今回ご紹介する映画は、『プロミシング・ヤング・ウーマン』です。
Charli XCXの「Boys」の曲をバックに、ダンスする中年男性の股間をアップで映すという、なんとも印象的なシーンから始まる本作。
ブリトニー・スピアーズの「TOXIC」やパリス・ヒルトンの「Stars Are Blind」など、ポップなナンバーを差し込み、2021年アカデミー賞脚本賞を受賞、作品賞を含む5部門にノミネートされた注目作です。
本記事では、映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』のネタバレありの感想と、内容の解説や考察をしていきます。

スリリングな復讐劇とジャンルを超えたエンタメ性の高さ、そしてその裏にある問題まであぶり出した、力量ある一本となっています。
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映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の作品情報
『プロミシング・ヤング・ウーマン』

ストーリー | |
感動 | |
面白さ | |
テーマ性 | |
満足度 |
あらすじ
カフェで働くキャシーは、夜な夜なクラブへ出向き、酔ったフリをして、お持ち帰りして手を出してくる男たちに制裁を加えていた。医学部に進学し、前途有望な若い女性だった彼女が、ある事件によって人生が一変した理由とは…。
作品情報
タイトル | プロミシング・ヤング・ウーマン |
原題 | Promising Young Woman |
監督 | エメラルド・フェネル |
脚本 | エメラルド・フェネル |
出演 | キャリー・マリガン ボー・バーナム アリソン・ブリー クランシー・ブラウン ジェニファー・クー・リッジ ラヴァーン・コックス コニー・ブリットン |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2020年 |
上映時間 | 113分 |
予告編
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おすすめポイント
復讐映画の枠を越えた怪作。
キャリー・マリガン主演、長編映画デビューとなるエメラルド・フェネル監督の映画。
医学部を中退した“将来を有望視された女性(プロミシング・ヤング・ウーマン)”が、夜ごとに泥酔したフリをして“体目当ての男性”を誘惑する。
復讐を描いた映画ですが、『ジョン・ウィック』のようなカタルシスはまったく無く、物語が行き着く先の結末には放心してしまいます。
先がまったく読めない展開で、ジャンルに当てはまらないエンターテイメント性で観客にドーンと突きつける問題。
アカデミー賞では脚本賞を受賞。

扱うテーマと、エンタメ性の両方がどちらも高い完成度の衝撃作!
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『プロミシング・ヤング・ウーマン』のスタッフ・原作
エメラルド・フェネル監督
写真右 (C) 2020 PROMISING WOMAN, LLC All Rights Reserved.
本作を手掛けたのは、イギリス出身のエメラルド・フェネル監督。
脚本家や、劇作家として活躍していて、俳優としてもエディ・レッドメイン主演『リリーのすべて』や、、Netflixドラマ『ザ・クラウン』などにも出演しています。
BBCの人気サスペンスドラマ『キリング・イヴ』シリーズの脚本や製作総指揮を務め、エミー賞候補にも挙がりました。
本作『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、アカデミーで5部門にノミネートされ、中でも監督賞でのイギリス人女性のノミネートは史上初の出来事でした。

エメラルド・フェネル監督は、本作が長編映画デビュー作ですよ!すごすぎます…。
抑圧された者たちの「復讐」を描いた作品は、近年多くありますが、その中でも安易なカタルシスを求めない、本質的な問題への追求を感じる一本でした。
ちなみに、2021年のアカデミー賞において、監督賞に女性監督が2人ノミネートされたのも史上初。
もうひとりの女性監督は、『ノマドランド』で作品賞を受賞したクロエ・ジャオ監督です。本作と合わせてどうぞ。
撮影 | ベンジャミン・クラカン |
美術 | マイケル・T・ペリー |
編集 | フレデリック・トラヴァル |
衣装 | ナンシー・スタイナー |
音楽 | アンソニー・ウィリス |
制作 | マーゴット・ロビー |
ポップでビビッドな色彩が印象的な本作ですが、ソフィア・コッポラ作品や『聖なる鹿殺し』などでも活躍する衣装のナンシー・スタイナーなどが参加しています。

