ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム

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【全話ネタバレ】『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』感想・考察・解説|インドネシアのSFホラー

今回ご紹介する映画は『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』です。

インドネシアのホラー監督ジョコ・アンワルによるSF超常現象シリーズ。

本記事では、ネタバレありで『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』を観た感想・考察、あらすじを解説。

まめもやし
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『世にも奇妙な物語』や『ブラック・ミラー』『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』が好きな人は間違いなく楽しめる作品です!

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』作品情報・配信・予告・評価

ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム

5段階評価

あらすじ

現実の枠をこえた7つのストーリーを通して描かれる、科学では説明のつかない不思議な出来事。脚本・監督を務めるジョコ・アンワルが贈る、超常現象SFシリーズ。

作品情報

タイトルジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム
原題Joko Anwar's Nightmares and Daydreams
企画・制作ジョコ・アンワル、レイ・パクパハン、トミー・デウォ、ランドルフ・ザイニ
音楽ベンビ・グスティ、トニー・マール、アギ・ナロッタマ、トニー・ドウィ・セティアジ
撮影イカル・タンジュン
ファヒム・ラウヤン
編集ディンダ・アマンダ
ジョコ・アンワル
製作国インドネシア
製作年2024年
話数全7話

ポイント

ポイント

  • インドネシアの名ホラー監督ジョコ・アンワルの超常現象SFシリーズ
  • ジャカルタを舞台にした異なる年代の全7話のオムニバスと思いきや…

配信サイト

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シリーズの監督:ジョコ・アンワル

ジョコ・アンワル
photo by Netmediatama, CC BY 3.0
名前ジョコ・アンワル
生年月日1976年1月3日
出身インドネシア/北スマトラ

主な監督作

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』を手掛けたのは、インドネシアの映画監督ジョコ・アンワルです。

彼は映画監督になる前、ジャーナリストや映画評論家として活動していた経験があり、2003年の映画『アリサン!』で、監督のニア・ディナータと共同脚本を手掛けて脚光を浴びると、2005年にJanji Joniで映画監督デビューを果たしました。

「インドネシア史上、最も恐ろしいホラー映画」と言わしめた『夜霧のジョギジョギ』(1987)をリメイクした映画『悪魔の奴隷』を監督し、2017年のインドネシア観客動員No.1のメガヒットを記録しました。

HBOドラマでは、アジアを舞台にした超常現象やカルト信仰がテーマのアンソロジードラマ『フォークロア』を手掛けています。

まめもやし
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ジョコ・アンワル監督は、超常現象やオカルト描写が見事なんですよね!

キャスト・スタッフ・エピソード一覧

タイトル監督脚本長さ
1老人ホームジョコ・アンワルジョコ・アンワル62分
2孤児トミー・デウォラフキ・ヒダヤット46分
3詩と苦痛ランドルフ・ザイニジョコ・アンワル46分
4遭遇レイ・パクパハンジョコ・アンワル57分
5向こう側ランドルフ・ザイニジョコ・アンワル48分
6催眠状態レイ・パクパハンティア・ハシブアン49分
7私書箱ジョコ・アンワルジョコ・アンワル
ラフキ・ヒダヤット
52分
まめもやし
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個人的なおすすめエピソードランキングはこちら!

おすすめランキング

  • 第1位:詩と苦痛(第3話)
  • 第2位:向こう側(第5話)
  • 第3位:老人ホーム(第1話)
  • 第4位:私書箱(第7話)
  • 第5位:遭遇(第4話)
  • 第6位:孤児(第2話)
  • 第7位:催眠状態(第6話)

第3話と第5話は、独立したエピソードとしての面白さと、全体を通じた大きな物語としてみたときのバランスが絶妙でした。ただ、第3話はPOVでの虐待の場面があるのでフラッシュバックには要注意してください。

ネタバレあり

以下では、ドラマの結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

【ネタバレ考察・感想】ジャカルタを舞台にした人間と悪魔の戦い

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』
Netflix

アンソロジーと思いきや…

本シリーズは、それぞれのエピソードが独立したアンソロジー作品かと思いきや、エピソードを順番に見ていくと、年代がバラバラでありながら、同じジャカルタを舞台にしたつながりがあることに気づくと思います。

そう、このドラマシリーズは怪奇現象SFアンソロジードラマかと思いきや、世界征服を目論む地底都市アガルタのクリーチャーに立ち向かう、選ばれし人間たちの反逆の物語だったのです。

わかりやすいように、エピソードを年代順に並び替えて整理して考察していきます。

ポイント

  • 1985年(第4話):漁村で天使を見たワイユが全知全能を手にする
  • 1997年(第5話):デウィが悪魔に囚われた夫を亡くす
  • 2015年(第1話):パンジがクリーチャーのいる老人ホームを焼き払う
  • 2022年(第3話):作家のラニアが双子の妹を殺された悪魔に報復を誓う
  • 2022年(第6話):アリがデウィの催眠テストをクリアする
  • 2024年(第2話):孤児のシャフィンが養子の両親を亡くす
  • 2024年(第7話):ヴァルドヤが「抗体」に助けられ、チームに加わる

第4話のワイユのエピソードは、無私無欲のワイユが天使を目撃したことで、最終的に天使からすべての知恵を与えられるという物語でした。全エピソードを見た後で振り返ってみると、ワイユが天使を目撃したのは、天使がクリーチャー(悪魔)から地上を守るために、力を授けるにふさわしい人物を探していたのだと考えられます。

天使が「力をどう使うかはワイユ次第」と言っていたのも、来たるべき悪魔との戦いに備えろという意味だったのでしょう。ワイユは村と役所の衝突を止めた後、アガルタに対抗できる人間たち「抗体」を結成したのだと考えられます。

そして1997年、第5話のデウィの物語では、彼女の愛する夫がクリーチャーによって奪われる様子が描かれました。エピソード単体で見れば、失業と貧困によて精神障害を患う夫のメタファーとも受け取れる物語のバランスが見事です。

物語でデウィは、夫を守るためにクリーチャーと同様の音波攻撃を発したことが描かれています。恐らく、それを知ったワイユが彼女を「抗体」のメンバーにスカウトしたのでしょう。

2015年、第1話のタクシー運転手のパンジの物語では、彼は老人ホームに母親を預けざるを得ない状況になり、その過程で、老人ホームがひた隠しにする、若返りの儀式とクリーチャーの姿を目の当たりにしました。パンジは老人ホームとクリーチャーを燃やしますが、母親を失うことになります。

