今回ご紹介する作品はNetflixオリジナルドラマ『地面師たち』です。
本記事では、ネタバレありで『地面師たち』を観た感想・考察、あらすじを解説。
テンポの良い展開と、俳優たちの優れた演技に魅せられて、思わずイッキ見してしまう、手に汗握るクライムサスペンス!
『地面師たち』作品情報・配信・予告・評価
『地面師たち』監督・原作
監督・脚本:大根仁
Netflixドラマ『地面師たち』の監督は、『モテキ』『バクマン。』の監督としても知られる大根仁。
監督はインタビューで「原作があるとはいえ、かなり脚色もしている」と語っていますが、映像的とも言えるその脚色が、本作の魅力や面白さにつながっていると感じました。
原作:新庄耕「地面師たち」
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Netflixドラマ『地面師たち』は、2022年の新庄耕による小説が原作。リクルートで法人営業を務めた後に小説家となると、不動産営業マンの悲哀を描いた『狭小邸宅』や、マルチ商法を題材とした『ニューカルマ』で知られています。
原作小説『地面師たち』は、2017年に積水ハウスが地面師グループに55億5千万円をだまし取られた実在の事件「積水ハウス地面師詐欺事件」をベースにしています。
『地面師たち』相関図・キャスト・キャラクター解説
Netflixシリーズ『地面師たち』7月25日よりNetflixにて世界独占配信
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
辻本拓海(綾野剛) 地面師グループの交渉役。地面師にだまされたことがきっかけで家族を失った過去を持つ。 | |
ハリソン山中(豊川悦司) 地面師グループのリーダー。元暴力団幹部で拓海の地面師としての師匠。 | |
竹下(北村一輝) 地面師グループの情報屋。金とドラッグに依存している。 | |
後藤(ピエール瀧) 地面師グループの法律屋。元司法書士で交渉の場で巧みな話術でまくし立てる。妻子を持つ。 | |
麗子(小池栄子) 地面師グループの手配師。地主の「なりすまし役」をキャスティングして教え込む。 | |
長井(染谷将太) 免許証や公文書を偽造するニンベン師。ハッキングや特殊メイクもする何でも屋。 | |
オロチ(アントニー) 竹下の子分で顔に入れ墨がある半グレ。地面師に憧れている。 | |
下村辰夫(リリー・フランキー) 警視庁捜査二課の警部。長年ハリソン逮捕に執念を燃やしているが、定年で引退間近。 | |
倉持(池田エライザ) 警視庁捜査二課に配属されたばかりの新人刑事。下村と一緒に地面師事件を捜査する。 | |
青柳(山本耕史) 大手デベロッパー企業・石洋ハウスの開発事業部長。社長派閥。 | |
須永(松尾諭) 石洋ハウスの役員。青柳とライバル関係にあり、会長派閥。 | |
川井菜摘(松岡依都美) 光庵寺の住職。港区高輪に100億円の価値がある土地の地主。 | |
楓(吉村界人) 歌舞伎町のホストクラブのNo.1ホスト。 | |
真木(駿河太郎) 新進の不動産会社マイクホームズの社長。 | |
林(マキタスポーツ) 地上げ屋で不動産ブローカー。ハリソンや後藤、青柳とも関係がある。 |
地面師とは
地面師とは、他人の土地の所有者になりすまして売却を持ちかけ、偽造書類を使って多額の金をだまし取る不動産詐欺を行う集団。バブル期に多発するも、不動産書類の電子化が進み沈静化した。
一方で、2010年代半ば、東京オリンピック招致決定を気に土地の価格が上昇し、管理の行き届かない土地や、所有者の不在など、表面化しにくい土地を中心に地面師事件が発生するようになった。
地面師とは、上記のように複数人からなるチームで行われることが多く、緻密で高度な犯罪テクニックを要すると言われている。
【実話】実在の事件から着想を得た物語
Netflixドラマ『地面師たち』はフィクションですが、原作・ドラマ含めて、実在の事件から着想を得て描かれています。以下ではドラマ内で登場した実在の事件を紹介します。
積水ハウス地面師詐欺事件
