仕事に追われ、家庭を支え、日々「責任」という名の荷物を背負って生きる。そんな父親たちにとって、自由に生きる男ジャック・リーチャーは、まるで“もう一つの人生”を見せてくれる存在だ。
スマホも家も荷物も持たず、ポケットに歯ブラシ一本だけ。それでも彼は、迷いなく動き、誰よりもまっすぐに正義を貫く。まさにヒーローだ。
Amazonプライムの人気シリーズ『リーチャー 正義のアウトロー』シーズン2は、そんな“父親の理想像”をこれでもかというほど体現した、痛快なアクションドラマ。本記事では、ネタバレありで『リーチャ』シーズン2を解説していく。
『リーチャー 』シーズン2のキャスト・キャラクター・相関図
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
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![]() | ジャック・リーチャー(アラン・リッチソン) 元・陸軍憲兵。放浪の旅を続けながら、トラブルに巻き込まれた人々を助ける。鋭い頭脳と圧倒的な戦闘力で、陰謀の核心に迫る。 |
![]() | フランシス・ニーグリー(マリア・ステン) 元・陸軍憲兵特別捜査部隊「第110部隊」の創設メンバーで、現在はシカゴの私立探偵。リーチャーが最も信頼を寄せる人物で、幾度も命を預けてきた相棒的存在。 |
![]() | カーラ・ディクソン(セリンダ・スワン) 元アメリカ陸軍の少佐で、リーチャーにより第110憲兵特別捜査部隊の創設メンバーとして選ばれた。除隊後は法廷会計士として活躍していたが、フランツの殺害を受け、第110部隊の仲間たちとともに真相を追う。 |
![]() | デイヴィッド・オドネル(ショーン・サイポス) 元・陸軍憲兵特別捜査部隊「第110部隊」の創設メンバーで、退役後は弁護士として働き、妻リリーと3人の子どもを支える家庭人としての生活を送っている。フランツの死をきっかけに、再び第110部隊の仲間と共に事件の真相を追う。 |
![]() | A.M.(フェルディナンド・キングズリー) テロ組織と繋がりを持つ武器仲介人で、ニューエイジ・テクノロジーズの新たなセキュリティ責任者シェーン・ラングストンに雇われ、「リトル・ウィング」ミサイルを最高額の買い手に売り捌こうとする。 |
![]() | シェーン・ラングストン(ロバート・パトリック) ニューエイジ・テクノロジーズのセキュリティ責任者。カルヴィン、オロスコ、サンチェスが会社の不正に関わる事件を掴んだことで、自身と会社の立場を守るために第110部隊の元メンバーたちを狙い始める。 |
![]() | ガイターノ・ルッソ(ドメニク・ランバルドッツィ) ニューヨーク市警の刑事。フランツ殺人事件の捜査を担当する中で、リーチャーらと交錯していく。 |
第1話『ATM』
ニューヨーク州キャッツキル山中で、男性の遺体が発見される。彼は空から落下したようで、事件性が強く疑われていた。その男の名はカルヴィン・フランツ。かつてジャック・リーチャーと共に軍警察「第110特別捜査部隊」で活動していた仲間だった。
事件から2年7ヶ月後、リーチャーはアーカンソー州でひとり暮らしを送っていたが、フランツの死を暗号メッセージで知る。かつての同僚フランシス・ニーグリーの呼びかけでニューヨークへ向かい、再び“仲間の死の謎”を追うことを決意する。
ニーグリーと合流したリーチャーは、フランツが拷問された末にヘリから突き落とされたことを知る。さらに、フランツには家族がいたこと、そして彼が生前何かの事件を追っていたことが明らかになる。リーチャーとニーグリーは遺族のもとを訪ね、フランツのオフィスと自宅が荒らされていた事実を掴む。手がかりは一見乏しいが、彼の私書箱から発見されたUSBメモリに秘密があると睨む。