クリーチャーの存在を知り、倒すことができたパンジも、同様にその後、「抗体」にスカウトされたのでしょう。第7話の最終決戦では、パンジがワイユの傷を治している描写があり、これはパンジが若返りのクリーチャーに接続したことで、治癒能力(細胞の若返り)を手にしたとも考えられます。

2022年、第3話と第6話の物語は同じ年代です。作家のラニアは双子の妹をクリーチャーに殺され、報復を誓いました。一方、仕事を探しているアリは、デウィの催眠術のテストに合格します。2人とも同じ時期にスカウトされて「抗体」に加入したのでしょう。ラニアの妹を殺した夫アドリアンは、第7話のクリーチャーの1人として確認できます。

そして2024年、現在進行系の第2話と第7話のエピソード。第7話では、姉がクリーチャーに殺されたヴァルドヤが、彼女が持つ優れた目の力を評価され、「抗体」に助けられて加入しました。

一方で、第2話で養子の両親を亡くしたシャフィンの動向だけが謎のままです。エピソードの最後で彼が何らかの能力があることが示唆されています。シャフィンはアガルタのクリーチャーであることが濃厚ですが、もし続編があるならば、彼が敵となることが想像できます。

根底のテーマとつながり

先に記したように、本シリーズは、一見すると独立したエピソードのアンソロジー作品のように見えますが、実は超常現象を体験した登場人物たちが、未知との遭遇を通じて結束し、地球を守るという壮大なストーリーが明かされます。

それぞれのエピソードが独立して楽しめることに加え、物語全体が一つの大きなストーリーに繋がっていることにゾクゾクさせられます。さらに、各エピソードの裏テーマとして「貧困や経済格差」が根底にあり、登場人物たちの多くは経済的に困難な状況にあります。

「貧すれば鈍する」という言葉が示すように、経済的な危機は人々の判断力を鈍らせ、そこにクリーチャーたちの魔の手が忍び寄ります。インドネシアが舞台となるこの作品は、1985年から2024年までの間に起きたスハルト政権時代やアジア通貨危機、民主化の動きといった激動の時代を背景に描かれています。

例えば、第4話の舞台は1985年、スハルト政権下の「開発独裁」が続く時代です。人権侵害や汚職が横行し、反対意見の弾圧が常態化していたこの時代、村と役所の対立が描かれています。

開発独裁とは、経済発展のためには政治的安定が必要として、国民の政治参加を制限し独裁を正当化するものです。

第5話は1997年のアジア通貨危機が舞台。インドネシアも大きな打撃を受け、多くの人々が生活費の急騰に苦しみ、失業者が増え、貧困が広がりました。エピソードの中で、デウィの夫バンディはクリーチャーによって映画館に囚われますが、失業して家族を養えない後ろめたさから精神的に追い詰められた物語としても捉えられます。

また、第1話と第2話では親子関係の見捨てる、見捨てられる関係を老人ホームと孤児院で描き、第3話は家庭内暴力、第7話は単体のミステリーとしても十分に楽しめます。

このように、本シリーズはインドネシアの社会問題や歴史を背景にしつつ、独立したエピソードとしての魅力と、シリーズ全体での繋がりを楽しめる、非常に優れた構成のドラマでした。

確かに、ハリウッドの潤沢な予算がある作品と比べればCGに物足りなさを感じるかもしれませんが、それが全く気にならないレベルで、むしろ物語が突然始まり、その後のシュールなオープニングシークエンスまでの一連の流れも私はとても好きでした。

第1話:老人ホーム

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』第1話:老人ホーム
© Netflix

あらすじとラスト

2015年のジャカルタ。タクシー運転手のパンジは、富裕層向けの老人ホームに看護師のシティを送り届ける。パンジは自分の母親を入所させてもらえないかと頼むが、シティは「親を見捨てようとしてはいけない」と伝える。

一方、パンジのタクシーの常連客である看護師のナヤは、老人ホームのオーナーの孫であり、無料で優遇するから母親を施設に入れるように提案する。帰宅後、パンジは妻のララに老人ホームのことを話すが、ララはパンジの母ランティを見て、老人ホームに入れる提案を却下する。

しかしその後、2人が会話している間に、ランティがパンジとララの息子ハギを抱えたまま家の外に出てしまい、空を見せようとしてアパートの屋上の踊り場の椅子に放置してしまう。

ハギが突然いなくなったことで、パンジとララはパニックになり、アパート中を探し回る。すると戻ってきたランティはハギを連れて外に出たことを忘れており、屋上に行ったことを明かす。ハギは屋上から落ちそうになっていたが、ギリギリのところでララが間に合って引き止める。この一件で、2人はランティを老人ホームに入れることに同意する。

後日、ランティは老人ホームの待合室で、入所した母親に会おうとしているバンバンという男に出会う。看護師のシティはバンバンに、母親に会うには面会時間の夜になるまで待つように伝える。バンバンはパンジに、老人ホームが不吉な場所であることを打ち明け、母親を入れないように警告する。

その後、看護師のナヤに施設を案内されていたランティは、パンジが料理人である自分に働く場所を提供してくれたと思っていた。しかし、パンジが老人ホームに入所することを告げると、ランティはショックを受けて入所を拒否し、家に帰りたいと懇願するが、パンジは母の訴えを無視して去っていく。ララは母親を無理やり老人ホームに入れたことで、自分たちは地獄行きだと言う。

その夜、パンジはランティが老人ホームで惨殺される悪夢を見て目を覚まし、ランティを連れ戻すために老人ホームへと向かう。老人ホーム内でナヤに出会うと、彼女はパンジの感じる罪悪感が正常であると安心させようとする。

パンジはランティに会いたいと頼むが、ナヤはすでに寝ていると主張する。その後、パンジは施設を後にするふりをして、密かに老人ホーム内に戻り、ある部屋に侵入する。パンジはクローゼットに隠れると、部屋に来た男性は、黒いローブに身を包み、クローゼットの奥にある隠し部屋に入っていく。パンジは彼を追って隠し部屋に入ると、ある場所でバンバンがベッドに拘束されている姿を目撃する。

すると3人の黒いローブを着た人間が現れて、パンジはとっさにバンバンのベッドの下に隠れる。3人はバンバンのベッドを別の部屋に運び込む。そこには大勢の黒いローブを着た人間たちの姿があった。