ドラマ内で地面師たちに約10億円をだまし取られることになる石洋ハウスですが、これは2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」を題材としています。
新橋白骨事件
ドラマの冒頭で、リリー・フランキー演じる下村が、地面師詐欺絡みで調査していたビル内で、白骨化した遺体を発見する場面。これは「新橋白骨事件」と呼ばれるケースを題材にしています。
資産家女性が白骨死体で発見され……おぞましい事故物件の末路 | 文春オンライン
APAホテル事件
第1話で、下村がハリソンを追い詰めたが不起訴に終わったという事件は、「APAホテル事件」を題材にしています。
APAホテル事件から芋づる式「地面師村」100人の共犯者 - ライブドアニュース
アパホテルから12億円を騙し取った「地面師」驚きの手口(伊藤 博敏) | 現代ビジネス | 講談社
【ネタバレ感想】実在の事件を題材にしたエンタメ作
Netflixドラマ『地面師たち』は、タイトルの通り「地面師たち」による不動産詐欺の様子を描いたクライムサスペンスです。
地面師詐欺をとても簡単に言い表すと、「地主のフリをして勝手に土地を売る」こと。そんなことにだまされる人がいるのだろうか、と思えてしまいますが、先に実在の事件を挙げたように、大企業が実際に地面師グループにだまされて、数億円の被害を被っているのです。
「戦争ってのはな 突き詰めれば土地の奪い合いなんだよ」
「人類の歴史は早い話 土地の奪い合いの歴史です」
第2話の青柳のセリフ/第5話のハリソン山中
ドラマ内で、大手デベロッパーである青柳と、地面師のハリソン山中が同じようなことを言っているのが印象的です。
ハリソンは、「拓海が自分に似ている」と言って育てましたが、彼に似ていていたのは青柳の方だったのかもしれません。
その上で、ハリソン山中は拓海に、「人間の知恵の最たる愚行は、土地を所有したがること」「土地が人を狂わせる」と語り、そうであれば「土地には人間を滅ぼしたいという本能があるのかもしれない」と言いました。
なぜ土地は人を狂わせるのでしょうか。
実際に、土地の奪い合いは人類の歴史において、あらゆる時代や地域で起きています。
古代メソポタミアに始まり、アテネとスパルタ、イギリス・フランスの領土争い、ナポレオンのヨーロッパ征服、アメリカの西部開拓、イスラエルとパレスチナ、そして現代のロシアによるウクライナの軍事侵攻まで。
アメリカの大手旅行雑誌『コンデナスト・トラベラー』が発表した読者投票ランキングでは、「世界で最も魅力的な国」において、日本が第1位に選出されています。
本作は、そんな“世界一魅力的な都市”東京という、小さな日本の狭い都市の中の、さらに狭い土地を争う侵略戦争と言えます。
地面師詐欺事件の手口を描くだけでは地味になってしまうところを、大根仁監督の抜群の脚色力と演出力によって、魅力に溢れたストーリーになっています。
地面師グループが巧妙な手口で詐欺を働く様子は、『オーシャンズ』シリーズを彷彿とさせ、引退間近の刑事と新人バディは『セブン』、地面師を追う倉持の姿は、伊丹十三の『マルサの女』のよう。デベロッパーたちの土地の奪い合いや社内闘争は、池井戸潤の『鉄の骨』『半沢直樹』や、真山仁の『ハゲタカ』っぽさも感じられます。狂気とバイオレンスが加速する様子は、北野武作品にも通じています。
このように、地面師詐欺を描いたクライムサスペンスの中に、複数ジャンルの魅力的な要素が含まれていて、それらが非常にバランス良く、全7話に凝縮されていました。
実力のあるキャストが勢揃いした演技合戦も大きな見どころの1つ。ピエール瀧とリリー・フランキーといえば、白石和彌監督の『凶悪』で元暴力団組長と不動産ブローカーの「先生」として共演していたのを思い出します。
一方で、本作で「先生」的な位置にあるのが地面師グループのリーダーを演じた豊川悦司です。「知能犯」役のお手本のような、冷静さと狂気をはらんだ役柄が魅力的でした。
その中で、ダブル主演のひとりである綾野剛は、かなり抑制した演技を貫いてたのも印象的でした。
ドラマ内は怒号が飛び交うような、不動産業界のマッチョイズムを感じさせる雰囲気が漂っています。(駿河太郎、不動産マン似合いすぎ…!)
