今回ご紹介する映画は『ジョジョラビット』です。
戦争映画の新しい形に挑戦している意義のある映画でした。
戦争映画といって敬遠するのはもったいなく、子供を持つ母親にとっては感じるものも多いかと思います。
戦争映画にユーモアとファンタジーを織り交ぜた監督の手腕が光っていました。
映画『ジョジョラビット』の作品情報とあらすじ
作品情報
原題 | Jojo Rabit |
---|---|
監督 | タイカ・ワイティティ |
脚本 | タイカ・ワイティティ |
出演 | ローマン・グリフィン・デイビス トーマシン・マッケンジー タイカ・ワイティティ サム・ロックウェル スカーレット・ヨハンソン |
製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019年 |
上映時間 | 108分 |
おすすめ度 | (4/5点) |
あらすじ
第2次世界大戦下のドイツ。
10歳のジョジョは、青少年集団ヒトラーユーゲントに入団する。
彼の架空の友達アドルフ・ヒトラーの助言を受けながら一人前の兵士を目指していた。
だがジョジョは訓練中にウサギを殺すことができず、教官に“ジョジョ・ラビット”というあだ名を付けられる。
そんな中、自宅にユダヤ人が潜んでいることが分かり…。
映画『ジョジョラビット』のキャスト
出典:https://www.imdb.com/
本作の監督は、『マイティ・ソー バトルロイヤル』で知られるタイカ・ワイティティ監督。
つぶらな瞳が印象的ですね。 彼はコメディ出身で俳優活動もしていて、本作の空想の中のヒトラーを演じたのは、監督自身なんです。
ワイティティ監督はマオリ人(ニュージーランド)とユダヤ人のハーフです。
偏見の経験もあったそうで、そんな監督がユダヤ人迫害したヒトラーを演じることに意義が感じられますね。
チャップリンの『独裁者』を感じさせる本作のヒトラー像は、かなり誇張した姿となっていますが、それが子供の想像するイマジネーション・フレンドという意味では面白かったです。
ヒトラーは擦り切られるほど映画で描かれていますが、ユーモアのあるヒトラー映画で僕が個人的に好きなのはは『帰ってきたヒトラー』です。
ローマン・グリフィン・デイビス
出典:https://www.imdb.com/
主演のジョジョ役のローマン・グリフィン・デイビスは映画初出演。
初出演とは思えないほど、愛おしくも力強い演技をしていました。
実は彼のお父さんは、『キック・アス』『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』『スリー・ビルボード』などで有名な撮影監督のベン・デイビスという方なんです。
スカーレット・ヨハンソン
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脇を固めるのは、スカーレット・ヨハンソンやサム・ロックウェル。
スカーレット・ヨハンソンは『マリッジ・ストーリー』でも素晴らしい演技をしていましたが、本作でも強い母親を見事に演じきっていました。
サム・ロックウェル
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『スリー・ビルボード』でアカデミー賞・ゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞したサム・ロックウェルも気だるさと独特の空気感を醸し出していて、存在感がありました。
同じ時期に公開されたクリント・イーストウッド監督作『リチャード・ジュエル』でも素晴らしい演技をしています。

トーマシン・マッケンジー
ユダヤ人少女、エルサ役を演じたのは、ニュージーランド出身のトーマシン・マッケンジー。
透き通った目と、美しい顔立ちの彼女は、デブラ・グラニック監督の映画『足跡はかき消して』での演技が絶賛されて注目が集まりました。
ユダヤ人として外に出られない状況の中、ジョジョとの出会いを通して互いが成長していく難しい役どころを好演していました。
映画『ジョジョラビット』はアカデミー賞も期待される作品
出典:https://www.imdb.com/
アカデミー賞も狙える作品
本作、映画『ジョジョラビット』は、トロント国際映画祭の最高賞である、観客賞を受賞しました。
トロント映画祭の観客賞は、アカデミー賞にも最も近いとも言われたりします。
近年でも、トロント映画祭の観客賞を受賞した作品でアカデミー賞作品賞に選ばれた作品が多くあります。
トロント映画祭観客賞受賞後にアカデミー賞作品賞受賞した作品
- 『スラムドッグ$ミリオネア』(2008年)
- 『英国王のスピーチ』(2010年)
- 『それでも夜は明ける』(2013年)
- 『グリーンブック』(2019年)
本作『ジョジョラビット』はアカデミー賞でどう食い込んでいくのか楽しみです。
※追記
『ジョジョラビット』はアカデミー賞脚色賞を受賞しました。
作品賞はポン・ジュノ監督の『パラサイト』でした。

『ジョジョラビット』はヒトラーを敬愛する少年が愛を知る映画
出典:https://www.imdb.com/
本作は、ジャンルで言うと恐らく戦争映画に分類されます。
ですが、その中にはコメディやファンタジーといった内容が入っているのです。
戦争にコメディやファンタジーと言うと、かなり不釣り合いに感じると思いますよね。 本作は、その難しい塩梅というものを上手く表現していたと思います。
主人公のジョジョはヒトラーを敬愛する10歳の少年
「ハイル・ヒトラー!」
町中の人に声を掛けて元気に飛び出す少年ジョジョは、立派な兵士になろうと青少年集団ヒトラー・ユーゲントで奮闘します。
