今回ご紹介する映画は『パラサイト/半地下の家族』です。
ポン・ジュノ監督による映画で、カンヌ国際映画祭で最高賞を獲得し話題となり、そしてアカデミー賞でも作品賞をはじめとした4部門で受賞するという快挙を成し遂げました。
2020年公開映画の中でもトップクラスに面白い映画でした。

抜群の面白さの中にしっかりとした社会性が含まれている傑作でした。そして、ちょっぴりいエロいです。
韓国映画がアカデミー賞で受賞するのは史上初。まだ観てない人はぜひチェックしてみてください。
『パラサイト』の作品情報とあらすじ
おすすめポイント
寄生家族のブラックエンターテインメント。
ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホ主演による、格差社会の人間の様子を切り取るドラマ。
貧困と格差社会を痛烈に風刺する一方で、予測不能のドラマ性、サスペンスやユーモアなど、エンタメ作品としてめちゃくちゃ面白い。
ほぼすべて作り込まれたセットの中で撮影され、細部にまで徹底され洗練された映像の見応えも凄まじい。
アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞を受賞。カンヌ国際映画祭でも最高賞のパルム・ドールを受賞。65年ぶりの快挙となった。

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韓国映画において初の快挙を達成!

本作『パラサイト/半地下の家族』は世界三大映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭にて最高賞のパルム・ドールを受賞しました。
韓国映画のパルム・ドール受賞は初めての快挙となりました。

パルム・ドールといえば、2018年に日本人では21年ぶりの受賞となった是枝裕和監督の『万引き家族』が受賞したことが記憶に新しいですよね。
2年連続でアジア作品がカンヌを獲ったというのは、誇らしい気持ちになります。
カンヌ国際映画祭をはじめとした、世界三大映画祭について知りたい方は下記の記事で解説しています。
そしてなんと、アカデミー賞の作品賞まで受賞する快挙を成し遂げました。
監督は韓国映画を代表する映画監督のポン・ジュノ。
ポン・ジュノ監督の作品について詳しく知りたいという方は以下の記事をあわせてどうぞ。
映画『パラサイト/半地下の家族』のキャスト
『パラサイト』で描かれるのは「貧乏なキム一家と、裕福なパク一家」というシンプルな構図。
半地下に暮らすキム家族
半地下に暮らすキム一家のキャスト
©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
半地下に暮らすキム家族
- キム・ギテク(父)→ソン・ガンホ
- ギウ(息子)→チェ・ウシク
- ギジョン(娘)→パク・ソダム
- チョンソク(母)→チャン・ヘジン
キム一家の主人を演じたのは韓国映画のレジェンドとの呼び声も高い、ソン・ガンホ。
- 『殺人の追憶』
- 『グエムル 漢江の怪物』
- 『スノーピアサー』

ポン・ジュノ監督とは上記作品でもタッグを組んでいて、相性は抜群ですね!
本作でも安定した演技力で絶妙なキャラクターを演じていました。
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長男を演じたのは、チェ・ウシク。
韓国の名作ゾンビ映画『新感線 ファイナル・エクスプレス』にも出演した若手俳優です。
実は、本作のエンディングでながれる主題歌『Soju One Glass(焼酎一杯)』を歌っているのもチェ・ウシクなんです。
アカデミー歌曲賞のショートリストにも選出されていて話題となっています。
かなり独特な曲で、本作の後日談を感じさせる内容だったので、注目してみてください。
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キム家の長女で、強気な女性を演じたパク・ソダム。
キリッとした目つきが印象的で、剛力彩芽さんに似ているとも言われています。
このパク・ソダムが本作ではかなり目立っていて、すごくいい演技をしています。

今後、間違いなく活躍していく女優になりますよね!
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キム家の母親を演じたのは、チャン・ヘジン。
有名な女優ではないと思いますが、劇中である意味一番重要な役割を背負っていて、いい味を出していました。
豪邸に暮らすパク一家
- パク(主人)→イ・ソンギュン
- ヨンキョ(妻)→チョ・ヨジョン
- ダヘ(娘)→チョン・ジソ
- ダソン(息子)→チョン・ヒョンジュン
- ムンクァンジュ(家政婦)→イ・ジョンウン
豪邸に暮らすパク一家のキャスト
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富豪の家庭、パク家の大黒柱である主人を演じたのはイ・ソンギュン。
韓国版『白い巨塔』など、ドラマでも活躍していて、汚職刑事モノの映画『最後まで行く』でも好演していました。
本作でも役柄にピッタリの配役だと感じさせる魅力的な俳優でした。
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パクの妻を演じたのは、チョ・ヨジョン。
もともとファッション雑誌出身ということで、韓国らしい美人で「富豪の家庭の奥さん」という役どころを好演していました。
韓国では悪女役が似合うというイメージがあるみたいで、僕が本作を観た印象と全然違ったので驚きました。
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パク家の長女で、家庭教師を受ける高校生を演じたのがはチョン・ジソ。
まったく知らない女優だったのですが、子役出身の女優みたいですね。
透明感のある可愛らしい顔立ちで、日本でもかなり人気になりそうな予感がします。