関東大震災から100年が経過し、大規模再開発のまっただ中にある東京。街も大きく様変わりしています。
本作を見た後では、東京のマンションに住む人にとっては、自分の土地がどんな背景で建っているのか、気になってしまうかもしれません。
ネタバレあり
以下では、Netflixドラマ『地面師たち』の各話のネタバレ・結末に触れています。注意の上、お読みください。
第1話のあらすじ
ターゲット
2017年6月、東京・新橋の雑居ビルで、白骨化したビルオーナーの死体が発見される。遺体を発見した警視庁捜査二課の下村辰夫と部下の大久保は、そのビルが不動産詐欺事件に使用された可能性を捜査していた。
下村は、かつて地面師のハリソン山中の不動産詐欺グループを逮捕したが、不起訴処分となったことを大久保に明かす。
一方、地面師の詐欺グループ、拓海、後藤、麗子は、佐々木という男性に島崎健一としてなりすます練習をさせている。拓海は最終確認に行く前にハリソンのチェックを受け、あるものを手渡される。拓海はハリソンの弟子として地面師になってから、4、5年が経っているようだ。
彼らがターゲットとした土地は、恵比寿駅から徒歩5分の場所にある一軒家で、所有者の島崎健一本人は、病気でホスピスにいる。情報屋の竹下から情報を得ると、ハリソンと拓海はこの土地に狙いを定める。
土地価格を9億円で設定し、不動産ブローカーを通じて売りに出された噂を流すと、マイクホームズという新進の不動産企業が食いつく。仲介人の後藤は、競合相手をちらつかせて、逸るマイクホームズの社長・真木は、1億円を上乗せし、10億円の契約を決断する。
最終確認
契約は最終確認まで進んでいた。島崎健一になりすました佐々木は、拓海、後藤らとともに登記関係の書類や本人確認を行う。拓海らは、なりすましのために土地の権利証を持っておらず、それを紛失したことにして、弁護士に本人確認書類を用意していた。
問題は本人確認だった。マイクホームズの司法書士が佐々木へ慎重に本人確認を繰り返すと、後藤は苛立ちを募らせる。司法書士が佐々木によく使うスーパーを尋ねると、答えを準備していない佐々木は固まってしまう。
しかし、拓海がお茶を佐々木の下腹部にかけ、佐々木が粗相したように思わせると、その間にハリソンから手渡されていたワイヤレスマイクを佐々木の耳に仕掛ける。別の場所では、ハリソンが佐々木にセリフを指示し、佐々木がそれを話したことで相手側を納得させ、最終確認を成功させる。詐欺の成立だ。
ハリソン、拓海、後藤、麗子、竹下の5人は、不動産詐欺を成功させて会食を開く。竹下が次なるターゲット候補を提案すると、ハリソンは、「死人がゴロゴロでるようなヤマ」がやりたいと、より大きなターゲットを要望する。困難を乗り越えてこそ、ハリソンはエクスタシーが満たされると語る。
それに見合う物件があると、竹下が案内したのは、東京の大規模な再開発地域である高輪の中心地の寺院だった。寺院に併設されている広い駐車場エリアがターゲットだ。竹下は100億円ほどになると見込んでいた。しかし、土地の所有者である寺院の尼僧は、頑なに売却を拒んでいるという。
一方、なりすましをした佐々木は、金を手にして田舎暮らしをしようと帰路につくが、彼を狙ったトラックに轢かれて殺される。ハリソンは佐々木の死の瞬間を記録した映像を見て恍惚の表情を浮かべる。
第2話のあらすじ
引退間近の下村と新任の倉持
下村が数ヶ月後に引退を控える中、警視庁捜査二課に29歳の倉持(池田エライザ)が配属される。
下村と倉持は大久保に同行し、マイクホームズを訪問する。マイクホームズの社長・真木は、地面師詐欺の被害に遭ったことを知らされて取り乱す中、地面師たちがマネーロンダリングをしていることで、被害金が戻ってくることが見込めないことを伝えられ、絶望する。
