今回ご紹介する映画は『ヘレディタリー 継承』です。
「ホラー映画の最高傑作」と名高い、世界中で絶賛されたアリ・アスター監督の長編監督デビュー作による、超常現象ホラー映画。
本記事では、ネタバレありで『ヘレディタリー 継承』を観た感想・考察、あらすじを解説。
新しいホラー映画の潮流を作った革命的で怖い映画です!
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『ヘレディタリー 継承』作品情報・配信・予告・評価
『ヘレディタリー/継承』
5段階評価
ストーリー :
キャラクター:
映像・音楽 :
エンタメ度 :
あらすじ
グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニーは夫・スティーブン、高校生の息子・ピーター、人付き合いが苦手な娘・チャーリーと共に悲しみを乗り越えようとする。だが、アニーたちはエレンから忌まわしい“何か”を受け継いでいたことに気づかず…
作品情報
タイトル | ヘレディタリー/継承 |
原題 | Hereditary |
監督 | アリ・アスター |
脚本 | アリ・アスター |
出演 | トニ・コレット アレックス・ウルフ ミリー・シャピロ アン・ダウド ガブリエル・バーン |
音楽 | コリン・ステットソン |
撮影 | パヴェウ・ポゴジェルスキ |
編集 | ジェニファー・レイム |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2018年 |
上映時間 | 127分 |
予告編
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配信サイト | 配信状況 |
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おすすめポイント
現代ホラーの傑作。
亡き祖母から忌まわしい“何か”を受け継いでしまった家族がたどる恐ろしく残酷な運命を描いたホラー映画。
監督は本作が長編映画デビューとなったアリ・アスター監督による巧みな演出、物語、そしてキャストの凄まじい演技。
計算して張り巡らされた伏線と、あらゆる表現を駆使した恐怖映像によって、ホラー映画の新たな面白さを感じる映画です。
『ヘレディタリー 継承』に関するQ&A
グロいシーンはある?
あります。主に首が切断されるシーンが描かれます。
怖さはどれくらい?
直接的な映像表現の怖さよりも、背筋が凍るようなゾクゾクする怖さがあります。ホラー映画を見慣れていない人は怖く感じる人も多いと思います。
動物がひどい目にあうシーンはある?
あります。直接的な表現では鳥の首を切断するシーンがあり、主人公の家族のペットの犬も死亡してしまいます。
笑えるシーンはある?
コメディやブラックユーモア的な意味での笑えるシーンはありません。しかし、映画をメタ的な視点で見ると、ホラー映画をよく見ている人にとっては凄まじい狂気が笑いになるのかもしれません。
性的なシーンはある?
性描写のシーンはありませんが、全裸になっている人物が登場します。
つまらない?
十分に面白い映画と感じました。作品の持つテーマ性やモチーフ、カメラワークなど、超自然現象も登場しますが、現実世界にも通じる部分があり、非常に興味深い作品でした。
『ヘレディタリー 継承』監督・スタッフ
監督:アリ・アスター
名前 | アリ・アスター |
生年月日 | 1986年7月15日 |
出身 | アメリカ・ニューヨーク州 |
監督は、アメリカの映画監督、アリ・アスター。
幼い頃からホラー映画を好み、作家を志す過程で映画製作に興味を持ち、『ブラック・スワン』『ザ・ホエール』のダーレン・アロノフスキー監督や『TAR ター』のトッド・フィールド監督などを輩出した映画監督の養成学校であるAFI Conservatoryで学びました。
『ヘレディタリー 継承』キャスト・キャラクター解説
キャラクター | 役名/キャスト/役柄 |
---|---|
