今回ご紹介する映画は『瞳の奥に』です。
サラ・ピンバラのベストセラー小説を映像化。複雑に絡み合う三角関係の様子を描くサイコスリラードラマ。
本記事では、ネタバレありで『瞳の奥に』を観た感想・考察、あらすじを解説。

いわゆる「どんでん返し」がある作品なので、未見の人は一旦何も調べずに作品を楽しんでください!
『瞳の奥に』作品情報・配信・予告・評価
瞳の奥に

5段階評価
あらすじ
シングルマザーのルイーズは、新しい上司デイビッドと不倫関係になり、彼の妻アデルとの友情が芽生え、さらに奇妙な方向へと進んでいく。
作品情報
タイトル | 瞳の奥に |
原題 | Behind Her Eyes |
原作 | サラ・ピンバラ |
監督 | エリック・リクター・ストランド |
脚本 | スティーブ・ライトフット |
音楽 | ルパート・グレッグソン=ウィリアムズ |
撮影 | フェリックス・ヴィーデマン |
編集 | エイミー・ハウンセル ブレナ・ランゴット |
製作国 | イギリス |
製作年 | 2021年 |
話数 | 全7話 |
ポイント
配信サイト
配信サイト | 配信状況 |
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| 見放題 Netflixでみる |
『瞳の奥に』キャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
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![]() | ルイーズ(シモーナ・ブラウン) 息子と暮らすシングルマザー。精神科クリニックで秘書をしている。夢遊病に悩まされている。 |
![]() | アデル(イヴ・ヒューソン) デイビッドの妻。かつて依存症でリバビリ施設に入所していた。 |
![]() | デイビッド(トム・ベイトマン) アデルの夫で精神科医。妻とともに引っ越してきて、ルイーズの上司となる。 |
![]() | ロブ(ロバート・アラマヨ) 依存症患者。リバビリ施設でアデルと親しくなる。 |
ネタバレあり
以下では、ドラマの結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ】衝撃のどんでん返しとラストを解説
© Netflix
Netflixドラマ『瞳の奥に』は、「衝撃のどんでん返し」があることで話題となりました。エピソードを振り返ると、このドラマには大きく3つの予想外の出来事があると感じました。
まず、一番予想していなかったのは、物語の後半になると、本作が突然、超常現象(魂の移動)が登場すること。それまでは、ありがちとも言える三角関係を描いたメロドラマとして進んでいましたが、突然、アデルが幽体離脱をして魂をコントロールできることが明らかになります。
それまでは、依存症を患うアデルと夢遊病を抱えるルイーズの様子が描かれていて、いわゆる「信頼できない語り手」として機能していましたが、アデルの特殊能力が明らかになると、さらに複雑化することになります。
そして最終話になると、一気に2つのどんでん返しが起こります。ルイーズはアデルのアドバイスによって幽体離脱を習得したことで、デイビッドではなくアデルこそが元凶だと気づくのです。すでにデイビッドとアデルの奇妙な関係の真相を解き明かすことに夢中になっていたルイーズは、単独でアデルを追い詰めようとします。
ルイーズの詰問によって、アデルがヘロインを接種して自宅に火をつけ、自殺しようとしていることに気づくと、ルイーズはアデルを助けるために幽体離脱をします。
しかし、それらはすべてアデルの策略だったのです。アデルとルイーズは幽体離脱した魂の状況で取っ組み合いをし、アデルの魂はルイーズの体に、ルイーズの魂はアデルの体に入っていきます。そう、アデルがルイーズの体の乗っ取りに成功したのです。
アデルはルイーズとして彼女の人生を手に入れました。それを知らないデイビッドは、アデル(魂はルイーズ)が死んだことで、彼女から解放されたと感じてルイーズ(魂はアデル)と一緒になります。
そして最後には、さらなるどんでん返しが明かされます。実はアデルは、リハビリ施設時代に親友のロブと幽体離脱を行っていて、ロブに体を乗っ取られていたのです。つまり、アデルの魂は最初からロブであり、本当のアデルはリハビリ施設の森にある井戸の中でロブの体に宿ったまま死んでいたのです。
すべての元凶はアデルではなく、ロブだったのです。
時系列順に整理して物語を振り返る
© Netflix
2回の大きなどんでん返しが起こったドラマ『瞳の奥に』ですが、改めて時系列を整理して出来事を振り返っていきます。
本作は、突然登場する幽体離脱という超常現象を受け入れられるかどうかで好みが変わってくると思いますが、物語を整理してみると、とても丁寧な伏線が張られていることに気づきます。
ミスリードの設計が見事に働き、視聴者はデイビッドとアデル、ルイーズの3者間それぞれに疑いの目を向けることになりますが、超常現象という非科学的な要素を活用することで、想像していなかった、すでに死亡しているロブが真犯人であることが明かされるのです。
ロブはアデルのことが好きだったのではなく、アデルの幸運さ(容姿も良く、実家は富豪、イケメンのデイビッドに好かれる)に嫉妬していたのです。
ドラマの最初で、ロブは看護師にゲイであることを公言していて、それはアデルを好きだということを隠すためのウソのようにも見えました。また、彼がアデルの屋敷で料理人として働いたことも、ロブがアデルに入れ替わった後に、アデルが料理を作るようになったことも伏線として機能しています。
アデルとロブが入れ替わっていたことで、アデルがロブの日記を持っていたこと、それをルイーズに渡した理由も納得ができます。さらに、デイビッドのアデルに対する態度の変化と、彼がルイーズに出会い、不倫関係になってしまった理由も少なからず理解できます。
ルイーズもデイビッドも、アデルに成り代わったロブによる策略にハマった被害者だったのです。
アメリカでは、不満を抱えた労働階級の人間が、上流階級の人間に取って代わろうとする物語のジャンル「金持ちを食う(Eat The Ritch)」としても人気ですが、本作もそのうちの1つと言えるでしょう。
このジャンルでは、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』、ジョーダン・ピール監督の映画『Us アス』、エメラルド・フェネル監督の『ソルトバーン』、ライアン・ジョンソン監督の『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』などの優れた映画もあります。
本作はそれを描くために、離れ業ともいえる超常現象トリックを用いているので、それは賛否両論があってしかるべきだと思います。私個人の感想としては、やはりトリックとしての「ずるさ」があると感じました。せめて、物語の後半で突如として登場させるのではなく、物語の最初から匂わせる程度の仕掛けがあってもよかったのではと感じました。