製作にはマーゴット・ロビーも参加していますね!
『プロミシング・ヤング・ウーマン』のキャスト
主演:キャリー・マリガン

名前 | キャリー・マリガン |
生年月日 | 1985年5月28日 |
出身 | イングランド/ロンドン |
本作『プロミシング・ヤング・ウーマン』で主演を務めるのは、「キャリア最高の演技」と称されたキャリー・マリガン。
これまでの出演作での印象だと、『ドライヴ』『華麗なるギャツビー』など、男性の主人公に対して大きな影響を与えた相手役の女性という役柄が目立っていました。
ところが、本作でまったく印象が違います。
本作のキャリー・マリガンは、ハーレー・クインのようで、ジョーカーのようであり、あるいは世直しするヒーローのようにも見えるのです。もちろん、本質的にはどれもが違うのですが。
本作の彼女は、紛れもなく一人の女性として、誰かの相手に務めるのではなく力強く行動しているのです。

間違いなく、キャリーの新たな代表作となるでしょう!
その他キャスト・役柄
![]() | 名前:ボー・バーナム 役名:ライアン 役柄:小児科医 / キャシーの同級生 出演作:『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』監督 |
![]() | 名前:アリソン・ブリー 役名:マディソン 役柄:キャシーの同級生 出演作:Netflixドラマ『GLOW:ゴージャス・レディ・オブ・レスリング』 |
![]() | 名前:クランシー・ブラウン 役名:スタンリー・トーマス 役柄:キャシーの父 出演作:『バッド・ボーイズ』『ハイランダー/悪の戦士』 |
![]() | 名前:ジェニファー・クーリッジ 役名:スーザン・トーマス 役柄:キャシーの母 出演作:『アメリカン・パイ』『キューティ・ブロンド』 |
![]() | 名前:ラヴァーン・コックス 役名:ゲイル 役柄:キャシーが務めるカフェの店主 出演作:ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』『エマの秘密に恋したら』 |
![]() | 名前:コニー・ブリットン 役名:ウォーカー学部長 役柄:キャシーの通っていた大学の学部長 出演作:NBCドラマ『Friday Night Lights』『スキャンダル』 |
キャリー・マリガンのキャスティングも素晴らしいのですが、本作は男性陣のキャスティングも絶妙に効いているんです。それについては、後ほど解説していきます。
ネタバレあり
以下では、映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ感想】復讐の天使とナイスガイ
(C) 2020 PROMISING WOMAN, LLC All Rights Reserved.
『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、ジャンルで言うと、レイプリベンジ映画といえる映画ですが、従来の復讐映画の形とは、ひと味もふた味も違うものになっていました。
こういう類の映画では、トラウマを抱えた被害者たちが、加害者への復讐を遂げることで、スカッとさせるものが多いのですが、本作は様相が違います。
復讐の天使
まず印象的なのが、主人公のキャシーは直接的な被害者ではないこと。
共に医学部へ進学した、親友のニーナをレイプ被害が原因で失い、医学部を中退して人生が一変してしまったキャシー。
この設定は重要で、キャシーが被害者当人でも、親族でもないことで、一見なんのために行動しているのかを疑問に思うかもしれませんが、そこには本作のテーマが映し出されているのです。
監督も話していましたが、本作のキャシーは、言わばレイプによって自殺に追いやられた親友のために遣われた“復讐の天使”なのです。
映像的にも、彼女が天使や聖人のように見える瞬間がいくつもありました。
(C) 2020 PROMISING WOMAN, LLC All Rights Reserved.
冒頭のクラブで酔ったフリをする格好が、十字架のキリストのように見えたり。
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キャシーの自宅のベッドのフレームが天使の羽根のように映されたり。
(C) 2020 PROMISING WOMAN, LLC All Rights Reserved.
友人と会話するラウンジの照明が、天使の輪のように見えたり。
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カフェの壁紙に映されるキャシーの姿が宗教画のようであったり。
さらには、パリス・ヒルトンの「Stars Are Blind」の歌詞の中にも、そして最後に使われるジュース・ニュートンの「夜明けの天使」にも天使が登場します。
復讐の仕方も印象的
(C) 2020 PROMISING WOMAN, LLC All Rights Reserved.
また、キャシーの復讐の方法も印象的でした。
相手を殺したり直接的な暴力で傷つけるのではなく、自分のした行為と向き合わせて、間違っていたと認めさせるのです。

