パラサイト 半地下の家族

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映画

【ネタバレ解説】『パラサイト 半地下の家族』岩や階段、エロのモチーフが現す格差

今回ご紹介する映画は『パラサイト 半地下の家族』です。

『母なる証明』のポン・ジュノ監督による映画で、半地下で暮らす貧しい家族が富豪の家族に寄生していく様子を描くスリラー映画。

本記事では、ネタバレありで『パラサイト 半地下の家族』を観た感想・考察、あらすじを解説。

まめもやし

あらゆるジャンルを包括したエンタメ性の高さでありながら、エログロ社会批判もあるすごい映画でした!

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『パラサイト 半地下の家族』作品情報・予告・配信

『パラサイト 半地下の家族』

パラサイト 半地下の家族

5段階評価

ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :

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あらすじ

半地下住宅に住むキム一家は働き手もなく貧しい暮らしをしている。ある日、長男のギウの友人のツテで、裕福な家庭の家庭教師のバイトを始めることに。気に入られたギウは、妹のギジョンを紹介して入り込んでいく…。

作品情報

タイトルパラサイト 半地下の家族
原題기생충
監督ポン・ジュノ
脚本ポン・ジュノ
ハン・ジンウォン
出演ソン・ガンホ
チェ・ウシク
パク・ソダム
チャン・ヘジン
イ・ソンギュン
チョ・ヨジョン
イ・ジョンウン
パク・ミョンフン
音楽チョン・ジェイル
撮影ホン・ギョンピョ
編集ヤン・ジンモ
製作国韓国
製作年2019年
上映時間132分

予告編

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寄生家族のブラックエンターテインメント。

ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホ主演による、格差社会の人間の様子を切り取るドラマ。

貧困と格差社会を痛烈に風刺する一方で、予測不能のドラマ性、サスペンスやユーモアなど、エンタメ作品としてめちゃくちゃ面白い。

ほぼすべて作り込まれたセットの中で撮影され、細部にまで徹底され洗練された映像の見応えも凄まじい。

アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞を受賞。カンヌ国際映画祭でも最高賞のパルム・ドールを受賞。これは65年ぶりの快挙となる。

まめもやし
ポン・ジュノ監督恐るべし!

『パラサイト 半地下の家族』監督・スタッフ解説

監督:ポン・ジュノ

ポン・ジュノ
Dick Thomas Johnson, CC BY 2.0
名前ポン・ジュノ
生年月日1969年9月14日
出身韓国・大邱

主な監督作

  • 『殺人の追憶』(2003)
  • 『グエムル 漢江の怪物』(2006)
  • 『母なる証明』(2009)
  • 『スノーピアサー』(2013)
  • 『オクジャ okja』(2017)

監督は『グエムル 漢江の怪物』で韓国映画のスケールアップを果たし、『母なる証明』が世界中で絶賛されたポン・ジュノ監督。

『スノーピアサー』では、列車の車両を通して格差社会を表現しましたが、本作ではさらにスケールアップし、街全体を通して描き出しています。

本作『パラサイト 半地下の家族』は、韓国映画初の快挙となるカンヌ国際映画祭にて最高賞のパルム・ドールを受賞を皮切りに、アカデミー賞でも【作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞】の4部門を受賞。

まめもやし

名実ともに世界的な映画監督のひとりです!

徹底した再現と撮影

撮影は『母なる証明』『スノーピアサー』でもポン・ジュノ監督とタッグを組んでいるホン・ギョンピョ。

プロダクション・デザイナーのイ・ハジュンは、『オクジャ okja』に続く監督と2度目のタッグで、舞台となるパク一家の住宅などの多くをセットで作り上げたことを明かしています。

