ネタバレ考察『インサイド・ヘッド２』新キャラの感情は厄介

今回ご紹介する映画は『インサイド・ヘッド２』です。

本記事では、ディズニー／ピクサー映画『インサイド・ヘッド２』をネタバレありで観た感想・考察、あらすじ解説します。

まめもやし

傑作だった第１作の続編！思春期に突入したライリーの感情を丁寧に映像化しています！

前作の解説・考察は以下の記事からチェックできます！

『インサイド・ヘッド２』作品情報・配信・予告・評価

『インサイド・ヘッド２』

あらすじ

子どもの頃から少女ライリーを見守ってきた頭の中の感情たち。ある日、高校入学を控えたライリーの中に、シンパイ率いる＜大人の感情＞たちが現れる。

5段階評価

予告編

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作品情報

タイトル	インサイド・ヘッド２
原題	Inside Out 2
監督	ケルシー・マン
脚本	メグ・レフォーブ、デイブ・ホルスタイン
出演	エイミー・ポーラー マヤ・ホーク
音楽	アンドレア・ダッツマン
編集	マウリッサ・ホルビッツ
製作国	アメリカ
製作年	2024年
上映時間	96分

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『インサイド・ヘッド２』監督・スタッフ

監督は前作のピート・ドクターに代わり、長編監督デビューとなるケルシー・マン。

脚本は前作に引き続き、メグ・レフォーブが参加しています。前作の監督だったピート・ドクターは、エグゼクティブプロデューサーとして名を連ねていて、ライリーの父親の頭の中のイカリの声優としても参加しています。

音楽は前作のマイケル・ジアッチーノに代わり、アンドレア・ダッツマンが担当。彼女はピクサーの長編映画の音楽を担当した初の女性となりました。

『インサイド・ヘッド２』キャスト・キャラクター解説

前作に引き続きのキャラクター

キャラクター	役名／キャスト／役柄
	ライリー（ケンジントン・トールマン／横溝菜帆） 高校入学を目前に控えた女の子。アイスホッケーが好きで、友達とも仲良く過ごしているが、思春期が訪れる。
	ヨロコビ（エイミー・ポーラー／小清水亜美） ライリーの心の中の「喜び」の感情。いつもポジティブでリーダー的存在だが、空気が読めないこともある。
	カナシミ（フィリス・スミス／大竹しのぶ） ライリーの心の中の「悲しみ」の感情。内気で泣き虫だが、優しくて仲間思い。
	イカリ（ルイス・ブラック／浦山迅） ライリーの心の中の「怒り」の感情。熱い闘争心を持ち、怒ったら止められない。
	ビビリ（トニー・ヘイル／落合弘治） ライリーの心の中の「恐怖」の感情。危険を察知して素早く対応する。
	ムカムカ（ライザ・ラピラ／小松由佳） ライリーの心の中の「苛立ち」の感情。嫌悪するものを素早く拒絶する。毒舌。

ヨロコビ役は、前作で吹き替えを担当した故・竹内結子に代わり、小清水亜美が配役。（『スイートプリキュア♪』北条響 / キュアメロディ役『コードギアス反逆のルルーシュ』紅月カレン役など）

成長したライリーの吹き替えは、横溝菜帆が配役。（実写映画『魔女の宅急便』キキの幼少期役、『グリンチ』シンディ・ルーなど）その他の吹き替えキャストは、前作から続投しています。

一方、本国アメリカの声優は、ヨロコビ、カナシミ、イカリが続投している一方で、ムカムカ役はミンディ・カリングからライザ・ラピラへ、ビビリ役はビル・ヘイダーからトニー・ヘイルへ代わっています。いずれもギャラを巡って折り合いがつかなかったようです。トニー・ヘイルは、『トイ・ストーリー４』のフォーキー役としても知られていますね。

