今回ご紹介する映画は『ロブスター』です。
ヨルゴス・ランティモス監督、コリン・ファレル主演による、独身者が罪でパートナーを見つけられないと動物に変えられる世界を描いたディストピア映画。
本記事では、ネタバレありで『ロブスター』を観た感想・考察、あらすじを解説。
独特すぎるディストピアの世界観を受け入れて観ると楽しめて、「自分だったどうするだろう」と考えてしまう映画でした!
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『ロブスター』作品情報・配信・予告・評価
『ロブスター』
5段階評価
ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :
あらすじ
この世界では、“独身者”は身柄を確保されホテルに送られる。そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、自ら選んだ動物に変えられ、森に放たれるのだ。独り身になったデヴィッドもホテルへ送られるが、そこには狂気の日常が潜んでいた。
作品情報
タイトル | ロブスター |
原題 | The Lobster |
監督 | ヨルゴス・ランティモス |
脚本 | ヨルゴス・ランティモス エフティミス・フィリップ |
出演 | コリン・ファレル レイチェル・ワイズ ジョン・C・ライリー ベン・ウィショー ジェシカ・バーデン オリヴィア・コールマン レア・セドゥ |
撮影 | ティミオス・バカタキス |
編集 | ヨルゴス・モヴロプサリディス |
製作国 | アイルランド・イギリス・ギリシャ・フランス・オランダ |
製作年 | 2015年 |
上映時間 | 118分 |
予告編
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『ロブスター』監督・スタッフ
監督:ヨルゴス・ランティモス
名前 | ヨルゴス・ランティモス |
生年月日 | 1973年5月27日 |
出身 | ギリシャ・アテネ |
監督はギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督。『籠の中の乙女』がカンヌ国際映画祭にて「ある視点」部門のグランプリを受賞、アカデミー外国語映画賞にノミネートされ、称賛されました。
本作『ロブスター』はランティモス監督作品で初めての英語作品であり、アイルランドで撮影が行われています。
世界三大映画祭とはアカデミー賞と何が違うのか分かりやすく解説
『ロブスター』キャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
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デヴィッド(コリン・ファレル) 主人公。近視の独身男性。 | |
近視の女(レイチェル・ワイズ) 森の中で独身者たちのグループに属している。 | |
独身者たちのリーダー(レア・セドゥ) 森の中で独身者たちのグループを率いる女性。 | |
ホテルのメイド(アリアーヌ・ラベド) ホテルのメイドとして男性たちに性的刺激を施す。 | |
ジョン(ベン・ウィショー) オオカミに襲われて足を悪くした独身男性。 |
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】『ロブスター』はどんな話?あらすじとラスト
(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film,
The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.
物語は、一人の女性が車を運転し、2頭のロバがいる野原にたどり着くところから始まる。彼女は車から降り、ロバの1頭を射殺する。
ホテル
犬に変えられた弟とともにデヴィッド(コリン・ファレル)がホテルにチェックインする。ホテルの支配人(オリヴィア・コールマン)は、独身者は45日以内にパートナーを見つけなければ、好きな動物に変身させられると明かす。デヴィッドは、失敗したらロブスターになることを決意する。
翌朝の朝食中、デヴィッドは3人の女性を観察する。感情を持たないと言われる薄情な女(アンゲリキ・パプリア)、いつも小さなビスケットを持っているビスケットの女(アシュレイ・ジェンセン)、鼻血の女(ジェシカ・バーデン)。デヴィッドは、舌足らずな男ロバート(ジョン・C・ライリー)と、足の不自由な男ジョン(ベン・ウィショー)という2人の男性と知り合いになる。