『パラサイト 半地下の家族』キャスト・キャラクター解説

半地下で暮らすキム一家

キャラクター役名/キャスト/役柄
キム・ギテク(ソン・ガンホ)キム・ギテク(ソン・ガンホ)
半地下で暮らすキム家の主。楽天的な性格で失業中だた、家族のためにお金を稼ぎたい気持ちがある。
キム・ギウ(チェ・ウシク)キム・ギウ(チェ・ウシク)
キム家の長男。大学受験で浪人を重ねているが頭の回転は早い。友人の紹介でパク家の娘ダヘの家庭教師にありつく。
キム・ギジョン(パク・ソダム)キム・ギジョン(パク・ソダム)
キム家の長女でギウの妹。美大を目指す浪人生。PCスキルに長けていて、機転が効く性格。
チュンスク(チャン・ヘジン)チュンスク(チャン・ヘジン)
ギテクの妻。元ハンマー投げのメダリストでもある。

高台の豪邸に暮らすパク一家

キャラクター役名/キャスト/役柄
パク・ドンイク(イ・ソンギュン)パク・ドンイク(イ・ソンギュン)
パク家の主。IT起業の社長。神経質そうに見えて他人には経緯を払う面もある。
ヨンギョ(チョ・ヨジョン)ヨンギョ(チョ・ヨジョン)
ドンイクの妻。高級製品や海外への憧れがある。騙されやすい性格。
パク・ダヘ(チョン・ジソ)パク・ダヘ(チョン・ジソ)
パク家の長女。高校2年で受験勉強中。家庭教師となったギウに好意を寄せる。
パク・ダソン(チョン・ヒョンジュン)パク・ダソン(チョン・ヒョンジュン)
パク家の長男。落ち着きがなく自由奔放だが、ふとした瞬間に暗い一面を見せる。
ムングァン(イ・ジョンウン)ムングァン(イ・ジョンウン)
パク家の家政婦。パク一家が入居する前から家政婦として働き、料理スキルをパク家からも評価されている。

ネタバレあり

以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。

タイトル『パラサイト』の意味

本作のタイトル「パラサイト(原題:기생충)」は、「寄生虫」という意味。これは、全員が失業中のキム一家が、パク一家を利用するところに明白に現れています。

キム一家のパラサイト

  • ギウ長女ダヘの英語の家庭教師
  • ギジョン長男ダソンの美術の家庭教師
  • ギテクパク家の運転手
  • チョンソクパク家の家政婦

これによって晴れてキム一家は全員仕事を手にし、パク一家の恩恵を享受します。極めつけは、パク一家が旅行に出かけた際のシーン。キム一家はリビングで好き放題飲み食いして「自分たちの家だ」と話しています。

この映画が面白いのは、実はキム一家だけが寄生しているわけではなかったこと。映画が展開していくと、パク家の地下室にオ・グンセというパク一家が引っ越す前から家政婦をしているムングァンの夫が住み着いていることが明らかになります。

パク一家が知りもしない地下室で、不自由なく暮らしている彼こそ、真に「パラサイト(寄生虫)」といえます。さらにそんなグンセの立ち位置も、ギテクが取って代わることになるのです。

『パラサイト 半地下の家族』の象徴的なモチーフ・シンボル

階段

パラサイト 半地下の家族
©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON.

主要な視覚的モチーフのひとつが階段です。キム一家の住む場所とパク一家の自宅が明確に対比されていて、キム家に向かうときは階段を下ってき、パク家へ向かうときは階段を上っていきます。

パク家に人知れず寄生しているオ・グンセのいる場所も地下室であり、階段を下ります。この階段と通した上下の格差が明確に伝わるのが、大雨のシーン。

大雨によって、低い土地の半地下で生活するキム家は水没し、キム一家は住む場所を追われてしまいました。一方で、パク家にとっては、「ただの大雨」でしかないのです。

階段による格差のモチーフは、映画『ジョーカー』においても印象的に表現されています。

岩(山水景石)

パラサイト 半地下の家族
©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON.