アニー・グラハム(トニ・コレット) 主人公。ミニチュア・アーティスト。母の死のトラウマを抱えている。 | |
スティーヴン・グラハム(ガブリエル・バーン) アニーの夫。精神科医。 | |
ピーター・グラハム(アレックス・ウルフ) グラハム家の長男。16歳。 | |
チャーリー・グラハム(ミリー・シャピロ) グラハム家の長女。13歳。 | |
ジョーン(アン・ダウド) グリーフケアのグループセラピーでアニーに声をかけて降霊術を教える。 |
ネタバレあり
以下では、映画の結末に関するネタバレに触れています。注意の上、お読みください。
【ネタバレ解説】『ヘレディタリー 継承』ってどんな話?あらすじとラスト
グラハム一家
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
映画は、2018年4月3日にエレン・リーが闘病の末に死亡したというお悔やみの記事から始まる。エレンの娘でミニチュア・アーティストのアニー・グラハムは、夫で精神科医のスティーヴン・グラハム博士、16歳の息子ピーター、13歳の娘チャーリーと、森の中にある家で暮らしている。
一家はエレンの葬儀に参列し、アニーが弔辞を述べるが、母が秘密主義だったため、彼女は参列者の多さに驚く。おばあちゃん子だったチャーリーは、エレンを失ったことで不安そうにしていたが、彼女はエレンがチャーリーに男の子になってほしいと願っていたことをアニーに明かす。その後、アニーはエレンの遺品から自分宛ての謝罪メッセージを見つけ、気配のようなものを感じる。
エレンとアニーの関係
スティーブンは、エレンの墓が荒らされたことを知らせる電話を受けるが、アニーには言わなかった。一方、アニーは映画に行くと言ってグリーフケアのグループセラピーに出席し、エレンが解離性同一性障害であったこと、父親が赤ん坊のときに妄想性のうつ病で餓死したこと、兄が統合失調症で自殺したこと、エレンには人を操る力があり、チャーリーを差し出したことで罪悪感を感じていることを明かす。
チャーリーは、学校で窓ガラスに衝突した鳥の死体を発見し、ハサミで頭を切り落として持ち帰り、人形を作る。そんな中、自分の部屋で、青白い光が自分を取り巻いているのに気づき、外に出ると、炎に包まれたエレンの姿を見る。その後、ピーターがパーティーに行こうとすると、アニーはチャーリーを連れて行かせる。
最悪の一夜
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
ピーターはパーティーでチャーリーを気にかけずにマリファナを吸いに行く。その間、チャーリーはナッツ入りのケーキを食べてしまい、それが重度のナッツアレルギーの引き金となり、アナフィラキシーショックを起こす。
ピーターは急いでチャーリーを病院まで送り届けようと車を走らせるが、息が苦しいチャーリーは、空気を吸おうと窓から身を乗り出す。ピーターが道路に倒れている鹿の死体を避けようと急ハンドルを切ったことで、チャーリーの頭部が電柱に衝突して切断されてしまう。ピーターはショックと混乱で家に帰り、両親の車の後部座席にチャーリーの首なし遺体を放置する。そして翌朝、アニーの血も凍るような悲鳴とともにアニーの無惨な姿が発見される。
崩壊する家族
チャーリーの死後、家族はバラバラになっていた。アニーは家族を避けるようになり、ピーターは妹の死への罪悪感にさいなまれ、チャーリーの幻覚を見るようになっていた。
アニーはグリーフケアのサポートメンバーで息子と孫を亡くしたと明かすジョーンに声をかけられる。アニーは後日、彼女のアパートを訪ねて、自分が夢遊病であることを打ち明ける。
アニーは模型作りを続けるが、いつしかチャーリーの事故死した場面の詳細な模型まで作ってしまい、スティーヴンに止めるように言われる。しかし、その後の食事の席で、アニーとピーターはチャーリーの事故死について激しく口論し、互いに侮辱を浴びせ合う。
降霊術
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