新しく加わったキャラクター

キャラクター	役名／キャスト／役柄
	シンパイ（マヤ・ホーク／多部未華子） ライリーの心の中の「心配」の感情。将来を心配して想像し、先回りしようとする。
	ハズカシ（ポール・ウォルター・ハウザー／マヂカルラブリー村上） ライリーの心の中の「羞恥心」の感情。
	イイナー（アヨ・エデビリ／花澤香菜） ライリーの心の中の「羨望」の感情。
	ダリィ（アデル・エグザルホプロス／坂本真綾） ライリーの心の中の「倦怠」の感情。スマホのコントロールで指令台を操作する。
	ランス・スラッシュブレード（ヨン・イェア／中村悠一） ライリーが好きなゲームに登場するイケメンキャラ。しかし必殺技はショボい。
	ブルーフィー（ロン・ファンチェス／武内駿輔） ライリーが幼少期に見ていた子供番組に登場する愉快な犬のキャラ。
	ポーチー（ジェームズ・オースティン・ジョンソン／花江夏樹） ブルーフィーが腰に巻いている黄色いポーチ。中からいろんなアイテムを取り出せる。

【ネタバレ考察】思春期と自分らしさ

前作『インサイド・ヘッド』では、少女ライリーの心の中に生まれた5つの感情を通じて、11歳のライリーが住み慣れたミネソタからサンフランシスコへ引っ越したことで、新しい環境になじめないでいる様子が描かれました。

その中でヨロコビを始めたとした感情たちは、ライリーを悲しませてしまうカナシミの役割がわからず、彼女を遠ざけ、封じ込めていました。しかし、ヨロコビはカナシミとの冒険を経て、悲しむことの大切さを知り、幸せな思い出の中にも悲しい感情が含まれていることを学びます。

繰り返すヨロコビの誤った判断

(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

そして今作『インサイド・ヘッド２』の冒頭でライリーは13歳となりました。これまで通り、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカの5つの感情たちは、ライリーの成長とともに見守っています。

ここで今作で新しく登場するのが、「ライリーの泉」です。英語のセリフでは「Sense of Self（自己意識）」と言っていますが、要するにこれは、ライリーらしさを形成する人格の樹のようなもの。

この樹の源となる泉が、司令室からエレベーターで地下深いところまで下りた場所にあります。前作で登場した、「記憶のゴミ捨て場」よりも深い場所です。

このライリーの泉には、ヨロコビが司令室から運んだライリーの記憶と感情のガラス球が置かれています。これらは『アバター』に登場する「魂の木」のような形で立ち上がり、司令室の台座へ接続されます。

ここでヨロコビのポジティブの押し付けとも言える悪い癖が再び現れていることが明かされます。ヨロコビは、ライリーの泉に運ぶ記憶をポジティブなものばかり厳選しているのです。

さらにヨロコビは新たなシステムを開発し、ライリーの失敗した記憶やネガティブな感情のガラス球を不要と判断し、記憶の保管庫へ送らずに心の世界の遠い場所に放り込んでいました。前作の感想でも書きましたが、ヨロコビの有害なポジティブさが再び表面化しています。

新たな感情たちの登場

(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

そんな中、前作のラストで登場していた司令台の「思春期ボタン」のアラームが鳴り、司令室に新たな4つの感情たち【シンパイ／ハズカシ／イイナー／ダリィ】が登場します。高校進学を控えたライリーに、思春期という多感な時期が到来したのです。顔にはニキビもできています。

ライリーの思春期物語の舞台となるのは、アイスホッケーのサマーキャンプ。ライリーと親友のグレイスとブリーの3人は、ホッケーの才能を評価されてキャンプへ招待されました。

ライリーは憧れの高校アイスホッケーチーム「ファイヤーホークス」からの誘いに、期待を胸に舞い上がりますが、道中の車内でグレイスとブリーが別の高校への進学を考えていることを知り、ショックを受けます。以降、キャンプ中のライリーは、親友たちと過ごす時間と、憧れの選手ヴァルたちがいるファイヤーホークスと過ごす時間を天秤にかけることになります。

一方、ライリーの頭の中では、シンパイが指令台の実権を握ると、シンパイはヨロコビが作ったライリーの「自己意識」を心の奥地へと送ってしまいます。さらに、ヨロコビたちはガラス瓶に放り込まれ、文字通りの「抑圧された感情」となり、ライリーが秘密にしておきたいものを保管している「記憶の隠し金庫」に放り込まれてしまいます。

シンパイが恐れているのは、ライリーが孤独になること。それを避けるためには、ファイヤーホークスたちに嫌われるわけにはいかないのです。そのためにライリーは、自分が好きなバンドの皮肉を言ったり、美味しいと思っていないプロテインバーを食べたり、挙げ句の果てには、ロバーツコーチのメモを盗み見るために部屋に侵入してしまいます。