映画の冒頭、ギウの友達の大学生ミニョクから贈られるのが「財運をもたらすという岩」です。ギウは「本当に象徴的だ」といい、続けてギテクは「今の自分たちにぴったりだ」と言います。一方で、母チュンスクは「食べ物がよかった」と漏らしています。

この「観賞用の岩」は、キム一家の社会的地位の向上と経済的に裕福になるための願いのモチーフとして物語の重要なキーアイテムになっていきます。その後も、岩はキム家の目立つ場所に配置されて強調されています。

そして特に印象的なのが、街に大雨が降ったシーン。パク家を脱出して自宅に戻ると、半地下のキム家は浸水してしまっていました。この時、ギテクらが大事なものを持ち出そうとする中で、ギウは水の中から必死で岩を見つけて抱きかかえます。

さらにこの時、岩が水の中から浮かんでくる様子が描かれています。これは、成功へのモチーフだった岩が、実は中身は空洞、つまり本来の価値がないものであることを表しています。しかし、そんな岩にギウは執着しているのです。

そして終盤、ギウはその岩を使ってグンセを殺そうとしますが、反対に奪われて殴られてしまいます。岩というモチーフを通して、ギウの成功・貧しさからの脱却という欲望が彼を蝕み、それが自分に凶器として向けられることを伝えています。

領土問題と地政学的な権力争い

パラサイト 半地下の家族
©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON.

ムングァンとグンセがキム一家がパク家に寄生していることに気づくと、その事実を動画に収めて証拠として送りつけると脅迫します。ムングァンはパク家の家政婦を追い出されますが、その録画映像は一時的にキム一家を支配する権力の象徴となります。

グンセは録画映像の送信ボタンを北朝鮮のミサイル発射ボタンに例え、ムングァンは北朝鮮のニュースキャスターの真似をします。

また、ダソンの誕生日パーティーにおける庭のテーブルの配置について、ヨンギョは閑山島(ハンサンド)海戦の鶴翼(かくよく)の陣に例えました。

さらに、パーティーにおいて、ドンイクとギテクはダソンがハマっているネイティブ・アメリカンに扮し、襲いかかるという演出をしようとしていました。

これらはすべて領土問題に関係しており、パク家の内部で巻き起こる戦いは、より大きな領土問題に言及します。

領土問題のモチーフ

  • 北朝鮮と韓国
  • 韓国と日本
  • ネイティブアメリカンとヨーロッパの入植者

映画においても、家の所有権を巡る争いは転々とします。

かつてはナムグンという建築家が所有していた家。その頃から家政婦としていたムングァン、地下で暮らすグンセ。そしてパク一家が引っ越してくると、キム一家が現れ、ムングァンは追い出されます。事件が起こると、パク一家は引っ越すことになり、ギテクはグンセに代わって地下で暮らすことになり、そこに新しい所有者の外国人が現れる。

何気ない会話や例えの中にも、パク家を巡る争いと領土問題が絡められています。

下着・ソファのエロシーン

パク家の運転手をクビにさせるため、キジョンは運転手がドンイクの車内で誰かとセックスしたように見せかけるため、自分の下着(パンティー)を後部座席に仕込みました。

下着を見つけたドンイクは、運転手の品性を疑い、彼が自分の車の後部座席でセックスをしたと観察します。下着は運転手の品性のなさのシンボルとなりますが、その後のシーンで、ソファでパク夫婦がいちゃつき始める場面では、2人で運転手とその相手を擬似的に演じ、例の安物の下着を持ってこようかと話しています。

下着はパク夫婦の品性を下げるシンボルであると同時に、2人を興奮させる変態性へのシンボルにもなっています。

一線を超える“匂い”

パラサイト 半地下の家族
©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON.

ドンイクは、度々、一線を越える(Crossing the line)という言葉を使い、家で雇う人物の評価軸にしています。ギテクが運転手となったときも、彼が決して一線を超えないギリギリのラインにいる人物だと評価しています。

その一方で、キム一家に染み付いた「匂い」は一線を超えていることを明かし、本人に直接伝えるわけではありませんが、それが終盤のパーティーにおいて、ギテクが「一線を超える=ドンイクを刺す」ことに繋がっています。

さらに、キム一家が同じ「匂い」であることに気づいたのは、パク家の最年少であるダソンでした。これは、幼い段階で階級意識が芽生えていることを象徴し、本作の主要テーマである貧富の格差を浮き彫りにします。

まとめ:貧富の格差と資本主義の現実

今回は、ポン・ジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』をご紹介しました。

ポン・ジュノ監督の手腕が光るエンタメ全部乗せの面白さと、格差社会への皮肉たっぷりの面白い作品でした。

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