一方、謎の男“A.M.”が偽造パスポートを用いて行動を開始。フランツの旧友たちにも危険が迫っている中、リーチャーは仲間のひとりオドネルと合流。USBのパスワードを推理し、中身へのアクセスに成功する。
さらに別の仲間スワンの安否確認のため訪れた自宅では、彼の愛犬が餓死しており、スワン自身も行方不明。「第110特別捜査部隊」のメンバーが狙われていることはもはや明らかだった。リーチャーは、仲間を殺した何者かに対し、徹底的な反撃を決意する。
第2話『アトランティックシティ(What Happens in Atlantic City)』
スワンの自宅を後にしたリーチャーたちは、再び謎の黒いセダンに尾行されていることに気づく。リーチャーが運転手を撃退すると、その男がNYPDの刑事ガイターノ・ルッソであることが判明。ニーグリーは彼がフランツ殺害事件の担当捜査官だったと認識する。警察がニーグリーの航空券購入をきっかけに彼女たちの動きを監視していたとリーチャーは推測する。
連絡の取れないサンチェスとオロスコを探すため、一行はアトランティックシティへ向かう。途中、元チームのカール・ディクソンが合流。彼女は深い潜入捜査を終えたばかりで、仲間のピンチを知って駆けつけたのだった。
過去のアフガニスタンでの任務回想では、ディクソンが航空機燃料の不正輸送に気づき、「捜査では正確さが重要」と教訓を残す。その精神は現在の捜査にも受け継がれている。
アトランティックシティでは、仲間たちの職場や関係者のバーも荒らされていた。サンチェスの知人ミレーナから、彼らが「650をそれぞれ10万で」という謎の言葉を残し、突然姿を消したことが語られる。ミレーナも命を狙われていたが、ディクソンらが間一髪で保護する。
手がかりを追ってカジノ「ネプチューン」へ。チームはセキュリティ責任者デヴィッド・ライトに接触し、サンチェスとオロスコが不正を探っていた可能性があると伝える。
スイートルームに泊まった一行は、それぞれの私生活を語り合う。ディクソンの婚約破棄やニーグリーの家族介護、そしてリーチャーの放浪生活。ディクソンはリーチャーに対して過去の恋愛感情をにじませる。
その夜、尾行者を見つけた二人は建設現場へ誘導し、戦闘へ突入。複数の敵を殺害し、遺体をセメントに埋める。そこで得た携帯電話にはシェーン・ラングストンの番号が登録されており、リーチャーは直接通話し、敵の正体と脅威の規模を確信する。
さらに車内からは、ニューエイジ・テクノロジーズの駐車パスと彼らの個人情報が発見される。敵はプロの傭兵集団であることが確定し、リーチャーとディクソンは強い絆とともに一線を越える。
翌朝、サンチェスとオロスコの遺体がキャッツキル山中で発見されたとの報告がライトから届く。死亡状況はフランツと同様であり、事件は組織的な連続殺人の様相を見せ始める。リーチャーは「もっと銃が要る」と、仲間たちの仇を取るため復讐に向かう決意を固める。
第3話『写真は多くを語る(Picture Says a Thousand Words)』
かつての仲間カルヴィン・フランツは、生きたまま拷問され、ヘリから投げ捨てられていた。彼は最後まで情報を漏らさず、シェーン・ラングストンに血を吐きかけて抵抗。その死は、リーチャーたちを動かす引き金となっていた。
現在、リーチャーは違法に銃を購入し、仲間とともにニューヨークへ戻るが、途中で警察に停車を命じられ、NYPD刑事ルッソに逮捕される。彼はリーチャーたちが空港の監視カメラで確認され、追跡されていたと明かす。
一方、ディクソンとニーグリーは「ニューエイジ・テクノロジーズ」へ潜入。そこで得た駐車許可証の持ち主は、すでにリーチャーが殺したトレヴァー・サロピアンと判明。彼はニューエイジへの就職を試みていたが断られていた。遺された履歴書から住所を突き止め、次なる調査へ進む。
警察側では、フランツのオフィスから見つかったメモリカードにより、「A.M.」ことアズハリ・マフムドの存在が浮上。彼は国際指名手配中の武器ブローカーで、テロ組織と関わりがある。リーチャーは、これが単なる私怨ではなく、国家レベルの大事件であると確信する。