バンバンはそこで彼の母親ケマラと再会するが、ケマラは老人ホームに入れて自分を見捨てたバンバンを罵倒する。ローブの人間たちのリーダーであるノトは、バンバンとケマラを人面蜘蛛のような2体のクリーチャーの前に連れて行かせる。バンバンとケマラはクリーチャーの触手に接続され、「囁く者」と呼ばれる人物がバンバンの耳元で囁くと、バンバンは抵抗をやめる。

すると、バンバンは抜け殻のような姿になり、一方でケマラは若返っていく。その一部始終を見ていたパンジはその場から逃げ出すが、部屋にスマホを落としていた。

パンジは逃げようとするが、出口が見つからず、道中で看護師のシティに出会う。パンジがシティを問い詰めると、彼女は老人ホームで暮らす人々が裕福で何世代にもわたって生き続けていることを明かす。施設は機能を維持するために、定期的にバンバンやパンジの母のような、裕福ではなく働かせることに適した人材を招き入れていた。

さらにシティは、自分は103歳で、若さを取り戻すために子供を犠牲にせざるを得なかったと打ち明け、シティは儀式をやめさせようとしたが、抵抗したものは「追放者」として醜いクリーチャーにされてしまったと明かす。

シティはパンジにローブを渡し、匂いを追って追跡してくる「追放者」たちに用心するように伝える。その後、パンジはある部屋で母親ランティを見つけるが、ランティは認知症が進行し、パンジを忘れていた。

パンジはランティに置き去りにしたことを謝り、一緒に出て行くよう伝えるが、ランティはベッドに鎖でつながれていた。パンジは鍵を探しに出かけるが、「追放者」たちに出くわしてしまう。すると間一髪のところでシティが身代わりになり、パンジは母親を解放して逃げ出そうとするが、ノトらに見つかってしまう。

パンジとランティはクリーチャーのもとに連れて行かれ、頭部を接続されてしまう。パンジはランティにこれが望みなのかと尋ねると、ランティは「ハギを大事にしろ」と伝える。パンジはその言葉を聞いて、ポケットに入っていたライターでクリーチャーに火を付ける。たちまち火は燃え上がり、ランティはパンジに逃げるように伝えて、パンジは老人ホームを逃げ出していく。

老人ホームは炎に包まれ全焼全壊するが、焼け跡から何者かの手が這い出してくる。

ネタバレ感想・解説・考察

第1話は、老人ホームを舞台に、子育てと介護への苦労を題材にしたホラー演出が面白い作品でした。日本に比べるとそこまで高齢化が進んでいるわけではないインドネシアですが、親を老人ホームに入れることへの罪悪感は万国共通なのでしょう。

しかし施設内では、富裕層の高齢者たちが自分の子供たちを媒介にして若返りしていて、謎のクリーチャーが登場するコズミック・ホラー的な要素もあり、施設内を探索する場面ではPOVに切り替えていて、洋館ホラーゲームをプレイしている雰囲気があり、総合的にとても楽しめました。

第2話:孤児

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』第2話:孤児
© Netflix

あらすじとラスト

2024年のジャカルタ。ある屋敷でイヨスという男が、バガスという男の死体を洗っていた。イヨスはバガスが一週間前に小さな男の子を養子に迎えていたことを聞きつけており、その少年がどうなるのかを他の死体洗いに尋ねる。しかし、イヨスがバガスの友人ではないことが判明すると、彼は屋敷を追い出される。

その夜、イヨスは妻のイパにバガスが養子にした少年を引き取りたいと申し出る。イヨスは、「悪魔の子」と言われる少年を養子に迎えたバガスが、一週間でお金持ちになったことを主張する。イパは、養子を使って一攫千金を狙うイヨスを諭すが、2人はバラック小屋の家賃を滞納するほど貧しく、大家に脅されていた。翌日、イヨスとイパは孤児院に行き、シャフィンと名付けられた少年を養子に迎える。

2人は、シャフィンが想像していた「悪魔の子」ではなく、普通の幼い子供のように感じて驚く。孤児院の所長はイパとイヨスに、望みを叶えるには、彼に無条件の愛を与える必要があると忠告する。

帰り道、シャフィンは高級レストランで食事をしている家族を指差すが、連れて行けるほどのお金がないイパは、後ろめたさを感じながらもシャフィンを家に連れて帰り、ご飯と目玉焼きを食べさせる。その夜、イヨスとイパは、お金を手にした後のことを夢想する。すると、2人は床に落ちている現金を見つけ、シャフィンのおかげだと感じる。イヨスは、シャフィンのために何かおいしい料理をごちそうするようにイパに伝える。

イヨスとイパには、シャフィンと同じくらいの息子リアンがいたが、事故で亡くしていた。翌朝、イパはシャフィンをゴミ収集の仕事現場に連れて行くと、シャフィンがリアンのようにトラックに轢かれそうになり、間一髪で助け出す。

その夜、イヨスが仕事から帰ると、シャフィンがイパを「ママ」と呼んでいることに気づき、イパにシャフィンに愛情を抱かないように注意する。一方で、天井から物音がして調べると、金の装飾品が置かれていた。

翌日、イヨスは装飾品を売り払い、大家に滞納していた家賃を支払う。その後も、家で装飾品を見つけると売り払い、お金を手にしていた。シャフィンを迎えて4日目、イヨスとイパはシャフィンを高級レストランに連れて行き、豪華な食事を楽しむが、突然、シャフィンが苦しそうに倒れてしまう。

イパはシャフィンを病院へ急行させると、医師にシャフィンがピーナッツアレルギーであることを指摘され、2人はそれを忘れていた。イヨスとイパはシャフィンを巡って口論になり、イパはイヨスがお金のためにシャフィンの心配をしているだけだと非難する。

高級レストランの食事代と医療費を支払ったことで、2人はまたお金がなくなっていたが、その夜は家からお金や装飾品は見つからなかった。イパはイヨスにお金のためではなく、シャフィンを息子として育てたいと申し出るが、イヨスは納得しない。さらに大雨で雨漏りしていた屋根が壊れると、イヨスはシャフィンに怒りをぶつけてお金を出せと平手打ちする。

シャフィンを迎えて6日目、イパが目覚めると、シャフィンが崩れかけたゴミ捨て場の近くにいることに気づく。ゴミ捨て場が崩れると、イパはシャフィンを全力で助けに行き、それに気づいたイヨスも2人をかばうようにして助けようとする。

