今回ご紹介する映画は『青くて痛くて脆い』です。
住野よるの原作を狩山俊介監督が映画化。
主演は国宝級イケメンの吉沢亮と多くの作品で存在感を発揮する杉咲花。
予告編を観た人はいい意味で裏切られると思います。
2020年の鬱屈で閉塞した世の中で多くの人に刺さる、見るべき作品になっていました。
映画『青くて痛くて脆い』の作品情報とあらすじ

作品情報
原題 | 青くて痛くて脆い |
---|---|
監督 | 狩山俊輔 |
原作 | 住野よる |
出演 | 吉沢亮 杉咲花 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2020年 |
上映時間 | 118分 |
おすすめ度 | (3.5点/5点) |
あらすじ
人付き合いが苦手な大学生の田端楓は、周りから浮いていた秋好寿乃に声をかけられる。
ボッチ同士の二人は秘密結社サークル“モアイ”を結成するが、秋吉が“この世界”からこつ然と姿を消してしまう。
彼女がいなくなってからのモアイは最初の目標とは違う形になっていた…。
『青くて痛くて脆い』の原作・スタッフ・キャスト
住野よるの同名小説が原作
本作は、『君の膵臓をたべたい』でも著名なベストセラー作家の住野よるの同名小説が原作となっています。
彼女の5作目となるこの小説は、『君の膵臓をたべたい』で描いた世界観とはガラッと変わり、大学生を題材としたリアルなコミュニケーションの有り様を描いていました。
そんな本作を映像化したのは、TVドラマ「怪物くん」「Q10」や「妖怪人間ベム」などを手がけてきた狩山俊輔監督。
吉沢亮(田端楓役)
出典:2020 映画「青くて痛くて脆い」製作委員会
国宝級イケメンとして大人気の吉沢亮ですが、本作のような役柄はかなり合っていると感じます。
インタビューでも学生時代は陰キャラだったと話していましたが、他のイケメン俳優のキラキラした感じとは違ったアンニュイさを持っているいい俳優だと思います。
杉咲花(秋好寿乃役)
出典:2020 映画「青くて痛くて脆い」製作委員会
すでに多くの作品で印象的な役柄を演じてきた杉咲花ですが、本作でもそれは健全。
本作での「気持ちわるっ」という言葉のインパクトも中々のものでした。
主題歌はBLUE ENCOUNT『ユメミグサ』
本作の主題歌には4人組ロックバンドBLUE ENCOUNTの『ユメミグサ』が使用されています。
原作者の住野よるはBLUE ENCOUNTのファンでもあり、原作小説の特設サイトには同バンドの「もっと光を」が使われていました。
どちらも本作のテーマに合っていて、疾走感のあるメロディが気持ちがいい曲です。
【ネタバレ感想】思い当たる人にとって突き刺さる痛さ
出典:2020 映画「青くて痛くて脆い」製作委員会
※以下、映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。
本作は、いい意味で想像とは違う展開が楽しむことができました。
「何者」でもない大学生
本作、プロットが朝井リョウの『何者』に非常に似ているんですよね。
- 大学生、就活絡みの話
- SNSでのアレコレ
- 本心を言わない主人公
- ラスト
主には上記のようなところ。
義務教育を終え、子供でもなく、社会人でもない、いわば「何者」でもない大学生。
彼らはなんでもできる自由さを持っていながら、何をしたら良いのかも分からない不安さを同時に抱えています。
そして自然と「意識高い系」と「流されて生きるもの」に2極化していくのです。
【ネタバレ考察】楓と秋好の嘘
出典:2020 映画「青くて痛くて脆い」製作委員会
「この映画には嘘がある」という宣伝文句はプロモーションの部分もありますが、楓と秋好の嘘について考察してみます。
- 秋好が死んだという嘘
- 世界を変えるという嘘
秋好が死んだという嘘
この映画は楓が秋好と共に作り上げたサークルが、「秋好が死んでしまったこと」で別のものになってしまったというミスリードを誘っています。