過去のエピソードでは、リーチャーたちが軍時代に麻薬取引と航空機燃料の不正輸送を調査していたことが描かれる。
ニーグリーとディクソンは、フランツの残した数字の羅列が「勤務日数の推移」であることを突き止める。最初の月は平常だったが、7ヶ月目には極端に減少しており、不穏な動きを示していた。
その後、リーチャーたちはサロピアンの自宅へ向かい、強襲を決行。爆弾を使用して敵を排除し、逃走車両を追跡した末に、ニューエイジの社員ブライアン・コリンズを捕まえるが、彼は心臓発作で死亡。情報は得られなかった。
行動の過激さに怒ったルッソは、彼らの勝手な作戦が捜査の妨げになると警告。ただし、ニューエイジへの強制捜査を提案し、協力を継続する姿勢も見せる。ルッソはA.M.に関する偽名リストがもはや無効であることも知らせ、今後の慎重な行動を求める。
しかし、リーチャーは警告を無視し、仲間と共にニューエイジ本社を車で強行突破。H.R.、サーバールーム、運営責任者室からデータを強奪。その過程で社内写真を発見し、そこに写る“死んだはずのトニー・スワン”の姿に全員が驚愕する。
第4話『音楽会の夜(A Night at the Symphony)』
チームはスワンの裏切りの可能性に揺れる。ニューエイジの職員名簿から、スワンがセキュリティ副責任者として勤務していたことが判明。上司はシェーン・ラングストンであり、死亡した運転手ブライアン・コリンズも同部門の職員だった。ニーグリーはマーロ・バーンズが罠に嵌めた可能性を指摘するが、リーチャーはスワンを信じ続ける。
一方、NYPD刑事ルッソは上司マーシュ中尉から叱責を受ける。リーチャーたちのニューエイジ本社襲撃によって警察の捜査が遅れたと非難され、ルッソは情報の奪還を命じられる。
リーチャーたちは、スワンがマーロ宛に「Jimi Hendrix - Axis: Bold as Loveの6曲目がすごい」とメールしていたことから、暗号に気づく。6曲目「Little Wing」が鍵と判明し、それはニューエイジが獲得した巨大な防衛プロジェクトのコードネームである可能性が浮上。この案件には悪名高い上院議員マルコム・ラヴォイが関与していた。
ラヴォイへの接触を避け、彼の立法ディレクター、ダニエル・ボイドを狙う作戦が立案される。オドネルは人脈を使って情報を調査。一方で、過去の軍時代のエピソードから、スワンに対するわずかな疑念も浮かぶが、リーチャーは彼を信じ続ける。
A.M.は整形外科医エルゾグビーを殺害し、彼になりすましていた。一方、チームはボストンのオペラハウスで行われる資金集めイベントに潜入。ディクソンがドレス姿でボイドを誘き出し、麻薬所持の現行犯で逮捕させる。
取り調べには、過去に縁のあるフィンレイ中尉が協力し、リーチャーとオドネルがFBIになりすまし、情報を引き出す。「Little Wing」は対空ミサイル回避システムを突破するソフトウェアで、元々は旅客機用だったが、軍事用に改造されたとボイドは語る。また、その実体は2拠点で分担製造され、ソフトはニューヨーク、ハードはコロラドで開発中と判明。
チームは再編成され、リーチャー&オドネルはDHS(国土安全保障省)へ、ニーグリー&ディクソンはコロラドへハードウェア破壊のため向かう。その直後、チームはバイカーギャングに襲撃されるが、圧倒的な戦闘力で返り討ちにし武器を奪還。リーチャーは敵の携帯からラングストンに電話し、「お前もヘリから突き落としてやる」と警告する。
第5話『葬儀の日(Burial)』
リーチャーはオドネルの家族と対面し、彼の妻リリーと2人の子どもたちに会う。オドネルは事件が解決するまで家族を避難させると決める、「これは予防措置だ」と説明。リリーの冷静さに驚くリーチャーだが、彼女は救急看護師と消防署長の娘で修羅場に慣れていた。
