えて時間を稼ぎ、隙を見て逃走する。
エルの決断
エルは警察からの取り調べを受けるが、殴った理由を語れないままでいる。マイクたちがエルの救出方法を探っている中、彼女は拘置所に送るために護送車に乗せられてしまう。しかしその道中、荒野でオーウェンズの部隊が取り囲み、エルの身柄を保護する。
エルを保護したオーウェンズは、ダイナーへ連れていき、スケート場の件は自分が処理すると告げる。さらにホーキンスが危機的状況に晒されていることを説明し、協力を依頼。イレブンが「力を失った」と訴えると、オーウェンズは「力を取り戻す方法がある」と告げる。
一方で、政府内にはエルを脅威と見なす勢力があることも明かし、「選択は君次第だ」と伝える。ホーキンスの仲間の危機を知ったエルは同行を決意する。その後、バイヤーズ家にはオーウェンズの派遣したエージェント、ウォレスとハーモンの2人が現れる。
マックスに迫る危機
マックスはカウンセラーの家を訪ね、自身のカウンセリングの流れでクリッシーの件について探ろうとするが、彼女は生徒の情報を明かさない。そこでマックスはトイレに行くふりをしてこっそり鍵を盗み、資料を手に入れて家を出ていく。
一方、ナンシーとロビンはホーキンス図書館を訪れていた。2人は過去の新聞記事からヴィクター・クリールの情報を探り、古いタブロイド紙にたどり着く。そこには「悪魔が家族を殺した」とクリールが語ったという記事があり、家の悪霊を祓うため司祭を呼んだが失敗し、家族全員が惨殺されたと書かれていた。
学校へ侵入したダスティン、スティーブ、マックスの元に、ロビンから図書館での調査結果が届く。マックスはカウンセラー宅で手に入れた記録から、クリッシーとフレッドが「頭痛・鼻血・悪夢」という共通した症状を訴えていたことを知る。
マックスはまさにその症状が自分自身に起きていることに気づくが、その瞬間、廊下の壁に埋め込まれた振り子時計が出現し、ヴェクナが彼女を呼ぶ声が響く。裏側の世界では、ヴェクナがゆっくりと目を開かせる。
第四章 親愛なるビリー
マックスの残された時間
カリフォルニアでは、オーウェンズが派遣したエージェントのウォレスとハーモンが、マイク、ウィル、ジョナサンに事情を説明し、エルが力を取り戻すための訓練を行っていることを説明する。少年たちは友人や家族を守るためホーキンスに戻りたがるが、許可されなかった。政府内部の別派閥がエルを追っており、動けばエルも家族も危険になるというのだ。マイクたちは実質的に軟禁状態となる。
マイクはエルからの手紙を受け取ると、そこには「もう一度スーパーヒーローになるために行ってくる」と書かれていた。
その頃ホーキンス高校では、ナンシーとロビンが合流。するとマックスは自分が見た古時計の幻覚について説明する。クリッシーもフレッドもカウンセリングを受けており、同様の鼻血や頭痛、過去のトラウマの幻覚に悩まされていたことを明かす。さらに2人は症状が出始めて1週間ほどで死亡し、最初の幻覚から1日以内に殺されていることから、マックスは自分が次の標的であり、残された時間は1日もないと結論づける。
その後、外で物音を聞きつけ、全員が警戒して廊下に出ると、必死の形相のルーカスが駆け込んでくる。彼は“コード・レッド”と、ジェイソンたちがエディの居場所を知るダスティンを探していると伝えるが、ダスティンはそれどころではないと一蹴する。マックスに命の危機が迫っているのだ。
翌朝、シンクレア家の玄関では、苛立ったジェイソンがルーカスとダスティンの所在をエリカに尋ねるが、エリカは皮肉と悪態を吐いてドアを叩き閉める。
ウィーラー家の地下室に移動した一行は、ヴェクナが今になって現れた理由を推理している。そんな中、マックスは徹夜で机に向かい、手紙を書き続けていた。そこへナンシーとロビンが戻り、ヴィクター・クリールに直接話を聞くため、彼のいるペンハースト精神病院に向かう計画を説明する。
ナンシーは偽名を使ってノートルダム大学の心理学専攻の学生に偽装し、看守長アンソニー・ハッチに研究のためにヴィクターに会わせてほしいと依頼する算段だ。スティーブは自分がまた子どもたちの保護役にまわることを渋るが、ナンシーはマックスを守るためだと説得する。ナンシーはロビンに“優等生風”の服装をこしらえ、ロビンは着心地の悪さに文句を言いながらも、渋々従う。
ホッパーの大脱走とユーリの裏切り
アラスカでは、ジョイスとマレーが指定された店に到着する。そこで2人は異様にテンションの高いユーリと対面。ユーリは4万ドルを自分の手で数え始め、その間に2人は勧められたコーヒーを飲む。
収容所では、アントノフがホッパーに脱走ルートを指示し、「確率は100分の1」だと告げる。ホッパーは作業中に武器庫に移動し、そこで看守を殴り倒す。鎖を外して脱走しようとするが、ホッパーを注視していた別の看守が現れ、取っ組み合いになってしまう。看守を倒すが、銃声で周囲に気づかれてしまう。
そこでホッパーはとっさに武器庫にあった爆弾を仕掛け、屋根から脱出。スノーモービルを奪って森へ逃げ去っていく。その姿を見た収容所の囚人たちは歓声を上げ、アントノフも満足げな表情を浮かべる。
収容所の脱走に成功したホッパーは、ユーリの隠れ家である教会へ辿り着く。武器と食料が山積みになった空間で、ピーナッツバターやベッドの温もりを味わう。しかしその頃、ユーリは金を数え終えるとアントノフに電話をかけ、作戦変更を知らせる。金を手にした彼はアントノフとホッパーをまとめてロシア側に売ろうとしていた。
通話の最中、アントノフの前に看守たちが近づき、彼は間もなく逮捕されてしまう。ホッパーのもとにも多数の兵士たちが迫っていた。そしてユーリの店では、彼に勧められて飲んでいたコーヒーに薬が仕込まれていたことが判明し、ジョイスとマレーの2人は意識を失ってしまう。
親友
カリフォルニアでは、軟禁状態に嫌気が差したジョナサンが、ピザのチラシを見てある作戦を思いつく。
部屋ではマイクがエルの手紙を握りしめて落ち込んでいるのに気づいたウィルが「手紙を見つめ続けても何も変わらない」と諭す。マイクはエルに伝える言葉を間違ったと後悔を吐露するが、ウィルは「自分やホーキンスを救ったのは政府ではなく、仲間たちだった」と強く言い聞かせる。「エルを探すのも親友、チームでやろう。」2人の間のわだかまりは溶け、再びホーキンスのために行動する決意を固める。
そこへジョナサンが現れ、脱走計画を説明する。ピザ店で働くアーガイルを派遣して逃げ出す作戦だ。マイクはエージェントに「ピザを頼みたい」と伝えて電話させる。その間に3人は荷造りをして逃げる準備をしていた。ウィルは“誰にも見せようとしない絵”をリュックに入れる。
車の到着音が聞こえてウォレスがドアを開けると、そこにいたのはピザの配達員ではなく軍の兵士だった。兵士はウォレスを銃で撃ち、すぐに別の兵士たちが家に突入してくる。ハーモンはマイクたちを庇いながら応戦するが、間もなく撃たれてしまう。
そこへ全く事情を知らないアーガイルが、ピザの配達でバイヤーズ家にやってくると、マイクたちはハーモンを乗せて急いで車に乗り込む。アーガイルは混乱しつつも全力でアクセルを踏み込み、バンはその場を離脱する。
マックスの覚悟
ホーキンスでは、マックスが書き上げた手紙をダスティン、スティーブ、ルーカスに手渡す。彼女はエルやマイク、ウィル宛てにも用意していた。彼女は自分が死んだ時のために、仲間に手紙に残していた。その後マックスは、「行きたい場所がある」と言い、スティーブたちは彼女を乗せて車を走らせる。
マックスは自宅のあるトレーラーパークにやってきていた。「20秒で終わる」とスティーブたちを車で待たせ、彼女は祖母、叔父、父、母それぞれに宛てた手紙を置いていく。外で洗濯物を干す母スーザンを見つけると、手紙を残したことを伝える。母は心配して「大丈夫」と優しくハグするが、次の瞬間、母の声は歪んだ声となり、その姿はヴェクナへと変貌していた。ヴェクナはマックスに「手紙では何も償えない」と言い、マックスを締め上げる。
マックスは必死にその手を振りほどくと、現実に引き戻される。そこには母の姿は初めからなかった。マックスは平静を装って車へ戻り、スティーブにすぐに別の場所へと向かわせる。
ヴィクターとの面会
ペンハースト精神病院に到着したナンシーとロビンは、ハッチのオフィスで丁重にヴィクターとの面会の希望を伝えるが、ハッチは事務的で取り付く島がない。するとロビンが即興で割って入り、感情豊かにヴィクターに会いに来た理由を語りだす。その結果ハッチは、2人にヴィクターへの面会を許可し、ナンシーとロビンは密かにハイタッチする。