下村と倉持は、マイクホームズとの最終確認に同席していた井上(拓海が詐欺で使った名前)の住所へ向かい、そこで千葉刑務所から辻本拓海へ送られた手紙を発見する。
拓海の過去とハリソンとの出会い
8年前、拓海は父親の放火によって母親と妻、幼い息子を亡くした。その後、高級デリヘル嬢の送迎ドライバーとなった拓海は、ある時、客として利用していたハリソンから呼び出され、風俗嬢のサキ(片山萌美)が行為中に死んだことを知らされる。
拓海はハリソンから多額の金を渡されて隠蔽を持ちかけられるが、仮死状態だったサキを人工呼吸で助け、ハリソンから手渡された金をサキに渡し、黙秘するように伝える。ハリソンは拓海の機転を利かせた行動を評価し、名刺を渡す。
石洋ハウスの青柳
大手住宅メーカー「石洋ハウス」の部長・青柳(山本耕史)は、70億円の大型開発プロジェクトが頓挫したことで、同規模で代替となる土地探しに追われていた。プロジェクトが頓挫した原因は、地主が不倫によって妻と離婚したことだった。
土地探しに奔走する青柳は、地上げ屋の林(マキタスポーツ)を頼ろうとするが断られる。青柳は同僚でライバル関係にある須永(松尾諭)との出世争いに負けられないため、必死になっていた。そんな中、光庵寺の敷地を偶然通りかかり、目星をつける。
新たなターゲット
拓海たちは、マイクホームズ事件のほとぼりが冷めた頃、光庵寺をターゲットに動き出す。土地は光庵寺に隣接した駐車場と更生施設跡が対象で、土地の所有者で住職の川井菜摘(松岡依都美)は、元夫が更生施設を利用して性加害を行ったことが問題となり、以降は寺院に引きこもっていた。
拓海と竹下、竹下の部下のオロチ(アントニー)は、更生施設跡に侵入し、川井の動向を監視していた。ある夜、川井が変装して寺を出ていくことに気づいて追跡すると、高級ホテルの一室に入る様子を目撃する。
拓海はニンベン師の長井の協力を得て隣の部屋に侵入し、隣部屋の川井の部屋の様子を盗聴する。川井の部屋では、複数の若い男たちとセックスする川井の姿が映される。
第3話のあらすじ
大きい獲物
ルームサービスのワゴンに監視カメラを仕込んでいた拓海は、映像をチームに共有する。そこには歌舞伎町ホストクラブのNo.1ホスト・楓(吉村界人)の姿があった。楓が川井に気に入られたことでNo.1ホストに上り詰めたことで、チームは楓を利用すれば川井を外に連れ出すことができると考える。
一方、竹下はハリソンに報酬の引き上げを要求する。竹下は薬物中毒の影響で興奮気味だ。後藤は、石洋ハウスの青柳が林の元を訪ねたことを明かし、石洋ハウスが大規模プロジェクトの頓挫によって代替できる土地を探していることを知らせる。
後藤は、石洋ハウスが大手企業であるため、社内稟議のプロセスも長く、ターゲットにはできないと考えるが、ハリソンは「大きい餌と大きい罠には、大きい獲物が掛かってくる」と言い、石洋ハウスをターゲットにすることに決める。
拓海が地面師となった理由
倉持は、辻本拓海宛の手紙の送り主が父の正海(猪股俊明)であることを突き止め、下村に伝える。正海は8年前、不動産詐欺被害に遭い、経営難を苦に家族を巻き込み焼身自殺を図った。
その後、二人は千葉刑務所で正海と面会し、彼が被害に遭った詐欺師について聞き出す。小さな不動産会社を経営していた正海は、西谷という地面師にだまされて被害を被ったが、その西谷を紹介したのは営業として働く拓海だった。
倉持は、地面師にだまされたことで人生を狂わされた拓海が、自ら地面師になることで西谷を探していると考える。
仲介業者の斡旋