一方、ニーグリーとディクソンはデンバーのミサイル工場に潜入し、"Little Wing"の出荷状況を確認。だが、全650基のミサイルは10分前に出荷された後だった。そのミサイルは直後にオレグたち武装集団により運転手を殺害された上で奪取され、トレーラーを交換して追跡を逃れる。
同時に、リーチャーとオドネルはDHSで"A.M."について調査。彼は金のためなら誰にでも武器を売るブローカーで、過去には神経ガスの取引にも関与していた。ベアラー債という匿名性の高い金融商品を利用し、直接取引に現れると予測される。リーチャーは「今が奴を捕まえる絶好の機会だ」と確信する。
再びディクソンたちは現場に戻り、トレーラーの入れ替え現場に遭遇して銃撃戦に発展。トレーラーは既に切り替え済みで、スワンがニューヨークへの出荷を“本人のデジタル指紋”で承認していた。ディクソンは「スワンが関与しているか、少なくとも彼の協力なしでは不可能」と告げ、リーチャーは動揺する。
過去の回想では、スワンがリーチャーを銃弾から庇って肩に被弾し、命を救ったエピソードが描かれる。その記憶が、今のリーチャーの葛藤につながっていた。
その後、リーチャーは上院議員ラヴォイと密会。彼は「ニューエイジとLittle Wingを潰せ。協力する」と申し出るが、目的は国家防衛という建前の金儲けだ。リーチャーは彼の思惑を見抜き、懐疑的な態度を崩さない。
フランツの葬儀では、出荷されたミサイルが実は“重さだけ同じのレンガ”にすり替えられていた事実が判明。その後、2人のスナイパーによる襲撃が発生。リーチャーが囮となって回避し、1人はニーグリーにより射殺される。
逃走した狙撃手は捕まり、「クイーンズの廃ビルで雇い主と会う予定だった。雇い主の名はスワン」と告白。仲間の裏切りを信じたくないリーチャーだが、次第に現実が彼を追い詰めていく。クイーンズの建物を包囲し、スワンを捕らえるための作戦を展開。狙撃手に盗聴器を仕込み潜入させるが、直後にビルが爆破され、狙撃手は死亡。「スワンが仕組んだ罠」だとチームは確信し、衝撃を受ける。
第6話『ニューヨークの刑事(New York's Finest)』
爆発事件の直後、NY警察が現場を調査する中、リーチャーたちは近くの公園で作戦を再検討する。爆発はIED(即席爆弾)によるもので、スワンの姿はなかった。スワンが狙撃手ごと仲間を一掃しようとしていた可能性が浮上するが、リーチャーはあくまで彼の潔白を信じようとする。
マーロ・バーンズの車が放棄されていたとの情報を得て、リーチャーたちは現場のコンビニで監視映像を入手。娘ジェーンのNintendo SwitchからIPアドレスを追跡するため、マーロの家でスマートTVを使った特定作業に移る。
一方、A.M.はペンシルベニア州で警官ヒックスに止められるも、彼女を殺害して逃走。A.M.の正体である整形外科医エルゾグビーの殺害がすでに発覚しており、事態は緊迫する。
その夜、ディクソンとリーチャーは心身の疲れを癒すように抱き合う。同じ頃、ルッソは上司マーシュの汚職を暴き対峙。ニューエイジからの賄賂を受け取ったマーシュに対し、テロリストを利する行為だと怒りをあらわにし、関係を断ち切る。
ディクソンとリーチャーは過去の作戦「カイト・ランナー」の失敗に言及。不正を暴こうとしたことで上層部から罰せられた経験が、今のスワンに重なって見える。
IP追跡の結果、マーロとジェーンは1時間圏内にいると判明。リーチャーたちはマーロの知人チャドの家で2人を確保。脅迫を受けた末の裏切りだったことが明かされる。スワンは違法なチップ流通を暴こうとし、フランツやオロスコたちに協力を仰いでいたが、ラングストンに脅されて姿を消す。マーロは協力の意思を見せ、ラングストンとの罠の会合を引き受ける。
その間、ニューエイジでは技術者ラッセル・ジョンソンがA.M.に「Little Wing」の操作方法を説明する準備を進めていた。ルッソの家に保護されたジェーンは、リーチャーの作戦によりスタテン島へ避難予定だったが、道中ラングストンの手下に襲撃される。ルッソは銃撃戦を展開しながらジェーンを守る。