ハッチは敷地内を案内しながら「音楽は言葉の届かない脳の領域に届く」と語る一方で、ヴィクターのような患者にはもう手遅れだという。ヴィクターの棟へ入る前、ナンシーとロビンは、彼と2人きりで話す許可を求め、ハッチは怪しみながらも許可してその場を離れる。
2人はまるで『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターに会うが如く、棟の奥でヴィクターと面会する。「友人がクリール家を襲ったものと同じ存在に狙われている」と伝えて助けを求める。やがてヴィクターは振り返ると、彼の眼窩底は潰されてなくなっていた。
ヴィクターの過去
その後、ヴィクターはナンシーとロビンに心を開き始め、1959年の出来事を語り出す。クリール一家は亡き叔父の遺産で豪華な家を購入して暮らし始めるが、るやがてその屋敷では悪夢に悩まされることになる。
はじめに妻が“呪い”の犠牲になると、子どもたちを連れて逃げようとしたヴィクターは突然、第二次世界大戦中、自身が誤爆で家族を殺してしまった記憶の幻覚に閉じ込められ、身動きが取れなくなる。やがて彼は“天使”によってその幻から引き戻されるが、目を覚ました時には子どもたちは手遅れだった。
ヴィクターはその後、自殺を図って自分の目を潰すが、死のうとしても死ぬことができなかった。そんな中でハッチに命を救われ、この施設に留まり続けているのだという。話を終えると、ヴィクターはやがて呆然とし、エラ・フィッツジェラルドの「Dream a Little Dream of Me」をかすれ声で口ずさみ始める。
ナンシーが“天使”とは誰なのか問おうとしたところで、身元の偽装に気づいたハッチが飛び込んでくる。ナンシーとロビンは警察に引き渡されそうになるが、ロビンは音楽室の前を通ると、ヴィクターの言動とハッチの言葉を思い出し、音楽が現実への命綱になりうるとひらめく。ロビンはナンシーにそれを伝え、今すぐマックスに試す必要があると訴える。2人はハイヒールを脱ぎ捨てて駐車場まで逃げ出し、ホーキンスへ急行する。
マックスの幸せな記憶
マックスはスティーブに頼み、町の墓地へ向かっていた。車から降りると、ルーカスは「手紙ではなく、面と向かって言葉で伝えてほしい」と必死に訴えるが、マックスは語ろうとしない。
義兄ビリーの墓前に立ったマックスは、手紙を読み上げながら今の状況を打ち明ける。父は、母と自分を置いて出ていったこと、ビリーの死後、すべてがうまくいっていないこと、ビリーが最後に自分とエルの命を救ったこと、自分たちの関係がもっと良かったどうなっていたか想像してしまうこと、そしてビリーの死を見ているしかできなかった罪悪感に苛まれていることを吐露する。
「あの日の私の一部は一緒に死んだ」と、謝罪の言葉を重ねてビリーがどこかで聞いてくれていることを願う。しかしその瞬間、マックスはヴェクナの精神世界へ引きずり込まれてしまう。
そこには血まみれのビリーの姿があった。彼は「本当は俺に死んでほしいと思ってたんだろ」と告げると、マックスが後を追って死にたがっていると指摘する。やがてビリーの姿はヴェクナへと変貌し、荒れ果てた沼地のような墓地のような空間でマックスを追い詰めていく。
現実世界では、スティーブが様子を見にくと、マックスの異変に気づく。ルーカスとダスティンも急いで駆けつけ、必死に揺さぶるが、マックスは白目をむいて放心状態だ。ダスティンはナンシーとロビンに無線で連絡し、「今すぐマックスを救う方法を教えてくれ!」と、切羽詰まった声で訴える。2人は「音楽が心を現実に引き戻す命綱になりうる」と急いで伝える。
その頃マックスは、精神世界で叫びながらルーカスとダスティンの名を呼んでいた。進んでいくと、残骸の中にクリッシーとフレッドの損壊した死体埋め込まれていた。そしてヴェクナがマックスの前に現れると、触手で彼女を柱に縫いとめる。
現実世界では、ルーカスとダスティンがマックスのウォークマンを装着し、彼女の一番好きな曲を再生する。曲が鳴り始めると、マックスの精神世界に亀裂が入り、墓地で待つ仲間たちの姿が出口のように見え始める。
しかしヴェクナがマックスの顔に手を伸ばすと、現実世界のマックスは空中に浮き上がってしまう。マックスはヴェクナの触手に首を絞められ、苦しみながらも“いちばん幸せだった記憶”を必死に思い出す。エルとのショッピング、ルーカスとのダンス、ホーキンスの仲間たちと笑いあった時間だ。
マックスはそれらの記憶を力に変え、持てる力を振り絞ってヴェクナに一撃を与える。触手から解放されると、開いたポータルに向かって全力で走り出す。ヴェクナは背後からそれを阻止しようとするが、現実世界で待つ仲間の叫び声を頼りに、迫りくる破片をすり抜けながら走り抜け、ついに裂け目を飛び越える。
現実世界では、マックスの身体が空中から地面へ落ち、マックスは激しく息を切らせて意識を取り戻す。ルーカスは彼女をしっかりと抱きしめ、スティーブとダスティンも駆け寄って抱き寄せる。マックスはギリギリの状態で現実世界に戻ってきた。
第五章 ニーナ計画
手がかり
ジャック・サリバンの追跡から逃れたマイクとウィル、ジョナサンの3人は、車の中で撃たれたエージェント・ハーモンを必死に手当てしようとする。しかし彼は自分の命よりも「オーウェンズに警告しないと、イレブンが危ない」と訴え、「ニーナ…」と絞り出すように言って息を引き取る。ジョナサンとウィルが追跡者に気づき、アーガイルに道を外れるように指示する。
追手を振り切ったマイクたちは、ハーモンの遺体を土に埋める。アーガイルは状況を理解できずに混乱している中、マイクとウィルは「本音を伝えることの難しさ」を共感し合う。そんな中、一行はハーモンが手にしていたペンの中から、電話番号が書かれたメモ書きを発見する。その番号に電話をかけると、返ってきたのは妙な接続音だけだった。
マイクは、「電話ではなくコンピュータに接続している」と気づき、その場所を特定するため、機械に強いスージーの力を借りることを提案する。少年たちの中では言わずとしれたダスティンの彼女だ。
一方、サリバンと部下たちはバイヤーズ家を家宅捜索し、マイク宛てのエルの手紙を発見。サリバンはそれを読み、重傷のウォレスにエルの居場所を吐くよう迫る。
NINAとブレンナー
さかのぼること12時間前。オーウェンズとイレブンは、砂漠のど真ん中にぽつんと立つ扉の先を進み、地下施設に入る。そこはかつて使われていたICBM(大陸間弾道ミサイル)の格納庫をエルのために改修した施設だった。
オーウェンズが施設の奥にエルを案内すると、そこには「NINA(ニーナ)」と呼ばれる巨大な装置が設置されていた。さらにエルの前にマーティン・ブレンナー博士が現れる。デモゴルゴンに襲われながらも生きていた彼は、「イレブンの力を取り戻させる」と約束する。しかしエルは、彼から受けた実験の記憶に圧倒され、逃げ出そうとしてしまう。警備兵に捕まり、鎮静剤を打たれると、意識が薄れる中、ブレンナーは「すべてうまくいく」と囁く。
エルが目を覚ますと、かつてのように頭を剃られて実験服を着せられていることに気づく。レインボールームにたどり着くと、鏡には幼い自分の姿と、子どもたちの姿もあった。エルは混乱して部屋を出ようとするが、何度ドアを開けてもたどり着くのはレインボールームで、彼女の前には同じ担当者が現れる。
現実のエルは“ニーナ”の中に横たわっていた。彼女は巨大な感覚遮断タンクの中で意識はかつての記憶をさまよっている。実験を見守るオーウェンズは、エルの負担を心配するが、ブレンナーは「乗り越えられる」と言い切る。
ホッパーの“呪い”
ロシアでは、ホッパーが脱走の罰として看守たちに殴りつけられ、監獄に送り戻される。同じ房にはアントノフの姿もあった。アントノフは、ユーリに売られたことを説明し、協力して事態の打破をしようと、怒り狂うホッパーを説得する。ホッパーはジョイスの行方を尋ねるが、確かな情報はない。
ホッパーはやがて自身の過去を語り始める。若い頃、ベトナム戦争に駆り出された彼は、枯葉剤の調合作業をしていた。その毒は兵士たちを蝕み、彼らの家族や子どもに悪影響を及ぼした。それはホッパーも同じで、彼は自分が原因で娘のサラを幼くして失い、その罪悪感に苛まれ続けている。
その後ジョイスやエルと出会い、助けを必要とされたことに喜びながらも、自分と関わることで“呪い”に巻き込まれることを恐れていた。結局のところ、助けを求めていたのは自分自身で、「俺こそが呪いなんだ」と静かに語る。アントノフが耳を傾ける中、遠くの方からデモゴルゴンの咆哮が響く。