後藤は林との会食の中で、石洋ハウスが会長派と社長派に割れており、通常決済なら長期間を要する一方で、国内事業を会長を追い出そうと目論む社長の安倍川(谷川昭一朗)が国内事業を一任していることで、決済が早められる可能性を知る。
林は大手の石洋ハウスを信用させるため、仲介業者のアビルホールディングスと繋ぐことを持ちかける。アビルホールディングスの役員には自民党議員の妻がいることで、石洋ハウスを信用させるためには好都合だった。
ハリソンは林の提案を受け入れ、仲介業者を紹介した報酬を渡すが、その後、林はハリソンが手配した男たちに殺される。
ホストクラブ潜入
一方、拓海は長井の元を訪ね、顔に火傷の跡の特殊メイクを施し、ホストとして楓のホストクラブに潜入する。ある夜、楓のドライバーとしてラブホテルへ送迎すると、楓が風俗の斡旋業者を通じて、未成年淫行していることを知る。
後日、川井が客としてホストクラブにやってくると、拓海は楓に取り入り、高級ホテルの一室で川井とセックスする。その後、楓が再び未成年買春をしようとすると、拓海はオロチらを率いてラブホテルに押しかけ、楓を脅迫し、自分たちに協力するように持ちかける。
第4話のあらすじ
下村と倉持の捜査
下村は、林が殺されたことを知り、現場を訪れる。そこで「G・アヒル来訪」という5日後のカレンダーのメモ書きを見つけた下村は、林が以前にハリソンを追い詰めた事件に間接的に関与していたため、林が事件に関与していること、「G」が後藤のことを指し、地面師グループが新たなターゲットを狙っていると推理する。
その後、帰宅した下村は、「アヒル」がアビルホールディングスであることに気づき、アビルホールディングス前のカフェで張り込み捜査を始める。
一方、倉持は、拓海が家族との縁を切りきれていないと推理し、家族の命日に墓参りすると考える。倉持は再度、刑務所の正海と面会し、拓海が家族の墓を建てる可能性がある場所を聞き出し、伊豆の稲取で辻本家の墓を探し始める。
下村がカフェで張り込みしていると、目の前に拓海と後藤が現れる。二人は商談を前にカフェに入り、下村の後ろの席に着く。下村は、二人の会話からハリソンの名前を耳にする。
二人が商談に向かうためにアビルホールディングスに向かうと、追いかけようとする下村のもとにハリソンからの電話が入る。すると間もなく、下村はハリソンが手配した男たちに誘拐されてしまう。一方、倉持は辻本家の墓を特定していた。
商談と自殺
アビルホールディングスの会議室で、拓海、後藤、アビルホールディングスの社長・阿比留(安井順平)と、青柳ら石洋ハウスのメンバーとの商談が始まる。拓海は石洋ハウスの想定金額よりも高い金額を提示し、交渉が繰り返される。
拓海は石洋ハウスに、2週間で契約と支払いを済ませることを条件に提示する。青柳はそれを承諾する一方で、早急な川井との立会いと光庵寺内の案内を条件に提示する。すると拓海はそれを承諾する代わりに、契約と決済を済ませた後での面会を条件に出す。
熱海の旅館では、キャスティング担当の麗子が川井のなりすまし役を探していた。麗子が目星をつけたのは、谷口淑恵(小林麻子)という清掃員のシングルマザーだ。彼女には心臓の病気で入院中の息子がおり、息子のためなら何でもする覚悟があるという。
誘拐された下村は、ハリソンの前に連れて行かれる。ハリソンは下村に飛び降りて自殺することを要求し、断れば家族を殺すと脅す。ハリソンに買収されて情報を漏らしたのが捜査二課の羽場理事官(岩谷健司)であることを知るが、為す術がない下村は自殺に追い込まれ、工場から落下して死亡する。
第5話のあらすじ
社内稟議