これが絶妙で、キャシーのキレのある言葉が突き刺さります!
復讐の対象者も、男性だけではなく、事件を見て見ぬ振りをした女性にも及んでいきます。
- マディソン(医学部の同級生)
- ウォーカー学部長(大学の学部長)
- グリーン弁護士(レイプ事件の主犯を弁護した弁護士)
- アル(ニーナのレイプ事件の主犯)
劇中では、復讐相手を上記のように4つに区切って見せていきます。
印象的だったのは、同級生のマディソンとウォーカー学部長のシーン。
ニーナの被害を訴えても味方になってくれなかった彼女に対して、キャシーが「あの日のことを思い出すことはある?」と聞くと、マディソンは「どうして私が?」と答えるのです。
「そうよね、どうしてあなたがと感じるわよね」と返すキャリー。
本作では、見て見ぬ振りをした者たちまでも対象とした復讐劇なのです。
背景は詳しく描かれませんが、ニーナの事件以降、キャシーの時間は完全に止まっています。
事件当時から時が止まったキャシーと、事件のことなど忘れて平然と生活を送るマディソンやウォーカー学部長。
そんな、マディソンやウォーカー学部長への復讐の仕方は、「自分や自分の愛する人だったらどうする?」というもの。

この映画を観る私たちにも「関係ない」とは言わせないのです…!
優しくてイイ男たち
『プロミシング・ヤング・ウーマン』で描かれる男性たちは、いわゆる女性を見下すような露骨な悪い男性ではなく、自分は女性に対して優しいと思っているような“ナイスガイ”たちなんです。
![]() | 名前:ボー・バーナム 役名:ライアン 役柄:小児科医 / キャシーの同級生 出演作:『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』監督 |
![]() | 名前:アダム・ブロディ 役名:ジェリー 役柄:自称ナイスガイ 出演作:ドラマ『The O.C.』 |
![]() | 名前:クリス・ローウェル 役名:アル 役柄:ニーナをレイプした実行犯 出演作:ドラマ『ヴェロニカ・マーズ』『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』 |
![]() | 名前:マックス・グリーンフィールド 役名:ジョー 役柄:アルの悪友 出演作:ドラマ『New Gir/ダサかわ女子と三銃士』 |
![]() | 名前:クリストファー・ミンツ=プラッセ 役名:ニール 役柄:自称フェミニストの小説家 出演作:『スーパーバッド 童貞ウォーズ』『キック・アス』 |

この男性陣のキャスティングが絶妙なんですよね!
登場する男性陣たちは、他の作品では好青年やいい男を演じてきたキャストたちなんです。
本作で描かれるのは、誰もが見た目は好青年で、自分たちを“いい人”だと思っているような男性たち。彼らは性差別についても疑問を感じたり、異を唱えたりなんかもします。
しかし、そんな“ナイスガイ”たちが、女性を“優しく”介抱し、酔った彼女たちに性的同意なしに手を出していく。「大丈夫」「優しくする」といった言葉を使って。
- 「酔っているから」
- 「抵抗しないから」
- 「露出が多いから」
- 「遅い時間やこんな場所に一人でいるから」
痴漢や性犯罪者は、動機として上記のような理由を挙げたりしますが、こんな言い分がまかり通っていいはずがないのです。
彼らの根底にあるのは、性的欲求よりも“支配欲”に基づく心理。
だから男性はよく「〇〇してあげる」のように、頼まれてもいないことを、身勝手な優しさからくる好意によって押し付けてしまうのです。
このあたり、同年公開のドキュメンタリー映画『SNS-少女たちの10日間』でも描かれていたので合わせてどうぞ。
そんな中、劇中で、キャシーが惹かれる男性として登場する、ライアンとのシーンには心が揺さぶられます。
(C) 2020 PROMISING WOMAN, LLC All Rights Reserved.
ライアンとの場面では、劇中でも穏やかに感じられるシーンが多いのです。
薬局でのシーンは、重いテーマな本作のなかで、ポップなラブコメのようになっていて、時が止まっていたキャシーの幸せを願わずにはいられないシーンになっています。