墜落
ユーリの飛行機の中では、ジョイスとマレーがロープで縛られていた。ユーリは、老いた母親のために金が必要だと語り、ホッパーだけでなく2人もロシアに売るつもりであることを悪びれもせず説明する。飛行中、ジェイスとマレーはエンジン音で声が聞こえづらいことに気づき、ピーナッツバターの箱を蹴って瓶を割り、ガラス片を使ってロープを少しずつ切り始める。
しかしジョイスがマレーの縄を切り終える直前にユーリに見つかってしまう。マレーは空手を駆使してユーリを気絶させるが、操縦者不在となり、飛行機は森の中へと墜落していく。
その頃、オーウェンズの部隊はウェイン・マンソンのトレーラーを調査し、天井の亀裂から強力なエネルギー反応を観測する。彼らはウェインに危険を告げて立ち退きを命じる。
エルの記憶
“ニーナ”の中のエルは、何度もレインボールームに戻されるループに囚われていた。インターホン越しに語りかけるブレンナーは、この装置の名が同名のオペラから取られていると説明する。恋人を失った女性があまりのショックで記憶を深く埋め込んでしまうというものだ。彼はエルに、現在体験しているのは自分自身の封印された記憶なのだと告げる。
エルは理解できず、今すぐ出すように懇願するが、ブレンナーは「出口は自分で見つけなければならない」と突き放す。再び担当者が現れると、エルはその場から逃げるのをやめ、記憶の流れに身を任せる。すると若い頃のブレンナーがレインボールームに入室し、子どもたちを引き連れていく。一方、現実世界では、オーウェンズがサリバンの追跡が迫っていることをブレンナーに警告する。
記憶の中を進み続けるエル。やがて彼女は、ブレンナーが子どもたちを順番に装置にかけ、能力のテストを行っている場面へ到着する。エルはテストでうまく能力を発揮できずにいるが、ブレンナーが「みんなが見下している」と焚きつけると、能力を発揮。気づいた瞬間には両手は血まみれになっており、部屋はもぬけの殻になっていた。エルが廊下に出ると、そこは彼女が研究所で起こした大惨事の現場であることに気づく。
クリールの屋敷にて
ホーキンスでは、ナンシーとダスティンがマックスを心配して地下室から上がると、マックスはテーブルで朝食をとりながらヴェクナを通じて見た光景をスケッチしていた。マックスの話からダスティンは、ヴェクナがマックスに入れたように、こちらからもヴェクナの精神世界アクセスできたのではないかと推測。ナンシーは、マックスが描いている絵をつなぎ合わせ、それがクリールの屋敷であることに気づく。
その後、マイクたちはクリール家へ侵入する。そこにはマックスが幻覚で目撃した古時計の現物が存在していた。二手に分かれて探索を進める中、天井のシャンデリアや照明の明かりが不規則に点滅し始める。明かりの点滅が一定のリズムを持っていることに気づき、その“サイン”を追うように屋敷の奥へと進んでいく。
ヴェクナの気配があるところだけ電気が反応していた。照明の点滅に導かれるようにして一行が合流すると、その先には屋敷の最上階、屋根裏部屋があった。そこには、天井から一本の電球がぶら下がっている。映像は反転し、裏側の世界では、ヴェクナが触手と接続し、ホーキンス中の人々の心を監視している場所だった。
忍び寄るヴェクナの影
クリッシーの葬儀が行われる中、参列しているパトリックは古時計の幻覚を見ていた。その後、ジェイソンは卒業アルバムからルーカスの顔を認識する。エディをかくまっているのはヘルファイア・クラブの連中だと確信したジェイソンは、メンバーがよく出入りしている場所を洗い出す。そんな中、チームメイトの一人が、大麻の売人リックの家をリストに加える。彼らはエディの隠れ場所に近づいていた。その後、ジェイソンらがリックの家にやってくると、エディは身を隠し、焦りながらトランシーバーで助けを求めるが、誰からも応答はない。
その後、エディはジェイソンらの追跡から逃げるために池をボートで逃げていくが、ジェイソンとパトリックが池に飛び込み、彼を追って泳ぎ出す。エディは2人に追いつかれて捕まえられそうになるが、泳いでいたパトリックが古時計の音色を耳にすると、彼の体は突然池の中へと引きずり込まれる。
ジェイソンが様子を心配すると次の瞬間、パトリックは水面から上空へ持ち上げられ、クリッシーやフレッドと同じように全身の骨をへし折られ、眼球を潰されて死亡する。その瞬間を目撃していたジェイソンとエディは、恐怖にただ唖然とするしかなかった。同じ頃、クリール家では、屋根裏に集まった一同の懐中電灯が一斉に破裂する。
力の再発現
NINAのタンクの中で、エルの心拍は限界まで追い込まれていた。医療チームが急いで蘇生措置を施し、彼女は何とか息を吹き返すが、目覚めた直後、エルはブレンナーにものを叩きつけ、再び出口へ向かって逃亡しようとする。すぐに警備兵たちに捕まってしまうが、その瞬間、拒絶するエルに呼応するかのように能力が再び発現し、警備兵たちは壁に吹き飛ばされる。
混乱状態のエルに、ブレンナーが歩み寄る。彼は出口の扉を解放し、逃げ出す道があることを示したうえで、エルに選択を迫る。エルはブレンナーに「パパ」と言い、能力を完全に取り戻すために、自分の記憶と向き合う覚悟を決め、再び施設の中へと戻っていく。
第六章 ダイブ
悪魔崇拝
ホーキンス警察が湖からパトリックの損壊死体を確認する。パウエル署長とキャラハンの2人は、エディ一人でこの凄惨な犯行ができるとは思えないとジェイソンを尋問するが、彼はエディが「悪魔の器」だと主張する。そんな中、池の水面下では魚が何かに引っ張られて底に消えていく。
一方、政府施設ではオーウェンズの部下のエージェントがサリバンの部下から拷問を受けていた。サリバンはエルの居場所を吐かないエージェントを、高温の金属箱に閉じ込める。
子どもたちは、クリール家での発見を伝えようとエディを訪ねるが、リックの小屋周辺に警官が殺到しているのを目撃する。パトリックの死によって、パウエル署長はエディの名前を公表し、市庁舎での住民説明会を開くと発表したのだ。エディは盗んだトランシーバーで連絡を取り、森の奥にある「スカルロック」で合流しようと伝える。
森へ向かう道中、ルーカスは、パトリックが父親から虐待されていたことに気づいていながら見て見ぬふりをした自分を悔やんでいた。「ヴェクナの被害者たちは皆、心の中に深い傷を持っている」と推測し、マックスに謝罪する。マックスは逆に自分の方が拒絶していたと認め、2人は距離を縮める。
ナンシーもロビンに、ジョナサンとの遠距離恋愛が心に影を落としていると打ち明け、2人の間に友情が芽生え始める。その後、スティーブの案内で森の中の「スカルロック」にたどり着くと、一行はエディと合流する。
その頃、市庁舎で行われた警察による住民説明会では、会場にジェイソンが乱入し、ホーキンスでの一連の不幸な出来事すべてが、“ヘルファイア・クラブの悪魔崇拝”だと主張し、住民たちを扇動する。子どもたちの保護者は、困惑しながらも子どもたちの行方を探すが見つからず、カレンは警察に通報する。
エディの壊れた腕時計を見たナンシーは、パトリックが死亡した時刻とクリール家で懐中電灯が壊れたタイミングが一致することに気づき、「ヴェクナは屋根裏から攻撃している」と推測する。どうやって裏側の世界へ行くか議論する中、ダスティンはコンパスの異常に気づく。それは以前と同じように“強い電磁派=ゲートの近く”であることを意味していた。一行はコンパスの指す方向に向かうことにする。
ホッパーの闘志
ロシアの森をさまようジョイスとマレーは、ユーリに隠れ家の場所まで案内させる。そこに着くと、武器をかき集めて、ユーリとマレーが互いの服を交換する“なりすまし作戦”を準備する。目的は、収容所に潜入し、ホッパーを救い出すためだ。
その頃、ホッパーとアントノフ、そして他の囚人たちは、どういうわけか豪華な食事の席に案内される。他の囚人たちが食事にありつく中、ホッパーだけは手をつけなかった。囚人の一人は、「怪物と団結して戦おう」と鼓舞するが、ホッパーは「これは俺たちを太らせ、怪物に食わせるための餌だ」と現実を突きつける。
食事のあと、諦めた様子のホッパーに苛立ったアントノフは、ホッパーからの挑発に乗ってケンカを始める。しかしホッパーは、その隙に警備兵からライターを盗み出していた。房に戻ると、アントノフに「デモゴルゴンは火が弱点だ」と伝え、怪物との闘いに備えていたことを明かす。