集会でジョンは、母親がオオカミに変えられて動物園に送られたこと、彼女の檻を訪問して他のオオカミに襲われ、足を悪くしたことを明かす。動物園では、どのオオカミが母親か判別できなかったが、自分を襲わなかった2匹のオオカミのうちの1匹が母親だと思ったと語る。
それぞれの相手探し
ホテル滞在中、独身者たちはダンスに参加したり、狩りに出かけたりする。狩りでは、森の中で暮らしている独身者たちを見つけて捕獲すると、滞在期間を延長することができ、薄情な女は最高のハンターだと言われていた。ある日の狩りに向かうバスの中で、デヴィッドはビスケットの女から好意を寄せられる。彼女は相手が見つからなかったら部屋の窓から飛び降りるかもしれないと言う。
ホテルでは自慰行為が制限されているため、男たちはメイド(アリアーヌ・ラベド)から射精なしの性的刺激を受けることしかできない。ロバートは規則を破り、自慰行為を繰り返していたことがバレて、罰としてトースターで指を焼かれる。
一方、ジョンは、鼻血の女に近づくため、顔をぶつけて鼻血が出たふりをしてアプローチする。それが功を奏し、2人はカップルとなり、2人用の部屋に移される。
薄情な演技
相手が見つからなかったビスケットの女は宣言通りに窓から飛び降り自殺する。デヴィッドは薄情な女に近づき、ビスケットの女の死について薄情な発言をする。2人は一緒にジャグジーに入ると、薄情な女はマティーニのオリーブを喉に詰まらせたふりをするが、デヴィッドが助けようとしない様子を確認し、彼女は自分たちがお似合いだと判断する。
カップルとなった2人は、2人用の部屋に移されるが、デヴィッドは彼女と同じように薄情なふりをし続けなければならなかった。ある朝、デヴィッドが目覚めると、薄情な女がデヴィッドの弟である犬を無惨に殺していた。
デヴィッドは薄情なふりをして平静を装うが、犬の死体を見て泣き出すと、薄情な女は嘘をついたデヴィッドを平手打ちする。彼女はホテルの支配人に報告しに向かうが、メイドの助けを借りて、薄情な女を麻酔銃で眠らせ、未知の動物に変身させる。
独身者たちのグループ
その後、デヴィッドはホテルから逃げ出して森に入ると、そこで独身者たちのグループに出会う。独身者たちのリーダー(レア・セドゥ)はデヴィッドを歓迎するが、恋愛禁止のルールを告げる。ルールを破った場合は、切罰によって罰せられる。
しかし、デヴィッドは自分と同じ近眼の女(レイチェル・ワイズ)に恋をする。デヴィッドはウサギを捕まえて、彼女の好みに合わせて調理することで好意を持たせる。ある時、デヴィッドは狩りをするロバートに遭遇し、麻酔銃で撃たれるが、近眼の女はデヴィッドを助けてロバートを気絶させる。
ある時、独身者たちは極秘任務のため、夫婦のふりをして街に繰り出す。デヴィッドは近眼の女と夫婦を演じ、問題なくやり過ごす。一方、ホテルのメイドはスパイで、独身者たちのリーダーと手をくみ、ホテルの情報を流していることが判明する。
共通点
ある時、独身者たちはホテルを破壊するために襲撃を開始する。その間にデヴィッドはジョンと家族が乗るヨットに乗り込み、ジョンが鼻血を演じていること明かし、2人の仲を裂こうとするが失敗する。
ホテルでは、独身者たちのリーダーがホテルの支配人とその夫の部屋に入る。彼女は支配人に銃を突きつけ、夫に愛しているかと尋ねる。愛していると答える夫に対し、自分を守るか妻を撃つかを選択させると、夫は妻に向けて銃の引き金を引く。しかし、銃には弾が入っていなかった。
その後、独身者たちのリーダーは近眼の女の手記を入手し、デヴィッドと近眼の女が恋をして街へ逃げ出そうとしていることに気づく。独身者たちのリーダーは、近眼の女を近視を治す手術を受けさせるという名目で街に連れて行くが、その代わりに彼女を失明させる。
近眼の女は失明させられたことに怒り、リーダーを殺そうとするが、リーダーはメイドを盾にして犠牲にし、自分が殺されたふりをする。その後、デヴィッドは独身者たちのリーダーを襲撃し、彼女を縛り上げ、野犬に食い殺されるように墓場に放置する。
デヴィッドと失明した女は街に逃げて、レストランに入る。デヴィッドは失明した女と同じように、ナイフで自分の目をつぶそうとトイレに向かうが、彼がそれを実行したかはわからないまま映画は幕を閉じる。
ディストピアの世界観を理解しないと「意味不明」になる
(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film,
The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.