ここでパリス・ヒルトンの「Stars Are Blind」が流れるのが絶妙なんですよね!
しかし後半、無情にも悲しい現実が明らかになります。
なんと、ライアンもニーナのレイプ事件に居合わせていたことが分かるのです。
この映画がすごいのは、有害な“ナイスガイ”だけではなく、もう一歩踏み込んで、「愛する人や身近な人の関与」まで描いていること。
ニーナのレイプ動画の詳細は描かれることはなく、ライアンがどのように関与していたかはわかりません。
しかし、彼がその場にいたことは事実であり、たとえ何もしなかったとしても、それは問題なのです。
ライアンを好きになってしまったキャシーにとって、苦渋の選択を迫られます。
そして「考えに考え抜いた結果」辞めようとしたアルへの復讐へとつながっていくのでした。

キャシーが葛藤しているシーンをルーズショットの端で、木にもたれかかる様子で描いたのもすごいです…!
※以下では、映画のラストシーンに関するネタバレに触れていますのでご注意ください。
【ネタバレ解説/考察】ラストが意味するもの
(C) 2020 PROMISING WOMAN, LLC All Rights Reserved.
観客を裏切る、“どんでん返し”の復讐劇となっていた本作ですが、その結末がどんな意味を持っていたのか、解説・考察していきます。
ラストシーン
キャシーは、親友のニーナをレイプした実行犯である、アルへの復讐を胸に決めます。
アルの独身最後のバチェラー・パーティに、ストリッパーの格好で向かうキャシー。
ニーナを死に追いやったうえに、忘れ去り、人生を満喫するアル。そんな彼を上手く誘導し、手錠でベッドに固定すると、身体にニーナの名前を刻もうと脅しかけるのです。
しかし、物語は予想もできない展開へと向かいます。
抵抗して暴れたアルの手錠が外れてしまい、キャシーは枕を押し付けられて窒息死させられてしまうのでした。

これは想像もしていない、まさかの展開でした…!
本作は、それでは終わりません。
その後、アルは悪友のジョーと共に事件を隠蔽。2人はキャシーの死体を燃やし、平然と結婚式に参加するのです。
その結婚式は、ライアンも参加していました。
そんな中、遠くからサイレンの音と共にパトカーがやってくるのです。同時に、ライアンのスマホにはキャシーからスケジュール予約されたメッセージが届くのでした。
キャシーは自分が死んでしまった場合に備えて、プランBを用意していたのです。
アルたちのレイプ動画と自分の行動を、罪悪感で苛まれるグリーン弁護士に託したのでした。
それにより、アルたちはニーナのレイプではなく、キャシーの殺人容疑として逮捕されることになるのでした。
あえて描かない描写の数々
(C) 2020 PROMISING WOMAN, LLC All Rights Reserved.
あまりにもショッキングな結末でしたが、この結末だからこそ、アルへの復讐を現実的に遂げることができたと考えられます。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』では、直接的ではなく、あえて描かない描写の数々が印象的かつ、効果的に映し出されていたように感じます。
代表的なところを挙げてみます。
- 暴力描写
- ニーナの詳細
- 復讐の描写
- 家族との関係性
- レイプ被害の描写
特にリベンジ系の映画において、私たち観客が期待するものとは大きく異なるのが、暴力描写について。
予告編を観る限り、酷い目にあった女性が、その当事者である男性へ復讐する物語のように見えます。
実際に、アバンタイトルが登場する場面では、キャシーがクラブでお持ち帰りして手を出してきた男性に対しての仕打ちが描かれません。
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そのため、次のシーンで彼女の腕についているのが、血なのか、ケチャップなのかが分からないのです。
そんな中、物語を観ていくと、キャシーが暴力で解決しようとしていないことがわかってくるのです。
極め付けは、『プロミシング・ヤング・ウーマン』の劇中で「レイプ」という言葉すら出てこないということ。

