ホラー・スリラー

【ネタバレ感想】『ミッドサマー』はグロい怖い?いや、不快です。

今回ご紹介するのは映画『ミッドサマー』です。

アリ・アスター監督による作品で、「フェスティバル・ホラー」などとも言われています。

スウェーデンの奇祭に訪れた若者たちの身に降りかかる出来事を、色彩豊かに映し出し、ホラー映画としても異色な存在になっていました。

もう一度見たくなるディティールの細かさと、もう二度と見たくなくなる映像のバランスが絶妙で、監督のこだわりを強く感じました。

映画『ミッドサマー』の作品情報とあらすじ

作品情報

原題Midsommar
監督アリ・アスター
脚本アリ・アスター
出演フローレンス・ピュー
ジャック・レイナー
ウィリアム・ハーパー
ウィル・ポールター
製作国アメリカ
製作年2019年
上映時間147分
おすすめ度(3.5点/5点)

あらすじ

不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学の恋人や友人たちと共にスウェーデンを訪れる。

彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。

太陽が沈むことがないその村は、明るく歌い踊る村人たちはとても親切でまるで楽園のように見えたのだが…。

『ミッドサマー』のキャスト

© A24

アリ・アスター監督

本作の監督は『ヘレディタリー/継承』で注目を集めたアリ・アスター監督。

脚本も手掛け、自身の恋人との破局からもインスピレーションされたという本作は、ジャンル映画の真骨頂というべき位置づけになった映画でした。

注目の若手俳優たち

主演はいま再注目の女優、フローレンス・ピュー。

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』『ブラック・ウィドウ』といった注目作にも出演しています。

第92回アカデミー賞でも助演女優賞にノミネートされました。

その他にも、『シング・ストリート』のジャック・レイナーや、『メイズ・ランナー』のウィル・ポールターなどが出演しています。

この二人『デトロイト』でも共演していたのですが、いい意味で何かが起こしてくれそうな役柄が多いんですよね。

特にウィル・ポールターは一癖ある嫌な奴の役が似合っていて大好きです。

配給は話題のA24 

本作の配給は面白い映画を数多く排出している映画プロダクション「A24」。

アリ・アスター監督の前作『へレディタリー/継承』でもA24が配給を獲得し、話題となりました。

関連記事【A24films】映画プロダクション「A24」を知っているか?