『ロブスター』は、家庭を持ち、子孫を残すことが義務付けられた近未来を舞台にしたディストピア映画です。これを理解しておかないと、「訳のわからない映画」で終わってしまうと思います。
そのため、まず、物語を理解する上で、前提条件となる世界観を抑えておく必要があります。
大事なのは、観客もこの世界観を受け入れた上で観ること。そうでないと、奇妙な世界観を現実的な視点で観ることになってしまい、意味不明という印象で終わってしまいます。
繰り返しますが、『ロブスター』はディストピア映画です。国民たちは独身であることが罪であることを認識し、パートナーを見つけるためにホテルという「矯正施設」へ連行されるのです。(最初に手錠をかけられていたのも独身=罪であることを象徴しています)
ホテルでは、パートナーがいることが以下に素晴らしいかを刷り込まれていきます。独身者たちは、限られた時間の中でパートナー探しに奔走し、必死に自分と同じ共通点がある相手を探していきます。
この映画は、「恋愛・愛・結婚」をメタ的な目線で見つめ直し、それに翻弄される人間たちの滑稽な様子を描いたブラック・コメディ作品なのです。
狩りとラストの意味
(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film,
The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.
ヨルゴス・ランティモス監督の作品の多くは、何か「答えや解決」が得られるような物語ではなく、観客に疑問を残す作品が多い印象があります。本作もそれに当たり、映画の物語を通じて描かれるラストシーンは、哲学的な問いかけを残しています。
本作で特に印象的であり謎とも言える「狩り」と「ラストシーン」の意味について解説・考察します。
狩りの意味
ホテルに滞在している独身者たちは、たびたび麻酔銃を片手に森の中へ入っていきます。これは、映画の後半で登場する「独身者たちのグループ」を捕獲する意味がありました。
この映画の世界では独身者は犯罪者であるので、レア・セドゥ率いる森の中の独身者たちの集団は、罪を逃れた言わば指名手配犯のようなもの。ホテルは言わば「矯正施設」であり、彼らはパートナーを見つけないと動物にさせられるという恐怖と、たとえ逃げ出しても「狩り」に遭って捕獲される恐怖にさらされています。
独身者たちは言わば「自分たちの別の姿」である逃亡者たちを自ら狩ることで、矯正的な働きとなり、捕獲すれば猶予が増えるため、必死になるのです。まさに先に説明したディストピアの世界観を見事に構築して表現しています。
ラストシーンとタイトルの意味
(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film,
The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.
