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【ネタバレ感想/考察】草なぎ剛が魅せた『ミッドナイトスワン』の美しさ

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今回ご紹介する映画は『ミッドナイトスワン』です。

内田英治監督による作品で、育児放棄された少女を預かったトランスジェンダーの主人公が、次第に彼女と心を通わせていく様を描いた映画。

個人的には、新宿のレイトショーで観たということもあり、非常に心に沁みる一本となっており、単純に面白かったと言える作品でありませんが、心を揺さぶられたのは間違いありません。

映画『ミッドナイトスワン』の作品情報とあらすじ

作品情報

原題 ミッドナイトスワン
監督 内田英治
原作 内田英治
出演 草なぎ剛
服部樹咲
製作国 日本
製作年 2020念
上映時間 124分
おすすめ度 (4点/5点)

あらすじ

新宿のニューハーフショークラブのステージに立っては金を稼ぐトランスジェンダーの凪沙(草なぎ剛)は、養育費を当て込んで育児放棄された少女・一果を預かる。

セクシャルマイノリティーとして生きてきた凪沙は、社会の片隅に追いやられる毎日を送ってきた一果と接するうちに、今まで抱いたことのない感情が生まれていることに気付く。

『ミッドナイトスワン』のスタッフ・キャスト 

内田英治監督

midnightswan-director出典:https://midnightswan-movie.com/

本作を手がけたのは、企画・脚本・監督そして原作までを担当した内田英治監督。

ブラジルのリオデジャネイロ生まれで、もともと週刊プレイボーイの記者をされていました。

Netflixの『全裸監督』では監督・脚本を務め、大ブームを呼びました。

凪沙(草なぎ剛)

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出典:https://midnightswan-movie.com/

草なぎ剛さんは過去作でも素晴らしい演技をしていること知っていましたが、本作の演技は圧倒的。

一方で「トランスジェンダーの役を演じる」ことへの様々な意見があると思います。

しかしながら、僕が観た感想としては演じているという感覚は覚えず、この演技に対して違和感だったり不快感を覚える人はいないように感じます。

桜田一果(服部樹咲)

midnightswan-02出典:https://midnightswan-movie.com/

本作で一番驚いたのが、一果役を演じた服部樹咲さん。

本作が演技初挑戦だという彼女の圧倒的存在感。

感情を表に出さない役柄ではありますが、凪沙とバレエとの出会いを通して少しずつ、氷が溶けていくように感情が見えてきます。

そして、様々なバレエのコンクールで入賞経験を持つ圧倒的な演舞

内田監督といえばNetflixの『全裸監督』で黒木香役で森田望智を見出したこともあって、そのキャスティングは抜群に活きています。

まめもやし
まめもやし
個人的には蒼井優的な雰囲気を劇中で何度も感じました。

片平実花(真飛聖)

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一果が通うことになるバレエ教室の先生役には真飛聖さん。

彼女の存在が本作では重要な役どころになっていて、やはり元宝塚のトップスターということもあって、バレエ指導するシーンの説得力は抜群です。

桜田早織(水川あさみ)

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一果の実母であり、育児放棄した母親役を演じたのは水川あさみさん。

僕は最初、演じているのが水川あさみであることに気づきませんでした。

役どころで言えば凪沙と一果を苦しめるポジションですが、やはり演技が上手いです。

【ネタバレ感想】

midnightswan-05出典:https://midnightswan-movie.com/

※以下、映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。

トランスジェンダー描いた作品は世界的には多くありますが、日本ではそれほどない印象があります。

僕が知っている限りで言うと、2017年の『彼らが本気で編むときは』で生田斗真さんが演じていたのが記憶に新しいです。

『彼らが本気で編むときは』が、心温まる展開を描いていたのに対して、『ミッドナイトスワン』は苦しみや生きづらさにフォーカスしているため、観ていて辛くなる部分も多々あります。

語らずに見せる印象的なシーンの数々

本作ではあえてセリフで語らずにシーンで見せるという表現が非常に印象的に効いていたと感じます。

新宿のショーパブで働く凪沙は、ホルモン注射を受けに医者にかかっていますが、性適合手術を受けるために貯金していることが分かります。

一方、一果は、言葉数自体が少ないですが、バレエがやりたい気持ちがあるにも、自分の言葉で伝えることができないゆえに、ひっそりとバレエ教室の見学をしたり、凪沙にバレエがやりたいということも言い出せず、代わりに部屋をキレイにすることで訴えているのです。

さらには、実母の元でもバレエの経験がある様子も露骨に語られることなく自然に映し出されます。

一果とりんの関係性

一方で、一果の友達、りんの描き方も印象的でした。

りんは裕福な家庭で、一見すると不自由なく暮らしているのですが、彼女の置かれた心境を考えると辛いものがあります。

中盤、りんは足をケガしたことでバレエを続けることができなくなってしまいます。

そんな彼女の前で母親は「バレエを失ったらこの娘にはなにもない」と平気で言ってしまうのです。

裕福なはずの彼女が怪しげな撮影バイトをしていることが明らかになったときでも、「お金に困らない額の小遣いを与えているのに」という彼女と向き合おうとしない態度をみせます。

結果的に彼女は屋上から飛び降りるという選択をしますが、最後の最後まで両親がりん本人ではなく、バレエを通してでしか見ることがなかったのは非常に辛いシーンでした。

また、このシーンが一果がコンテストの舞台で観客の前で披露しているシーンと対比して映されるのが印象的です。

凪沙の親としての感情の芽生え

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出典:https://midnightswan-movie.com/