石洋ハウスでは、青柳が物件のプレゼンを進め、決済を推し進めようとする。しかし、同僚の須永は、100億円規模のプロジェクトでありながら、地主と対面せずに契約を進めることを危惧していた。須永が取締役らに忠告したことで、社内決済はなかなか進まない。
そんな中、青柳は社長の安倍川に呼び出され、事情を説明すると、安倍川は青柳と一緒に現地を視察する。安倍川は、社長である自分が現地を視察済みであることを稟議書にメモ書きすることで、取締役らの押印を促すことになると青柳に助言する。さらにメモ書きを後で消すことで、通常の手順で稟議が行われたことになる。
青柳はその通りにメモ書きを添えて稟議書を回し、社内決済を通してひとまず安堵する。
倉持の捜査
下村の葬儀が行われる。現場に遺書があったことで、下村は自殺とみなされていた。しかし、倉持は下村が自殺したとは思えず、下村の自宅を訪ねる。下村の妻は、「夫が書いたとは思えない」と遺書への違和感を明かし、生前の下村から渡されていた、何かがあった時の連絡先を倉持に手渡す。
倉持は名刺の人物、久保田昌志(オクイシュージ)と連絡を取る。情報屋である久保田は下村の死を知り、二人は協力して下村が最後まで捜査していたハリソンを調べることになる。
その後、久保田は拓海と父親をだました地面師の西谷、本名・佐伯一真(赤堀雅秋)の居場所を掴む。佐伯は辻本親子の事件後に揉め事を起こし、誰かに殺されかけたことでフィリピンのマニラに逃亡していた。
一方、倉持は拓海の家族の命日に墓を張り込み、墓参りにやってきた拓海に声をかける。倉持は半年前のマイクホームズ事件で、拓海が地面師詐欺を働いたことを問い詰める。
第6話のあらすじ
なりすまし役の交代
倉持は、拓海が地面師になり、自分をだました地面師に復讐しようとしていると問い詰め、拓海の父親・正海に面会し、息子が犯罪に加担しないように頼まれたことを明かす。しかし、拓海は倉持を振り払い、去っていく。一方で、倉持は拓海の車に発信機を取り付け、位置情報を探知していた。
事務所に戻った拓海は、なりすまし役の谷口が、息子の病死によって参加できなくなったことを知らされる。石洋ハウスとの面会が翌日に控える中、代役も間に合わず、チームは対応を迫られていた。
後藤は麗子がなりすまし役になることを提案するが、麗子は断固拒否する。しかし、ハリソンが麗子の髪の毛を掴んで脅迫すると、やむを得ず麗子は川井のなりすまし役を引き受けることにする。
想定外の事態
最終契約日の早朝、拓海の手配によって、ホストの楓と川井は沖縄旅行へ向かう。一方、拓海と後藤、麗子は最終契約の準備を進めていた。そんな中、那覇空港に着いた楓と川井の前に、竹下が現れる。竹下は楓をトイレで殺害し、川井に東京に戻るように脅迫する。
拓海はハリソンから連絡を受け、川井が東京に戻ってくることを知らされる。一方、ハリソンは竹下の裏切りを予測し、彼を尾行して沖縄で身柄を確保していた。
竹下はハリソンに裏切った理由を尋ねられると、計画が成功すればハリソンが自分を殺すことを見抜いており、その前に計画を潰そうとしたと明かす。ハリソンは竹下の顔面を踏み潰して殺害する。
一方、石洋ハウスとの最終契約が始まり、川井になりすました麗子は石洋ハウス側の本人確認作業を受ける。麗子は光庵寺の創建年数を問われ、答えられずにいたが、拓海がフォローし、危機を回避する。本人確認を無事に終え、一行は光庵寺での立会いへと向かう。
拓海は羽田空港にオロチを待機させ、川井を足止めさせようとしていた。しかし、オロチは川井を取り逃がし、光庵寺に戻ろうとする川井をタクシーで追いかけるが、焦ってドライバーのハンドル操作を邪魔したことで、交通事故を起こしてしまう。
第7話(最終話)のあらすじ
100億の地面師詐欺
オロチの交通事故により、川井の足止めが失敗する中、青柳たち石洋ハウスのメンバーは光庵寺の下見を始める。