目を覚ますと、3人は豪邸にいることに気づく。イヨスは夢に見た暮らを手に入れたことに喜ぶが、イパはシャフィンの体調が良くないことに気づく。イパがシャフィンの世話をしている間、イヨスは屋敷にある家具を売り払い、シャフィンにおもちゃを買い与えて謝罪する。

その夜、イヨスは屋敷で大袋に入った大金を発見すると、イパが眠っている隙にシャフィンを殺そうと決心する。イパが目を覚ますと、シャフィンが屋敷の庭に穴を掘っていることに気づき、シャフィンを連れて自分の家に逃げ出していく。

しかし、それに気づいたイヨスが2人の後を追い、シャフィンを連れ去ろうとするが、イパはイヨスの背中をナイフで刺す。イパは助けを呼ぼうとするが、イヨスはそれを止めて、死の床で自分の行動の過ちを認める。イヨスが死んだ後、シャフィンは自分を1人にしないでほしいと訴えるが、罪悪感に苛まれたイパは、ナイフで自分を刺して自殺する。1人残されたシャフィンがイパの死体を見て泣き叫ぶと、まばゆい光に包まれる。

ネタバレ感想・解説・考察

第2話は、経済的な困窮から抜け出したい夫婦と、愛情を欲する孤児の末路を描いたスリラーでした。

シャフィンは「悪魔の子」と言われますが、夫婦の破滅を招いたのは、夫イヨスのお金への執着と貪欲さによるもの。2人が手に入れた豪邸は、冒頭で死んだバガスの死体を処理した場所でもあり、同じ過ちを繰り返していることが想像できます。

一方で、ラストでシャフィンは不思議な力でイパを助けようといる様子も伺えて、イパの愛情がシャフィンに届いていたことがわかり、イパが生き返るかもしれないと示唆させる終わり方でした。

物語の中で、レストランで80万ルピアが家賃の3ヶ月分だと言っていました。インドネシア通貨のルピアは、1ルピア=0.0096円です(2024年6月17日現在)。つまり、2人が暮らすバラック小屋の家賃は約2,500円とわかります。インドネシアの平均月収が約29,000円であることからも、2人が貧困層であることは伝わります。

インドネシアは世界で4番目に人口が多く、急速な経済発展を遂げている一方で、ゴミ問題も表面化しています。8割近くが分別せずに埋め立てられ、ジャカルタ近郊のブカシには、エピソードで登場するような巨大なゴミ山が存在します。

前話の子が親を手放す老人ホームのエピソードと対照的に、親が子を手放す孤児のエピソードであることも、シリーズ構成の上手いポイントです。

第3話:詩と苦痛

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』第3話:詩と苦痛
© Netflix

あらすじとラスト

2022年のジャカルタ。作家のラニアが新作「終止符」の出版イベントを開催するが、前作「詩と苦痛」とは異なり、新作が読者から愛されていないことを知る。

編集者のヘンドラは、新作が不評であり、読者が前作の続編を待ち望んでいることを伝える。ラニアは「詩と苦痛」を執筆しているときの過去の自身の録画映像を見返す。その映像では、ラニアが小説の主人公と同じ気持ちで同じ苦痛を経験していたことを話している。

「詩と苦痛」は、パートナーに監禁されて家庭内暴力に苦しむ女性を描いた物語であり、小説を書いているときのラニアは、小説の主人公と同じように体中に痣ができ、痛みを共有していた。

ラニアは続編の執筆に取りかかるが、新たに書くことが思いつかずにいた。そんな中、入浴中に背中に痛みを感じ、大きな痣ができていることに気づくと、自分が気づかぬ間に30ページも小説を書いていて、小説の主人公も同じように背中に痣があることが描かれていた。

ラニアは異変を感じて、続編の執筆をやめると伝えるが、ヘンドラは新しく書いた30ページを絶賛し、家庭内暴力のテーマも書く必要性があることを訴える。その夜、ラニアは執筆を再開することを決意し、執筆している間をカメラで中継し、ヘンドラに見守ってもらい、異変が起きたら止めるように頼む。

執筆を始めると、ラニアは白目をむいて憑依したように小説を書き始める。ラニアはヘンドラに止められるまで、物語の主人公ララスが夫に首を絞められている様子を克明に描写する。

ヘンドラはラニアに首を絞められた跡ができていることに気づいて心配し、やめるように伝えるが、ラニアは小説の主人公ララスが現実に実在している感覚を覚え、助ける必要があると主張する。

その夜、再びラニアは執筆を始めると、ララスは娘のアスティと一緒に地下に監禁されていて、結婚指輪をなくしたことで、夫から暴行を受ける。ラニアが反撃するように念じると、ララスは鉛筆で夫の手を刺す。これによってさらに夫は逆上し、ララスはひどく暴行を受ける。

ラニアの体中に痣ができていることを心配したヘンドラは、彼女を恋人の医師のもとに連れて行く。ヘンドラが命の危険を訴えるが、ラニアは執筆を続けて、ララスの顔を確認する必要があると主張する。

その夜、ヘンドラに監視を頼み、ラニアは執筆を始める。再びララスの世界に入ったラニアが自分の顔を確認すると、ララスが自分そっくりの人物であることを知る。

翌日、ラニアはヘンドラの運転で実家へと帰省する。彼女は12年前に、運転中の事故で兄を死なせてしまったことをヘンドラに打ち明け、それ以来、両親と疎遠になっていたことを明かす。実家に帰ったラニアは、両親から自分に双子の妹がいることを知らされ、両親が2人を養子に出したことを打ち明ける。

その後、養子に出したことを後悔した両親は、2人を取り戻そうとしてラニアだけを見つけることができたと明かし、ラニアの母は過去の過ちを謝罪する。その後、ラニアは双子の妹ララスを見つけるために執筆を続けることを決意する。

ラニアが執筆を再開し、ララスの世界に入ると、アスティが熱を出していることに気づく。夫にアスティを病院に連れて行ってくれるよう頼むが、夫は逃げようとしていると言って拒否する。夫がララスに暴力を振るうと、ラニアはララスに反撃を促す。

するとララスの叫び声と同時に、夫の腕に魔法陣のような紋章が刻まれ、ラニアはララスから夫へと憑依する。夫に乗り移ったラニアは、「アガルタ」という声と高度な文明社会の様子と、2体のクリーチャーの姿を目撃する。