アニーはホームセンターで偶然ジョーンに出会い、彼女に誘われて降霊術を教えられる。ジョーンが実際に実演してみせると、彼女の孫の霊が孫が好きだった黒板に「おばあちゃん、大好きだよ」と書き始める。ジョーンは降霊術の方法をアニーに教え、彼女は混乱し、衝撃を受ける。
その夜、アニーはピーターの部屋に入り込み、「母親になることを恐れ、流産しようとした」と言い放つ悪夢を見る。その悪夢は、2人がシンナーまみれになり、火をつける瞬間で途切れる。
目を覚ましたアニーは、ピーターとスティーヴンを目覚めさせ、2人を説得して降霊術を試みる。するとアニーは、体にチャーリーが入り込んだように話し始める。その様子にピーターが恐怖を覚え、スティーヴンが水をかけて止める。
悪魔王ペイモン
ピーターはチャーリーの悪夢を見て、混乱してアニーに引っ張られたと取り乱す。アニーはチャーリーのスケッチブックにピーターを脅す絵が描かれたことで、彼女の霊が怒っているのだと思い、スケッチブックを暖炉に投げ入れる。
しかし、本と同時に彼女の服も燃え上がり、本を暖炉から引き離して消火すると、彼女の服の炎も消える。翌日、アニーはジョーンの部屋を尋ねるが、彼女の姿はなかった。家に戻ったアニーは母の遺品を調べる。
そこには「悪魔王ペイモン(King Paimon: God of Mischief)」が、儀式後に男性の宿主のもとに戻り、ペイモンの召喚者は富を得ることができるという記述と、エレンがカルト集団たちから女王のように崇められ、ジョーンが親しかったことを示す写真集を見つける。
スケッチブック
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
アニーは屋根裏部屋に向かい、そこでエレンの腐敗した首なし死体と、血で描かれたルーン文字のようなシンボルを見つける。
一方、ピーターは学校の外でジョーンが「お前の体から魂を追い出す」と叫んでいる幻覚を目撃する。その後の授業中、ピーターは見えない力に支配され、机に頭を殴打し、鼻の骨を折り、スティーヴンに引き取られる。
アニーはスティーヴンに屋根裏部屋を確認させ、チャーリーのスケッチブックとの関係を明かし、自分の代わりにスケッチブックを燃やしてほしいと懇願する。
スティーヴンはアニーが正気を失ったと思い込み、要求を断ると、彼女は彼から本を奪い取って暖炉に投げ込む。するとその瞬間にスティーブが燃え上がり、アニーはショックで表情が歪むが、取り憑かれたように間もなく無表情になる。
ペイモン召喚
ピーターは日没後に目を覚まし、リビングで黒焦げになった父親の死体を見つける。憑依されたアニーはピーターを追いかけ回し、ピーターは屋根裏部屋に逃げ込む。しかし、屋根裏部屋にはカルト集団の儀式の痕跡があり、物音が聞こえて天井を見上げると、浮遊したアニーがピアノ線で首を切断しよとしていた。
ピーターは恐怖を感じて屋根裏の窓から飛び出し、地面に激突する。すると、彼の体に青白い光のオーブが入り込み、ピーターは目を覚ます。ピーターはツリーハウスにアニーの首なし死体が浮遊して入っていく様子を目撃し、中に入ると、「女王リー(QUEEN LEIGH)」と書かれたエレンの写真があり、カルト集団のメンバーや、アニーとエレンの死体が、チャーリーの頭部に王冠を乗せられた像に向かって拝んでいた。
ジョーンは像から王冠を外してピーターの頭に乗せ、「チャーリー」と呼ぶ。そして彼女は、ペイモンの召喚を祝福する。
『ヘレディタリー 継承』のタイトルの意味
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
「Hereditary(原題)」を辞書で調べると、「遺伝の、遺伝的な、世襲の、親譲りの」という意味が記されています。つまり、「先祖から遺伝的に受け継いだ性質や能力の総体」を意味しています。
これは、アニーが家族についてグリーフケアのグループセラピーで話した場面でわかるように、彼女の家系が代々、何らかの精神障害(精神疾患)を抱えていることに対応しています。
