今回ご紹介する映画は、『ザ・メニュー』です。
孤島にある予約の取れない高級レストランを舞台にしたサスペンス。
本記事では、映画『ザ・メニュー』をネタバレありで結末まで感想を含めて解説・考察していきます。
誰もが純粋に楽しめる良作サスペンスでした!
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映画『ザ・メニュー』の作品情報とあらすじ
『ザ・メニュー』
ストーリー | |
感動 | |
面白さ | |
テーマ性 | |
満足度 |
あらすじ
予約の取れない孤島のレストランにやってきたマーゴとタイラー。有名シェフのスローヴィクが極上の料理をふるまい、食通のタイラーは感動しきりだった。しかし、マーゴは違和感を覚え、それをきっかけに次第にレストランは不穏な空気に包まれていく…。
作品情報
タイトル | ザ・メニュー |
原題 | The Menu |
監督 | マーク・マイロッド |
脚本 | セス・リース ウィル・トレイシー |
出演 | レイフ・ファインズ アニャ・テイラー=ジョイ ニコラス・ホルト ホン・チャウ ジャネット・マクティア ジュディス・ライト ジョン・レグイザモ |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2022年 |
上映時間 | 107分 |
予告編
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『ザ・メニュー』のスタッフ・キャスト
監督:マーク・マイロッド
『ザ・メニュー』の監督は、イギリス出身のマーク・マイロッド監督。
主な監督作
- 『アリ・G』2002
- 『ビッグホワイト』2005
- 『運命の元カレ』2011
- ドラマ『サクセッション(メディア王〜華麗なる一族〜)』
エミー賞受賞ドラマ『サクセッション(メディア王〜華麗なる一族〜)』では、『ザ・メニュー』の製作でもあるアダム・マッケイと共にエピソードを監督しています。
製作:アダム・マッケイ
製作には、アカデミー賞脚色賞受賞の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』や、『バイス』、Netflix映画『ドント・ルック・アップ』などで知られるアダム・マッケイ。
本作も、アダム・マッケイらしいブラック・ユーモアが絶妙に効いていましたね…!
アニャ・テイラー=ジョイ
物語の主軸となる女性マーゴを演じたのは、アニャ・テイラー=ジョイ。
今後もハリウッド版『マリオ』のピーチ姫や、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のスピンオフ『フュリオサ』の主演など、まさに大活躍中の彼女。
主な出演作
- 『ウィッチ』(2015)
- 『スプリット』(2016)
- 『ミスター・ガラス』(2019)
- Netflixドラマ『クイーンズ・ギャンビット』(2020)
- 『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)
本作のアニャは、これまでの映画の中で一番魅力的に映っていたように感じましたね!
レイフ・ファインズ
予約の取れないレストラン「ホーソーン」のシェフ役を務めたのはレイフ・ファインズ。
主な出演作
- 『シンドラーのリスト』(1993)
- 『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)
- 『ハリー・ポッター』シリーズ
- 『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)
レイフ・ファインズといえば、『ハリー・ポッター』シリーズのヴォルデモート卿として広く知られています。
さらには『シンドラーのリスト』での悪役将校だったり、ダニエル・クレイグ版『007』のMの後任であったり、とにかく権威のある人間の役が似合います。
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本作はレイフ・ファインズ演じるシェフが空気を握っている映画なので、まさに絶妙なキャスティングでした!
