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ひろしの回想が泣ける『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』は人生の教科書だ。

オトナ帝国の逆襲3

今回ご紹介するのは映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』です。

劇場版のクレヨンしんちゃん映画であり、個人的にはしんちゃん映画で最も好きな作品です。

初めてみたのは、それこそしんちゃんと変わらないくらいの年齢の頃でしたが、改めて見ると本当によくできた作品で、大人になった人こそ観るべき映画だと感じました。

ひろしの声優を演じた藤原啓治さんが逝去

しんちゃんのお父さんである、ひろしの声優を務めた声優の藤原啓治さんが4月12日にご逝去されました。

とても残念でなりません。ご冥福をお祈りします。

  • 「クレヨンしんちゃん」野原ひろし役
  • 「鋼の錬金術師」マース・ヒューズ役
  • 「HUNTER×HUNTER」レオリオ役
  • 「交響詩篇エウレカセブン」ホランド・ノヴァク役
  • ロバート・ダウニーJrの吹き替え

藤原啓治さんが声優を務めた代表的な役が上記です。

「クレヨンしんちゃん」の野原ひろし役は放送開始の1992年から2016年8月に病気療養のため休養をとるまでの24年もの間務めていました。

現在のひろし役は森川智之さんに交代しています。

本作「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」ではそんな藤原さんが務めた“ひろしの回想”という最高に素晴らしいシーンがあり、とても大切な作品となっています。

映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の作品情報とあらすじ

作品情報

原題クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲
監督原恵一
原作・脚本原恵一 
製作国日本 
製作年2001年 
上映時間89分 
おすすめ度(5点/5点)

あらすじ

春日部に誕生したテーマパーク、“20世紀博”。

そこはひろしやみさえたちが育った70年代の懐かしい世界に浸れる場所だった。

しだいに大人たちは子供そっちのけで“20世紀博”に熱中していく…。

クレヨンしんちゃん『オトナ帝国の逆襲』の時代背景

オトナ帝国の逆襲2© 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』が公開されたのは、2001年。

21世紀の始まりです。

時代背景としては、1999年の7月に人類が滅亡するという「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになったり、公害問題などで将来、来たる21世紀への漠然とした不安を抱えている方が多かった時代でした。

そんな中で公開された本作は、大人たちが育った時代の“匂い”により、ノスタルジーを感じ、子供そっちのけで夢中になってしまう。

そこで、しんのすけら春日部防衛隊が大人たちの正気を取り戻すべく立ち向かうストーリー。

本作とは違う意味ですが、映画で“匂い”を表現していた『パラサイト/半地下の家族』を彷彿とさせました。

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本作は未来に希望が持てない人が懐古主義に傾倒する最たる例でもあります。

『ALWAYS 三丁目の夕日』が大ヒットする背景にも似たようなものを感じます。

  • 「昔は良かった」
  • 「私が若い頃は」
  • 「最近の若者は…」

どれもよく耳にする言葉ですが、本作はそんな懐古主義に対する批判、そして未来への希望を見出したすごい映画なんです。

子供の頃に観たときの感想と大人になってから観たときの感想が、しんのすけとひろしそれぞれの感情とリンクする。

だからこそ、子供の頃に観た方ももう一度見てみてください。

Amazonプライム会員であれば見放題作品として視聴できます。

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【ネタバレ感想】ひろしの回想が泣ける

※以下、映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。

僕はこれまでに何回か本作を観たことがあるのですが、その時の記憶でも号泣したことを覚えています。

ひろしの回想シーンから見えたもの

ひろしの回想シーンには多くの方が涙したと思います。

昭和のノスタルジーの匂いによって洗脳されていたひろしでしたが、しんのすけがひろしの臭い靴の匂いを嗅がせたことでひろしは過去を回想して振り返っていきます。

 

ひろしが父親と田舎道を二人乗りで自転車に乗っていた子供時代から、初恋や上京、仕事での失敗、そして、みさえとの出会いとしんのすけの誕生。仕事が夜遅くまでかかり、疲れて帰っても、家に帰れば家族がいることで疲れも吹き飛び、再び最初の田舎道を今度は家族で自転車で乗っているシーンで終わります。

その後、我に返ったひろしは泣きながらしんのすけを抱きしめるのです。

セリフはなく、映像のみで過去を振り返るこのシーンは本当に心に刺さります。

ラスト近くでチャコに現実の未来は醜いだけなのにどうしてそこまで必死になるのかを聞かれてしんのすけは答えます。

オトナ帝国の逆襲5© 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

「オラ、父ちゃんと母ちゃんやひまわりやシロと、もっと一緒にいたいから…喧嘩したり、頭に来たりしても一緒がいいから…あと、オラ、大人になりたいから…大人になってお姉さんみたいな綺麗なお姉さんといっぱいお付き合いしたいから!」

僕がしんのすけと同じくらいの頃、早く大人になりたかったことを覚えています。

自由で何でもできる大人の世界が羨ましかった。

それが時が経つと、いつの間にか子供の頃を懐かしんでいる自分がいて、子供に戻りたいと思っている。

憧れていた大人に必ずしもなれるわけじゃない。

子供の頃の夢とは違う今を生きている人は多いと思います。

結婚したり子供ができるとその選択肢は狭まっていく。

ケンはそんな選択をしたひろしにつまらない人生だと言います。

それに対して、ひろしがこう言います。

オトナ帝国の逆襲4© 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

「俺の人生はつまらなくなんかない!家族がいる幸せをあんたたちにもわけてあげたいくらいだぜ!」

人は一体いつ、大人になるのでしょうか。

義務教育を終えたら?成人したら?自分で稼げるようになったら?

ケンとチャコの姿は、大人になることを辞めた人として描かれます。

彼らは結婚せずに同棲して、子供ももうけていません。

しかし、ケンは野原一家にノスタルジーの匂いをタワーから散布することを明かし、最後にチャンスを与えます。

それはきっとどこかに、野原一家に賭けてみようという気持ちがあったからだと思います。

結果的に、野原一家の動向を中継で見ていたた人々の気持ちが前向きになり、ケンの計画は失敗に終わります。

彼らは自殺しようとしましたが、ハトの家族に阻まれてそれも失敗します。

その後、吉田拓郎の名曲『今日までそして明日から』が流れます。

わたしは今日まで生きてみました
そして今 私は思っています
明日からもこうして生きて行くだろうと

『オトナ帝国の逆襲』は大人こそ観るべきすごい映画

『クレヨンしんちゃん』映画シリーズの中でも僕が一番好きな作品の本作。

その内容は、時代の変遷に伴う未来への不安、そして希望を描いたすごい映画でした。

僕は平成生まれのため、昭和の時代の良さや匂い(空気感)は本当の意味では分かりません。

ただ、時代は平成から令和に変わり、そしてこれからも時代は変わっていきます。

先の見えない時代に対して不安を感じたり希望が持てないと時には感じることでしょう。

その時に、前に進むことを辞めてしまうのか。それは違います。

結婚も子育てもしていない僕ですが、ひろしのような幸せを築けるかもしれない。

昭和が良かった、平成は良かった、そういう話ではないんです。自分がこれまで生きてきた人生の思い出、その積み重なりで未来はできていく。

これからの時代がきっといい時代になる、するんだという前向きな希望が見える素晴らしい映画でした。