今回ご紹介する映画は『浅田家!』です。
三重県津市出身の写真家・浅田政志さんの写真集を原案に、中野量太監督が映画化した作品。
主演を嵐の二宮和也さんが務め、妻夫木聡さんや菅田将暉さんといった注目のキャスト陣が作品を彩ります。
映画『浅田家!』の作品情報とあらすじ
作品情報
原題 | 浅田家 |
---|---|
監督 | 中野量太 |
原作・脚本 | 原案:浅田政志「浅田家」「アルバムのチカラ」 |
出演 | 二宮和也 妻夫木聡 |
製作国 | 日本 |
製作年 | 2020年 |
上映時間 | 127分 |
おすすめ度 | [jinstar4.0 color="#ffc32c" size="16px"](4.0点/5点) |
あらすじ
写真好きの父からカメラを譲ってもらった政志は、昔から写真を撮るのが大好きだった。
彼が学校の卒業制作のテーマに選んだのは、家族写真。
家族全員を巻き込んで、それぞれのなりたかった職業にコスプレして撮影した写真集が結果的に写真界の芥川賞を受賞するまでに…。
そんな中、東日本大震災が起こる…。
映画『浅田家!』のスタッフ
中野量太監督
©️2020「浅田家!」製作委員会
本作を手がけたのは、2016年の『湯を沸かすほどの熱い愛』で、監督・脚本として商業映画デビューした中野量太監督。
日本アカデミー賞で6部門受賞など、数々の賞を受賞し、家族の愛をテーマに意外性のある展開で多くの人を惹きつけました。
一本前の作品となる『長いお別れ』でも、認知症の父を通して家族を描いていた中野監督。
原案:浅田政志
©️2020「浅田家!」製作委員会
本作のモデルでもあるのが、写真家の浅田政志さん。
彼の家族を写した『浅田家』と、東日本大震災での写真洗浄活動をする人糸を2年間に渡って写した『アルバムのチカラ』が本作品の原案となっています。
映画『浅田家!』のキャスト
役名 | キャスト |
浅田政志 | 二宮和也 |
浅田幸宏 | 妻夫木聡 |
浅田章 | 平田満 |
浅田順子 | 風吹ジュン |
川上若菜 | 黒木華 |
小野陽介 | 菅田将暉 |
二宮和也
©️2020「浅田家!」製作委員会
浅田家の次男で本作の主人公、政志役を務めたのは「嵐」の二宮和也さん。
アイドルではありますが、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』でハリウッド映画に出演するなど、演技面でも高い評価を受けている俳優です。
- 『青の炎』
- 『硫黄島からの手紙』
- 『検察側の罪人』
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] 非常に自然な演技で、いい意味でアイドルさを消してドラマっぽく見えない演技をしていました。 [/chat]
妻夫木聡
©️2020「浅田家!」製作委員会
浅田家の長男、幸宏には妻夫木聡さんが配役。
本作で一番しっくり来ていると感じるほど、彼の印象にピッタリの役柄で、自由に生きる弟を支える優しい兄を好演していました。
- 『泣き虫しょったんの奇跡』
- 『来る』
- 『一度死んでみた』
平田満
©️2020「浅田家!」製作委員会
政志の父、章には平田満さんが配役。
いわゆる父親像とはちょっと違う浅田家の父を優しく演じていました。
- 『22年目の告白-私が殺人犯です-』
- 『Fukushima 50』
風吹ジュン
©️2020「浅田家!」製作委員会
政志の母、順子役には風吹ジュンさんが配役。
政志の良き理解者で、彼の背中をそっと押してくれる存在を印象的に演じています。
- 『海街diary』
- 『家族はつらいよ』
黒木華
©️2020「浅田家!」製作委員会
政志の幼なじみ、若菜役には黒木華さんが配役。
上京した政志を優しく支え、時に煮え切らない政志をピシッとさせる役割を好演しています。
- 『日々是好日』
- 『甘いお酒でうがい』
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] キュートでありながら、芯のある女性役が非常にハマる、好きな俳優のひとりです。 [/chat]
菅田将暉
©️2020「浅田家!」製作委員会
震災地で写真洗浄のボランティアをする学生役には、菅田将暉さんが配役。
若手俳優でずば抜けて演技が上手いことで知られていますが、本作でもいい意味でキラキラを消していて、非常に役柄に馴染んでいました。
- 『アルキメデスの大戦』
- 『糸』
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] 個人的に主役の菅田将暉さんよりも、本作のような脇役の方が好きなんですよね。 [/chat]
【ネタバレ感想】写真を撮ることの意味の変化
©️2020「浅田家!」製作委員会
※以下、映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。
浅田家という非常にコミカルで特徴的な家族を描いた本作ですが、大きく分けて前半と後半の2パートに分かれて、物語が進んでいきました。
- 前半パート:浅田家と家族写真
- ターニングポイント:佐伯家の家族写真
- 後半パート:東日本大震災と写真洗浄、内海家の少女との出会い