その後、ララスの体に戻ると、夫が落としたバッチから、国営企業に勤めていることを知り、現実世界に引き戻される。ラニアはその情報をもとに、夫がアドリアンという名前であること、彼の住所を突き止める。ラニアはヘンドラの車で急行するが、最短でも30分かかるため、時間を稼ぐために車の中で執筆を続けてアドリアンを止めようとする。しかし、ララスの異変を察知したアドリアンはハンマーを持って襲いかかる。

アドリアンの家につくと、ラニアは目を覚まし、ヘンドラと2人で屋敷に入っていく。ヘンドラがアドリアンの家族を食い止めている間に、ラニアはララスの監禁場所を見つけ出し、ララスを見つけ出すが、ララスは大量に出血していて、助けてくれたことに感謝した後、ラニアの腕の中で息を引き取る。

ラニアはアスティを連れ出し、アドリアンに自分のしたことの償いをさせると宣言して屋敷を後にする。翌日、ラニアはヘンドラに、引っ越してアスティと新しい生活を始めることを伝える。しかし、ラニアはアドリアンの自宅から、彼や家族、ララスの死体が跡形もなく消えていることを知らされる。ラニアは怒りに満ちた表情で、「悪魔であろうとなんであろうと、報いを受けさせる」と誓う。

ネタバレ感想・解説・考察

第3話は、小説家が物語の主人公と同じ体験を共有するというスリラーでした。

執筆過程で物語の主人公の様子を疑似体験していく過程と、それが双子であると明らかになる展開もスムーズで面白かったです。ブリー・ラーソン主演の映画『ルーム』とNetflix韓国映画『ザ・コール』をかけ合わせたような印象がありました。

終盤では、第1話で登場した2体のクリーチャーの姿も確認できて、独立したエピソードでありながら、ジャカルタを舞台にした異なる時代の共通点も見られます。

また、「アガルタ」という単語が登場しましたが、これはオカルト的伝説における、アジアのどこかの地下にあると言われる理想都市のことで、本シリーズがずっと匂わせているオカルト風味を強める演出になっていました。

第4話:遭遇

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』第4話:遭遇
© Netflix

あらすじとラスト

1985年のジャカルタ北部。漁村で暮らすワイユは、村のリーダーであるラスマンから、1人だけ早く仕事を始めて多くの貝を採っていたことを責められる。ワイユは採った貝を売って家に戻り、帰宅した妻のディジャに、金が貯まったらサウジアラビアに母親を探しに行くと伝える。

ワイユはディジャに一緒にサウジアラビアへ来てほしいと伝えるが、彼女は乗り気ではなかった。そこでワイユは、ディジャがオヒムと浮気しているという噂を尋ねるが、ディジャは否定する。

その後、ワイユはディジャから誕生日祝いのカップケーキとポラロイドカメラをプレゼントされ、母親との思い出を語ると、ディジャは一緒にサウジアラビアに行くことに同意する。ワイユは、数日あれば目標の貯金額が貯まると明かすが、その夜、ワイユはディジャの寝ている間に貯金の隠し場所を別の場所に移す。

そんな中、漁村に退去を命じる役人たちがやってくる。ラスマンたち村人が立ち向かうが、ワイユは家から出ようとせず、ラスマンは協力しないワイユを臆病者と非難する。

次の夜、暴風雨のため村は停電となり、村人たちは映画を見て過ごしていたが、ワイユだけは貝採りの仕事に向かう。すると、ワイユは海岸で空に青白い光を目撃し、インスタントカメラで写真を撮る。ワイユは急いで家に帰ると、震えながらディジャに「天使を見た」と明かす。

村人たちは、ワイユの写真を見て、それが天使なのかを議論する。村人たちはワイユが選ばれし預言者であると結論づけるが、ラスマンはそれを否定して去っていく。

翌日、村を取材している新聞記者のハルディは漁師たちに、役所が村の代わりにマンションを建てようとしていると話す。村人のウスタッドは、ハルディに天使を見たワイユを預言者だとして紹介する。ウスタッドはそれによって村を役所から守ろうと考えていた。漁村の妻たちが、ワイユが預言者かどうか議論している中、ディジャはワイユに心を読む超能力があるという噂を耳にする。

ディジャが家に帰ると、ワイユが天井に隠した貯金を移動させている様子を目撃し、自分を信用していないと非難するが、ワイユは母親との写真を見ていただけだと弁明する。翌日、ワイユが目覚めると、ディジャがいないことに気づき、彼女が浮気相手のオヒムと一緒に貯金を持って逃げたことを知り、ショックを受ける。

しかしその後、ハルディが現れると、天使の写真を気に入った新聞社の社長が、天使の写真を800万ルピアで買い取ると提案し、ワイユは承諾する。そんな中、ラスマンと妻は2人の会話を盗み聞きしていた。

ある日、役人たちが村人に白紙の文書へのサインを強要しにやってくると、ラスマンは役人に立ち向かって争いになり、役人が銃を取り出すと、ウスタッドが預言者であるワイユに解決させようと押し出し、銃口の前に立つが、引き金を引いても拳銃は弾詰まりを起こす。これにより村人たちは、ワイユが預言者であることをより一層信じるようになる。

その夜、1人になったラスマンは、役人たちの襲撃を受けて暴行被害に遭い、妻も殴られて300万ルピアを支払うよう要求される。役人たちに殺されることを恐れたラスマンは、ワイユから天使の写真を奪おうとする。

しかし、タイミングよく村人たちが現れると、村を救うためにワイユが神の宣告を受けるまで外で待機すると言い出す。ワイユは自分が信心深くはないことを明かすが、村人たちはワイユによるお告げを待っていた。

翌日の夜、ラスマンが隣村の村人を連れて現れると、ワイユの写真が偽物だと主張し、写真を見せるように要求する。ワイユは写真を奪われることを危惧し、写真が偽物だと言い、村人たちに尊敬されたいと思ったからだと理由を明かす。ワイユを信じていた村人たちはショックを受けてワイユの家を去っていく。

1人残ったラスマンは、ワイユの家から写真を見つけ出そうと部屋を荒らし回り、ワイユの母親の写真を見つけると、それを破り捨てる。そして、ラスマンはついに天使の写真を見つけるが、保管場所が悪かったことで写真は見えなくなっており、ワイユを「役立たず」と罵って出ていく。

