今回ご紹介する映画は『最後の追跡』です。
『トゥルー・グリット』などのジェフ・ブリッジスと『スター・トレック』シリーズのクリス・パインが主演を務めた犯罪映画。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] 重厚なストーリーと俳優たちの静かでありながら熱のこもった演技が呼応した力量ある一本でした! [/chat]
映画『最後の追跡』の作品情報とあらすじ
作品情報
原題 | Hell or High Water |
---|---|
監督 | デビッド・マッケンジー |
脚本 | テイラー・シェリダン |
出演 | ジェフ・ブリッジス クリス・パイン |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2016年 |
上映時間 | 102分 |
おすすめ度 | [jinstar4.5 color="#ffc32c" size="16px"](4.5点/5点) |
あらすじ
不況にあえぐテキサスの田舎町。
タナーとトビーのハワード兄弟は、亡き両親が遺した牧場を差し押さえから守るため、銀行強盗に手を染める。
地頭の良いハワードが練った完璧な計画のおかげで兄弟は次々と襲撃を成功させていくが、タナーの無謀な行動のせいで次第に追い詰められていく。
一方、定年を目前にしたテキサス・レンジャーのマーカスは、相棒のアルバートとともに事件の捜査に乗り出すが……。
映画『最後の追跡』のスタッフとキャスト
監督と脚本
本作を手掛けたのはイギリスの映画監督、デヴィッド・マッケンジー。
過去にはユアン・マクレガーとエヴァ・グリーンが主演の映画『パーフェクト・センス』を撮っています。
脚本にあたる原作はテイラー・シェリダン。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] この人の脚本は間違いなく面白いですよね! [/chat]
- 『ボーダーライン』
- 『最後の追跡』
- 『ウインドリバー』
テイラー・シェリダンの上記3作は、「フロンティア三部作」と呼ばれています。
その意味の通り、国境や辺境を舞台とした映画作品となっています。
今作『最後の追跡』ではテキサスの荒野が舞台となり、貧困と犯罪、それを追うもの、追われるものを描いています。
本作の魅力をストーリー上、2つの視点でご紹介します。
- 追われる側のタナーとトビーの兄弟
- 追う側のマーカスとアルベルトのレンジャーコンビ
タナーとトビー
出典:https://www.imdb.com/
父親を殺したことで服役した兄のタナーは、出所後に弟トビーの銀行強盗計画に参加します。
粗暴で自分勝手なタナーですが、弟想いの行動もところどころ見られます。
演じたのはベン・フォスター。彼が役にピッタリで渋い演技を見せてくれました。
一方、弟のトビーは頭が良く、銀行強盗の計画も全てトビーが計画したものでした。
犯罪などしたことがないトビーですが、自分たちの正義を貫くために戦う覚悟が伺えます。
トビー役のクリス・パインの演技が素晴らしいです。
哀愁漂う表情と、どこか虚ろな眼差しがトビーの心情を上手く表現していて脱帽でした。
最後の銀行強盗前日、荒野をバックにふざけあう兄弟のシーンは特に印象的でした。
マーカスとアルベルト
出典:https://www.imdb.com/
定年間近のレンジャーのマーカスと、相棒でインディアンとメキシコ人のルーツを持つアルベルトの二人は、互いに悪態をつくような関係です。
しかし、事件の進め方を指南したり、老後の心配をしたりなどと、根底では相棒として信頼していることが伝わってきます。
マーカス役の名優、ジェフ・ブリッジスの佇まいは、テキサスレンジャーそのものでした。
タナーとトビー、マーカスとアルベルトどちらの2人にも感情移入ができるので、心が揺さぶられるのです。
この構造が非常に上手く、どっちの気持ちもわかる絶妙なバランスを最後まで保っていました。
映画『最後の追跡』のネタバレ結末
出典:https://www.imdb.com/
以下ネタバレとなりますのでご注意ください。
銀行強盗をする理由
タナーとトビーのハワード家は代々貧しい生活をしていました。
その負の連鎖を自分の代で断ち切り、子供には自分と同じ苦労にあって欲しくないと願うトビーは、亡き母親の借金として銀行に担保されたこの土地を守るため、銀行を襲う計画を立てました。
『最後の追跡』のラスト
出典:https://www.imdb.com/
タナーとトビーは迫り来る借金の返済期限から、予定外の大きい規模の銀行を襲います。
そこで警備員と客の返り討ちにあいますが、タナーはためらわず二人を銃殺してしまいます。
ギリギリのところでしたが強盗に成功し、店を出ると今度は町の自警団たちからの襲撃に見舞われます。
トビーは背中を撃たれるものの、二人は何とか車で逃げ切ります。
追いかけてくる自警団をタナーがマシンガンで追い払うと、タナーとトビーは二手に別れるのでした。
トビーは借金返済をするために、タナーは警察を引き付けるために。互いに会うのがこれが最期だと理解しているかのように走り出すのでした。
その後タナーは荒野を駆け巡り、丘に逃げ込みそこから狙撃銃で警察に対抗します。
マーカスとアルベルトも現場に到着し応戦します。
自分が仕留めると意気込むマーカスでしたが、何とその横にいたアルベルトが頭を射抜かれ殺されてしまいます。
相棒を殺されさらに火がついたマーカスは自警団の車に乗り、丘の反対側に回り込みます。
じっくりと狙いをさだめ、タナーの頭に標準を合わせるマーカス。
引き金を引くとタナーの頭部に命中し、射殺します。
一方のトビーは検問を何とかくぐり抜け、銀行へ向かい借金返済を終えます。
無事計画をやり遂げたトビーはカジノのニュースで兄タナーの最期を知ります。
事件が落ち着いたものの、マーカスはトビーの関与を疑っていました。
私的にトビーのいる土地へ赴くマーカス。そこでトビーと対峙します。
兄と相棒、互いに殺し殺された関係の二人。両者痛み分けの構図になります。
トビーはいつでも話し相手になると言うと、マーカスも一生苦しみを背負うことになると答えるのでした。
2人の静かなる戦いがそこにありました。
『最後の追跡』は重厚なストーリーが面白い
テキサスの辺境を舞台に二人の兄弟と二人のレンジャーの行動が交差していく展開は秀逸でした。
現代版西部劇と言うべき重厚なストーリーと素晴らしい演者たちが織りなすドラマは傑作。
決して派手ではないものの、一見の価値はある映画です。