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映画

【ネタバレ感想/考察】『サンドラの小さな家』に宿る“メハル”の精神

今回ご紹介する映画は、『サンドラの小さな家』です。

フィリダ・ロイド監督による作品で、DV夫から逃がれ住まいを失った母親が、ふたりの幼い娘を連れて、困難に立ち向かう姿を描いた映画。

本記事では、映画『サンドラの小さな家』をネタバレありの感想と解説・考察をしていきます。

まめもやし

肉体的、精神的にも追い詰められた悲運な主人公が、娘を守るため、人生を取り戻すために立ち上がる様子の力強さに心が動かされました…!

【ネタバレ感想/考察】映画『サンドラの小さな家』

『サンドラの小さな家』

サンドラの小さな家
ストーリー
感動
面白さ
テーマ性
満足度

あらすじ

若きシングルマザーのサンドラは、虐待をする夫から逃れるためふたりの幼い娘を連れて家を出る。だが、公営住宅に空きが出ず、彼女たちはホテル暮らしを強いられていた。そんなある日、サンドラは娘との些細な会話から小さな家を自分で建てることを思いつく。

作品情報

タイトルサンドラの小さな家
原題Herself
監督フィリダ・ロイド
脚本クレア・ダン
出演クレア・ダン
ハリエット・ウォルター
コンリース・ヒル
製作国アイルランド/イギリス
製作年2020年
上映時間97分

予告編

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『サンドラの小さな家』のスタッフ

フィリダ・ロイド

(C)Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

フィリダ・ロイド監督

主な監督作

  • 『マンマ・ミーア!』
  • 『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』

監督は、マンマ・ミーア!などで知られるフィリダ・ロイド

大学卒業後、BBC(英国放送協会)に5年勤めてから舞台などの演出家の道を進んだ監督です。

代表作のマンマ・ミーア!』が父親を探す娘を華やかに描いていたのに対して、『サンドラの小さな家』は、父親から娘を守るために離れていく様子を静かに描いているのが印象的。

『サンドラの小さな家』のキャスト

キャスト役名
クレア・ダンサンドラ
ハリエット・ウォーカーペギー
コンリース・ヒルエイド
モリー・マッキャンモリー
ルビー・ローズ・オハラエマ

クレア・ダン

クレア・ダン

(C)Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

本作で、主演・脚本を務めたクレア・ダン

実は、本作は彼女の親友が家を失ったという話を聞いたことがきっかけで誕生しました。

自分で脚本を書いているからこそ、サンドラの心情をより深く把握でき演技に反映していて、その真に迫った姿は素晴らしいものでした。

クレア・ダンは、生まれつき目元にアザがあり、本作ではそのアザを物語に織り込むことで、彼女自身が、俳優としてアザを隠さず生きてきた意思とリンクする部分がありました。

ネタバレあり

以下では、映画『サンドラの小さな家』の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

【ネタバレ感想】DVのトラウマと子どもたち

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(C)Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

DVと受け皿のない社会・政府

サンドラの夫は、本当にクソ野郎としか言えない人間です。

サンドラは、夫から虐待を受けながらも子どもたちに悲しい思いをさせないように、必死に楽しく振る舞っていました。

しかし、行き過ぎた夫のDVはサンドラの腕を折り、彼女に深いトラウマを植え付けることになるのです。

逃げるようにして夫の元から子どもたちと離れることにしたサンドラでしたが、彼女たちを支えてくれる制度や法律は整っていません。

制度を使って一時的にホテルの一室で暮らすことになるも、ホテルマンからはロビーやエレベーターを使うことを断られ、公営住宅を借りようにも果てしない順番待ちがあり、行き場を失っていくのです。