本作を観て僕もすっかり彼女のファンになりました!
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パク家の活発な息子を演じたのは、チョン・ヒョンジュン。
ストーリー上もキーポイントとなる役柄で、子役ながらも良い存在感を放っています。
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パク家で家政婦として働く女性を演じたイ・ジョンウン。
富豪には家政婦がつきもので、いろんな事件の軸となりますよね。
本作も例外ではありません。
【ネタバレなし】映画『パラサイト/半地下の家族』の感想
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想像できない展開に、意外性抜群のストーリー。
韓国映画って改めてすごいなぁと感じさせる作品になっていました。
エンタメ性を担保しつつ、社会派でありユーモラスなのは、さすがポン・ジュノ監督の手腕ですね。

ポン・ジュノ監督は世界観の描き方と見せ方が本当に上手い!
132分があっという間に過ぎていきました。
【ネタバレ感想】『パラサイト/半地下の家族』面白さと衝撃の結末
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※以下映画のネタバレに触れていますので、鑑賞後に見ることをおすすめします。
本作、面白かった点をストーリーを追ってまとめてみます。
ポン・ジュノ監督の状況描写の妙
窓からは地面が半分見え、文字通り半地下に暮らすキム一家。
半地下の住居でWi-Fiを探すギウとギジョンの姿から本作は始まります。
Wi-Fiを探し、汚く散らばった部屋を探し回り、せり上がった奇妙なトイレから電波を拾う。
スマホは持っているけど、ネット環境は無い。
冒頭から強烈な印象を与える半地下という生活環境と、キム一家が置かれた状況が一気に分かります。

一瞬で観客を惹きつける状況描写、本当に上手いなぁと感じました!
まさしくパラサイト
キム一家の長男は、友人からの紹介で富豪のパク一家の家庭教師の仕事を引き受けます。
そこで登場するパク家も、急な坂道の丘に住む見るからに豪邸で、キム一家との明らかな格差が映し出されます。
パク家の婦人に気に入られたギウは、美術の家庭教師を探している婦人に自分の妹、ギジョンを偽って紹介するのです。
その後、パク主人の運転手、パク家の家政婦を意図的に追い出すことで、父ギテクと、母チョンソクもパク家に仕えることになり。
まさしく、パク家にパラサイト(寄生する)のです。
- ギウ→長女ダヘの英語の家庭教師
- ギジョン→長男ダソンの美術の家庭教師
- ギテク→パク家の運転手
- チョンソク→パク家の家政婦
本当に、パラサイト(=寄生する、寄生虫)以外のタイトルが考えられないほど、パク家にキム一家まるまる寄生することに成功します。
ただ、これで終わるはずがありませんよね。
予想できない展開
長男ダソンの誕生日、家を家政婦に任せてキャンプに出かけるパク一家。
誰もいないことを良しとして、パク家の豪邸を思う存分に楽しむキム一家。
その不釣り合いさが独特の雰囲気を醸し出し、寄生に成功した喜びと若干の不穏な空気が漂います。
そこに追い出した元家政婦が現れるのでした。
忘れ物をしたと戻ってくる彼女を不審に感じながらも家に通すと、地下の備品庫に、さらに地下へ続く隠し階段があることが分かります。
そこで元家政婦は夫を密かに住まわせていたのです。
彼女も貧困層の人間で、キム一家と状況は似ていました。
本来、元家政婦の心境がキム一家には理解できるはずなのですが、すでにパク家に寄生している彼らにとって彼女はすでに自分たちより下だと認識してしまっているのです。
それは、仕事を奪った運転手の行く末を心配しているところでも伝わってきます。
一方の元家政婦も、キム一家がパク家を騙して寄生していると分かった途端に、ここぞとばかりに猛攻をしかけてきます。
同じ貧困層であるはずの関係が、互いを貶めあう関係になっていく描写は膝を打ちました。
効果的な格差の描写
パク家に、2つの家庭がパラサイトしていることが分かり、家主が不在の間に攻防が繰り広げられます。
その後、大雨のためパク家族が帰ってくると分かると、慌てて片付けることに。
なんとか家政婦夫妻を地下に閉じ込め、母以外の3人は、家の中を『オーシャンズ11』のように連携をとって動き回ります。
彼らはソファーテーブルの下に隠れるのですが、息子ダソンが庭でテントを張ったことで、パク夫婦がソファで寝ることになってしまいます。
その上、状況を何も知らないパク夫婦は、ソファの上でセックスを始める展開に(笑)。
寝落ちしたころを見計らい、家から抜け出す3人。
ここで初めて、パク家とキム家の位置関係が分かります。
丘の上に立つパク家に対し、半地下のキム家がどれほど下にあるのかが効果的に映し出されます。
大雨によって半地下の家は水没し、避難所暮らしを強いられるキム一家。