一方、マーロとラングストンの会合にはリーチャー、ディクソン、オドネル、ニーグリーがそれぞれ待機。会合の緊張が高まるなか、ルッソの銃撃戦を知ったマーロが動揺し、ラングストンに正体がバレて襲撃される。しかしリーチャーたちが間一髪で阻止し、部下たちを一掃する。
ルッソは逃走中に撃たれて重傷を負うが、ジェーンを守りきる。ジェーンに迫る最後の刺客は、ニーグリーが車で体当たりして撃退。ニーグリーは負傷したルッソの手を握りながら、彼の勇敢さを讃え、ジェーンが無事だと伝えるも、ルッソは息絶えてしまう。
第7話『男の意地(The Man Goes Through)』
銃撃戦の後、リーチャーたちはモーテルに集合し、マーロとジェーンの避難先について協議。ロスコたちがいるマーグレイブは避けるべきだと判断し、ディクソンが以前住んでいたバッファローの家に避難させる。
一方で、リーチャーとニーグリーはルッソの死に関与したマーシュを追い詰め、尋問。マーシュは逆らうも、リーチャーに押さえ込まれ、最終的に射殺される。同じ頃、ディクソンとオドネルはバーンズ親子をバッファローへ送り出す準備を進める。ジェーンに不安が残る中、オドネルは自らの子育ての話を交えて優しく励まし、父親としての顔を見せる。
回想シーンでは、110部隊が命令違反を承知で麻薬取引を阻止した過去が描かれる。違法なヘロインがタイヤの中に隠されていたことを突き止め、汚職軍人との銃撃戦に突入。この作戦が成功したことで部隊は一時的に喜ぶが、すぐに上官から解散を告げられた。
現在に戻り、リーチャーとニーグリーは病院で重傷を負ったグラントを訪れ、過酷な拷問の末に取引が翌朝5時にあると聞き出す。その後、グラントに静脈内に空気を注入して殺害する。
脱出中、ラングストンの刺客と病院で遭遇。ニーグリーと共闘し、ボーンサウで喉を切り裂いて倒す。携帯を回収し、ラングストンに電話。そこで驚愕の事実を告げられる。彼はGPSを使い、バーンズ親子の避難先を突き止め、オドネルとディクソンを人質にしていたのだ。
リーチャーは咄嗟に「ニーグリーは死んだ」と嘘をつき、時間稼ぎを図る。ラングストンはロックランド郡の研究施設に来れば人質を解放すると取引を持ちかける。リーチャーは「到着したら人質の生存確認をさせろ」と念押しし、同時にラヴォイ議員に連絡して援護を要請する。
施設は厳重な警備が敷かれ、フェンスには電流も。リーチャーは電流事故に見せかけて侵入する作戦を立て、内部からの奇襲を画策。ニーグリーは「カイトランナー作戦と同じ道をたどるのでは」と不安を口にするが、リーチャーは「後悔しないようにやるしかない」と答える。
施設内では、オドネルとディクソンが拷問を受ける中、リーチャーが“投降者”として連行されてくる。ラングストンは勝ち誇り、ディクソンはリーチャーの姿を見て驚くが、すぐに何かを企んでいると察する…。
第8話『血戦の果て(Fly Boy)』
リーチャーが施設に連行されると、シェーン・ラングストンはリーチャーを殺すべきかどうか逡巡する。だが、ニーグリーが遺体安置所にいないことが判明し、リーチャーは担架に乗るよう命じられる。拒否する彼に対し、ラングストンが部下とともに暴行。ラングストンはオドネルの足を撃ち、弾丸の痕跡を消すよう命令。さらに、リーチャーを尋問するが、彼は情報を与えない。
一方、外ではニーグリーが警備員を排除し、ラヴォイ議員の護衛チームを内部に侵入させる。その間、リーチャーは隠し持っていたピンで手錠を外す。ラングストンはスワンの眼球を見せ、彼の死を告げる。さらにスワンの指紋と眼球を使ってNew Age社のセキュリティを突破したことを明かす。
施設の電源が切られると、リーチャーは反撃を開始。施設内は銃撃戦となり、ニーグリーはヘリポートでオドネルとディクソンを護衛していたラングストンの部下を排除。しかし、ラングストンとパーカーはヘリで逃亡を図る。リーチャーは離陸直前のヘリに飛び乗る。