記憶との対峙
ブレンナーは“ニーナ”の前で、エルの能力喪失は、抑圧された記憶こそが力を取り戻す鍵だと考えていた。彼はエルに「一度に一つの記憶だけに集中しなければ、精神が崩壊する」と警告し、エルは再びニーナの中で深い記憶の中に潜っていく。
記憶の中をさまようエルは、監督員の男と話していた。彼はエルに「001(ワン)を思い出させる」と言う。エルはブレンナーに「001は存在しない」と聞かされてきたが、監督員は「パパ(ブレンナー)は嘘をつく」と主張し、エルを動揺させる。
その後、記憶の中のブレンナーは、子どもたちに“円の中に立ち、念動力を使って相手を押し出す”という競技をさせていた。002(ツー)が圧倒的な強さを見せる中、ナ最後の挑戦者となったエルは、監督員からのアドバイスで、母親を奪われた記憶を心の奥から引き上げ、002を弾き飛ばして勝利する。
競技に勝利して自由時間を手にしたエルは、レインボールームの外から怒声を聞きつけ、覗いた先でブレンナーが監督員の男を痛みつけている様子を目撃する。怯えたエルが部屋に戻ると、ツーと仲間3人が監視カメラの電源を切り、輪になってエルを袋叩きにする。倒れたエルが立ち上がり、鏡を見ると、虐殺当日の自身の姿がそこに重なる。
するとその瞬間、エルは記憶を取り戻す。怒った彼女は力を暴走させて仲間たちを虐殺した。その後やってきたブレンナーの「何をしたんだ?」という声と共に、エルは“ニーナ”の中で目を覚ます。「私が…みんなを殺した。」
天才スージーとクセ強家族
マイクたちは、ユタ州ソルトレイクシティのスージーの家に到着する。スージーの子どもたちが自由奔放に家の中を暴れ回る様子に困惑する一方で、アーガイルはスージーの姉エデンに一目惚れ。一行はスージーと初対面するが、彼女はダスティンの成績を改ざんした罰としてパソコンを没収されていた。
マイクたちは作り話で状況を説明し、スージーの協力を得て父親の部屋に侵入。エージェントが残した電話番号から場所を割り出し、ネバダ州だと突き止める。一行はスージーの噂通りのスキルの高さに感心していると、車中でアーガイルはエデンと大麻でハイになっていた。
湖のゲート
ホーキンス警察はエディの隠れ家付近で子どもたちの車を発見し、すぐ近くのラバーズ・レイクへ向かう。その頃、ダスティンのコンパスが差していたのも同じ湖だった。ナンシー、ロビン、スティーブ、エディの年長組がボートに乗って湖の中央へ向かい、ダスティン、ルーカス、マックスの3人が湖畔で見守る。
湖の中心でコンパスが異常に触れ、彼らはゲートの真上にいると確信。泳ぎが得意なスティーブが偵察に向かう。スティーブが湖に潜ると、水中には魚の骨が散乱し、遠くに赤い光が揺らめいていた。スティーブはゲートを発見し、浮上して仲間に報告するが、ゲートから伸びてきた触手が彼の足を絡め取り、スティーブはそのまま水中に引きずりこまれ、一気に裏側の世界へ連れて行かれてしまう。
ナンシーは迷うことなく湖へ飛び込み、それに続いてロビンとエディも湖の中へ飛び込んでいく。湖畔には警察が到着し、ダスティン、マックス、ルーカスが確保されてしまう。裏側の世界に入ったスティーブは、複数のコウモリのような怪物に襲撃され、尾で首を締め上げられていた。
第七章 ホーキンス研究所の虐殺
裏側の世界
裏側の世界に引きずり込まれたスティーブは、怪物コウモリの群れからの攻撃を受けていた。そこへ追いかけてきたナンシー、ロビン、エディが助けに入る。ボートのオールを武器に戦い、彼らはスティーブに攻撃していた怪物コウモリたちを叩き潰す。しかしすぐにさらに多くの怪物たちが飛来し、湖のゲート周辺を塞ぐように群がり始める。4人はその場を離れ、森の中へと走って逃げ込む。
一方、湖畔で警察に補導されたマックス、ダスティン、ルーカスの3人は、パウエル署長から、湖にいた理由を尋ねられる。3人は必死に誤魔化すが、エリカに「絶対に嘘」と突っ込まれると、それぞれの親たちが騒ぎ始める。パウエルは全員を落ち着かせ、一人ずつ事情聴取することを決め、マックスを別室に連れて行く。
森の中では、スティーブの怪物に噛まれた傷をナンシーが手当する。ロビンが武器を確保するべきだと提案すると、ナンシーは自分の部屋に銃が二丁あると告白。裏側の世界なら、同じく裏側のナンシーの家にあるはずだと推測する。すると遠くで怪物の咆哮が響き、地響きを感じ、4人は急いでナンシーの家を目指す。
001
その頃、サリバンは高熱の箱にさらしたウォレスを出し、再びイレブンの居場所を問いただす。ウォレスはついに観念し、「エルを殺さないと約束してくれれ」と懇願しながら居場所を明かしてしまう。
“ニーナ”の施設では、エルがコーラ缶を潰そうと念じるが、力を発揮できない。様子を見ていたオーウェンズは、エルを限界まで追い込んでも能力を取り戻せていない現状を心配し、ブレンナーを責める。それでも止めるつもりのないブレンナーは、仲間を虐殺した記憶に苦しむエルに、「記憶と向き合うしかない」と言い聞かせる。エルがが再び“ニーナ”に入る準備をすると、ブレンナーは大虐殺の日の監視カメラ映像を再生装置にセットし、彼女を記憶の奥へ送り込む。
記憶の中で、ブレンナーはツーに襲われた直後のエルを診察する。エルは「密告したら殺す」と脅されているため、何があったか覚えていないふりをする。するとブレンナーは子どもたちを一列に並べて“犯人探し”を始める。ブレンナーはツーに目星をつけ、電流が流れる首輪を付けると、自白するまで電流で苦しめる。エルはその様子をただ見ているしかなく、ショックを受ける。
その後、監督員の男はエルに、「ツーが殺そうとしている」と警告し、「ブレンナーはエルの力を恐れて、他の子どもたちをコントロールしている」と伝える。それを止めようとして罰を受けたと打ち明ける。そのうえで、「君を信じているから」と、秘密裏にエルにセキュリティカードを手渡す。
エルは仮病を使って部屋を抜け出し、監督員から渡されたカードで地下フロアへ侵入する。そこで監督員と合流すると、彼はブレンナーによって首に埋め込まれた追跡・抑制チップのせいで逃げられないことを明かす。エルは助けてもらったお返しとして、彼の首のチップを念動力で取り除く。
その後すぐに2人は警備員に見つかり、廊下に追い詰められる。しかし次の瞬間、監督員は念動力を発動し、警備員を一掃する。監督員は自分の腕に記されたタトゥーで「001(ワン)」であることを明かす。エルが驚きと混乱を隠せないでいると、待機しているように命じて立ち去っていく。
奇跡の再会
カムチャッカの収容所では、ホッパーとアントノフが、デモゴルゴンとの戦いを目前に語り合っていた。それぞれが子どもへの思いを明かし、子どもためにも行きて帰る必要があると決意を固める。ホッパーはエルへの想いを明かす中で、「怪物を倒してエルを守るためにここにやってきたのかもしれない」と、信心深さを感じ始めていた。その頃、マレーはユーリになりすまし、ジョイスと“マレー姿のユーリ”を囚人として連れて収容所基地へ潜入する。
マレーの変装作戦が成功し、所長は3人をアリーナ上部のバルコニーへ案内する。そこでは囚人たちがデモゴルゴンと戦う直前だった。ジョイスは、戦場へと連れ出される囚人の列の中にホッパーの姿を見つけ、生存を確認して胸を撫で下ろす。
ホッパーは盗んだライターで武器に火をつけようとするが、ライターがうまく着火しない。所長がホッパーの怪しい行動に注目し始めると、マレーは銃を抜いて背後から突きつけ、正体を明かす。
ゲートが開き、デモゴルゴンが姿を現すと、囚人たちの多くが一瞬で殺されていく。ホッパーは辛うじて槍に火を灯し、燃える先端を振るって攻撃する。炎が弱まっていく中、ジョイスとマレーは制御室に乱入し、アリーナの扉を開けることに成功。ホッパーとアントノフは間一髪でアリーナから逃げ出し、扉の向こうの部屋でジョイスとホッパーはようやく再会を果たし、言葉もなく抱き合う。
SOS
裏側の森を進む道すがら、エディはスティーブに本音を漏らす。ダスティンがスティーブを慕っていること、自分だったら逃げている状況でも、ナンシーとロビンの勇気に突き動かされて後を追ってきたことを打ち明ける。そのうえで、「ナンシーは迷いなくスティーブを助けるために湖に飛び込んだ」と伝え、彼女とヨリを戻すべきじゃないかと冗談めかしてけしかける。スティーブがその言葉を飲み込んだところで、再び大きな揺れが起こる。