ワイユは荒らされた家の中で、引き裂かれた母の写真を見て泣き崩れると、突然、激しい地震が家を揺らす。ワイユが外に出ると宇宙空間のような場所で、母親の姿をした天使が現れる。

天使はワイユに、預言者としてすべての知識を与えると告げ、それをどう使うかはワイユ次第だと伝える。同じ頃、役人たちは村を強制退去させるために、軍隊を連れてきていた。

現実の世界に戻ったワイユは、家の前で村人たちと兵士たちが一触即発になっている様子を見て、争いを止めようと飛び出していく。気がつくと、ワイユは両者の間で空中に浮かんでおり、その姿を見た人々は誰もが跪いてワイユを拝み始める。

ネタバレ感想・解説・考察

第4話は、寡黙で仕事熱心な漁村の男の数奇な物語でした。

インドネシアは国民の9割近くがイスラム教徒。イスラム教では、預言者ムハンマドが救世主を意味する「マフディー」として知られており、イスラム教の聖典であるコーランは、ムハンマドが神託を集めたものとされています。

このエピソードは、突然、預言者と祭り上げられた男の姿を描いていますが、エピソードの根底にあるのは、「力の使い道」と言えるでしょう。ワイユは村人から持ち上げられるも、名声などには興味がなく、混乱を招いた天使の写真を偽物だと言い、ラスマンのように私利私欲のために利用できないように写真を消しました。

思うに、ワイユは天使からのテストを受けていたように感じます。天使の写真がなくても、無欲無私で村人を助けていたことで尊敬されていたことが明かされ、妻に逃げられ、財産を失った状況のワイユであっても、天使は正しく力を使えるだろうと判断したのでしょう。

天使が「すべての知識」を与える描写は、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』のケイト・ブランシェットが演じたイリーナ・スパルコを思い出しました。また、ワイユが叡智を授かる場面では、サブリミナル的に第3話のアガルタの都市も確認できました。

第5話:向こう側

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』第5話:向こう側
© Netflix

あらすじとラスト

1997年のジャカルタ。映画の看板絵師をしているバンディは、古びたアパートで妻のデウィ息子のマルハンと暮らしている。レマジャ映画館で働いていたバンディは、裕福な家庭育ちのデウィと劇場で出会って恋に落ち、貧しくも幸せに暮らしていた。

ある日、デウィの兄がチンピラを連れてやってくると、デウィにバンディと別れて家に戻るように強要する。しかし、デウィは拒否し、父親からの遺産放棄にサインし、兄に二度と現れないように伝える。

バンディはデウィが自分の味方でいてくれたことに感謝し、2人はずっと一緒にいることを約束する。しかし、デウィが重い生理痛に見舞われたため、バンディは薬局に薬を買いに行くことにする。薬局に向かう途中、バンディは、かつて働いていたレマジャ映画館を見つけ、中に入ってみることにする。

すると、廃墟と化した外観とは裏腹に、劇場の中が新しい状態で、昔の上司であるドミの姿もあった。ドミはバンディにジャケットを差し出し、仕事に戻るように伝える。バンディはドミに、劇場の外観が廃墟のままであることを尋ねると、ドミはバンディに正面玄関から出て確認するように伝える。バンディが正面玄関から出ると、映画館は真新しい状態だった。

ドミはバンディに、上映中のスクリーンに入ることを提案するが、バンディはデウィとマルハンのことを思い出し、入ってきた裏口から映画館を出る。家に戻ったバンディはデウィに、映画館が再開していたことを話そうとするが、デウィは驚いた表情でバンディを平手打ちする。

バンディは薬を買いに出かけてから、2年間も行方不明になっていた。バンディは混乱し、家族を置いて家出したわけではないこと、映画館に数時間立ち寄っただけだと弁明して謝罪し、デウィは仕方なくバンディを許す。

その後、デウィがバンディのシャツを洗濯しようとしたときに、2年前に自分が描いたペンキの跡と、2人の思い出のお金があることに気づき、バンディが嘘をついていなかったと信じる。

バンディが失踪した2年で、デウィはよく働き、小さな家を借りられるだけのお金を貯めていた。その後、3人はレストランで食事をするが、バンディがタバコを買いに外に出ると、彼の親切心が裏目に出て、バイク泥棒を助けることになってしまう。

バンディはバイクの持ち主であるギャングに追われることになり、命からがら逃げ出し、やむなく再び映画館の中に逃げ込んでいく。劇場の中でドミに再会すると、彼はバンディに、スクリーンのある扉を開けて入れば理想の生活ができるとそそのかし、その方がデウィとマルハンにとっても幸せだと伝える。

バンディは決断をしばらく考えるが、裏口から現実世界に戻っていく。しかし、家に戻ると、すでにデウィとマルハンの姿はなく、2人が隣町に引っ越したことを知らされる。バンディはデウィの家を探し出すが、すでに3年が経過し、デウィは新しい夫アリフと再婚していた。アリフはデウィが前に進んだと告げ、3人で幸せに暮らしていると告げる。

その夜、バンディが昔のアパートの廊下で心を痛めて泣いていると、マルハンが食べ物を持って現れる。マルハンは、バンディが現れたことでデウィが動揺していることを打ち明け、母のためにも放っておいてほしいと頼む。

行き場をなくしたバンディは映画館に戻り、そこで仕事に励むようになる。さらに数年が経ち、マルハンは大学生になろうとしていた。デウィとアリフ、マルハンの3人がレストランで食事をしていると、デウィはテレビのニュースでジャカルタのホームレスを映した映像に、バンディの姿を発見する。

アリフは止めようとするが、デウィはバンディを探しに行こうと決意する。一方、劇場で働き続けていたバンディは、デウィの呼びかける声を耳にして、2人のもとに帰ろうとする。しかし、ドミはそれを許さず、バンディは観客たちに押さえつけられてしまう。

デウィが映画館があった場所に向かうと、そこは森に変わっていた。森の中に入ると、石の上に立つクリーチャーが、特殊な音波で多くの人々を操っていた。デウィはその中からバンディを見つけ出し、クリーチャーを攻撃してバンディを目覚めさせようとする。

劇場では、ドミがバンディに、デウィの幸せを願うなら戻らないべきだと伝え、バンディは涙を流す。一方、デウィは森の中で意識不明のバンディに必死によびかけていた。

ネタバレ感想・解説・考察

第5話は、運命的に出会った夫婦に舞い込む思わぬ障壁を描いたドラマでした。

シリーズのタイトル「ナイトメア(悪夢)&デイドリーム(白昼夢)」を体現するようなエピソードで、「浦島太郎」のおとぎ話を彷彿とさせる内容ですが、実際にはバンディは映画館に囚われていたのではなく、彼自身の記憶に閉じ込められていて、放浪していたのだと考察できます。