ヘリ内では激しい戦闘となり、ディクソンはヘリから落ちそうになるが、リーチャーが間一髪で救出。パーカーはリーチャーのナイフでディクソンにより刺殺。ラングストンは命乞いし、買い手の情報と取引場所を明かす代わりに命を懇願するが、リーチャーは彼をヘリから突き落とす。
その後、ヘリはリトル・ウィングの開発者ラッセル・ジョンソンの自宅へ。ラッセルとパイロットを拘束する。まもなくA.M.とオレグが現れ、ニーグリーがオレグを即射殺。リーチャーはA.M.に仲間の死の責任を問うが、A.M.は情報開示を拒否。最終的にA.M.は4人全員により銃殺される。
回収したミサイルと債券について、ラッセルとパイロットは「知らなかった」と弁明するが、チームは彼らを逃がし、飛行中にミサイルでヘリを撃墜。ニーグリーの一発でリトル・ウィングの有効性が証明される。
しかし直後、ラヴォイ議員の命令でシーバーたちが裏切り、口封じを図る。しかし、リーチャーは事前にDHSのオマル・カリームに通報しており、ラヴォイの部下たちは逮捕され、ラヴォイ自身も後に拘束される。
その後、リーチャーたちは報酬の使い道を議論し、仲間たちの遺族に配分される。また、スワンの愛犬の名で動物保護団体に寄付し、ニーグリーの父の医療費を全額支援。オドネルの子どもたちの教育資金もカバーする。ディクソンには会社設立資金を贈り、彼女の独立を後押しする。
リーチャーの金の使い道は1年間有効な長距離バスのパス購入だった。ニーグリーに仲間との連絡先リストを渡され、今後は連絡を絶たないようにと釘を刺される。リーチャーにとって、かつての仲間たちは家族のような存在なのだ。
ネタバレ感想
「荷物は最小限、フィジカルは最大級」
ジャック・リーチャーという男を一言で表すなら、こうなるだろう。シンプルにして過剰、無口にして多弁。そんな矛盾を、拳ひとつで成立させる主人公だ。
シーズン2の幕開けは、かつてリーチャーが指揮していた陸軍の特別捜査部隊「第110部隊」の元メンバーが、次々と何者かに襲撃されるところから始まる。仲間の死の真相を追うリーチャーは、まるで磁石のようにトラブルの中心へと吸い寄せられ、今回も肉体ごと陰謀に突入していく。
このシリーズの醍醐味は、驚くほど静かな暴力描写にある。リーチャーは怒鳴らない。感情を荒げることもない。ただ、必要と判断した瞬間、何のためらいもなく敵を叩き伏せる。
それを裏付ける圧倒的なフィジカルは、トム・クルーズ版の映画にはないアラン・リッチソンだからこそ体現できるものがある。
一見するとタフガイのテンプレートのように見えるが、リーチャーはただの暴力装置ではない。ユーモアと知性を併せ持ち、どこかジャンルそのものを俯瞰しているような“自己パロディ的ヒーロー像”すら漂わせる。
スイートルームでのワンシーン。「荷ほどきは終わった?」と聞かれ、彼はポケットから歯ブラシを一本取り出し、「終わった」と答える。尾行する怪しい車があれば、ドアを開ける代わりにボンネットを蹴飛ばしてエアバッグを作動させて鼻をへし折る。
その行動すべてが、無駄を排した“筋肉的合理主義”で構成されているのだ。
また今作では、リーチャーの「チーム」としての側面も光る。冷静沈着なニーグリーとの信頼関係、法廷会計士ディクソンとのさりげないロマンス、軽妙なナイフ使いオドネルとのユーモラスな掛け合い。この絶妙なバランスが、物語に緊張感と温度を同時に与えている。
リーチャーは語らない。拳で語る。そのミニマルな生き様と、過剰なフィジカル。そこに宿るのは、現代のヒーロー像とは真逆の、ある種の“反・文明的な魅力”だ。
日々、情報に追われ、荷物と責任を背負い続ける現代人にとって、ジャック・リーチャーという存在は、暴力的でありながらどこか解放的に映る。彼が背負うのはたった一本の歯ブラシだけ。しかし、彼の背中には、「自由」という名の拳の重みがずっしりと刻まれている。