今回ご紹介するのは映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』です。
ダニエル・シャイナート監督による作品で、実際に起きた事件をヒントに描かれるダーク•コメディ映画。
コメディと言っていますが、これを笑えるかどうか人それぞれですね…。
ディック・ロングという男の衝撃の死因について分かったとき、あなたは何を感じるでしょうか。
世の中には知らないほうがいいこともありますよ…。
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の作品情報とあらすじ
出典:https://www.imdb.com/
作品情報
原題 | The Death of Dick Long |
---|---|
監督 | ダニエル・シャイナート |
脚本 | ビリー・チュー |
出演 | マイケル・アボット・Jr. |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
上映時間 | 100分 |
おすすめ度 | [jinstar3.0 color="#ffc32c" size="16px"](3点/5点) |
あらすじ
ある夜、バンド仲間のジークとアール、ディックはハメを外してバカ騒ぎをしていた。するとディックが死んでしまったことに気づく。
警察は殺人事件とみて捜査を開始する一方、ジークとアールはディックの死因を知りながら、自分たちの痕跡を消そうと躍起になっていた…。
『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』のスタッフ・キャスト
ダニエル・シャイナート監督
監督は映画『スイス・アーミー・マン』で突飛なアイデアを美しい映像で描き、長編映画デビュー作品ながらセンスを見せつけたクリエイターユニット“ダニエルズ”の一人、ダニエル・シャイナート監督。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"]意味不明に感じると思いますが、見てみればお分かりいただけると思います。[/chat]
前作もそうでしたが、監督は「死」を一つのテーマとして描いています。
その描き方は独特で、ある意味不謹慎にも思われがちなタブーを題材にすることで、興味深く、見るものは惹きつけられるのです。
キャスト
役名 | キャスト |
---|---|
ジーク | マイケル・アボット・Jr. |
リディア(ジークの妻) | ヴァージニア・ニューコム |
アール | アンドレ・ハイランド |
ダドリー | サラ・ベイカー |
ディック・ロング | ダニエル・シャイナート |
本作には著名な俳優はほとんどキャスティングされていません。
逆に言えばそのおかげでフラットに映画を見ることができたので良かったようにも思います。
そんな訳で、誰もやりたがらないディック・ロング役にはダニエル・シャイナート監督自らが演じるという流れも面白いですね。
今日日本はディックが死ぬ方法を見つけます! Check out this special edition poster for #TheDeathOfDickLong by Japanese artist, Nanpei Kaneko - @dicklong_jp opens in Japan today! Get weird with @PHANTOM_FILM! @DickLongMovie @TheDeathOfDick1 pic.twitter.com/1KaiVRqj30
— Michael Abbott Jr. (@mykabit) August 7, 2020
印象的だったのは、ジークの妻リディアを演じヴァージニア・ニューコム。
顔芸とまでは言えませんが、あの事実を聞いたときの表情の説得力は抜群でしたね。
出典:https://www.imdb.com/
制作・配給は「A24」
監督の前作『スイス・アーミー・マン』は配給がA24でしたが、本作はA24が制作・配給しています。
「A24」という映画プロダクションは監督のアイデア主体の意欲的な作品を数多く輩出している注目の映画スタジオです。
その意味で言えば、本作はかなり挑戦的な案を映像化したので、A24だからこそ公開できたようにも思えますね。
他にも『ミッド・サマー』や『エクス・マキナ』など、面白くて普通の映画とは一味違った魅力的な作品が多いので要チェックです。
【ネタバレなし】打ち明けられない人間の心理
出典:https://www.imdb.com/
本作は、死んでしまったディック・ロングという人間の死因をひた隠しにする2人の男が主軸に描かれています。
そこには、「決して打ち明けられない人間の心理とその滑稽さ」が巧みに映し出されていました。
『ファーゴ』×『ハングオーバー』×『ブレイキング・バッド』
本作は監督がいろんな映画からインスパイアされたことがよく分かるプロットが散りばめられていました。
ダニエル・シャイナート監督は、本作の制作にあたって特に映画『ファーゴ』を参考にしたと話しています。
- 田舎町の小さなコミュニティ
- 皮肉っぽさたっぷりの描き方
- ゆるくて気の抜けたキャラクター像
- 大真面目な登場人物の滑稽さ
具体的なところで言うと、上記のような点が『ファーゴ』的な描き方をしていました。