本作はこのような、あえての見せない描写が本当に上手いんです!
私たちは、復讐映画として『ジョン・ウィック』のようにスカッとする復讐を遂げることで得られるカタルシスを求めてしまうのです。
私自身もそのようなジャンルの映画は好みなのですが、しかし、物語は真逆の展開を見せました。
実際のところ、キャシーがアルへの復讐を遂げたとしても、観客がスカッとするだけで、当事者を考えると単純ではありません。
恐らく警察は、キャシーを精神異常者として事件を片付けてしまうでしょう。
つまり、アルを罰するためには、キャシー自身が死ななければ成立しない形になっているのです。
この構図こそが、男性が女性を搾取する、前途有望な女性が苦しむ社会を描いているのです。
そして、あえて描かれなかった暴力描写が唯一描かれるのが、皮肉にもキャシーが殺される場面なのでした。
その瞬間、“復讐の天使”ですら、男性の前では力で対抗できない一人の女性の姿として如実に映し出されていました。

アルの荒い息づかいと、キャシーが抵抗する音だけが聞こえるそのシーンは、あまりにも強烈でした…!
復讐の行方は…
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ラストシーン、復讐をカウントする数字(タリーマーク)は5人目を記録します。
これは誰に対するものなのか。
普通に考えると、メッセージを送りつけたライアンへのカウントと見るのが自然でしょう。
動画の証拠を元に、レイプ事件への関与で医者の地位を失うかもしれませんから。
しかし、もう一つ別の考え方もできます。それは、キャシー自身へのカウント。
本作では、被害者当人であるニーナについては、ほとんど描かれることがありません。そのため、キャシーの復讐劇がニーナの意思に基づくものかもわからないのです。
実際に、キャシーの様子を心配するニーナの母親の姿は印象的に描かれていました。
人によっては、「キャシーが男を誘惑して痛い目に合わせているだけ」と思うかもしれませんが、彼女のノートの筆圧を見れば、そこにどれだけの想い・怒りが込められているかを鑑みることができます。
フェネル監督がインタビューで孔子の「復讐の旅に出る前に墓穴を2つ掘れ」の言葉を引用して語っていたように、復讐の5人目は、結果としてニーナを死から救うことができなかったキャシー自身が罰を受けたとも感じられました。
もちろん、キャシーはそれを理解した上で、単身パーティ会場へと向かったのでしょう。
そこには、そうならざるを得ない社会の現実が内在しているのです…。
まとめ:甘くて猛毒のエンターテインメント
以上、『プロミシング・ヤング・ウーマン』をご紹介しました。
エンタメ性の高さと、物語自体の面白さはもちろんですが、それ以上に残酷な問題を突きつける作品でした。
正直いうと、シス男性である私自身、本作の感想を書いていて、かなり自分を疑うような気持ちにもなりました。
実際、賛否両論があるようで、全く別の感じ方をしている方も見られました。
ただ、こうやって解説じみたブログを書いて、分かったつもりでいる自分ですら、もしかしたらどこかで加担してしまっているかもしれないと感じずにはいられないのです。
「自分はどうだろうか、無意識なだけではないか」
鏡を見ているような感覚になる、恐ろしくもすごい映画でした。傑作です。
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