ミッドナイトスワン

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映画レビュー

【ネタバレ感想/考察】『ミッドナイトスワン』トランスジェンダーと社会

今回ご紹介する映画は『ミッドナイトスワン』です。

内田英治監督×草なぎ剛主演、育児放棄された少女を預かったトランスジェンダーの主人公が、次第に彼女と心を通わせていく様を描いた映画。

本記事では、ネタバレありで『ミッドナイトスワン』を観た感想・考察、あらすじを解説。

まめもやし

単純に面白かったと言える作品でありませんが、心を揺さぶられたのは間違いありません。

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映画『ミッドナイトスワン』の作品情報とあらすじ

『ミッドナイトスワン』

ミッドナイトスワン
ストーリー
感動
面白さ
テーマ性
満足度

あらすじ

新宿のニューハーフショークラブのステージに立っては金を稼ぐトランスジェンダーの凪沙は、養育費を当て込んで育児放棄された少女・一果を預かる。セクシャルマイノリティーとして生きてきた凪沙は、社会の片隅に追いやられる毎日を送ってきた一果と接するうちに、今まで抱いたことのない感情が生まれていることに気付く。

作品情報

タイトルミッドナイトスワン
監督内田英治
脚本内田英治
出演草なぎ剛
服部樹咲
製作国日本
製作年2020年
上映時間124分

予告編

↓クリックでYouTube が開きます↓

映画『ミッドナイトスワン』のスタッフ・キャスト

内田英治監督

名前内田英治
生年月日1971年
出身ブラジル/リオデジャネイロ

主な主演作

  • 『グレイトフルデッド』(2014)
  • 『獣道』(2017)
  • Netflixドラマ『全裸監督』

本作を手がけたのは、企画・脚本・監督そして原作までを担当した内田英治監督。ブラジルのリオデジャネイロ生まれで、もともと週刊プレイボーイの記者をされていました。

Netflixの『全裸監督』では監督・脚本を務めています。

『ミッドナイトスワン』キャスト・キャラクター

キャラクターキャスト/役柄
『ミッドナイトスワン』草なぎ剛凪沙
(草なぎ剛)
新宿のニューハーフショークラブで働くトランスジェンダー。
『ミッドナイトスワン』服部樹咲桜田一果
(服部樹咲)
広島から凪沙に預けられてやってきた中学生。
『ミッドナイトスワン』真飛聖片平実花
(真飛聖)
バレエ教室の先生。
『ミッドナイトスワン』水川あさみ桜田早織
(水川あさみ)
一果の母親。

草なぎ剛さんは過去作でも素晴らしい演技をしていますが、本作の演技はキャリアハイといっても過言ではないはず。一方で、トランスジェンダーの役を演じることへの様々な意見があると思います。

本作で一番驚いたのが、一果役を演じた服部樹咲さん。演技初挑戦というのが信じられないほど印象に残り、感情を表に出さない役柄ではありますが、凪沙とバレエとの出会いを通して少しずつ、氷が溶けていくように感情が見えてきます。

バレエのコンクールで入賞経験を持っていることもあり、美しい演舞の説得力がありました。

一果が通うことになるバレエ教室の先生役には真飛聖さん。彼女の存在が本作では重要な役どころになっていて、元宝塚のトップスターであり、一果にバレエを指導する説得力は抜群です。

一果の実母であり、育児放棄した母親役を演じたのは水川あさみさん。凪沙と一果を苦しめる役柄ですが、演技力に定評がある彼女はいい意味でキツく、演じているのが水川あさみさんだと気づかないほどでした。

ネタバレあり

以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

【ネタバレ感想】バレエを通した対話

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(C)2020「MIDNIGHT SWAN」FILM PARTNERS

トランスジェンダー描いた作品は世界的には多くありますが、日本では多くありません。知っている限りで言うと、2017年の『彼らが本気で編むときは』で生田斗真さんが演じていたのが記憶に新しい程度。

だからこそ、トランスジェンダー役を当事者ではない俳優が演じることや、生きづらさや苦しみに焦点を当てていることも議論があってしかるべきだとも思います。

同じく2020年公開の『37セカンズ』では、脳性麻痺で漫画家を目指す女性を描き、当事者の佳山明さんが主人公を演じて素晴らしい映画になっていました(監督はアメリカで活躍するHIKARI監督)。

今後の邦画がどう変わっていくのかも注目したいところです。

語らずに見せる印象的なシーンの数々

本作ではあえてセリフで語らずにシーンで見せるという表現が非常に印象的に効いていたと感じます。

新宿のショーパブで働く凪沙は、ホルモン注射を受けに医者にかかっていますが、性別適合手術を受けるために貯金していることが分かります。

一方、一果は、言葉数自体が少ないですが、バレエがやりたい気持ちがあるにも、自分の言葉で伝えることができないゆえに、ひっそりとバレエ教室の見学をしたり、凪沙にバレエがやりたいということも言い出せず、代わりに部屋をキレイにすることで訴えているのです。