同じ頃ホーキンスでは、ダスティンがこっそり無線で年長組に連絡を試みるが、応答はない。ダスティンがルーカスと話していると、エリカが事情を説明するように問い詰める。ルーカスは“ベッド下の秘密”で脅され、彼女に裏側の世界とヴェクナについて説明する。すると、エリカの指摘でダスティンがひらめく。
「今回、ゲートを出現させたのはエルでもロシアでもない。」エルがゲートを開いたとき、デモゴルゴンと意識が繋がったことを挙げ、ヴェクナも同様に、殺した人間の意識と深く繋がったことでゲートが開いたのだと推理する。マインド・フレイヤーが世界征服をしようとするなら、デモゴルゴンは歩兵、ヴェクナは陸軍元帥のような存在だと例える。
同じ頃、ナンシーたちは裏側の世界のウィーラー家にたどり着いていた。しかしナンシーの部屋には探していた拳銃は見当たらない。やがてナンシーは、自分の日記から、この場所が1983年11月6日、ウィルが失踪した日で止まっていることに気づく。さらにスティーブが微かにダスティンの声が聞こえることに気づくと、ナンシーはウィルが光でジョイスを交信していたことを思い出し、光でコンタクトを取ろうとする。
しかし彼らはモールス信号がわからない。唯一エディが「SOSのサイン」だけを知っていたため、それで光の合図を送ると、現実世界でそれに気づいたダスティンは、彼らが裏側の世界にいることを確信する。ダスティンたちは、
現実のホーキンスでは、子どもたちがホリーのおもちゃ「LITE Brite(ライトブライト)」を拝借し、裏側のナンシーたちと文字で会話できる通信手段を確保する。彼らは裏側に閉じ込められていることを伝えると、ダスティンは殺人現場ごとにゲートが存在すると説明。意味を理解できないながらに、ダスティンを信じて従うことに決める。
同じ頃、マックスの事情聴取が終わると、ダスティンたちは彼女を引き連れて、警察の監視から自転車で逃れていく。現実世界と裏側の世界で、自転車でそれぞれ最初の犠牲者、クリッシーが殺されたエディのトレーラーへ向かっていた。
ヴェクナの正体
現実世界と裏側の世界でそれぞれエディのトレーラーに到着すると、現実世界にいるダスティンがゲートをこじ開けたことで、二つの世界を通してお互いの姿を確認する。ダスティンたちはベッドシーツを結びつけて即席のロープを作り、ロビンとエディがよじ登り、無事に現実世界に帰還する。
続いてナンシーが登ろうとするが、突然彼女の意識はヴェクナの精神世界に飲み込まれてしまう。ナンシーが気づくと、そこはバーバラの腐敗した死体が横たわるプールだった。
その頃、記憶の中のエルはワンを追いかけて部屋を出る。するとそこには、研究所の職員や実験仲間たちが虐殺された光景が広がっていた。レインボールームへ向かうと、ワンがツーを殺す瞬間を目撃する。ワンは怯えるエルに近づき「誰よりも君の気持ちを理解している」と語り始める。同じくして、ヴェクナの精神世界にいるナンシーもまた、彼からその解説を受けていた。
ワンは、自分がヴィクター・クリールの息子、ヘンリー・クリールであることを明かす。そこからヘンリーの視点でクリール家の悲劇が語られる。両親はヘンリーの奇行を治そうとホーキンスの家に越してきたが、彼はそこで見つけたクモに魅了される。やがてヘンリーは自分がクモと同じ存在で、“弱者を間引き、人類の不要な部分を排除する役目を持った者”であると捉えるようになる。
「他人の精神や記憶に入ることができる能力」に目覚めたヘンリーは、動物を殺す実験を行った後、両親の“嘘”を知り、家族にも精神攻撃を始めた。すると母親がヘンリーの異変に気づき、ブレンナーの施設へ送ろうとしたため、ヘンリーはついに母を殺害する。ヘンリーは殺すたびに強くなっている実感を覚え、さらに殺した人間の記憶が自分の一部になっていることを知る。
しかし、父ヴィクターを殺そうとしたところで力を使いすぎて倒れ、結果的に殺人の罪はヴィクターにかぶせられたままになった。目を覚ましたヘンリーはブレンナーの管理下に置かれ、「001(ワン)」として利用されることになるが、ブレンナーは彼を制御できず、代わりにナンバー付きの新たな子どもたちを作る計画へと舵を切る。
ワンは自分の被害者たちの魂を握り続けていた。ワンはエルに「一緒に世界を作ろう」と誘いかけるが、エルはそれを拒絶。2人は激しい念動力のぶつかり合いへと突入する。エルはワンに追い詰められるが、ワンにアドバイスされた「怒りの記憶」ではなく、自分自身の「幸せな記憶」を思い出す。それは、母テリーが自分を産んだときに囁いた愛の言葉だった。その記憶を力に、エルはワンを鏡ごと後方に吹き飛ばして壁に縫い付け、身体を粉々に引き裂く。
すると、壁に大きな裂け目、“最初のゲート”が開かれ、ワンは裏側の世界へ投げ出される。彼の身体は赤い稲妻に焼かれ、肉体が削ぎ落とされていき、やがてそれは現在軸のクリール家の屋根裏のヴェクナの姿に重なる。ヴェクナの左腕には、「001」のタトゥーが刻まれていた。こうして監督員の男=ヘンリー=ワン=ヴェクナという、一連の存在がつながっていたことが明らかになる。
第八章 パパ
未来のビジョン
ヴェクナの精神世界にに囚われたナンシーは、過去のホーキンス研究所の廊下をさまよい、ブレンナーがワンに「001」のタトゥーを刻む光景を目撃する。ヴェクナは精神世界でブレンナーに乗り移り、ナンシーに語りかける。ナンシーが廊下から逃げると、そこには研究所の大虐殺後の光景が広がっていた。
現実世界では、スティーブたちが必死に音楽を探し、ナンシーを呪いから引き戻そうとするが、何も見つからない。ナンシーはゆっくり近づいてくるヴェクナから必死に逃げていく。しかしドアを開けた先はレインボールームで、ナンシーは触手で椅子に縛り付けられてしまう。するとヴェクナはナンシーに「今から見せるものをすべてイレブンに伝えろ」と命じ、彼女に未来のビジョンを流し込む。
それは炎に包まれたホーキンスの街と巨大な怪物たちの姿、そして人々が死んでいく姿だった。やがてヴェクナは呪いを解き、ナンシーは現実へ戻ってスティーブの腕の中へ崩れ落ちる。
収容所からの脱出
カムチャッカの収容所では、アリーナに残ったデモゴルゴンが壁をよじ登り、兵士たちを襲い始める。監視室にいるマレー、アントノフは敵を脅して脱出経路を聞き出そうとしている。別室では、ジョイスがホッパーの腕の傷を手当てしながら、会いたかった気持ちを伝え合う。そんな中、マレーが駆け込み、デモゴルゴンがアリーナを越えて警備兵を殺し始めたと知らせると、隣の部屋で大きな物音を耳にする。
一行が物音のする部屋を慎重に覗くと、そこには解剖台に縛られたデモドッグが、体を引き裂かれたまま苦しげに暴れていた。ホッパーは銃でとどめを刺し、その奥の部屋を見て言葉を失う。そこには複数のデモドッグが保存カプセルの中に保管されており、巨大なケージの中には、マインド・フレイヤーの一部と思しき黒い粒子が閉じ込められていた。その後、アントノフは通気口を見つけ、一行はそこからの脱出を図る。
通気口から基地の外へ脱出したホッパーたちは、飛行機を探してユーリの倉庫へ向かう。しかしそこにあったのは、アメリカまで飛べるかどうか怪しいヘリコプターだった。ジョイスはオーウェンズに連絡を取る案を出し、アントノフが電話をかける。
エルの復活
“ニーナ”のタンクで蘇生されたエルは、意識を取り戻す。すると彼女は無言のまま念動力で“ニーナ”の巨大タンクを持ち上げ、ゆっくりと元の位置に戻してみせる。能力を取り戻した様子を見たブレンナーは、満足げな表情を浮かべる。
ブレンナーは、かつてエルがワンと同じように力の使いすぎで意識を失い、その際に記憶を失っていたことを伝える。監視カメラを見返すことで真相を知った彼は、ゲートの向こうでワンが存在していると考え、これまで裏側の世界を探索してきたのだと明かす。
しかし、ヴェクナが1人殺すごとに次元の壁が弱まり、やがてホーキンスが完全に侵略されることを危惧していた。エルはホーキンスに迫る危機を知り、仲間たちの様子を探り始める。
ウィルの描いた絵
エルに会うためにネバダ州へ車を走らせるマイクたち。マイクはエルが力を取り戻したら自分など必要なくなるのではないかと不安を漏らすが、ウィルが安心させる。そしてウィルは誰にも見せていなかった絵を差し出す。それは、マイク、ウィル、ダスティン、ルーカスが『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の戦士になり、巨大なドラゴンと戦う姿を描いたものだった。