具体的にいえば、上記のようになっています。
そして、前半と後半をつなぐ、政志の写真に対する意識のターニングポイントとなる佐伯家の家族写真が、後半以降の物語を効果的に印象づける役割を果たしていました。
前半パート:浅田家と家族写真
©️2020「浅田家!」製作委員会
前半パートでは、政志が「浅田家」の家族写真を撮るまでと、写真家となっていくまでを描いています。
父親から譲り受けたカメラがきっかけで写真家への道を歩んでいく政志。
19歳で写真の専門学校へ入り、卒業が危ぶまれた22歳の時にタトゥーを体に入れて、突然帰ってくるのでした。
卒業をかけた「一生にあと一枚しか、写真を撮れないとしたら?」という卒業制作に対する政志の答えが、「家族写真」だったのです。
そこから、しばしのパチプロ生活を経て、父親からの「なりたい自分になれ」という言葉をきっかけとして見出したのが、家族それぞれのなりたいものを写真で叶えていくという「浅田家」の家族写真でした。
そこから東京へ出た政志は、幼なじみの若菜の家に転がり込み、彼女の協力を受けて個展を開きます。
それがきっかけで小さな出版社と巡り会い、「浅田家」の写真集出版まで漕ぎ着けるものの、売れ行きは不調。
しかし、それが写真界の芥川賞・「木村伊兵衛写真賞」を受賞するのでした。
そして、写真集をきっかけに家族写真を撮る仕事を受けていくのです。
こうやって振り返ってみると、政志自身の才能ももちろんですが、彼が家族や幼なじみの力を借りて初めて「やりたいことができている」ということがよく分かります。
ターニングポイント:佐伯家の家族写真
後半パートへの重要な橋渡しの役割となるのが、佐伯家の家族写真シーン。
家族写真をとる写真家として、いろんな家族写真を撮ってきた政志ですが、病気と闘う子どもを持つ家族・佐伯家の写真を撮ることになるのです。
この家族写真を撮るとき、政志の目には大粒の涙が浮かび、シャッターボタンを押すことをためらうシーンが描かれました。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] このシーンが効果的に後半パートの東日本大震災での活動へとつながっていくのでした。 [/chat]
後半パート:東日本大震災と写真洗浄、内海家の少女との出会い
東日本大震災が発生したときに富山にいた政志は、以前に東北で家族写真を撮った高原家が心配になり、被災地へ訪れます。
そこで、津波で流された写真を洗浄するボランティアをしている大学院生の小野さんと出会うのでした。
写真洗浄のボランティアに参加した政志は、小野さんや外川さんらとともに写真保管所を立ち上げ、そこで父親が津波で見つからない少女・内海莉子と出会います。
彼女は政志が家族写真を撮っていることを知ると、自分の家族写真を撮って欲しいというのですが、それに対する政志の答えは「撮れやんよ…」というものでした。
政志が出した答え
ボランティアを続ける中、父の72歳の誕生祝いのために帰省した政志。しかし、父は脳卒中で倒れしまいます。
父の回復を願う中で、幼少期に父が撮ってくれた家族写真を思い出し、莉子の父親と同様に、撮る側だった政志の父親も写真が少なかったことに気付くのでした。
そこで政志は自分が「写真を撮ることの意味」を感じていきます。
病床に伏す父親を残し、被災地に戻った政志は、莉子に内海家の家族写真を撮ることを伝えます。
政志はその家族写真に、撮る側だった莉子の父親の姿を見出すのでした。
【ネタバレ考察】 写真がもつ役割とは
©️2020「浅田家!」製作委員会
浅田家での家族写真、ターニングポイントとなる佐伯家の家族写真、そして東日本大震災での写真洗浄ボランティアと、父を探す少女・莉子の家族写真。
僕が考える写真の役割は大きく分けて次の2つにあると感じます。
- 記録としての写真
- 記憶としての写真
記録・記憶としての写真の役割
まずは、記録としての写真。
その瞬間を切り取り、記録として残すという意味での役割です。
つづいて、記憶としての写真。
記録として残した写真を見ることで、その当時の時間を記憶として思い出す役割です。
だからこそ、父親が脳卒中で倒れたときに「もう家族写真は撮れないかも」と言ったのです。
しかし、父・章は政志がまた家族写真を撮ってくれることを楽しみにしていました。
さらには、被災地での写真洗浄ボランティアを通し、写真を求める人々と触れ合います。
それらを通して、写真が「今」のためではなく、「未来」に向けたものであると感じていくのです。
政志はさらに、写真を撮るという行為自体をイベントとすることで、写真の持つ「記録と記憶」を密接に結びつけていたのだと感じました。
家族写真として時間をかけて作り込んで撮影することや、撮り方も多くがセルフタイマーを使っていることからもそれが感じられますね。
『浅田家!』では、「やりたいことをやっていた」政志が、写真家として自分が撮ることの意味を見出していった物語でした。
【まとめ】バランスの取れた心地良い一本
以上、実話を基にした映画『浅田家!』をご紹介しました。
前後半でのストーリーにギャップはありますが、全体的なコミカルさを残しつつ、しっかりと震災についても描ききっているのは見事でした。
ぜひ劇場で御覧ください!