さらには、実母の元でもバレエの経験がある様子も露骨に語られることなく自然に映し出されます。

一果とりんの関係性

一方で、一果の友達、りんの描き方も印象的でした。

りんは裕福な家庭で、一見すると不自由なく暮らしているのですが、彼女の置かれた心境を考えると辛いものがあります。

中盤、りんは足をケガしたことでバレエを続けることができなくなってしまいます。

そんな彼女の前で母親は「バレエを失ったらこの娘にはなにもない」と平気で言ってしまうのです。

裕福なはずの彼女が怪しげな撮影バイトをしていることが明らかになったときでも、「お金に困らない額の小遣いを与えているのに」という彼女と向き合おうとしない態度をみせます。

結果的に彼女は屋上から飛び降りるという選択をしますが、最後の最後まで両親がりん本人ではなく、バレエを通してでしか見ることがなかったのは非常に辛いシーンでした。

また、このシーンが一果がコンテストの舞台で観客の前で披露しているシーンと対比して映されるのが印象的です。

凪沙の親としての感情の芽生え

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(C)2020「MIDNIGHT SWAN」FILM PARTNERS

物語の中盤、一果が凪沙に対して感情をあらわにするシーンがあります。彼女のために新しい働き口をみつけ、容姿も変わる凪沙。

しかし、それに対する一果の答えは「頼んでない」というもの。

一果がバレエを始めたのは自分の意志であり、怪しい撮影会にまで足を踏み入れてお金を工面してやっていました。

しかし、凪沙が「あなたのために」という発言をしたことによって、一果を捨てた実母が冒頭で言っていた「誰のために働いてると思ってんの」という言葉が脳裏をよぎるのです。

彼女の支えになろうと思ってした行動が、いつの間にか実母と同じ状況になってしまったのです。

それは同時に彼女の親としての感覚に近づいたことでもあり、一果もそれが分かるからこそ凪沙の抱擁を受け入れるのです。

このシーンの2人の表情が抜群で、複雑にはらんだ感情を少ないセリフで物語るとても印象的なシーンでした。

まめもやし

2回登場するハニージンジャーソテーの食事シーンは2人の関係性を表したいいシーンです。

唐突な場面展開に対する違和感も

非常にセンセーショナルに描いていたことが良かった一方で、中盤以降の急展開には置いていかれる部分もありました。

具体的に言うと、バレエシーン以降の描き方。

急にカットが変わったかと思うとタイでの性別適合手術のシーンとなり、地元の広島で暮らすことになった一果のもとへ「女性になったから母親になれる」と凪沙が迎えにくるのです。

この急展開はあまりにも唐突で、「あれ、そういうことなんだっけ」という違和感を覚えずにはいられません。

さらにはその後、一果は実母のもとで学校を卒業すると、上京して凪沙の元へ訪れるのですが、凪沙は「女性であることを怠った」ことで介護を必要とし、視力を失うまでの変わり果てた姿となっているのです。

あまりにも露骨な悲劇として描いている一方で、その後の海のシーンでは感動を誘う演出になっていて、これまでの凪沙の行動を観ている限り、なぜそうなってしまうのかがモヤモヤが残る展開でもあります。

バレエシーンはまさに圧巻

とはいえ、『ミッドナイトスワン』がこれほどまでに心を揺さぶられるのは、バレエという体で表現する舞踊を通して凪沙と一果をつなぐコミュニケーションが描かれるからだと思います。

一果はバレエを踊ることで、言葉では伝えることができない感情を表現しているのです。一果がアパートの廊下を華麗に踊るシーンが、彼女の表情にはみせない感情が見えた気がしたのも印象的でした。

だからこそラストシーンでは、ニューヨークで一果が凪沙を重ねるように赤い靴とトレンチコートを身にまとい、以前は踊ることができなかった「白鳥の湖」を演舞するシーンに感動が押し寄せるのです。

それを演技で表現できる服部樹咲さんにが本当にすごいとしか言えません。

【ネタバレ考察】セクシャルマイノリティと映画

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(C)2020「MIDNIGHT SWAN」FILM PARTNERS

映画の存在意義

フィクションだけではなく、現実を知ることは重要です。

ハリウッドでのトランスジェンダーがどう描かれてきたかを描いたNetflixドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』も合わせておすすめします。

また、トランスジェンダーの現状や日常生活を描いた日本のドキュメンタリー『I Am Here 私たちはともに生きている』も必見です。

YouTube等で当事者の方の感想なども上がっているので、映画を見た方はこれらを合わせてチェックしてみてください。

草なぎ剛さんが素晴らしい演技をしていたことは間違いない一方で、本作のように、トランスジェンダーの主人公を描く上で、演じる当人がトランスジェンダーである必要性について様々な意見があると思います。

当然ながら雇用機会は平等であるべきで、当事者にしかわからないことや視線は、間違いなく存在すると思っています。

アカデミー賞作品賞を受賞した『コーダ あいのうた』では、聴覚障害の家族を当事者が演じていました。耳が聞こえない主人公の父親が、ロックを好み、そのリズム・振動で音を聞いているというさりげないシーンが描かれていて、それこそ当事者だからこその視線だと感じました。

「トランスジェンダーの俳優は?」と質問されたとき、どれくらい頭に名前が思い浮かぶでしょうか。私は本作を見た当時は、一人も思い浮かびませんでした。

まとめ:トランスジェンダーと社会

以上、内田英治監督の『ミッドナイトスワン』を紹介しました。

本作をみて何を感じるのか、チェックしてみてください。

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