今回ご紹介する映画は『不能犯』です。
『グランドジャンプ』にて連載された宮月新原作、神崎裕也作画による漫画を映画化。
本記事では、ネタバレありで『不能犯』を観た感想・考察、あらすじを解説。
松坂桃李が不思議な力をもつダークヒーローを演じています。
映画『不能犯』の作品情報
『不能犯』
5段階評価
ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :
あらすじ
連続して変死事件がおき、その現場にはいつも黒スーツの男が目撃されていた。その男は宇相吹(うそぶき)と名乗り、"電話ボックスの男"とSNSで話題の男であり、彼に依頼された人間は必ず死を遂げることがわかる…。
作品情報
タイトル | 不能犯 |
原作 | 『不能犯』(原作・宮月新 / 画・神崎裕也) |
監督 | 白石晃士 |
脚本 | 白石晃士 |
出演 | 松坂桃李 沢尻エリカ 新田真剣佑 間宮祥太朗 |
撮影 | 高木風太 |
音楽 | 富貴晴美 |
編集 | 和田剛 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2018年 |
上映時間 | 106分 |
予告編
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「不能犯」の意味と能力
映画『不能犯』は、集英社「グランドジャンプ」で2013年より連載がスタートした、宮月新原作、神崎裕也作画による漫画が原作です。
監督は、『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズや『貞子vs伽椰子』などの白石晃士。主演は松坂桃李と沢尻エリカが演じ、マインドコントロールで人を殺す男と、彼を追う刑事の攻防を描いたサスペンス。
「不能犯」とは、立証不可能な事件の犯人のことを指し、意図して犯行を行ったとしても、未遂犯とすることもできないのです。
松坂桃李演じる不能犯の宇相吹(うそぶき)は、自分の目を相手に見せることで、相手をマインドコントロールして意のままにすることができる力を持っています。彼は殺意を持っている人間の依頼を受け、ターゲットをマインドコントロールの力で殺すことで、都市伝説的な存在となっていました。
この映画の面白いところは、殺人の依頼者と殺害される対象の関係性が一筋縄ではいかないところ。観ていて近い印象を覚えたのは藤子不二雄Aの『笑ゥせぇるすまん』です。
その意味で言えば、Netflixのオムニバスドラマシリーズ『ブラック・ミラー』にも近い感覚があるので、本作が好きな方にはおすすめです。
【ネタバレ感想】映画で気になったところ
不能犯である宇相吹は依頼された殺人を遂行していきますが、その殺意が純粋な殺意でない場合、依頼者にも制裁が下されます。
本作において、登場する依頼者全員が結果的に死亡しているのが印象的。
宇相吹の「愚かだねぇ、人間は」の決め台詞が現すように、本作は殺意を芽生えるほどの人間の嫉妬や欲望を皮肉るストーリーが面白いポイント。
一方で、映画は依頼者の人間的な部分よりも、宇相吹と警察とのバトルをメインに描いているところが残念でなりません。
刑事の多田(沢尻エリカ)は、新人の百々瀬(真剣佑)を名前ではなく「新人」と呼び、何かを成し遂げたら名前で呼んでやると言っていました。
結果的に彼は名前で呼ばれるのですが、百々瀬は爆弾魔に爆撃され、病院送りとなっただけで特に何も達成していません。彼の事件との関係性が薄すぎて成長が見えないのはもったいないところ。
多田は宇相吹が唯一マインドコントロールできない存在として描かれますが、その理由が不明瞭。
例えば、多田が誰かに操られるような確固たる信念をもつ存在として描かれていれば納得できるのですが、彼女のキャラクター像はとても中途半端なんですよね。百々瀬に仕事を丸投げしてタバコを吹かしていたりなど。
酒に酔った状態で宇相吹に遭遇するシーンでは、むしろコントロールされる展開の方が面白いとも思えます。宇相吹に対して「自分の希望で殺す」という、訳の分からない発言で終わるところもモヤモヤが残ります。
ある夫婦と町内会長の場面でのシーン。夫が家に帰ってくると、妻の服が乱れた状態で泣いていました。
帰宅した夫が妻に状況を尋ねる場面では妻の肩にアザはないのですが、そこでフラッシュバックし、町内会長に乱暴されたシーンを挟んだ後、妻の肩にアザができているです。この場面に宇相吹はいないので、マインドコントロールによるものではないはず。どういうこと?
宇相吹の目を見るとマインドコントロールされる様子は、トリップしているような映像が描かれますが、一回描けばわかるのにも関わらず、同じ映像を同じ尺で使うのはすごく気になります。
宇相吹の過去については映画では全く描かれません。彼がなぜ見返りもなく依頼を受けるのか、その理由と経緯などがないので、そのチート能力を含めてキャラクターが浮きすぎています。
結果的に宇相吹vs多田のチェイスに終わっているので、人間のドロドロした部分を描くようなドラマを期待していた分、イマイチ印象に残りませんでした。
まとめ:面白くなりそうでならなかった
今回は、白石晃士監督&松坂桃李主演の『不能犯』をご紹介しました。
ダークヒーローがテーマである面白さは魅力的なのですが、そのテーマを活かしきれていない感じが否めません。むしろ思いきって『笑ゥせぇるすまん』よりにリアリティに振り切った人間ドラマにしてほしかったですね。
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