今回ご紹介する作品は『ワッツ・インサイド』です。
本記事では、『ワッツ・インサイド』を観た感想・考察、あらすじをネタバレありで解説します。
工夫を凝らしたスタイリッシュな映像表現で楽しい作品に仕上がっています!
作品情報・配信・予告・評価
相関図・キャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
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シェルビー(ブリタニー・オグレイディ) サイラスの彼女。サイラスの関係に不安を感じている。 | |
サイラス(ジェームズ・モロシーニ) シェルビーの彼氏。シェルビーとの関係にちゃんと向き合えていない。 | |
ニッキ(アリシア・デブナム=ケアリー) インフルエンサー。慈善活動をしているが利己的な裏面もある。 | |
ルーベン(デヴォン・テレル) 結婚を控えた花婿。亡き母親の家で独身最後のパーティーを主催する。しかし、元恋人のマヤのことも気になっている。 | |
デニス(ギャヴィン・レザーウッド) 親の信託財産で暮らしている。ニッキとは互いに因縁がある。 | |
ブルック(レイナ・ハーデスティ) アーティスト。人当たりが良い。 | |
マヤ(ニーナ・ブルームガーデン) スピリチュアル好きな自由人。以前はルーベンと付き合っていた。 | |
フォーブス(デヴィッド・W・トンプソン) 大学時代に友人たちとケンカ別れした発明家。体を入れ替えることができる装置を持ってパーティーに現れる。 | |
─ | ビアトリス(マディソン・ダヴェンポート) フォーブスの妹。 |
1回目のゲームでは誰が誰に入れ替わった?
(C)Netflix
2回目のゲームでは誰が誰に入れ替わった?
(C)Netflix
誰の体と誰の中身が死んだ?
(C)Netflix
2回目のゲームの後、ブルック(体はマヤ)とルーベン(体はデニス)がセックス中に転落死したことで、他のメンバーたちは騒然とする。デニス(体はサイラス)は戻る体を失ったことでサイラス(体はフォーブス)に怒りをぶつける。
2人が口論になると、デニスは、サイラスがニッキに振られた代わりにシェルビーと付き合うようになったことを暴露し、シェルビーはショックを受ける。さらにデニスはサイラスの体のままで、警察に2人を突き落として殺害したと自白してしまう。
フォーブス(体はルーベン)は装置を持って逃げ出そうとするが、ニッキ(体はブルック)がバットで殴って気絶させて拘束する。その頃、装置の充電が減り、残り1回しか入れ替わることができなくなっていた。
シェルビー(体はニッキ)だけが装置の操作方法を知っていたが、彼女はニッキの体から戻ることを拒否する。サイラス(体はフォーブス)はシェルビー(体はニッキ)に弁明するが、マヤ(体はシェルビー)が1回目のゲームで彼女がキスをした相手がサイラスだったことに気づき、それを知ったシェルビーはサイラスに愛想を尽かす。
最後にはどうなった?
