今回ご紹介するのは映画『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』です。
アメリカ人小説家、ルイーザ・メイ・オルコットによる自伝的小説『若草物語』を俳優であり監督でもあるグレタ・ガーウィグ監督がリメイク。
これまでに何度も原作を題材とした作品がある中のリメイクとなる本作ですが、実に豪華なキャストと素晴らしい演出、そして登場人物みんなが愛おしく、心地の良い作品になっていました。
『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』の作品情報とあらすじ
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』
ストーリー | |
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あらすじ
しっかり者の長女メグ、アクティブで自由な次女ジョー、音楽の才能がある三女ベス、人懐っこくて頑固な四女エイミー。愛情に満ちた母親マーチ一家の中で、ジョーは女性というだけで仕事や人生を自由に選べないことに疑問を抱く…。
作品情報
タイトル | ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 |
原題 | Little Women |
監督 | グレタ・ガーウィグ |
脚本 | グレタ・ガーウィグ |
原作 | ルイーザ・メイ・オルコット『若草物語』 |
出演 | シアーシャ・ローナン エマ・ワトソン フローレンス・ピュー エリザ・スカンレン ローラ・ダーン ティモシー・シャラメ メリル・ストリープ |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
上映時間 | 135分 |
予告編
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おすすめポイント
どんな人生も等しく肯定する。
これまで何度も映画化されている『若草物語』を、『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督が映画化。
「若草物語」という広く知られた名作を、今をときめく俳優たちで映像化した功績は大きく、当時の価値観が現代に通じるものも多く、胸に刺さります。
「女の幸せが結婚だけなんておかしい、そんなの絶対間違ってる!でも…どうしようもなく寂しいの」
映画屈指の名シーンが胸に刺さります。シアーシャ・ローナン演じる主人公の生き方や、姉妹それぞれの人生をどれも否定せず、「女だから」という画一的な価値観が今以上にある時代で、どんな生き方も等しく肯定する傑作。
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今すぐみる『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』のキャスト
出典:https://www.imdb.com/
本作は、かなり豪華なキャスト陣が素晴らしい演技をしているのも印象的でした。
シアーシャ・ローナン(次女 ジョー)
13歳でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされてから、その後の出演映画で数々の賞を受賞する「賞レースの常連」と言われたシアーシャ・ローナン。
ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞した『レディ・バード』でもその存在感は見事でした。
本作でもその演技力は安定で、物語の主軸となる次女・ジョーを演じ、冒頭の背中越しのショットからの町を駆けるシーンですでに惹きつけられるものがありました。
エマ・ワトソン(長女 メグ)
出典:https://www.imdb.com/
皆さんご存じエマ・ワトソン。『ハリー・ポッター』シリーズを終えてからも着実にキャリアを重ねている彼女。
美しさを穏やかさを兼ね備えたマーチ家の長女メグを好演しています。
幸せそうに見えてよく考えるとなかなか辛いメグの悲壮感を上手く表情で伝えていて、素晴らしかったです。
フローレンス・ピュー(四女 エイミー)
出典:https://www.imdb.com/
アリ・アスター監督のホラー映画『ミッドサマー』において強烈な印象を残したフローレンス・ピュー。
本作でも一番やっかいな役どころと言える四女エイミーを好演しています。どこか嫌われがちなエイミーを独特の魅力で愛らしさも感じられるキャラクターにしていました。
エリザ・スカンレン(三女 ベス)
出典:https://www.imdb.com/
音楽の才能をもち、内気だけどみんなからも好かれる三女ベス役にはエリザ・スカンレンが配役。
彼女は他の三姉妹の女優に比べるとキャリアは浅く知名度も低いですが、ストーリーで重要な立ち位置と起点となるベスという役柄を上手く演じています。
目立ちすぎてもダメで、なおかつ、みんなの印象に残るという難しいバランスを好演していて今後の活躍にも期待が高まりました。
ティモシー・シャラメ(ローリー)
出典:https://www.imdb.com/
いま、最も乗りに乗っている俳優、ティモシー・シャラメはマーチ家の隣家に住むローリー役を担当。
この配役が絶妙で、彼が持つ独特の中性的でアンニュイな表情が、四姉妹の中に入ってくるローリーという役柄に違和感なく溶け込んでいるのです。
『君の名前で僕を呼んで』でのアカデミー賞主演男優賞ノミネートの実力は申し分なく発揮されていて、やりすぎなくらいにイケメンに描かれていました。
ローラ・ダーン(四姉妹の母親)
出典:https://www.imdb.com/
四姉妹を支える強くて優しい母親役にはベテラン女優のローラ・ダーンが配役。
個性の強い四姉妹をまとめ、精神的な支えとなる彼女ですが、まさに賢母の鑑というような存在で、たくましく美しい母親として四姉妹をサポートしていました。
メリル・ストリープ(マーチ伯母)
出典:https://www.imdb.com/
四姉妹の大おばで、母親のサポートとして四姉妹を厳しく育てるマーチ伯母には、大女優・メリル・ストリープが配役。
強い女性像の象徴でもあるメリルは、この配役もピッタリで、抜群の存在感を発揮しています。
とはいえ目立ち過ぎないように四姉妹の間に絶妙に入ってくる感じはさすがでした。
【ネタバレ感想】登場人物誰もが愛おしくなる
出典:https://www.imdb.com/
登場人物の全員が愛おしい
全体的に印象的だったのは登場人物の誰に対しても嫌な気持ちを抱かないこと。
少しやっかいな性格の四女・エイミーですら愛おしく見えてくるのは、フローレンス・ピューの醸し出す演技がなす技のようにも感じました。
マーチ家の四姉妹の青春時代はなぜかずっと見ていられる感覚になります。決して裕福というわけではないけど心は豊かに、そして家族でいることの多幸感が映像から伝わってきます。
原作を知らなくても十分楽しめる
『若草物語』の物語を全く知らない人にとっても楽しめる作品だと感じます。
読後感の爽やかさが深い余韻を残すので、映画を通して改めて原作を楽しむという人も多いのではないでしょうか。
本作、現在と過去が頻繁に入れ替わる構成になっているので、最初は驚くかもしれません。
その入れ替えも混乱するほどではなく、むしろ現在とそれにつながる過去がリンクしてみることができるので、その時々のキャラクターの心情がより伝わってきて、うまい演出でした。
同時に、青春時代の永遠に続かない儚さと、現在の対比という誰にも共感できる描き方は見入ってしまいます。
ネタバレあり
以下では、映画『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ感想・考察】ラストシーンに監督の優しさがにじみ出る
出典:https://www.imdb.com/
幾度となくリメイクされてきたアメリカ文学の名作『若草物語』ですが、本作は非常に丁寧に、そして原作者に寄りそった優しい映画でした。
原作への愛のある解釈
改めて原作の『若草物語』を読んでみましたが、大筋は忠実に描いているように感じましたね!