舞台となる1997年のインドネシアは、同年にタイに始まったアジア通貨危機によって、深刻な経済危機に直面していました。失業したバンディは、妻と息子と幸せに暮らしているものの、潜在的な後ろめたさが彼を心の牢獄に閉じ込めてしまったのだと想像できます。

ラストシーンのバンディの生死には議論の余地がありますが、恐らくバンディは自分が重荷であることを感じ、デウィの献身も届かず、映画館に居続けることを選択して死んでしまったのだと思います。

終盤で登場するクリーチャーが発する特殊な音波は、第3話でラニアが憑依したララスが発したものと酷似していて、ララスがクリーチャーであることが示唆されます。

第6話:催眠状態

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』第6話:催眠状態
© Netflix

あらすじとラスト

2022年のジャカルタ。アリという男が電気技師の仕事の面接を受けるが、面接官はアリが色覚異常であることを知り、仕事を断る。

アリが意気消沈して家に帰ると、隣人のイワンから仕事に誘われる。アリの妻ニンシーは、イワンが催眠術師で人を騙して金儲けしていることを知っており、イワンとは関わらないでほしいと伝える。アリはそれに同意し、妻と2人の子供アユとヘンドラと夕食を共にする。

その夜、イワンがアリの部屋に現れ、催眠術をかける。催眠術を解くためには全身を使った複雑な動きが重要だと教える。その後、イワンはアリに翌日の仕事に一緒に来てほしいと頼むが、アリは妻子を危険にさらしたくないと断り、イワンは腹を立てて去っていく。

翌日、アリは仕事を探し続けていたが見つからず、子供の学費も必要で途方に暮れていた。ATMの前で座っていると、年配の女性デウィがお金を下ろしていて、アリは意を決して彼女に催眠術をかけて金を奪い、急いで逃げ帰っていく。

アリが汗まみれになって帰宅すると、家族は心配する。その夜アリが目覚めると、色が見え始め、家にあるテレビが催眠術をかけるような渦巻く映像をループ再生していることに気づく。

翌朝、アリは盗んだ金をニンシーに渡し、子供たちの学費を払うように伝える。その日、学校から帰ってきたアユは、お菓子を盗んだ罰として人形を切り刻み始める。アリは彼女をなだめようとするが、そこに友達とケンカしたヘンドラが帰宅する。

ヘンドラは、友達の凧が気に入ったから盗んだと言い、殴ったと言う。アリが混乱していると、ヘンドラに殴られた友達が母親を連れてやってくる。母親は慰謝料を払うように命じるが、アリが金がないと答えると、家の前でアユが大切に育てていたトマトの苗木を持って帰ってしまう。

さらに、ニンシーが帰ってくると、彼女は大量の食料を持っていた。アリが渡した現金以上の買い物であることを尋ねると、彼女は盗んできたと答える。ニンシーは友達を殴ったヘンドラを褒め、アユは盗みをしたニンシーに罰する必要があると言う。

アリはニンシーが盗んだものを家の外に出し、ニンシーを叱責するが、彼女は家族のためにやったことだと主張する。アリはイワンに助けを求めようとするが、イワンは役に立たず、彼はアリも金を盗んだことを指摘する。

アリが家に戻ると、アユがニンシーとヘンドラを縛り上げ、ナイフで罰を与えようとしている様子を目撃する。アリは慌てて彼女を止めると、自分の部屋の6代のテレビの電源が入り、再び渦巻きをループ再生していることに気づく。

その1つにはデウィの姿があった。アリはデウィに家族を目を覚ましてほしいと懇願するが、彼女は笑い飛ばし、目を覚ます必要があるのはアリ自身だと告げる。次の瞬間、気がつくとアリは時計塔の秒針にしがみついていた。

アリはアユに叩き起こされ、すべてが悪夢だったと安心する。しかし、昨夜、自分が暴れてヘンドラの顔を殴ったことを家族から知らされる。その後、アリはデウィの催眠術によって部屋から出られず、時計塔にしがみつく悪夢を繰り返し見る。デウィは自分自身で催眠術を解く方法を見つける必要があると告げる。

アリは気持ちを落ち着かせて家のドアを開けると、時計塔のふもとにいることに気づく。その後、アリは時計塔に登ろうとするが、何度も落下する。その過程で自分自身に語りかけるようになると、気がつくと時計塔の秒針にぶら下がっていた。

アリは時計塔から落下するが、落下していく中で自分自身に目を覚ますように強く念じる。すると、デウィの目の前でビルの屋上からロープにぶら下がっていることに気づく。アリが混乱していると、デウィはアリが自分の心をコントロールできたことを祝福する。

その後、デウィはアリに、特別な任務のために彼をテストしたと明かす。アリがデウィの目的を尋ねると、彼女はある人の指示で動き、選ばれし者たちと人類を守るための戦いに備えていると告げる。

ネタバレ感想・解説・考察

第6話は、タイトルの通り、催眠状態から抜け出すまでの様子を描いた物語。

「催眠術をかけたと思ってたら、自分がかけられていた」という内容ですが、第5話のデウィが登場したのは驚きました。デウィがラストで人類を守るための戦いに備えていると明かしたことで、オムニバスのようなバラバラのエピソードがつながる感じがして面白かった!前話で夫を亡くした後、クリーチャーと戦うことを決意したと勝手に想像して胸が熱くなりました。

アリの息子ヘンドラは、第3話のラニアの友人の名前と同じですが、同じ2022年なのでさすがに同一人物ではないと思いますが、つながりは感じます。

ほかのエピソードでクリーチャーとの邂逅(戦う理由)があったのに対して、このエピソードは明確にアリの適性テストであることがわかります。時系列がバラバラなジャカルタの話も繋がっていく感じがして、これは最終話の展開が楽しみすぎるぞ…。

第7話(最終話):私書箱

『ジョコ・アンワルのナイトメア&デイドリーム』第7話(最終話):私書箱
© Netflix

あらすじとラスト

2024年のジャカルタ。ダイヤモンド鑑定士のヴァルドヤは、恋人のレンディが務める税関で仕事をしていた。すると彼女の前に、不審な女性が立ち塞がり、「前にもあなたのような目を持つ人と会った。またすぐに会うことになる」と告げる。ヴァルドヤは混乱したまま税関を後にする。