川井になりすましている麗子は、青柳から手紙を渡される。その手紙は、川井本人が青柳宛に送ったもので、土地を売るつもりがないこと、取引が事実無根であると書かれていた。
後藤は、競合他社が送りつけた怪文書だと弁明するが、青柳はその真意を麗子に確かめようと迫る。すると麗子は「嘘をついていた」と涙を流し、寺の重要文化財が本尊ではなく、本堂の裏手に安置されている五智如来であることを明かす。一般公開していない五智如来を見せた上で、手紙を出していないことを主張し、青柳らを納得させる。
石洋ハウスによる光庵寺の下見が終わり、寺を後にしようとすると、そのタイミングで川井本人が乗ったタクシーが到着する。拓海、後藤、麗子の三人は急いで寺の門を閉じ、麗子は間一髪で川井本人との接触を回避することができた。
その後、石洋ハウスでの売買契約を締結し、拓海らは100億円もの代金を手にする。金はすぐにハリソンによって資金洗浄が進められる。拓海は、楓を殺して川井を東京へ戻したのが竹下であることを知る。
拓海が帰宅すると、尾行していた倉持が自宅前に現れる。倉持は、拓海をだました西谷の本名と居場所を告げ、辻本親子をだました事件がハリソンの計画だったことを明かす。さらに、ハリソンが仕事を終えた詐欺仲間を殺していることで、拓海も殺される可能性があると伝える。
事件の結末とその後
青柳と石洋ハウスのメンバーは、代替となる土地を手に入れたことで喜びを噛みしめていた。しかし、後日、川井が自分の土地が売りに出されていることを知り、石洋ハウスに法務局から土地の所有権移転申請が却下された連絡が入る。
青柳は急いで光庵寺へ向かい、住職の川井と対面して驚愕する。青柳は自分がだまされるわけがないと馬鹿にしていた地面師詐欺被害に遭ったのだ。絶望した青柳は放心状態で道路へ飛び出し、車に轢かれて死亡する。その場には不気味に佇むハリソンの姿があった。
数日後、拓海は入院するオロチを見舞いに行き、取り分を渡す。オロチは竹下が死んだことを知らない。その後、拓海は海外へ逃亡する予定のハリソンのもとへ向かう。
ハリソンは、拓海の仕事ぶりを評価し、「もっと先に行ける」と、今後も仕事をしたい旨を伝える。一方で、チームを抜けていた後藤と麗子は、ハリソンの手配した人間に殺されていた。殺される直前、後藤は家族との海外移住を計画し、麗子は谷口に金を渡していた。
拓海がハリソンに父の事件を仕組んだことを問い詰めると、ハリソンは認める一方で、ハリソンは拓海が自分と同じ人間であると感じ、「育てたいと思った」と伝える。すると拓海は「俺は地面師じゃない」と、ハリソンに拳銃を突きつける。
しかし、拓海は突如として現れたオロチに背中を刺されてしまう。ハリソンは地面師になりたいというオロチを利用して、拓海を襲わせたのだ。しかしハリソンはすぐにオロチを銃で殺し、拓海を殺そうとする。
しかし拳銃は弾切れとなり、ハリソンと拓海は肉弾戦を繰り広げる。再び拓海が追い詰められると、倉持が現れる。倉持はハリソンを押さえつけて銃を突きつけるが、ハリソンは手榴弾を投げ、部屋を爆発させる。
後日、拓海は警察病院に入院し、退院後は事情聴取されることになる。
大手企業である石洋ハウスが地面師詐欺被害に遭ったことは、大々的に報道される。仲介業者のアビルホールディングスへ流れた10億円は回収することができたが、地面師グループ(ハリソン)に流れた100億円は未回収のままだ。
倉持は拓海に地面師になった理由を尋ねると、拓海は「現実から逃げて嘘の世界で生きたかった、地面師にのめり込んでいた」と答える。一方、現場から逃げ出していたハリソンは、どこかの雪山でハンティングしている。