大きく異なるのはジョーの描き方。冒頭からすでにニューヨークで小説家を目指しているところから始まる本作。
そんな彼女が、過去を回想しながら自分と家族の物語(まさしくストーリー・オブ・マイ・ライフ)を執筆するという流れになっています。
この描き方が非常に巧みで、映画の尺に収めるだけではなく新しい『若草物語』としての解釈を現代的に描いているんです。
原作では、ジョーはニューヨークで出会ったベア教授と結婚します。本作でも、その物語は描かれるのですが、その描き方のアプローチがすごいんです。
『若草物語』は、原作者オルコットの自伝的小説ですが、オルコット自身は生涯結婚していません。
グレタ・ガーウィグ監督は、「なぜオルコットは結婚しなかったのか?」という疑問に対する一つの解釈を本作に落とし込んだのです。
これが本当に素晴らしいんですよ…!
原作にないシーンとして、ジョーが理不尽な要求を突きつけてきた編集者と議論するシーンがあります。
編集者は、ジョーの小説の出版に同意するも、その条件として「主人公を結婚させる結末を描くこと」と提示し、ジョーは譲歩するのです。
私はお金のためにヒロインを結婚させるのよ
当然ながら、ジョーが描くこの小説の主人公はジョー自身なのです。しかし、彼女は結婚をしていませんよね。
- 小説の読者(そして映画の観客までも)が望むジョーの幸せ
- 自分自身の生き方を貫くジョーの幸せ
この、ある意味メタ的な描き方をすることによって、2通りの生き方を並列して描いたのでした。
愛する人と結ばれること、自分らしく生きること。その両方を天秤にかけずに描き出したのです…!
【ネタバレ感想・考察】誰の生き方も否定せず、受け入れる寛大さ
出典:https://www.imdb.com/
また、本作で大きなテーマとなるのが“結婚観”への考え方です。
どんな生き方も間違いじゃない
四姉妹がそれぞれ異なった性格であるように、結婚観に関しても考えは異なります。
ましてや原作はアメリカ南北戦争の1860年代が舞台。
女性が経済的に成功するには娼婦になるか、女優になるかしかない
劇中メリル・ストリープ演じるマーチ伯母の強烈な上記のセリフがあるように、当時の女性にとっては画一的な生き方を強いられる世の中でした。
そんな世の中に疑問を感じ、自分の感じるように生きるジョーの姿はたくましく、美しく映ります。
しかし、そんな強く生きるジョーであっても、心の声を漏らしてしまう終盤のシーンが特に印象的でした。
女の幸せが結婚だけなんておかしい。そんなの絶対間違ってる!でも…どうしようもなく寂しいの。
このシーンは心が震えました…!
いろんな形の生き方がある。本作では、単に「結婚は良いもの、結婚しなくても幸せな生き方もある」という描き方はしません。
四姉妹の生き方を通して、どんな生き方でも悩みはあって、でも自分らしく生きていけば良いんだというメッセージが伝わってくることが素晴らしいのです。
それを原作者のオルコットへのリスペクトを込めた愛のあるリメイクによって描き出したグレタ・ガーウィグ監督、凄まじい才能ですよ。
どの生き方も否定せず、理解しようとする描き方、本当に素晴らしいですよね…!
グレタ・ガーウィグ自身も投影
もちろん本作は、ジョーというあの時代に力強く生きた原作者のオルコットありきのストーリーですが、そこには監督のグレタ・ガーウィグ自身の姿も投影されているように感じます。
“女性監督”だから言い方はしたくないですが、本作はやっぱりグレタ・ガーウィグ監督じゃないと描けなかったと感じます。
事実、圧倒的な男性社会である映画監督という職業で、彼女が一人の表現者として伝えたかったもの。
特に物語のラスト、ジョーが執筆した『若草物語』が活版印刷によって製本されていく様がじっくり描かれるシーンは本当に感慨深いです。
じっと眺めるジョーの眼差しからは、原作者のオルコット、そして監督のグレタ・ガーウィグが浮かんで見えました。
まとめ:誰も否定しない、人生讃歌の傑作リメイク
今回は、グレタ・ガーウィグ監督の『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』をご紹介しました。
近年の映画の中でも特に素晴らしく、心に刺さった映画となりました。
どんな生き方、境遇にあってもそれを否定せず、理解する。希望に溢れた、そして前向きに背中を押してくれる素晴らしい映画でした!
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