今回ご紹介する映画は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』です。
スパイダーマン=マイルス・モラレスを主人公にしたマーベルコミック原作のアニメ映画。
2018年公開の『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編で、スパイダーバースと呼ばれる別世界の共有マルチバースが舞台。
本記事では、ネタバレありで『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』を観た感想・考察、あらすじを解説。
前作も大傑作でしたが、今作もとんでもない大傑作にパワーアップしています!
前作を振り返りたい方は、以下の記事を参考にどうぞ。
映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の作品情報とおすすめ度
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
あらすじ
マルチバースを移動できるようになった世界で、マイルスは別次元の友達グウェンと、あるユニバースを訪れる。スパイダーマンには愛する人と世界の選択を迫られる運命があり、マイルスは同時に救うことを誓うが……。
5段階評価
予告編
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作品情報
タイトル | スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース |
原題 | Spider-Man: Across the Spider-Verse |
監督 | ホアキン・ドス・サントス ケンプ・パワーズ ジャスティン・K・トンプソン |
脚本 | デヴィッド・カラハム フィル・ロード クリス・ミラー |
出演 | シャメイク・ムーア ヘイリー・スタインフェルド ブライアン・タイリー・ヘンリー ルナ・ローレン・ベレス ジェイク・ジョンソン ジェイソン・シュワルツマン イッサ・レイ カラン・ソーニ シェー・ウィガム グレタ・リー ダニエル・カルーヤ マハーシャラ・アリ オスカー・アイザック |
音楽 | ダニエル・ペンバートン |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2023年 |
上映時間 | 140分 |
動画配信サービス
配信サイト | 配信状況 |
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おすすめポイント
運命をぶっ壊せ。
ピーター・パーカーの遺志を継いだ少年マイルス・モラレスが主人公の映画『スパイダーマン・スパイダーバース』シリーズ第2弾。
多様で多彩なアニメーション表現と、これまでのスパイダーマンの物語の運命に抗う主人公の姿に驚かされます。
マルチバースで無数に登場するスパイダーマンたちの姿が印象的で、マイルスの青春物語とヒーローとしての宿命が胸を熱くさせます。
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
『アクロス・ザ・スパイダーバース』主なキャラクター・キャスト
マイルス・モラレス(シャメイク・ムーア)
(C)2023 CTMG. (C) & TM 2023 MARVEL. All Rights Reserved.
アース1610。放射能にクモに噛まれ、自分の世界のピーター・パーカーの死を目撃した後、スパイダーマンとしての道を歩み始める主人公。
前作に引き続き、シャメイク・ムーアが声を担当。
前作では普通の少年がスパイダーマンになっていくまでを描き、今作ではスパイダーマンと私生活の両立に悩む青年の成長譚を描いています。グラフィック・アーティストとしての才能もあります。
グウェン・ステイシー(ヘイリー・スタインフェルド)
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アース65。前作でキングピンの加速器によってマイルスの世界にやってきたスパイダーウーマン。前作に引き続き、ヘイリー・スタインフェルドが声を担当。
グウェンの物語から始まる今作は、彼女の世界を淡い水彩画のようなタッチで描いていて、グウェンが父親との関係維持に葛藤する様子を繊細に表現していました。
ピーター・B・パーカー(ジェイク・ジョンソン)
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アース616。前作ではマイルスのスパイダーマンとしての師となり、一方でマイルスからも影響を受けていました。
前作に引き続き、ジェイク・ジョンソンが声を担当。
MJと離婚していたピーター・Bでしたが、再婚して娘メイデイを授かり、父親として新しい姿を見せています。前作より出番は少ないものの、変わらないユーモアとパパになった姿にも注目。
ミゲル・オハラ(オスカー・アイザック)
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2099年の未来世界アース928のスパイダーマン。オスカー・アイザックが声を担当。