ほかにも、ちょっぴりウザい美食家をニコラス・ホルト、怪しい案内人をホン・チャウが好演しています。
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】十二人の招かれざる客人
予告編から面白そうな香りが漂っていた『ザ・メニュー』ですが、その期待を裏切らない面白さがありました。
マーク・マイロッド監督とアダム・マッケイ、どちらもブラック・ユーモアを得意としていることもあり、タッグを組んだ本作はとてもスパイスの効いた、辛めな一品になっています。
レザージャケットを羽織ったアニャ・テイラー=ジョイが、タバコを吸う様子から始まる本作。そんな彼女を、「味覚が台無しになる」と注意するニコラス・ホルト演じるタイラー。
彼らが参加するのは、一人あたり1250ドル(約17万円)もする一流レストランのディナー。
冒頭から余計な寄り道は一切せず、船に乗り込んで舞台となる離島のレストランへ向かいます。ホン・チャウ演じる案内人のエルサに導かれて、地産地消ならぬ“島産島消”している様子をガイドされる一行。その後にダイニングルームへ案内されます。
『ザ・メニュー』は、そのタイトルの通り、高級レストランで振る舞われるコース料理のメニューに沿って物語が進んでいきます。それぞれ運ばれてくるメニューに小洒落た名前がつけられていて、その度にシェフのスローヴィクがプレゼンテーションしていくのです。
スローヴィクの指示に対して、キッチンにいるサポートスタッフたちは「イエス、シェフ!」と軍隊のように声と動きを揃え、不気味な空間を演出しています。
十二人の招かれざる客人
予約の取れないレストラン「ホーソーン」に招かれたのは、12人の客人。
登場人物 | 説明 |
---|---|
マーゴ | タイラーの付添いでやってきた。 |
タイラー | 美食家。シェフのスローヴィクに心酔している。 |
リリアン&テッド | 権威のある料理評論家と編集者。 |
年配夫婦 | 裕福な年配夫婦。過去にもホーソーンで繰り返し食事している。 |
金融会社の3兄弟 | レストラン「ホーソーン」の投資家の部下。 |
中年の映画スターとフェリシティ | 昔の映画スターとアシスタント |
エルサ | スローヴィクの部下で案内役 |
スローヴィク | レストラン「ホーソーン」オーナーシェフ |
『ザ・メニュー』は、予想を遥かに超えるような展開はないものの、恐らく多くの人が想像している内容とは違った展開になっているはず。
というのも、『注文の多い料理店』的な展開だったり、「自分たちがメニューになっちゃいました」的なカニバリズム展開を想像する方も多いと思いますが、実際には違うのです。
シェフのスローヴィクは最初に「Do not eat.(食べないでください)」と言い、代わりに「味わってください」と言うのでした。
そんなシェフの提供するメニューは、まさに独特。見た目の芸術性は高いけれど、胃を満たすことはないメニューが提供されたかと思えば、だんだんおかしなメニューに変わっていきます。
「パンのないパン皿」や「個人的な出来事が印字されたトルティーヤ」など、風変わりなメニューも至って真剣に振る舞うシェフ・スローヴィクの様子に、戸惑いながらも食事を続ける一同。
そして、コースが進むにつれてメニューは過激に…。
第2シェフの自殺ショーや、「ホーソーン」の投資家の海中入水処刑ショーなど、明らかに常軌を逸したへメニューを展開していきます。
そんな中で、一人だけ最初から違和感を示して料理に口をつけなかったマーゴ。そんな彼女に対して、スローヴィクは「ここに来るべき人間ではない」といい、計画の邪魔になるからと、提供する側か提供される側かどちらになるかを選択させるのでした。
最期の晩餐
スローヴィクが客もろとも全員を殺す計画をしていることが明らかになっていく後半。同時に客人たちの「ホーソーン」に来た理由も明かされていきます。
タイラーは、美食家・食通を自負する人間で、やたら「mouthfeel(口当たり)」を偉そうに解説したり、写真撮影はダメと言われても撮影してしまったりと、盲目的にシェフ・スローヴィクに心酔している様子。
3兄弟は、有名レストランでの食事を経験することで箔をつけるために訪れた「ステータス目的」。料理評論家と編集者は、自らが評価することでレストランを有名にしたり潰したりする影響力を自慢気に誇示します。
年配夫婦は何度も来ているにも関わらずメニューのひとつも覚えていません。