水没しつつある半地下の溢れ出すトイレで、タバコを咥えるギジョンの姿が最高でしたね!
一方のパク家は大雨でもなんの被害もなく、庭でパーティを開くことに。 これでもかというほど、如実に格差の対比が映し出されていました。
映画『ジョーカー』でもそうでしたが、効果的に階段を使った上下の描写が印象的でした。
衝撃の結末
パク家でパーティが行われます。
ダヘの部屋から庭を見下ろすギウは、自分がこの場所に似合うかどうかが気になっていました。
パク家の地下にいる二人を何とかしないといけないため、ギウは友人からもらった石を持って地下へ向かいます。
しかし誤って落としてしまったことで、元家政婦の夫に気づかれ返り討ちに合ってしまいます。
その後、男はナイフを持って庭で行われているパーティに乱入し、ショックを受けたダソンは失神し、ギジョンは運わるく刺されてしまいます。
男を止めることに成功するものの、パーティは大混乱。
パクは、キテクから車のキーを受け取ろうとしたその一瞬、キテクの「匂い」にしかめっ面をしてしまいます。
これまでの積み重なった思いもあったのか、キテクは衝動的にパクを殺してしまいます。
その後、ギジョンは死亡し、ギテクは地下室で一人身を隠し、世間からは行方不明扱いとなります。
ギウは脳に障害があるものの助かり、裁判でも執行猶予判決で終わります。
豪邸の地下室にいる父からのメッセージを受け取ったギウは将来、金持ちになって豪邸を自分で購入することで父親と再開するという夢のようなストーリーを計画するのでした。
エンタメ×社会風刺×エロ×グロの絶妙な配分
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本作が飽きずにストレスなく観られるのは、「エンタメ×社会風刺×エロ×グロ」の絶妙な配分にあります。
具体的に挙げていきます。
エンタメ
所々に挟んでくるコメディ要素
隠し扉開けるために真横になる元家政婦、ギテクのイモムシ移動など
スリルと不穏な空気による演出
バレそうな瞬間がいくつもありつつ、待ち受ける結末を予告するような不気味な空気感
社会風刺
随所に見られる格差の対象的な描写
家の位置、窓からの景色、言葉遣い、階段や洋服など
アメリカナイズされたパク家
アメリカに対する変な信頼感と妻の韓国語に混じった英語、ネイティブアメリカンなど
貧困の匂い
洗っても落とせない貧困階級の「匂い」
エロ
急に始まるパク夫婦のセックス
妙に生々しく、じっくりと描くことで近くで息を潜めるキム家族の心情を描く
家庭教師と生徒との禁断の関係
ねっとりとしたディープキスやエロ可愛い教え子の姿
グロ
和気あいあいとしたムードからのバイオレンス描写
石を頭にぶつけるシーンをそのまま描いたり、ナイフをぶっ刺したりなど

全体を通して、緊張と緩和のシーンを織り交ぜることで、観客を飽きさせない演出が絶妙!
巧みに緊張と緩和のシーンを織り交ぜることで、観客の興味を失わせない演出が絶妙に効いていました。
格差を「匂い」を使って映し出したのも効果的。
劇中、繰り返し描かれるギテクたちの落とすことのできない「匂い」。
パク夫婦は金持ちだけど優しく、性格もいい。 人間的にみていい人たちなんです。
しかし、彼らが感じる「匂い」の異質さは、決して交わることのない関係を表し、結果的に尊厳を冒していることになってしまったのです。
ラストの結末に関しても、とことん上手いです。
一見希望が見えるような映し方をしつつ、あの豪邸を購入できるとは到底思えない現実の対比。
とんでもない映画でした。
【エロい】『パラサイト』はソファの性描写に注目
©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
「匂い」を通して巧みに格差を描いたポン・ジュノ監督でしたが、個人的に感じたのは性描写の描き方。
先に紹介したエロのパートと同じですが、パク家の夫婦がソファでセックスするシーンがすごいです。
ソファの上では生々しいセックスをしてるキム夫婦。テーブルの下には息を潜めるギテクとギウとギジョンの3人。
見つかったらまずい緊張感と、セックスを始めたことへの気まずさの雰囲気が絶妙。
そして、家庭教師と教え子という形で、交わるはずのない貧富の格差がギウとダヘのキスという形で交わります。
その描写の仕方もやけにネットリしていて、二人のキスの仕方に違いは感じられません。
これだけ格差を描いてきた本作ですが、性描写に関しては格差を感じないのです。
【まとめ】ポン・ジュノ監督は天才
『パラサイト/半地下の家族』をご紹介しました。
- エンタメ性と社会性の絶妙なバランス
- 交わることのない立場の融合
- 富豪と貧困それぞれに染み付いた感覚の表現
エンタメ性を保ちつつ、貧困と格差という社会性をしっかり描いたすごい作品でした。

今後もポン・ジュノ監督作品は追い続けていきたいと強く思いましたね!
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