ウィルは「エルに頼まれて描いたんだ」と嘘をつき、「マイクがいるからエルは居場所を見つけられた」と“エルの気持ち”として絵の意味を説明し、マイクを勇気づける。マイクは少し救われたような表情になり、2人は笑い合う。しかしウィルは顔を背け、涙をこらえきれずに手で口元を押さえて泣いていた。ジョナサンはバックミラー越しにその様子を見て、胸を締めつけられながらハンドルを握り続ける。
対ヴェクナの作戦会議
ホーキンスでは、意識を取り戻したナンシーがヴェクナに見せられたビジョンを語る。スティーブは脅しだと捉えようとするが、ナンシーは「まだ、起きてないだけ」と危機感を強調する。彼女が最後に見たのは4つのゲートで、その一つがクリッシーの死でエディのトレーラーに開いた裂け目だった。
マックスは、ヴェクナの時計がいつも4回鐘を鳴らしていたことを思い出し、「4」という数字にこだわりがあると気づく。つまり4人殺せば4つのゲートが開き、世界が滅ぶ。「すでに3人が犠牲になっているため、あと1人で目的が達成されてしまう」と、ダスティンが悟る。
マックスは再びバイヤーズ家に電話するが、応答はない。ナンシーは、現実世界と裏側の世界は表裏一体だと考え、仲間を守るためには自分たちももう一度裏側に入って戦うしかないと主張する。スティーブは「無謀すぎる」と反対するが、ダスティンは「ヴェクナもエルと同じ“ナンバーズ”なら、弱点も似ているはず」と推理。ヴェクナも意識を飛ばしている間は、クリール家の屋根裏で無防備な状況にあるはず。
ロビンは「誰が次の標的になるか分からない」と難色を示すが、マックスはまだ自分が標的だと断言し、音楽を聞くのをやめれば再びヴェクナの注意を引きつけられると言う。ルーカスは「今度こそ殺される」と反対するが、マックスは「その前にみんながヴェクナを倒してくれればいい」と言い切る。
そんな中、エディはホーキンスの町外れにある武器店「ウォー・ゾーン」を挙げ、そこなら戦いに必要な装備が何でも揃い、警察の目からも避けやすいと提案する。エリカは「怒れる田舎者の巣窟ね」と突っ込むが、ナンシーは武器の必要性を優先し、全員で向かうことを決める。エディの提案で、一行はトレーラーパークの夫婦のキャンピングカーを拝借して車を走らせる。
“感覚遮断空間”でホーキンスの作戦会議を見ていたエルは、オーウェンズに「仲間は安全なんかじゃない」と焦りを訴える。オーウェンズはエージェントを手配するというが、エルは自分をホーキンスに送るように要求。そこへブレンナーが割って入ると「エルも仲間も準備ができていない、今のままではワンには勝てない」と主張する。
オーウェンズは、最終的な判断はエル本人の意志だと強調し、エルは施設を出てホーキンスへ帰ることを選ぶ。しかしその直後、施設の周辺にはサリバン率いる軍隊が迫りつつあった。
武器調達
「ウォー・ゾーン」へ向かう車中、スティーブはナンシーに将来の夢を明かす。それはキャンピングカーで6人の子どもを連れていくロードトリップだ。
後部座席では、ルーカスがマックスに“別の被害者候補”を探す案を持ちかけるが、マックスは「何も知らない人を巻き込んで犠牲にするくらいなら、自分が囮になる」といって断る。彼女が自分の心の中の“良い記憶”で立ち向かう作戦を語ると、ルーカスは「その記憶には俺もいる?」と冗談めいて尋ね、信頼感を高めていた。
ウォー・ゾーンに着き、それぞれが武器や装備を買い集めるが、そこには各々の知り合いの姿もあった。ロビンは店内でヴィッキーの姿を見つけて話しかけようとするが、彼氏と仲睦まじい姿を見てしまい、その場を去っていく。一方、ナンシーはジェイソンと遭遇。ジェイソンはマイクやヘルファイア・クラブの居所を聞き出そうと詰め寄るが、ナンシーはキッパリと「知らない」と距離を取る。そのまま一行は店を後にするが、ジェイソンは不審そうに車を見送っていた。
“パパ”との決別
マイクたちカリフォルニア組は、スージーが算出した座標に到着するが、地上には何も見当たらない。そんな中、アーガイルが地面の軍用車のタイヤ痕に気づき、それを辿って行くと、その先ではサリバンの部隊がすでにバンカーを包囲しつつあった。
内部では、オーウェンズがエルのホーキンス行きの準備を進めていたが、突然軍の兵士が突入し、拘束されてしまう。するとそれに乗じたブレンナーは、エルを“ニーナ”の部屋に閉じ込めてしまう。
ブレンナーは、「断ればオーウェンズを殺す」と脅し、エルをこの場に留めようとする。エルはこれまでブレンナーにされた数々の仕打ちを振り返り、多くの犠牲者を出してきたのは、すべてブレンナーがワンを手放さなかったせいだと断じる。
「ここにやってきたのは、自分が怪物かどうかを確かめるためだった。でも怪物だったのは、あなただった。」
エルは分厚い扉を吹き飛ばし、施設を出ていこうとするが、後ろを向いた瞬間にブレンナーに麻酔薬を打ち込まれてしまう。エルは抵抗するが、薬が回って意識を失ってしまう。その頃、施設内ではサリバンの部隊がバンカー内に突入し、警備兵たちを次々と撃ち倒していた。
ブレンナーはエルに電撃首輪をはめて、彼女を抱えて地上の砂漠へ出ていく。しかしすぐにヘリのスナイパーに狙われ、何発も狙撃されて倒れ込む。サリバンはオーウェンズの制止を無視し、スナイパーにイレブンの射殺を命じる。
そこへアーガイルのバンが砂漠の道から登場し、スナイパーの注意をそらす。その隙にエルは意識を取り戻し、念動力でヘリを地面に叩きつけて爆破。バンカーの入り口は炎で塞がれた。そしてバンから飛び出してきたマイク、ウィル、ジョナサンと再会を果たす。
瀕死のブレンナーは、最後の力を振り絞ってエルの首輪を解除する。エルがブレンナーに近づくと、彼は「お前は私の娘だ。誇りに思っている。私はただ、お前を守りたかった。それだけは理解してほしい」と言葉を残す。エルは友人たちを一瞥し、静かにブレンナーの手をそっと振りほどいて「さよなら、パパ」と言い残し、その場を去る。
その後、サリバンがバンカーから出てくるが、エルたちはすでに砂漠の彼方へ走り去っていく。車内でエルは「今すぐホーキンスへ行かないと。みんなが危険」と警告する。その頃ホーキンスでは、作戦を終えた一行が静かに車を走らせ、クレール家の前で停車する。マックス、ルーカス、エリカが車を降り、屋敷の中へと足を踏み入れる。
第九章 潜入
再び収容所へ
カムチャッカの教会では、ユーリがヘリ「カティンカ」のエンジンをいじり続けている。エンジンが何度も止まる様子を見たマレーとアントノフは、ユーリがわざと引き延ばしているのではないかと疑っている。
教会の中では、ホッパーとジョイスがアメリカからの折り返しの電話を待っている。ジョイスはホッパーの体に刻まれた無数の傷跡に気づき、監獄での時間を案じるが、ホッパーは「考える時間ができた」と穏やかに答える。逆にホッパーはジェイスに救難メッセージを送るべきではなかったと打ち明けるが、ジョイスは、助けに来ると決めたのは自分の選択で、何度でも同じことをすると言い切る。2人は互いの気持ちを確かめ合い、キスを交わすと、さらに一歩踏み出そうとしたところで、電話が鳴り響く。
電話口の相手はオーウェンズの協力者だった。オーウェンズは電話に出られない状況で、さらにエルも子どもたちも行方不明だと伝える。マレーは「KGBの罠じゃないか」と疑うが、ジョイスは監獄で見た“うごめく黒い粒子”からして、ホーキンスに新たなゲートが開いていると確信していた。しかし帰国はどう急いでも明日以降になってしまう。
するとジェイスは「“あれ”がひとつの意思(ハイブ・マインド)でつながっているなら、ロシア側でダメージを与えれば、ホーキンスで戦う子どもたちにも影響を与えられる」と思いつく。それはつまり、再び収容所へ戻るということだ。マレーは一度は拒むが、やがて覚悟を決め、ホッパーはアントノフに、ユーリをどうにかしてヘリを動かすようにして、迎えに来るように伝える。
その後、ホッパーたちが収容所に戻ると、そこに警備兵の姿はなく、すんなりと施設に入ることができるが、嫌な予感を感じていた。一方、アントノフはユーリを見張る中で、彼がかつて英雄と称えられたときの話を持ち出し、「また英雄になれるはずだ」と説き伏せる。するとユーリは、黙ってポケットに隠していたエンジンの部品を取り出し、自らの行為を悔いるように見つめる。
作戦開始
一方ホーキンスでは、ナンシー、スティーブ、ロビン、ダスティン、エディが改めて作戦を確認している。作戦は全部で4段階。