実際、「秋好が死んだ」というのは嘘で、この映画の場合、「楓にとっての秋好」がサークルの拡大とともに変わってしまったことで彼女を消えたものにしていたのです。
世界を変えるという嘘
劇中の後半、楓と秋好が対面して言い争う場面。
楓は秋好が「世界を変える」という理想を掲げて奔走していた当初の彼女が、ただの就活サークルへと成り下がったいったことに失望したのです。
そして事実、「世界はなにも変わっていない」。だから楓は秋好のあの発言は嘘だったと言うのでした。
コミュニケーションの難しさ
この2人のすれ違いはなぜ生まれてしまったのか。
それが分かる感情をぶつけ合う2人のやり取りが非常に印象的でした。
- 態度から察してほしい楓
- なんでもすぐ口にする秋好
この対極にある2人だからこそ生まれてしまった見えない溝。
とはいえ、映画を観ていると楓の性格に共感できる僕ですら明らかに彼に対して違和感を覚えるタイミングがあるんです。
それは秋好が脇坂が入ってから少しずつ変わっていったモアイについて、ちゃんと面と向かって楓に「今のモアイをどう思うか」を質問するとき。
それに対しての楓の答えが「秋好がいいならそれでいい」というもの。
ここが一番の過ちであり、始まりでもあります。
秋好とモアイに対して思うことがあっても伝えることができず、それを察しろというのは明らかに無理があるのです。
応援していたバンドが売れて大きくなった時に「なんか変わっちゃったな」というファン。
好きだった芸能人が不祥事を起こし、「そんな人だと思わなかった」というファン。
あなたも今まで少なからず誰かに対する勝手な印象を抱いたことがあるのではないでしょうか。
“ちゃんと傷つく”こと
物語の終盤、楓はモアイを解散へと追い込むことに成功するものの、それまでの「怒り」が、秋好を傷つけたという「後悔と恥」へと変わっていきます。
仮に楓が秋好に想いを伝え、ともにモアイを作り上げていったとしても恐らく「世界は変えられない」と思います。
自分の都合のいい理想像を秋好だけではなく、脳内でも描いてしまう虚しさに共感できるのが悲しいです。
本作と対称的な作品として『僕たちは世界を変えることができない。』という映画を思い出しました。
その映画では理想を掲げても世界を変えることはできないと気づいた大学生がそれでも目の前の人を笑顔にすることはできると模索しながらも道を見出した作品でした。
そしてラストシーン、並木道を歩く秋好を見つけた楓は、弱くてズルくて傷つきたくなかった「青くて痛くて脆い」自分を受け入れ、そして彼女に拒絶されてもいいから「もう一度ちゃんと傷つけ」と自分を律して彼女の前に現れるのでした。
これも『何者』の扉を開くラストシーンに通じるものがありましたね。
サイドストーリーの必要性
出典:2020 映画「青くて痛くて脆い」製作委員会
モアイの活動先の施設で登場する森七菜が演じる瑞希というキャラクターがいるのですが、どうやらこのキャラクターは原作には登場しないようで、彼女の背景が分からないため、立ち位置がよく分からないんですよね。
彼女が担任の先生から明らかに異常なほど追い詰められるシーンに見られる他人への押し付けの気持ち悪さと、それを楓と秋好の会話にかぶせる映像表現は上手いと思いましたが。
青春とは痛みを知ること
『青くて痛くて脆い』は一見サスペンスのように進むかと思いきや、痛すぎる青春の傷にフォーカスした苦い青春映画となっていました。
青春とは痛みを伴うことだと個人的には思うところがあり、楓もその痛みを知ることで、前に進むきっかけとなったのです。
SNS社会で匿名性が増している現代社会において、「相手に対する勝手なイメージ」を植え付けてしまうということは誰にでも思い当たるテーマでした。
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