実際に、学術雑誌「Scientific Reports」に掲載された精神神経科学の大井一高らの論文によると、「統合失調症、うつ病、双極性障害といった主要な精神障害は、40-90%の高い遺伝率を示す多因子遺伝疾患であり、病態には多数の遺伝子が関わっている。」と記されています。
精神障害の家族歴を有する患者は、家族歴を有しない患者に比べ、症状の重症化やリスクとなる遺伝子を多く保持していることが知られています。
『ヘレディタリー 継承』では、精神障害の家族歴を有するアニーが、チャーリーの事故死をきっかけにして明確に重度な精神障害を発症し、さらにそれが息子のピーターにも継承されていく様子が映されていました。それにより、家族は崩壊へと向かっていきます。
メンタルヘルスとテーマ、授業の意味とトラウマ
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
『ヘレディタリー 継承』は、ホラー映画を通じて精神障害の遺伝を描いた映画でした。
ピーターが学校で授業を受けるシーンでは、映画のテーマに関する重要なやり取りが行われています。
教師は、ギリシャ神話のヘラクレスの「致命的な欠陥」を議題に挙げ、ピーターが気になるクラスメイトの女性は「傲慢さ」と答え、その理由を「ヘラクレスがあらゆる兆候を認めないから」と言いました。
それに対し、教師は「選択肢があったら悲劇性は高まるか、低くなるか」と質問します。ある生徒は「より悲劇的だ」と言い、「避けられない運命なら、希望がなさすぎる。絶望的な仕組みの中の駒でしかない。」と発言しています。
そして黒板には「Themes(テーマ)」と書かれており、その下に「運命からの脱出」「知識と責任の関係」と項目が続いています。
これらは、映画でピーターに待ち受ける最期の伏線となり、逃れられない運命を反映しています。
エレンが人を操る(体に人を入れる)能力があったこと、ペイモン教のカルト集団の降霊術など、本作には超人的な要素があります。ピーターがペイモンの宿主となってしまったのは、「逃れられない運命」として、ペイモン教のカルト集団による仕組まれたものであったと考えるのが自然でしょう。
家族が崩壊するきっかけとなるチャーリーの死の原因について考えてみます。
チャーリーの死の原因は上記のように、後出しで挙げることもできますが、彼女の死は誰かの責任によるものではありません。しかし、アニーとピーターが激しく口論する場面で描かれるように、2人にとって、チャーリーの死は精神的な重いトラウマとして刻み込まれてしまいます。
ペイモンを召喚しようとするカルト集団は、このトラウマを誘発し、利用していたと考えるのが妥当でしょう。実際にチャーリーが頭をちょん切られる電柱には、ペイモン召喚を望むカルト集団の紋章が描かれています。
ピーターが急ハンドルを切ったのも、道で倒れていた鹿を避けるためでした。それも、カルト集団によるものだと考えるのが妥当で、鹿は、さまざまな神話や伝承において、神への供物として生贄の動物として有名でもあります。
同じくA24のホラー映画『聖なる鹿殺し』では、鹿は登場しませんが、テーマとなる古代ギリシャ悲劇を通じて描かれています。
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ミニチュア模型のモチーフとカメラワーク
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
主人公アニーのキャラクター設定は、ミニチュア模型のアーティストでした。これも、物語に非常に重要な意味をもたらしています。
象徴的なオープニングシーンでは、ミニチュア模型の全体像を捉える映像から徐々にズームインしていき、画面のフレームいっぱいに映し出されると、現実世界につながるカメラワークとなっています。
これは映画のテーマを明確に反映しています。映画では、アニーが現実世界で起きたこと(自分が体験したこと)をミニチュア模型に反映している様子が描かれていました。
アニーはミニチュア模型を作る「神」であり、そんなアニーも、超人的な力による「避けられない運命」によって操作されてしまいます。ペイモンや神的な存在からすれば、現実世界は、アニーがつくるミニチュア模型と同様なのです。