「ホーソーン」に来た客人たちに純粋に料理を楽しんでいる人間などいないように映るのです。
そんな中、ある意味最も酷な末路を迎えるのがタイラーでした。
タイラーは、スローヴィクからの招待状で、コース料理の最後に全員が死ぬことになると事前に伝えられていたのでした。それにも関わらず別れた彼女の代わりに金で雇ったマーゴを連れてやってきたのです。
その異常なまでの心酔っぷりに対し、スローヴィクはシェフのエプロンを与え、キッチンで料理を振る舞うように言うのでした。
しかしタイラーは、いざ自分が料理を作るとなると、全く上手く作れないことを皆の前で身を持って証明することになり、その羞恥を理由に自ら首を吊って死んでしまうのです。
【ネタバレ解説】ラストシーンは究極のジャンクフード
いよいよディナーも最後。逃げる手段も希望も絶たれた客人たちは、死を覚悟します。
最後のメニューは「デザート」。客人たちをマシュマロとチョコでコーティングし、シェフ自らマーゴを除いた全員を巻き込んで火あぶりになるのでした。
この描写でアリ・アスター監督の『ミッドサマー』を思い出した人もいると思いますが、これもちゃんと「デザート」として成立しているんですよね。
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最後のデザートは「人間スモア」でした。スモア(S’more)とは、クラッカーの間にマシュマロを焼いてチョコと挟んで食べるジャンクフード。
アメリカのキャンプファイヤーなど、アウトドアシーンで人気の「スモア」という定番スイーツを人間で模したのです。
高級レストラン「ホーソーン」の最後のメニューはジャンクフードで終わるのでした…!
マーゴはなぜ助かったのか
一方、そんなラストの前に一人だけ助かったマーゴ。
スローヴィクの計画では、当初の人間とは違ったものの全員を殺すはずだったように感じます。それではなぜ彼女だけが助かったのか。
マーゴはスローヴィクの部屋に侵入した際に、彼のキャリアが最初はハンバーガー作りからスタートしていることに気づきました。
それを手がかりに、「腹が満たされていない」とチーズバーガーをオーダーするマーゴ。シェフとして要望に答えるためにもスローヴィクはチーズバーガーを提供します。
食べきれずに持ち帰ることを希望し、それにスローヴィクが対応したことによって、マーゴは一人だけ島から脱出することができたのでした。もちろんチーズバーガーの代金をちゃんと支払うことで。
そこには、顧客と作り手におけるエコシステムが描かれていました。
【ネタバレ考察】エコシステムの中で感謝を忘れずに
ブラック・ユーモアが至るところに散りばめられていた本作。『ザ・メニュー』は、劇中にも出てくる言葉「エコシステム」を考える物語でした。
エコシステムとは、生き物がお互いに依存しながら生態を維持する関係を表した言葉。
「お客様は神様」でも、「シェフの言うことは絶対」でもありません。そこに上下関係はなく、あるのは対等な人間同士の関係。
作ってくれる人、それを消費してくれる人がいる。それは本来、相互依存の関係で成り立っているのです。それなのに、「お金を払ったから何をしてもいい」のは違いますよね。
コロナ禍によって、飲食店が窮地に立たされている状況で多くの人が今までの「ありがたみ」を感じたのではないでしょうか。
当然のことながら、それは飲食に限った話ではありません。例えば、映画でも同じことが言えます。
映画を作ってくれる人がいるからこそ、楽しむことができて、この記事のように「解説・考察」というタイトルで偉そうに好きに書いている私がいる。
何が言いたいのかと言うと、社会は「相互依存」で成り立っているということ。便利な時代になる一方で、作り手は見えづらくなり感謝も伝えづらくなります。
『ザ・メニュー』は胸クソ悪い展開ともいえますが、改めて生産者と消費者の関係、そしてそこに感謝の念を忘れてはならないと感じさせてくれる映画でした。
SNSで誰もが気軽に発信できる現代。だからこそ、感謝こそしっかり伝えられたらいいですね。
まとめ:チーズバーガー食べたい
今回は、『ザ・メニュー』をご紹介しました。
期待を大きく上回るほどの衝撃や面白さとは言いませんが、求めていた面白さにちゃんと応えてくれる映画でした。
まさに「こういうのでいいんだよ」映画の筆頭ですね!
配役も絶妙で、アニャ・テイラー=ジョイとレイフ・ファインズがとてもいい演技をしていました。
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