マルチバースを行き来できる時計型リストバンドを作成し、スパイダー・ソサエティを結成。マルチバースに飛んだヴィランたちを捕まえて元のユニバースに戻す活動を行っています。
ジェシカ・ドリュー(イッサ・レイ)
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アース404の妊娠中のスパイダーウーマン。イッサ・レイが声を担当。
ホービー・ブラウン(ダニエル・カルーヤ)
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アース138のロンドンからきたスパイダー・パンク。ダニエル・カルーヤが声を担当。
パンクロッカーであり、アナーキストのスパイダーマン。本作で多くの人を魅了すること間違いなし。
「子どもはみんなアナーキストだ。」
本作では、ホービーのユーモアあふれる台詞にも注目。
パヴィトル・プラバカール(カラン・ソーニ)
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アース50101のムンバッタンのスパイダーマン。カラン・ソーニが声を担当。
スパイダーマンとして活動してわずか6ヶ月ながら、身体能力と才能を発揮する若き青年。ガールフレンドのガヤトリや、叔母と一緒にチャイを飲んで過ごしている。
【ラストまでネタバレ】映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』あらすじ解説
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映画は、グウェン・ステイシー(ヘイリー・スタインフェルド)がバンドのドラムでジャムセッションしながら、マイルス・モラレス(シャメイク・ムーア)との出会いや、前作『スパイダーマン:スパイダーバース』を振り返るところから始まる。
アース65:グウェンの生活
グウェンにとって親友のピーター・パーカー(ジャック・クエイド)は、心を許せる大切な存在だった。
ある日、グウェンは学校のパーティで暴れるリザードを倒すが、それが血清を飲んでリザードに変身したピーターだと判明する。駆けつけたグウェンの父親であり警察官のジョージ(シア・ウィガム)は、スパイダーウーマンがピーターを殺したと思い込んでしまう。
ジョージに正体を打ち明けられないグウェンは、父娘であり、警察官とスパイダーウーマンである立場で葛藤し、ぎこちない関係になっていた。親友の死後にできた信頼できる友達であるマイルスに会いたい気持ちを募らせる。
そんな中、グッゲンハイム美術館をヴァルチャー(ヨーマ・タコンヌ)という翼の生えたヴィランが襲撃する。グウェンはヴァルチャーが、ルネサンス時代のユニバースからやってきたヴィランだと気づき、交戦するも苦戦を強いられる。
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すると、そこに別次元へのポータルが開き、ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099(オスカー・アイザック)と、妊娠中のジェシカ・ドリュー/スパイダーウーマン(イッサ・レイ)が登場する。
グウェンは2人と協力してヴァルチャーを倒すことに成功するが、グウェンの前にジョージが駆けつけて銃を向ける。グウェンはジョージにスパイダーウーマンであることを明かし、見逃すように訴えるが、ジョージはためらいながらも警察官として逮捕しようとする。
そこへやってきたミゲルがジョージをフォースフィールドで止めて、ポータルで移動しようとすると、ジェシカはグウェンの腕前を評価してチームに入ることを提案する。
最初は反対したミゲルだったが、ジェシカの説得に負けてグウェンにユニバースを往来できるリスト装置を手渡し、グウェンはジョージを見つめ、自分のユニバースを後にする。
アース1610:マイルスの生活
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マイルス・モラレスは、学校生活とスパイダーマンのとしての活動の両立に忙しくしていた。
両親のジェファーソン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)とリオ(ルナ・ローレン・ベレス)は、学校の面談に出席するも、当人のマイルスの姿がない。
マイルスは、コンビニでATMから金を盗もうとするスポット(ジェイソン・シュワルツマン)というヴィランに遭遇し、追いかけるが、体中がポータルになっていて中々捕まえることができず、苦戦しながらも捕獲する。
マイルスは急いで面談に出席するも、スペイン語のクラスを6回も欠席していることがバレて両親は驚いていた。そんな中、外の様子でスポットが逃亡したことを知り、面談途中で退席し、ジェファーソンも無線が入ったことで母リオを残して去っていく。
スポットの生い立ち
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マイルスがスポットを追うと、化学企業のアルケマックスにたどり着く。スポットはマイルスに、憎しみがここで始まったと主張する。