『ロブスター』のラストシーンは、観客に問いを残す、曖昧な終わり方になっていました。
主人公のデヴィッドは、ディストピア世界を生き抜く手段を模索していく中で、それぞれのルールを抜け道的に打開していきます。
結果的にそれが成功し、デヴィッドは「近眼」という共通点を持つ女性と恋に落ち、街に逃げ出すことができました。しかし、彼女はリーダーによってその共通点である「近眼」を失明させられてしまいます。
ホテルでのパートナー探しの恐怖、森での狩りへの恐怖から逃れて来た主人公に、またしても難題が突きつけられます。ラストシーンのデヴィッドは、「ナイフで目を刺して失明するかどうか」の選択を迫られるのです。
ナイフで失明した場合
デヴィッドがナイフで目を刺して失明した場合、彼はパートナーと「失明」という共通点で結ばれ、その後の社会で暮らしていくことができるでしょう。それは、仮初めの共通点かもしれませんが、ジョンが鼻血を出してパートナーを見つけてやり過ごしていることを考えれば問題ないと言えます。
一方で、ホテルの支配人夫婦の様子を見てみると、彼らが名ばかりの「愛」で結ばれていることが描かれています。ホテルで独身者たちに「模範的な夫婦」を演じていた2人の顛末を考えると、「仮初めの共通点」で社会をやり過ごしたとしても、それを幸せと言えるのかは疑問が残るのです。
失明しなかった場合
デヴィッドが失明する選択を取らなかった場合、彼はパートナーを置いて逃げ出すか、失明したふりをしてやり過ごすことになると考えられます。しかしどちらにしても、デヴィッドが再びホテルに連行される未来が想像できます。
仮にそうでなかったとしても、彼はパートナーを騙し続けること、いつ嘘がバレて捕まってしまうかもしれないという恐怖に晒され続けることになります。それは、決して幸せとはほど遠いと言えるでしょう。
タイトルの意味
つまり、このラストシーンに対して「別に失明しなくても抜け出したなら大丈夫でしょ」という指摘はナンセンスと言えます。それは先に説明したように、本作はディストピア世界観の上に成り立つ物語であり、「恋愛・愛・結婚」といった人間的な営みを風刺する作品なのです。
さて、「ロブスター(The Lobster)」というタイトルについて考えてみます。これは表面的にはデヴィッドが婚活に失敗して動物になった場合に、彼が変身を希望した「ロブスター」を表しています。
より深い意味では、デヴィッドのラストシーンの結末を暗示するものとしても考えられます。つまり、彼がパートナーと同じように失明する選択を取らずに、逮捕され、ロブスターに変えられてしまうということ。
また、デヴィッドが変えられるとしたらロブスターになりたいと言った理由にも注目してみましょう。
デヴィッドがロブスターを選ぶ理由は、どれも彼の潜在的な欲求を反映していると考えられます。彼はたとえ動物(ロブスター)に変えられたとしても、人間的な欲求を持ち続けたいと思っているのです。
さらに、冒頭シーンにも意味があります。冒頭シーンは、ある女性がロバを銃で殺す様子が描かれていました。ロバは恐らく女性の動物にされた元パートナーと考えられます。彼女がロバを殺害する理由は、恐らく何かしらの恨み(あるいは殺すほどの愛)があったからでしょう。
まさに「恋は盲目(Love is Blind)」と言ったもので、理性や常識を失ってしまうことの滑稽さを描き出しています。
同時に、これはデヴィッドがラストシーンで失明しなかった場合、彼はロブスターになってパートナーに殺されることを暗示しているように思います。
いずれにしても、そのどちらとも取れるラストシーンは見事としか言えません。デヴィッドが戻ってくるかどうかわからない絶妙な間合いと、背景に店の外の様子が伺える構図も素晴らしく、ヨルゴス・ランティモス監督の手腕が現れていました。
まとめ:恋愛は空虚なもの
今回は、ヨルゴス・ランティモス監督の映画『ロブスター』をご紹介しました。
何か答えや解決が得られる物語ではありませんが、このディストピア世界で「あなただったらどうする?」と監督に問われているような作品でした。
実際、誰かと親しくなる過程において、「共通点」は誰もが理解できるきっかけのひとつだと思います。また、恋愛や結婚、パートナーと一緒に過ごすとき、自分の中の個性や好みを抑えなければ上手くいかないこと、往々にしてありますよね。
この作品は、限定的なディストピア世界観を構築させ、人間たちの滑稽とも言える姿を観察させることで、人間的な営みの不自然さや不確実性を描いていました。奇妙なダンスやバイオリンの不協和音的な音楽も独特な世界観を巧みに作り上げています。
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