フェーズ1は、クレール家の外の公園にいるエリカから合図を受けたナンシー、スティーブ、ロビンが屋敷へ侵入し、その合図をルーカスとマックスに中から伝えること。フェーズ2は、マックスがヴェクナを挑発して再び呪いへと引き込み、自分を囮にすること。フェーズ3は、ダスティンとエディがトレーラーから音楽を鳴らし、“デモバット”の群れを屋敷から引き離すこと。フェーズ4で、クレール家の屋根裏にあるヴェクナの本体にナンシー、スティーブ、ロビンが突入し、意識を飛ばしている間に焼き払ってとどめを刺す、という作戦だ。
ナンシー、スティーブ、ロビン、ダスティン、エディの5人はトレーラーパークに戻り、エディのトレーラーに開いたゲートを通りって再び裏側の世界へ入る。二手に分かれる前、スティーブはダスティンとエディに「何かあったら即逃げろ」と念を押す。エディは「俺たちはヒーローって感じじゃない」と、役割を理解したうえで見送る。
ホーキンスのクレール家では、ルーカス、マックス、エリカが靴を脱ぎ、ランタンの明かりだけを頼りに家中を静かに歩き回り、ヴェクナの気配を探る。声を殺してノートに書いてやり取りしながら各階を調べた末、エリカが一階で異常な明滅を確認する。エリカは外の公園まで走り出て信号を送るフェーズ1をやり遂げる。しかし、その様子を犬の散歩中の男に見られ、男はアンディに電話し、さらにジェイソンへ情報が回っていた。
リビングで待機中のマックスとルーカスは、ノートを使って静かに会話を交わす。2人は週末に映画館へ行くことを約束し、やがてエリカのフェーズ1完了の合図を受ける。2人は裏側にいるロビンたちへフェーズ2開始の合図を伝える。マックスはランタンに近づいてヴェクナに呼びかけるが、すぐには反応がない。やがてランタンの灯りが弱まり、再び揺れ始めるのを見て、ふたりはその光を追って二階へと向かう。
その頃、裏側の世界では、ダスティンとエディがトレーラーを補強し、籠城準備を進める。エディはトレーラーの自室で、裏側にも存在する自分のギターを見つけて歓喜する。
一方、裏側のクレール家に向かう森の中、スティーブは高校時代の未熟さを振り返り、ナンシーが自分を“目覚めさせてくれた”と感謝を伝える。さらにスティーブは、「もし当時から今のように変われていたら、どうなっていたのか」と、前に語った将来の夢の中で、ナンシーに家族になってほしいと思っていたと打ち明ける。ナンシーが返答に迷っていると、ロビンが「クレール家に到着した」と報告して会話が終わる。
“簡易版ニーナ”
ネバダのガソリンスタンドでは、ジョナサンがホーキンス行きの最短のフライトを手配しようとするが、到着はどうしても翌朝になることが判明する。エルは近くの看板に目を留め、母テリーやビリーの精神世界に入り込んだことを思い出す。彼女はマイクたちに「この場所からマックスを守ることができるかもしれない」と伝え、ヴェクナがマックスの精神世界に入るのに“相乗り”する方法を提案。
そのためには、大量の塩と水を使った“簡易的なNINA”つまり、“感覚遮断タンク”が必要だった。アーガイルは、「最適な場所がある」と、思いつき、一同をバンに乗せて走り出す。こうして一行は、ネバダのサーファー・ボーイ・ピザ店に到着し、キッチンを拝借。
ウィルとジョナサンは業務用の冷凍庫に水と塩を満たし、マイクはピザ箱でサングラスを工作し、エルとその不格好さに笑い合う。そんなマイクとエルの仲睦まじい様子を、ウィルはキッチンからさみしげに眺めていた。それを見たジョナサンが声をかける。昔のように頼られなくなって寂しいこと、自分がハイになって相談に乗れる状況ではなかったことを謝罪する。そのうえで、「何があっても味方だ」と伝えると、ウィルは涙を浮かべて同じ思いを共有し、2人はハグをする。
即席の“簡易ニーナ”の準備が整い、エルは冷凍庫タンクに身を沈めると、すぐにマックスとルーカスの姿を見つける。
記憶と対峙するマックス
マックスとルーカスは屋根裏へたどり着き、マックスはウォークマンなしで座り込み、ヴェクナに話しかけ始める。彼女は、「ビリーに死んでほしいと願ったことは、本当だった」と、暴力的で支配的だったビリーに対しての本心を口にする。ビリーが死んだあの日も、彼を助けるべきか一瞬ためらってしまった。その罪悪感から、今は自分こそが罰を受けるべきだと考えていたことまで、正直に打ち明ける。
すると、隣にいるルーカスが突然、「普通の人は、他人が死ねばいいなんて想像しない」と責め立て、マックスに迫りくる。マックスが違和感を覚えた瞬間、ルーカスの目は白目に変わる。一方、現実のルーカスはヴェクナの呪いによって意識を失ったマックスを必死に揺さぶっていた。その様子を“感覚遮断空間”で見ていたエルは、ワンがマックスの精神世界に入ると同時に相乗りし、マックスの記憶の中に入り込む。
作戦はフェーズ3に入った。ルーカスからエリカ、ロビン、そしてダスティンにフェーズ3開始を共有すると、裏側の世界のエディのトレーラーの屋根で、エディがギターでメタリカの『メタル・マスター(Master of Puppets)』をかき鳴らす。爆音に誘われ、デモバットの群れがクレール家から離れ、その隙にナンシー、スティーブ、ロビンは屋敷に接近していく。
マックスは精神世界でヴェクナの追跡から逃げるが、やがてその姿はビリーの幻影に変わる。マックスは“負の記憶”ではなく、“幸せな記憶”を思い出そうと必死になり、やがて1984年のスノーボール会場へたどり着く。彼女はそれが成功したと感じるが、飾りつけの風船が破裂し、中から血が噴き出すと、次第に禍々しい雰囲気と化していく。
それと同時に、現実のクレール家ではマックスが過呼吸を起こし始める。危機を感じたルーカスは窓から何度もエリカに合図を送るが、エリカはアンディに腕を取られてしまう。さらにルーカスが振り向くと、そこには銃を構えたジェイソンが立っていた。ヘルファイア・クラブによる悪魔儀式を信じ込む彼は、マックスが生贄にされていると思い込み、「今すぐマックスを起こせ」と命じる。
怪物焼却作戦
収容所に戻ったホッパーたちは、監獄内の映像を確認するため監視室へ入る。すると部屋は死体だらけで、瀕死の将校が一人だけ横たわっていた。マレーがロシア語を通訳しながら聞き出すと、デモゴルゴンが施設内に入り込み、銃撃で追い払おうとした兵士たちがカプセルを壊してしまい、デモドッグと「粒子(シャドウ)」が解き放たれたことが判明する。監視カメラでは、シャドウが複数の怪物へと取り憑いている様子が映し出される。
ホッパーは「怪物をアリーナに集めて火炎放射器で焼き払う」作戦を立てる。マレーが火炎放射器を預かり、ジョイスが監視室で扉の制御を担当。ホッパーは洗濯室に潜むデモドッグをおびき出す役を買って出る。心配するジョイスに対して、「いつかは死ぬ。でも今日じゃない」と言い切り、キスをして走り出す。
ヴェクナの目的
エルはマックスの記憶の中でスケートパークを歩き回り、幼いマックスを発見するが、その姿には触れられない。マックスはスノーボール会場でヴェクナにゆっくりと追い詰められていく。ヴェクナはマックスの楽しい記憶を上塗りするようにして、悪夢を重ねていく。
エディのトレーラーでは、デモバットの群れが襲いかかる。ダスティンとエディは通気口から侵入してきた一匹を必死に叩き落とす。しかし別の通気口からデモバットたちが雪崩れ込んで来てしまう。2人は裏側から現実の世界へ逃げることに決める。ダスティンがシーツのロープを登って逃げ、エディも続こうとするが、彼は寸前で思いとどまり、ロープを切り落として一人で外へ飛び出していく。エディは自ら囮になり、デモバットの大群を引き付けて自転車で爆走する。
その頃、クレール家に侵入したナンシーたちは、慎重に屋根裏へ向かおうとするが、ヴェクナが侵入を察知し、ロビンの足に蔦が絡みつく。助けに向かったスティーブとナンシーも次々と捕らえられ、3人は壁に磔にされ、蔦で首を締め上げられる。
現実世界のクレール家では、ルーカスがジェイソンに必死に状況を説明するが、ジェイソンは全く聞く耳を持たない。ジェイソンがエディの味方をするルーカスに失望したと言うと、怒ったルーカスは「“普通”なジェイソンに憧れていたのに、間違いだった。あんたはただの暴走したサイコ野郎だ」と言い返し、2人は取っ組み合いになる。ジェイソンの持っていた銃が発砲されると、エリカはその音に驚いたアンディの隙を突いて急所を殴り、急いでクレール家へ走る。
スノーボール会場では、ヴェクナが今まさにマックスを殺そうと手を伸ばす。するとその瞬間、見えない力に吹き飛ばされる。そこに現れたのはエルだった。しかしヴェクナはすぐに持ち直し、エルに襲いかかる。ヴェクナはエルをねじ伏せると、「殺す前に見せたいものがある」と別の場所に飛ばす。