また、きっかけとなるハメを外して取り返しのつかないことになっていく点で言えば『ハングオーバー』シリーズに通じるところも感じます。
さらに、打ち明けられない秘密をひた隠しにしようとする度に家族を巻き込んでいき、どんどん状況が悪化していく様子は海外ドラマ『ブレイキング・バッド』のようでもあります。
そして、劇中の会話の中ではタランティーノ監督『パルプ・フィクション』への言及が合ったのも印象的。
一番大きな点で言えば、映画を見ている観客としては滑稽で笑える部分があるのですが、当の本人たちは大真面目だということなんですよね。
【ネタバレ感想】ディック・ロングの衝撃の死因とは…
※以下、映画のネタバレに触れていますので映画鑑賞前の方は注意してください。
それではネタバレありで本作を詳しくみていきます。
ディック・ロングの衝撃の死因とは…
それでは、本作で一番重要になってくるディック・ロングの死因をネタバレします。
※鑑賞前の人は決して見ないでくださいね。
[ac-box01 title="ネタバレを表示する"]ディック・ロングは飼育している馬のコメットとセックスしたことが原因で死んだのでした。
その詳しい方法について映画では描かれません(むしろ描かなくてホッとした)。
ジークとアールの2人は、ジークが妻のリディアと結婚する前からコメットとのお楽しみをしていたのです。[/ac-box01]
「ディック・ロング」という名前も日本語にしてみれば、芸人どぶろっくで言うところの「大きなイチモツ」という意味なので、本作がどのような位置づけにあるかはある程度分かると思います。
出典:https://www.imdb.com/
さらに、上の日本版ポスターを見てみると分かる通り、薄っすらと影が見えていますよね。普通にポスターでネタバレしてました。
人がやましいことを隠すときの心理描写が巧み
ディック・ロングの死因が分かったところで、本作はそれをひた隠しにしようとするジークとアールの2人のドタバタ劇をみていくことになります。
人がやましいことを隠すとき、ウソをウソで重ねて次から次へと自分で墓穴を掘ってしまうことがよくありますよね。
ディックの血がついた車を湖に沈めようとしても浅すぎて沈まなかったり、その車を盗まれたとウソついたりと、苦し紛れのウソを積み重ねていくのです。
そして、それは無垢な娘の一言によって一気に崩れていくのでした。
警察官の描き方
出典:https://www.imdb.com/
ディックの捜査を担当する警察官の描き方も特徴的で、先述した『ファーゴ』を感じさせるものがあります。
杖をついた熟年の婦警と、意欲的な新人婦警の2人が事件を捜査するのですが、真実に近づくまでが非常にゆったりと描かれます。
狭いコミュニティ
本作は監督の出身地であるアラバマを舞台としていて、その田舎町の狭いコミュニティが上手くスパイスとなっています。
ディックの死について「なんでそんなことするんだよ」という見せ方をしていく序盤と、その死因が分かったときの「これは言えないなぁ」という見せ方が上手いのです。
それは狭いコミュニティだからこそであり、もっというと、特殊な性癖という人には言えない部分を描いているからなんですよね。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] ジークとアールの2人の男性に対して、婦警2人に妻と娘という秘密がバレる対象の多くが女性として描かれていることも印象的です。 [/chat]
新人婦警のダドリーのパートナーが女性というのもまた特徴的でした。
本作では意図的に男性と女性を分けて映し出していることがよく伝わってきました。
意外性はそこまででもない
ディック・ロングの死因は確かにクレイジーで想像の斜め上をいく部分はありますが、正直に言うとそこまでの意外性はなかったですね。
割と序盤でディックの死因についての検査結果が分かるので、その時点で想像できる部分があり、物語の方向性(下ネタに関する話だということ)が見えたのも正直なところです。
[chat face="twitter-icon.jpg" name="まめもやし" align="left" border="gray" bg="none" style="maru"] 「あの死因」一本で100分をもたせるというのは冗長に感じたのが正直なところです。 [/chat]
一方で、死因の詳細を映像で描かず、想像させる気持ち悪さはいいと思いました。
ラストのNickelback「How You Remind Me」は後悔の曲でもあるので、モーテルで沈んだ声でカバーする2人の、絶妙な下手さが本作にピッタリ合っていましたね。
『ディック・ロングはなぜ死んだ?』は実話を元にしている
本作はなかなかクレイジーな作品になっていますが、実話を元にした作品なんです。
「イーナムクローの馬のセックス事件」という2005年にワシントン州で実際に起きた事件を元にしていて、この事件を題材としたドキュメンタリー映画『Zoo』がサンダンス映画祭にて発表もされています。
気になった人は合わせてチェックしてみてください。
『ディック・ロングはなぜ死んだ?』はかなりエッジの聞いたブラックコメディとなっていまいた。
決して子供と一緒に見に行っては行けない映画でもあります。
もし見に行ってしまうとジークのように「パパ、あの人ってなんで死んじゃったの?」と聞かれてしまうでしょう。
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