スポットは、自分がアルケマックスの科学者ジョナサン・オーンだという。マイルスたちが加速器を破壊した後、次元を移動できるポータルが備わった白い身体になったと話す。それによって仲間もいなくなり、元の生活ができなくったと訴える。
スポットはマイルスに突撃するも、ポータルで自分の尻を蹴り、ポータル内に体ごと入って消えてしまう。
スポットはポータルが無数に存在する次元の狭間にいることに気づく。彼はそこから様々なユニバースへ移動できることを知るのだった。
その後、自分のユニバースへ戻ったスポットは、マイルスを倒すために、異なる次元に存在するアルケマックス施設の加速器からエネルギーを吸収する必要があると判断する。
グウェンとの再会
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ジェファーソンの昇進を祝うパーティが開かれ、スピーチをしていたが、マイルスはお祝いのケーキを取りに行く中で、街中の犯罪阻止も行っていて遅刻してしまう。
マイルスは両親に自分の秘密を打ち明けようとするが、言い留まり口論となり、マイルスは外出禁止を言い渡される。マイルスは自分の部屋に戻り、もどかしさを感じていた。
すると、目の前にグウェンがポータルから現れる。2人は再会を喜び合い、グウェンに誘われて街をスウィングして散歩する。
グウェンはマイルスの気持ちを理解していたが、彼女はグウェンとスパイダーマンが近づくと、どのユニバースでも悪い結果をもたらすことを伝える。
その後、2人はパーティに戻り、グウェンはジェファーソンとリオに挨拶し、仲間に呼ばれたことで去っていく。両親はグウェンを信用していない様子だった。マイルスはリオに正体を打ち明けようとして辞めるも、リオはマイルスの成長を理解し、グウェンを追うことを勧める。
マイルスがグウェンを追いかけると、彼女はスポットがいた事件現場にいた。マイルスは体を透明にさせてグウェンに近づくと、彼女は装置を使ってスポットの行動を再現していた。そこではスポットが加速器の中に身を置いていたことがわかる。
マイルスは、グウェンがジェシカから連絡を受け、マルチバースの異変を見つける仕事を任されていること、ジェシカがグウェンに自分のことを忘れるように言っているのを耳にする。
グウェンはマイルスに別れを告げてポータルで移動していくが、マイルスは意を決してグウェンを追いかけてポータルの中に飛び込んでいく。
アース50101:ムンバッタン
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グウェンはポータルを通って、別のユニバースのムンバッタンという都市にたどり着く。グウェンはスポットを追いかけている中で、サポートしようとマイルス飛び込んできて、彼が付いてきていることに驚く。
しかし、マイルスはポータル装置を持っていないため、体がグリッチし、上手く動かせないでいた。
そこへスパイダーマン・インディア/パヴィトル・プラバカール(カラン・ソーニ)が登場して加勢する。自己紹介パートでは、ガヤトリという女性と付き合っていて、曼荼羅模様のクモ糸を発射することも描かれる。
3人はスポットを追いかけるが、スポットはフォースフィールドを張り、アルケマックスの加速器の中に入ろうとする。マイルスは新技があるといってフォースフィールドを取り込もうとするが、力が足りず壊せないでいた。
すると後ろから勢い良くフォースフィールドを突き破ってスパイダー・パンク/ホービー・ブラウン(ダニエル・カルーヤ)が登場する。
しかし、スポットが加速器の中に入るのを止めることはできず、スポットはさらなるエネルギーを手にしてしまう。アルケマックスの建物は崩壊し、4人は落ちていく瓦礫から市民を守るために飛び出していく。
パヴィトルは、橋からガヤトリが乗ったバスが落下するのを糸で止めるが、橋の上では少女を助けようとするガヤトリの父シンに危機が迫っていた。
止めようとしたグウェンを振り切り、マイルスはシンを助けようと飛び込んでいく。パヴィトルはガヤトリらを救うことに成功し、マイルスによってシンと少女も無事に助けられた。しかし、ムンバッタンの一部がグリッチし始め、崩壊しようとしていた。
そこへジェシカがやってくると、次なる崩壊に対処し、全員を本部に出頭することを命じる。
アース928:ヌエバ・ヨーク
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ヌエバ・ヨークのスパイダー・ソサエティの本部に到着すると、そこにはあらゆるユニバースから無数のスパイダーピープルがやってきていた。ジェシカはマイルスにリストバンドを渡し、それをはめるとマイルスのグリッチは収まった。
そこでは、マルチバースへ移動したヴィランが捕らえられ、ゴー・ホーム・マシンによって元のユニバースに戻されていた。
マイルスはピーター・B・パーカーと再会する。ピーター・Bは、メリー・ジェーンとの間に娘のメイデイをもうけていた。マイルスはスパイダー・ソサエティを率いるミゲル・オハラと対面するが、ミゲルはマイルスがカノン発生を阻止したことに腹を立てていた。
