今回ご紹介するのは映画『アンカットダイヤモンド』です。
Netflixにて配信中であり、コメディ俳優としても有名なアダム・サンドラーが主演を務めた犯罪映画。
始めに行っておきますが、本作は好みがめちゃくちゃ別れる映画です。
僕自身としては、はじめは観ていて不快だったのですが、いつの間にか惹きつけられ、なだれ込むようなラストの展開に「なんかすごい映画を観たぞ」という気持ちになりました。
映画『アンカットダイヤモンド』の作品情報とあらすじ
作品情報
原題 | Uncut Gems |
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監督 | ベニー・サフディ ジョシュ・サフディ |
脚本 | ベニー・サフディ ジョシュ・サフディ ロナルド・ブロンステイン |
出演 | アダム・サンドラー |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
上映時間 | 130分 |
おすすめ度 | [jinstar4.0 color="#ffc32c" size="16px"](4点/5点) |
あらすじ
宝石商のハワード(アダム・サンドラー)はギャンブル中毒により多額の借金を抱えていた。
借金取りの用心棒からも監視されている状況の中、ある日ハワードはエチオピアで採掘されたブラック・オパールを入手する。
窮地に立たされたハワードはオパールを使って彼は起死回生の一手を狙う…。
Netflix映画『アンカットダイヤモンド』のキャスト・相関図
本作ですが、冒頭からいろんな人が登場し訳が分からなくなりがちなので、相関図をまとめておきます。
ハワード(アダム・サンドラー)
宝石商の主人公ハワード役には、コメディ俳優としても有名なアダム・サンドラーを起用。
はっきり言って本作のアダム・サンドラーはヤバいです。
ハワードの話し方や雰囲気、どうしようもない感じなど、アダム・サンドラーの演技が素晴らしいです。
ジュリア(ジュリア・フォックス)
ハワードの愛人役のジュリアフォックスは、本作が映画デビュー作。
デビュー作とは思えない存在感と、美貌を持ち合わせていて、かなり目立っています。
K.G(ケビン・ガーネット)
NBA選手のK.Gこと、ケビン・ガーネットは本人役で出演しています。
ボストン・セルティックスを優勝に導いた立役者としても知名度の高い選手で、演技も普通に上手かったです。
ダイナ(イディナ・メンゼル)
ハワードの妻役にはアナ雪のエルサとしても有名なイディナ・メンゼル。
鬼嫁感が漂う強い存在感で印象を残しています。
ドマニー(キース・スタンフィールド)
ドマニー役にはキース・スタンフィールド。
彼は『ショート・ターム』で注目を集め、その後『ゲット・アウト』や『ナイブス・アウト』などにも出演しています。
その他本人役も
その他にも、カナダ出身のグラミー賞受賞歌手のザ・ウィークエンドが本人役として出演していたり、俳優のジョン・エイモスが本人役で一瞬出たりします。
『アンカットダイヤモンド』の監督はサフディ兄弟
Photo by Jamie McCarthy/Getty Images for National Board of Review
本作の監督を担当したのはベニー・サフディとジョシュ・サフディのサフディ兄弟。
『トワイライト』シリーズでも人気のロバート・パティンソンと、サフディ兄弟の弟、ベニー・サフディ出演の映画『グッド・タイム』や、東京国際映画祭でグランプリと最優秀監督賞を受賞した『神様なんかくそくらえ』を監督しています。
それは本作におけるアダム・サンドラーも同様で、クセの強い強烈な印象を残しています。
配給は話題のA24
本作は独創的な映画の配給を行うことで知られる「A24」が配給を担当。
2012年に設立された新しい製作会社であるにも関わらず、アカデミー賞の常連にもなっているすごい会社なんです。
そういった独自性も世界的評価を得ているA24の注目ポイントのひとつですね。
関連記事【A24films】映画プロダクション「A24」を知っているか?