(C)Netflix
最後の入れ替えの直前、シェルビーは、サイラスがルーベンに入れ替わり、ニッキの体のままの自分と駆け落ちすることを提案する。サイラスは戸惑うが、それを受け入れる。
しかし、自分の体を取り戻したいニッキは、自分の体がピーナッツアレルギーであることを知っているため、それを利用してシェルビー(体はニッキ)の企みを阻止する。そんな中、警察が屋敷に到着し、時間が迫る中で混乱に乗じてフォーブスが入れ替えを操作する。
結果的にシェルビーとサイラスはそれぞれ元の自分の体に戻ることになるが、サイラスは殺人容疑で逮捕される。シェルビーは、サイラスの好きな外見になろうとしていた自分の愚かさに気づき、拘置所のサイラスに別れを告げて去っていく。
元の体を失っているマヤは、それを受け入れて生まれ変わったと捉える。同じく体がないデニスはフォーブスの体に入れ替わる。元の体に戻りたかったニッキだが、ルーベンの体に入れ替わってしまい、混乱する。
一方、フォーブスはニッキの体に入れ替わる。映画のラストでは、フォーブスの行動背景と真の正体が明らかになる。
ラストのどんでん返し
映画のラストで明かされるのは、実は最初からフォーブスはフォーブスではなく、彼の妹のベアトリスだったことが明かされる。そして事件の引き金となる、大学時代の誕生日会での真実が明かされる。
当時、デニスはニッキと付き合っていたが、デニスはフォーブスの妹ベアトリスとも体の関係を持っていた。デニスの誕生日会に出席したベアトリスは、デニスがベアトリスとの関係を否定したために逆上し、ニッキと揉めることになる。
デニスはフォーブスに妹を止めさせるようにして取っ組み合いになり、警察が介入するほどの事態になる。結果的にデニスはフォーブスは大学を退学処分になる。
フォーブスは精神が不安定になったベアトリスを心配し、開発した人を入れ替える装置を見せるが、ずっと復讐を考えていたベアトリスはフォーブスの体と入れ替わり、パーティーで目的を遂げようとしていた。
そしてベアトリスはフォーブスの体からニッキの体を乗っ取り、デニスの信託金と装置を手にして逃げ出していく。
【ネタバレ感想】スタイリッシュな映像のお手軽スリラー
Netflix映画『ワッツ・インサイド』は、大学時代の友人たちが結婚式直前のパーティーで再会し、「人が入れ替わる」謎の装置を使ったゲームに興じる様子を描いたスリラー作品です。
近年の似たような作品としてオーストラリアのYouTuber監督フィリッポウ兄弟によるスリラー映画『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』がありますが、本作はホラー要素はなく、あくまでも軽めな心理スリラーです。
どちらかと言うと、同じNetflixの『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』と『ブラック・ミラー』を組み合わせたような印象がありました。
主な登場人物は8人。外見と中身が入れ替わるので、キャラクターと名前が一致していないと混乱したままで終わってしまう可能性もありますが、映像表現に工夫を凝らしているので、ギリギリ理解できるラインで物語を成立させているのが見事でした。
物語は自分に自信がなく、不安を抱えているシェルビーに焦点を当てています。彼女は9年間付き合っている彼氏のサイラスとの関係に悩んでおり、セックスレスであることや、サイラスが結婚に興味を持たないことがさらに彼女の自己評価を下げています。
サイラスはシェルビーに金髪のウィッグをつけてほしいと望みますが、彼女がそれに応じても、サイラスは無反応のまま。これがシェルビーのコンプレックスをさらに強める結果となっています。
シェルビーは、自分とは対照的なブロンド美女でインフルエンサーの友人ニッキに強い憧れを抱いており、ゲームでニッキの体を手に入れた際、その体を手放したくないと感じるようになります。さらに、サイラスが中身がシェルビーだと知っていても、ニッキの外見に欲情する様子を目の当たりにし、シェルビーはニッキの体のままでいたいという欲望を募らせていきます。
同様に、新婚のルーベンも、元恋人のマヤに未練を残しており、マヤの中身が別人(ブルック)であっても構わないという考えに陥ります。むしろ、その曖昧な関係性は、彼にとって都合が良いとさえ思えるのです。
ブルックはグループの中でも孤立した存在で、ニッキから「ブルックに相手がいないのは不思議」と言われるほどです。彼女のコンプレックスは、恋愛経験の少なさにあると推測できます。そのため、ルーベンに求められた際、彼に応じてしまい、結果として悲劇的な転落死を迎えることになります。
サイラスは、2人の殺人容疑者として追い詰められ、あまりにも重い罪を背負うことになりますが、彼のように曖昧な関係をダラダラ続ける男性は現実にも多く存在するため、そうした男性に対する戒めとしても機能しているように感じました。
物語のラストで、シェルビーがサイラスとの関係を断ち切り、自分自身の体で生きていくことを選ぶ展開は良いのですが、その決断に至るまでの動機づけが弱かった点が惜しいところです。フォーブス(中身はビアトリス)の最後の入れ替えがなければ、シェルビーはニッキの体を乗っ取るつもりだったはず。
シェルビーが他人の目を通した自分ではなく、自分自身を好きになる過程がもう少し描かれていれば、物語にさらに深みが増したと思います。それでも、映像表現は秀逸で、気軽に楽しめるスリラー作品としては十分に魅力的な良作でした。