被害者が傷つけられる現実

本作では極端にも思えるくらい、夫がひたすらに嫌な役柄となっています。

冒頭でのDVに加え、夫から離れたはずが、「子どもとの面会」という口実を使い、サンドラに執拗に接触してくるのです。

肉体的にも、精神的にもサンドラは夫から追い詰められてしまうのです。

さらに、娘は父親が母親に暴力を振るう場面を見てしまったことで、父との面会を嫌がります。

しかし、夫はサンドラが意図的に娘に合わせないようにしているとして、面接権の放棄として訴えるのでした。

劇中でも印象的な裁判シーン。

法廷でされる質問は、サンドラの心の傷口に塩を塗る形になります。

「暴力を受けていたのになぜ逃げなかったのですか」

暴力を振るった夫が明らかに悪いはずなのに、なぜ逃げない・助けを求めないのかを詰問されてしまうのです。

その一方で、「夫がなぜ暴力をやめなかったのか」については質問しないのです。

被害者を守ることが優先されるべきなのに、被害者を苦しめている現実。

フラッシュバックするトラウマと、ただ娘たちを守りたいというサンドラの思いが爆発するシーンは非常に印象的に映っていました。

まめもやし

みていて辛いシーンが多いのも現実です…。

劇中を彩る音楽

本作は、ほとんどの場面でBGMとしての音楽は流れません。

しかし、ここぞという場面において様々なアーティストの楽曲を使用しているのが印象的でした。

劇中の楽曲リスト

  • 「Chandelier」Sia
  • 「Follow the Sound」Kean Kavanagh
  • 「Love Tonight」Soulé
  • 「Last Night I Crashed My Ferrari」AWKWARD, Ben Baird, Fabian Baird, Jeremy Stagg and Tom Johnson
  • 「Dixit Dominus, HWV 232: Tu es sacerdos in aeternum」George Frideric Handel
  • 「Brewing Up a Storm」The Stunning
  • 「New Shoes」Sharon Jones & The Dap-Kings
  • 「Run For Cover」The Killers
  • 「Titanium (feat. Sia) 」David Guetta
  • 「Ice Cream Sundae」Inhaler
  • 「Green Garden」Laura Mvula
  • 「C'est La Vie」B*Witched
  • 「Whiskey in the Jar」Traditional
  • 「The Lass of Aughrim」Simon Johnson, Tad Sargent and Natalie Holt
  • 「Mother」LYRA
  • 「Take It Back」Cherym
  • 「Sonata for Violin Solo No.3 in C, BWV 1005: 4. Allegro assai」Johann Sebastian Bach
まめもやし

この中でも特に印象的なのが、シーアの「シャンデリア」ですね!

冒頭では、シーアの「シャンデリア」をサンドラと娘二人が歌うシーンから始まりますが、その直後に夫からの強烈なDVシーンが描かれます。

I'm gonna swing from the chandelier From the chandelier I’m gonna live like tomorrow doesn’t exist Like it doesn’t exist.

(シャンデリアにぶら下がってゆらゆら揺れるの。私はこれからも生きていく。明日なんてないかのように。)

Sia - Chandelier

実は、シーア自身がボーイフレンドを事故により失ったことで、アルコール依存や薬物依存に苦しんだ経験から生まれたのが「シャンデリア」という楽曲なんです。

「シャンデリア」の楽曲がもつ力強さが、本作のストーリーの部分にもかなり影響が感じられます。

まめもやし

冒頭のシーンはやっぱり強烈ですね…!

【ネタバレ考察】 タイトル『herself』に込めた意味

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(C)Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

さて、『サンドラの小さな家』の原題は、herselfとなっていますが、そこには一体どんな意味が込められていたのかを考えていきます。

彼女自身の強さと仲間

本作を通してみると、サンドラのたくましさもありますが、彼女が決して一人ですべてを成し遂げたわけではないと分かります。

サンドラがサンドラらしくいられたのは、彼女に救いの手を差し伸べてくれた人たちがいたから。

サンドラは、夫からの虐待の影響で、家族や社会から孤立してしまっていたのです。

本作は、そんなサンドラが自分自身コミュニティを取り戻していく物語でもありました。

『サンドラと小さな家』では、夫からの精神的・肉体的DVを受けながらも、一方で人間の良心を信じる映画にもなっているのです。

そこには、アイルランド伝統の精神「メハル」が描かれていました。

メハルの精神

本作にも登場する言葉メハル

この言葉は「みんなが集まって助け合うことで、自分自身も助けられる」の意味が込められた、アイルランドに伝わる精神のこと。

まめもやし

 日本で言うところの「情けは人の為ならず」に近いですね!

まさに、この「メハル」こそがタイトルを意味していると考えられます。

彼女の家造りに参加する仲間たちは、詳しく描かれませんが、それぞれが生きづらさを抱えていることが伺えます。

住む家(House)を失ったサンドラが、自らの手で作り上げていく家(Home)。

孤独を抱えていた彼女が、自ら一歩踏み出して誰かを頼ってみたこと。

本作に光明が差すのは、このサンドラの力強さと勇気にあると思います。

本作を見て、ケン・ローチ監督の映画を思い浮かべる人も多いと思いますが、社会問題へのアプローチの仕方が、ケン・ローチとフィリダ・ロイド監督、そしてクレア・ダンとは違うなとも感じますね。

不死鳥のように何度でも立ち上がる

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(C)Element Pictures, Herself Film Productions, Fís Eireann/Screen Ireland, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute 2020

本作は、コミュニティを取り戻し、家と人生を建て直していったサンドラへ容赦のない展開が待ち受けています。

なんと、やっとの思いで建てた家を、夫によって燃やされてしまうのです。

まめもやし

この展開には言葉を失いましたよ…!

みんなで力を合わせて建てた家が、文字通り、灰となってしまうのです。

絶望して倒れ込んでしまうサンドラ。

彼女は再び家を建て直すことができるのでしょうか。

私たち観客は、彼女なら大丈夫だと信じることができます。

なぜなら、もう彼女はひとりじゃない。彼女を支えてくれる人たちがいる。

非常にほろ苦い余韻を残すラストになっていますが、サンドラならきっと大丈夫だと、希望も見える幕引きとなっていました。

まとめ:立ち上がるための支援・制度は絶対に必要

今回は、虐待・貧困に立ち向かう女性の姿を描いた『サンドラの小さな家』をご紹介しました。

虐待を受ける人は、さまざまな要因から声をあげることができず、塞ぎ込んでしまい、結果的に社会からも孤立してしまうことが多いと聞きます。

そんな中で、自らの手で家を造ることで人生も建て直していく一人の女性の力強い姿に胸が打たれました。

しかし、彼女のような強い人たちだけじゃないのも明白。手を差し伸べる周りの人々、社会、そしてセーフティネットとなる制度が絶対に必要です。

他人事ではなく私たち一人ひとりが、「メハル」の精神を持って生きていくことが大切だと痛感しました。

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