Netflix映画『アンカットダイヤモンド』のネタバレ感想
Netflix『アンカットダイヤモンド』より
※以下、映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。
本作、はっきり言って好みがめちゃくちゃ別れる映画です。
しかも序盤の方はマジでストレスしかないです。
そのため、最初のストレスが耐えられなければ途中で見るのを辞めてしまうかもしれません。
ハワードのキャラクター性がストレスであり魅力でもある
Netflix『アンカットダイヤモンド』より
本作の魅力であり、ストレス源でもあるのが主人公のハワードのキャラクター性。
重度のギャンブル依存症で、借金を返すために借金をしてギャンブルするという何とも感情移入できない人物像。
「出たとこ勝負、綱渡り」という言葉がピッタリです。
カイジ的でありながら、カイジほど頭が使えるわけでもなく、ほんとに綱渡りでしかないんですよね。
ただ、ハワードほどではないにしてもこういう人って実際にいますよね。
小さなミスをカバーするために小さな嘘や見切り発車してだんだん手に負えない大きなミスになっていくような。
そのストレスが、面白さにグッと変わってくるのが中盤からラストにかけての展開。
『アンカットダイヤモンド』のラスト
ブラック・オパールで一攫千金しようとしていたのに、全然思っていたようにならず、借金取り立て屋にボコられ、泣きじゃくるハワード。
しかし、そこにちょっとしたチャンスが舞い込んでくると、さっきまでの泣きじゃくりは何だったかのように立ち直って切り替わるのです。
そこからラストまでは本当に見事です。
K.Gの活躍にすべてをBETして一世一代の大勝負に出るハワード。
その大勝負は見事的中します。
これで借金も返せる上に、すべてが報われたと思ったところ、ハワードは借金取りにあっけなく殺されてしまうのでした。
ある意味ギャンブラー冥利に尽きる人生だったのかもしれません。
妙なリアルさ
本人役としてガッツリ登場するK.Gこと元NBA選手のケビン・ガーネット。
彼が本人役として登場することでリアルさをグッと身近に感じます。
彼のバスケの試合映像は現役時代の実際の映像を使用しています。
超有名なNBA選手が、宝石商で訳の分からないオパールに魅せられるという、何とも信じがたいけどありそうな妙なリアル感があるのです。
もうひとり、ザ・ウィークエンドも本人役として出演していて、売れる前という設定で出てくるのですが、これも映画というフィクションの中にあるリアルが上手くプロットされていて、良いスパイスになっていました。
冒頭とラストの表現とタイトル『Uncut Gems』の意味を考察
Netflix『アンカットダイヤモンド』より
冒頭とラストの表現の巧さ
本作、冒頭とラストが同じ作りになっています。
冒頭では、エチオビアの鉱山で過酷な労働のもと採れたブラックオパールにクローズアップし、ハワードの腸内の映像へとつながっていきます。
一方ラストでは、ハワードの撃たれた痕にクローズアップしていき、小宇宙をみせて夜空に輝く星々を映します。
デヴィッド・フィンチャー監督の『ファイトクラブ』を彷彿とさせるオープニングとなっています。
特に冒頭は、シンセサイザーの独特で幻想的な音楽とともに映し出されるので、トリップしているような不思議な感覚を味わいます。
音楽を手掛けているのはOneohtrix Point Never (ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー) 、通称OPNというミュージシャン。
サフディ兄弟の『グッド・タイム』でも楽曲を提供していて、カンヌ映画祭最優秀サウンドトラック賞を受賞しています。
タイトル『Uncut Gems』が意味するものを考察
本作は『アンカットダイヤモンド』という邦題になっていますが、実際に登場するのはダイヤモンドでなく、ブラックオパールです。
原題は『Uncut Gems』となっており、「カットされていない宝石」つまり、原石を意味します。
これが何を意味するのかを考察してみます。
まず、単純に登場するブラックオパールとしての意味。
ハワードは手に入れたオパールで一攫千金を狙っていましたが、文字通りこれは「原石」でしかありません。
それにも関わらず、見切り発車で欲望のままに動いたハワードの顛末は何とも虚しいものでした。
もう一つは、『Uncut Gems』が「Gems」と表現している点。
登場するブラックオパールは一つしかありませんが、「Gems」と表現していますよね。
なぜ複数形になっているのか。
これは、人間というものを「磨かれていない原石」と表現しているようにも感じます。
ラストカットで無数の星空が映し出されるように、星の数ほどいろんな人生があり、いろんな困難が待ち受けています。
ハワードの場合、荒削りなのでゴリゴリに磨かないと分からない原石でしょうがね笑
Netflix映画『アンカットダイヤモンド』はまさに原石のような映画
Netflixで配信中の『アンカットダイヤモンド』をご紹介しました。
まさにこの映画自体が『Uncut Gems』の一つのようで、見る人を選ぶのは間違いありませんが、掘り出し物的な位置づけで、ゆくゆくは名作となっていくと思います。
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