それを示すように、ラストシーンは、ペイモンの宿主となったピーターと、彼らがいるツリーハウスを引いた構図、ミニチュア模型のような構図で映して幕を閉じます。
ミニチュア模型<アニー(現実世界)<ペイモン(神)<アリ・アスター監督(映画)
アリ・アスター監督は、テーマを巧みに組み合わせて、複層的なレイヤーで恐ろしい物語を作り上げています。何たる才覚。
切断した首と光、犬の意味
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
首が切断される意味
『ヘレディタリー 継承』では、チャーリーが鳥の首をハサミで切ったり、アニーが自らの首を切断したり、エレンの首が切断されたりなど、繰り返し首を切断する描写が描かれています。
これらは、ペイモン召喚のための儀式(生贄)としての意味、ある肉体を器にして、別のものの魂を入れるための解放する手段として描かれています。
よりメタ的な視点で見ると、人間のアイデンティティを考える上で、人間がその人間であることを判断するために、多くの場合が頭部を(顔と脳)が基準であることが挙げられます。つまり、首から下は別人でもその人はその人たらしめるのかという哲学的な問いかけにもなっています。
青白い光の意味
映画の中で繰り返し描かれる青白い光。これはペイモンの魂と考えるのが妥当でしょう。
ペイモンの魂は、正式な宿主としての肉体を手にするまでの間、さまざまな形で、グラハム家の人間たちに近づいています。ピーターが顔を殴打した場面が表すのは、精神的に不安定になっていくと一時的に体の支配権を奪われることを意味していると考えられます。
グラハム家の犬レクシー
登場回数は少ないですが、グラハム家はペットの犬レクシーを飼っていることが描かれています。
レクシーは、ペイモンの魂を察知しているとみられます。多くの伝承や神話において、犬が魔除けの存在として描かれているように、犬のレクシーはペイモンを察知して警戒していたと考えられます。
ピーターがツリーハウスに向かうラストシーンでは、レクシーが横たわっている姿を確認できます。公開されている映画の脚本を見ると、「ピーターが死骸の前を通り過ぎた」と記されているので、残念ながら犬のレクシーは、何らかの形で死んでしまった(殺された)と考えられます。
悪魔王ペイモンと実在の歴史との関連
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
映画で登場する「悪魔王ペイモン」は、実は歴史にインスピレーションを受けています。
フランス語で「魔術の書物」を意味し、特にヨーロッパで流布した魔術書であるグリモワールの中に、『ソロモンの大いなる鍵』と『ソロモンの小さき鍵』という2冊の魔術書があります。
The Key of Solomon the King: Clavicula Salomonis S. L. MacGregor Mathers Amazonでみてみる |
このうち、「レメゲトン」や「ゲーティア」とも呼ばれる『ソロモンの小さな鍵』には、72の悪魔の解説と使役の仕方が記されています。そして、その内の悪魔のひとりに「ペイモン」がいるのです。
映画に登場するエレンが身についけていたネックレスのシンボルと、『ソロモンの小さな鍵』で記載されているペイモンの悪魔のシジル(紋章)は、瓜二つといえるほど酷似しています。
まとめ:新感覚ホラーによる恐怖
今回は、アリ・アスター監督の映画『ヘレディタリー 継承』をご紹介しました。
家族の遺伝的な精神障害をホラー映画として表現する手腕と、ただ怖がらせるだけでなく、深い悲しみ、家族内の断絶、超常現象などを織り交ぜてテーマを掘り下げた、近年のホラー映画の中でも特に記憶に残る作品でした。
監督の次回作である『ミッドサマー』の方が知名度は高いですが、アリ・アスター監督による衝撃的なデビュー作として、主演のトニ・コレットの圧巻の演技と共にホラー映画史に残る強烈な作品となっていました。