敬愛するヒトラーへの忠誠心は立派ですが、心優しいジョジョは実習でウサギを殺せなかったことで「ジョジョラビット」とあだ名を付けられてからかわれてしまうのでした。
ジョジョに限った話ではなく、「ユダヤ人は角が生えいていて体には魚の鱗がある」といった馬鹿げた話を実際に少年たちは信じ、レイシズムへと変貌していくのです。
経験も知識も浅い彼らにとって、大人の洗脳ともいえる教えによって、考えることなく間違ったものを植え付けられていく子供たち。
歴史を知る我々は、その恐ろしさを感じながら見ることになります。
本作では、ヒトラーを敬愛する少年ジョジョが、様々な経験を通して世の中をみて、自分で考えて、そして愛を知る、ジョジョの成長の物語でもありました。
【ネタバレ】映画『ジョジョラビット』の効果的な演出
出典:https://www.imdb.com/
※以下映画のネタバレに触れていますのでご注意してください。
効果的な演出
本作には、ワイティティ監督のこだわりが感じられる効果的な演出がありました。
『ジョジョラビット』の効果的な演出
- 色彩豊かな描写
- 画角を巧みに使った演出
色彩豊かな描写
本作、ご覧になると分かるのですが、戦争映画ではまず使わないような色彩豊かな描写をしているんですね。
ストーリの前半だけ見ていると、「あれ?この映画ウェス・アンダーソンだっけ?」と感じてしまうほど、色鮮やかな映像とエモーショナルな映し方をしています。
それが一気に変わるのが、ジョジョの母の死の場面。
鮮やかでファンタジックだった映像が戦争により壊された街並みへと変貌していくのです。
それと同時に現実へと一気に引き戻され、戦争映画であることを再認識するのです。
画角を巧みに使った演出
こだわりを感じられたのは色彩の他に、映像の画角にも現れていました。
前半では画角は狭く、ジョジョの見えている景色の狭さを描いています。
その画角の狭さを効果的に使ったのが、色彩の変化のタイミングを同じ、前半と後半の区切りとなる母の死のシーン。
この描き方は本当にすごく、足元だけで母の死を伝え、ジョジョが見えている画角だからこそできるシーンとなっていて見事でした。
戦争が始まってからのシーンにおいては、壊れていく街を広く映していて、ジョジョ自身も見えていなかった部分が見えてきます。
10歳の少年が信じていたものが崩れ去り、現実と直面するのです。
映画『ジョジョラビット』は音楽の使い方が絶妙
本作の効果的な演出は音楽にも現れていました。
オープニングとエンディングで使われる音楽が絶妙なんですよね。
- Beatles『I Want To Hold Your Hand』
- David Bowie『Heroes』
Beatles『I Want To Hold Your Hand』
オープニングで使われるのは、ビートルズの名曲『I Want To Hold Your Hand』です。
映画の冒頭では、戦時中のナチスに熱狂する市民らの映像をバックに軽快に流れます。
この一見ミスマッチな映像と音楽が、絶妙な心地よさを感じてしまうのです。
一気に冒頭から引き込まれた効果的な演出でした。
使用された曲はドイツ語バージョンで歌われているもので、本作で使用するに当たって、ポール・マッカートニーに許可を得たそうです。
David Bowie『Heroes』
本作のラストに流れるのが、デヴィッド・ボウイの『Heroes』です。
ラスト、ジョジョとエルサが体を揺らしてリズムに乗りながら踊るシーンでかかるこの曲。
『Heroes』は、ボウイがベルリンの壁でコンサートを行った時の曲なんです。
一時期、西ベルリンに住んでいたボウイは、西側から壁を超えて東側へ向けて、この曲を歌ったのです。 そして、ドイツ語でボウイはこう語るのでした。
「今夜はみんなで幸せを祈ろう。壁の向こう側にいる友人たちのために」
そういった背景を知ると、本作のラストの意味するものがより深く胸に入ってきました。
母親はなぜ…
出典:https://www.imdb.com/
ジョジョの母親を演じたスカーレット・ヨハンソンは本当に良かったです。
理想的とも言える彼女の育て方には、考えさせられるものがありました。
- ジョジョの世界を壊さないこと
- 戦争という現実には向き合わせること
ジョジョの世界を壊さないこと
母は反ナチスであり、家にユダヤ人少女を匿っています。
ジョジョがナチス信者であることに対して、彼女は否定したり諭したりすることはありません。
あくまでもジョジョの信じるものを受け入れているのです。
ジョジョに戦争に行きたいといえば行かせたり、本当は行かせたくなくても子供の意志を尊重するのです。
戦争という現実には向き合わせること
ジョジョの意志を優先する一方で、彼女は戦争という現実に対してはしっかりと向き合わせていました。
町中で反ナチスの人が見せしめで首を吊られて処刑されているシーン。
目を背けるジョジョに対して、母はしっかりと見るように言います。
彼女なりにジョジョに対して戦争とは何かを自分で考えさせようとしているのです。
母親は結果的に処刑されてしまいます。
あんなに素敵な母親なのになぜ処刑されなければならないんだという思いがめぐります。
残されたジョジョは自分の間違った考え方に気づくきっかけにもなり、それと同時に「愛」を学んでいくのでした。
【まとめ】『ジョジョラビット』を通して戦争を知る
戦争映画でありながらコメディやファンタジーを交えていて、新しい映画体験となりました。
戦争映画と言うと敬遠しがちな方も多いと思いますが、そんな方も見やすい作品であるとともに、子供の目線から見た戦争を通して改めて考えることも多い作品でした。
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