ミゲルは、スパイダーたちのいるユニバースでは、近しい人間(主に警部)の死「カノン・イベント(正史の出来事)」が起こることになっていることを説明する。
ミゲルは以前、幸せな家庭を築いていた別のユニバースの自分と入れ替わろうとして、その宇宙が崩壊してしまったことを明かし、カノンを防ぐことは壊滅的な結果をもたらすと語る。
さらに、2日後に昇進するジェファーソンが、スポットによって殺されるのがカノン・イベントであり、それを防ぐことはできないと言う。ほかのスパイダーピープルも、それが起こるべくして起こるものだと認識していた。
アノマリー(逸脱)していたマイルス
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ピーター・Bとグウェンはマイルスと話をしようとするが、ミゲルはマイルスをフォースケージに入れて捕らえてしまう。そんな中、唯一マイルスに賛同したホービーのアドバイスによって、マイルスは脱出する。
ミゲルは全スパイダーマンにマイルスを捕まえるように指示する。一方、ホービーはスパイダー・ソサエティを辞めると言って自分のユニバースへ戻っていく。
ミゲルはマイルスを追い詰めると、マイルスが「anomaly(逸脱・異端)」の存在であることを告げる。
ミゲルは、アース42にはスパイダーマンが存在しないこと、マイルスを噛んだクモは、アース42からやってきたクモで、マイルスのユニバース(アース1610)のものではなかったこと、そしてマイルスはスパイダーマンになるはずではなかったことを明かす。
ミゲルは、本来スパイダーマンは各ユニバース一人であり、マイルスのユニバースでピーター・パーカーが死んだこともマイルスのせいにする。グウェンとピーター・Bは、このことを知っていた様子で、マイルズは傷ついてしまう。
しかし、マイルズは、電気能力を使ってミゲルを引き離すと、本部からスパイダーピープルを引き離すことを計画していたことを明かし、本部へ戻っていく。
本部に忍び込むと、マーゴ・ケス / スパイダーバイト(アマンドラ・ステンバーグ)の力を借りて、ゴー・ホーム・マシンを起動してユニバースを移動する。しかし、装置がマイルスのクモのDNAに標準を合わせていたため、マイルスはアース42に送られてしまっていた。
グウェンとジョージ
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ミゲルはマイルズを取り逃がしたグウェンを罰し、装置を取り上げてからグウェンの次元に送り返す。ミゲルはジェシカとベンを連れて、マイルズの後を追う。
グウェンがアパートに戻ると、マイルスと一緒に写った写真を見つける。すると、ジョージが目を覚まして声をかける。グウェンはピーターの死を自分のせいにしたことに怒りをぶつけるが、ジョージはグウェンが去った後、警察を辞めたとことを明かす。
2人は和解して抱擁すると、ジョージはホービーが残していった次元移動リストバンドを彼女に渡す。グウェンはジョージに「すぐ帰ってくる」と告げて、マイルスのユニバースへ向けて移動する。
マイルスとグウェン
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マイルスは自分のアパートに着くと、リオがやってくる。マイルスは自分がスパイダーマンであることを告白するが、リオはスパイダーマンが誰なのか知らないと答える。
マイルズは叔父のアーロン(マハーシャラ・アリ)が生きていることを知り、間違ったユニバースに来てしまったこと、自分を噛んだクモがいたアース42にやってきたことに気づく。
同じ頃、グウェンはマイルスの部屋に行くと、そこには彼の姿はなく、行方を心配するジェフとリオの前に、自分のせいだと言って現れる。2人は彼女を信用していない様子だったが、グウェンはマイルスを見つけると約束する。
マイルスがアーロンに付いていくと、壁画を見てこのユニバースではジェファーソンがすでに死んでいることを知る。すると、プロウラーに扮した人物が現れ、マイルスは気絶させられてしまう。
アーロンのアパートで縛られた状態で目を覚ましたマイルスは、自分が何者かを伝えようとするが、アーロンはプロウラーではないとだけ答えて、ほかは語らない。
すると、マイルスの前にプロウラーが現れ、マスクと外すと、そこには自分と同じ顔の人間がいた。マイルスはプロウラー・マイルスにジェファーソンを助けるために協力してほしいと頼むが、断られてしまう。
その頃、アース1610にはスポットが到着し、ジェファーソンを殺す準備を進めていた。
一方、グウェンは、ピーター・Bとメイデイ、ホービー、パヴィトル、マーゴ、スパイダー・ノワール、スパイダー・ハム、ペニー・パーカーを含めた独自のチームを結成し、マイルスの救出に向かおうとしていた。
【ネタバレ感想】運命を受け入れ、壊した青春物語
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2023年の今となっては、映画における“マルチバース”という言葉は聞き慣れてきて、いろんな作品で扱われることも多くなりました。