『ミッドサマー』はグロい怖い?いや、不快です

© A24

『ヘレディタリー/継承』で魅せた悪魔的演出力を惜しげもなく“継承”しているのが本作『ミッドサマー』でした。

本作をホラー映画としてグロい、怖いという観点から見てみます。

結論から言うと「怖くはないけどグロい」という感じでした。

グロさについて

本作、レーティングはR15+ということですが、はっきり言ってグロいです。

ホラー映画やスプラッター映画をよく見る方からすればそこまでではないですが、R15+にしてはグロいという印象でした。

『羊たちの沈黙』のレクター博士が好みそうなシーンがあったり、グロいシーンを割とガッツリ移しているので、慣れていない方にとってはショックは大きいかも知れません。

何より、サブリミナル的にグロいシーンを突然のカットで切り込んでくる辺りが憎いなーと思いました(上手いです)。

具体的なグロい場面について知りたい方はネタバレ以降で解説しています。

怖さについて

一応ホラー映画というジャンルでもある本作ですが、いわゆる怖さというものは感じませんでした。

ただ、「怖さよりも気持ちが悪くなる不快さ」が怖さ以上の不気味で不穏な空気を作っているのです。

一番印象的なのは、冒頭とそれ以降の映像のギャップ。

ボニーの妹が両親もろとも心中するという不幸な出来事を薄暗い映画で描く序盤と対象的に、スウェーデンのホルガ村へ移ってからは、白夜で白昼の映像が続きます。

そしてそこで行われる奇祭と、その場所のギャップが気持ち悪さを促進させます。

詳しくはこの後ご紹介しますが決して「怖い」映画ではないです。

【ネタバレ感想】見事な伏線とカタルシス

© A24

※以下、映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。

本作、147分という長尺なのですが、意外とそこまで長く感じないのが不思議。

本来こういった不快な気分になる映画は、「早く終わってくれ」という感じが続くものですが、『ミッドサマー』においては言われてみれば長かったかもという感じなのです。

見事な伏線の数々

本作が長く感じなかったのは恐らく、アリ・アスター監督のこだわり抜いた映像と演出が飽きさせないからだと思います。

中でも見事に散りばめられた伏線の数々が上手い。特に印象的なのはタペストリー。

© A24

劇中に登場するタペストリーや絵が、まさしく本作のストーリーそのものを描いているのです。

そしてそれらを、フォーカスするわけではなく、それとなく見せる演出が上手いんですね。

「郷に入っては郷に従え」ということで、伝統的な祝祭を目の前に、一体どこに連れて行かれるんだという不安定な状態のまま進んでいきます。

これがなんとも不快なんですよね(もちろん褒めています)。

ラストのカタルシス

本作は2つの要素をもとに進んでいきます。

  • ダニーとクリスチャンの恋愛
  • 家族を失ったダニーの精神的トラウマ

どちらにしてもラストでは主人公ダニーの変化を感じることになります。

まずは、ダニーと彼氏のクリスチャンの関係性。4年以上も付き合いながらも誕生日を忘れるクリスチャン。

一家心中というトラウマを抱えたダニーをクリスチャンは支えているようでそうでもない。

惰性で付き合っているようなクリスチャンに不安を感じるダニー。

さらに、家族を失ったことのトラウマが彼女を苦しめます。

しかし、ホルガ村のコミューンはそんな彼女を受け入れてくれます。

それが顕著に分かるのが、クリスチャンが赤毛の少女マヤとセックスしているところを見てしまった後のシーン。

号泣する彼女の泣き声に合わせて周りの女性達も一緒に泣き叫ぶのです。

このシーンの気持ち悪さと言ったら。

ホルガのコミューンが彼女を受け入れ、彼女の気持ちとリンクした瞬間でした。

そして、恋人クリスチャンを生贄に選択するラスト。

これによって彼女のクリスチャンへの依存から解放されるとともに、ホルガ村の人とリンクすることで家族を失ったダニーは新たな家族を手にするのでした。

気味の悪いラストなんですが、ラストカットの彼女の笑みを見るとこれまでの苦しみからの解放を否応なく感じるんですよね。まさにカタルシスです。

今後の彼女がどう生きていくかを想像させる終わり方にしていたのはさすがでした。

新たな家族と共にコミューンで生きていくのか。

それとも我に返って復讐をするのか。

そして、この物語の引き金となった大学の友人ペレに関しても、彼のダニー対する想いと「両親が炎に包まれて死んだ」という言葉から、このダニーの物語は避けられなかったのではと思うと背筋がゾクゾクしました。

その他にも徹底した伏線と細かな演出が散りばめられている本作。

ありがたいことに、本作の伏線の数々とその解説は公式HPで公開しているのでそちらをご覧いただければよく分かると思います。

>>『ミッドサマー』完全解析ページはこちら

映画『ミッドサマー』のグロい場面

本作はR15+の割にはグロい映画でした。

恐らく慣れていない方だと、結構ショックを受ける方も多いのではないでしょうか。

『ミッドサマー』に登場したここがグロかったというシーンを挙げてみます。

『ミッドサマー』のグロシーン

  • 崖から飛び降りるシーン
  • 吊し上げられるシーン
  • セックスシーン

崖から飛び降りるシーン

本作で一番グロいのはこの一連のシーンだと思います。

ホルガ村の伝統で、崖から飛び降り自殺をするのですが、死にきれず足が変な方向へ曲がってしまい、死にきれないところをハンマーで頭をかち割るというシーン。

はっきり言ってグロいです。気分を害する人も多いでしょう。

本作で一番グロく、本作のギアが入るシーンでもあるのでインパクトが大きいです。

吊るし上げられるシーン

その他でグロいと挙げられるのがこのシーン。

恋人を置いて先に帰ったと言われていたイギリス人のサイモンの末路です。

彼はニワトリ小屋にて背中を解体されて吊るし上げられていました。なんとその状態で生きているのです。

肺や臓器が丸出しになり、生きたままニワトリ達の餌と化していて、短いシーンですがガッツリ移るのでグロいです。

セックスシーン

ある意味グロイのが、クリスチャンのセックスシーン。

策略にはめられ、赤毛の少女マヤとセックスしてしまうのですが、その周りには若い人から老婆までが裸で取り囲み、二人のセックスを見守るのです。

はっきり言って気味が悪いシーンである上に、観たくもない裸を見せられるという意味ではグロいと感じますね。

映画『ミッドサマー』はグロい、だけど…

アリ・アスター監督は“家族”と“恋愛”に関する映画と話しています。

確かにそれは間違いありません。

僕が見た上映会は満席でした。ただ、途中で退出する方もいたのが現実。

グロいのは間違いないし、気分も悪くなる映像があります。だけど、不思議な感覚に陥るんですよね。自分のその感覚が不気味にも感じました。

美しい自然と牧歌的な風景、そこで行われる凄惨な奇祭。

そしてトラウマや抑圧からの解放。

笑えるシーンもあったり、ゆらゆらと揺れる映像やサブリミナル的にグロ映像を差し込んできたりするので感情がおかしくなります(いい意味で)。

ディティールの細かさに注目してもう一度見たいけど、同時にもう二度と見たくなくなる映画でした。

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