極度の心配・不安がもたらしたこと

ロバーツコーチのメモには、ライリーが「まだ実力不足である」と書かれていました。これを知ったライリーはさらに心配を募らせていきます。ファイヤーホークスに入ることに執着していたライリーは、最終日の練習試合で能力を示そうと、得点を取るために独りよがりなプレーをして、グレイスと衝突してしまいます。

ライリーがペナルティボックスに送られると、頭の中のシンパイは、埋め合わせをしようと、指令台を嵐のようなスピードで操作します。しかし、シンパイが作った「自己意識」の樹は、最終的にライリーに「私はダメな人」という意識を植え付けることになってしまうのです。

それにより、ライリーはペナルティボックス内でパニック発作を起こしてしまいます。

ライリーも完璧じゃない

(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

心の奥地にたどり着いたヨロコビたちは、ヨロコビが不要と判断して捨てた記憶の球が大きな山を成していることを知ります。その山の中からヨロコビが作ったライリーの「自己意識」を発見すると、ヨロコビたちは、ポーチーのダイナマイトによって山を崩し、球が生み出す洪水に乗ってライリーの泉まで戻ってきました。

司令室に戻ったヨロコビは、シンパイの自己意識を外して自分が作った自己意識に差し替えます。しかし、それでもライリーのパニック発作は止めることができませんでした。

この時、ヨロコビはシンパイに「ライリーらしさはあなたが決めるものではない」と伝えています。その言葉を受けて反省したシンパイは、謝罪し、「ライリーらしさは私たちが決めるものじゃなかった」と言います。この言葉をきっかけに、ヨロコビは自分の言葉が、自分自身にも当てはまることに気づくのです。

ヨロコビは、ライリーの失敗した記憶やネガティブな記憶を、心の奥地に送って保管しませんでした。その行動自体が、ヨロコビがライリーらしさを「いい人間」としての一面的な自己意識として苦しめていたのです。

その後、ヨロコビが奥地に送った記憶の球が洪水としてライリーの泉に流れ込んだことで、ライリーの新たな自己意識が形成されます。それこそが、いい人のときもあれば、ダメなときもある、本当のライリーらしさなのです。

いろんな感情たち、そのすべてがライリーらしさを形成する

(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

ペナルティボックスにいたライリーのもとに、グレイスとブリーがやってくると、2人に心配されて声をかけられたライリーは、「大丈夫」と言った後、すぐに「本当は、全然大丈夫じゃない」と本当の気持ちを打ち明けます。

ライリーは2人が違う高校に行くと聞いた時にショックだったことを伝え、自分の振る舞いを謝ります。するとグレイスとブリーはライリーを許し、3人はこれからもずっと親友でいることを約束します。

その後、時間が経過し、ライリーは、グレイスとブリーとの友情を続けながら、ファイヤーホークスに入団できるかどうかのメールを待っていました。この時ヴァルは、「今年ダメだったとしても、来年もある」とライリーをフォローしています。人生はいつだってやり直すことができるのです。もうライリーは一人になることを心配しなくても大丈夫になっていました。

頭の中の感情たちは、ライリーが成績優秀であること、ホッケーが上手いこと、飽きっぽいけどクリエイティブな才能があること、時々間違ったことをすること、皮肉を言ったりすること、ライリーの良い面も悪い面もすべて含めて、ライリーのことが大好きだと改めて気づいたのです。

映画は、入団の合否を知らせるメールを受け取ったライリーの嬉しそうな表情で幕を閉じます。

【ネタバレ解説】小ネタ・トリビア解説

ランス・スラッシュブレード

ライリーの心の中にある、秘密の金庫の中で登場したランス・スラッシュブレード。彼は、ライリーが好きなゲームに登場するイケメンキャラクターです。

彼の特徴（髪型と剣、回転攻撃）は『ファイナルファンタジー』シリーズのクラウドとセフィロス、ソラを合わせたようで、2000年代初頭のビデオゲームのスタイルで描かれています。そのため、ヨロコビたちに比べて映像の解像度が低くなっていたり、動きが2D的になっています。

さらに、ランスが持っている剣のガード（鍔）の形状は、ライリーの大好きなアイスホッケーのスティックのデザインになっています。

ライリーの背番号

ライリーのホッケーチームでの背番号は「28」ですが、これは本作『インサイド・ヘッド２』がディズニー／ピクサー長編アニメーション映画の28作目であることに関連しています。