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』、そして『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』では、マルチバース作品がアカデミー賞の作品賞を受賞するまでになりました。
以前までは“パラレルワールド”と言われることも多く、そんな中で“マルチバース”という言葉をいち早く映画で取り入れていたのが、本作の前作に当たる『スパイダーマン:スパイダーバース』です。
アカデミー賞で長編アニメーション映画賞も受賞し、新たなスパイダーマン譚として見事なスタートを切った前作でしたが、本作はさらにパワーアップし、前作とは違った魅力が突き抜ける作品になっていました。
IntoからAcrossへ、マイルスとグウェンの物語
前作「Into the Spider-Verse」のテーマは、「スパイダーマンとしての運命を受け入れろ」というものでした。
主人公マイルスがいる世界(アース1610)を舞台に、ヴィランのキングピンが次元加速器を起動させたことで、異なるユニバースからスパイダーマンたちがやってくる(Into)という物語。
今作では「Across」の文字通り、マイルスが異なるユニバースを渡り歩いて行きます。前作では6人だったスパイダーマンも、本作では無数に登場し、監督も「どのスパイダーマンを登場させないかを決めることが大変だった」と語っています。
マイルスは、自分を助けたピーター・パーカーが死に、その後を継いでスパイダーマンとなったのですが、まだ高校生で学業との両立に苦戦しています。両親とは仲がいいものの、少し過保護で、自分の悩みを打ち明けることもできません。
前作では、自分のほかにも別のユニバースで悩みながらも活躍しているスパイダーマンがいることを知り、中でもグウェンは、心を許せる友人となりました。それはグウェンにとっても同じこと。
前作がマイルスのスパイダーマンとしての誕生物語だったのに対し、本作は、スパイダー・マン/スパイダー・ウーマンとしての責任の重さと家族との関係を描いています。
マイルスとグウェンが再会してニューヨークをスウィングしながら会話するシーンは特に印象的。同時に、家族関係を維持することの難しさを、2人が逆さまになって街を見つめているシーンで効果的に表現していました。
運命をぶっ壊せ
「運命を受け入れろ」だった前作に対して、今作の「Across the Spider-Verse」のテーマは、「運命をぶっ壊せ」というもの。
マイルス、グウェンの青春物語を「カノン・イベント(正史の出来事)」という運命のレンズを通して描くのです。
スパイダー・ソサエティのリーダー、ミゲル・オハラは、スパイダー・ピープルにとって身近な人の死は避けられないことであり、それを受け入れることをマイルスに伝えます。
そして明らかになる、マイルスはスパイダーマンになるはずではなかったという衝撃の真実。しかし、マイルスはほかのスパイダーピープルのように運命を受け入れることはしません。
マイルスの前に立ちはだかるミゲル・オハラは、決してヴィランではありません。ミゲルはスパイダーマンとしての役割・使命感に従い、それがマイルスと対立しただけなのです。
本作が心に響くのは、ヒーロー物語のようで普遍的な青春物語であるから。誰もが人生の岐路に立ったとき、新しい道を切り開くときに共感性があるのです。
進路に迷い、結婚に迷い、新しい環境に迷う。世の中の多くの人が選ぶ道は、本作の「カノン・イベント」のよう。カノン・イベントを選ぶことも決して悪いことではありません。
でも、「自分はこうしたい」という思いが強く背中を押すのです。面談には遅刻したマイルスですが、彼は自分で地元の大学ではなく、物理学(量子力学)で有名なプリンストン大学へ進学したいと意思を表明していたことも印象的。
マイルスは、自分と同じようなスパイダーマンが別のユニバースにいることを知りました。同じように悩み、葛藤する友人とも出会いました。しかし、それでもマイルスは、彼らと同じように運命を受け入れることは選びません。
スパイダー・ソサエティの一員になったマイルスは、またも一人になってしまいます。しかし、彼の行動によってグウェンは自分の意思で「マイルスを助け出したい」と決め、それに賛同した仲間とチームを結成しました。
物語は最高潮の熱に達したところで、次回作へ持ち越されます。マイルスは、アース42のスパイダーマンがいない世界の自分の姿と対峙していました。自分の写し鏡とも言えるプラウラー・マイルスの存在。
次作「Beyond the Spider-Verse」では、運命を受け入れ、壊したマイルスによる、運命を越えた先の結末が待っていることでしょう。
まとめ:運命をぶっ壊せ!
今回は、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』をご紹介しました。
前作を超えるビジュアルと、定石だったスパイダーマンの物語の運命に逆らう新たな物語。これまで幾度となく作られてきたスパイダーマン・ストーリーを受けて新しく紡がれる意味のある映画になっていました。
無数に登場するスパイダーマンたちも、単なるカメオ出演ではない意味を持っていて、主人公マイルス、そしてグウェンの青春物語として、普遍的な共感性のある胸熱な映画でした。