物語の中盤、一果が凪沙に対して感情をあらわにするシーンがあります。

彼女のために新しい働き口をみつけ、容姿も変わる凪沙。

しかし、それに対する一果の答えは「頼んでない」というもの。

一果がバレエを始めたのは自分の意志であり、怪しい撮影会にまで足を踏み入れてお金を工面してやっていました。

しかし、凪沙が「あなたのために」という発言をしたことによって、一果を捨てた実母が冒頭で言っていた「誰のために働いてると思ってんの」という言葉が脳裏をよぎるのです。

彼女の支えになろうと思ってした行動が、いつの間にか実母と同じ状況になってしまったのです。

それは同時に彼女の親としての感覚に近づいたことでもあり、一果もそれが分かるからこそ凪沙の抱擁を受け入れるのです。

このシーンの2人の表情が抜群で、複雑にはらんだ感情を少ないセリフで物語るとても印象的なシーンでした。
まめもやし
まめもやし
2回登場するハニージンジャーソテーの食事シーンは2人の関係性を表したいいシーンです。

唐突な場面展開に対する違和感も

非常にセンセーショナルに描いていたことが良かった一方で、中盤以降の急展開には置いていかれる部分もありました。

具体的に言うと、バレエシーン以降の描き方。

急にカットが変わったかと思うとタイでの性別適合手術のシーンとなり、地元の広島で暮らすことになった一果のもとへ「女性になったから母親になれる」と凪沙が迎えにくるのです。

この急展開はあまりにも唐突で、「あれ、そういうことなんだっけ」という違和感を覚えずにはいられません。

さらにはその後、一果は実母のもとで学校を卒業すると、上京して凪沙の元へ訪れるのですが、凪沙は「女性であることを怠った」ことで介護を必要とし、視力を失うまでの変わり果てた姿となっているのです。

あまりにも露骨な悲劇として描いているのは間違いなく、その後の海のシーンでの美しさに感動を誘うのは間違いないですが、これまでの凪沙の行動を観ている限りなぜそうなってしまうのかが疑問でしかないのです。

バレエシーンはまさに圧巻

とはいえ、『ミッドナイトスワン』がこれほどまでに心を揺さぶられるのは、バレエという体で表現する舞踊を通して凪沙と一果をつなぐコミュニケーションが描かれるからだと思います。

一果はバレエを踊ることで、言葉では伝えることができない感情を表現しているのです。

一果がアパートの廊下を華麗に踊るシーンが、彼女の表情にはみせない感情が見えた気がしたのも印象的でした。

だからこそラストシーンでは、ニューヨークで一果が凪沙を重ねるように赤い靴とトレンチコートを身にまとい、以前は踊ることができなかった「白鳥の湖」を演舞するシーンに感動が押し寄せるのです。

言わずもがな、それを演技で表現できる服部樹咲さんにが本当にすごいとしか言いようがありませんでした。

【ネタバレ考察】セクシャルマイノリティと映画

midnightswan-06出典:https://midnightswan-movie.com/

映画の存在意義

本作では、絶賛する声が多数ある一方で、その描き方に対しての批判も一定数存在し、内田監督自身がTwitterで発言した内容に対する様々な意見がみられました。

映画が見た人によって感想が異なるというのは至極当然のことで、それこそが映画の醍醐味だと感じています。

そのため、監督が何を言おうが、他の見た人が何を言おうが、僕が観たときに感じたその感情は間違いなく本当だということで、一番悲しくなるのは、映画を見ていない人がとやかく言うことなんです。

本作で言えば、確かに悲劇的な描き方をしていることで、それによる偏った考えが生まれることもあるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。

事実、僕は本作を通してYouTubeでトランスジェンダーの方の意見や感覚なども知ることができたし、Netflixドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』という作品を知るきっかけにもなりました。

本作を観た方は合わせて観てみることをおすすめします。

トランスジェンダーはトランスジェンダーが演じるべき?

本作のように、トランスジェンダーの主人公を描く上で、演じる当人がトランスジェンダーである必要性について様々な意見があると思います。

草なぎ剛さんが素晴らしい演技をしていたのは誰もが認めることである一方で、あくまでもそれは男性が演じる女性というのが事実。

今後、トランスジェンダーを始めとしたセクシャルマイノリティの方だからこそ演じられる役柄を獲得することに関しては同意ですが、フィクションを描いた映画という形であれば、個人的には絶対にそうであるべきだとは感じない部分もあります。

まめもやし
まめもやし
僕自身、自分ごととしても自戒を込めて見ることだってできます。

具体的に言えば、凪沙が就職面接を受けるシーンでの面接官のやり取りがそう。

上司の方が「トランスジェンダー、流行っていますよね。講習を受けました」という露骨な表現はもちろんですが、それに対する隣の面接官の気の使い方(変に気を使って褒める表現)も、もしかしたら当事者の方にとっては違和感を覚えるのではないでしょうか。

一方で、真飛聖さん演じるバレエ講師と凪沙とのやり取りの自然さがとても印象的に映ります。

身構えたり気をつかうのではなく、当たり前に存在しているという感覚というのでしょうか。

この辺りは、固定観念を解体した世界観を描いた近年の青春映画の傑作『ブックスマート』にも通じるものがあります。

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【まとめ】とやかく言う前に『ミッドナイトスワン』を観てみよう

以上、内田英治監督の『ミッドナイトスワン』を紹介しました。

単純に面白かったと片付けられる話ではありませんが、非常に心に残る作品でした。

SNSや人の意見に左右されるのではなく、まずは理解しようとか共感しようとかそういう感情抜きで、今のあなたが観て何を感じるのかを、ぜひ劇場で体感してください。

改めて草なぎ剛さん、服部樹咲さんをはじめとした役者の方の素晴らしい演技には心を揺さぶられた作品でした。

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