感情たちのベッドルーム

前作では感情たちがどこで寝ているかは描かれませんでしたが、今作では、ヨロコビたち5つの感情たちが同じベッドルームで寝ていることが判明しました。

ベッドルームにはすべてのピクサー映画に登場しているピザ・プラネットのトラックの置物があり、ヨロコビの寝室には、前作で登場したライリーのイマジナリーフレンド、ビンボンのフィギュアの姿も確認できます。また、カナシミがメガネを外して寝ている姿も見られました。

ナツカシ

(C)2024 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

司令室の階下へ続く部屋から出てきたのが、ナツカシ（Nostalgia）です。おばあさんの見た目で、30秒前に新しい感情たちが司令室にやってきたことを懐かしむようにして登場しました。

しかしシンパイからは、「出てくるのが早すぎるよ。あと10年はあるし、2回の卒業式と親友の結婚式もある。」と言われてしまいます。ナツカシが登場するのは、『インサイド・ヘッド５』くらいになる？

シンパイのマインドワーカーたち

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ヨロコビたちがイマジネーションランドにたどり着くと、そこは以前と様変わりしていました。「枕の砦（Fort Pillowton）」の内部は、シンパイによって働かされているマインドワーカーのアニメーターたちが、「考えられる未来に起こる最悪のシナリオ」を送るように命じられていました。

このシーン、ケルシー・マン監督はNew York Timesのインタビューで、4つの映画『フィールド・オブ・ドリームス』『ザ・エージェント』『ノーマ・レイ』『ネットワーク』からインスピレーションを得ていると明かしています。

また、アニメーターの一人が指示を出すシンパイが映る画面に向かって椅子を投げるシーンは、Apple社の1984年のマッキントッシュのCMをオマージュしています。このCMは、ジョージ・オーウェルの名著『1984』にインスパイアされています。

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さらに、アニメーターの中には、2022年に病死したピクサー・アニメーション・スタジオのアニメーターのラルフ・エグルストンをモチーフにしたキャラクターも登場しています。彼は数々のピクサー映画でプロダクション・デザイナーを務め、『トイ・ストーリー』『ファインディング・ニモ』『インサイド・ヘッド』で、3度アニー賞を受賞しています。

企画段階では最大で27つの感情がアイデアにあった

『インサイド・ヘッド２』では新たに加わった4つの感情を含めて、合計で9つのライリーの感情が表現されていますが、実は企画段階では、前作の監督ピート・ドクターが提案していた「5〜27の感情」というアイデアが取り入れられていました。

感情が多すぎると、すべてを描ききれなくなってしまうことから、結果的に、9つの感情となりましたが、最終的に削除されるまで、さまざまな感情の候補が登場する可能性がありました。

物語の心理学者による裏付け

頭の中の感情を描く『インサイド・ヘッド』シリーズですが、制作にあたり、専門家のアドバイザーとして心理学者もクリエイティブチームに参加しています。

前作では、心理学者のポール・エクマンが、今作では、10代の若者たちの感情に関する科学に精通している心理学者のリサ・ダモアが参加しています。ダモアは、ライリーがホッケーチームに入ろうとする本作の物語の中で、特にテーマである「思春期の不安や完璧主義」についての議論を重ね、科学的にも正しい感情表現になったと明かしています。

さらに前作に引き続き、心理コンサルタントしてカリフォルニア大学バークレー校の心理学教授であるダッチャー・ケルトナーも参加しています。

エンドロールの隠しメッセージ

前作の監督ピート・ドクターをはじめとして、ピクサー映画の制作者たちは、自身の体験をストーリーに反映させることがあることでも知られています。

『インサイド・ヘッド２』においても、監督のケルシー・マンと、プロデューサーのマーク・ニールセンは、本作の製作がコロナ禍のロックダウン中にストーリー開発が始まったため、それぞれの娘との生活を研究し、映画制作のインスピレーションを得たと明かしています。

『インサイド・ヘッド』シリーズのエンドロールには、制作者たちからの献辞のメッセージが残されています。

this film is dedicated to out kids. we love you just he way you are.

この映画は私たちの子供たちに捧げます。ありのままの君が大好きだよ。

ちなみに前作『インサイド・ヘッド』はこちら。

this film is dedicated to our kids. please don’t grow up. ever.

この映画は私たちの子供たちに捧げます。どうか大人にならないで。