その夜、ヴァルドヤとレンディは友人と夕食を共にする。ヴァルドヤには、5年前に仕事の面接に出かけて行方不明となった姉のダラがいた。ヴァルドヤは姉との写真を手に取り、思い出に浸っていると、額縁の裏にUSBがあることに気づく。そのファイルを確認すると、ダラが失踪前に送った求職メールを発見する。

ヴァルドヤはその情報を手がかりに、5年前の新聞の求人広告を見つけ、彼女が私書箱No.888に履歴書を送ったことを突き止める。ヴァルドヤが私書箱のある郵便局で尋ねると、郵便局員はNo.888の私書箱が40年前に、100年分の支払いを済ませて借りていることを明かす。さらに、数日前にヴァルドヤと同じようにその私書箱について問い合わせた人がいたことを告げる。

ヴァルドヤは問い合わせた人物の連絡先を教えてもらい、自宅に訪問すると、ナイフを突きつけられて疑われる。しかし、ヴァルドヤが失踪した姉を探していることを明かすと、その女性は5年前に研究者の夫が同じ求人広告を見つけて面接に行き、面接から帰ってきた夫が脳を抜き取られて半身不随になったことを明かす。その女性は、夫が一時的に言葉を発し、私書箱No.888を訴えたことで郵便局に問い合わせていた。

ヴァルドヤがその夫にダラの写真を見せると、夫は写真を見て泣き叫ぶ。ヴァルドヤは彼女に被害届を出すように伝えるが、報復を恐れて拒否し、立ち去るように告げる。その夜、ヴァルドヤはレンディにそのことを打ち明け、警察の友人を彼女の家に向かわせる。しかし、警察が女性の家を訪ねると、女性や彼女の夫の姿はなく、空き家になっていた。

ヴァルドヤはレンディに、ダラの元恋人だったレンディと自分が付き合っていることに罪悪感を覚えていると明かす。一方、レンディはダラと付き合っていたのは2ヶ月だけだと言い、罪悪感を感じる必要はないと伝える。

2人が車で帰ろうとしていると、道路の真ん中で税関で見かけた女性が立ち塞がる。ヴァルドヤは車から降りて彼女を問いただそうとするが、いつの間にかいなくなっていた。ヴァルドヤはレンディに頼り、監視カメラに映っていた彼女を税関の画像検索ソフトで検索する。すると、その女性が政府高官たちと一緒に写った写真が多数あり、国家規模の重要人物であることを知る。

ヴァルドヤは姉が失踪してから毎日、同じ求人が募集されないか新聞をチェックしていた。するとある朝、新聞で私書箱No.888から同じ求人が出ているのを発見する。ヴァルドヤはすぐにその仕事に応募し、自分がいかに優れた視力を持っているかをメールに書き記す。

その後、ヴァルドヤは、私書箱No.888の真向かいの私書箱を借り、張り込んで郵便物を受け取る人物を監視する。すると、サングラスをかけた2人の男が現れ、ヴァルドヤは彼らの車のトランクに忍び込み、廃ビルへと入っていく。

ヴァルドヤを心配したレンディが住所を送るように連絡するが、同じくして求人応募の合否が届き、ヴァルドヤは自分が面接の機会を得たことを知る。さらに、その面接会場が、自分が現在いるビルと同じ住所であることに気づく。

ヴァルドヤはビルの駐車場で一夜を明かし、翌朝、他の面接者と一緒にエレベーターに乗り込む。エレベーターに乗っている間、面接者たちは自己紹介し合い、それぞれが身体的に優れた才能を持っていることを知る。

すると、エレベーターは突然故障し、室内に催眠ガスが放出され、全員が眠らされる。ヴァルドヤが目を覚ますと、自分たち面接者が拘束され、富豪らしき者たちが食卓に座っていることに気づく。

すると、面接者の1人だったヴァイオリニストが、手首を切り落とされ、彼女の手はシェフによって捌かれ、テーブルに座る者たちはヴァイオリニストの指を食べる。同様にして、研究者の男が運ばれると、頭を切り開かれ、彼らによって脳が食べられる様子を目撃する。

そしてヴァルドヤの順番が巡ってくると、彼らはヴァルドヤの眼球を食べようとする。ヴァルドヤは激しく抵抗し、彼らをカニバリストだと非難すると、彼らはカニバリストではなく、食物連鎖の頂点に君臨する者だと主張する。

さらに、ダラのことを尋ねると、彼らはヴァルドヤがダラの妹であることに気づき、5年前に食べたダラがどれほど美味しかったかを語る。ヴァルドヤは姉が死んだことを察して絶望する。

彼らがヴァルドヤの眼球を食べようとした瞬間、会場の扉が開き、6人の男女(デウィ、パンジ、ラニア、アリ、ワイユ、税関にいた謎の女性)が現れる。彼らは食人のクリーチャーたちと対峙し、戦い始める。

ヴァルドヤは謎の女性に助けられると、ワイユがテレパシーでヴァルドヤに、彼らが地下都市アガルタに住むクリーチャーであり、世界征服を企んでいることを明かす。自分たちが彼らに抵抗できる「抗体」であり、ワイユは一緒にクリーチャーを倒して人類を守るために戦ってほしいと頼む。ヴァルドヤは意を決した表情で「ぶっ飛ばしてやる」と宣言し、同意する。

ネタバレ感想・解説・考察

シリーズの最終話となる第7話は、これまでのエピソードが決定的につながる物語でした。

失踪した姉を探す女性の姿を映したミステリーとして物語が進み、それがクリーチャーによる食人パーティーの恐怖へ変わり、そして人類を守るために彼らと戦う抗体たちが登場する流れが見事で、ジョコ・アンワルのストーリーテリングの上手さに舌を巻きました。

脳みそを食べるシーンは『ハンニバル』のハンニバル・レクターへのオマージュでしょう。

それぞれのエピソードが、クリーチャーとの邂逅を描いたホラー・スリラーであると同時に、彼らがクリーチャーに対抗できる「抗体」であることがわかり、地球を守るヒーロー的な存在へと変化していく様子はゾクゾクしました。

ラストのクリーチャーの中には、第3話でララスを監禁していたアドリアンの姿も確認でき、彼らがアガルタから来た悪魔のようなクリーチャーであることが判明しました。

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