エルとマックスは触手で吊るし上げられて身動きを封じられる。エルは「ブレンナーは死んだ、怪物はパパだった」と理解を示そうとするが、ヴェクナは意に介さず語り始める。かつてワンとしてエルに敗北して裏側の世界へ送られた後、そこで見たのは人間に汚されていない未知の世界だった。彼はそこでマインド・フレイヤーの本体と出会い、操る術を学び、ホーキンスを破壊する計画を練った。必要だったのは、“現実世界との開かれたゲート”だった。それを作ったのが1983年のイレブンだと、ヴェクナは冷静に言葉を重ねる。すべてはイレブンの力を奪おうとする試みだったのだ。
「ホーキンスを燃やし、新しい世界を築く。お前はそれをただ見ていろ。」ヴェクナはエルに宣言し、4人目の生贄とするためにマックスの命を奪いにかかる。
現実世界では、ルーカスがジェイソンとの殴り合いに勝って気絶させるが、マックスの体は中に浮かび上がり、彼女の四肢は不自然な方向へ折れ、目から血が流れ始めてしまう。裏側では、エディがデモバットの大群に取り囲まれている。ダスティンは再び裏側に戻り、足を怪我しながらもエディのもとへ急ぐ。同じ頃、ホッパーはデモドッグを誘い出すが、追いつかれて組み伏せられてしまう。全員が絶体絶命の危機にあった。
4つのゲート
ネバダのピザ店では、エルの体が震えて過呼吸を起こし始める。ウィルはマイクに「今こそちゃんと伝えるべき」と背中を押し、マイクはこれまで怖くて言えなかった想いをようやく言葉にする。エルとの出会いで人生が変わったこと、能力の有無関係無しに彼女を愛していること、エルに必要とされなくなってしまうのが怖くて気持ちを伝えることから逃げていたことを打ち明け、「君は僕のスーパーヒーローだ」と、はっきり愛を伝える。
“感覚遮断空間”でマイクの言葉を聞いていたエルは、涙をこぼしながらも、縛りつけていた蔦を力ずくで引きちぎり、ヴェクナの拘束から抜け出す。クレール家では、ルーカスがマックスを抱きしめながら助けを求めて叫び続けるが、彼女の身体はぐったりと力を失っている。
ロシアの監獄では、ジョイスがホッパーに間一髪で助けに入り、デモドッグを電器槍で感電させて引きはがす。2人は中庭に飛び出し、デモゴルゴンとデモドッグたちをアリーナに引き付ける。2人は追い詰められるが、アリーナの観覧席からマレーが火炎放射器で焼き払う。するとその衝撃がヴェクナの身体に直接伝達し、裏側の世界のエディを襲っていたデモバットが次々と墜落。ナンシー、スティーブ、ロビンの首を締め上げていた蔦も力を失って彼らを解放する。
ナンシー、スティーブ、ロビンはすぐにクレール家の屋根裏に上がり、蔦に繋がれたヴェクナの身体を見つけると、火炎瓶を投げつけ、フェーズ4をやり遂げる。同じ頃、収容所のホッパーは焼け残ったデモゴルゴンと対峙し、剣で頭を切り落として打ち破る。燃える身体で近づくヴェクナに向けて、ナンシーはショットガンを頭に撃ち込み、屋根裏から吹き飛んだヴェクナの体は、焦げた痕だけが残って消失する。
ホッパーたちの前には、アントノフがヘリ「カティンカ」の修理に成功したユーリとともに駆けつける。裏側のトレーラーパークでは、デモバッドの死骸の中で血まみれになって横たわるエディのもとに、ダスティンが駆け寄る。エディは「今度は逃げなかった」と息も絶え絶えに笑い、ヘルファイア・クラブをダスティンに託すと、「愛してるぜ」と言葉を残して、静かに息を引き取る。ダスティンは泣き崩れながら、エディを胸に抱きしめ続ける。
現実世界のクレール家の屋根裏では、エリカがルーカスのもとに駆けつけ、救急車を手配する。しかしマックスは「何も見えないし、何も感じない」と声を震わせる。エルは“感覚遮断空間”からルーカスとマックスに涙ながらに寄り添うが、マックスは次第にぐったりとしてしまう。
その瞬間、裏側のクレール家で時計の鐘が四度鳴り響く。ナンシー、スティーブ、ロビンは、マックスの死を悟り、暗く揺れる屋敷の中で階段の手すりにしがみつく。現実のクレール家では、マックスのそばの床に大きな赤い亀裂が走り、瞬く間に広がってジェイソンの体を上下に裂き、そのまま家全体を引き裂いていく。すでにヴェクナが開いていた他の3つの裂け目も同時に拡大し、ホーキンス中を貫いていく。
やがてホーキンスでは大きな地震とともに4つの亀裂が、ホーキンスの中心にある図書館で交わり、爆発とともに衝撃波を放つ。ピザ店ではマイクたちがエルに「戻ってきて」と呼びかけ、“感覚遮断空間”のエルはマックスの心臓に手を置き、彼女との楽しい記憶を頼りに意識を集中する。
爪痕
二日後、ようやくカリフォルニア組がホーキンスに到着すると、町を出ていく長い車の列ができていた。ニュースでは、あの出来事は大地震と報じられ、死者は22人と伝えられている。ウィーラー家のテレビでも父テッドがその報道を見つめ、カレンは荷造りを進めながら、ナンシー、スティーブ、ダスティン、ロビンと共に、ホーキンス高校に届ける救援物資を車へ積み込んでいる。
そこへサーファー・ボーイのバンが到着し、家族と仲間たちは再会を果たす。それぞれが抱き合い、再会を喜ぶが、ルーカスの所在を聞かれたダスティンは、事情を説明する。
ホーキンス病院では、全身ギプスと包帯に覆われたマックスが昏睡状態でベッドに横たわっている。ルーカスはそばで本を読み聞かせ、妹のエリカと母スーザンが傍らに座っている。そこにマイクとエルたちがやってくる。ルーカスは仲間との再会を果たし、「目覚めるかは分からないけど、生きていること自体が奇跡だった」とマックスの状態を説明する。
エルはベッドの端に座り、マックスの手を握って「いつもそばにいる」と約束する。力を使って彼女の心の中へ入ろうとするが、そこには何もない真っ暗な空間が広がっていた。エルが何度名前を呼びかけても、応答はない。
ホーキンス高校は避難所となっていた。スティーブ、ロビン、ダスティンは大量の寄付物資と負傷者を目にし、それぞれがボランティアとして支援に参加する。ロビンはそこでヴィッキーと再会し、距離を縮めていた。ふたりの会話を見守るスティーブは、少し安心したような顔で微笑む。
ダスティンはエディの父ウェインの姿を見つける。ウェインは行方不明の息子を探しているようだ。ダスティンが話しかけると、ウェインは冷たく反応するが、ダスティンが「あの“地震”のとき彼と一緒にいた」と告げると、表情を変える。「今どこにいる」と問われたダスティンは、ギターのピックを取り出し、泣きながら「本当にごめんなさい」と伝える。「エディは皆が思うような悪人ではなく、むしろ自分を嫌う町を守るために命を懸けた英雄だった」と、精一杯の言葉で伝えると、ウェインは目に涙を浮かべて、黙ってその話を聞く。
侵蝕
その後エルたちは、ホッパーの山小屋に向かっていた。マインド・フレイヤーとの戦いで荒れ果てた小屋を全員で片付ける。ジョナサンとナンシーは互いに距離が空いてしまったことを謝り合うが、ナンシーに大学の合格通知について聞かれると、ジョナサンは届いていないと嘘をつく。
外ではマイクとウィルが、これからの戦いについて話している。マイクはヴェクナが本当に死んだのかと不安を口する。するとウィルは、首筋に現れる鳥肌をさすりながら、「あいつはまだ生きている」と断言する。ウィルはホーキンスに戻ってきてから、ヴェクナの存在をずっと感じていることを明かす。
ウィルは、マインド・フレイヤーだと思っていた“あの感覚”が、実はヴェクナがマインド・フレイヤーを“操り人形”として使っていたものだったと気づく。そのうえで、やつは全員を奪うまで止まらないと危機感を伝える。マイクは「俺たちで止める」とウィルと決意を固める。
そんな中、一台の政府公用車が小屋に近づいてくる。そこから現れたのはホッパーの姿だった。エルはホッパーと再会を果たし、2人は強く抱きしめ合う。エルはジョイスとも再会を喜びあう。ホッパーはオーウェンズのエージェントにここまで送ってもらったと説明し、マイクとも再会を喜び合う。
その直後、ウィルの首筋に再び寒気が走る。空を見上げると、黒い雲が渦を巻き始めていた。ホーキンスには裏側の世界の胞子が雪のように降り始め、それぞれが異様な空模様に気づく。
一同は、ホーキンスを見渡せる丘の上に立ち、立ち昇る黒雲と、そこを走り抜ける赤い稲妻を目撃する。足元の草は、目に見える速さで枯れ始めていた。エルはその光景を見つめながら、裏側の世界がホーキンスを侵蝕し始めた現実を、仲間たちと共に静かに受け止める。




